(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。これらの説明及び実施例は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0019】
本発明において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0020】
<管状体>
本実施形態に係る管状体は、画像形成装置用の管状体である。
本実施形態に係る管状体は、熱可塑性樹脂を含有する管状部材が熱加工されてなる管状体であり、即ち、前記管状部材の少なくとも一方の端縁が、周方向の少なくとも一部において、熱溶融した後に固化してなる管状体である。
【0021】
本実施形態において管状体および管状部材の「端縁」とは、管状体および管状部材の幅方向両端における、外周面と内周面とをつなぐ部位を指す。
本実施形態において管状体および管状部材の「幅方向」は、画像形成の際に管状体が回転する回転軸の軸方向と平行な方向である。
【0022】
従来、画像形成装置の中間転写ベルト等に適用される管状体は、押出成形、射出成形、塗布成形などの成形方法で管状部材が製造され、この管状部材が目的の幅に裁断されて製造されていた。しかし、こうして製造された管状体は、画像形成装置に装着されて画像形成が繰り返されると、幅方向端部から亀裂が発生してしまうことがある。そして、幅方向端部から亀裂が発生すると、最終的には管状体の破断に至ってしまう。
【0023】
上記の亀裂の発生原因として、管状部材が裁断される際に、裁断部位に突起、ささくれ、切れ込み、周方向の段差、厚さ方向の段差など(これらを総称して「不連続部」という。)が生じることが考えられる。管状部材の裁断部位に不連続部が生じると、管状体は端縁に不連続部を有することになり、管状体が画像形成装置に装着されて画像形成が繰り返されると、不連続部に応力が集中し、その結果、不連続部を起点として幅方向端部に亀裂が発生してしまうと考えられる。従来、裁断後に裁断部位を研磨して不連続部を少なくしたり、管状体の幅方向端部に補強テープを貼ったりする対策があるが、それでも、画像形成が繰り返されると亀裂が発生してしまうことがある。
【0024】
上記事象に対し、本実施形態に係る管状体は、管状体の前駆体である熱可塑性樹脂を含有する管状部材の、少なくとも一方の端縁を熱溶融した後に固化し、不連続部を滑らかな形状に変え、これにより管状体の幅方向端部に亀裂が発生することを抑制する。
加えて、本実施形態に係る管状体は、端縁が熱溶融した後に固化することで膨らんだ形状になっており、端縁が膨らんでいない形状である場合に比べて、幅方向端部の力学的強度が増していると考えられ、これによっても管状体の幅方向端部に亀裂が発生することが抑制されると考えられる。
【0025】
図1は、本実施形態に係る管状体の例を示す概略断面図である。
図1は、管状体を、幅方向の一方の端部において、幅方向及び厚さ方向に切断したときに現われる断面を示す。
本実施形態に係る管状体は、少なくとも一方の端縁が周方向の少なくとも一部において、
図1に示すように膨らんだ形状、即ち、管状体の外周面及び内周面よりも外側に突出し断面形状が円形状である。
この膨らんだ形状の端縁は、本実施形態に係る管状体の前駆体である熱可塑性樹脂を含有する管状部材が熱加工されたことによって生じる。つまり、熱可塑性樹脂を含有する管状部材の端縁が熱溶融した後に固化したことによって、本実施形態に係る管状体の端縁は膨らんだ形状になっている。
【0026】
本実施形態に係る管状体は、製造効率や亀裂の発生をより抑制する観点で、熱可塑性樹脂を含有する管状部材の両端縁を周方向全体にわたって熱加工してなる管状体であることが好ましい。したがって、本実施形態に係る管状体は、両方の端縁が周方向全体にわたって膨らんだ形状を有することが好ましい。
【0027】
本実施形態に係る管状体は、画像形成装置に用いられるベルト状の部材およびロール状の部材である。具体的には例えば、中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト、定着ベルト等として用いられる。本実施形態に係る管状体は、単層型でもよく、複層型(例えば、表面に離型層を有する)でもよい。
【0028】
本実施形態に係る管状体は、中間転写体に適用される場合、その厚さは例えば30μm以上200μm以下である。
【0029】
以下、本実施形態に係る管状体及び管状体の前駆体である管状部材の構成材料について説明する。
【0030】
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニルサルホン(PPSU)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。
熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
熱可塑性樹脂の溶融温度は、成形性の観点から、例えば200℃以上400℃以下である。
【0032】
[導電剤]
本実施形態に係る管状体は、画像形成装置への適用に応じて、さらに導電剤を含有していてよい。本実施形態に係る管状体が中間転写体に適用される場合、管状体は導電剤を含有することが望ましい。導電剤とは、添加することで目的とする導電性を付与しうる物質を指す。
【0033】
導電剤としては、例えば、カーボンブラック;アルミニウム、ニッケル等の金属;酸化イットリウム、酸化スズ等の金属酸化物;チタン酸カリウム、塩化カリウム等のイオン導電性物質;ポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレン等の導電性高分子等が挙げられる。中でもカーボンブラックが好ましい。
導電剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。
導電剤として用いるカーボンブラックの平均一次粒子径は、例えば10nm以上40nm以下である。
【0035】
導電剤の配合量は、導電剤の種類にも依存するが、導電剤としてカーボンブラックを用いた場合、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば5質量部以上40質量部以下であり、中間転写体に適用される場合に要求される導電性を付与する観点で8質量部以上が好ましく、管状体の破断や端部の亀裂を抑制する観点で30質量部以下が好ましい。
【0036】
[その他の添加剤]
その他の添加剤としては、酸化防止剤、耐熱剤、離型剤、架橋剤、着色剤、界面活性剤など、画像形成装置の無端ベルトに配合される周知の添加剤が挙げられる。
【0037】
[管状体の製造方法]
本実施形態に係る管状体を製造する方法としては、特に制限はないが、
熱可塑性樹脂を含有する管状部材を用意する第一の工程と、
前記管状部材の少なくとも一方の端縁の、周方向の少なくとも一部に、熱を加えて溶融する第二の工程と、
前記管状部材の溶融した端縁を固化する第三の工程と、
を少なくとも含むことが望ましい。
【0038】
前記第一の工程によって用意される管状部材は、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を溶融し、ダイスから管状に押し出して固化した押出成形品;熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を溶融し、管状の金型に入れて固化した射出成形品;熱可塑性樹脂を含有する液体組成物を芯体に塗布し乾燥し、焼成後に芯体から抜き取った塗布成形品;等のいずれでもよい。
【0039】
上記のような押出成形品、射出成形品、塗布成形品である管状部材は、管状部材を1個ずつ作製した成形品でもよく、管軸方向に長い成形物を作製した後に目的とする長さに裁断した成形品でもよい。これら成型品の整寸のための裁断は、例えば、金属の刃を備えた裁断機、はさみ等により行われる。
【0040】
上記のような押出成形品、射出成形品、塗布成形品である管状部材は、裁断の際に、端縁に不連続部が発生することがあるが、前記第二の工程及び前記第三の工程を経ることにより、管状部材の端縁に在る不連続部が滑らかな膨らみに変わる。
【0041】
上記のような押出成形品、射出成形品、塗布成形品である管状部材には、レーザや超音波を照射し熱によって裁断した成形品も含まれる。熱によって裁断した成形品でも、切断の開始点と終止点とがずれると端縁に周方向の段差を有する。この場合、熱による裁断の終止点の付近において、裁断目的よりも長時間にわたりレーザや超音波を照射し、周方向の段差を熱溶融させ、その後、熱溶融した部位を固化させて端縁を連続した形状にしてもよい。この場合、前記第一の工程と共に前記第二の工程が行われる。
【0042】
前記第一の工程によって用意される管状部材は、画像形成装置への適用に応じて、さらに導電剤を含有していてよい。管状部材に導電剤を含ませるには、押出成形品、射出成形品、又は塗布成形品を製造するための樹脂組成物又は液体組成物に導電剤を添加すればよい。
【0043】
前記第二の工程は、例えば、管状部材に含まれる熱可塑性樹脂の溶融温度以上の温度に加熱した熱源(例えば、ホットプレート)に管状部材の少なくとも一方の端縁を押し当てることにより行われる。ほかに、前記第二の工程は、管状部材の少なくとも一方の端縁に、レーザや超音波を照射し熱を発生させることにより行われる。
【0044】
前記第二の工程において、熱源に押し当てたりレーザや超音波を照射したりする管状部材の端縁は、少なくとも、不連続部が存在する部位であればよい。製造効率や亀裂の発生をより抑制する観点で、管状部材の両端縁を周方向全体にわたって、熱源に押し当てたりレーザや超音波を照射したりすることが好ましい。
【0045】
前記第三の工程は、例えば、前記第二の工程を経て熱溶融した端縁を有する管状部材を、熱可塑性樹脂の溶融温度より低い温度環境下に放置することや、水槽中に入れて冷却することにより行われる。前記第三の工程により、管状部材の熱溶融した端縁が固化する。熱溶融した後に固化した端縁は、滑らかな形状になっており、通常は
図1に示すように膨らんだ形状になっている。
【0046】
以下に、本実施形態に係る管状体を適用した、管状体ユニット、中間転写体、及び画像形成装置について説明する。
【0047】
<管状体ユニット>
本実施形態に係る管状体ユニットは、本実施形態に係る管状体と、前記管状体を張力がかかった状態で掛け渡す複数のロールと、を備え、画像形成装置に着脱される。
【0048】
図2は、本実施形態に係る管状体ユニットを示す概略斜視図である。
本実施形態に係る管状体ユニット130は、
図2に示すように、本実施形態に係る管状体101を備えており、例えば、管状体101は対向して配置された駆動ロール131及び従動ロール132により張力がかかった状態で掛け渡されている(以下、「張架」という場合がある。)。
【0049】
本実施形態に係る管状体ユニット130は、管状体101を中間転写体として適用する場合、管状体101を張架するロールとして、像保持体(例えば感光体)表面のトナー像を管状体101上に一次転写させるためのロールと、管状体101上に転写されたトナー像をさらに記録媒体に二次転写させるためのロールとが配置される。なお、管状体101を張架するロールの数は限定されず、使用態様に応じた本数を配置すればよい。
【0050】
管状体ユニット130は、画像形成装置に組み込まれて使用され、駆動ロール131及び従動ロール132の回転に伴って、管状体101も張架された状態で回転する。
【0051】
<画像形成装置、中間転写体>
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、トナーを含む静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を有し、転写手段が、本実施形態に係る管状体を備えるものである。
【0052】
具体的には、本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、転写手段が、像保持体の表面に形成されたトナー像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体に転写する二次転写手段とを備え、当該中間転写体として本実施形態に係る管状体を備える構成が挙げられる。
【0053】
本実施形態に係る画像形成装置としては、例えば、現像装置内に単色のトナーのみを収容する通常のモノカラー画像形成装置;像保持体上に保持されたトナー像を中間転写体に順次転写することを繰り返すカラー画像形成装置;色毎の現像器を備えた複数の像保持体を中間転写体上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置;が挙げられる。
【0054】
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体に転写されたトナー像を記録媒体に定着する定着手段、像保持体の表面に残留したトナーを除去するクリーニング手段、及び転写手段の表面に残留したトナーを除去するクリーニング手段から選ばれる少なくとも1つをさらに有していてもよい。
【0055】
以下、本実施形態に係る画像形成装置を、
図3を参照しつつ説明する。
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【0056】
図3に示す画像形成装置は、本実施形態に係る管状体を中間転写体として備える転写手段を有する、中間転写方式の装置である。
【0057】
図3に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段の一例)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する。)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに離間して並設されている。なお、ユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着可能なプロセスカートリッジであってもよい。
【0058】
ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写ベルト20(中間転写体の一例)が延設されている。中間転写ベルト20は、
図3における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する背面ロール24に巻回されて張架して設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。背面ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に付勢されており、両者に巻回された中間転写ベルト20に張力が与えられている。中間転写ベルト20の外周面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置4Y、4M、4C、4K(現像手段の一例)のそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナーが供給される。
【0059】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yを代表させて説明する。
【0060】
第1のユニット10Yは、感光体1Y(像保持体の一例)を有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を帯電させる帯電ロール2Y(帯電手段の一例)、帯電した表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置3(露光手段の一例)、静電荷像にトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置4Y(現像手段の一例)、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、一次転写後に感光体1Yの表面に残存したトナーを除去する感光体クリーニング装置6Y(クリーニング手段の一例)が順に配置されている。
一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0061】
以下、第1のユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800V程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10
−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗に近い抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を有する。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0062】
静電荷像は、レーザ光線3Yの照射によって感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って現像位置まで回転し、現像位置で現像装置4Yによって可視化(現像)される。
【0063】
現像装置4Y内には、少なくともイエロートナー及びキャリアを含む現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上の電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは引続き走行し、感光体1Y上に現像されたイエロートナー像が一次転写位置へ搬送される。
【0064】
感光体1Y上のイエロートナー像が一次転写位置へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー像に作用し、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性(+)であり、第1のユニット10Yでは制御部(図示せず)によって+10μA程度に制御されている。
感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0065】
第1のユニット10Yにてイエロートナー像が転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニット10Yに準じて制御されている。
【0066】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、二次転写部へと至る。二次転写部は、中間転写ベルト20と、中間転写ベルト20内面に接する背面ロール24と、中間転写ベルト20の外周面側に配置された二次転写ロール26(二次転写手段の一例)とで構成されている。
【0067】
二次転写部では、二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に、記録紙P(記録媒体の一例)が供給されると、二次転写バイアスが背面ロール24に印加される。二次転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性(−)であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー像に作用し、中間転写ベルト20上のトナー像が記録紙P上に転写される。この際の二次転写バイアスは、二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0068】
この後、記録紙Pは定着装置28(定着手段の一例)へと送り込まれ、トナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融して記録紙P上へ定着する。カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へと搬送され、一連のカラー画像形成動作が終了する。
【0069】
トナー像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。また、記録紙P以外にも、記録媒体として、OHPシート等を適用してもよい。
【実施例】
【0070】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
以下において「部」は特に断りのない限り質量基準である。
【0071】
<実施例1>
[樹脂ペレットの作製]
熱可塑性樹脂としてポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂(東レ社製T1881−3)を二軸溶融混練押出機(パーカーコーポレーション社製L/D60)に投入し、溶融させたPPS樹脂に、導電剤としてカーボンブラック(オリオンエンジニアードカーボンズ社製PRINTEX alpha)を樹脂100部に対し15部添加し、溶融混練した。混練された溶融物を水槽中に入れて冷却固化し、裁断し、カーボンブラックが配合された樹脂ペレットを得た。
【0072】
[ベルトの作製]
樹脂ペレットを一軸溶融押出機(三葉製作所社製L/D24)に投入し、加熱温度330℃で溶融させ、300℃に設定した金型ダイとニップルの間隙から溶融押出ししながら、溶融樹脂の内周面に円筒状のインナーサイジングダイの外面を接触させて冷却固化し、裁断し、管状の押出成形品を得た。この押出成形品を、外周面に溝を有するマンドレルに挿入し、押出成形品の外周面からマンドレル溝部位置に対しカット刃を押しあてて押出成形品を裁断し、幅322.1mm、外周長680.5mm、平均膜厚100μmのベルトを得た。
裁断後のベルトの両端縁を肉眼で観察したところ、突起や段差などの不連続部が認められた。
【0073】
[ベルト端縁の熱加工]
ベルトの両端縁を周方向全体にわたって、295℃に加熱したデジルホットプレートスターラー(コーニング社製OC−420D)上に30秒間置くことで熱溶融させ、その後、室温(20℃乃至25℃)に放置して固化させ、両端縁が周方向全体にわたって膨らみを有するベルトを得た。
熱加工後のベルトの両端縁を肉眼で観察したところ、突起や段差などの不連続部は認められず、周方向全体にわたって膨らみが滑らかに連続していた。
【0074】
<実施例2>
熱可塑性樹脂としてポリエーテルイミド(PEI)樹脂(SABIC社製Ultem1000-1000)を用い、一軸溶融押出機の加熱温度を370℃に変更し、金型ダイ及びニップルの温度を350℃に変更し、デジルホットプレートスターラーの加熱温度を370℃に変更した以外は実施例1と同様にしてベルトを得た。
裁断後のベルトの両端縁を肉眼で観察したところ、突起や段差などの不連続部が認められた。
熱加工後のベルトの両端縁を肉眼で観察したところ、突起や段差などの不連続部は認められず、周方向全体にわたって膨らみが滑らかに連続していた。
【0075】
<実施例3>
熱可塑性樹脂としてポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂(ダイセルエボニック社製ベスタキープ1000G)を用い、一軸溶融押出機の加熱温度を390℃に変更し、金型ダイ及びニップルの温度を370℃に変更し、デジルホットプレートスターラーの加熱温度を390℃に変更した以外は実施例1と同様にしてベルトを得た。
裁断後のベルトの両端縁を肉眼で観察したところ、突起や段差などの不連続部が認められた。
熱加工後のベルトの両端縁を肉眼で観察したところ、突起や段差などの不連続部は認められず、周方向全体にわたって膨らみが滑らかに連続していた。
【0076】
<実施例4>
カーボンブラックの添加量を樹脂100部に対し35部に変更した以外は実施例1と同様にしてベルトを得た。
裁断後のベルトの両端縁を肉眼で観察したところ、突起や段差などの不連続部が認められた。
熱加工後のベルトの両端縁を肉眼で観察したところ、突起や段差などの不連続部は認められず、周方向全体にわたって膨らみが滑らかに連続していた。
【0077】
<実施例5>
実施例1と同様にして裁断したベルトを得た。裁断後のベルトの両端縁を肉眼で観察したところ、突起や段差などの不連続部が認められた。
裁断後のベルトの両端縁において突起や段差などの不連続部が在る箇所を、295℃に加熱したデジルホットプレートスターラーに30秒間押し当て熱溶融させ、その後、室温(20℃乃至25℃)に放置して固化させた。こうして、突起や段差などの不連続部を滑らかな膨らみに変え、周方向全体にわたって突起や段差などの不連続部のない(肉眼では観察されない)ベルトを得た。
【0078】
<比較例1〜3>
ベルト端縁に熱加工を施さない以外は、実施例1〜3と同様にしてベルトを得た。即ち、実施例1〜3における裁断後のベルトをそれぞれ比較例1〜3のベルトとした。比較例1〜3のベルトは、端縁が熱加工されていないため、端縁に膨らんだ形状を有しない。
【0079】
<比較例4>
実施例1と同様にして裁断したベルトを得た。裁断後のベルトの両端部に、周方向全体にわたって、樹脂テープ(具体的には、アセテート布とアクリル系粘着材を積層してなる幅10mm、厚さ230μmの日東電工社製アセテート布粘着テープNo.5)を貼りつけ、端部補強を施した。比較例4のベルトは、端縁が熱加工されていないため、端縁に膨らんだ形状を有しない。
【0080】
<評価>
各実施例及び各比較例のベルトを中間転写ベルトとして、画像形成装置(富士ゼロックス社製DocuPrint C3350)に装着し、温度25℃/相対湿度55%の環境下で、連続5万枚の画像形成を行い、ベルトの軸方向端部を肉眼で確認し、下記の基準に従って評価した。結果を表1に示す。
A:亀裂の発生はなかった。
B:走行が可能なレベルの軽微な亀裂が発生していた。
C:走行に支障がでるほどの亀裂が発生していた。
【0081】
【表1】