(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の一実施形態について説明する。
図1は本発明に基づく各実施の形態において、刺激応答性高分子を含有する高分子吸湿材を用いた場合の、空気中の水、即ち水蒸気を吸湿および放出する様子を示す概念図である。
図2は本発明の実施の形態1に係る除湿装置101を側方から見た縦断面図を示す。
図3は、
図2中のA−A線で切断し矢印方向から見た断面図を示す。
【0017】
除湿装置101は、直方体形状の筐体を備え、この筐体には、上部の一側面に形成された吸気口5と、上部の当該側面に対向する側面に形成された排気口7と、排気口7側の下部に形成され、排水タンク9を収容するタンク収容部とが備えられている。吸気口5の、除湿装置101の内部側には吸気フィルター6が備えられている。
【0018】
除湿装置101の、吸気口5と排気口7との間には、空気流通壁23が設けられている。吸気口5から取り込まれた空気は、
図1中の矢印で示されるように、空気流通壁23によって限られた空間を流通する。空気流通路には、空気の入り口側から順に、吸気口5、吸気フィルター6、送風ファン8、吸湿ユニット1、及び排気口7が設けられている。
【0019】
吸湿ユニット1は、刺激応答性高分子を含有する高分子吸湿材2と平板状の加熱ヒーター4が、基板3上に積層して形成された素子の集合体である。各素子は、四角形板状の基材3の一面上に刺激応答性高分子を含有する高分子吸湿材2が積層され、基材3の他面側に基材3に接するように板状の加熱ヒーター4が設けられてなる。このような素子が、円盤状の台座の上に複数個、放射状に固定された状態で、回転可能に支持されている。
【0020】
図3は、除湿装置101を、高分子吸湿材2の表面が見える位置で切断した断面図である。
図2および
図3に示すように、吸湿ユニット1は、除湿装置101の筐体の、吸気口5が形成されている側面及び排気口7が形成されている側面と平行な面上にあり、各素子が、吸気口5側から排気口7側に向かって、順に、高分子吸湿材2、基材3、加熱ヒーター4となるように配置されている。
【0021】
吸湿ユニット1を構成する各素子は、ステッピングモーター10の回転軸を中心とする円の円周上に、放射状に、等間隔で配置されており、当該回転軸のまわりを、
図3中に矢印で示す方向(反時計回り)に回転可能となっている。吸湿ユニット1は、図示しない制御部によって制御されるステッピングモーター10によって駆動され回転するようになっている。なお、回転に掛ける時間または回転速度は、高分子吸湿材の吸湿特性および排水特性によって適切に決定される。吸湿ユニット1の回転は、所定の時間ごとに各素子単位で吸湿エリア25から放出エリア24へ送り出す制御であってもよく、連続して緩やかに回転し放出エリア24へ送り出す制御であってもよい。
【0022】
本実施の形態では、高分子吸湿材2として、熱に応答して水との親和性が可逆的に変化する温度応答性高分子を用いる。かかる温度応答性高分子は、下限臨界溶液温度(LCST(Lower Critical Solution Temperature)、以下、本明細書において「LCST」と称することがある。)を持つ高分子である。LCSTを持つ高分子は低温では親水性であるが、LCST以上になると疎水性となる。なお、ここで、LCSTとは、高分子を水に溶解したときに、低温では親水性で水に溶解するが、ある温度以上になると疎水性となって不溶化する場合の、その境となる温度をいう。
【0023】
高分子吸湿材2は多孔質であることがより好ましいが、必ずしも多孔質でなくてもよい。また、高分子吸湿材2は、刺激応答性高分子を含有する高分子吸湿材または刺激応答性高分子で形成される。なお、高分子吸湿材2の具体例については、後述する。
【0024】
図3に示すように、吸湿ユニット1が回転する領域は、除湿装置101の上部に位置する吸湿エリア25と、除湿装置101の下部に位置する放出エリア24とに区分されており、吸湿ユニット1が、所定の時間で一度回転する毎に、前記各素子の1つが吸湿エリア25から放出エリア24に移動し、前記各素子の1つが放出エリア24から吸湿エリア25に移動する。本実施の形態では、除湿装置101の下部に位置する3個の素子が、放出エリア24内にある。放出エリア24では、放出エリア24内に移動した直後の素子および最下部にある素子の加熱ヒーター4のヒーター電極と接触して通電できる位置に、図示しないヒーター用固定電極がそれぞれ配置されている。
【0025】
これにより、吸湿ユニット1の前記各素子が、ステッピングモーター10で駆動回転されることにより、ヒーター用固定電極が配置されているこれらの位置に到達すると、これらの各素子の加熱ヒーター4がそれぞれ通電により作動するようになっている。本実施形態では、放出エリア24内から吸湿エリア25に移動する直前の素子の加熱ヒーター4は作動しないように構成されているので、加熱された高分子吸湿材2が自然冷却される。
【0026】
放出エリア24では、さらに、前記各素子から滲み出る水滴を転写するための転写部15が備えられている。吸湿ユニット1の高分子吸湿材2に滲み出てきた水滴を、図示しない制御部によって転写部15が接触させられて転写する。
【0027】
転写部15は吸湿ユニット1の回転方向に移動可能に支持されている。転写部15が接触している前記各素子が、放出エリア24から吸湿エリア25に移動する直前に接触状態を解除するように制御される。この時に、転写部15の表面には高分子吸湿材2が吐き出した水滴が転写される。本実施形態では、吸湿ユニット1の各素子の表面に水が滲出した後に、転写部15を接触させるように構成しているが、前記各素子が放出エリア24に移動した時点ですぐに転写部15が接触するように構成してもよい。
【0028】
本実施形態では転写部15は、吸水性を有さない材質で板状に形成されており、表面に転写した水滴が重力によって落下する。転写部15の形状は、各素子の形状に合わせて無駄なく滲み出た水滴を転写できるようにしておくのが好ましいが、これに限定されない。
【0029】
なお、吸気口5から取り込まれた空気は、空気流通壁23によって、吸湿エリア25のみを流通し、放出エリア24には流通しないようになっている。放出エリア24の下部には、滴下口が設けられており、当該滴下口の下部に設けた排水タンク9に集積されて排水されるようになっている。
【0030】
次に除湿装置101による除湿方法について、
図1〜7を参照して説明する。まず、除湿装置101が運転されると、除湿装置101内の送風ファン8が作動されて、吸気口5から空気(湿り空気12)が、吸気フィルター6を介して、除湿装置101内に取り込まれる。吸湿ユニット1は、ステッピングモーター10によって駆動されて、ステッピングモーター10の回転軸のまわりを所定の時間または回転速度で駆動されて回転する。回転は、所定の時間ごとに各素子単位で吸湿エリア25から放出エリア24へ送り出す制御であってもよく、連続して緩やかに回転し放出エリア24へ送り出す制御であってもよい。
【0031】
除湿装置101に取り込まれた空気(湿り空気12)は、吸湿エリア25を通過するときに、吸湿ユニット1の高分子吸湿材2と接触する。吸湿エリア25では、加熱ヒーター4が作動しないため、室温において親水性である高分子吸湿材2は、空気(湿り空気12)中の水分を吸湿する。これによって、吸湿エリア25を通過する湿り空気12は除湿され、除湿された空気(乾燥空気13)が排気口7から排気される。
【0032】
空気(湿り空気12)中の水分を吸湿した吸湿ユニット1の前記各素子は、ステッピングモーター10によって駆動されて、順に吸湿エリア25から放出エリア24内へと移動する。放出エリア24内では、前記各素子の加熱ヒーター4のヒーター電極がヒーター用固定電極と接触して通電することにより、各高分子吸湿材2が加熱ヒーター4により加熱される。さらに、所定のタイミングで、転写部15が前記各素子の高分子吸湿材2に接触させられる。
【0033】
加熱ヒーター4により、基材3と、基材3を介して高分子吸湿材2とが加熱されることにより、高分子吸湿材2はLCST以上となり、水との親和性が低下して疎水性となる。その結果、高分子吸湿材2に吸湿された水分は、液体の水として高分子吸湿材2から放出される。ここで、高分子吸湿材2のバルク部分26から放出された水は、高分子吸湿材2内部の孔部分27に留まるか又はわずかに滲み出る。このように、高分子吸湿材2から放出された微量の水を取り出すことは難しい。
【0034】
本発明では、転写部15を用いて、放出された微量の水を取り出す。
図4は、吸湿ユニット1の回転により吸湿した素子が放出エリア24に移動した後、転写部15が吸湿ユニット1の表面に接触する前の様子を示す図である。この段階では、高分子吸湿材2から放出された水は、まだ高分子吸湿材2の表面に取り出されていない。
図5は、素子の温度がLCST以上となって高分子吸湿材2の表面に水滴となって滲み出てきた様子を表す。
【0035】
図6は、吸湿ユニット1に転写部15が接触した様子を示す図である。
図7は、所定時間後に転写部15が吸湿ユニット1から離された状態を表す。高分子吸湿材2から滲み出た水滴が転写部15の表面に移動し、転写部15の表面を流れ落ちた水は、滴下水14として排水タンク9に排出される。
【0036】
特に、高分子吸湿材2が多孔質である場合には、より多くの水を高速で吸湿させることができるが、吸湿させた水を回収することが非常に困難である。
図1は、多孔質の高分子吸湿材2を用いた場合の、空気中の水(水蒸気)の吸湿および放出の様子を模式的に示す図である。多孔質の高分子吸湿材では、高分子吸湿材のバルク部分26の間に多数の孔部分27が形成されている。
【0037】
図1のAは、高分子吸湿材が親水性である状態を示す図である。かかる状態では、空気中の水は高分子吸湿材に吸湿されて、図中ドットで示すように高分子吸湿材のバルク部分26内に存在する。水を吸湿させた高分子吸湿材が外部刺激に応答して水との親和性が低下して疎水性になると、
図1のBに示すように水を放出し、放出された水は、高分子吸湿材のバルク部分26から滲み出て、孔部分27の中にとどまる。さらに外部刺激を加えて、
図1のCに示すように、孔部分27の中にとどまっている水を高分子吸湿材の外部に取り出すことができる。本発明では、多孔質の高分子吸湿材表面に転写部を接触させることにより、高分子吸湿材表面に滲出した水を素早く除去するとともに、バルク部分や孔部分にとどまっている水が放出されやすくする。
【0038】
さらに、高分子吸湿材2として、そのLCSTが、室温を超える程度の温度、例えば40℃以上の比較的低温の温度、例えば40℃〜100℃、より好ましくは40℃〜70℃の応答性高分子を用いる。このような構成とすることで、調湿装置に用いた時に、従来の調湿装置のように、過冷却や大きな熱量を用いずに、高分子吸湿材がLCST以上となるように加熱するだけで吸収した水分を液体状態で直接取り出すことができる。
【0039】
本実施の形態では、高分子吸湿材2を含む複数の素子が放射状に配置されて、回転する仕組みとなっているので、吸湿エリア25内にある複数の素子を吸湿に用いつつ、放出エリア24内にある残りの複数の素子において刺激を与えて水を取り出すことができる。すなわち、吸湿と放出とを並行して行なうことができる。
【0040】
基材3は、加熱ヒーター4の熱を、当該基材3を介して高分子吸湿材2に伝えることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属をより好適に用いることができる。また、基材3の材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリカーボネート(PC)、ポリオレフィン、ポリアクリレート等の樹脂、シリカ、セラミック等であってもよい。
【0041】
基材3の材料として、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等を用いる場合は、基材3の表面に、カーボンブラック、酸化鉄粒子等の光熱変換材、または、酸化鉄系セラミック粒子、マグネタイトナノ粒子等の磁気熱変換材を塗布したものであることがより好ましい。これにより、光照射や変動磁場等の投入によって、基材3を加熱することができ、よって、高分子吸湿材2を加熱することができる。
【0042】
基材3への高分子吸湿材2の積層方法も特に限定されるものではないが、例えば、バインダー、シランカップリング剤等により積層する方法を用いることができる。
【0043】
また、上述した例では、板状の基材3の片面上に高分子吸湿材2が積層され、基材3の他面側に、基材3に接するように板状の加熱ヒーター4が設けられているが、加熱ヒーター4は、基材3の片面上に高分子吸湿材2が積層されている、高分子吸湿材2側に設けられていてもよい。この場合は、輻射熱で高分子吸湿材2が加熱され、基材3での熱損失が削減される。
【0044】
上述した例では、除湿装置101は、筐体、吸気口5、吸気フィルター6、送風ファン8、排気口7、及び排水タンク9を備えている。かかる除湿装置101は、それ自体で調湿装置としても利用することができる。しかし、除湿装置101は、これらを除いた除湿部のみで構成されていてもよい。すなわち、除湿装置101は、吸湿ユニット1と、ステッピングモーター10と、転写部15とを少なくとも備えた装置であってもよい。かかる場合は、除湿装置101は、部品として、調湿装置に組み込むことができる。
【0045】
上述した例では、高分子吸湿材2に効率的に熱刺激を付与するために、板状の加熱ヒーター4を用いているが、加熱ヒーター4の形状は板状に限定されるものではなく、高分子吸湿材2に沿って配置することができるものであればよい。また、高分子吸湿材2に熱による刺激を与えることができれば、加熱ヒーター4以外の加熱装置を用いてもよい。かかる加熱装置としては、例えば、ハロゲンランプ、赤外線ランプ、キセノンランプ等を挙げることができる。
【0046】
また、上述した例では、高分子吸湿材2として、板状または層状の高分子吸湿材を用いているが、高分子吸湿材2の形状も、これに限定されるものではなく、例えば粒子状であってもよい。このような場合には、各粒子が加熱できるように網状伝熱構造や温風による加熱構造を備えることが好ましい。
【0047】
また、上述した例では、吸湿ユニット1は、12個の前記素子を備えているが、前記素子の数はこれに限定されるものではない。また、上述した例では、放出エリア24に3個の素子が存在し、吸湿エリア25に9個の素子が存在しているが、その割合もこれに限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0048】
また、上述した例では、吸湿ユニット1は、ステッピングモーター10によって駆動され、所定の時間で回転するようになっているが、ユーザーからの指示に応じて回転するようにしてもよく、吸湿エリア25内の空気流通路に吸湿量を検知するセンサーを設け、当該吸湿量が所定値以上になったときに回転するようにしてもよい。
【0049】
また、ヒーター用固定電極は、放出エリア24内に存在する素子の一部又は放出エリア24内に存在する単一の素子の加熱ヒーター4と接触する位置に配置されていてもよい。例えば、ヒーター用固定電極は、吸湿ユニット1素子が最下部に到達したときに、当該素子の加熱ヒーター4と接触する位置に配置されていてもよい。或いは、放出エリア24内に存在する素子の一部の加熱ヒーター4と接触する位置にヒーター用固定電極が配置されていてもよい。
【0050】
また、上述した例では、高分子吸湿材2としては、LCSTを持つ温度応答性高分子を含有する高分子吸湿材を用いているが、温度応答性高分子であればLCST型ではない温度応答性高分子を含む高分子吸湿材であってもよい。また、他の刺激に応答する刺激応答性高分子を含有する高分子吸湿材を用いることもできる。他の刺激に応答する刺激応答性高分子を含有する高分子吸湿材を用いる場合は、加熱ヒーター4の代わりに、刺激付与部として、赤外線、紫外線、可視光等の光、電場、磁場等、対応する刺激を与える装置を用いればよい。
【0051】
また、吸湿ユニット1に含まれる前記素子の形状、前記各素子間の間隔、空気流通壁23の形状、排水タンク9の位置、筐体の形状等は、
図2及び
図3に示されるものに限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0052】
〔実施の形態2〕
以下、本発明の他の一実施形態について詳細に説明する。本実施形態は、実施の形態1で説明した除湿装置101の転写部15に転写した水滴をより確実に滴下させるために、水滴除去部16を追加したものである。この概念を
図8に示す。その他の部分は実施の形態1で説明した除湿装置101と同じであり、同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0053】
水滴除去部16は、放出エリア24内部に設けられ、表示しない制御部によって制御される。吸湿ユニット1に設けた高分子吸湿材2から滲出した水滴は転写部15によって転写されるが、水滴が十分大きくないと重力だけで滴下できない。このような場合に、水滴除去部16が効果を発揮する。水滴除去部16は、板状の部材で形成され、吸湿ユニット1と転写部15との間に位置し、
図8の上から下へ転写部15の表面に接触するように移動して水滴を除去する。水滴除去部16を移動させる機構は、リンク、レバーやカムなど公知の方法を用いることが出来る。
【0054】
なお、本実施形態において水滴除去部16を板状の部材としたが、形状は特に限定しない。棒状であっても良くローラー状であってもよい。材質は特に限定しないが、弾性を有する樹脂やゴムが好ましい。
【0055】
〔実施の形態3〕
以下、本発明の他の一実施形態について詳細に説明する。本実施形態は、実施の形態2で説明した除湿装置101の水滴除去部16に空気力を用いる非接触型としたものである。この概念を
図9に示す。その他の部分は実施の形態1で説明した除湿装置101と同じであり、同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0056】
本実施形態の水滴除去部16は、放出エリア24内部に設けられ、表示しないエアポンプで送風して開口部から空気を噴出する。エアポンプは表示していない制御部によって制御される。水滴除去部16は、吸湿ユニット1と転写部15との中間の位置で転写部15の移動を妨げない位置に設けられる。なお、水滴除去部16は固定式である必要はなく、転写部15の表面に沿って移動可能な構成としてもよい。水滴除去部16を移動させる機構は、リンク、レバーやカムなど公知の方法を用いることが出来る。
【0057】
吸湿ユニット1に設けた高分子吸湿材2から滲出した水滴は転写部15に転写され、水滴除去部16が噴出する空気によって下方に移動もしくは吹き飛ばされる。水滴除去部16は、先端を封止した管状の部材で形成され、空気を噴出させる開口を管側面に有する。
【0058】
このような構成とすることで、水滴除去部16が転写部15の表面に接触することなく水滴を除去できる。また、水滴除去部16は空気を吹き出す噴射式だけでなく、空気を吸い込む真空式であってもよい。真空式である場合は、転写部15の表面に沿って移動するのが好ましい。吸い込んだ水は別途配管で排水タンクに排水される。なお、水滴除去部16が固定式であれば、移動によって吸湿ユニット1の高分子吸湿材2を損傷することも抑制できる。
【0059】
実施の形態1〜実施の形態3において転写部15は単に平板であってもよいが、水滴の滴下を促進するように溝や文様を表面に設けてもよい。
図10にそのような文様を例示する。文様15bは、転写部15の表面15aに線刻による溝もしくは極わずかに突出するリブであってもよい。
【0060】
〔実施の形態4〕
以下、本発明のさらなる一実施形態について詳細に説明する。本実施形態では、実施の形態1〜3と異なって、吸湿ユニット1および転写部15が各々円筒形状に構成されている。
【0061】
なお、説明の便宜上、前記実施の形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0062】
図11は本発明の実施の形態4に係る除湿装置102の縦断面図を示し、
図12は
図11中のB−B線で切断した除湿装置102の断面図を示す。
【0063】
本実施の形態では、送風ファン8が排気口側に配置されている。よって、空気流通路には、空気の入り口側から順に、吸気口5、吸気フィルター6、吸湿ユニット1、送風ファン8、及び排気口7が設けられている。
【0064】
また、吸湿ユニット1は、
図11及び
図12に示すように、基材3の第1面上に高分子吸湿材2が積層され、基材3の第2面に接するように加熱ヒーター4が設けられた積層構造の素子が、複数個、円筒の側面上に、固定された部材である。前記円筒は、除湿装置102内で、吸気口5が形成されている筐体の側面に対して垂直な方向に延びるステッピングモーター10の回転軸を中心軸とする円筒である。各素子は、前記円筒の側面上に、等間隔に相互に隣り合うように並べて配置されている。
【0065】
吸湿ユニット1は、ステッピングモーター10の回転軸を回転軸として、
図12中に矢印で示す方向(反時計回り)に回転可能となっている。吸湿ユニット1の回転は、ステッピングモーター10によって所定の時間で回転するように駆動される。吸湿ユニット1は、所定時間ごとに各素子単位で吸湿エリア25から放出エリア24へ回転移動するように制御してもよく、緩やかに連続回転して吸湿エリア25から放出エリア24へ回転移動するように制御してもよい。所定の時間は高分子吸湿材の吸放湿特性によって異なるため適切に決定される。
【0066】
本実施の形態では、吸湿ユニット1の各素子は、前記円筒の側面上に、近接して並べて配置した場合に、全体として円筒形を形成するように、横断面が円弧状の形状を有している。すなわち、基材3、高分子吸湿材2および加熱ヒーター4は、横断面が円弧状に曲がった板状の形状を有する。このとき、吸湿ユニット1の各素子は、高分子吸湿材2が円弧の外側に、加熱ヒーター4が円弧の内側に配置されるように配置されている。
【0067】
図12に示すように、吸湿ユニット1が回転する領域は、除湿装置102の上部に位置する吸湿エリア25と、除湿装置102の下部に位置する放出エリア24とに区分されており、吸湿ユニット1が、所定の時間で一度回転する毎に、前記各素子の1つが吸湿エリア25から放出エリア24に移動し、前記各素子の1つが放出エリア24から吸湿エリア25に移動する。本実施の形態では、除湿装置102の下部に位置する3個の素子が、放出エリア24内にある。
【0068】
放出エリア24では、放出エリア24内にある素子の加熱ヒーター4のヒーター電極と接触して加熱ヒーター4を通電できる位置に、図示しないヒーター用固定電極が配置されている。これにより、吸湿ユニット1の前記各素子が、放出エリア24に到達すると、各素子の加熱ヒーター4がそれぞれ通電により作動するようになっている。
【0069】
放出エリア24では、さらに、吸湿ユニット1と接するように転写部15が吸湿ユニット1の下部に設けられる。転写部15は実施の形態1で採用した転写部を円筒形に形成した部材である。転写部15は、高分子吸湿材2の表面と転写部15の表面とが接触する状態で設置されて、吸湿ユニット1の回転により回転伝達される。
【0070】
放出エリア24に吸湿ユニット1の前記各素子が回転によって移動したときに、加熱ヒーター4によって高分子吸湿材2がLCST以上に加熱される。これにより高分子吸湿材2から水滴が滲出して、転写部15に水滴が転写されるようになっている。
【0071】
なお、吸気口5から取り込まれた空気は、空気流通壁23によって、吸湿エリア25のみを流通し、放出エリア24には流通しないようになっている。
【0072】
放出エリア24の下部には、滴下口が設けられており、当該滴下口の下部に排水タンク9が設置されている。排水タンク9は排気の方向に引き出すことが出来、集積した水が排水されるようになっている。
【0073】
次に除湿装置102による除湿方法について、
図11〜15を参照して説明する。まず、除湿装置102が運転されると、除湿装置102内の送風ファン8が動作されて、吸気口5から空気(湿り空気12)が、吸気フィルターを介して、除湿装置102内に取り込まれる。吸湿ユニット1は、ステッピングモーター10によって駆動されて、ステッピングモーター10の回転軸のまわりを所定の回転速度で回転する。
【0074】
除湿装置102に取り込まれた空気(湿り空気12)は、吸湿エリア25を通過するときに、吸湿ユニット1の高分子吸湿材2と接触する。吸湿エリア25では、加熱ヒーター4が作動しないため、室温において親水性である高分子吸湿材2は、空気(湿り空気12)中の水分を吸湿する。これによって、吸湿エリア25を通過する湿り空気は除湿され、除湿された空気(乾燥空気13)が排気口7から排気される。
【0075】
空気(湿り空気12)中の水分を吸湿した吸湿ユニット1の前記各素子は、ステッピングモーター10によって駆動されて図中の矢印方向に回転し、順に吸湿エリア25から放出エリア24内へと移動する。放出エリア24内では、各素子の加熱ヒーター4のヒーター電極が図示しないヒーター用固定電極と接触して通電することにより、高分子吸湿材2が加熱ヒーター4により加熱される。
【0076】
加熱ヒーター4により、基材3と、基材3を介して高分子吸湿材2とが加熱されることにより、高分子吸湿材2はLCST以上となり、水との親和性が低下して疎水性となる。その結果、高分子吸湿材2に吸湿された水分は、液体の水として高分子吸湿材2から放出される。
【0077】
図13は、吸湿ユニット1の回転により最下部に移動した素子の様子を示す図である。この段階では、高分子吸湿材2から放出された水は、まだ高分子吸湿材2の表面に取り出されていない。
図14は、吸湿ユニット1の回転により除湿装置102の最下部に移動した後、高分子吸湿材2から水滴が滲出して転写部15に接触している様子を示す図である。さらに、
図15は放出された水が転写部15の表面に移動し、水滴が表面上を流れ落ちる様子を示す図である。このようにして排出された水は、滴下水14として排水タンク9に集積される。
【0078】
本実施の形態における、空気中の水を吸湿させた高分子吸湿材に外部刺激を付与して水を滲出させる効果、水との親和性が低下した高分子吸湿材の表面に転写部を接触させることによる効果が、実施の形態1と同様に得ることが出来る。
【0079】
また、基材3の材料、吸湿ユニット1の回転方法は実施の形態1と同じである。高分子吸湿材2に含有される刺激応答性高分子、刺激付与部、加熱ヒーター4の形状および種類、高分子吸湿材2の形状、並びに、刺激付与部の構成については、実施の形態1と同様に変更可能である。
【0080】
なお、上述した例では、吸湿ユニット1は、高分子吸湿材2が円弧の外側に、加熱ヒーター4が円弧の内側に配置されるように構成されているが、これとは逆に、吸湿ユニット1は、高分子吸湿材2が円弧の内側に、加熱ヒーター4が円弧の外側に配置されるように構成されていてもよい。かかる場合は、ヒーター用固定電極は、吸湿ユニット1の外側に配置される。
【0081】
なお、本実施の形態では、除湿装置102の下部に位置する3個の素子が、放出エリア24内にある。放出エリア24では、放出エリア24内に移動した直後の素子と、放出エリア24の最下点にある素子との各々の加熱ヒーター4のヒーター電極と接触して通電できる位置に、図示しないヒーター用固定電極が配置されている。吸湿ユニット1の前記各素子が、回転によって放出エリア24から完全に吸湿エリア25に移動する前に、各々の素子の通電が終了するようになっているのが好ましい。
【0082】
〔実施の形態5〕
本実施形態は、実施の形態4に水滴除去部16を追加したものである。その他の構成や動作は実施の形態4と同じであるので説明は省略する。
【0083】
図16に本実施の形態に係る水滴除去部16について示す。水滴除去部16は、転写部15の下部で、かつ外周に接するように設置される。吸湿ユニット1および転写部15は、図中に示す矢印の方向に各々回転する。
【0084】
空気中の水分を吸着した吸湿ユニット1の回転により、前記各素子は放出エリア24内に移動した後、高分子吸湿材2が加熱ヒーター4により加熱されて水を放出し、転写部15の表面に取り出される。そして、放出された水が転写部15の表面を垂れ落ちて最下部に移動する。このとき、多くの水滴が滴下して排水タンク9に集積される。また、この時に滴下しなかった水滴が水滴除去部16によって強制的に転写部15の表面から離脱させられて排水タンク9に集積される。
【0085】
このようにして、吸湿ユニット1の回転により、吸湿ユニット1を形成する円筒の最下部に移動する前記素子から取り出された水が、転写部15を経由して排水タンク9へと順次移動する。これにより、吸湿ユニット1の各素子による空気中の水の吸湿、放出が連続的に繰り返される。
【0086】
本実施の形態において、水滴除去部16は、転写部15の下方で最下点よりも転写部15の回転方向の後方に偏倚した位置に設置するとしたが、もちろん最下点位置であっても良いし、転写部15の回転方向の前方に偏倚した位置であってもよい。回転方向の後方であれば、転写部15の表面が水滴除去部16の接触部から回転方向に離れる様に移動するので接触が滑らかに行われる。
【0087】
また、水滴除去部16は板状もしくは棒状の構造体であるが、転写部15の表面に接触することが出来れば特に形状を限定するものではない。また、好ましくは柔軟性を有し吸水性を有さない材質で形成されるのが良い。
【0088】
また、水滴除去部16を実施の形態3で採用した非接触型としてもよい。水滴除去部16は、転写部15の円周部近傍のいずれの箇所にも設置可能である。さらに、転写部15が回転することで水滴除去部16を移動させる必要が無いので、より構造が簡素化できる。
【0089】
また、実施の形態4または5において、転写部15の表面に水滴除去を促進する文様を設けてもよい。文様は転写部15の表面に線刻で形成した溝、もしくは極わずかに突出するリブであってもよい。水滴除去を促進することが出来れば特に形状を限定するものではない。文様は
図10を参照されたい。
【0090】
〔実施の形態6〕
以下、本発明のさらなる一実施形態について詳細に説明する。
【0091】
なお、説明の便宜上、前記実施の形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0092】
図17は本発明の実施の形態6に係る除湿装置103の縦断面図を示し、
図18は
図17中のC−C線で切断した除湿装置103の断面図を示す。
【0093】
本実施の形態は、実施の形態4の変形であり、実施の形態4とは、放出エリア24の構成のみが異なっている。即ち、本実施の形態では、
図17及び
図18に示すように、放出エリア24に、複数の素子が固定された吸湿ユニット1の円筒の側面に接する円筒形の転写部15と、転写部15の円筒の側面に接する円筒形の水滴除去部16が設けられている。転写部15は、円筒形の回転体上に吸水材を固定して形成されており、互いに接触することで吸湿ユニット1の回転とともに、回転するようになっている。
【0094】
また、転写部15の吸水材は、吸水性を有するスポンジや不織布等の材料からなる。転写部15の下部には、転写部15の円筒形の側面に接する円筒形の水滴除去部16が設けられている。水滴除去部16は、吸水性を有さない材質で円筒形に形成された部材である。水滴除去部16は、水滴除去部モーター28により駆動されて、転写部15の回転とともに、回転するようになっている。
【0095】
図19は、吸湿ユニット1の回転により最下部に移動した素子の様子を示す図である。当該素子は、高分子吸湿材2が加熱ヒーター4により加熱され、高分子吸湿材2から放出された水が、高分子吸湿材2の表面に滲出る。
【0096】
高分子吸湿材2の表面に滲出した水が、当該素子と接する転写部15の吸水材に吸水される。転写部15は図中矢印で示す方向に吸湿ユニット1と接触して回転するので、各素子が放出した水滴が順次吸い取られて、転写部15の吸水材に蓄積される。
【0097】
図20に示すように、転写部15の下部には水滴除去部16が、転写部15と円筒の側面を接触する状態で設置されており、転写部15の吸水材は常に圧縮されるような位置関係に保たれている。転写部15に蓄積された水滴が、転写部15の吸水材が圧縮された状態で有する保水量を上回る程度に蓄積された時に、水滴除去部16によって吸水材から押し出され滴下する。滴下した水は排水タンク9に集積されて排水される。
【0098】
このようにして、吸湿ユニット1の回転により、吸湿ユニット1を形成する円筒の最下部に移動する各素子から、転写部15の吸水材に、当該素子から取り出された水が、順次移動する。これにより、吸湿ユニット1の各素子による空気中の水の吸湿、放出が連続的に繰り返される。
【0099】
〔実施の形態7〕
以下、本発明のさらなる一実施形態について詳細に説明する。
【0100】
なお、説明の便宜上、前記実施の形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0101】
図21は本発明の実施の形態7に係る除湿装置104の縦断面図を示し、
図22は
図21中のD−D線で切断した除湿装置105の断面図を示す。
【0102】
本実施の形態は、実施の形態6の変形であり、実施の形態6で採用した吸水型転写部15に代わって、濃縮部17が設けられる点で異なっている。本実施の形態では、
図21及び
図22に示すように、放出エリア24に円筒形の濃縮部17が設けられている。濃縮部17の側面は、吸湿ユニット1の複数の素子が固定された円筒の側面に接する。
【0103】
濃縮部17は、吸湿ユニット1と同様の構造を有している。即ち、基材19の片面に高分子吸湿材18を、他の面に加熱ヒーター20を設けて形成した素子を、円筒形の回転体上に配設した部材であり、吸湿ユニット1と接触することで、回転するようになっている。本実施の形態では、濃縮部17には6枚の素子が貼り付けられている。高分子吸湿材18は高分子吸湿材2と同じか、または高いLCSTを有する物質であることが好ましい。
【0104】
濃縮部17の下部には、濃縮部17の円筒の側面に接する側面を有する円筒形の転写部15が設けられている。転写部15は、転写部モーター29により駆動されて、濃縮部17の回転とともに、回転するようになっている。
【0105】
図23は、本実施形態における水の集積の様子を示す。吸湿ユニット1の各素子が回転により最下部に移動した後、加熱ヒーター4によって高分子吸湿材2が加熱され、水が高分子吸湿材2の表面に滲出する。次に、濃縮部17の表面にある高分子吸湿材18が、吸湿ユニット1の高分子吸湿材2の表面に滲出した水を吸水する。この時点では、吸湿ユニット1と接触している濃縮部17の素子は加熱されていないので、親水性を有している。
【0106】
吸湿ユニット1が回転して、十分に吸水した濃縮部17の素子が最下点に来た時に、加熱ヒーター20が図示していないヒーター用固定電極から給電されて基材19及び高分子吸湿材18を加熱する。加熱によって高分子吸湿材18の表面に取り出された水が、転写部15に転写されて水滴として排出される。
【0107】
このようにして、吸湿ユニット1の回転により、吸湿ユニット1を形成する円筒の最下部に移動する各素子から、濃縮部17の高分子吸湿材18に、さらに高分子吸湿材18から転写部15へと取り出された水が、順次移動する。これにより、吸湿ユニット1の各素子による空気中の水の吸湿、放出、および、濃縮部17からの水の吸湿、放出と、転写部15への転写が連続的に繰り返される。
【0108】
本実施の形態では、吸湿ユニット1が有する高分子吸湿材2の量が、濃縮部17が有する高分子吸湿材18の量の4倍に設定されている。そのため、吸湿ユニット1が1回転する間に、濃縮部17は4回転するので、各素子に蓄積された水が4倍の濃度で蓄積されることになる。
図23に示されるように、濃縮部17の高分子吸湿材18に溜められた水は、適当なタイミングで加熱ヒーター20に通電し加熱することで効率よく水を排出できる。また、高分子吸湿材18の表面に出てきた水は、転写部15により効率的に滴下させ集積することができる。
【0109】
本実施の形態において、転写部15を省いて濃縮部17の高分子吸湿材18表面から水滴として直接滴下させてもよい。
【0110】
本発明の実施の形態1〜7において、吸湿ユニットは基材の片面に高分子吸湿材を設け、他の面に加熱ヒーターを設けた素子の集合体として構成としたが、各素子に加熱ヒーターが一体に設けられることは必然ではない。例えば、加熱ヒーターを放湿エリア内に別構造として設け、吸湿ユニットが回転して吸湿した素子が放湿エリア内に移動してきた状態で、加熱ヒーターが吸湿ユニットに接触するように構成してもよい。
【0111】
このような構成とすることで、各素子が電気部品を含まない構成となり、高分子吸湿材を基材上に形成する工程が容易になるとともに、素子自体及び除湿装置の安全性が向上する。
【0112】
〔高分子吸湿材の詳細〕
以下に、上述した各実施形態で用いられる、刺激応答性高分子を含有する高分子吸湿材の詳細について説明する。なお、本明細書においては、「アクリル」または「メタアクリル」のいずれをも意味する場合「(メタ)アクリル」と表記する。
【0113】
上述した各実施形態では、刺激応答性高分子の乾燥体を含む高分子吸湿材を用いる。特に、刺激応答性高分子が架橋体である場合は、高分子が架橋されて形成された3次元の網目構造が、水、有機溶媒等の溶媒を吸収して膨潤した高分子ゲルを形成することが多い。かかる場合、上述した各実施形態では、高分子ゲルの乾燥体を用いる。
【0114】
ここで、高分子ゲルの乾燥体とは、高分子ゲルを乾燥することによって溶媒を除去したものをいう。なお、本発明において、高分子ゲルの乾燥体は、高分子ゲルから溶媒が完全に除去されている必要はなく、空気中の水分を吸収することができれば、溶媒または水を含んでいてもよい。したがって、前記高分子ゲルの乾燥体の含水率は、該乾燥体が空気中の水分を吸収することができれば、特に限定されるものではないが、例えば、40重量%以下であることがより好ましい。なお、ここで含水率とは、高分子ゲルの乾燥重量に対する水分の割合をいう。
【0115】
刺激応答性高分子とは、外部刺激に応答して、その性質を可逆的に変化させる高分子をいう。本発明においては、外部刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子を用いる。
【0116】
前記外部刺激としては、特に限定されるものではないが、例えば、熱、光、電場、磁場、pH等を挙げることができる。
【0117】
また、外部刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化するとは、外部刺激を与えられた高分子が、外部刺激に応答して、親水性と疎水性との間で可逆的に変化することをいう。
【0118】
中でも、熱に応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子、すなわち、温度応答性高分子は、簡易な加熱装置を用いて温度を変化させることにより、空気中の水分(水蒸気)の吸湿と、吸湿した水分の放出とを可逆的に行えることから、調湿機に特に好適に用いることができる。
【0119】
前記温度応答性高分子としては、より具体的には、例えば、ポリ(N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N−ノルマルプロピル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N−メチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N−エチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N−ノルマルブチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N−イソブチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド)等のポリ(N−アルキル(メタ)アクリルアミド);ポリ(N−ビニルイソプロピルアミド)、ポリ(N−ビニルノルマルプロピルアミド)、ポリ(N−ビニルノルマルブチルアミド)、ポリ(N−ビニルイソブチルアミド)、ポリ(N−ビニル−t−ブチルアミド)等のポリ(N−ビニルアルキルアミド);ポリ(N−ビニルピロリドン);ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリ(2−イソプロピル−2−オキサゾリン)、ポリ(2−ノルマルプロピル−2−オキサゾリン)等のポリ(2−アルキル−2−オキサゾリン);ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル等のポリビニルアルキルエーテル;ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドの共重合体;ポリ(オキシエチレンビニルエーテル);メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体等、およびこれらの高分子の共重合体を挙げることができる。
【0120】
また、温度応答性高分子は、これらの高分子の架橋体であってもよい。温度応答性高分子が架橋体である場合、かかる架橋体としては、例えば、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ノルマルプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ノルマルブチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド;N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニルノルマルプロピルアミド、N−ビニルノルマルブチルアミド、N−ビニルイソブチルアミド、N−ビニル−t−ブチルアミド等のN−ビニルアルキルアミド;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルアルキルエーテル;エチレンオキサイドとプロピレンオキサイド;2−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロピル−2−オキサゾリン、2−ノルマルプロピル−2−オキサゾリン等の2−アルキル−2−オキサゾリン等のモノマーまたはこれらのモノマーの2種類以上を、架橋剤の存在下で重合して得られる高分子を挙げることができる。
【0121】
前記架橋剤としては、従来公知のものを適宜選択して用いればよいが、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリレンジイソシアネート、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の重合性官能基を有する架橋性モノマー;グルタールアルデヒド;多価アルコール;多価アミン;多価カルボン酸;カルシウムイオン、亜鉛イオン等の金属イオン等を好適に用いることができる。これらの架橋剤は単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0122】
また、温度応答性高分子にカーボンや酸化鉄などの不溶性粒子を混合して使用することが出来る。このようにすると、カーボンや酸化鉄などが磁場変動によって発熱するために外部刺激を磁場とすることが出来る。
【0123】
また、光に応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子としては、アゾベンゼン誘導体、スピロピラン誘導体等の、光により親水性または極性が変化する高分子、それらと温度応答性高分子およびpH応答性高分子の少なくともいずれかとの共重合体、前記光応答性高分子の架橋体、または、前記共重合体の架橋体を挙げることができる。
【0124】
また、電場に応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基等の解離基を有する高分子、カルボキシル基含有高分子とアミノ基含有高分子との複合体のような静電相互作用や水素結合などによって複合体を形成した高分子、または、これらの架橋体を挙げることができる。
【0125】
また、pHに応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基等の解離基を有する高分子、カルボキシル基含有高分子とアミノ基含有高分子との複合体のような静電相互作用や水素結合などによって複合体を形成した高分子、または、これらの架橋体を挙げることができる。
【0126】
また、刺激応答性高分子は、上述した刺激応答性高分子の誘導体であってもよいし、他のモノマーとの共重合体であってもよい。なお、他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、どのようなモノマーであってもよい。例えば、(メタ)アクリル酸、アリルアミン、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、マレイン酸、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、アクリルアミドアルキルスルホン酸、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等のモノマーを好適に用いることができる。
【0127】
或いは、刺激応答性高分子は、他の架橋された高分子又は架橋されていない高分子と、相互浸入高分子網目構造またはセミ相互浸入高分子網目構造を形成してなる高分子であってもよい。
【0128】
前記刺激応答性高分子の分子量も特に限定されるものではないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により決定された数平均分子量が3000以上であることが好ましい。
【0129】
前記刺激応答性高分子の製造方法も特に限定されるものではなく、従来公知の方法を適宜選択して用いることができる。また、多孔質の前記刺激応答性高分子の製造方法も特に限定されるものではないが、例えば、凍結乾燥、真空乾燥等により、前記刺激応答性高分子を、乾燥させることにより、製造することができる。
【0130】
なお、高分子の乾燥体に、空気中の水分(水蒸気)が吸着され、且つ、吸収されることを、学術的には収着と称する。しかし、本発明においては、該乾燥体の内部に吸収された水分を、外部刺激を与えることにより放出することを主眼としているため、該乾燥体の内部に空気中の水分が吸収される現象を「吸湿」と称し、外部刺激を与えることにより液体の水を水滴として放出する現象を、「水(水分)の放出」と称する。
【0131】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る除湿装置は、外部刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子を含有する高分子吸湿材と、前記高分子吸湿材の水との親和性を低下させるための外部刺激を付与する刺激付与部と、前記高分子吸湿材が放出した水滴を転写するための転写部とを備えている。
【0132】
本発明の態様1に係る除湿装置では、高分子吸湿材と、刺激付与部とを基板上に形成して単位となる素子を形成し、前記素子を複数組み合わせて円盤状の吸湿ユニットを構成する。さらに、前記高分子吸湿材が放出した水滴を転写するための平板状の転写部を備えている。
【0133】
前記の構成によれば、高分子吸湿材から放出された水を効率的に集積することができるという効果を奏する。
【0134】
本発明の態様2に係る除湿装置は、前記態様1に加えて、前記転写部に転写された水滴を迅速に除去するための接触型の水滴除去部を備える。
【0135】
前記の構成によれば、高分子吸湿材から放出された水を転写した転写部から水滴を除去するので、効率的に集積することができるという効果を奏する。
【0136】
本発明の態様3に係る除湿装置は、前記態様1に加えて、前記転写部に転写された水滴を迅速に除去するための非接触型の水滴除去部を備える。
【0137】
前記の構成によれば、高分子吸湿材から放出された水を転写した転写部から水滴を除去するので、効率的に集積することができるという効果を奏する。また、高分子吸湿材および転写部に直接接触しないので損耗が抑制できる。
【0138】
本発明の態様4に係る除湿装置は、前記態様1〜3において平板型であった吸湿ユニットおよび転写部を各々円筒形とした。
【0139】
前記の構成によれば、高分子吸湿材の水滴放出と水滴除去の動作が連続して行える。高分子吸湿材から放出された水を効率的に除去し、排水タンクに集積することができるという効果を奏する。
【0140】
本発明の態様5に係る除湿装置は、前記態様4において、円筒形の転写部に接する水滴除去部を設けた。
【0141】
前記の構成によれば、転写部からの水滴除去が迅速に行われ放出された水を効率的に集積することができるという効果を奏する。
【0142】
本発明の態様6に係る除湿装置は、前記態様5において、円筒形の転写部表面に吸水材を施したので、吸湿ユニットからの水滴除去が迅速に行われ、放出された水を効率的に集積することができるという効果を奏する。
【0143】
前記の構成によれば、高分子吸湿材からの転写部への水移動が吸水材によって補助される。転写部への水滴転写が吸水材の吸水力によって迅速に行われ、放出された水を効率的に集積することができるという効果を奏する。
【0144】
本発明の態様7に係る除湿装置は、前記態様6における転写部に代わって、高分子吸湿材を使用した濃縮部を設けた。
【0145】
前記の構成によれば、吸湿ユニットから滲出した水を濃縮部で高分子吸湿材が吸水するとともに濃縮した後に、濃縮部を加熱して排水するので、加熱効率が良く水を効率的に集積することができるという効果を奏する。
【0146】
本発明に係る除湿方法は、外部刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子を含有する高分子吸湿材を使用する除湿方法であって、空気中の水を吸湿させた高分子吸湿材に、外部刺激を付与して水との親和性を低下させる工程と、水との親和性が低下した高分子吸湿材に転写部を接触させて、高分子吸湿材から放出された水を転写部に転写する工程とを含む。
【0147】
前記の構成によれば、高分子吸湿材から放出された水を効率的に転写部に移動させ、排水タンクに集積することができるという効果を奏する。
【0148】
また、本発明に係る調湿装置は、前記除湿装置を備えている。
【0149】
前記の構成によれば、過冷却や大きな熱量を用いずに効率よく調湿することができるという効果を奏する。