特許第6528481号(P6528481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6528481
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】現像剤の収容体および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20190531BHJP
【FI】
   G03G15/08 390B
   G03G15/08 366
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-52667(P2015-52667)
(22)【出願日】2015年3月16日
(65)【公開番号】特開2016-173422(P2016-173422A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2018年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】本多 史幸
(72)【発明者】
【氏名】越智 隆
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 靖晃
(72)【発明者】
【氏名】安部 純
(72)【発明者】
【氏名】兼松 寿弘
(72)【発明者】
【氏名】吉井 朋幸
(72)【発明者】
【氏名】浦山 健太
(72)【発明者】
【氏名】奥山 真司
【審査官】 山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−178590(JP,A)
【文献】 特開2015−045741(JP,A)
【文献】 特開2006−258907(JP,A)
【文献】 特開2014−081654(JP,A)
【文献】 特開平08−190268(JP,A)
【文献】 特開2002−013641(JP,A)
【文献】 特開2014−074863(JP,A)
【文献】 特開平10−171226(JP,A)
【文献】 米国特許第6295425(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08−15/09
G03G 15/00
G03G 21/16
G03G 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーとキャリアとを含む現像剤が収容される収容部と、
前記収容部内に配置され、軸部を中心として回転する回転部材と、
前記軸部を回転可能に支持する軸受部材と、
前記軸受部材に対して前記収容部の内側に配置され、基端部と自由端部とを有し、前記自由端部が前記軸部に接触して、前記軸受部材側に現像剤が進入することを抑制する抑制部材と、
を備え、
前記基端部から前記自由端部までの前記抑制部材の長さをLとし、前記軸部の表面から前記基端部までの前記軸部の径方向の長さをdとし、前記現像剤に含まれるキャリアの体積粒径分布における標準偏差をσとし、3σの範囲の最小値をy[μm]とした場合に、14μm≦y≦20μm、且つ、1.6≦L/d≦2.27、
を満たすように各長さが設定されたことを特徴とする現像剤の収容体。
【請求項2】
トナーとキャリアとを含む現像剤が収容される収容部と、
前記収容部内に配置され、軸部を中心として回転する回転部材と、
前記軸部を回転可能に支持する軸受部材と、
前記軸受部材に対して前記収容部の内側に配置され、基端部と自由端部とを有し、前記自由端部が前記軸部に接触して、前記軸受部材側に現像剤が進入することを抑制する抑制部材と、
を備え、
前記基端部から前記自由端部までの前記抑制部材の長さをLとし、前記軸部の表面から前記基端部までの前記軸部の径方向の長さをdとし、前記現像剤に含まれるキャリアの体積粒径分布における標準偏差をσとし、3σの範囲の最小値をy[μm]とした場合に、20μm<y≦30μm、且つ、1.6≦L/d≦2.47、
を満たすように各長さが設定されたことを特徴とする現像剤の収容体。
【請求項3】
トナーとキャリアとを含む現像剤が収容される収容部と、
前記収容部内に配置され、軸部を中心として回転する回転部材と、
前記軸部を回転可能に支持する軸受部材と、
前記軸受部材に対して前記収容部の内側に配置され、基端部と自由端部とを有し、前記自由端部が前記軸部に接触して、前記軸受部材側に現像剤が進入することを抑制する抑制部材と、
を備え、
前記基端部から前記自由端部までの前記抑制部材の長さをLとし、前記軸部の表面から前記基端部までの前記軸部の径方向の長さをdとし、前記現像剤に含まれるキャリアの体積粒径分布における標準偏差をσとし、3σの範囲の最小値をy[μm]とし、前記軸部の径方向に対する前記抑制部材の厚さをt[μm]とした場合に、
30μm<y≦40μm、且つ、1.6≦L/d≦2.67、且つ、150μm≦t≦300μm、
を満たすように各長さが設定されたことを特徴とする現像剤の収容体。
【請求項4】
前記自由端部の先端の角の曲率半径が、前記最小値yの半値以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の現像剤の収容体。
【請求項5】
抑制部材のヤング率が0.045[GPa]以上、0.41[GPa]以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の現像剤の収容体。
【請求項6】
トナーとキャリアとを含む現像剤が収容される収容部と、
前記収容部内に配置され、軸部を中心として回転する回転部材と、
前記軸部を回転可能に支持する軸受部材と、
前記軸受部材に対して前記収容部の内側に配置され、基端部と自由端部とを有し、前記自由端部が前記軸部に接触して、前記軸受部材側に現像剤が進入することを抑制する抑制部材と、
を備え、
前記基端部から前記自由端部までの前記抑制部材の長さをLとし、前記軸部の表面から前記基端部までの前記軸部の径方向の長さをdとし、前記現像剤に含まれるキャリアの体積粒径分布における標準偏差をσとし、3σの範囲の最小値をy[μm]とした場合に、1.6≦L/d≦0.02×y+1.87、且つ、14μm≦y≦30μm、
または、
1.6≦L/d≦0.02×y+1.87、且つ、30μmy≦40μm、且つ、150μm≦t≦300μm、
を満たすように各値が設定されたことを特徴とする現像剤の収容体。
【請求項7】
像を表面に保持する像保持体と、
前記像保持体の表面に保持された潜像を可視像に現像する現像装置であって、請求項1ないし6のいずれかに記載の現像剤の収容体により構成された前記現像装置と、
可視像を媒体に転写する転写装置と、
媒体に転写された可視像を媒体に定着させる定着装置と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤の収容体および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
潜像を可視像に現像する現像装置に関して、以下の特許文献1に記載の技術が従来公知である。
【0003】
特許文献1としての特開平10−171226号公報には、供給ロール(2)のトナー供給幅を現像ロール(1)の幅より短くしたり、搬送羽根の面積を端部で小さくしたりして、現像ロール(1)へのトナー供給を中央部に比較して端部で少なくすることで、現像ロール(1)の端部へのトナー集中を抑制して、トナーシールを確実に行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−171226号公報(「0069」〜「0086」、図6図7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、軸部と抑制部材との隙間へのキャリアの進入を低減することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の現像剤の収容体は、
トナーとキャリアとを含む現像剤が収容される収容部と、
前記収容部内に配置され、軸部を中心として回転する回転部材と、
前記軸部を回転可能に支持する軸受部材と、
前記軸受部材に対して前記収容部の内側に配置され、基端部と自由端部とを有し、前記自由端部が前記軸部に接触して、前記軸受部材側に現像剤が進入することを抑制する抑制部材と、
を備え、
前記基端部から前記自由端部までの前記抑制部材の長さをLとし、前記軸部の表面から前記基端部までの前記軸部の径方向の長さをdとし、前記現像剤に含まれるキャリアの体積粒径分布における標準偏差をσとし、3σの範囲の最小値をy[μm]とした場合に、
14μm≦y≦20μm、且つ、1.6≦L/d≦2.27、
を満たすように各長さが設定されたことを特徴とする。
【0007】
前記技術的課題を解決するために、請求項2に記載の発明の現像剤の収容体は
トナーとキャリアとを含む現像剤が収容される収容部と、
前記収容部内に配置され、軸部を中心として回転する回転部材と、
前記軸部を回転可能に支持する軸受部材と、
前記軸受部材に対して前記収容部の内側に配置され、基端部と自由端部とを有し、前記自由端部が前記軸部に接触して、前記軸受部材側に現像剤が進入することを抑制する抑制部材と、
を備え、
前記基端部から前記自由端部までの前記抑制部材の長さをLとし、前記軸部の表面から前記基端部までの前記軸部の径方向の長さをdとし、前記現像剤に含まれるキャリアの体積粒径分布における標準偏差をσとし、3σの範囲の最小値をy[μm]とした場合に、
20μm<y≦30μm、且つ、1.6≦L/d≦2.47、
を満たすように各長さが設定されたことを特徴とする。
前記技術的課題を解決するために、請求項3に記載の発明の現像剤の収容体は、
トナーとキャリアとを含む現像剤が収容される収容部と、
前記収容部内に配置され、軸部を中心として回転する回転部材と、
前記軸部を回転可能に支持する軸受部材と、
前記軸受部材に対して前記収容部の内側に配置され、基端部と自由端部とを有し、前記自由端部が前記軸部に接触して、前記軸受部材側に現像剤が進入することを抑制する抑制部材と、
を備え、
前記基端部から前記自由端部までの前記抑制部材の長さをLとし、前記軸部の表面から前記基端部までの前記軸部の径方向の長さをdとし、前記現像剤に含まれるキャリアの体積粒径分布における標準偏差をσとし、3σの範囲の最小値をy[μm]とし、前記軸部の径方向に対する前記抑制部材の厚さをt[μm]とした場合に、
30μm<y≦40μm、且つ、1.6≦L/d≦2.67、且つ、150μm≦t≦300μm、
を満たすように各長さが設定されたことを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の現像剤の収容体において、
前記自由端部の先端の角の曲率半径が、前記最小値yの半値以下であることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないしのいずれかに記載の現像剤の収容体において、
抑制部材のヤング率が0.045[GPa]以上、0.36[GPa]以下であることを特徴とする。
【0010】
前記技術的課題を解決するために、請求項6に記載の発明の現像剤の収容体は、
トナーとキャリアとを含む現像剤が収容される収容部と、
前記収容部内に配置され、軸部を中心として回転する回転部材と、
前記軸部を回転可能に支持する軸受部材と、
前記軸受部材に対して前記収容部の内側に配置され、基端部と自由端部とを有し、前記自由端部が前記軸部に接触して、前記軸受部材側に現像剤が進入することを抑制する抑制部材と、
を備え、
前記基端部から前記自由端部までの前記抑制部材の長さをLとし、前記軸部の表面から前記基端部までの前記軸部の径方向の長さをdとし、前記現像剤に含まれるキャリアの体積粒径分布における標準偏差をσとし、3σの範囲の最小値をy[μm]とした場合に、1.6≦L/d≦0.02×y+1.87、且つ、14μm≦y≦30μm、
または、
1.6≦L/d≦0.02×y+1.87、且つ、30μmy≦40μm、且つ、150μm≦t≦300μm、
を満たすように各値が設定されたことを特徴とする。
【0011】
前記技術的課題を解決するために、請求項7に記載の発明の画像形成装置は、
像を表面に保持する像保持体と、
前記像保持体の表面に保持された潜像を可視像に現像する現像装置であって、請求項1ないしのいずれかに記載の現像剤の収容体により構成された前記現像装置と、
可視像を媒体に転写する転写装置と、
媒体に転写された可視像を媒体に定着させる定着装置と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1−3,6,7に記載の発明によれば、L/dと最小値yとの関係が本発明の関係を満足しない場合に比べて、キャリア径に応じて、フリーレングス比を設定可能な範囲を拡張できると共に、軸部と抑制部材との隙間へのキャリアの進入を低減することができる。
請求項4に記載の発明によれば、曲率半径Rが最小値yの半値よりも大きい場合に比べて、軸部の局所的な削れを更に抑制できる。
請求項5に記載の発明によれば、ヤング率が本発明の範囲を満たさない場合に比べて、抑制部材と軸部との接触に伴うトルク上昇や発熱が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は実施例1の画像形成装置の説明図である。
図2図2は実施例1の画像形成装置の要部説明図である。
図3図3は実施例1の現像装置の説明図である。
図4図4図3のIV−IV線断面図である。
図5図5は実施例1の現像装置の要部説明図であり、図5Aは端部の説明図、図5Bはシール部材の部分の要部拡大図である。
図6図6は第1評価の評価結果の説明図であり、横軸にフリーレングス比を取り、縦軸に先端浮きを取ったグラフである。
図7図7はフリーレングス比xと接触幅の関係の説明図であり、横軸にフリーレングス比を取り、縦軸に接触幅をとったグラフである。
図8図8はフリーレングス比と先端浮きとの関係の説明図であり、横軸にフリーレングス比を取り、縦軸に先端浮きを取ったグラフである。
図9図9はフリーレングス比と先端浮きとの関係の説明図であり、横軸にフリーレングス比を取り、縦軸に先端浮きを取ったグラフである。
図10図10はシール本体の厚さと先端浮きとの関係の説明図であり、横軸にシールの厚さを取り、縦軸に先端浮きを取ったグラフである。
図11図11は第2評価の評価結果の説明図であり、フリーレングス比とキャリアの体積粒径分布の最小値との関係の説明図である。
図12図12は耐久試験後のフリーレングス比と回転軸の削れとの関係の説明図であり、横軸にフリーレングス比を取り、縦軸に回転軸の局所的な削れを取ったグラフである。
図13図13は第3評価の評価結果の説明図であり、横軸に先端部の曲率半径を取り、縦軸に径方向反力比を取ったグラフである。
図14図14は第4評価の評価結果の説明図であり、横軸にヤング率を取り、縦軸にシール部材の応力を取ったグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例としての実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0015】
図1は実施例1の画像形成装置の説明図である。
図2は実施例1の画像形成装置の要部説明図である。
図1において、本発明の実施例1の画像形成装置の一例としての複写機Uは、記録部の一例であって、画像記録装置の一例としてのプリンタ部U1を有する。プリンタ部U1の上部には、読取部の一例であって、画像読取装置の一例としてのスキャナ部U2が支持されている。スキャナ部U2の上部には、原稿の搬送装置の一例としてのオートフィーダU3が支持されている。実施例1のスキャナ部U2には、入力部の一例としてのユーザインタフェースUIが支持されている。前記ユーザインタフェースUIは、操作者が入力をして、複写機Uの操作が可能である。
【0016】
オートフィーダU3の上部には、媒体の収容容器の一例としての原稿トレイTG1が配置されている。原稿トレイTG1には、複写しようとする複数の原稿Giが重ねて収容可能である。原稿トレイTG1の下方には、原稿の排出部の一例としての原稿の排紙トレイTG2が形成されている。原稿トレイTG1と原稿の排紙トレイTG2との間には、原稿の搬送路U3aに沿って、原稿の搬送ロールU3bが配置されている。
【0017】
スキャナ部U2の上面には、透明な原稿台の一例としてのプラテンガラスPGが配置されている。実施例1のスキャナ部U2には、プラテンガラスPGの下方に、読取り用の光学系Aが配置されている。実施例1の読取り用の光学系Aは、プラテンガラスPGの下面に沿って、左右方向に移動可能に支持されている。なお、読取り用の光学系Aは、通常時は、図1に示す初期位置に停止している。
読取り用の光学系Aの右方には、撮像部材の一例としての撮像素子CCDが配置されている。撮像素子CCDには、画像処理部GSが電気的に接続されている。
画像処理部GSは、プリンタ部U1の書込回路DLに電気的に接続されている。書込回路DLは、潜像の形成装置の一例としてのLEDヘッドLHy,LHm,LHc,LHkに電気的に接続されている。
【0018】
各LEDヘッドLHy〜LHkの上方には、像保持体の一例としての感光体ドラムPRy,PRm,PRc,PRkが配置されている。
各感光体ドラムPRy〜PRkには、帯電器の一例としての帯電ロールCRy,CRm,CRc,CRkが対向して配置されている。前記帯電ロールCRy〜CRkには、電源回路Eから帯電電圧が印加される。なお、電源回路Eは、制御部の一例としてのコントローラCにより制御される。前記コントローラCは、画像処理部GSや書込回路DL等との間でも信号の送受信を行って、各種制御を行う。
感光体ドラムPRy〜PRkの回転方向に対して、帯電ロールCRy〜CRkの下流側に設定された書込領域Q1y,Q1m,Q1c,Q1kにおいて、感光体ドラムPRy〜PRkの表面に対して、LEDヘッドLHy〜LHkから書込光が照射される。
感光体ドラムPRy〜PRkの回転方向に対して、書込領域Q1y〜Q1kの下流側に設定された現像領域Q2y,Q2m,Q2c,Q2kには、現像装置Gy,Gm,Gc,Gkが感光体ドラムPRy〜PRkの表面に対向して配置されている。感光体ドラムPRy〜PRkと現像装置Gy〜Gkとにより、可視像形成装置の一例としてのプロセスカートリッジPRy+Gy,PRm+Gm,PRc+Gc,PRk+Gkが構成されている。
【0019】
感光体ドラムPRy〜PRkの回転方向に対して、現像領域Q2y〜Q2kの下流側には、1次転写領域Q3y,Q3m,Q3c,Q3kが設定されている。1次転写領域Q3y〜Q3kでは、中間転写体の一例としての中間転写ベルトBに接触している。また、1次転写領域Q3y,Q3m,Q3c,Q3kにおいて、中間転写ベルトBを挟んで感光体ドラムPRy〜PRkの反対側には、1次転写器の一例としての1次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1kが配置されている。
感光体ドラムPRy〜PRkの回転方向に対して、1次転写領域Q3y〜Q3kの下流側には、像保持体の清掃器の一例としてのドラムクリーナCLy,CLm,CLc,CLkが配置されている。
【0020】
前記感光体ドラムPRy〜PRkの上方には、中間転写装置の一例としてのベルトモジュールBMが配置されている。前記ベルトモジュールBMは、前記中間転写ベルトBを有する。中間転写ベルトBは、駆動部材の一例としての駆動ロールRdと、張架部材の一例としてのテンションロールRtと、蛇行補正部材の一例としてのウォーキングロールRw、従動部材の一例としてのアイドラロールRf、2次転写領域の対向部材の一例としてのバックアップロールT2aと、1次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1kと、により回転可能に支持されている。
【0021】
中間転写ベルトBを挟んでバックアップロールT2aの反対側には、2次転写部材の一例としての2次転写ロールT2bが配置されている。前記バックアップロールT2aと2次転写ロールT2bにより2次転写器T2が構成されている。また、2次転写ロールT2bと中間転写ベルトBとが対向する領域により2次転写領域Q4が形成される。
前記1次転写ロールT1y〜T1k、中間転写ベルトBおよび2次転写器T2等により、感光体ドラムPRy〜PRkに形成された画像を媒体に転写する実施例1の転写装置T1+T2+Bが構成されている。
【0022】
中間転写ベルトBの回転方向に対して、2次転写領域Q4の下流側には、中間転写体の清掃器の一例としてのベルトクリーナCLbが配置されている。
前記ベルトモジュールBMの上方には、現像剤の収容容器の一例としてのカートリッジKy,Km,Kc,Kkが配置されている。各カートリッジKy〜Kkには、現像装置Gy〜Gkに補給される現像剤が収容されている。前記カートリッジKy〜Kkと現像装置Gy〜Gkとの間は、図示しない現像剤の補給装置により接続されている。
【0023】
プリンタ部U1の下部には、媒体の収容容器の一例としての給紙トレイTR1〜TR3が配置されている。給紙トレイTR1〜TR3は、案内部材の一例としてのガイドレールGRにより前後方向に着脱可能に支持されている。給紙トレイTR1〜TR3には、媒体の一例としてのシートSが収容されている。
給紙トレイTR1〜TR3の左上方には、媒体の取出部材の一例としてのピックアップロールRpが配置されている。ピックアップロールRpの左方には、捌き部材の一例としての捌きロールRsが配置されている。
各給紙トレイTR1〜TR3の左方には、上方に延びる媒体の搬送路SHが形成されている。搬送路SHには、媒体の搬送部材の一例としての搬送ロールRaが複数配置されている。搬送路SHには、シートSの搬送方向の下流部であり且つ2次転写領域Q4の上流側に、送出部材の一例としてのレジロールRrが配置されている。
【0024】
2次転写領域Q4の上方には、定着装置Fが配置されている。定着装置Fは、加熱部材の一例としての加熱ロールFhと、加圧部材の一例としての加圧ロールFpとを有する。加熱ロールFhと加圧ロールFpとの接触領域により、定着領域Q5が構成されている。
定着装置Fの斜め上方には、媒体の搬送部材の一例としての排出ローラRhが配置されている。排出ローラRhの右方には、媒体の排出部の一例としての排出トレイTRhが形成されている。
【0025】
(画像形成動作の説明)
前記原稿トレイTG1に収容された複数の原稿Giは、プラテンガラスPG上の原稿の読み取り位置を順次通過して、原稿の排紙トレイTG2に排出される。
前記オートフィーダU3を使用して自動的に原稿を搬送して複写を行う場合は、読取り用の光学系Aは初期位置に停止した状態で、プラテンガラスPG上の読み取り位置を順次通過する各原稿Giを露光する。
原稿Giを作業者が手でプラテンガラスPG上に置いて複写を行う場合、読取り用の光学系Aが左右方向に移動して、プラテンガラスPG上の原稿が、露光されながら走査される。
【0026】
原稿Giからの反射光は、読取り用の光学系Aを通って、撮像素子CCDに集光される。前記撮像素子CCDは、撮像面上に集光された原稿の反射光が赤:R、緑:G、青:Bの電気信号に変換される。
画像処理部GSは、撮像素子CCDから入力されるRGBの電気信号を黒:K、イエロー:Y、マゼンタ:M、シアン:Cの画像情報に変換して一時的に記憶する。画像処理部GSは、一時的に記憶した画像情報を予め設定された時期に、潜像形成用の画像情報として書込回路DLに出力する。
なお、原稿画像が単色画像、いわゆる、モノクロの場合は、黒:Kのみの画像情報が書込回路DLに入力される。
【0027】
前記書込回路DLは、図示しない各色Y,M,C,Kの各駆動回路を有し、入力された画像情報に応じた信号を予め設定された時期に、各色毎に配置されたLEDヘッドLHy〜LHkに出力する。
各感光体ドラムPRy〜PRkの表面は、帯電ロールCRy〜CRkによりに帯電される。LEDヘッドLHy〜LHkは、書込領域Q1y〜Q1kにおいて、感光体ドラムPRy〜PRkの表面に静電潜像を形成する。現像装置Gy〜Gkは、現像領域Q2y〜Q2kにおいて、感光体ドラムPRy〜PRkの表面の静電潜像を、可視像の一例としてのトナー像に現像する。現像装置Gy〜Gkで現像剤が消費されると、消費量に応じて、各カートリッジKy〜Kkから各現像装置Gy〜Gkに現像剤が補給される。
【0028】
各感光体ドラムPRy〜PRkの表面のトナー像は、1次転写領域Q3y,Q3m,Q3c,Q3kに搬送される。各1次転写ロールT1y〜T1kには、電源回路Eから予め設定された時期にトナーの帯電極性と逆極性の1次転写電圧が印加される。したがって、1次転写領域Q3y〜Q3kにおいて、1次転写電圧により、感光体ドラムPRy〜PRkのトナー像は、中間転写ベルトBに順次重ねて転写される。なお、K色の単色の画像の場合は、K色のトナー像のみが、Kの感光体ドラムPRkから中間転写ベルトBに転写される。
【0029】
前記各感光体ドラムPRy〜PRk上のトナー像は、前記1次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1kにより、中間転写体の一例としての中間転写ベルトBに1次転写される。1次転写後の感光体ドラムPRy〜PRk表面の残留物、付着物は、感光体クリーナCLy〜CLkで清掃される。清掃された感光体ドラムPRy〜PRkの表面は、帯電ロールCRy〜CRkで再帯電される。
【0030】
前記各給紙トレイTR1〜TR3のシートSは、予め設定された給紙時期にピックアップロールRpにより取り出される。ピックアップロールRpで取り出されたシートSは、複数枚のシートSが重なった状態で取り出された場合には、捌きロールRsで1枚ずつ分離される。捌きロールRsを通過したシートSは、複数の搬送ロールRaにより、レジロールRrに搬送される。
前記レジロールRrは、中間転写ベルトBの表面のトナー像が2次転写領域Q4に移動する時期に合わせて、シートSを送り出す。
【0031】
レジロールRrから送り出されたシートSには、2次転写領域Q4を通過する際に、2次転写ロールT2bに印加された2次転写電圧により、中間転写ベルトBの表面のトナー像が転写される。
2次転写領域Q4を通過後の中間転写ベルトBの表面は、ベルトクリーナCLbにより残留トナーが除去されて清掃される。
2次転写領域Q4を通過したシートSは、定着領域Q5を通過する際に、定着装置Fによりトナー像が加熱および加圧されて定着される。
トナー像が定着された記録シートSは、排出ローラRhで排出トレイTRhに排出される。
【0032】
(現像装置の説明)
図3は実施例1の現像装置の説明図である。
図4図3のIV−IV線断面図である。
次に、前記本発明の実施例1の現像装置Gy,Gm,Gc,Gkの説明をするが、各色の現像装置Gy,Gm,Gc,Gkは同様に構成されているため、Y色の現像装置Gyについてのみ詳細な説明をし、その他の色の現像装置Gm,Gc,Gkについては、詳細な説明を省略する。
【0033】
図3図4において、現像剤の収容体の一例としての現像装置Gyは、収容部の一例としての現像容器Vを有する。現像容器Vは、トナー及びキャリアを含む2成分現像剤を収容する。図3において、現像容器Vは、下部の容器本体1を有する。容器本体1の上部には、蓋部材の一例としての容器カバー2が支持されている。容器カバー2は、容器本体1の上面を塞いでいる。
【0034】
図3図4において、容器本体1には、内部の左上部に、現像剤の保持体の収容部の一例としての現像ロール室4が形成されている。現像ロール室4の下方には、第1の収容室の一例としての供給室6が形成されている。供給室6は現像ロール室4と接続されている。供給室6の右方には、第2の収容室の一例としての撹拌室7が形成されている。
供給室6と撹拌室7との間は、仕切部材の一例としての仕切壁8で仕切られている。図4において、仕切壁8の前方には、第1の接続部の一例として、供給室6と撹拌室7とを接続する第1流入部8aが形成されている。なお、実施例1では、第1流入部8aは、現像ロール室4の前端よりも前方に配置されている。また、仕切壁8の後方には、第2の接続部の一例として、供給室6と撹拌室7とを接続する第2流入部8bが形成されている。
【0035】
現像ロール室4には、現像剤の保持体の一例としての現像ロールR0yが収容されている。現像ロールR0yは左上方の外表面の一部が、感光体ドラムPRyに対向して配置されている。現像ロールR0yは、磁石部材の一例としての磁石ロール11を有する。図4において、磁石ロール11は、現像容器Vに回転不能に支持されている。図3図4において、磁石ロール11の外周には、回転体の一例としての現像スリーブ12が配置されている。現像スリーブ12は、現像容器Vに回転可能に支持されている。
【0036】
現像スリーブ12の後端には、駆動の伝達部材の一例としてのギアG0が支持されている。ギアG0には、駆動源の一例としての図示しないモータから駆動が伝達可能に構成されている。実施例1の現像装置Gyでは、モータから駆動が伝達された場合に、現像スリーブ12は、対向領域の一例としての現像領域Q2yにおいて、感光体ドラムPRyの表面の移動方向と同方向に回転する
現像ロール室4の下方には、層厚の規制部材の一例としてのトリマー13が配置されている。実施例1のトリマー13は、前後方向に延びる円柱状に形成されている。トリマー13は、現像スリーブ12に対して、予め設定された隙間をあけて回転不能な状態で支持されている。
【0037】
なお、前記磁石ロール11には、現像領域Q2yに対応して、現像磁極S1が設けられている。また、トリマー13に対向する位置には、層厚の規制用の磁極の一例としてのトリミング磁極N2が設けられている。トリミング磁極N2は、現像磁極S1とは逆極性の磁極により構成されている。また、現像スリーブ12の回転方向に対して、現像磁極S1の下流側には、現像磁極S1とは逆極性の搬送磁極N1が設けられている。現像スリーブ12の回転方向に対して、搬送磁極N1の下流側には、現像剤の離脱用の磁極の一例としてのピックオフ磁極S2が設けられている。ピックオフ磁極S2は、搬送磁極N1とは逆極性の磁極により構成されている。現像スリーブ12の回転方向に対して、ピックオフ磁極S2の下流側且つトリミング磁極N2の上流側には、現像剤の吸着用の磁極の一例としてのピックアップ磁極S3が設けられている。ピックアップ磁極S3は、ピックオフ磁極S2とは同極性且つトリミング磁極N2とは逆極性の磁極により構成されている。
【0038】
図3図4において、供給室6には、回転部材の一例であって、第1の搬送部材の一例としての供給オーガ16が配置されている。供給オーガ16は、軸部の一例として、前後方向に延びる回転軸16aを有する。回転軸16aの外周には、搬送部の一例として、螺旋状の搬送羽根16bが支持されている。また、回転軸16aの後端には、駆動の伝達部材の一例としてのギアG1が支持されている。
撹拌室7には、回転部材の一例であって、第2の搬送部材の一例としての撹拌オーガ17が配置されている。撹拌オーガ17は、供給オーガ16と同様に、軸部の一例としての回転軸17aと、搬送部の一例としての搬送羽根17bと、ギアG2とを有する。
【0039】
供給オーガ16のギアG1は、中間のギアG3を介してギアG0と噛み合っている。また、撹拌オーガ17のギアG2は、供給オーガ16のギアG1と噛み合っている。
また、図4において、撹拌室7の後部には、カートリッジKyからの現像剤が補給される補給口7aが形成されている。
【0040】
(現像装置の機能)
前記構成を備えた現像装置Gy〜Gkでは、画像形成が開始されると、モータが駆動して、現像ロールR0y〜R0kが回転すると共に、各オーガ16,17が回転する。実施例1では、供給オーガ16が回転すると、供給オーガ16は、供給室6の現像剤を、矢印Yaで示すように、第1流入部8aから第2流入部8bに向けて撹拌しながら搬送する。第2流入部8bまで搬送された現像剤は、第2流入部8bを通じて撹拌室7に流入する。撹拌オーガ17が回転すると、撹拌オーガ17は、撹拌室7の現像剤を、矢印Ybで示すように、第2流入部8bから第1流入部8aに向けて撹拌しながら搬送する。第1流入部8aまで搬送された現像剤は、第1流入部8aを通じて供給室6に流入する。よって、供給室6と撹拌室7とによって、循環室6+7が構成されている。
【0041】
供給室6の現像剤は、ピックアップ磁極S3の磁力で、現像スリーブ12に吸着される。現像スリーブ12に吸着された現像剤は、トリマー13を通過する際に、トリマー13と現像スリーブ12との隙間に対応する予め設定された現像剤のみが通過する。トリマー13を通過した現像剤は、現像領域Q2y〜Q2kにおいて、感光体ドラムPRy〜PRkの潜像を現像する。現像に使用されなかった現像剤は、現像磁極S1と搬送磁極N1との間の磁界や搬送磁極N1とピックオフ磁極S2との間の磁界等で現像スリーブ12の表面に吸着されたまま搬送される。同極性のピックオフ磁極S2とピックアップ磁極S3との間では、現像剤を現像スリーブ12に吸着する磁力が低下する。よって、現像スリーブ12の表面に吸着された現像剤は、ピックオフ磁極S2とピックアップ磁極S3との間で、現像スリーブ12から離脱して、循環室6+7に戻される。
【0042】
(現像装置の各部位の説明)
図5は実施例1の現像装置の要部説明図であり、図5Aは端部の説明図、図5Bはシール部材の部分の要部拡大図である。
図5において、実施例1のオーガ16,17の端部は、軸受部材の一例としてのベアリング21により回転可能に支持されている。ベアリング21の内側には、抑制部材の一例としてのシール部材22が支持されている。シール部材22は、円筒状の基部22aを有する。基部22aは、現像容器Vの内面に固定支持されている。基部22aの内周には、本体部の一例として、内側に延びる略円錐状のシール本体22bが形成されている。シール本体22bは、オーガ16,17の回転軸16a,17aが貫通した状態で支持される。そして、シール本体22bは、貫通する回転軸16a,17aに押されて略円錐状に弾性変形して、回転軸16a,17aの表面に、弾性力で接触した状態で保持される。
【0043】
図5Bにおいて、実施例1のシール本体22bにおいて、自由端部22cから基端部22dまでのシール本体22bの長さをフリーレングスL、回転軸16a,17aの表面から基端部22dまでの径方向の距離の一例としての狭小距離をd、フリーレングスLと狭小距離dの比をフリーレングス比x(L/d)とする。また、シール本体22bの厚さをtとする。また、シール本体22bが回転軸16a,17aに弾性変形して嵌った状態において、自由端部22cの内周面は、現像容器Vの内側を向いている。そして、シール本体22bは、自由端部22cの内周の縁部全周で回転軸16a,17aの全周を押圧している。
【0044】
(シール部材の機能)
前記構成を備えた実施例1の現像装置Gy〜Gkでは、回転軸16a,17aの端部に、シール部材22が配置されている。したがって、ベアリング21に現像剤が進入して、ベアリング21が齧って、オーガ16,17の回転時のトルクが上昇することが低減されている。
次に、実施例1の機能について、以下に説明する3つの評価結果を参照しつつ説明する。試験において、本実施形態の現像装置Gy〜Gk部品等を用いる場合、その部品等の符号及び名称等をそのまま用いて説明する。
【0045】
<浮き評価の方法>
回転軸16a,17aとシール部材22の先端部に生じる隙間を観察により測定した。
【0046】
<耐久試験の方法>
耐久試験では、以下に説明する評価毎の条件を設定した現像装置Gy〜Gkを複写機Uに取り付けて、500時間連続でA4サイズの普通紙に全印刷領域の5%印字を行った。実験は、富士ゼロックス株式会社製のColor 1000 Pressを改造して行った。
【0047】
<第1評価>
〈概要〉
第1評価では、撹拌オーガ17のシール部材22において、フリーレングス比xが異なる複数の現像装置Gy〜Gkを準備した。ここで、準備した複数のシール部材22のフリーレングス比xは、1.87,2.07,2.27,2.47,2.67の5水準とした。また、第1評価ではシール部材22のヤング率を0.24[GPa]、ポアソン比を0.49とした。また、第1評価では、キャリアの体積粒径分布の標準偏差をσに対して、3σ(全体の99.7%)の最小値yは10[μm]であった。なお、キャリアの体積粒径分布は、BECKMAN COULTER社製のCoulter Multisizerで測定した。また、第1評価では、接触シール厚さtを300[μm]とした。
【0048】
そして、第1評価では、浮き評価により、回転軸17aとシール部材22の先端部22cに生じる隙間(以下先端浮き)をレーザー顕微鏡を使用して測定した。
【0049】
また、第1評価では、耐久試験の後、シール部材22を通過してベアリング21側に漏れた現像剤の有無を調べ、シール部材22とベアリング21の間に現像剤が観察された時を漏れ有り、観察されなかった時を漏れ無しとした。
【0050】
〈評価結果〉
図6は第1評価の評価結果の説明図であり、横軸にフリーレングス比を取り、縦軸に先端浮きを取ったグラフである。
図6に示されるように、フリーレングス比xが、2.07以下で先端浮きは0、すなわち回転軸17aに対しシール部材22の先端浮きあがりは未発生となった。また、耐久試験の結果、フリーレングス比xが2.07以下で漏れ未発生となった。
【0051】
〈評価結果に対する見解〉
フリーレングス比xを小さくすることで、先端浮きが小さくなり、キャリアがシール先端部22cに入り込むことに起因するキャリアと回転軸17aとの摺擦が発生しにくくなった。よって、回転軸17aの局所的削れに伴う、シール機能の低下が発生しなかったと考える。
【0052】
(フリーレングス比xの下限)
しかしながら、フリーレングス比xを短くしすぎると、これまで説明した回転軸16a,17aとキャリアの摺動を原因とする回転軸16a,17aの局所的な削れとは別の要因で、シール機能が保てなくなる。フリーレングス比xを短くすると、回転軸16a,17aに対してシール部材22が接触する幅(リップ幅)が小さくなり、やがて接触しなくなる。
【0053】
図7はフリーレングス比xと接触幅の関係の説明図であり、横軸にフリーレングス比を取り、縦軸に接触幅をとったグラフである。
図7にはフリーレングス比xと接触幅の関係を示す。図7は、補足試験として、現像装置Gy〜Gkを複写機Uに取り付けて、2時間連続でA4サイズの普通紙に全印刷領域の5%印字を行った結果である。
補足試験の結果、回転軸16a,17aの局所的な削れが発生していない条件で、漏れが発生しなかった最小のフリーレングス比x=1.6[mm]をフリーレングス比xの下限として設定した。
【0054】
(シール部材22のヤング率とポアソン比に関して)
ところで、上記の先端浮きはシール部材22の材料特性として、ヤング率Y[GPa]と、ポアソン比pの影響を受ける事が考えられ、ヤング率Y、ポアソン比pともに大きくなるほど、先端浮きも増大する事が予想される。
よって、ポアソン比を固定してヤング率が異なる複数のシール部材22を使用して、フリーレングス比と先端浮きとの関係を構造解析シミュレーション(Abaqus使用)で推定した。解析条件は、ヤング率を0.01,0.50,3.50[GPa]の三水準とし、ポアソン比は0.49固定とした。実験結果を図8に示す。なお、シミュレーションと実験とは、図8記載のヤング率0.24[GPa]、ポアソン比0.42でのFL比2.27,2.47,2.67三水準で同等の結果を示すことを検証済みである。
【0055】
図8はフリーレングス比と先端浮きとの関係の説明図であり、横軸にフリーレングス比を取り、縦軸に先端浮きを取ったグラフである。
図8に示す結果は、ゴム材等の代表値としてのヤング率0.01[GPa]から、ポリスチレン等の樹脂材料の代表値としてのヤング率3.50[GPa]の範囲で、先端浮きが変化しない事を示している。これはヤング率を変化させても、弾性変形域内であれば先端浮きが変化しない事を示している。
【0056】
次に、ヤング率を固定してポアソン比が異なる複数のシール部材22を使用して、フリーレングス比と先端浮きとの関係を構造解析シミュレーション(Abaqus使用)で推定した。解析条件は、ヤング率を0.24[GPa]固定とし、ポアソン比を0.34,0.42,0.49の三水準とした。結果を図9に示す。
図9はフリーレングス比と先端浮きとの関係の説明図であり、横軸にフリーレングス比を取り、縦軸に先端浮きを取ったグラフである。
図9は、ゴム材等の代表値としてのポアソン比0.49から、ポリスチレン等の樹脂材料の代表値としてのポアソン比0.34の範囲でのフリーレングス比と先端浮きの関係を示しており、ポアソン比を大きくすることで、先端浮きはわずかに増大するものの、フリーレングス比による影響に比べ極めて小さい事が分かる。以上のことより、ヤング率、ポアソン比によらず、フリーレングス比短縮による先端浮きの抑制効果は十分に得られると考える。
【0057】
(シール部材22の厚さtに関して)
次に、シール本体22bの厚さtに関して、構造解析シミュレーション(Abaqus使用)で推定した。解析条件は、フリーレングス比が1.87,2.27,2.47,2.67の四水準、シール本体22bの厚さtを150[μm]、300[μm]、450[μm]の三水準とした。結果を図10に示す。
【0058】
図10はシール本体の厚さと先端浮きとの関係の説明図であり、横軸にシールの厚さを取り、縦軸に先端浮きを取ったグラフである。
シール部材22の厚さtに関しては、厚くしすぎると接触圧力が上昇し、トルク、温度上昇が課題として発生する。一方、薄くしすぎると接触圧力が低下し、シール機能が悪くなることが分かっている。詳細は割愛するが、温度上昇によるシール厚さtの上限値は450[μm]程度、シール機能低下によるシール厚さtの下限値は150[μm]程度となっている。図10に示す通り、フリーレングス比2.47以下では、シール厚さtの上下限範囲内において、本評価条件であるシール厚さt=300[μm]時よりも先端浮きが大きくなる事は無いため、想定される任意のシール厚さで使用可能である。一方、第2評価で記載するフリーレングス比xが2.47≦x≦2.67の範囲ではシール厚さtが大きくなると先端浮きが増大する傾向があり、本評価条件のシール厚さt=300[μm]より、150[μm]≦t≦300[μm]以下という制限が入る。
【0059】
(まとめ)
以上の検討により、実施例1の現像装置Gy〜Gkでは、オーガ16,17は、フリーレングス比xを1.6<x≦2.07とすることで、キャリアが回転軸16a,17aとシール部材22の間に入り込み回転軸16aの局所的削れを発生させることを抑制することができ、課題であるシール機能の低下を防ぐことができる。
【0060】
<第2評価>
〈概要〉
第2評価では、第1評価でも用いたフリーレングス比xが異なる複数の現像装置Gy〜Gkを準備した。ここで、準備した複数のシール部材22のフリーレングス比xは、第1評価にて漏れが発生した2.27,2.47,2.67の3水準とした。また、第2評価では、キャリアの体積粒径分布の3σの最小値yの異なる複数の現像剤を用意した。ここで、準備した複数のキャリアの前記最小値yは、14[μm]、20[μm]、30[μm]、40[μm]の4水準とした。また、第2評価ではシール部材22のヤング率を0.24[GPa]、ポアソン比を0.47とした。また、第2評価では、シール部材22の厚さtを300[μm]とした。
【0061】
そして、第2評価では、耐久試験の後、シール部材22を通過してベアリング21側に漏れた現像剤の有無を調べ、シール部材22とベアリング21の間に現像剤が観察された時をもれ有、観察されなかった時を漏れ無しとした。
【0062】
〈評価結果〉
図11は第2評価の評価結果の説明図であり、フリーレングス比とキャリアの体積粒径分布の最小値との関係の説明図である。
図11に示されるように、キャリアの体積粒径の最小値yが14[μm]時にフリーレングス比xが2.27以下で、キャリアの体積粒径の最小値yが20[μm]時にフリーレングス比xが2.47以下で、キャリアの体積粒径の最小値yが30[μm]および40[μm]時にフリーレングス比xが2.67以下で、漏れ無しとなった。
【0063】
〈評価結果に対する見解〉
前述のとおり、フリーレングス比xは小さいほど、またキャリアの体積粒径の最小値yが大きいほど漏れが発生し難い事が分かる。これは、第1評価でも言及したとおり、回転軸16a,17aに対するシール部材22の先端部22cの浮きが小さいほど、またキャリアの粒径が大きいほど、回転軸16a,17aとキャリアの摺擦が起こりやすく、回転軸16a,17aの局所的な削れが発生しやすい事に起因すると考えられる。
【0064】
図12は耐久試験後のフリーレングス比と回転軸の削れとの関係の説明図であり、横軸にフリーレングス比を取り、縦軸に回転軸の局所的な削れを取ったグラフである。
図12では、シール部材22のヤング率を0.24[GPa]、ポアソン比を0.49、キャリアの体積粒径の最小値yを14[μm]と20[μm]の2水準とした場合について、フリーレングス比と局所的な回転軸16a,17aの局所的な削れが発生するかを観察した。
図12の結果から、確かにフリーレングス比xが小さいほど、またキャリアの体積粒径の最小値yが大きいほど回転軸削れが抑制されている事が分かる。
【0065】
以上の事から、フリーレングス比xが小さいほど、また、キャリアの体積粒径の最小値yが大きいほどキャリアが回転軸16a,17aとシール部材22の先端部22cの隙間に入り込みにくくなり、回転軸16a,17aの局所的な削れによるシール機能の低下が発生し難いという事が言える。
【0066】
また、第1評価に対する見解で記載の通り、フリーレングス比の下限はx=1.6[mm]である。
【0067】
また、第1評価に対する見解で記載の通り、FL比2.47 ≦x≦ 2.67のときのシール厚さtの範囲は150[μm]≦t≦300[μm]である。
【0068】
(まとめ)
以上の検討により、実施例1の現像装置Gy〜Gkのオーガ16,17は、キャリアの体積粒径の最小値yとフリーレングス比xにおいて、
(1)14≦y<20の時、1.6 ≦x≦ 2.27、
(2)20≦y< 30の時、1.6≦x≦ 2.47、
(3)30 ≦y≦40の時、1.6 ≦x≦ 2.67、且つ、2.47 ≦x≦ 2.67のときのシール厚さtの範囲は150[μm]≦t≦300[μm] 、
を満たすことで、キャリアが回転軸16a,17aとシール部材22の間に入り込み回転軸16a,17aの局所的削れを発生させることを抑制することができ、課題であるシール機能の低下を防ぐことができる。
【0069】
<第3評価>
〈概要〉
第3評価では、攪拌オーガ17のシール部材22において、先端部22cの曲率半径Rの異なる複数の水準を用意した。ここで、準備した複数のシール部材22の先端部22cは、R=10[μm]、15[μm]、20[μm]、35[μm]、50[μm]の5水準とした。また、第3評価ではキャリアの体積粒径の最小値yを25[μm]とした。また、第3評価ではシール部材22のフリーレングス比xを1.87とした。また、第3評価ではシール部材22のヤング率を0.24[GPa]、ポアソン比を0.49とした。また、第3評価でのシール部材22の厚さtは300[μm]とした。
【0070】
そして、第3評価では、回転軸17aとシール部材22の接触部に対し、軸方向にキャリアが突入する際の、キャリアが回転軸17aに対して与える軸垂直方向(径方向)反力とキャリア突入荷重の比(以下径方向反力比)と、先端部22cの曲率半径Rの関係を検証した。検証は、構造解析シミュレーション(Abaqus使用)で推定した。結果を、図13に示す。
【0071】
〈評価結果〉
図13は第3評価の評価結果の説明図であり、横軸に先端部の曲率半径を取り、縦軸に径方向反力比を取ったグラフである。
図13に示されるように、シール部材22の先端部22cの曲率半径Rが小さいほど径方向反力比は減少し、先端部22cの曲率半径Rをキャリア粒径分布の最小値yの半値、本評価においては12.5[μm]以下とすることで、回転軸17aに対する径方向反力は0となった。
【0072】
〈評価結果に対する見解〉
第1評価で述べた先端浮きの発生しないフリーレングス比においては、シール部材22の先端部22cの曲率半径Rを、キャリアの径の半値以下とすることで、回転軸17aに対するキャリアの径方向反力を無くす事が出来、キャリアと回転軸17aの摺擦により発生する回転軸17aの局所的削れを更に抑制し、より低ストレスな接触シール機構を実現できる。
【0073】
<第4評価>
第4評価では、ヤング率の異なる3水準のシール部材22を用意した。ここで準備した複数のシール部材22の水準は、ヤング率0.01[GPa]、0.05[GPa]、3.5[GPa]の3水準とした。そして、シール部材22のヤング率を、株式会社島津製作所製のDUH−201で測定した。結果を図14に示す。
【0074】
〈評価結果〉
図14は第4評価の評価結果の説明図であり、横軸にヤング率を取り、縦軸にシール部材の応力を取ったグラフである。
図14において、接触シール128のヤング率とシール反力は比例する事が分かった。
【0075】
(評価結果に対する見解)
また、シール反力は、シール部材22の漏れ防止の観点から下限値が1MPa、トルク上昇、発熱の観点から9MPaが上限値となっているため、ヤング率の範囲を0.045[GPa]〜0.41[GPa]とすることで、トルク上昇、および発熱二次障害なく、シール機能を保持出来る。
【0076】
したがって、実施例1のシール部材22では、フリーレングス比xが以下の式(1)を満足するように、フリーレングスLおよび狭小距離dが設定される。
1.6≦x≦2.07 …式(1)
よって、式(1)を満足しない構成に比べて、実施例1では、シール部材22の先端部22cの浮き上がりが抑制される。したがって、シール部材22の先端部22cと回転軸16a,17aとの隙間にキャリアが進入することが抑制される。よって、回転軸16a,17aの局所的な削れによるシール機能の低下が抑制される。したがって、キャリア径に関わらず、少なくとも式(1)を満足すれば、シール部材22の先端部22cと回転軸16a,17aとの隙間にキャリアの進入が抑制される。
【0077】
また、実施例1では、現像剤に含まれるキャリアの体積粒径分布における標準偏差をσとし、3σの範囲の最小値をyとし、シール部材22の厚さをtとした場合に、
(1)14≦y≦20の場合は、1.6≦x≦2.27、
(2)20<y≦30の場合は、1.6≦x≦2.47、
(3)30<y≦40の場合は、1.6≦x≦2.67、且つ、2.47≦x≦2.67の場合は、150[μm]≦t≦300[μm]、
を満たすように設定することも可能である。
なお、式(1)を満足するように設定された実施例1の現像装置では、上記の関係も満足する。したがって、上記の範囲に基づいて、キャリア径に応じて、フリーレングス比を設定可能な範囲を拡張することが可能である。
【0078】
なお、上記(1)〜(3)の関係から、以下の式(2)が導出される。
1.6≦x≦0.02×y+1.87 …式(2)
よって、上記式(2)を満足するように設定することで、シール部材22の先端部22cと回転軸16a,17aとの隙間にキャリアの進入が抑制される。
【0079】
さらに、実施例1では、自由端部22cの先端の角の曲率半径Rが、最小値yの半値以下に設定される。よって、曲率半径Rが最小値yの半値よりも大きい場合に比べて、キャリアが回転軸16a,17aに対して与える軸垂直方向の反力がゼロとなり、回転軸16a,17aの局所的な削れが更に抑制され、シール機能の低下が防がれる。
【0080】
また、実施例1では、シール部材22のヤング率が、0.045[GPa]〜0.41[GPa]に設定されている。よって、ヤング率が範囲外の場合に比べて、シール部材22と回転軸16a,17aとの接触に伴うトルク上昇や発熱が抑制される。
【0081】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H04)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、画像形成装置の一例としての複写機を例示したが、これに限定されず、例えば、プリンタ、FAX、あるいはこれらの複数または全ての機能を有する複合機等により構成することも可能である。
(H02)前記実施例において、複写機Uは、4色の現像剤が使用される構成を例示したが、これに限定されず、例えば、単色の画像形成装置や、5色以上または3色以下の多色の画像形成装置にも適用可能である。
【0082】
(H03)前記実施例において、シール部材22の先端部22cの曲率半径Rは、最小値yの半値以下に設定することが望ましいが、回転軸16a,17aの削れが許容範囲である場合には、半値よりも大きい値にすることも可能である。また、ヤング率も、設計変更や材料変更等で、トルク上昇や発熱の許容範囲が変更された場合、それに応じてヤング率の範囲も変更可能である。
【0083】
(H04)前記実施例において、現像剤の収容体の一例としての現像装置Gy〜Gkを例示したがこれに限定されない。内部にトナーとキャリアとを含む現像剤が収容され、且つ、搬送部材のような回転部材が配置された構成に適用可能である。例えば、トナーカートリッジや、トナーカートリッジから現像装置へ現像剤を搬送する現像剤の補給路等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
16,17…回転部材、
16a,17a…軸部、
21…軸受け部材、
22…抑制部材、
22c…自由端部、
22d…基端部、
d…軸部の表面から基端部までの軸部の径方向の長さ、
F…定着装置、
Gy,Gm,Gc,Gk…現像剤の収容体、現像装置、
L…基端部から自由端部までの抑制部材の長さ、
PRy,PRm,PRc,PRk…像保持体、
R…自由端部の先端の角の曲率半径、
S…媒体、
t…抑制部材の厚さ、
T1+T2+B…転写装置、
U…画像形成装置、
V…収容部、
y…キャリアの体積粒径分布における3σの範囲の最小値。
図1
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図14