(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の外面に設けられた複数の操作部のいずれかが操作されたとき、該車両に配された複数のアンテナから信号を送信する車載機と、該車載機から送信された信号を受信し、受信した信号の受信信号強度を測定し、測定した信号の受信信号強度を含む応答信号を送信する携帯機とを備える車両用通信システムであって、
前記車載機は、
共通の車室内空間を包含する相異なる複数の領域それぞれに係る情報を記憶する記憶部と、
前記複数の操作部の内、操作された操作部を特定する特定部と、
該特定部が特定した操作部に応じて、前記記憶部が記憶する複数の領域それぞれに係る情報から一の領域に係る情報を選択する選択部と、
前記携帯機から送信された応答信号を受信する車載受信部と、
該車載受信部が受信した応答信号に含まれる受信信号強度及び前記選択部が選択した一の領域に係る情報に基づいて、該領域の内側に前記携帯機があるか否かを判定する判定部と
を備え、
前記複数の領域はそれぞれ、車室の内側面の一部に倣う境界面を有し、
前記選択部は、前記特定部が特定した操作部を設けてある前記外面に沿う前記内側面の一部に倣う境界面を有する領域に係る情報を選択するようにしてあり、
更に前記領域に係る情報は、
前記複数のアンテナから送信される信号の受信信号強度を予め測定して得られる標本値に基づいて算出され、前記領域を規定する統計値を含み、
前記判定部は、
前記車載受信部が受信した応答信号に含まれる受信信号強度と、前記選択部が選択した一の領域に係る前記統計値との統計距離を算出することによって、前記領域の内側に前記携帯機があるか否かを判定する
車両用通信システム。
車両の外面に設けられた複数の操作部のいずれかが操作されたとき、該車両に配された複数のアンテナから信号を送信し、該信号に応じて外部機器から送信された応答信号を受信する車載機であって、
共通の車室内空間を包含する相異なる複数の領域それぞれに係る情報を記憶する記憶部と、
前記複数の操作部の内、操作された操作部を特定する特定部と、
該特定部が特定した操作部に応じて、前記記憶部が記憶する複数の領域それぞれに係る情報から一の領域に係る情報を選択する選択部と、
前記複数のアンテナからそれぞれ送信された信号の前記外部機器における受信信号強度を含む応答信号を受信する車載受信部と、
該車載受信部が受信した応答信号に含まれる受信信号強度及び前記選択部が選択した一の領域に係る情報に基づいて、該領域の内側に前記外部機器があるか否かを判定する判定部と
を備え、
前記複数の領域はそれぞれ、車室の内側面の一部に倣う境界面を有し、
前記選択部は、前記特定部が特定した操作部を設けてある前記外面に沿う前記内側面の一部に倣う境界面を有する領域に係る情報を選択するようにしてあり、
更に前記領域に係る情報は、
前記複数のアンテナから送信される信号の受信信号強度を予め測定して得られる標本値に基づいて算出され、前記領域を規定する統計値を含み、
前記判定部は、
前記車載受信部が受信した応答信号に含まれる受信信号強度と、前記選択部が選択した一の領域に係る前記統計値との統計距離を算出することによって、前記領域の内側に前記外部機器があるか否かを判定する
車載機。
車両の外面に設けられた複数の操作部のいずれかが操作されたことに起因して、該車両に配された複数のアンテナから送信され、携帯機が受信した信号の受信信号強度に基づいて、該携帯機が車室内にあるか否かを、コンピュータに判定させるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記複数の操作部の内、操作された操作部を特定する特定部と、
特定された操作部に応じて、共通の車室内空間を包含し、車室の内側面の一部に倣う境界面を有する相異なる複数の領域から、前記特定部が特定した操作部を設けてある前記外面に沿う前記内側面の一部に倣う境界面を有する一の領域に係る情報を選択する選択部と、
前記受信信号強度と、前記複数のアンテナから送信される信号の受信信号強度を予め測定して得られる標本値に基づいて算出され、前記一の領域を規定する統計値との統計距離を算出することによって、前記携帯機が、選択された一の領域の内側にあるか否かを判定する判定部と
して機能させるためのコンピュータプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0017】
(1)本発明の一態様に係る車両用通信システムは、車両の外面に設けられた複数の操作部のいずれかが操作されたとき、該車両に配された複数のアンテナから信号を送信する車載機と、該車載機から送信された信号を受信し、受信した信号の受信信号強度を測定し、測定した信号の受信信号強度を含む応答信号を送信する携帯機とを備える車両用通信システムであって、前記車載機は、共通の車室内空間を包含する相異なる複数の領域それぞれに係る情報を記憶する記憶部と、前記複数の操作部の内、操作された操作部を特定する特定部と、該特定部が特定した操作部に応じて、前記記憶部が記憶する複数の領域それぞれに係る情報から一の領域に係る情報を選択する選択部と、前記携帯機から送信された応答信号を受信する車載受信部と、該車載受信部が受信した応答信号に含まれる受信信号強度及び前記選択部が選択した一の領域に係る情報に基づいて、該領域の内側に前記携帯機があるか否かを判定する判定部とを備える。
【0018】
本願にあっては、車載機は、車両の外面に設けられた複数の操作部のいずれかが操作されたとき、当該車両に設けられた複数のアンテナから信号を送信する。当該信号は、携帯機の位置を判定するための信号である。携帯機は、各アンテナから送信された信号を受信し、各信号の受信信号強度を測定し、測定して得た受信信号強度を含む応答信号を車載機へ送信する。各信号の受信信号強度は、車両に対する携帯機の位置によって変化する。
車載機の記憶部は、共通の車室内空間を包含する相異なる複数の領域それぞれに係る情報を記憶する。車載機の特定部は、当該複数の操作部の内、操作された操作部を特定する。車載機の選択部は、特定部が特定した操作部に応じて、記憶部に記憶された複数の領域それぞれに係る情報から一の領域に係る情報を選択する。また、車載機は、携帯機から送信された応答信号を車載受信部にて受信する。車載機の判定部は、車載受信部にて受信された応答信号に含まれる受信信号強度及び選択部が選択した一の領域に係る情報に基づいて、当該一の領域の内側に携帯機があるか否かを判定する。
選択した一の領域について携帯機が内側にあるか否かを判定することで、携帯機が車室内にあるか又は車室外にあるかの判定を行うことができる。以下、携帯機が車室内にあるか又は車室外にあるかの判定を車室内外判定と呼ぶ。車載機は、使用者が操作した操作部に応じて情報を選択し、選択した情報に基づいて車室内外判定を行うことができるため、当該車室内外判定に要する時間を短縮することができる。また、選択部が例えば、操作された操作部が設けられた車両の外面に沿うように作成された領域を選択することで、携帯機を有する使用者が当該操作部を操作した場合に車室内外判定の判定精度が良好となる。
なお、本願の車室内空間は車室の空間と完全に一致している必要はなく、車室全体を漏れなく包含している必要はない。
また、車室内空間の内外境界の全てにおいて、精度良く携帯機の車室内外判定を行う必要は無く、問題が無ければ、前記内外境界の一部に車室内外判定精度が悪い部分が存在する実施態様も本願の実施態様に含まれる。
さらに、選択部が選択する領域が、操作部の外面に沿わない領域も本願の実施形態に含まれる。
【0019】
(2)前記複数の領域はそれぞれ、車室の内側面の一部に倣う境界面を有し、前記選択部は、前記特定部が特定した操作部を設けてある前記外面に沿う前記内側面の一部に倣う境界面を有する領域に係る情報を選択する構成が好ましい。
【0020】
本願によれば、複数の領域はそれぞれ、車室の内側面の一部に倣う境界面を有している。選択部は、特定部が特定した操作部を設けてある外面に沿う車室の内側面の一部に倣う境界面を有する領域を選択する。従って、携帯機が操作された操作部近傍にある場合に、当該領域において行われる車室内外判定の精度が良好となる。
【0021】
(3)前記判定部は、前記車載受信部が受信した応答信号に含まれる受信信号強度の一部及び前記選択部が選択した領域に係る情報に基づいて、該領域の内側に前記携帯機があるか否かを判定するようにしてあり、判定に用いる受信信号強度は、前記選択部が選択した領域に係る情報毎に異なる構成が好ましい。
【0022】
本願によれば、判定部は、携帯機が測定する受信信号強度の一部に基づいて、車室内外判定を行う。一般的に、領域における携帯機の内外判定を効果的に行うために必要な受信信号強度は、領域毎に異なる。従って、判定部は、領域毎に異なる受信信号強度を用いて、携帯機の車室内外判定を行う。選択部が選択した情報に対応する領域について、車室内外判定に用いる受信信号強度の数を抑えることにより、携帯機の車室内外判定精度を損なうことなく、車室内外判定に要する時間をより短縮できる。短縮可能な時間は、車室内外判定精度に寄与する程度が低いアンテナからの受信信号強度測定用の信号の送信、受信信号強度の測定、受信信号強度の測定結果の送受信に要する時間、車室内外判定で使用しない領域での判定の処理に要する時間等である。なお、本態様は、各時間全てを短縮できる構成に限定されるものでは無く、上述した時間のいずれかを短縮することができる構成も本態様に含まれる。また、記憶部に記憶する領域に係る情報、つまり携帯機が当該領域の内側又は外側のいずれにあるかを判定するための情報の作成に要する工数を抑えることができる。
【0023】
(4)前記記憶部は、前記操作部それぞれに対応付けて一又は複数のアンテナを記憶するようにしてあり、前記車載機は、前記特定部が特定した操作部に対応付けて前記記憶部に記憶された一又は複数のアンテナから信号を送信する送信制御部を備える構成が好ましい。
【0024】
本願によれば、記憶部は、操作部それぞれに対応付けて一又は複数のアンテナを記憶する。車載機の送信制御部は、特定部が特定した操作部に対応付けて記憶部に記憶された一又は複数のアンテナから信号を送信する。従って、例えば、各操作部が操作された際に行われる車室内外判定に寄与する程度が高いアンテナのみを各操作部に対応付けて予め記憶しておくことにより、車載機は、当該車室内外判定夫々に寄与する程度が低いアンテナから信号を送信しない。そのため、携帯機の車室内外判定精度を損なうことなく、車室内外判定に要する時間をより短縮できる。短縮可能な時間は、車室内外判定精度に寄与する程度が低いアンテナからの受信信号強度測定用の信号の送信、受信信号強度の測定、受信信号強度の測定結果の送受信に要する時間、車室内外判定で使用しない領域での判定の処理に要する時間等である。なお、本態様は、各時間全てを短縮できる構成に限定されるものでは無く、上述した時間のいずれかを短縮することができる構成も本態様に含まれる。
【0025】
(5)本発明の一態様に係る車載機は、車両の外面に設けられた複数の操作部のいずれかが操作されたとき、該車両に配された複数のアンテナから信号を送信し、該信号に応じて外部機器から送信された応答信号を受信する車載機であって、共通の車室内空間を包含する相異なる複数の領域それぞれに係る情報を記憶する記憶部と、前記複数の操作部の内、操作された操作部を特定する特定部と、該特定部が特定した操作部に応じて、前記記憶部が記憶する複数の領域それぞれに係る情報から一の領域に係る情報を選択する選択部と、前記複数のアンテナからそれぞれ送信された信号の前記外部機器における受信信号強度を含む応答信号を受信する車載受信部と、該車載受信部が受信した応答信号に含まれる受信信号強度及び前記選択部が選択した一の領域に係る情報に基づいて、該領域の内側に前記外部機器があるか否かを判定する判定部とを備える。
【0026】
本願にあっては、車載機は、車両の外面に設けられた複数の操作部のいずれかが操作されたとき、該車両に配された複数のアンテナから信号を送信し、当該信号に応じて外部機器から送信された応答信号を受信する。車載機の記憶部は、共通の車室内空間を包含する相異なる複数の領域それぞれに係る情報を記憶する。車載機の特定部は、車両の外面に設けられた複数の操作部の内、操作された操作部を特定する。車載機の選択部は、特定部が特定した操作部に応じて、記憶部が記憶する複数の領域それぞれに係る情報から一の領域に係る情報を選択する。また、車載機は、携帯機から送信された応答信号を車載受信部にて受信する。車載機の判定部は、車載受信部にて受信された応答信号に含まれる受信信号強度及び選択部が選択した一の領域に係る情報に基づいて、当該一の領域の内側に携帯機があるか否かを判定する。
従って、実施態様(1)と同様、車載機は、使用者が操作した操作部に応じて情報を選択し、選択した情報に基づいて車室内外判定を行うことができるため、当該車室内外判定に要する時間を短縮することができる。また、選択部が例えば、操作された操作部が設けられた車両の外面に沿うように作成された領域を選択することで、携帯機を有する使用者が当該操作部を操作した場合に車室内外判定の判定精度が良好となる。
【0027】
(6)本発明の一態様に係る携帯機は、外面に複数の操作部を有し、該複数の操作部のいずれかが操作されることに起因して車両から送信される複数の信号を受信し、受信した信号に応じた応答信号を送信する携帯機であって、共通の車室内空間を包含する相異なる複数の領域それぞれに係る情報を記憶する記憶部と、前記複数の操作部の内、操作された操作部を、受信した信号に基づいて特定する特定部と、該特定部が特定した操作部に応じて、前記記憶部が記憶する複数の領域それぞれに係る情報から一の領域に係る情報を選択する選択部と、前記複数の信号の受信信号強度を測定する測定部と、該測定部が測定した受信信号強度及び前記選択部が選択した一の領域に係る情報に基づいて、該領域の内側に自身があるか否かを判定する判定部とを備える。
【0028】
本願にあっては、携帯機は、外面に複数の操作部を有し、該複数の操作部のいずれかが操作されることに起因して車両から送信される複数の信号を受信し、受信した信号に応じた応答信号を送信する。携帯機の記憶部は、共通の車室内空間を包含する相異なる複数の領域それぞれに係る情報を記憶する。携帯機の特定部は、車両の外面に設けられた複数の操作部の内、操作された操作部を、受信した信号に基づいて特定する。携帯機の選択部は、特定部が特定した操作部に応じて、記憶部が記憶する複数の領域それぞれに係る情報から一の領域に係る情報を選択する。また、携帯機の測定部は、受信した複数の信号の受信信号強度を測定する。携帯機の判定部は、測定部が測定した受信信号強度及び選択部が選択した一の領域に係る情報に基づいて、当該領域の内側に自身があるか否かを判定する。従って、実施態様(1)同様、携帯機は、使用者が操作した操作部に応じて情報を選択し、選択した情報に基づいて車室内外判定を行うことができるため、当該車室内外判定に要する時間を短縮することができる。また、実施態様(1)同様、選択部が例えば、操作された操作部が設けられた車両の外面に沿うように作成された領域を選択することで、携帯機を有する使用者が当該操作部を操作した場合に車室内外判定の判定精度が良好となる。
【0029】
(7)本発明の一態様に係るコンピュータプログラムは、車両の外面に設けられた複数の操作部のいずれかが操作されたことに起因して、該車両に配された複数のアンテナから送信され、携帯機が受信した信号の受信信号強度に基づいて、該携帯機が車室内にあるか否かを、コンピュータに判定させるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータを、前記複数の操作部の内、操作された操作部を特定する特定部と、特定された操作部に応じて、共通の車室内空間を包含する相異なる複数の領域から一の領域を選択する選択部と、前記受信信号強度に基づいて、前記携帯機が、選択された一の領域の内側にあるか否かを判定する判定部として機能させる。
【0030】
本願にあっては、コンピュータは、車両の外面に設けられた複数の操作部の内、操作された操作部を特定する。コンピュータは、特定された操作部に応じて、共通の車室内空間を包含する相異なる複数の領域から一の領域を選択する。コンピュータは、携帯機が受信した信号の受信信号強度に基づいて、当該携帯機が選択された一の領域の内側にあるか否かを判定する。従って、使用者が操作した操作部に応じて選択した一の領域について、携帯機が内側にあるか否かにより、車室内外判定を行うことができるため、当該車室内外判定に要する時間を短縮することができる。また、操作された操作部が設けられた車両の外面に沿うように作成された領域を選択することで、携帯機を有する使用者が操作部を操作した場合に車室内外判定の判定精度が良好となる。
【0031】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る車両用通信システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る車両用通信システムの一構成例を示すブロック図である。本実施形態1に係る車両用通信システムは、車両Cに設けられた複数の送信アンテナ(3)及び受信アンテナ4を用いて各種信号を送受信する車載機1と、当該車載機1との間で信号を送受信する携帯機2とを備える。
複数の送信アンテナ(3)は、例えば、運転席側のピラーに設けられた第1送信アンテナ31、助手席側のピラーに設けられた第2送信アンテナ32、バックドアに設けられた第3送信アンテナ33、車両Cの前部に設けられた第4送信アンテナ34を含む。受信アンテナ4は車両Cの適宜箇所に設けられている。なお、本実施形態1においては車両Cの進行方向右側が運転席側、進行方向左側が助手席側である。
また、車両Cには、複数の車両ドアリクエストスイッチ(5a)が外面に設けられている。具体的には、運転席外側のドアハンドルに第1車両ドアリクエストスイッチ51a、助手席外側のドアハンドルに第2車両ドアリクエストスイッチ52a、及びバックドアのドアハンドルに第3車両ドアリクエストスイッチ53aが設けられている。各車両ドアリクエストスイッチ(5a)は、例えば、設けられたドアを施錠又は開錠するための押下式のスイッチ、ドアハンドルに対する使用者の手の接触を検出する接触センサ等により構成されている。なお、各車両ドアリクエストスイッチ(5a)は、設けられたドアを施錠するための構成と、解錠するための構成とが別体であってもよい。車両ドアリクエストスイッチ(5a)は、本願の操作部に相当する。また更に、車両Cには、エンジンスタートスイッチ5bが車室内に設けられている。エンジンスタートスイッチ5bは、例えば、運転席前方にあるインストルメントパネルに設けられた押下式のスイッチ等により構成されている。エンジンスタートスイッチ5bが操作されることにより、エンジンの始動又は停止が行われる。
【0032】
車載機1は、車両ドアリクエストスイッチ(5a)のいずれか、又はエンジンスタートスイッチ5bが操作されたとき、携帯機2の位置を判定するための信号を複数の送信アンテナ(3)から無線信号を用いて順次送信する。携帯機2は、各送信アンテナ(3)から送信された信号を受信し、受信した各信号の受信信号強度を測定する。携帯機2は、測定された受信信号強度を含む応答信号を無線信号を用いて車載機1へ送信する。車載機1は携帯機2から送信された応答信号を受信し、受信した応答信号に含まれる受信信号強度に基づいて、携帯機2の車室内外判定を行い、判定結果に応じた所定処理を実行する。例えば、車載機1は、車両ドアの施錠又は解錠、エンジン始動、車両ドアの施錠忘れの警告等の処理を実行する。
【0033】
図2は車載機1の一構成例を示すブロック図である。車載機1は、当該車載機1の各構成部の動作を制御する制御部11を備える。制御部11には、車載受信部12、車載送信部13、切替器13a、記憶部14が設けられている。
【0034】
制御部11は、例えば一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インタフェース、タイマ等を有するマイコンである。制御部11のCPUは入出力インタフェースを介して車載受信部12、車載送信部13及び記憶部14に接続している。制御部11は記憶部14に記憶されている後述の制御プログラム10aを実行することにより、各構成部の動作を制御し、携帯機2の車室内外判定、車室内外判定に応じた所定処理を実行する。
【0035】
記憶部14は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部14は、制御部11が車載機1の各構成部の動作を制御することにより、携帯機2の車室内外判定を実行するための制御プログラム10aを記憶している。また、記憶部14は携帯機2の車室内外判定を行うための各種統計値を記憶している。統計値の詳細は後述する。なお、
図2では制御部11及び記憶部14を別体の構成部として図示しているが、制御部11の内部に記憶部14を備えても良い。
本実施形態1に係る制御プログラム10aは、記録媒体10にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様でも良い。記憶部14は、図示しない読出装置によって記録媒体10から読み出された制御プログラム10aを記憶する。記録媒体10はCD(Compact Disc)−ROM、DVD(Digital Versatile Disc)−ROM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)等の光ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク、半導体メモリ等である。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータから本実施形態1に係る制御プログラム10aをダウンロードし、記憶部14に記憶させても良い。
【0036】
車載受信部12には、受信アンテナ4が接続されている。車載受信部12は、携帯機2から無線により送信される応答信号等を、受信アンテナ4を通じて受信する。車載受信部12は、受信した応答信号等から搬送波の成分を除去して受信信号を抽出し、抽出された受信信号を制御部11へ出力する回路である。搬送波としては300MHz〜3GHzのUltra High Frequency帯(UHF帯)を使用するが、この周波数帯に限定するものでは無い。
【0037】
車載送信部13は、搬送波を用いて、制御部11から出力された信号を無線信号に変調し、当該無線信号を制御部11と切替器13aによって選択された一の送信アンテナ(3)から携帯機2へ送信する回路である。搬送波としては30kHz〜300MHzのLow Frequency帯(LF帯)を使用するが、この周波数帯に限定するものでは無い。
【0038】
また、車載機1の制御部11には、車両ドアリクエストスイッチ(5a)の操作状態に応じたリクエスト信号が入力される。制御部11は、入力されたリクエスト信号に基づいて、車両ドアリクエストスイッチ(5a)の操作状態を認識することができる。なお、制御部11は、車両ドアリクエストスイッチ(5a)の操作に対応したリクエスト信号を直接取得しても良いし、ドアECU(Electronic Control Unit)、その他のECU等を介して取得しても良い。
制御部11は、車両ドアリクエストスイッチ(5a)の操作状態、携帯機2が車室内にあるか否かと言った状況に応じて、車両ドアの解錠又は施錠を制御するための車両ドア制御指令を、図示しないドアECUへ出力する。ドアECUは、制御部11からの車両ドア制御指令に従って、車両ドアを施錠し又は解錠する。また、制御部11は、前記状況に応じて、必要があれば、警告指令を図示しない警告装置へ出力する。例えば、携帯機2が車室内に閉じ込められ得る状態で車両ドアリクエストスイッチ(5a)が操作されたような場合、制御部11は警告指令を警告装置へ出力する。警告装置は、警告指令に従って、音又は光等を用いて車両Cの使用者に対して所定の警告を行う。
【0039】
更に、車載機1の制御部11には、エンジンスタートスイッチ5bの操作状態に応じたエンジンスタート信号が入力する。制御部11は入力したエンジンスタート信号に基づいて、エンジンスタートスイッチ5bの操作状態を認識することができる。制御部11は、エンジンスタートスイッチ5bの操作状態、携帯機2が車室内にあるか否かと言った状況に応じて、エンジンを始動又は停止させるためのエンジン制御指令を、図示しないエンジンECUへ出力する。エンジンECUは、制御部11からのエンジン制御指令に従って、エンジンを始動し又は停止する。
【0040】
図3は携帯機2の一構成例を示すブロック図である。携帯機2は、該携帯機2の各構成部の動作を制御する制御部21を備える。制御部21には、受信部23、信号強度測定部23b、切替器23c、送信部22及び記憶部24が設けられている。
【0041】
制御部21は、例えば一又は複数のCPU、マルチコアCPU、ROM、RAM、入出力インタフェース、タイマ等を有するマイコンである。制御部21のCPUは入出力インタフェースを介して送信部22及び受信部23に接続されている。制御部21は記憶部24に記憶されている制御プログラムを実行することにより、各構成部の動作を制御し、携帯機2の車室内外判定に必要な情報を車載機1へ送信する各種処理を実行する。
【0042】
記憶部24は、記憶部14と同様の不揮発性メモリである。記憶部24は、制御部21が携帯機2の各構成部の動作を制御することにより、携帯機2の車室内外判定を行うための制御プログラムを記憶している。制御プログラムによって制御部21は、車室内外判定に必要な情報を含む応答信号等を車載機1へ送信する処理を実行する。また、記憶部24は、携帯機2を識別するための携帯機識別子を記憶している。
図3では制御部21及び記憶部24を別体の構成部として図示しているが、制御部21の内部に記憶部24を備えても良い。
【0043】
受信部23には、3つのコイルを互いに直交する方向に向けて配置した3軸アンテナ23aが切替器23cを介して接続されている。受信部23は、車載機1から送信される無線信号を、3軸アンテナ23a及び切替器23cを通じて受信する。3軸アンテナ23aにて受信した3つの無線信号は切替器23cに入力する。切替器23cは、制御部21の制御に従って、一の無線信号を選択する。受信部23は、切替器23cによって選択された無線信号から搬送波の成分を除去して受信信号を抽出し、抽出された受信信号を制御部21へ出力する回路である。搬送波としては30kHz〜300MHzのLow Frequency帯(LF帯)を使用するが、この周波数帯に限定するものでは無い。
【0044】
また携帯機2は車載機1から送信される無線信号を、3軸アンテナ23aを通じて受信し、切替器23cにより選択した無線信号の受信信号強度を測定し、測定された受信信号強度を制御部21へ出力する信号強度測定部23bを備える。
制御部21は車載機1から信号強度測定用の無線信号が送信されるタイミングに合わせて、3軸アンテナ23aからの3つの無線信号をそれぞれ選択し、選択された無線信号の受信信号強度を信号強度測定部23bによって測定する。つまり、制御部21は、車載機1から送信される無線信号の振幅方向における受信信号強度ではなく、3軸アンテナ23aの直交する3つの方向における該受信信号強度の成分を測定する。制御部21は、測定された受信信号強度の成分からベクトル計算を行い、車載機1から送信される無線信号の振幅方向における受信信号強度を算出する。従って、制御部21は、車両Cに対する携帯機2の向き又は姿勢に拘わらず一定の受信信号強度を得ることが可能となる。以下では、特に断らない限り、ベクトル計算によって算出された受信信号強度を、受信信号強度と呼ぶ。
なお、ここでは制御部21が受信信号強度を算出する例を説明したが、3軸アンテナ23aを通じて受信した各信号の受信信号強度を携帯機2から車載機1へ送信し、車載機1の制御部11が受信信号強度の算出を行っても良い。
【0045】
送信部22は、制御部21により入力された応答信号等を、搬送波を用いて変調し、送信アンテナ22aを通じて無線信号を送信する回路である。搬送波としては30kHz〜300MHzのLow Frequency帯(LF帯)を使用するが、この周波数帯に限定するものでは無い。
【0046】
次に車載機1の記憶部14が記憶している統計値について説明する。記憶部14は共通の車室内空間を包含する相異なる複数の領域を規定する統計値を記憶する。本実施形態1では、3つの領域として記憶部14は第1領域、第2領域、及び第3領域を規定する統計値を記憶している。
【0047】
図4は第1領域61を示す概念図である。
図4Aは第1領域61の平面図、
図4Bは第1領域61の立面図である。第1領域61は3次元の空間であり、
図4に示すように車室の右内側面に倣う境界面を有し、共通の車室内空間を包含する形状である。従って、車室を構成する左側壁、後壁及びフロントガラス部分も第1領域61に包含されている。
図4中、ハッチングを付した部分が前記共通の車室内空間である。前記共通の車室内空間は、例えば車室内に居る使用者によって、携帯機2を配置させることが可能な空間である。
第1領域61の境界面と、車室の内側面とは完全には一致していないため、第1領域61における携帯機2の内外判定を行っても、携帯機2の車室内外判定を正確に行うことができない。しかし、少なくとも第1領域61の境界面の一部は、車室の右内側面と略一致しているため、携帯機2が車両Cの右側壁近傍にある場合に限れば、携帯機2の車室内外判定を精度良く行うことができる。
【0048】
図5は第1領域61に係る標本抽出箇所を示す概念図である。第1領域61を規定する統計値は、車両用通信システムの製造工程において算出され、記憶部14は算出された統計値を記憶する。統計値は、複数の送信アンテナ(3)から送信された各信号を受信した携帯機2によって測定される受信信号強度の標本値に基づいて算出される。なお、受信信号強度の標本値を測定する装置は必ずしも携帯機2である必要は無く、携帯機2によって測定される受信信号強度に対応する信号の強度を測定できる測定機器であれば、特に限定されることは無い。
【0049】
受信信号強度の標本値は、携帯機2を車両Cの内外の特定箇所に配置して受信信号強度を測定することによって得られる。以下、複数箇所で測定された受信信号強度の集合を標本群と呼ぶ。記憶部14は第1領域61を規定する統計値として、第1領域61の内側を特徴付ける標本群に基づく第1統計値と、第1領域61の外側を特徴付ける標本群に基づく第2統計値とを記憶する。
【0050】
図5Aは第1統計値を算出する元になる標本値を得るための携帯機2の配置を示している。具体的には、車室の右側面の車室内側に沿う複数箇所並びに左側面の車室内側及び車室外側に沿う複数箇所に携帯機2を配置し、それぞれの箇所で携帯機2が受信する信号の受信信号強度を測定する。そして、測定された受信信号強度の標本値に基づいて第1統計値を算出する。破線の楕円は携帯機2を配置すべき箇所を示している。
本実施形態1における送信アンテナ(3)は4本であるため、1箇所で携帯機2が測定する受信信号強度は4つである。従って各箇所で得られる受信信号強度の標本はベクトル量であり、標本群はベクトルである標本の群である。4つの受信信号強度を成分として有するベクトルを受信信号強度ベクトルと呼ぶ。
ところで第1領域61の内側を特徴付ける標本群であるにも拘わらず、
図5Aに示すように該標本群の中に車室外で測定された受信信号強度の標本値が含まれている。これは第1領域61が車室内空間全体を包含するようにするためである。標本群の中に、左側面の車室内側及び車室外側で測定される標本値が含まれていない場合、該標本群は車両Cの右側面で測定される受信信号強度の標本値に偏重してしまう。標本群が車両Cの右側面で測定される標本値に偏重していると、該標本群によって特徴付けられる第1領域61の範囲から、車両Cの左側部分が外れてしまう。そこで、本実施形態1では、
図5Aに示すような箇所に携帯機2を配置し、受信信号強度の標本値を収集している。
【0051】
第1統計値は、例えば、第1領域61の内側を特徴付ける標本群の平均ベクトル及び逆分散共分散行列である。標本群の平均ベクトルは下記式(1)及び(2)で表される。
図5Aに示す黒丸は前記平均ベクトルの概念的な位置を示している。
【0053】
第1領域61の内側を特徴付ける標本群の分散共分散行列は下記式(3)及び(4)で表される。逆分散共分散行列は、下記式(3)で表される分散共分散行列の逆行列であり、記憶部14は逆分散共分散行列を記憶している。
【0055】
図5Bは第2統計値を算出する元になる標本値を得るための携帯機2の配置を示している。具体的には、車室の右側面の車室外側に沿う複数箇所に携帯機2を配置し、それぞれの箇所で携帯機2が受信する信号の受信信号強度を測定する。そして、測定された受信信号強度の標本値に基づいて第2統計値を算出する。第2統計値は、第1領域61の外側を特徴付ける標本群の平均ベクトル及び逆分散共分散行列である。第2統計値である平均ベクトル及び逆分散共分散行列は、第1統計値と同様、上記式(1)〜(4)で表される。
図5Bに示す黒丸は、前記標本群の平均ベクトルの概念的な位置を示している。
【0056】
図6は第2領域62を示す概念図である。
図6Aは第2領域62の平面図、
図6Bは第2領域62の立面図である。第2領域62は3次元の空間であり、
図6に示すように車室の左側面に倣う境界面を有し、前記共通の車室内空間を包含する形状である。従って、車室を構成する右側壁、後壁及びフロントガラス部分も第2領域62に包含されている。
図6中、ハッチングを付した部分が前記共通の車室内空間である。
【0057】
記憶部14は第2領域62を規定する統計値として、第2領域62の内側を特徴付ける標本群に基づく第1統計値と、第2領域62の外側を特徴付ける標本群に基づく第2統計値とを記憶する。
【0058】
図7は第2領域62に係る標本抽出箇所を示す概念図である。第2領域62を規定する第1統計値及び第2統計値を算出するための受信信号強度の標本値は、
図7A及び
図7Bに示す車両Cの内外の特定箇所に携帯機2を配置して受信信号強度を測定することによって得られる。
【0059】
図7Aは第1統計値を算出する元になる標本値を得るための携帯機2の配置を示している。具体的には、車室の左側面の車室内側に沿う複数箇所並びに右側面の車室内側及び車室外側に沿う複数箇所に携帯機2を配置し、それぞれの箇所で携帯機2が受信する信号の受信信号強度を測定する。そして、測定された受信信号強度の標本値に基づいて第1統計値を算出する。第1統計値は、第2領域62の内側を特徴付ける標本群の平均ベクトル及び逆分散共分散行列である。
【0060】
図7Bは第2統計値を算出する元になる標本値を得るための携帯機2の配置を示している。具体的には、車室の左側面の車室外側に沿う複数箇所に携帯機2を配置し、それぞれの箇所で携帯機2が受信する信号の受信信号強度を測定する。そして、測定された受信信号強度の標本値に基づいて第2統計値を算出する。第2統計値は、第1統計値と同様、第2領域62の外側を特徴付ける標本群の平均ベクトル及び逆分散共分散行列である。
【0061】
図8は第3領域63を示す概念図である。
図8Aは第3領域63の平面図、
図8Bは第3領域63の立面図である。第3領域63は3次元の空間である。第3領域63は
図8Aに示すように車室の後側の内面に倣う境界面を有し、共通の車室内空間全体を包含するような形状である。
図8中、ハッチングを付した部分が前記共通の車室内空間である。
従って、記憶部14には、共通の車室内空間を包含する相異なる複数の領域それぞれに係る情報として、第1領域乃至第3領域61、62、63それぞれを特徴付ける第1統計値及び第2統計値がそれぞれ記憶されている。
【0062】
以上のように構成された車両用通信システムでは、車載機1は、第1車両ドアリクエストスイッチ乃至第3車両ドアリクエストスイッチ51a、52a、53aのいずれかが操作されたとき、操作された車両ドアリクエストスイッチ(5a)に応じた処理を行う。具体的には、車載機1は、操作された車両ドアリクエストスイッチ(5a)に応じて、第1領域乃至第3領域61、62、63から一の領域を選択し、選択した領域の内側に携帯機2があるか否かの判定を実行することで車室内外判定を行う。具体的には、車載機1は、第1車両ドアリクエストスイッチ51aが操作されたとき、
図4に示された第1領域61を選択し、第2車両ドアリクエストスイッチ52aが操作されたとき、
図6に示された第2領域62を選択する。また、車載機1は、第3車両ドアリクエストスイッチ53aが操作されたとき、
図8に示された第3領域63を選択する。以下、車両用通信システムが車室内外判定を行うときにおける車両用通信システムの処理手順について説明する。
【0063】
図9は、車両通信システムが、携帯機2の車室内外判定を行うときの処理手順を示すフローチャートである。車載機1の制御部11は、リクエスト信号が入力されたか否かにより、車両ドアリクエストスイッチ(5a)が操作されたか否かを判定する(ステップS101)。操作されていないと判定した場合(ステップS101:NO)、制御部11は車両ドアリクエストスイッチ(5a)が操作されるまで待機する。操作されたと判定した場合(ステップS101:YES)、制御部11は、入力されたリクエスト信号の出力元を特定することにより、操作されたスイッチを特定する(ステップS102)。例えば、リクエスト信号には、送出元の車両ドアリクエストスイッチ(5a)を識別するIDが含まれるように構成され、制御部11は、入力されたリクエスト信号に含まれるIDに基づいて、当該リクエスト信号の出力元を特定してもよい。また、例えば、制御部11は、各車両ドアリクエストスイッチ(5a)からのリクエスト信号の入力場所が異なるように構成することにより、入力されたリクエスト信号の入力場所に基づいて、出力元の車両ドアリクエストスイッチ(5a)を識別してもよい。制御部11はステップS102の処理で制御プログラム10aを実行することにより、特定部として機能する。その後、制御部11は、特定した車両ドアリクエストスイッチ(5a)を自身が備えるRAMに一時記憶する(ステップS103)。具体的には、特定した車両ドアリクエストスイッチ(5a)を識別するID等の情報を一時記憶する。
【0064】
次いで、制御部11は、認証前通信処理を行う(ステップS104)。認証前通信処理とは、車両ドアリクエストスイッチ(5a)が操作されたことに基づいて、通信相手の携帯機2が正規であるか否かを、車載機1が認証するために、車載機1及び携帯機2間で行われる通信処理であり、詳細は後述する。その後、制御部11は、認証前通信処理に基づいて携帯機2の認証を行う(ステップS105)。
【0065】
認証に成功したと判定した場合(ステップS105:YES)、制御部11は、一時記憶した車両ドアリクエストスイッチ(5a)に応じて、記憶部14に記憶された統計値から、一の領域の内側及び外側それぞれを特徴付ける第1統計値及び第2統計値を選択する(ステップS106)。例えば、記憶部14は、第1領域乃至第3領域61、62、63を特徴付ける第1統計値及び第2統計値それぞれを、各領域を識別するID等に対応付けて記憶するように構成される。このとき制御部11は、ステップS106の処理において、一時記憶された車両ドアリクエストスイッチ(5a)を設けてある外面に沿う車室内側面に、境界面の一部が一致する領域を特徴付ける第1統計値及び第2統計値を読み出すことにより選択する。具体的には、制御部11は、一時記憶された車両ドアリクエストスイッチ(5a)が第1車両ドアリクエストスイッチ51aであった場合、第1領域61を特徴付ける第1統計値及び第2統計値を記憶部14から読み出す。また、制御部11は、当該車両ドアリクエストスイッチ(5a)が、第2車両ドアリクエストスイッチ52aであった場合、第2領域62を特徴付ける第1統計値及び第2統計値を記憶部14から読み出す。更に、当該車両ドアリクエストスイッチ(5a)が、第3車両ドアリクエストスイッチ53aであった場合、第3領域63を特徴付ける第1統計値及び第2統計値を記憶部14から読み出す。ここで、制御部11はステップS106の処理で制御プログラム10aを実行することにより、選択部として機能する。
【0066】
ステップS106の処理の後、制御部11は、選択した第1統計値及び第2統計値を用いて車室内外判定の処理を実行する(ステップS107)。つまり、制御部11は、携帯機2が車室内にあるか、車室外にあるかの判定を行う。車室内外判定の結果は数値で表される。例えば携帯機2が車室内にある場合、車室内外判定結果の数値は1、車室外にある場合、車室内外判定結果の数値は0であるものとする。
【0067】
次いで、制御部11は、車室内外判定の結果と、操作要求の内容によって予め定められている期待値とが整合しているか否かを判定する(ステップS108)。例えば、車両ドアリクエストスイッチ(5a)の操作によって車両ドアを解錠する操作に対する期待値は0に設定される。
【0068】
車室内外判定の結果と、期待値とが整合していると判定した場合(ステップS108:YES)、制御部11は、車両ドアリクエストスイッチ(5a)におけるスイッチ操作に応じた処理を実行する(ステップS109)。例えば、車載機1は、車両ドアの施錠又は解錠を指示する車両ドア制御信号をドアECUへ出力する処理を実行する。
【0069】
車室内外判定の結果と、期待値とが整合していないと判定した場合(ステップS108:NO)、又は携帯機2の認証に失敗したと判定した場合(ステップS105:NO)、制御部11は、要求棄却に係る処理を実行し(ステップS110)、処理を終える。要求棄却に係る処理は、車両ドアリクエストスイッチ(5a)におけるスイッチ操作に応じず、例えば携帯機2が車室外に無い場合に警告音を発する等の処理である。当該処理によって例えば、携帯機2の車室内閉じこめを防止するための携帯機2の位置確認を行うことができる。なお、要求棄却に係る処理は必須では無い。
【0070】
図10は、認証前通信処理のサブルーチンを示すフローチャートである。車載機1の制御部11は、車載送信部13によって、送信アンテナ(3)からウェイクアップ信号を送信させる(ステップS111)。
【0071】
ウェイクアップ信号を受信部23にて受信した携帯機2の制御部21は、スリープ状態からアクティブ状態へ起動し、自身の携帯機識別子を送信部22にて車載機1へ送信する(ステップS112)。
【0072】
車載機1の制御部11は、携帯機2から送信された携帯機識別子を車載受信部12にて受信する。そして、制御部11は、受信した携帯機識別子を用いて認証用のデータを作成し、該データを含むチャレンジ信号を車載送信部13によって、送信アンテナ(3)から送信させる(ステップS113)。
【0073】
制御部21は、チャレンジ信号を受信部23にて受信し、受信したチャレンジ信号に含まれるデータを用いて車載機1の正当性を確認し、車載機1が正当であると確認された場合、車載機1が携帯機2を認証するためのデータを作成し、当該データを含む応答信号を送信部22にて車載機1へ送信する(ステップS114)。その後、車両用通信システムにおける認証前通信処理のサブルーチンを終え、車載機1の制御部11は、ステップS114で送信された応答信号に含まれるデータに基づいて、ステップS105において携帯機2の認証を行う。
【0074】
図11は、車室内外判定処理のサブルーチンを示すフローチャートである。車載機1の制御部11は、車載送信部13によって、複数の各送信アンテナ(3)から車室内外判定のための受信信号強度測定用の信号を順次送信させる(ステップS121)。
【0075】
携帯機2の制御部21は、各送信アンテナ(3)から送信された信号を受信部23にて受信し、信号強度測定部23bが測定した各信号の受信信号強度を取得する。そして、制御部21は、測定した受信信号強度を含む応答信号を送信部22にて車載機1へ送信する。
【0076】
車載機1の制御部11は、携帯機2から送信された応答信号を車載受信部12にて受信する(ステップS122)。次に制御部11は、車載受信部12が受信した応答信号に含まれる受信信号強度、及び
図9中のステップS106で選択した第1統計値に基づいて、当該受信信号強度と、当該第1統計値に係る標本群との統計距離を算出する(ステップS123)。例えば、ステップS106で第1領域61の第1統計値を選択した場合、制御部11は、応答信号に含まれる受信信号強度と、第1領域61の内側を特徴付ける標本群との統計距離を算出する。統計距離は例えばマハラノビス距離である。マハラノビス距離は下記式(5)により表される。
【0079】
次いで、制御部11は、ステップS122で受信した応答信号に含まれる受信信号強度、及びステップS106で選択した第2統計値に基づいて、当該受信信号強度と、当該第2統計値に係る標本群との統計距離を算出する(ステップS124)。ステップS106で第1領域61の第2統計値を選択した場合、制御部11は、応答信号に含まれる受信信号強度と、第1領域61の外側を特徴付ける標本群との統計距離を算出する。統計距離は例えばマハラノビス距離である。
【0080】
そして、制御部11は、ステップS123で算出した統計距離と、ステップS124で算出した統計距離とを比較することによって、携帯機2がステップS106で選択した統計値に対応する一の領域の内側にあるか否かを判定する(ステップS125)。例えば、第1領域61の内側を特徴付ける標本群との統計距離が、第1領域61の外側を特徴付ける標本群との統計距離より短い場合、制御部11は携帯機2が第1領域61の内側にあると判定する。第1領域61の外側を特徴付ける標本群との統計距離が、第1領域61の内側を特徴付ける標本群との統計距離より短い場合、制御部11は携帯機2が第1領域61の外側にあると判定する。制御部11はステップS125の処理で制御プログラム10aを実行することにより、判定部として機能する。
【0081】
携帯機2が前記一の領域の内側にあると判定した場合(ステップS125:YES)、制御部11は、携帯機2が車室内にあると判定し(ステップS126)、サブルーチンの処理を終える。
携帯機2が前記一の領域の外側にあると判定した場合(ステップS125:NO)、制御部11は、携帯機2が車室外にあると判定し(ステップS127)、サブルーチンの処理を終える。
【0082】
一方、車両ドアリクエストスイッチ(5a)が操作されたときと同様、エンジンスタートスイッチ5bが操作されたとき、車載機1は携帯機2の所在位置を判定する。このとき、車載機1は、
図9〜
図11で示した処理と同様の処理を行うため、以下に異なる箇所について説明する。
【0083】
車載機1の制御部11は、
図9中のステップS101の処理に代えて、エンジンスタートスイッチ5bが操作されたか否かを判定する。操作されたと判定していない場合、制御部11は操作されるまで待機し、操作されたと判定した場合、ステップS104〜ステップS110と同様の処理を行う。制御部11は、ステップS106に対応する処理を行うとき、第1領域乃至第3領域61、62、63を特徴付ける統計値の一部又は全部を選択してもよいし、異なる領域を特徴付ける統計値を記憶部14に記憶しておき、当該統計値を含むように選択してもよい。当該異なる領域とは、例えば、車室の前側の内面に倣う境界面を有し、共通の車室内空間全体を包含するような形状の3次元の空間である。
制御部11は、一の領域を特徴付ける統計値のみを選択した場合、ステップS107に対応する処理は、
図11中に示したサブルーチンと同様の処理を、選択した統計値に基づいて行う。制御部11は、複数の統計値を選択した場合、ステップS107に対応する処理は、各領域を特徴付ける統計値毎に
図11のステップS123〜ステップS125と同様の処理を行う。このとき車載機1は、ステップS125に対応する処理において、複数の領域全てについて、領域の内側に携帯機2があると判定した場合は、携帯機2が車室内にあると判定し、それ以外については、携帯機2は車室外にあると判定する。
ステップS109に対応する処理において車載機1は例えば、エンジンを始動又は停止させるためのエンジン制御指令をエンジンECUへ出力する処理を実行する。ステップS110に対応する処理において車載機1は例えば、携帯機2が車室内に無い場合に警告音を発する等の処理である。なお、ステップS110に対応する処理は必須では無い。
車載機1は、エンジンスタートスイッチ5bが操作された場合に、以上の処理を行うことによって、例えば、原動機始動時に携帯機2が車室内にあるか否かの確認、原動機動作中に携帯機2が車室内にあるか否かの確認を行うことができる。
【0084】
以上の車両用通信システムにおいて、車載機1は、
図9中のステップS102で特定したスイッチに基づいてステップS106で統計値を選択し、当該統計値と受信した応答信号に含まれる受信信号強度とで、携帯機2の所在位置を判定することができる。当該統計値は、第1領域乃至第3領域61、62、63の内、一の領域に係る情報である。従って、車載機1は、選択した統計値に対応する一の領域についてのみ携帯機2が内側にあるか否かを判定することで、車室内外判定を行う。そのため、第1領域乃至第3領域61、62、63それぞれについて携帯機2が内側にあるか否かを判定する場合に比べて車室内外判定に要する時間を短縮することができる。また、車両ドアリクエストスイッチ(5a)の操作者が携帯機2を所持している場合、携帯機2は、当該車両ドアリクエストスイッチ(5a)近傍にある。そのため、車載機1は、操作された車両ドアリクエストスイッチ(5a)が設けられた車両Cの外面に沿う車室内側面に境界面の一部が倣う領域を選択することにより、車室内外判定精度が良好となる。
【0085】
なお、実施形態1における車載機1は、操作された車両ドアリクエストスイッチ(5a)が設けられた車両Cの外面に沿う車室内側面と異なる車室内側面に、境界面の一部が沿う領域に係る統計値を選択しても良い。車載機1は例えば、助手席側に設けられた第2車両ドアリクエストスイッチ52aが操作された場合、第1領域61を特徴付ける統計値を選択しても良い。この場合には、車両ドアリクエストスイッチ(5a)の操作者とは異なる運転者が携帯機2を所持している場合に、携帯機2についての車室内外判定精度が良好となる。
また、操作された車両ドアリクエストスイッチ(5a)に応じて選択される統計値が複数であってもよい。例えば、車載機1は、上述の
図9中のステップS106で選択される一の領域を特徴付ける統計値に加え、第1領域61を特徴付ける統計値を選択するようにしてもよい。このとき、車載機1は、選択した各領域を特徴付ける統計値毎に、
図11中のステップS123〜125の処理を実行し、当該一の領域及び第1領域61双方について、携帯機2が内側にあると判定した場合、車室内にあると判定し、それ以外は車室外にあると判定する。以上の処理を行うことにより、運転者が携帯機2を所持している場合に携帯機2についての車室内外判定精度がより良好となり、また、全ての領域について携帯機2が内側にあるか否かを判定する必要がないため、車室内外判定に要する時間を短縮することができる。
【0086】
更に、車室の右内側面に倣う境界面を有する第1領域61と、左内側面に倣う境界面を有する第2領域62とを用いることによって、車室の右側面及び左側面における携帯機2の車室内外判定を精度良く行うことができる。
【0087】
更にまた、車室の後側の内面に倣う境界面を有する第3領域63を用いることによって、車室の後面における携帯機2の車室内外判定を精度良く行うことができる。
【0088】
更に、車載機1は、第1領域61及び第2領域62の内側及び外側をそれぞれ特徴付ける第1統計値及び第2統計値を用いて携帯機2の車室内外判定を行う。第1統計値及び第2統計値は、
図5及び
図7に示すように、車両Cの右内側面及び左内側面の車室内側及び車室外側に沿った複数箇所で測定された受信信号強度の標本群に基づいて算出される。第1統計値及び第2統計値を算出するための標本群として、前記標本群を用いることにより、無作為に膨大な標本群を作成する場合に比べて、第1領域61及び第2領域62それぞれについて、携帯機2が領域の内側に所在しているか否かの判定を行うための統計値の作成に要する工数を効果的に抑えることができる。
【0089】
なお、実施形態1では、第1領域61及び第2領域62の内側及び外側をそれぞれ特徴付ける第1統計値及び第2統計値を算出する元になる標本群の受信信号強度を、
図5及び
図7に示した箇所で測定する例を説明したが、かかる測定箇所は一例である。例えば第1領域61に係る第1統計値を算出する元になる標本群は、少なくとも車室の右側面の車室内側に沿う複数箇所と、車室外側に沿う複数箇所とで受信信号強度を測定し、該第1領域61が共通の車室内空間を包含するようにすれば十分である。また第2領域62及び第3領域63についても同様である。
このようにして得られた第1統計値及び第2統計値を用いた場合も、上述の車両用通信システムと同様の効果を奏する。
【0090】
更にまた、車載機1は、第1領域乃至第3領域61、62、63の内側及び内側を特徴付ける標本群との統計距離を、第1統計値及び第2統計値に基づいて算出し、算出された統計距離を比較することによって、車載機1の車室内外判定を行うことができる。具体的には、マハラノビス距離の算出、及び各マハラノビス距離の比較といった簡単な演算によって、携帯機2の車室内外判定を精度良く行うことができる。
【0091】
なお、実施形態1では第1領域乃至第3領域61、62、63それぞれについて、携帯機2が領域の内側に所在するか否かの判定をマハラノビス距離によって行う例を説明したが、マハラノビス距離は統計距離の一例である。測定された受信信号強度と、特定の標本群との近似度を判定できれば、他の任意の統計距離、類似度等の統計値を用いても良い。
【0092】
また、車室内外判定を、操作された車両ドアリクエストスイッチ(5a)に応じて第1領域乃至第3領域61、62、63から一の領域を選択し、携帯機2が領域の内側に所在するか否かの判定によって行う例を説明したが、第1領域乃至第3領域61、62、63は一例である。携帯機2が、車室内空間の内面の一部に倣う境界面を有する領域の内側に所在するか否かの判定を行う構成であれば、車両用通信システムの任意の変形が可能である。例えば、操作された車両ドアリクエストスイッチ(5a)に応じて第1領域乃至第3領域61、62、63のいずれか2つを用いて、携帯機2の車室内外判定を行っても良い。また、本実施形態1とは形状が異なる2つ以上の他の領域を用いて携帯機2の車室内外判定を行っても良い。
【0093】
更に、本実施形態1の車両用通信システムでは、第1領域乃至第3領域61、62、63の内側及び外側を特徴付ける統計値として、平均ベクトル及び逆分散共分散行列を記憶部14が記憶している例を説明したが、当該統計値は一例である。携帯機2が各領域の内側に所在するか否かの判定を可能にする情報であれば、その内容及び記憶方法は特に限定されない。例えば、記憶部14が平均ベクトル及び分散共分散行列を記憶していても良いし、標本群自体を記憶しても良い。また、統計値等の情報は制御プログラム10aと別形態の情報として記憶部14に記憶されても良いし、制御プログラム10aに組み込まれた情報であっても良い。
【0094】
更にまた、
図5及び
図7に示した標本群の抽出箇所は一例であり、車室内空間の内面の一部に倣う境界面を有し、車室内空間全体を包含する領域を規定できれば、他の箇所で測定された受信信号強度の標本群を用いて、当該領域の統計値を算出しても良い。
【0095】
(変形例1)
実施形態1では、車載機1が携帯機2の車室内外判定を行う例を説明したが、携帯機2自身が車室内外判定を行うように構成しても良い。変形例1に係る車両通信システムの構成は、実施形態1の構成と同様であり、車載機1及び携帯機2を備える。変形例1の携帯機2は、第1領域乃至第3領域61、62、63を規定する第1統計値及び第2統計値、並びに本願のコンピュータプログラムを記憶部24に記憶している。
変形例1の車両用通信システムでは、
図9で説明したステップS106の処理と、ステップS107即ち
図11のステップS121〜ステップS127の処理とを適宜携帯機2の制御部21が実行し、車室内外判定結果を車載機1へ送信する。具体的な処理手順は、以下の通りである。
【0096】
車載機1の制御部11は、ステップS105で携帯機2の認証に成功したと判定した場合(ステップS105:YES)、車載送信部13によって、複数の各送信アンテナ(3)から車室内外判定のための受信信号強度測定用の信号を順次送信させる。このとき、制御部11は、ステップS103で記憶した車両ドアリクエストスイッチ(5a)の情報を含めて当該信号を送信させる。
【0097】
携帯機2の制御部21は、各送信アンテナ(3)から送信された信号を受信部23にて受信し、信号強度測定部23bが測定した各信号の受信信号強度を取得する。また、携帯機2の制御部21は、受信部23にて受信した信号に含まれる車両ドアリクエストスイッチ(5a)の情報に基づいて、操作された車両ドアリクエストスイッチ(5a)を特定する。このとき、制御部21は、記憶部24に記憶された本願のコンピュータプログラムを実行することにより特定部として機能する。
【0098】
次いで、制御部21は、特定した車両ドアリクエストスイッチ(5a)に応じて、記憶部24に記憶された統計値から、一の領域の内側及び外側それぞれを特徴付ける第1統計値及び第2統計値を選択する。制御部21は、
図9中のステップS106にて車載機1が行う処理と同様の処理にて、第1統計値及び第2統計値を選択する。このとき、制御部21は、記憶部24に記憶された本願のコンピュータプログラムを実行することにより選択部として機能する。
【0099】
次いで、制御部21は、測定した受信信号強度と、選択した第1統計値に係る標本群との統計距離を算出する。また、制御部21は、測定した受信信号強度と、選択した第2統計値に係る標本群との統計距離を算出する。制御部21は、算出した各統計距離を比較することによって、携帯機2が選択した第1統計値及び第2統計値によって特徴付けられる一の領域の内側にあるか否かを判定する。制御部21は、当該領域の内側にあると判定した場合には携帯機2が車室内にあると判定し、当該領域の外側にあると判定した場合には携帯機2が車室外にあると判定する。このとき、制御部21は、記憶部24に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより判定部として機能する。
【0100】
その後、制御部21は、携帯機2が車室内にあるか車室外にあるかの判定結果を含む応答信号を送信部22にて車載機1へ送信する。車載機1は、携帯機2から送信された応答信号を受信し、受信した応答信号に含まれる車室内外判定結果に応じて、所定処理を実行する。例えば、車載機1は車両ドアの施錠又は解錠処理を実行する。
【0101】
変形例1によれば、実施形態1と同様、第1領域乃至第3領域61、62、63の内、操作された車両ドアリクエストスイッチ(5a)に応じた一の領域の内側に携帯機2があるか否かを判定することにより、携帯機2の車室内外判定を行うことができる。そのため、車室内外判定に要する時間を短縮することができる。また、その他の効果も実施形態1と同様である。
【0102】
(実施形態2)
実施形態2に係る車両用通信システムは、応答信号に含まれる受信信号強度の内、操作された車両ドアリクエストスイッチ(5a)に応じて行われる携帯機2の車室内外判定に適した一部の受信信号強度を用いて、当該車室内外判定を行うものである。実施形態2に係る車両用通信システム及びコンピュータプログラムは、車載機1の記憶部14が記憶している統計値の内容と、制御部11の処理手順が実施形態1と異なるため、以下、主にかかる相違点を説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0103】
記憶部14は、実施形態1と同様、第1領域乃至第3領域61、62、63それぞれに係る情報として第1統計値及び第2統計値を記憶している。但し、各統計値の算出に用いられる標本群の受信信号強度が、領域毎に異なる。例えば、受信信号強度ベクトルは4つの受信信号強度を有するが、第1領域61における携帯機2の車室内外判定の精度を向上させる受信信号強度もあれば、影響しない受信信号強度、車室内外判定精度を悪化させる受信信号強度もある。そこで、第1領域乃至第3領域61、62、63毎に異なる受信信号強度を用いて算出された第1統計値及び第2統計値を記憶部14は記憶している。例えば、第1領域61に関しては第2送信アンテナ32、第3送信アンテナ33及び第4送信アンテナ34から送信される信号の受信信号強度を用いて第1統計値及び第2統計値を算出する。また、記憶部14は、第1領域乃至第3領域61、62、63毎に、4つの受信信号強度の内、いずれの受信信号強度を携帯機2の車室内外判定に用いるかを示した情報を記憶している。
【0104】
図12は、実施形態2における車室内外判定処理のサブルーチンを示すフローチャートである。車載機1及び携帯機2は、受信信号強度の測定、応答信号の受信に係る実施形態1と同様の処理(ステップS121及びステップS122)を、ステップS221及びステップS222で実行する。
【0105】
次いで、車載機1の制御部11は、応答信号に含まれる受信信号強度の内、
図9中のステップS106で選択した統計値が特徴付ける一の領域の内側に携帯機2があるか否かの判定を行うために用いるべき成分を選択する(ステップS223)。以下、ステップS223で選択された受信信号強度を用いて、当該一の領域について携帯機2が内側にあるか否かの判定等の車室内外判定に係る実施形態1と同様の処理(ステップS123〜ステップS127)を、ステップS224〜ステップS228で実行する。
【0106】
以上の通り、実施形態2に係る車両用通信システム及び車載機1によれば、受信信号強度ベクトルの成分の一部を用いて、選択した一の領域の内側に携帯機2があるか否かの判定を行う構成であるため、効率的に携帯機2の車室内外判定を行うことができる。また、利用する受信信号強度ベクトルの成分を削減することによって、携帯機2の車室内外判定精度を損なうこと無く、当該一の領域の内側に携帯機2があるか否かの判定に用いられる統計値の作成工数を抑えることができる。
【0107】
(変形例2)
実施形態2では、車載機1が携帯機2の車室内外判定を行う例を説明したが、携帯機2自身が車室内外判定を行うように構成しても良い。変形例2に係る車両用通信システムの構成は、実施形態2の構成と同様であり、車載機1及び携帯機2を備える。携帯機2は、第1領域乃至第3領域61、62、63を規定する第1統計値及び第2統計値と、領域毎に4つの受信信号強度の内、いずれの受信信号強度を自身の車室内外判定に用いるかを示した情報と、本願のコンピュータプログラムとを記憶部24に記憶している。変形例2の車両用通信システムでは、変形例1同様、
図9で説明したステップS106の処理と、ステップS107即ち
図12のステップS221〜ステップS228の処理とを適宜携帯機2の制御部21が実行し、車室内外判定結果を車載機1へ送信する。
【0108】
変形例2によれば、実施形態2と同様、受信信号強度ベクトルの成分の一部を用いて、各領域の内外判定を行う構成であるため、効率的に携帯機2の車室内外判定を行うことができる。その他の効果は実施形態1及び2と同様である。
【0109】
(実施形態3)
実施形態3に係る車両用通信システムは、操作された車両ドアリクエストスイッチ(5a)に応じて、受信信号測定用の信号を送信させる送信アンテナ(3)の組み合わせを変え、携帯機2の車室内外判定を行うものである。実施形態3に係る車両用通信システム及びコンピュータプログラムは、車載機1の記憶部14が記憶している内容と、制御部11の処理手順とが実施形態2と異なるため、以下、主にかかる相違点を説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態2と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0110】
上述の実施形態2において、記憶部14は、第1領域乃至第3領域61、62、63毎に、4つの受信信号強度の内、いずれの受信信号強度を携帯機2の車室内外判定に用いるかを示した情報を記憶していることを説明した。実施形態3においては、記憶部14は、当該情報に代えて、各車両ドアリクエストスイッチ(5a)を識別する情報と、車載機1が携帯機2に送信すべき受信信号強度測定用の信号を送信する送信アンテナ(3)を識別する情報の組とが対応付けて記憶されている。例えば、第1送信アンテナ31及び第2送信アンテナ32の組、第2送信アンテナ乃至第4送信アンテナ32、33、34の組、並びに第3送信アンテナ33及び第4送信アンテナ34の組が、第1車両ドアリクエストスイッチ51aに対応付けて記憶されている。また例えば、第1送信アンテナ31及び第2送信アンテナ32の組、第1送信アンテナ31、第3送信アンテナ33、及び第4送信アンテナ34の組、並びに第3送信アンテナ33及び第4送信アンテナ34の組が、第2車両ドアリクエストスイッチ52aに対応付けて記憶されている。更に例えば、第2送信アンテナ乃至第4アンテナ32、33、34の組、第3送信アンテナ33及び第4送信アンテナ34の組、並びに第1送信アンテナ31及び第2送信アンテナ32の組が、第3車両ドアリクエストスイッチ53aに対応付けて記憶されている。なお、各車両ドアリクエストスイッチ(5a)に対応する送信アンテナ(3)の組は、上記の例全てを記憶していてもよいし、一部を記憶していてもよい。また、当該送信アンテナ(3)の組は、上記の順に優先順位が付与されて、各車両ドアリクエストスイッチ(5a)に対応付けて記憶されてもよい。
【0111】
図13は、実施形態3における車室内外判定処理のサブルーチンを示すフローチャートである。車載機1の制御部11は、操作された車両ドアリクエストスイッチ(5a)に応じて、受信信号強度測定用の信号を送信すべき送信アンテナ(3)を選択する(ステップS321)。具体的には、制御部11は、
図9中のステップS103で記憶された車両ドアリクエストスイッチ(5a)を識別する情報に対応する送信アンテナ(3)を識別する情報を、記憶部14から読み出すことによって選択する。例えば、車両ドアリクエストスイッチ(5a)を識別する情報に対応付けて、送信アンテナ(3)を識別する情報の組が複数記憶されている場合、一の組に係る送信アンテナ(3)を識別する情報を読み出す。一の組を選択する条件は、優先順位等の任意の条件である。
【0112】
その後、制御部11は、選択した送信アンテナ(3)から受信信号強度測定用の信号を携帯機2に送信し(ステップS322)、当該信号の送信に応じて携帯機2から送信された応答信号を車載受信部12にて受信する(ステップS323)。以降、実施形態2と同様の処理(ステップS224〜ステップS228)を、ステップS324〜ステップS328で実行する。制御部11は、ステップS321及びステップS322の処理で制御プログラム10aを実行することにより、送信制御部として機能する。
【0113】
以上の通り、実施形態3に係る車両用通信システム及び車載機1によれば、各車両ドアリクエストスイッチ(5a)が操作された際に行われる車室内外判定に寄与する程度が高い送信アンテナ(3)の組を予め対応付けて記憶部14に予め記憶する。従って、車載機1は、車室内外判定夫々に寄与する程度が低い送信アンテナ(3)から信号を送信しないため、携帯機2の車室内外判定精度を損なうことなく、車室内外判定に要する時間をより短縮できる。具体的には、車載機1は、車室内外判定精度に寄与する程度が低い送信アンテナ(3)からの受信信号強度測定用の信号の送信、受信信号強度の測定、受信信号強度の測定結果の送受信に要する時間、車室内外判定で使用しない領域での判定の処理に要する時間等を短縮することができる。なお、本実施形態は、各時間全てを短縮できる構成に限定されるものでは無く、上述した時間のいずれかを短縮することができる構成も本実施形態に含まれる。
【0114】
車室内外判定に要する時間を短縮することができることを具体的に説明する。
図14は車載機1及び携帯機2間で送受信される各種信号を示すシーケンス図である。
図14Aは各車両ドアリクエストスイッチ(5a)が操作された際、車室内外判定夫々に寄与する程度が低い送信アンテナ(3)を含め、全ての送信アンテナ(3)から受信信号強度測定用の信号を送信する場合における車室内外判定のシーケンスを示している。また、
図14Aでは、車室内外判定を行う際、複数の領域を用いて携帯機2の車室内外判定を行っている。
図14Bは車室内外判定に寄与する程度が低い一の送信アンテナ(3)から信号を送信せず、他の3つの送信アンテナ(3)から受信信号強度測定用の信号を送信する場合における車室内外判定のシーケンスを示している。また、
図14Bでは、車室内外判定を行う際、操作された車両ドアリクエストスイッチ(5a)に応じて選択された一の領域を用いて携帯機2の車室内外判定を行っている。
なお、
図14A及び
図14Bのいずれも、受信信号強度測定用の信号を車載機1が携帯機2へ送信し、該信号を受信した携帯機2が各信号の受信信号強度を測定し、測定して得た受信信号強度を含む応答信号を車載機1へ送信し、車載機1が車室内外判定を行う処理のシーケンスを示している。縦長の矩形部分は、車載機1及び携帯機2が処理を実行している時間を示している。
【0115】
図14Bに示すように、車室内外判定に寄与する程度が高い3つの送信アンテナ(3)から受信信号強度測定用の信号を車載機1が送信し、携帯機2が該信号の受信信号強度を測定する処理時間は、
図14Aに示すように全ての送信アンテナ(3)から前記信号を送信する場合に比べて短い。また、応答信号を受信した車載機1が行う車室内外判定の処理時間は、全ての領域を用いて車室内外判定を行う場合(
図14A)に比べて、選択された一の領域を用いて車室内外判定を行う場合(
図14B)の方が短い。
このように、本実施形態3によれば、車載機1は、携帯機2の車室内外判定精度を損なうことなく、車室内外判定に要する時間を短縮できる。
【0116】
(変形例3)
実施形態3では、車載機1が携帯機2の車室内外判定を行う例を説明したが、携帯機2自身が車室内外判定を行うように構成しても良い。変形例3に係る車両用通信システムの構成は、実施形態3の構成と同様であり、車載機1及び携帯機2を備える。携帯機2は、第1領域乃至第3領域61、62、63を規定する第1統計値及び第2統計値と、車両Cにおける車両ドアリクエストスイッチ(5a)及び送信アンテナ(3)の対応関係と、本願のコンピュータプログラムを記憶部24に記憶している。変形例3の車両用通信システムでは、変形例1同様、
図9で説明したステップS106の処理と、ステップS107即ち
図13のステップS321〜ステップS328の処理とを適宜携帯機2の制御部21が実行し、車室内外判定結果を車載機1へ送信する。
【0117】
変形例3によれば、実施形態3同様、車室内外判定夫々に寄与する程度が低いアンテナから信号を送信しない。そのため、携帯機2の車室内外判定精度を損なうことなく、車室内外判定に要する時間をより短縮できる。短縮可能な時間は上述と同様である。その他の効果は実施形態1〜3と同様である。
【0118】
(実施形態4)
実施形態4に係る車両用通信システムは、操作された車両ドアリクエストスイッチ(5a)に応じて行われる携帯機2の車室内外判定を、統計値に代えて判別式を用いて行うものである。実施形態4に係る車両用通信システムは、車載機1の記憶部14が記憶している情報の内容と、制御部11による通常判定の処理手順とが実施形態1〜3と異なるため、以下、主にかかる相違点を説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態1〜3と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0119】
車載機1の記憶部14は、複数の送信アンテナ(3)から送信された信号の受信信号強度によって、携帯機2が第1領域61の内側にあるか外側にあるかを判別するための判別式を記憶している。受信信号強度は、実施形態1と同様、携帯機2の信号強度測定部23bによって測定されるものである。第1領域61は制御部11によって携帯機2が内側に所在するか否かの判定を行う一の対象領域であり、携帯機2が車室内にあるか車室外にあるか判定をしたい「共通の車室内空間」を包含する。
言い換えると、記憶部14は、運転席側の車室外で測定される受信信号強度と、それ以外の箇所で測定される受信信号強度とを判別する判別式を記憶している。判別式は、例えば、第1領域61の内側を特徴付ける標本群と、第1領域61の外側を特徴付ける標本群とのマハラノビス距離が等しくなる受信信号強度を結ぶ曲線の近似式であり、例えば、下記式(7)によって表される。
【0121】
また、記憶部14は、第2領域乃至第3領域62、63それぞれの内外を判別する判別式についても、上記式(7)の多項式によって表される。但し、多項式の各係数は、各領域の内側における標本群とのマハラノビス距離と、各領域の外側における標本群とのマハラノビス距離とが等しくなる受信信号強度ベクトルの各成分の関数を定める定数である。そのため、言うまでもなく、各領域を判別する判別式が異なる関数を表す。
【0122】
以上の車両用通信システムにおける車載機1は、以下に説明する以外の処理において、
図9と、
図11、
図12又は
図13とで説明した処理手順と同様の処理手順を実行する。車載機1の制御部11は、
図9中のステップS106における統計値を選択する処理に代えて、判別式を選択する処理を実行する。このとき、実施形態1と同様に、記憶部14が、第1領域乃至第3領域61、62、63を判別する判別式それぞれを、各領域を識別するID等に対応付けて記憶するように構成されることにより、制御部11は、当該判定を実行することができる。
【0123】
その後、車室内外判定のサブルーチンにおいて、制御部11は、受信した応答信号の受信信号強度と、選択した判別式とを用いて、当該判別式の判別対象となる一の領域の内側に携帯機2があるか否かの判定を行う。例えば、受信信号強度ベクトルが2次元である場合、応答信号に含まれる一の受信信号強度を上記式(7)のχ1に代入して得られる関数値Yと、当該応答信号に含まれる他の受信信号強度とを比較することによって、判定することができる。
より具体的には、実施形態1の車室内外判定のサブルーチンにおいては、制御部11は、
図11中のステップS123及びステップS124の処理を行わず、受信信号強度と判別式とを用いる上述の判定を行う。また、実施形態2の車室内外判定のサブルーチンにおいては、
図12中のステップS224及びステップS225の処理を行わず、制御部11は、ステップS223で選択した受信信号強度と、判別式とを用いる上述の判定を行う。更に、実施形態3の車室内外判定のサブルーチンにおいては、制御部11は、ステップS324及びステップS325の処理を行わず、受信信号強度と判別式とを用いる上述の判定を行う。
【0124】
以上の通り、本実施形態4に係る車両用通信システム及び車載機1によれば、携帯機2の車室内外判定を、操作された車両ドアリクエストスイッチ(5a)に応じて選択された判別式を用いて行う。当該判別式は、第1領域乃至第3領域61、62、63それぞれの領域に共通の室内空間を含ませる様に調整した多項式である。そのため、携帯機2が車室内空間の内側又は外側のいずれに位置するかを実施形態1〜3よりも精度良く判定することができる。また、実施形態1〜3と同様、判別式の作成に要する工数を抑えることができる。
【0125】
(変形例4)
実施形態4では、車載機1が携帯機2の車室内外判定を行う例を示したが、携帯機2自身が車室内外判定を行うように構成しても良い。変形例4に係る車両用通信システムの構成は、実施形態4の構成と同様であり、車載機1及び携帯機2を備える。変形例4の携帯機2は、第1領域乃至第3領域61、62、63それぞれにおいて自身が内側にあるか否かを判別する判別式、並びに本願のコンピュータプログラムを記憶部24に記憶している。変形例4の車両用通信システムでは、変形例1同様、
図9で説明したステップS106の処理と、ステップS107の処理とを適宜携帯機2の制御部21が実行し、車室内外判定結果を車載機1へ送信する。
【0126】
変形例4によれば、携帯機2の車室内外判定を、操作された車両ドアリクエストスイッチ(5a)に応じて選択された判別式を用いて行う。判別式は、実施形態4同様、第1領域乃至第3領域61、62、63それぞれの領域に共通の室内空間を含ませる様に調整した多項式である。そのため、携帯機2が車室内空間の内側又は外側のいずれに位置するかを実施形態1〜3よりも精度良く判定することができる。その他の効果は、実施形態1〜4と同様である。
【0127】
なお、実施形態1〜4、及び変形例1〜4において説明した統計値又は判別式以外の統計値、判別式、又はコンピュータプログラムを記憶部14に記憶し、車室内外判定の処理に用いてもよい。即ち、予め収集した各領域61〜63の内側を特徴付ける標本群と、外側を特徴付ける標本群とを用いて、各領域の内外を分類する分類器を学習し、学習した分類器を表す情報を記憶部14に記憶しておけばよい。このとき分類器は、線形分類を行うものであってもよいし、非線形分類を行うものであってもよい。また、分類器の学習は、種々の機械学習アルゴリズムを用いることができる。更に、車載機1は、予め収集した各標本群自体を記憶部14に記憶し、携帯機2の車室内外判定を行う都度、判定に用いた受信信号強度を新たな標本として記憶部14に記憶するようにしてもよい。このとき、車載機1は、新たに携帯機2が車室外に所在するか又は車室内に所在するかを通常判定のサブルーチンにて判定する場合、半教師あり学習を用いて判定してもよい。
【0128】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0129】
以上の説明に対し更に以下の項を開示する。
(付記1)
車両の外面に設けられた複数の操作部のいずれかが操作されたとき、該車両に配された複数のアンテナから信号を送信する車載機と、該車載機から送信された信号を受信し、受信した信号の受信信号強度を測定し、測定した信号の受信信号強度を含む応答信号を送信する携帯機とを備える車両用通信システムであって、
前記車載機は、
共通の車室内空間を包含する相異なる複数の領域それぞれに係る情報を記憶する記憶部と、
前記複数の操作部の内、操作された操作部を特定する特定部と、
該特定部が特定した操作部に応じて、前記記憶部が記憶する複数の領域それぞれに係る情報から一の領域に係る情報を選択する選択部と、
前記携帯機から送信された応答信号を受信する車載受信部と、
該車載受信部が受信した応答信号に含まれる受信信号強度及び前記選択部が選択した一の領域に係る情報に基づいて、該領域の内側に前記携帯機があるか否かを判定する判定部と
を備える車両用通信システム。
【0130】
(付記2)
前記複数の領域はそれぞれ、車室の内側面の一部に倣う境界面を有し、
前記選択部は、前記特定部が特定した操作部を設けてある前記外面に沿う前記内側面の一部に倣う境界面を有する領域に係る情報を選択する
付記1に記載の車両用通信システム。
【0131】
(付記3)
前記記憶部は、前記内側面の一部の車室内側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群、及び前記車室外側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群に基づく第1統計値と、前記内側面の一部の車室外側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群に基づく第2統計値とを、前記内側面の一部に倣う境界面を有する領域に係る情報として記憶するようにしてあり、
前記判定部は、前記車載受信部が受信した応答信号に含まれる受信信号強度並びに前記選択部が選択した一の領域に係る第1統計値及び第2統計値に基づいて、該領域の内側に前記携帯機があるか否かを判定する
付記2に記載の車両用通信システム。
【0132】
(付記4)
前記第1統計値は、
前記内側面の一部の車室内側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群、並びに該内側面の一部に対向する他部の車室内側及び車室外側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群に基づいている
付記3に記載の車両用通信システム。
【0133】
(付記5)
前記第1統計値及び第2統計値は受信信号強度の平均及び逆分散共分散行列を含み、
前記車載機は、
前記車載受信部が受信した応答信号に含まれる受信信号強度及び前記選択部が選択した第1統計値に係る標本群の統計距離と、前記車載受信部が受信した応答信号に含まれる受信信号強度及び前記選択部が選択した第2統計値に係る標本群の統計距離とを算出する距離算出部を備え、
前記判定部は、各統計距離を比較することによって、前記選択部が選択した第1統計値及び第2統計値に対応する領域の内側に前記携帯機があるか否かを判定する
付記3又は付記4に記載の車両用通信システム。
【0134】
(付記6)
前記記憶部は、前記領域の内側にある前記携帯機の前記測定部が測定する受信信号強度と、前記領域の外側にある前記携帯機の前記測定部が測定する受信信号強度とを判別するための判別式を、前記領域に係る情報として記憶するようにしてあり、
前記判定部は、前記車載受信部が受信した応答信号に含まれる受信信号強度と、前記選択部が選択した一の領域に係る判別式とに基づいて、該領域の内側に前記携帯機があるか否かを判定する
付記1又は付記2に記載の車両用通信システム。
【0135】
(付記7)
前記複数の操作部は、少なくとも車両の右側面及び左側面に設けられており、
前記記憶部は、車室の右内側面に倣う境界面を有する領域に係る情報と、車室の左内側面に倣う境界面を有する領域に係る情報とを記憶するようにしてあり、
前記選択部は、
前記特定部が前記右側面に設けられた操作部を特定した場合、前記右内側面に倣う境界面を有する領域に係る情報を選択し、
前記特定部が前記左側面に設けられた操作部を特定した場合、前記左内側面に倣う境界面を有する領域に係る情報を選択する
付記1〜付記6のいずれか一つに記載の車両用通信システム。
【0136】
(付記8)
前記複数の操作部の少なくとも一つは、車両の後側面に設けられており、
前記記憶部は、車室の後側の内面に倣う境界面を有する領域に係る情報を記憶するようにしてあり、
前記選択部は、前記特定部が前記後側面に設けられた操作部を特定した場合、前記車室の後側の内面に倣う境界面を有する領域に係る情報を選択する
付記1〜付記7のいずれか一つに記載の車両用通信システム。
【0137】
(付記9)
前記判定部は、
前記車載受信部が受信した応答信号に含まれる受信信号強度の一部及び前記選択部が選択した領域に係る情報に基づいて、該領域の内側に前記携帯機があるか否かを判定するようにしてあり、判定に用いる受信信号強度は、前記選択部が選択した領域に係る情報毎に異なる
付記1〜付記8のいずれか一つに記載の車両用通信システム。
【0138】
(付記10)
前記記憶部は、前記操作部それぞれに対応付けて一又は複数のアンテナを記憶するようにしてあり、
前記車載機は、
前記特定部が特定した操作部に対応付けて前記記憶部に記憶された一又は複数のアンテナから信号を送信する送信制御部
を備える付記1〜8のいずれか一つに記載の車両用通信システム。
【0139】
付記3によれば、車載機は、領域に係る情報として第1統計値及び第2統計値を記憶部に記憶し、当該第1統計値及び第2統計値を用いて、携帯機が当該領域の内側にあるか否かを判定する。
第1統計値は、前記内側面の一部の車室内側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群、及び車室外側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群に基づいて算出される値である。第1統計値の算出に利用される標本群の内、前記車室外側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群は、前記共通の車室内空間を前記領域内に漏れなく包含させるためのものである。また、第1統計値の算出に利用される標本群の内、前記内側面の一部の車室内側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群は、前記内側面の一部における車室内外判定を精度良く行えるように該内側面の一部に対応する境界面を規定するためのものである。
第2統計値は、前記内側面の一部の車室外側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群に基づいて算出される値である。第2統計値の算出に利用される標本群は、前記内側面の一部における車室内外判定を精度良く行えるように該一部に対応する領域の境界面を規定するためのものである。
第1統計値及び第2統計値を算出するための標本群として、前記標本群を用いることにより、無作為に膨大な標本群を作成する場合に比べて、前記領域における携帯機の内外判定を行うための統計値の作成に要する工数を効果的に抑えることができる。
【0140】
付記4によれば、第1統計値及び第2統計値を用いて、携帯機が前記領域の内側にあるか否かを判定する。
第1統計値は、前記内側面の一部の車室内側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群、並びに前記内側面の一部に対向する他部の車室内側及び車室外側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群に基づいて算出される値である。第1統計値の算出に利用される標本群の内、前記他部の車室内側及び車室外側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群は、前記他部を前記領域内に漏れなく包含させるためのものである。また、第1統計値の算出に利用される標本群の内、前記内側面の一部の車室内側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群は、前記内側面の一部における車室内外判定を精度良く行えるように該内側面の一部に対応する境界面を規定するためのものである。
第2統計値は、前記内側面の一部の車室外側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群に基づいて算出される値である。第2統計値の算出に利用される標本群は、前記内側面の一部における車室内外判定を精度良く行えるように該一部に対応する領域の境界面を規定するためのものである。
第1統計値及び第2統計値を算出するための標本群として、前記標本群を用いることにより、無作為に膨大な標本群を作成する場合に比べて、前記領域における携帯機の内外判定を行うための統計値の作成に要する工数を効果的に抑えることができる。
【0141】
付記5によれば、車載機は、第1統計値を用いることによって、前記領域の内側を特徴付ける標本群と、携帯機が測定した受信信号強度との統計距離を算出する。また、車載機は、第2統計値を用いることによって、前記領域の外側を特徴付ける標本群と、携帯機が測定した受信信号強度との統計距離を算出する。車載機の判定部は、算出された各統計距離を比較することによって、選択部が選択した第1統計値及び第2統計値に対応する領域の内側又は外側のいずれに携帯機が位置するかを判定する。前記領域の内側を特徴付ける標本群との統計距離の方が、前記領域の外側を特徴付ける標本群との統計距離より短い場合、携帯機は前記領域の内側にあると判定される。逆に、前記領域の外側を特徴付ける標本群との統計距離の方が、前記領域の内側を特徴付ける標本群との統計距離より短い場合、携帯機は前記領域の外側にあると判定される。
【0142】
付記6によれば、車載機は、領域に係る情報として判別式を記憶部に記憶し、当該判別式を用いて、携帯機が領域の内側又は外側のいずれにあるか判定する。前記複数の領域各々は、携帯機が車室内空間の内側又は外側のいずれに位置するかを判定するためのものとしては不十分である。しかし、前記領域の境界面の精度が低いため、前記領域を規定する判別式の作成に要する工数は抑えられる。例えば、前記領域の境界面を規定する低次の多項式による近似式によって判別式を作成することが可能である。
より具体的には、本願における判別式は、車室内標本群と、車室外標本群との統計距離が等しくなる複数の点を求め、全体集合とする。ここで、車室内標本群は、車室の内側面の一部に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群を含む。また、車室外標本群は、前記内側面の一部の車室外側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群を含む。
そして、全体集合から、携帯機の内外判定に寄与する部分集合を抽出し、抽出した部分集合を用いて、該部分集合を表す近似曲線を最小自乗法により求める。
例えば、2つのアンテナから送信された信号の受信信号強度を含む2次元の標本を用いる場合、車室内標本群と、車室外標本群との統計距離が等距離となる点は2次元平面上にプロットすることができ、この形状は、双曲線、放物線、楕円となる。当該形状が楕円状となる様なアンテナの組み合わせは使用せず、例えば当該形状が双曲線となる場合には携帯機の内外判定に寄与する曲線上にある複数の点で構成される部分集合を抽出する。当該部分集合を表す曲線の当該形状は放物線となるため、最小自乗法を用いて低次の多項式に精度よく近似させることが可能である。
本判別式は領域の境界面近傍の内外の受信信号強度を測定すれば良いため、各領域において携帯機が境界面の内側、外側に位置するかを判定するためのパラメータ作成に要する工数は抑えられる。
なお、ここで説明した判別式の具体例は一例であり、本願の判別式の作成方法、次元が特に限定されるものでは無い。
【0143】
付記7によれば、車載機は、車両の右側面に設けられた操作部が操作された場合、車室の右内側面に倣う境界面を有する領域に係る情報を選択部にて選択し、当該領域について車室内外判定を行う。また、車載機は、車両の左側面に設けられた操作部が操作された場合、車室の左内側面に倣う境界面を有する領域に係る情報を選択部にて選択し、当該領域について車室内外判定を行う。従って、車室の右内側面及び左内側面における携帯機の車室内外判定を精度良く行うことができる。なお、各領域の境界面は、車室の右側面及び左側面に完全に一致している必要は無い。
【0144】
付記8によれば、車載機は、後側面に設けられた操作部が操作された場合、車室の後ろ側の内面に倣う境界面を有する領域に係る情報を選択部にて選択し、当該領域について車室内外判定を行う。後側面に車室の後ろ側の内面における携帯機の車室内外判定を精度良く行うことができる。従って、車室の後ろ側の内面における携帯機の車室内外判定を精度良く行うことができる。なお、当該領域の境界線は、車室の後ろ側の内面に完全に一致している必要は無い。