(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外部刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子を含む高分子吸湿材であって、空気中の水を吸湿させた高分子吸湿材に、外部刺激を付与して、水との親和性を低下させる工程と、
水との親和性が低下した高分子吸湿材に振動を与える工程とを含むことを特徴とする、水集積方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0014】
図2は本発明の実施の形態1に係る水集積装置101の縦断面図を示す。
【0015】
水集積装置101は、直方体形状の筐体を備え、この筐体には、上部の一側面に形成された吸気口5と、上部の当該側面に対向する側面に形成された排気口7と、排気口7側の下部に形成され、排水タンク9を収容するタンク収容部とが備えられている。吸気口5の、水集積装置101の内部側には吸気フィルター6が備えられている。
【0016】
水集積装置101の、吸気口5と排気口7との間には、空気流通壁23が設けられている。吸気口5から取り込まれた空気は、
図2中、矢印で示されるように、空気流通壁23によって限られた空間を流通する。空気流通路には、空気の入り口側から順に、吸気口5、吸気フィルター6、送風ファン8、吸湿ユニット1、及び排気口7が設けられている。
【0017】
吸湿ユニット1は、四角形板状の基材3上に高分子吸湿材2が積層されてなる積層体の、基材3側に、基材3に接するように板状の加熱ヒーター4が設けられた素子が、複数個、円盤状の回転する台座の上に、放射状に固定された部材である。
図3は、水集積装置101を、高分子吸湿材2の層を通る断面で切断した横断面図である。
図2および
図3に示すように、吸湿ユニット1は、水集積装置101の筐体の、吸気口5が形成されている側面及び排気口7が形成されている側面と平行な面上にあり、各素子が、吸気口5側から排気口7側に向かって、順に、高分子吸湿材2、基材3、加熱ヒーター4となるように配置されている。吸湿ユニット1を構成する各素子は、ステッピングモーター10の回転軸を中心とする円の円周上に、放射状に、等間隔で配置されており、当該回転軸のまわりを、
図3中に矢印で示す方向(反時計回り)に回転可能となっている。吸湿ユニット1は、図示しない制御部によって制御されるステッピングモーター10によって駆動され、所定の時間間隔及び所定の回転角で回転するようになっている。
【0018】
高分子吸湿材2としては、刺激応答性高分子を含む高分子吸湿材2を用いる。なお、本実施の形態では、刺激応答性高分子として、熱に応答して水との親和性が可逆的に変化する温度応答性高分子を用いる。かかる温度応答性高分子は、下限臨界溶液温度(LCST(Lower Critical Solution Temperature)、以下、本明細書において「LCST」と称することがある。)を持つ高分子である。LCSTを持つ高分子は低温では親水性であるが、LCST以上になると疎水性となる。なお、ここで、LCSTとは、高分子を水に溶解したときに、低温では親水性で水に溶解するが、ある温度以上になると疎水性となって不溶化する場合の、その境となる温度をいう。
【0019】
刺激応答性高分子は多孔質であることがより好ましいが、必ずしも多孔質でなくてもよい。なお、高分子吸湿材2の具体例については、後述する。
【0020】
図3に示すように、吸湿ユニット1が回転する領域は、水集積装置101の上部に位置する吸湿エリア25と、水集積装置101の下部に位置する放出エリア24とに区分されており、吸湿ユニット1が、所定の時間間隔及び所定の回転角で一度回転する毎に、前記各素子の1つが吸湿エリア25から放出エリア24に移動し、前記各素子の1つが放出エリア24から吸湿エリア25に移動する。本実施の形態では、水集積装置101の下部に位置する3個の素子が、放出エリア24内にある。放出エリア24では、放出エリア24内に移動した直後の素子およびそれに続く水集積装置101の最下部にある素子の加熱ヒーター4のヒーター電極と接触して加熱ヒーター4を通電できる位置に、図示しないヒーター用固定電極がそれぞれ配置されている。これにより、吸湿ユニット1の前記各素子が、ステッピングモーター10で駆動された回転により、ヒーター用固定電極が配置されているこれらの位置に到達すると、これらの各素子の加熱ヒーター4がそれぞれ通電により作動するようになっている。本実施形態では、放出エリア24内から吸湿エリア25に移動する直前の素子の加熱ヒーター4は作動しないので、加熱された高分子吸湿材2が自然冷却される。
【0021】
放出エリア24では、さらに、吸湿ユニット1の回転により、前記各素子が水集積装置101の最下部に到達したときに、前記各素子の加熱ヒーター4に近接する位置に超音波振動子11が備えられている。吸湿ユニット1の前記各素子が、吸湿ユニット1の回転により、前記各素子が水集積装置101の最下部に到達すると、超音波振動子11が図示しない制御部によって、所定のタイミングで加熱ヒーター4に接触して、加熱ヒーター4に超音波振動を伝達するようになっている。超音波振動子11は、素子の加熱ヒーター4及び基材3を介して高分子吸湿材2にそれぞれ超音波振動を与える。
【0022】
なお、吸気口5から取り込まれた空気は、空気流通壁23によって、吸湿エリア25のみを流通し、放出エリア24には流通しないようになっている。
放出エリア24の下部には、滴下口が設けられており、当該滴下口の下部に排水タンク9に集積した水が排水されるようになっている。
【0023】
次に水集積装置101による水集積方法について、
図1〜5を参照して説明する。まず、水集積装置101が運転されると、水集積装置101内の送風ファン8が作動されて、吸気口5から空気(湿り空気12)が、吸気フィルター6を介して、水集積装置101内に取り込まれる。吸湿ユニット1は、ステッピングモーター10によって駆動されて、ステッピングモーター10の回転軸のまわりを所定の時間間隔及び回転角で回転する。
【0024】
水集積装置101に取り込まれた空気(湿り空気12)は、吸湿エリア25を通過するときに、吸湿ユニット1の高分子吸湿材2と接触する。吸湿エリア25では、加熱ヒーター4が作動しないため、室温において親水性である高分子吸湿材2は、空気(湿り空気12)中の水分を吸湿する。これによって、吸湿エリア25を通過する湿り空気12は除湿され、除湿された空気(乾燥空気13)が排気口7から排気される。
【0025】
空気(湿り空気12)中の水分を吸湿した吸湿ユニット1の前記各素子は、ステッピングモーター10によって駆動されて、順に吸湿エリア25から放出エリア24内へと移動する。放出エリア24内では、前記各素子の加熱ヒーター4のヒーター電極がヒーター用固定電極と接触して通電することにより、各高分子吸湿材2が加熱ヒーター4により加熱される。さらに、吸湿ユニット1の回転により前記各素子が水集積装置101の最下部に到達すると、所定のタイミングで、当該素子の加熱ヒーター4に超音波振動が与えられる。
【0026】
加熱ヒーター4により、基材3と、基材3を介して高分子吸湿材2とが加熱されることにより、高分子吸湿材2はLCST以上となり、水との親和性が低下して疎水性となる。その結果、高分子吸湿材2に吸湿された水分は、液体の水として高分子吸湿材2から放出される。ここで、放出された水は、高分子吸湿材2内部の孔部分に留まるか又は高分子吸湿材2からわずかに滲み出る。このように、高分子吸湿材2から放出された微量の水を取り出すことは難しい。本発明では、超音波振動を用いて、放出された微量の水を、高分子吸湿材2の表面に取り出すことができる。
図4は、吸湿ユニット1の回転により水集積装置101の最下部に移動した後、超音波振動子11が加熱ヒーター4に接触する前の素子の様子を示す図である。この段階では、高分子吸湿材2から放出された水は、まだ高分子吸湿材2の表面に取り出されていない。
図5は、吸湿ユニット1の回転により水集積装置101の最下部に移動した後、超音波振動子11が加熱ヒーター4と接触した後の素子の様子を示す図である。超音波振動が基材3を介して高分子吸湿材2に伝わり、これにより、放出された水が高分子吸湿材2の表面に取り出されることにより、集積される。このようにして集積された水は、滴下水14として排水タンク9に排出される。
【0027】
特に、高分子吸湿材2が多孔質である場合には、より多くの水を高速で吸湿させることができるが、吸湿させた水を回収することが非常に困難である。
図1は、多孔質の高分子吸湿材2を用いた場合の、空気中の水(水蒸気)の吸湿および放出の様子を模式的に示す図である。多孔質の高分子吸湿材では、高分子吸湿材のバルク部分26の間に多数の孔部分27が形成されている。
図1のAは高分子吸湿材が親水性である状態を示す図である。かかる状態では、空気中の水は高分子吸湿材に吸湿されて、図中ドットで示すように高分子吸湿材のバルク部分に存在する。この水を吸湿させた高分子吸湿材が外部刺激に応答して水との親和性が低下して疎水性になると、
図1のBに示すように水を放出し、放出された水は、高分子吸湿材のバルク部分から滲み出て、孔部分の中にとどまる。本発明では、多孔質の高分子吸湿材に対しても、超音波振動子のような振動部により振動を与えることにより、
図1のCに示すように、孔部分の中にとどまっている水を高分子吸湿材の外部に取り出すことができる。
【0028】
本発明では、外部刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子を含む高分子吸湿材2を用いて、当該高分子吸湿材2に吸湿させた水を、前記高分子吸湿材2に外部刺激を付与して、水との親和性を低下させるとともに、水との親和性が低下した高分子吸湿材2に振動を与えることにより、高分子吸湿材2から放出された水を効率的に集積することができる。
【0029】
さらに、高分子吸湿材2として、そのLCSTが、室温を超える程度の温度、例えば40℃以上の比較的低温の温度、例えば40℃〜100℃、より好ましくは40℃〜70℃の応答性高分子を用いることにより、調湿装置に用いた時に、従来の調湿装置のように、過冷却や大きな熱量を用いずに、高分子吸湿材がLCST以上となるように加熱するだけで吸収した水分を液体状態で直接取り出すことができる。
【0030】
本実施の形態では、高分子吸湿材2を含む複数の素子が放射状に配置されて、回転する仕組みとなっているので、吸湿エリア25内にある複数の素子を吸湿に用いつつ、放出エリア24内にある残りの複数の素子において刺激および振動を与えて水を取り出すことができる。すなわち、吸湿と放出とを並行して行なうことができる。
【0031】
基材3は、加熱ヒーター4の熱を、当該基材3を介して高分子吸湿材2に伝えることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属をより好適に用いることができる。また、基材3の材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリカーボネート(PC)、ポリオレフィン、ポリアクリレート等の樹脂;シリカ、セラミック等であってもよい。基材3の材料として、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等を用いる場合は、基材3の表面に、カーボンブラック、酸化鉄粒子等の光熱変換材、または、酸化鉄系セラミック粒子、マグネタイトナノ粒子等の磁気熱変換材を塗布したものであることがより好ましい。これにより、光照射や磁場等の投入によって、基材3を加熱することができ、よって、高分子吸湿材2を加熱することができる。
【0032】
基材3への高分子吸湿材2の積層方法も特に限定されるものではないが、例えば、バインダー、シランカップリング剤等により積層する方法を用いることができる。
【0033】
また、上述した例では、板状の基材3上に高分子吸湿材2が積層されてなる積層体の、基材3側に、基材3に接するように板状の加熱ヒーター4が設けられ、加熱ヒーター4と接触して加熱ヒーター4に超音波振動を伝えることができる位置に、超音波振動子11が配置されるが、超音波振動子11は、高分子吸湿材2と接触して高分子吸湿材2に直接超音波振動を伝えることができる位置に配置されていてもよい。更に、上述した例では、板状の基材3上に高分子吸湿材2が積層されてなる積層体の、基材3側に、基材3に接するように板状の加熱ヒーター4が設けられているが、加熱ヒーター4は、板状の基材3上に高分子吸湿材2が積層されてなる積層体の、高分子吸湿材2側に設けられていてもよい。かかる場合、超音波振動子11は、加熱ヒーター4と接触して加熱ヒーター4に超音波振動を伝えることができる位置に配置されていてもよいし、基材3と接触して高分子吸湿材2に超音波振動を伝えることができる位置に配置されていてもよい。
【0034】
上述した例では、高分子吸湿材2を振動させて、高分子吸湿材2から滲出する水を取り出すための振動部として、超音波振動子11を用いているが、振動部は、超音波領域の周波数の振動を与えるものであれば、その構成は特に限定されるものではない。また、振動部としては、超音波振動子以外にも、例えば、高周波印加による振動磁子、エレクトレット、Fe−Ga等の磁歪振動子、水晶振動子、自励振動する高分子ゲル等を用いることができる。また、振動部は、共振体を備えていてもよい。
【0035】
上述した例では、水集積装置101は、筐体、吸気口5、吸気フィルター6、送風ファン8、排気口7、及び排水タンク9を備えている。かかる水集積装置101は、それ自体で調湿装置としても利用することができる。しかし、水集積装置101は、これらを除いた水集積部のみで構成されていてもよい。すなわち、水集積装置101は、吸湿ユニット1と、ステッピングモーター10と、超音波振動子11とを少なくとも備えた装置であってもよい。かかる場合は、水集積装置101は、部品として、調湿装置に組み込むことができる。
【0036】
上述した例では、高分子吸湿材2に効率的に熱による刺激を付与するために、板状の加熱ヒーター4を用いているが、加熱ヒーター4の形状は板状に限定されるものではなく、高分子吸湿材2に沿って配置することができるものであればよい。また、高分子吸湿材2に熱による刺激を与えることができれば、加熱ヒーター4以外の加熱装置を用いてもよい。かかる加熱装置としては、例えば、ハロゲンランプ、赤外線ランプ、キセノンランプ等を挙げることができる。
【0037】
また、上述した例では、高分子吸湿材2として、板状または層状の高分子吸湿材を用いているが、高分子吸湿材2の形状も、これに限定されるものではなく、例えば粒子状であってもよい。
【0038】
上述した例では、吸湿ユニット1は、12個の前記素子を備えているが、前記素子の数はこれに限定されるものではない。また、上述した例では、放出エリア24に3個の素子が存在し、吸湿エリア25に9個の素子が存在しているが、その割合もこれに限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0039】
上述した例では、吸湿ユニット1は、ステッピングモーター10によって駆動され、所定の時間間隔及び所定の回転角で回転するようになっているが、ユーザーからの指示に応じて回転するようにしてもよく、吸湿エリア25内の空気流通路に吸湿量を検知するセンサーを設け、当該吸湿量が所定値以上になったときに回転するようにしてもよい。
【0040】
また、ヒーター用固定電極及び超音波振動子11は、放出エリア24内に存在する素子の一部又は放出エリア24内に存在する単一の素子の加熱ヒーター4と接触する位置に配置されていてもよい。例えば、ヒーター用固定電極及び超音波振動子11は、素子が水集積装置101の最下部に到達したときに、当該素子の加熱ヒーター4と接触する位置に配置されていてもよい。或いは、放出エリア24内に存在する素子の一部の加熱ヒーター4と接触する位置にヒーター用固定電極のみが配置され、他の一部の加熱ヒーター4と接触する位置に超音波振動子11のみが配置されていてもよい。
【0041】
また、上述した例では、高分子吸湿材2としては、LCSTを持つ温度応答性高分子を含む高分子吸湿材を用いているが、温度応答性高分子であればLCST型ではない温度応答性高分子を含む高分子吸湿材であってもよいし、他の刺激に応答する刺激応答性高分子を含む高分子吸湿材を用いることもできる。他の刺激に応答する刺激応答性高分子を含む高分子吸湿材を用いる場合は、加熱ヒーター4の代わりに、刺激付与部として、赤外線、紫外線、可視光等の光、電場等、対応する刺激を与える装置を用いればよい。
【0042】
上述した例では、高分子吸湿材2の表面に取り出された水は、滴下水14として集積され、排水タンク9に排出されているが、取り出された水を、例えば、高速で回転させる遠心法によって、集積することもできる。
【0043】
また、吸湿ユニット1に含まれる前記素子の形状、前記各素子間の間隔、空気流通壁23の形状、排水タンク9の位置、筐体の形状等は、
図2及び
図3に示されるものに限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0044】
〔実施の形態2〕
以下、本発明の他の一実施形態について詳細に説明する。
【0045】
なお、説明の便宜上、前記実施の形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0046】
図6は本発明の実施の形態2に係る水集積装置102の縦断面図を示し、
図7は水集積装置102の横断面図を示す。
【0047】
本実施の形態では、送風ファン8が排気口側に配置されている。よって、空気流通路には、空気の入り口側から順に、吸気口5、吸気フィルター6、吸湿ユニット1、送風ファン8、及び排気口7が設けられている。
【0048】
また、吸湿ユニット1は、
図6及び
図7に示すように、基材3上に高分子吸湿材2が積層されてなる積層体の、基材3側に、基材3に接するように加熱ヒーター4が設けられた素子が、複数個、円筒の側面上に、固定された部材である。前記円筒は、水集積装置102内で、吸気口5が形成されている筐体の側面に対して垂直な方向に延びるステッピングモーター10の回転軸を中心軸とする円筒である。各素子は、前記円筒の側面上に、等間隔に相互に隣り合うように並べて配置されている。吸湿ユニット1は、ステッピングモーター10の回転軸を回転軸として、
図7中に矢印で示す方向(反時計回り)に回転可能となっている。吸湿ユニット1の回転は、ステッピングモーター10によって駆動される。
【0049】
図7は、水集積装置102を、前記円筒を吸気口5が形成されている筐体の側面に平行な面で2等分する断面で切断した横断面図である。本実施の形態では、吸湿ユニット1の各素子は、前記円筒の側面上に、近接して並べて配置した場合に、全体として円筒形を形成するように、横断面が円弧状の形状を有している。すなわち、基材3、高分子吸湿材2および加熱ヒーター4は、横断面が円弧状に曲がった板状の形状を有する。このとき、吸湿ユニット1の各素子は、高分子吸湿材2が円弧の外側に、加熱ヒーター4が円弧の内側に配置されるように配置されている。吸湿ユニット1は、ステッピングモーター10によって駆動され、所定の時間間隔、及び所定の回転角で回転するようになっている。
【0050】
図7に示すように、吸湿ユニット1が回転する領域は、水集積装置102の上部に位置する吸湿エリア25と、水集積装置102の下部に位置する放出エリア24とに区分されており、吸湿ユニット1が、所定の時間間隔、及び所定の回転角で一度回転する毎に、前記各素子の1つが吸湿エリア25から放出エリア24に移動し、前記各素子の1つが放出エリア24から吸湿エリア25に移動する。本実施の形態では、水集積装置102の下部に位置する2個の素子が、放出エリア24内にある。放出エリア24では、放出エリア24内に移動した直後の最下部にある素子の加熱ヒーター4のヒーター電極と接触して加熱ヒーター4を通電できる位置に、図示しないヒーター用固定電極が配置されている。これにより、吸湿ユニット1の前記各素子が、ステッピングモーター10で駆動された回転により、放出エリア24に到達すると、各素子の加熱ヒーター4がそれぞれ通電により作動するようになっている。
【0051】
放出エリア24では、さらに、吸湿ユニット1の回転により、前記各素子が水集積装置102の最下部に到達したときに、前記各素子の加熱ヒーター4に近接する位置に超音波振動子11が備えられている。吸湿ユニット1の前記各素子が、吸湿ユニット1の回転により、前記各素子が水集積装置102の最下部に到達すると、超音波振動子11が図示しない制御部によって、所定のタイミングで加熱ヒーター4に接触して、加熱ヒーター4に超音波振動を伝達するようになっている。超音波振動子11は、素子の加熱ヒーター4及び基材3を介して高分子吸湿材2にそれぞれ超音波振動を与える。
【0052】
なお、吸気口5から取り込まれた空気は、空気流通壁23によって、吸湿エリア25のみを流通し、放出エリア24には流通しないようになっている。
【0053】
放出エリア24の下部には、滴下口が設けられており、当該滴下口の下部に排水タンク9に集積した水が排水されるようになっている。
【0054】
次に水集積装置102による水集積方法について、
図6〜9を参照して説明する。まず、水集積装置102が運転されると、水集積装置102内の送風ファン8が動作されて、吸気口5から空気(湿り空気12)が、吸気フィルターを介して、水集積装置102内に取り込まれる。吸湿ユニット1は、ステッピングモーター10によって駆動されて、ステッピングモーター10の回転軸のまわりを所定の時間間隔及び回転角で回転する。
【0055】
水集積装置102に取り込まれた空気(湿り空気12)は、吸湿エリア25を通過するときに、吸湿ユニット1の高分子吸湿材2と接触する。吸湿エリア25では、加熱ヒーター4が作動しないため、室温において親水性である高分子吸湿材2は、空気(湿り空気12)中の水分を吸湿する。これによって、吸湿エリア25を通過する湿り空気は除湿され、除湿された空気(乾燥空気13)が排気口7から排気される。
【0056】
空気(湿り空気12)中の水分を吸湿した吸湿ユニット1の前記各素子は、ステッピングモーター10によって駆動されて、順に吸湿エリア25から放出エリア24内へと移動する。放出エリア24内では、各素子の加熱ヒーター4のヒーター電極がヒーター用固定電極と接触して通電することにより、高分子吸湿材2が加熱ヒーター4により加熱される。さらに、当該素子の加熱ヒーター4に超音波振動が与えられる。
【0057】
加熱ヒーター4により、基材3と、基材3を介して高分子吸湿材2とが加熱されることにより、高分子吸湿材2はLCST以上となり、水との親和性が低下して疎水性となる。その結果、高分子吸湿材2に吸湿された水分は、液体の水として高分子吸湿材2から放出される。
図8は、吸湿ユニット1の回転により水集積装置102の最下部に移動した後、超音波振動子11が加熱ヒーター4に接触する前の素子の様子を示す図である。この段階では、高分子吸湿材2から放出された水は、まだ高分子吸湿材2の表面に取り出されていない。
図9は、吸湿ユニット1の回転により水集積装置102の最下部に移動した後、超音波振動子11が加熱ヒーター4と接触した後の素子の様子を示す図である。超音波振動が基材3を介して高分子吸湿材2に伝わり、これにより、放出された水が高分子吸湿材2の表面に取り出されることにより、集積される。このようにして集積された水は、滴下水14として排水タンク9に排出される。
【0058】
本実施の形態における、水を吸湿させた高分子吸湿材に外部刺激を付与して、水との親和性を低下させるとともに、水との親和性が低下した高分子吸湿材に振動を与えることによる効果、吸湿ユニット1を回転させることによる効果については、実施の形態1と同じである。
【0059】
また、基材3の材料、吸湿ユニット1の回転方法、並びに、振動部の構成は実施の形態1と同じである。高分子吸湿材2に含まれる刺激応答性高分子、刺激付与部、加熱ヒーター4の形状および種類、高分子吸湿材2の形状、並びに、刺激付与部及び振動部の構成については、実施の形態1と同様に変更可能である。
【0060】
なお、上述した例では、吸湿ユニット1は、高分子吸湿材2が円弧の外側に、加熱ヒーター4が円弧の内側に配置されるように構成されているが、これとは逆に、吸湿ユニット1は、高分子吸湿材2が円弧の内側に、加熱ヒーター4が円弧の外側に配置されるように構成されていてもよい。かかる場合は、ヒーター用固定電極は、吸湿ユニット1の外側に配置される。
【0061】
〔実施の形態3〕
以下、本発明のさらなる一実施形態について詳細に説明する。
【0062】
なお、説明の便宜上、前記実施の形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0063】
図10は本発明の実施の形態3に係る水集積装置103の縦断面図を示し、
図11は水集積装置103の横断面図を示す。
【0064】
本実施の形態は、実施の形態1の変形であり、実施の形態1とは、放出エリア24内の構成のみが異なっている。即ち、本実施の形態では、
図10及び
図11に示すように、メイン吸湿ユニット1の回転により、最下部に移動した素子と対向して、水集積素子が備えられている。当該水集積素子は、四角形板状のサブ基材16上にサブ高分子吸湿材15が積層されてなる積層体の、サブ基材16側に、サブ基材16に接するように板状のサブ加熱ヒーター17が設けられた部材である。また、当該水集積素子には、サブ加熱ヒーター17と接触してサブ超音波振動子18が備えられており、サブ超音波振動子18がサブ加熱ヒーター17に超音波振動を伝達することができるようになっている。
【0065】
当該水集積素子は、サブ高分子吸湿材15が、メイン吸湿ユニット1の回転により、最下部に移動した素子のメイン高分子吸湿材2と、所定の間隔を隔てて、互いに平行に対向するように配置されている。当該水集積素子は、図示しない制御部により、サブ加熱ヒーター17の加熱、サブ超音波振動子18による振動、および、サブ高分子吸湿材15とメイン高分子吸湿材2との間隔を変更するための水集積素子の水平方向の前後移動を制御可能となっている。
【0066】
図12は、メイン吸湿ユニット1の回転により、最下部に移動した後、メイン超音波振動子11がメイン加熱ヒーター4に接触する前の素子の様子を示す図である。この段階では、メイン高分子吸湿材2がメイン加熱ヒーター4により加熱されて水を放出しているが、メイン高分子吸湿材2から放出された水は、まだメイン高分子吸湿材2の表面に取り出されていない。一方、水集積素子は、サブ高分子吸湿材15が、メイン高分子吸湿材2と、所定の間隔を隔てて、互いに平行に対向するように配置されており、サブ加熱ヒーター17は加熱されていない状態である。
【0067】
図13は、メイン吸湿ユニット1の回転により水集積装置103の最下部に移動した後、メイン超音波振動子11がメイン加熱ヒーター4と接触した後の素子の様子を示す図である。超音波振動がメイン基材3を介してメイン高分子吸湿材2に伝わり、これにより、放出された水がメイン高分子吸湿材2の表面に取り出される。一方、水集積素子は、サブ高分子吸湿材15が、メイン高分子吸湿材2と、所定の間隔を隔てて、互いに平行に対向するように配置されており、サブ加熱ヒーター17は加熱されていない状態である。
【0068】
この後、
図14に示すように、水集積素子は、図示しない制御部により制御されて、メイン吸湿ユニット1の素子に向かう方向に移動して、サブ高分子吸湿材15が、メイン高分子吸湿材2と接触する。このとき、水集積素子は、サブ加熱ヒーター17が作動していないため、室温において親水性であるサブ高分子吸湿材15に、メイン高分子吸湿材2の表面に取り出された水が移動する。
【0069】
メイン高分子吸湿材2の表面に取り出された水が、水集積素子のサブ高分子吸湿材15に移動した後、水集積素子は、図示しない制御部により制御されて、再び、最下部に移動した素子から離れる方向に移動する。これにより、サブ高分子吸湿材15とメイン高分子吸湿材2との間隔は再び元の間隔に戻る。
【0070】
図12〜
図14に示される過程は、メイン吸湿ユニット1の各素子が、最下部に移動する度に繰り返される。メイン高分子吸湿材2から、水集積素子のサブ高分子吸湿材15への、放出された水の移動が所定回数行われた後、水集積素子は、図示しない制御部により制御されて、再び、最下部に移動した素子から離れる方向に移動する。その後、水集積素子のサブ高分子吸湿材15がサブ加熱ヒーター17により加熱されるとともに、当該水集積素子のサブ加熱ヒーター17にサブ超音波振動子18から振動が与えられる。
【0071】
その結果、
図15に示すように、サブ超音波振動子18とサブ加熱ヒーター17との接触により、超音波振動がサブ基板16を介してサブ高分子吸湿材15に伝わり、これにより、放出された水がサブ高分子吸湿材15の表面に取り出されることにより、集積される。このようにして、集積された水は、滴下水14として、排水タンク9に排出される。
【0072】
本実施の形態によれば、メイン吸湿ユニット1の各素子に吸湿された水を、水集積素子に溜め、水集積素子が水を十分に吸湿した状態で、まとめて水を集積することができる。
【0073】
〔実施の形態4〕
以下、本発明のさらなる一実施形態について詳細に説明する。
【0074】
なお、説明の便宜上、前記実施の形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0075】
図16は本発明の実施の形態4に係る水集積装置104の縦断面図を示し、
図17は水集積装置104の横断面図を示す。
【0076】
本実施の形態は、実施の形態2の変形であり、実施の形態2とは、放出エリア24の構成のみが異なっている。即ち、本実施の形態では、
図16及び
図17に示すように、放出エリア24に、メイン吸湿ユニット1の複数の素子が固定された円筒の側面に接する側面を有する円筒形のサブ吸湿ユニット19が設けられている。サブ吸湿ユニット19は、吸湿ユニット1の回転とともに、回転するようになっている。
【0077】
サブ吸湿ユニット19は、サブ基材16上にサブ高分子吸湿材15が積層されてなる積層体の、サブ基材16側に、サブ基材16に接するようにサブ加熱ヒーター17が設けられた水集積素子が、複数個、円筒の側面上に固定された部材である。
【0078】
また、サブ吸湿ユニット19が回転したときに、円筒の最下部に移動する前記各水集積素子のサブ加熱ヒーター17のヒーター電極と接触してサブ加熱ヒーター17を通電できる位置に、図示しないヒーター用固定電極が配置されている。さらに、サブ吸湿ユニット19の回転により、前記各水集積素子が円筒の最下部に到達したときに、前記各水集積素子のサブ加熱ヒーター17に近接する位置にサブ超音波振動子18が備えられている。サブ吸湿ユニット19の前記各水集積素子が、円筒の最下部に到達すると、サブ超音波振動子18が図示しない制御部によって、所定のタイミングでサブ加熱ヒーター17に接触して、サブ加熱ヒーター17に超音波振動を伝達するようになっている。サブ超音波振動子18は、水集積素子のサブ加熱ヒーター17及びサブ基材16を介してサブ高分子吸湿材15にそれぞれ超音波振動を与える。
【0079】
なお、本実施の形態では、水集積装置104の下部に位置する3個の素子が、放出エリア24内にある。放出エリア24では、放出エリア24内に移動した直後の素子のメイン加熱ヒーター4のヒーター電極と接触してメイン加熱ヒーター4を通電できる位置に、図示しないヒーター用固定電極が配置されている。放出エリア24内に移動した直後の素子のメイン加熱ヒーター4に近接する位置には、さらにメイン超音波振動子11が備えられている。これにより、メイン吸湿ユニット1の前記各素子が、ステッピングモーター10で駆動された回転により、放出エリア24に到達すると、各素子のメイン加熱ヒーター4がそれぞれ通電により作動するようになっている。また、このメイン加熱ヒーター4が作動可能となっている素子においては、メイン超音波振動子11が図示しない制御部によって、所定のタイミングでメイン加熱ヒーター4に接触して、メイン加熱ヒーター4に超音波振動を伝達するようになっている。メイン超音波振動子11は、素子のメイン加熱ヒーター4及びメイン基材3を介してメイン高分子吸湿材2にそれぞれ超音波振動を与える。
【0080】
図18は、メイン吸湿ユニット1の回転により、放出エリア24内に移動した後、メイン超音波振動子11がメイン加熱ヒーター4に接触する前の素子の様子を示す図である。この段階では、メイン高分子吸湿材2がメイン加熱ヒーター4により加熱されて水を放出しているが、メイン高分子吸湿材2から放出された水は、まだメイン高分子吸湿材2の表面に取り出されていない。
図19は、メイン超音波振動子11がメイン加熱ヒーター4に接触した後の素子の様子を示す図である。これにより、放出された水がメイン高分子吸湿材2の表面に取り出される。そして、メイン吸湿ユニット1の回転により、放出された水がメイン高分子吸湿材2の表面に取り出された素子が、水集積装置104の最下部に移動する。このとき、当該素子と接する、サブ吸湿ユニット19の水集積素子は、サブ加熱ヒーター17が通電していない状態であるため、室温において親水性であるサブ高分子吸湿材15に、メイン高分子吸湿材2の表面に取り出された水が移動する。
【0081】
このようにして、メイン吸湿ユニット1の回転により、メイン吸湿ユニット1を形成する円筒の最下部に移動する前記素子から、サブ吸湿ユニット19の水集積素子に、メイン吸湿ユニット1の各素子で取り出された水が、順次移動する。これにより、メイン吸湿ユニット1の各素子による空気中の水の吸湿、放出、および、サブ吸湿ユニット19の水集積素子への水集積が連続的に繰り返される。
【0082】
その後、
図20に示すように、サブ吸湿ユニット19の水集積素子に溜められた水は、適当なタイミングでサブ吸湿ユニット19の最下部に備えられたヒーター用固定電極とサブ加熱ヒーター17と接触させてサブ加熱ヒーター17を作動させるとともに、サブ加熱ヒーター17とサブ超音波振動子18を接触させるように制御することにより、効率的に集積することができる。
【0083】
〔実施の形態5〕
以下、本発明のさらなる一実施形態について詳細に説明する。
【0084】
なお、説明の便宜上、前記実施の形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0085】
図21は本発明の実施の形態5に係る水集積装置105の縦断面図を示し、
図22は水集積装置105の横断面図を示す。
【0086】
本実施の形態は、実施の形態2の変形であり、実施の形態2とは、放出エリア24の構成のみが異なっている。即ち、本実施の形態では、
図21及び
図22に示すように、放出エリア24に、メイン吸湿ユニット1の複数の素子が固定された円筒の側面に接する側面を有する円筒形の吸着ローラー20が設けられている。吸着ローラー20は、円筒形の回転体上に吸着材21を固定した部材であり、吸湿ユニット1の回転とともに、回転するようになっている。
【0087】
吸着材21は、吸水性を有するスポンジ等の材料からなる。吸着ローラー20の下部には、吸着ローラー20の円筒形の側面に接する側面を有する円筒形の圧縮ローラー22が設けられている。圧縮ローラー22は、圧縮ローラーモーター28により駆動されて、吸着ローラー20の回転とともに、回転するようになっている。
【0088】
図24は、吸湿ユニット1の回転により水集積装置105の最下部に移動した後、超音波振動子11が加熱ヒーター4に接触した後の素子の様子を示す図である。当該素子は、高分子吸湿材2が加熱ヒーター4により加熱され、さらに、この円筒の最下部において、加熱ヒーター4に超音波振動が与えられる。これにより、吸湿ユニット1を形成する円筒の最下部に存在する素子では、高分子吸湿材2から放出された水が、高分子吸湿材2の表面に取り出される。
【0089】
このとき、当該素子と接する、吸着ローラー20の吸着材21の吸水性により、高分子吸湿材2の表面に取り出された水が、吸着材21に吸水される。
【0090】
このようにして、吸湿ユニット1の回転により、吸湿ユニット1を形成する円筒の最下部に移動する各素子から、吸着ローラー20の吸着材21に、当該素子から取り出された水が、順次移動する。これにより、吸湿ユニット1の各素子による空気中の水の吸湿、放出、および、吸着ローラー20の吸着材21への水集積が連続的に繰り返される。
【0091】
その後、
図23に示されるように、吸着ローラー20の吸着材21に溜められた水は、適当なタイミングで、圧縮ローラー22により、吸着材21を加圧することにより、効率的に集積することができる。
【0092】
〔高分子吸湿材の詳細〕
以下に、上述した各実施形態で用いられる、刺激応答性高分子を含む高分子吸湿材の詳細について説明する。なお、本明細書においては、「アクリル」または「メタアクリル」のいずれをも意味する場合「(メタ)アクリル」と表記する。
【0093】
上述した各実施形態では、刺激応答性高分子の乾燥体を含む高分子吸湿材を用いる。特に、刺激応答性高分子が架橋体である場合は、高分子が架橋されて形成された3次元の網目構造が、水、有機溶媒等の溶媒を吸収して膨潤した高分子ゲルを形成することが多い。かかる場合、上述した各実施形態では、高分子ゲルの乾燥体を用いる。ここで、高分子ゲルの乾燥体とは、高分子ゲルを乾燥することによって溶媒を除去したものをいう。なお、本発明において、高分子ゲルの乾燥体は、高分子ゲルから溶媒が完全に除去されている必要はなく、空気中の水分を吸収することができれば、溶媒または水を含んでいてもよい。したがって、前記高分子ゲルの乾燥体の含水率は、該乾燥体が空気中の水分を吸収することができれば、特に限定されるものではないが、例えば、40重量%以下であることがより好ましい。なお、ここで含水率とは、高分子ゲルの乾燥重量に対する水分の割合をいう。
【0094】
刺激応答性高分子とは、外部刺激に応答して、その性質を可逆的に変化させる高分子をいう。本発明においては、外部刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子を用いる。
【0095】
前記外部刺激としては、特に限定されるものではないが、例えば、熱、光、電場、pH等を挙げることができる。
【0096】
また、外部刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化するとは、外部刺激に晒された高分子が、外部刺激に応答して、その親水性と疎水性との間で可逆的に変化することをいう。
【0097】
中でも、熱に応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子、すなわち、温度応答性高分子は、簡易な加熱装置を用いて温度を変化させることにより、空気中の水分(水蒸気)の吸湿と、吸湿した水分の放出とを可逆的に行えることから、調湿機に特に好適に用いることができる。
【0098】
前記温度応答性高分子としては、より具体的には、例えば、ポリ(N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N−ノルマルプロピル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N−メチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N−エチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N−ノルマルブチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N−イソブチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド)等のポリ(N−アルキル(メタ)アクリルアミド);ポリ(N−ビニルイソプロピルアミド)、ポリ(N−ビニルノルマルプロピルアミド)、ポリ(N−ビニルノルマルブチルアミド)、ポリ(N−ビニルイソブチルアミド)、ポリ(N−ビニル−t−ブチルアミド)等のポリ(N−ビニルアルキルアミド);ポリ(N−ビニルピロリドン);ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリ(2−イソプロピル−2−オキサゾリン)、ポリ(2−ノルマルプロピル−2−オキサゾリン)等のポリ(2−アルキル−2−オキサゾリン);ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル等のポリビニルアルキルエーテル;ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドの共重合体;ポリ(オキシエチレンビニルエーテル);メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体等、およびこれらの高分子の共重合体を挙げることができる。
【0099】
また、温度応答性高分子は、これらの高分子の架橋体であってもよい。温度応答性高分子が架橋体である場合、かかる架橋体としては、例えば、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ノルマルプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ノルマルブチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド;N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニルノルマルプロピルアミド、N−ビニルノルマルブチルアミド、N−ビニルイソブチルアミド、N−ビニル−t−ブチルアミド等のN−ビニルアルキルアミド;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルアルキルエーテル;エチレンオキサイドとプロピレンオキサイド;2−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロピル−2−オキサゾリン、2−ノルマルプロピル−2−オキサゾリン等の2−アルキル−2−オキサゾリン等のモノマーまたはこれらのモノマーの2種類以上を、架橋剤の存在下で重合して得られる高分子を挙げることができる。
【0100】
前記架橋剤としては、従来公知のものを適宜選択して用いればよいが、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリレンジイソシアネート、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の重合性官能基を有する架橋性モノマー;グルタールアルデヒド;多価アルコール;多価アミン;多価カルボン酸;カルシウムイオン、亜鉛イオン等の金属イオン等を好適に用いることができる。これらの架橋剤は単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
また、光に応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子としては、アゾベンゼン誘導体、スピロピラン誘導体等の、光により親水性または極性が変化する高分子、それらと温度応答性高分子およびpH応答性高分子の少なくともいずれかとの共重合体、前記光応答性高分子の架橋体、または、前記共重合体の架橋体を挙げることができる。
【0102】
また、電場に応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基等の解離基を有する高分子、カルボキシル基含有高分子とアミノ基含有高分子との複合体のような静電相互作用や水素結合などによって複合体を形成した高分子、または、これらの架橋体を挙げることができる。
【0103】
また、pHに応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基等の解離基を有する高分子、カルボキシル基含有高分子とアミノ基含有高分子との複合体のような静電相互作用や水素結合などによって複合体を形成した高分子、または、これらの架橋体を挙げることができる。
【0104】
また、刺激応答性高分子は、上述した刺激応答性高分子の誘導体であってもよいし、他のモノマーとの共重合体であってもよい。なお、他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、どのようなモノマーであってもよい。例えば、(メタ)アクリル酸、アリルアミン、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、マレイン酸、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、アクリルアミドアルキルスルホン酸、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等のモノマーを好適に用いることができる。
【0105】
或いは、刺激応答性高分子は、他の架橋された高分子又は架橋されていない高分子と、相互浸入高分子網目構造またはセミ相互浸入高分子網目構造を形成してなる高分子であってもよい。
【0106】
前記刺激応答性高分子の分子量も特に限定されるものではないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により決定された数平均分子量が3000以上であることが好ましい。
【0107】
前記刺激応答性高分子の製造方法も特に限定されるものではなく、従来公知の方法を適宜選択して用いることができる。また、多孔質の前記刺激応答性高分子の製造方法も特に限定されるものではないが、例えば、凍結乾燥、真空乾燥等により、前記刺激応答性高分子を、乾燥させることにより、製造することができる。
【0108】
なお、高分子の乾燥体に、空気中の水分(水蒸気)が吸着され、且つ、吸収されることを、学術的には収着と称する。しかし、本発明においては、該乾燥体の内部に吸収された水分を、外部刺激を与えることにより放出することを主眼としているため、該乾燥体の内部に空気中の水分が吸収される現象を「吸湿」と称し、外部刺激を与えることにより液体の水を水滴として放出する現象を、「水(水分)の放出」と称する。
【0109】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る水集積装置は、外部刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子を含む高分子吸湿材と、前記高分子吸湿材の水との親和性を低下させるための外部刺激を付与する刺激付与部と、水との親和性が低下した高分子吸湿材に振動を与えて、高分子吸湿材から放出された水を集積するための振動部とを備えている。
【0110】
前記の構成によれば、高分子吸湿材から放出された水を効率的に集積することができるという効果を奏する。
【0111】
本発明の態様2に係る水集積装置は、前記態様1において、前記振動部が、前記高分子吸湿材に超音波振動を与える超音波振動部であってもよい。
【0112】
前記の構成によれば、高分子吸湿材から放出された水を、水と高分子吸湿材とのわずかな固有振動数の違いにより、動きやすい水として効率的に集積することができるという効果を奏する。
【0113】
本発明の態様3に係る水集積装置は、前記態様1または2において、前記刺激応答性高分子が、多孔質であってもよい。
【0114】
前記の構成によれば、より多くの水を高速で吸湿させることができるとともに、高分子吸湿材から放出された水を効率的に集積することができるという効果を奏する。
【0115】
本発明の態様4に係る水集積装置は、前記態様1〜3のいずれかにおいて、前記外部刺激は熱、光、電場、またはpHであってもよい。
【0116】
前記の構成によれば、熱、光、電場、または水素イオン指数の変化を付与することにより、吸湿材の水に対する親和性を変化させて吸湿材に吸湿された水分を放出させることができる。
【0117】
本発明の態様5に係る水集積方法は、外部刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子を含む高分子吸湿材であって、空気中の水を吸湿させた高分子吸湿材に、外部刺激を付与して、水との親和性を低下させる工程と、水との親和性が低下した高分子吸湿材に振動を与えて、高分子吸湿材から放出された水を集積する工程とを含む。
【0118】
前記の構成によれば、高分子吸湿材から放出された水を効率的に集積することができるという効果を奏する。
【0119】
また、本発明に係る調湿装置は、前記水集積装置を備えている。
【0120】
前記の構成によれば、過冷却や大きな熱量を用いずに効率よく調湿することができるという効果を奏する。