特許第6528306号(P6528306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6528306
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】案内装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 21/00 20060101AFI20190531BHJP
   G08G 1/005 20060101ALI20190531BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20190531BHJP
   G06F 3/16 20060101ALI20190531BHJP
   G09B 29/10 20060101ALN20190531BHJP
【FI】
   G09B21/00 D
   G08G1/005
   G09B21/00 B
   G06F3/041 460
   G06F3/16 610
   G06F3/16 660
   !G09B29/10 Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-265543(P2014-265543)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-126098(P2016-126098A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】504340682
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人 人間文化研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123319
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 武彦
(72)【発明者】
【氏名】平井 康之
(72)【発明者】
【氏名】冨本 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 真吾
(72)【発明者】
【氏名】山中 由里子
【審査官】 田辺 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−149091(JP,A)
【文献】 特開2002−342035(JP,A)
【文献】 特開2013−120589(JP,A)
【文献】 特開2001−273324(JP,A)
【文献】 特開2001−250134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B21/00−21/06
A61F9/00−11/14
G06F3/03−3/047、3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知面上のユーザが触れた位置を検知する検知部と、
前記検知部の検知面上に重ねて配置され、案内箇所の位置を所定形状の穴で示し、前記案内箇所の関連性を前記穴をつなぐ溝で示した触知板と、
前記案内箇所に係る音声案内を出力する音声出力部と、
前記ユーザが触れた位置に応じて前記音声出力部から音声案内を出力させる出力制御部と、
を有する案内装置。
【請求項2】
前記触知板が、案内の対象とする施設の案内箇所と対応した位置に前記穴が形成され、前記案内箇所をめぐる経路と対応した前記溝が形成された触地図である請求項1に記載の案内装置。
【請求項3】
前記触知板が、
前記案内箇所を所定の順に列記した順序表記部と、
前記案内箇所の位置を示す前記穴及び溝が設けられた案内図と、
を備える請求項2に記載の案内装置。
【請求項4】
前記触知板の平面形状が、前記施設の平面形状に相当する形状である請求項2又は3に記載の案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の触地図は、点字と触知記号による情報提示が主であり、点字や触知記号を読解可能な視覚障がい者にしか有効ではなかった。しかし、視覚障がい者における点字識字率は、十数%であり、点字を利用しない視覚障がい者に対しては、別の手段による情報提示が必要であった。
【0003】
例えば、視覚障がい者用案内板において、施設の内壁や外壁、案内板に示された各所までの通路を凸線で示すと共に、この凸線をたどる利用者の指が所定位置に達したことを検知手段で検知して音声案内する装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
このように特許文献1の案内装置では、視覚障がい者が凸線で示された通路を指でたどる際に、各室の入口や階段のある場所等の箇所において音声案内することで、点字が読めなくても施設内の配置や目的地までの道順を把握できるようにしている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の案内装置では、凸線を設けて触地図とした案内板に検知手段を埋設して構成しているため、施設内のレイアウトが変更されると、ハードを全て作り替えることになり、表示内容の変化に対応することができなかった。特に博物館のように、展示内容が多岐にわたり、レイアウト変更や展示内容の変更が多い場合、特許文献1に示す装置を用いるのが難しかった。
【0006】
特許文献2では、案内図を表示する液晶ディスプレイに透明板を重ね、該案内図に対応した三次元形状を有する触地図と点字が形成され、記憶装置に案内図情報や音声情報がデジタル情報として書き換え可能に記憶された装置が提案されている。このように案内図情報や音声情報をデジタル情報として書き換え可能としたことにより、レイアウトの変更や展示内容の変更に対応できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−149091号公報
【特許文献2】特開2000−39861号公報
【特許文献3】特開2006−244030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の案内装置では、触地図を液晶ディスプレイに重ねているため、検知手段を触地図に埋め込むことができない。このため、音声案内用のボタンが触地図とは別に設けられることになり、直感的な操作が行えないという問題点があった。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、音声案内を行うための案内箇所の触知が容易な案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明では以下の構成を採用する。すなわち、本発明の案内装置は、検知面上のユーザが触れた位置を検知する検知部と、前記検知部の検知面上に重
ねて配置され、案内箇所の位置を所定形状の穴で示し、前記案内箇所の関連性を前記穴をつなぐ溝で示した触知板と、前記案内箇所に係る音声案内を出力する音声出力部と、前記ユーザが触れた位置に応じて前記音声出力部から音声案内を出力させる出力制御部と、を有する。これにより、溝をたどって音声案内を行うための案内箇所の位置に達することができ、案内位置の触知が容易となる。また、触知板の穴及び溝といった形状と音声情報によって案内を行うので、点字を使用しない視覚障がい者に対しても案内を行うことができる。
【0011】
本発明の案内装置は、前記触知板が、案内の対象とする施設の案内箇所と対応した位置に前記穴が形成され、前記案内箇所をめぐる経路と対応して前記溝が形成された触地図であっても良い。これにより、地図上の案内箇所と経路の触知が容易となる。また、地図情報や音声情報を記憶部から読み出して出力する構成としても良い。これにより、案内する情報に変更があった場合にも、記憶部の地図情報や音声情報を変更すれば良く、変更に容易に対応できる。このため案内装置は、地図情報を表示するディスプレイに検知部(タッチパネル)を重ねて配置し、ユーザが地図上の案内箇所に触れたことを検知部で検知して案内情報を出力する構成を採用しても良い。また、案内箇所やその案内箇所をめぐる経路を凹部で形成し、他の触知情報を凸部で形成しても良い。これにより、案内箇所やその案内箇所をめぐる経路を他の構成と区別し易くなる。
【0012】
案内装置は、案内箇所を所定の順に列記した順序表記部と、案内箇所の位置を示す穴及び溝が設けられた案内図とを両手で同時に触れる範囲に配置しても良い。これにより、順序表記部による案内箇所の全体の把握や順番の把握と、案内箇所の位置の把握が同時並行的に行え、案内箇所等の把握を容易にできる。
【0013】
案内装置は、触知板の平面形状を、案内の対象(例えば博物館(施設)や展示品)の平面形状に相当する形状としても良い。これにより、触知板の平面形状から案内の対象の平面形状、例えば施設内のフロア(移動可能な領域)の形状を直感的に認識することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、音声案内を行うための案内箇所の触知が容易な案内装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は案内装置の一例を示す斜視図である。
図2図2は案内装置における案内盤の層構成を示す模式図である。
図3図3は案内装置の機能ブロック図である。
図4図4はディスプレイに表示させる案内図の一例を示す図である。
図5図5は案内盤の上面に取り付けた触知板の説明図である。
図6図6は触知板の表面から盛り上げて形成した触知情報を示す図である。
図7図7は音声案内情報の一例を示す図である。
図8図8は案内装置の待機時のフローチャートである。
図9図9は案内装置の案内処理を示すフローチャートである。
図10図10は案内箇所を示す穴と案内箇所の関連性を示す溝の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本実施形態に係る案内装置の一例を示す斜視図、図2は当該案内装置における案内盤の層構成を示す模式図、図3は、案内装置の機能ブロック図である。
【0017】
〈装置構成〉
本実施形態に係る案内装置1は、案内対象である博物館(以下、施設とも称す)に設置され、博物館内に設けられた展示エリアや、各展示エリアを巡る経路を案内する。この案内装置1は、博物館内の地図を表示すると共に、博物館内の展示エリアの位置や経路を触知可能とし、また、音声により案内を行う。即ち、本実施形態に係る案内装置1は、視覚、聴覚、触覚を通じて案内を行うマルチモーダルな案内装置であり、例えば、視覚障がい者と晴眼者が共用することができる。
【0018】
案内装置1は、案内盤2と、案内盤2を支持する支持筐体3とにより構成されている。図1において案内盤2の上方に向けた面に触地図を構成する触知板10を設けており、ユーザがこの触知板10に触れることで博物館の情報を読み取ることができるようにしている。このため支持筐体3は案内盤2の触知板10を設けた面が触知し易い高さとなるように案内盤2を支持している。案内盤2は、ディスプレイ20や、このディスプレイ20と重ねて配置された透明な触知板10、スピーカ41、人感センサ42を備え、支持筐体3は、案内盤2を制御する制御部30を備えている。
【0019】
図2に示すように、ディスプレイ20は、表示部23の表示面23aに透明なタッチパネル(検知部)22を重ねて備え、ユーザが触れた位置を検知する。なお、タッチパネル22は、抵抗膜式や静電容量式、光学式等、公知の方式を用いることができ、本例では、静電容量式を用いている。更に、ディスプレイ20は、タッチパネル22の外面22a、即ち表示部と反対側の面に保護層21を重ねて備えている。保護層21は、ディスプレイ20の表面を保護するため、傷の付きにくいガラス板等を固設したものや、傷が付いた場合に容易に取り換えられるように貼付した樹脂フィルム(保護フィルム)であっても良い。ディスプレイ20のタッチパネル22は、ユーザが保護層21の表面21aに触れた場合に、この触れた位置を検知する。即ち、保護層21の表面21aを検知面としている。
【0020】
触知板10は、所定の厚みを有した透明な板で、裏面がディスプレイ20の検知面、本例では保護層21の表面21aと接するように重ねて設けられ、表面(図1に示す上側の面、即ち、ユーザ側に向けた面)10aに付加された凸部11、穴55や溝56等の凹部、触知板10自体の外形等により触知情報が形成されている。触知情報は、例えば、触知板10に設けられた立体形状によって示され、触知板10に触れることで知覚できる情報である。本実施形態において、触知情報は、例えば、点字、触知図形、触知記号を含む。
【0021】
人感センサ42は、案内盤2の正面に設けられ、赤外線や超音波等によりユーザが近づいたことを検知して制御部30に入力し、案内装置1の動作を開始させる。なお、人感センサ42でユーザを検知することに替え、ユーザが案内盤2に触れたことを契機に案内装置1の動作を開始させる構成とした場合には人感センサ42を省略しても良い。
【0022】
スピーカ41は、制御部30の制御により、音声案内やチャイム、音楽、環境音等の音を出力する音声出力部である。
【0023】
制御部30は、CPU(Central Processing Unit)31や、記憶部32、通信制御部
43を備えている。
【0024】
記憶部32は、案内装置1を動作させるためのプログラムや、地図情報、音声案内情報等のデータを記憶するものであり、例えばハードディスク装置やSSD(solid state drive)、フラッシュメモリ等である。
【0025】
通信制御部43は、LANやインターネット等のネットワーク、或はブルートゥースや
RFID等の近距離無線通信により、他の装置との通信を行う。
【0026】
CPU31は、記憶部32からプログラムを読み出して実行する。これにより、制御部30のCPU31は、表示制御部311や出力制御部312の機能を提供する。
【0027】
表示制御部311は、記憶部32から地図情報を読み出してディスプレイ20に表示させる。
【0028】
出力制御部312は、ユーザが触れた位置に応じて前記音声出力部から音声案内を出力させる
【0029】
〈地図情報〉
図4は、ディスプレイ20に表示させる地図情報(案内図)の一例を示す図である。図4に示すように、表示領域の左側に凡例51と順序表記部52とを表示し、右側に案内図53を表示している。また、表示領域の左上にスタートボタン59を表示している。
【0030】
凡例51は、現在地やインフォメーション、トイレ、自動販売機等の主要な設備について、これらを示す記号と説明を表示している。
【0031】
順序表記部52は、展示箇所を順路に沿って一覧表示している。
【0032】
案内図53は、博物館内の地図を示し、当該博物館内における各展示箇所の位置を示している。図4の例では、博物館の外形がほぼH字型で、展示エリアがAブロック〜Cブロックの3つのブロックからなり、各ブロックについて展示箇所A1〜A3,B1〜B3,C1〜C3が夫々示されている。
【0033】
〈触知情報〉
図5は、案内盤2の上面に取り付けた触知板10の説明図である。図5では、触知板10を張り付けた部分を網掛けで示している。即ち、網掛け部分は、触知板10の厚みにより、ディスプレイ20の表面21aに対して高くなっている。また、触知板10には、音声案内の出力を行う案内箇所に所定形状の穴55が設けられ、これら案内箇所をめぐる経路と対応して溝56が設けられている。ここで、案内図53を構成する触知板10自体の外形が博物館(施設)の外形に対応した触知図形となっており、また、触知板10に設けられた穴55や溝56が案内箇所や経路を示す触知記号となっている。
【0034】
順序表記部52では、展示箇所を示す穴55が順路に従って列設され、各穴55をつなぐように順路を示す溝56が設けられている。案内図53では、展示箇所を示す穴55が当該展示箇所の施設内における位置と対応して設けられ、溝56が当該展示箇所をめぐる順路(経路)に対応して設けられている。
【0035】
また、図6は、触知板10の表面10aから盛り上げて形成した触知情報11(図2)を示す。図6では、表面10aに形成した凸状の線を太い実線で示し、点字の表記位置を縦横に配列した点で示し、ユーザが入れない場所を示す触知記号を千鳥状に配置した細かい点の網掛けで示している。
【0036】
〈音声情報〉
図7は、音声案内情報の一例を示す図である。音声案内情報は、案内箇所を一意に識別するための識別情報(第一情報)や、案内箇所の名称(第二情報)、詳細情報(第三情報)を有している。識別情報は、A1,B2,C3など、各ブロックの展示箇所にそれぞれ対応付けられた情報であり、設備や通路などでは省略しても良い。名称は、オセアニア、
アメリカ、ヨーロッパ等、展示箇所の名称のほか、現在地、インフォメーション、トイレ等の設備の名称、そして中央通路、南通路、北通路等の通路の名称等である。通路や設備の場合、名称だけでなく、「中央通路、南にBブロック、北にCブロックがあります。」のように方角や周囲の情報など、必要な情報を含めても良い。詳細情報は、「オーストラリア大陸が陸地面積の86%を占め・・・」のように、音声案内箇所の具体的な情報であり
、経路等を把握する際には冗長な情報となるため、識別情報や名前と区別して記憶されている。
【0037】
〈案内方法〉
本実施形態の案内装置1の利用例について以下に説明する。案内装置1は、触読されていないとき、例えば一定期間以上ユーザが案内箇所に触れていないときには待機状態となり、スタートボタンが押されるまで待機する。図8は、この待機時のフローチャートである。
【0038】
待機時の案内装置1は、待機している期間が所定時間に達したか否かを判定し(ステッ
プS10)、所定時間に達した場合には(ステップS10、Yes)、ユーザを誘導するた
めに音声メッセージやチャイム等の音出力を行う(ステップS20)。これにより、案内装置1の存在をユーザ、特に視覚障がい者に伝え、案内装置1を探しているユーザを誘導する。例えば、案内装置1が定期的にチャイムを鳴らすことを事前に周知しておき、このチャイムを頼りに視覚障がい者が案内装置1に近づけるように誘導する。また、案内装置1が定期的に「こちらに音声案内付き触地図があります。」のように音声メッセージを発して誘導しても良い。更に、15秒毎にチャイムを鳴らし、1分毎に音声メッセージを発する。或は、常時、鳥の鳴き声や波の音などの環境音を鳴らし、1分毎に音声メッセージを発するなど、これらチャイム、環境音、音声メッセージを組み合わせて音出力を行っても良い。
【0039】
ステップS20の音出力後、案内装置1は、スタートボタンが選択されたか否かに応じて待機処理を終了するか否かを判定する(ステップS30)。ここで、スタートボタンが選択されていなければ(ステップS30,No)、ステップS10に戻ってステップS10〜S30の待機処理を繰り返し、スタートボタンが選択された場合には図8の待機処理を終了して、図9の案内処理に移行する。なお、ステップS30における待機処理終了の判定は、スタートボタンが選択されたか否かに限らず、人感センサ42によりユーザが案内装置1の前に位置したことを検知した場合に待機処理を終了し、人感センサ42がユーザを検知していなければ、ステップS10に戻ってステップS10〜S30の待機処理を繰り返しても良い。
【0040】
スタートボタンが選択されると、案内装置1は、図9の案内処理を開始し、先ず、説明用の音声情報を記憶部32から読み出して「この案内装置には、左側に凡例と展示順路が示され、右側に案内図が示されています。」「この展示順路及び案内図では、案内箇所が丸い穴で示され、この案内箇所をつなぐ経路が溝で示されています。この溝を指でたどり、案内箇所の穴に触れると音声案内をいたします。」のように案内装置1の説明する音声情報を出力する(ステップS120)。このメッセージは、任意に設定でき、インフォメーションやトイレの場所など、更に詳しい情報を加えても良いし、ステップS120を省略して案内装置1を説明する音声情報を流さないようにしても良い。
【0041】
次に案内装置1は、ユーザが案内箇所に触れたか否かを判定し(ステップS130)、触れていなければ(ステップS130,No)、ユーザが触れるまで、この判定を繰り返し、ユーザが案内箇所に触れた場合には(ステップS130,Yes)、ステップS140へ移行する。
【0042】
ステップS140にて、案内装置1は、ユーザが触れた位置と対応する音声情報を記憶部32から読み出し、音声出力を開始させる。例えば、現在地に触れた場合、「現在地です。右後方にトイレがあります。」、展示箇所A1に触れた場合、「A1オセアニアです。」のように音声出力する。なお、音声情報を予め区分しておき、この所定区分にしたがって、音声出力を行う際の音声を切り替えても良い。例えば、AブロックとCブロックの展示箇所は女性の声、その他は男性の声で出力する。なお、音声の種類は、女性や男性の声に限らず、子供や老人、ロボットのような音声であっても良い。
【0043】
また、案内装置1は、ユーザが案内箇所に触れた時間に応じて出力する情報を切り替えている。例えば、ユーザが案内箇所に触れた時間が、所定の閾値よりも短ければ図6の識別情報と名称を出力し、ユーザが案内箇所に触れた時間が、所定の閾値よりも長ければ図6の識別情報、名称、及び詳細情報を出力する。なお、閾値は、任意に設定でき、例えば0.3秒〜2秒、望ましくは0.5秒〜1秒とする。本例では、順序表記部52における展示箇所を0.8秒以上長押しした場合に、当該箇所の識別情報、名称、及び詳細情報を出力し、それ以外の場合には識別情報と名称のみを出力する。即ち、案内図における案内箇所を0.8秒以上長押しした場合でも詳細情報は出力しない。これにより、案内図に触れて経路を把握している際に案内箇所に触れる時間が長くなっても冗長な詳細情報が出力されないようにしている。
【0044】
次に、案内装置1は、ユーザが触れた位置に、触れたことを示す表示を行う(ステップ
S150)。例えば、ユーザが触れた位置を中心に円を表示することや、ユーザが触れた
位置の周囲をハイライト表示する等、ユーザが触れた位置の表示状態を変化させることで、ユーザが触れたことを視覚的に認識できるようにする。なお、この表示は、所定期間継続させた後、元に戻す。
【0045】
そして、案内装置1は、処理が終了したか否かを判定し(ステップS160)、処理が終了するまでステップS130〜S160を繰り返す。例えば、ユーザが所定期間(例えば5分)以上触れなかった場合に、案内処理終了と判断して(ステップS160,Yes)、図9の処理を終了し、地図の表示を止めて待機状態となる。
【0046】
なお、ステップS140にて、音声情報を出力させた場合、音声出力と図9の案内処理は、並列に実行される。即ち、ステップS140にて、音声情報の出力が開始させた後、音声情報の出力が終わってからステップS150に移行するのではなく、ステップS140にて、音声情報の出力が開始させたらステップS150に移行し、以降の処理と音声情報の出力を並列に実行する。従って、ステップS140で開始した音声情報の出力を行いながら、ステップS130でユーザが次の案内箇所に触れたか否かも並列して判断し、ユーザが次の案内箇所に触れた場合、ステップS140で前回の音声出力を中断させて、次の音声出力を開始させる。
【0047】
同様に、ステップS150にて、ユーザが触れたことを示す表示を行う場合、当該表示と図9の案内処理は、並列に実行される。即ち、ステップS150にて、表示状態の変化を開始させた後、表示状態を元に戻してからステップS160に移行するのではなく、ステップS150にて、表示状態の変化を開始させたらステップS160に移行し、以降の処理と表示状態の変化を並列に実行する。従って、ステップS150で開始した表示を行いながら、ステップS130でユーザが次の案内箇所に触れたか否かも並列して判断し、ユーザが次の案内箇所に触れた場合、ステップS150で所定回数(例えば3回)以上前の表示を元に戻して、次の表示状態の変化を開始させる。
【0048】
〈具体例〉
図10は案内箇所を示す穴55と、案内箇所の関連性を示す溝56の具体例を示す図で
ある。図10に示すように穴55は、ユーザが指で触れた際に穴55の縁と検知面21aとに同時に触れる寸法としている。例えば、触知板10の厚さtを0.1mm〜10mm、望ましくは0.5mm〜5mm、穴55の大きさLを5mm〜20mm、望ましくは10mm〜15mmとしている。これによりユーザが穴55であることを縁の形状で認識しながら案内箇所を選択する、即ち音声情報を出力させることができる。
【0049】
溝56は、ユーザが指で触れた際に両側の縁を同時に触れることができ、穴55との区別が容易な寸法としている。例えば、溝56の幅Lmを1mm〜15mm、望ましくは2mm〜10mm、本例では4mmとしている。これによりユーザが溝56であることを縁の形状で認識しながら経路をたどることができる。なお、溝56は、触知板10の表面10aから裏面10bまで貫通した溝56であっても良いし、触知板10の厚みの途中までに形成された溝56(有底の溝56)であっても良い。
【0050】
また、穴55及び溝56の縁に凸部を設けて、この凸部の種類によって穴55及び溝56の種類を区別するようにしても良い。例えば重要な案内箇所を示す穴55の周囲を凸状の線で囲み、他の案内箇所と区別するようにする。本例では、インフォメーションとトイレの案内箇所を示す穴55の周囲に凸部を設けて、他の案内箇所と区別した。また、穴55の形状は、丸に限らず、楕円や多角形など、他の形状でも良く、この形状の違いによって、案内箇所を区別しても良い。
【0051】
なお、本実施形態の案内装置1では、案内盤2の幅を1000mm以内、奥行きを600mm以内としている。そして、順序表記部52と案内図53とを両手で同時に触れる範囲に配置している。
【0052】
〈作用効果〉
このように本実施形態の案内装置1は、博物館(施設)の形状を触知板10の形状で示し、館内の案内箇所とこの案内箇所をめぐる経路を触知板10の穴55と溝56で示した。また、ユーザがこの案内箇所に触れると、音声情報を出力する構成としたことにより、点字を使用しない視覚障がい者に対しても案内を行うことができる。
【0053】
また、本実施形態の案内装置1は、地図情報や音声情報を記憶部から読み出して出力する構成としたため、案内する情報に変更があった場合にも、記憶部の地図情報や音声情報を変更すれば良く、変更に容易に対応できる。このため本実施形態の案内装置1は、地図情報を表示するディスプレイに検知部(タッチパネル)を重ねて配置し、ユーザが地図上の案内箇所に触れたことを検知部で検知して案内情報を出力する構成を採用した。更に、本実施形態の案内装置1は、案内箇所を所定形状の穴55で示し、前記案内箇所の関連性を前記穴55をつなぐ溝56で示したことにより、視覚障がい者が触知によって案内箇所やその案内箇所をめぐる経路を認識できる。また、案内箇所やその案内箇所をめぐる経路を凹部で形成し、他の触知情報を凸部で形成したことにより、案内箇所やその案内箇所をめぐる経路を他の構成と区別し易くしている。
【0054】
また、案内箇所を所定の順に列記した順序表記部52と、案内箇所の位置を示す穴55及び溝56が設けられた案内図53とを両手で同時に触れる範囲に配置したことにより、順序表記部52による案内箇所の全体の把握や順番の把握と、案内箇所の位置の把握が同時並行的に行え、案内箇所等の把握を容易としている。
【0055】
更に、本実施形態の案内装置1は、触知板10のうち少なくとも案内図53の平面形状を、博物館(施設)の平面形状に相当する形状としている。これにより、触知板10の平面形状から博物館の平面形状、換言すれば博物館のフロアの形状を直感的に認識することができる。例えば、触知板10が存在する部分、換言するとディスプレイ表面21aより
も触知板10によって高くなっている部分が、博物館の内部であり、触知板10の無い部分は博物館の外部である。従来の触地図のように、施設の外形を凸線で示した場合、凸線を全てたどり、外形の線であることを確認しないと、施設の内と外の区別ができないが、本実施形態の案内装置1では、触知板10の存在する部分が施設内部、触知板10の存在しない部分が施設外部となっており、施設の内外、即ちフロア(移動可能な領域)の全体形状が容易に把握できる。
【0056】
本実施形態の案内装置1は、ユーザが触れた位置に応じて音声案内を出力すると共に、ユーザが触れた位置を表示すること(ステップS150)により、聴覚だけでなく、視覚でもユーザが触れた位置を確認できる。これにより例えば、視覚障がい者が、介助者と共に本実施形態の案内装置1を利用し、視覚障がい者が案内装置1を操作して、経路を繰り返し確認している場合、繰り返すたびに音声情報が途切れるため、操作をしていない介助者は音声情報から視覚障がい者が確認しようとしている経路を把握することが難しいが、本実施形態では、ユーザ(この場合、視覚障がい者)の触れた位置の表示状態が所定期間変更されるので、視覚障がい者が確認しようとしている経路を介助者が視覚的に把握することができる。
【0057】
〈その他〉
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限り、変形可能である。例えば、上記の実施形態では、触知板10が触地図を構成し、博物館内の展示箇所や設備の位置等を案内したが、これに限らず、展示品の案内を行う構成であ
っても良い。例えば、ディスプレイ20に展示品を表示し、触知板10を展示品と対応した形状とし、案内箇所に穴55を設け、案内の順番に従って、或は関連性の高い案内箇所を示す穴55をつなぐように溝56を設ける。これにより、視覚障がい者が展示品の形状を確認しながら音声案内を聞くことができる。この場合、展示品の形状とした案内図53と、案内箇所を所定の順に列記した順序表記部52とを両手で同時に触れる範囲に配置しても良いし、順序表記部52を省略しても良い。
【符号の説明】
【0058】
1 案内装置
2 案内盤
3 支持筐体
10 触知板
11 触知情報
20 ディスプレイ
21 保護層
22 タッチパネル
23 表示部
30 制御部
32 記憶部
41 スピーカ
42 人感センサ
43 通信制御部
51 凡例
52 順序表記部
53 案内図
55 穴
56 溝
59 スタートボタン
311 表示制御部
312 出力制御部
図1
図2
図3
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図10