【文献】
グュエン・ヴァン・チュエン,異なる食塩濃度におけるアミノ酸・ペプチド・タンパク質と糖との反応の進行および生成物の生成について,平成18年度助成研究報告書集,公益財団法人ソルト・サイエンス研究財団,2008年,p.155-160,助成番号0648
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
糖質とアミノ酸としてアラニンならびにプロリン及び/又はグリシンを含有する糖質摂取直後の血糖値上昇抑制用アミノ酸組成物であって、アラニン:プロリン及び/又はグリシン=1:0.01〜1の配合割合で含有し、アラニンならびにプロリン及び/又はグリシンの合計濃度が固形分として2重量%〜50重量%であるアミノ酸組成物。
糖質とアミノ酸としてアラニンならびにプロリン及び/又はグリシンを含有する長時間の運動による血糖値低下抑制用アミノ酸組成物であって、アラニン:プロリン及び/又はグリシン=1:0.01〜1の配合割合で含有し、アラニンならびにプロリン及び/又はグリシンの合計濃度が固形分として2重量%〜50重量%であって、他のアミノ酸を含まないアミノ酸組成物。
糖質とアミノ酸としてアラニンならびにプロリン及び/又はグリシンを含有する運動パフォーマンス向上のために用いられるアミノ酸組成物であって、アラニン:プロリン及び/又はグリシン=1:0.01〜1の配合割合で含有し、アラニンならびにプロリン及び/又はグリシンの合計濃度が固形分として2重量%〜50重量%であって、他のアミノ酸を含まないアミノ酸組成物。
アラニンならびにプロリン及び/又はグリシンを、アラニン:プロリン及び/又はグリシン=1:0.01〜1の配合割合で含有し、他のアミノ酸の合計濃度が固形分として5重量%以下である、糖質摂取直後の血糖値上昇抑制剤。
アラニンならびにプロリン及び/又はグリシンを、アラニン:プロリン及び/又はグリシン=1:0.01〜1の配合割合で含有し、他のアミノ酸を含まない、血糖値低下抑制剤。
アラニンならびにプロリン及び/又はグリシンを、アラニン:プロリン及び/又はグリシン=1:0.01〜1の配合割合で含有し、他のアミノ酸を含まない、運動パフォーマンス向上剤。
アラニンならびにプロリン及び/又はグリシンを、アラニン:プロリン及び/又はグリシン=1:0.01〜0.5の配合割合で含有し、他のアミノ酸の合計濃度が固形分として5重量%以下である、組成物を摂取させることを特徴とする糖質摂取直後の血糖値上昇抑制方法(ただし医療行為を除く)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
運動時の摂取エネルギー源は糖質が基本となっている。運動前のエネルギー補給において、糖質のみを摂取した場合、摂取直後に急激な血糖値の上昇が起こるため、インスリン分泌増加などによる低血糖を誘発するおそれがあった。また運動が長時間に及ぶと血糖値が低下するため、運動パフォーマンスを十分維持できないという問題があった。
そこで本発明は、摂取直後の血糖値の急激な上昇が抑制され、且つ長時間の運動による血糖値の低下が抑制されており、運動パフォーマンスを向上させることが可能な新規アミノ酸組成物、とりわけ飲食品、医薬品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討し、糖質をエネルギー源として摂取する際に、アラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上を同時に摂取することで、摂取直後の急激な血糖値上昇及び長時間の運動による血糖値の低下が抑制されることを見出した。さらに糖質をエネルギー源として摂取する際に、或いは糖質を摂取せず体内の糖質をエネルギー源とする際に、アラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上を摂取することで、等カロリーの糖質のみを摂取した場合に比べて、運動パフォーマンスが向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下を提供するものである。
【0008】
[1]糖質とアミノ酸としてアラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上とを含有するアミノ酸組成物。
[2]アラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上の合計濃度が固形分として2重量%〜50重量%である、[1]に記載のアミノ酸組成物。
[3]糖質の合計濃度が固形分として10重量%〜90重量%である、[1]又は[2]に記載のアミノ酸組成物。
[4]アラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上を合計で2.5g〜15g含むように1回摂取量単位で包装された形態である、[1]〜[3]のいずれかに記載のアミノ酸組成物。
[5]アミノ酸としてアラニンとプロリン及び/又はグリシンとを組み合わせて含有する、[1]〜[4]のいずれかに記載のアミノ酸組成物。
[6]アラニン並びにプロリン及び/又はグリシンを、アラニン:プロリン及び/又はグリシン=1:0.01〜1の配合割合で含有する、[5]に記載のアミノ酸組成物。
[7]組成物の形態がゼリー状又は液状である、[1]〜[6]のいずれかに記載のアミノ酸組成物。
[8]等カロリーの糖質摂取時と比較して、摂取直後の血糖値の上昇が抑制される、[1]〜[7]のいずれかに記載のアミノ酸組成物。
[9]等カロリーの糖質摂取時と比較して、摂取後の長時間の運動による血糖値低下が抑制される、[1]〜[7]のいずれかに記載のアミノ酸組成物。
[10]運動パフォーマンス向上のために用いられる、[1]〜[7]のいずれかに記載のアミノ酸組成物。
[11]他のアミノ酸を含まない、[1]〜[10]のいずれかに記載のアミノ酸組成物。
[12]アラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上を含有することを特徴とする糖質摂取直後の血糖値上昇抑制剤。
[13]アラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上を含有することを特徴とする長時間の運動による血糖値低下抑制剤。
[14]アラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上を含有することを特徴とする運動パフォーマンス向上剤。
[15]アラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上を含有する組成物を投与することを特徴とする糖質摂取直後の血糖値上昇抑制方法。
[16]アラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上を含有する組成物を投与することを特徴とする長時間の運動による血糖値低下抑制方法。
[17]アラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上を含有する組成物を投与することを特徴とする運動パフォーマンス向上方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により提供されるアミノ酸組成物は、摂取直後の急激な血糖値上昇及び長時間の運動による血糖値の低下を抑制することができ、運動パフォーマンスを向上させることができる。また本発明により提供される剤は、糖質を摂取した直後の血糖値上昇及び長時間の運動による血糖値の低下を抑制することができ、運動パフォーマンスを向上させることができる。そのため運動(特に長時間の運動)を行なう者に有用なエネルギー補給手段を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のアミノ酸組成物は、糖質とアミノ酸としてアラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上とを含有する。
【0012】
本発明における糖質は、エネルギー補給源となる限り、任意の糖類であってよい。糖類としては、単糖類(グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトースなど)、二糖類(スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、イソマルトースなど)、オリゴ糖及び多糖類(でんぷん、デキストリン及びグリコーゲンなど)などが挙げられるが、これらに限定されない。効率的なエネルギー補給の観点から、糖質は、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、イソマルトース、オリゴ糖、デキストリン、還元デキストリンが好ましい。また糖質としていずれか1つの糖類を使用してもよいが、2種以上の糖類を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
本発明のアミノ酸組成物に含まれるアラニン(以下、Alaと略記する場合もある)は、L−体、D−体又はDL−体のいずれでもよい。
【0014】
また本発明のアミノ酸組成物に含まれるプロリン(以下、Proと略記する場合もある)は、L−体、D−体又はDL−体のいずれでもよい。
【0015】
また本発明のアミノ酸組成物にはグリシン(以下、Glyと略記する場合もある)が含まれうる。
【0016】
本発明のアミノ酸組成物に含まれるアミノ酸は、生理的に許容されうる塩の形態でありうる。このような塩の形態としては、酸との塩(酸付加塩)、塩基との塩(塩基付加塩)などが挙げられる。酸付加塩を形成する酸としては、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、リン酸等の無機酸;酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、モノメチル硫酸等の有機酸が挙げられる。塩基付加塩を形成する塩基としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム等の金属の水酸化物又は炭酸化物、あるいはアンモニア等の無機塩基;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、エタノールアミン、モノアルキルエタノールアミン、ジアルキルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機塩基が挙げられる。
【0017】
本発明のアミノ酸組成物は、アミノ酸としてアラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上を含有する組成物でありうる。アラニンは肝臓で糖新生に用いられ、長時間の持続運動時に生体内で必要な糖の供給に重要な役割を果たしていることが知られている。
一方、プロリン及び/又はグリシンをアラニンと併用することでアラニンを単独で使用した場合よりも、長時間の運動による血糖値低下がより抑制される傾向がある。従って、本発明のアミノ酸組成物はアラニンとプロリン及び/又はグリシンとを組み合わせて含有することがより好ましい。この場合、アラニン並びにプロリン及び/又はグリシンの配合割合は、重量比で、通常、アラニン:プロリン及び/又はグリシン=1:0.01〜1であり、好ましくは1:0.05〜0.5であり、より好ましくは1:0.1〜0.3である。プロリン及び/又はグリシンの割合が1よりも大きくなると、糖質の褐変が起こる場合があり、外観上好ましくない。
【0018】
本発明のアミノ酸組成物におけるアラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上の合計濃度は、固形分として、通常、2重量%〜50重量%であり、好ましくは3重量%〜30重量%であり、より好ましくは5重量%〜20重量%である。アラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上のアミノ酸の合計濃度が2重量%未満であると、必要量の当該アミノ酸を摂取するためには組成物の1回摂取量が多くなり、摂取し難いものとなる傾向がある。また50重量%を超えると糖質の濃度が低下するため、必要量の当該アミノ酸を摂取しても十分なエネルギー補給ができない傾向がある。
【0019】
上記の固形分としての濃度は、本発明のアミノ酸組成物中の総固形分を100重量%として、当該組成物に配合したアラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上の全量に基づき計算される。従って本発明のアミノ酸組成物が液状、ゼリー状などである場合において、配合した原料の全てが溶解しているか否かによって前記濃度が変動することはない。なお、本明細書中「固形分」とは、組成物などから揮発性の物質(例えば水など)を除いた固形部分をいう。
【0020】
本発明のアミノ酸組成物における糖質の合計濃度は、使用する糖質の種類や当該組成物の形状等に応じて、適宜設定することができる。糖質の合計濃度は通常、固形分として、10重量%〜90重量%であり、好ましくは30重量%〜90重量%であり、より好ましくは50重量%〜90重量%である。糖質の合計濃度が10重量%未満であると、必要量のアラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上のアミノ酸を摂取しても十分なエネルギー補給ができない傾向がある。また糖質の合計濃度が90重量%を超えると当該アミノ酸の合計濃度が低下するため、必要量の糖質を摂取した場合に必要量の当該アミノ酸を摂取することができない傾向がある。
【0021】
上記の固形分としての濃度は、本発明のアミノ酸組成物中の総固形分を100重量%として、当該組成物に配合した糖質の全量に基づき計算される。従って本発明のアミノ酸組成物が液状、ゼリー状などである場合において、配合した原料の全てが溶解しているか否かによって前記濃度が変動することはない。
【0022】
本発明のアミノ酸組成物における糖質とアラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上のアミノ酸との配合割合は、上記濃度の範囲内で適宜設定することができる。具体的には、糖質:アラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上のアミノ酸=1:0.0125〜5、好ましくは1:0.025〜2、より好ましくは1:0.05〜1の範囲に設定することができる。
【0023】
本発明のアミノ酸組成物は、1回ないしは1食摂取量単位で包装された形態であり得る。かかる形態とは、1回ないしは1食あたりに摂取する量が予め定められ、包装された形態をいう。例えば、飲料、ゼリー、ヨーグルト、ガム、クッキー等の場合にはパック、袋、瓶、箱等の容器により1回の摂取量を包装された形態が挙げられ、顆粒、粉末、スラリー状等の場合には、パックや袋等により1回の摂取量を個別包装する形態が挙げられる。特に、組成物が健康食品、機能性食品、栄養補助食品、特定保健用食品等である場合には、例えば、本発明に係る組成物が1回ないし1食あたりの摂取単位量の形態で包装された形態や、本発明に係る組成物が懸濁又は溶解した飲料又はゼリーが、1回あたりの飲み切り又は食べ切りの形態でパック等に充填された形態などが挙げられる。
【0024】
上記1回ないしは1食摂取量中には、アラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上のアミノ酸を合計で2.5g〜15g、好ましくは3g〜12g、より好ましくは4g〜10g含めることができる。これにより、1回ないしは1食摂取量単位を摂取することで、糖質と共に必要量の当該アミノ酸を簡便に摂取することができる。
【0025】
また上記1回ないしは1食摂取量中には、糖質を合計で1g〜100g、好ましくは5g〜80g、より好ましくは10g〜60g含めることができる。これにより、1回ないしは1食摂取量単位を摂取することで、簡便に十分なエネルギーを補給することができる。
【0026】
本発明のアミノ酸組成物の形態は、飲料等のような液状、ゼリー、ジェル、ゼリー様飲料等のようなゼリー状、牛乳、乳飲料、ヨーグルト等のような乳状、ガム状、粉末状、顆粒状、シート状、カプセル状、タブレット状、スナックバー、クッキー等のような固形状などとすることができるが、摂取しやすさの観点から、ゼリー状又は液状であることが好ましい。
【0027】
本発明のアミノ酸組成物の形態がゼリー状又は液状である場合、上記1回摂取量は適宜設定することができるが、通常80g以上、好ましくは100g以上、110g以上、115g以上又は120g以上である。1回摂取量が80g未満であると、必要量の糖質並びにアラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上を含有させた場合に高濃度となり、味及び食感が悪くなることがある。また1回摂取量は、通常300g以下、好ましくは250g以下、200g以下、150g以下、140g以下である。1回摂取量が300gを超えると、運動前(例えば運動の30分前〜直前)に摂取した場合に胃腸に負担がかかり運動パフォーマンスの低下を引き起こすおそれがある。従って、ゼリー状又は液状の場合の1回摂取量の範囲は、通常80g〜300g、好ましくは100g〜250g、100g〜200g、100g〜150gである。
【0028】
本発明のアミノ酸組成物の形態がゼリー状または液状である場合、本発明のアミノ酸組成物におけるアラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上の合計濃度は、通常、1重量%〜10重量%であり、好ましくは1.5重量%〜8重量%であり、より好ましくは2重量%〜6重量%である。また、本発明のアミノ酸組成物の形態がゼリー状または液状である場合、本発明のアミノ酸組成物における糖質の合計濃度は、通常、10重量%〜70重量%、好ましくは15重量%〜60重量%、より好ましくは20重量%〜50重量%である。
【0029】
本発明のアミノ酸組成物は、アラニン、プロリン及びグリシン以外の他のアミノ酸を含んでもよい。他のアミノ酸は、アラニン、プロリン及びグリシン以外の天然に存在するアミノ酸であれば特に限定されない。他のアミノ酸としては、例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、セリン、トレオニン、システイン、グルタミン、アスパラギン、チロシン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸など、食品の製造に使用できるアミノ酸が挙げられる。
【0030】
一方、上記他のアミノ酸の含有量が多くなると、本発明のアミノ酸組成物がゼリー状や液状などの場合には、アラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上のアミノ酸を完全に溶解させることが困難になり、適切なゼリー状や液状などの形態で提供できなくなる。そのため本発明のアミノ酸組成物中の他のアミノ酸の合計濃度は、固形分として5重量%以下であることが好ましい。また他のアミノ酸を含まないことが好ましい。更に、本発明のアミノ酸組成物は、アミノ酸として、アラニン、プロリン及びグリシンのみ、アラニン及びプロリンのみ、又はアラニン及びグリシンのみ、を含むことが好ましい。
【0031】
本発明のアミノ酸組成物には、ビタミン類やミネラル類を添加することもできる。ビタミン類としては、レチノール、レチナール、レチノイン酸等のビタミンA、β−カロテン等のカロテノイド、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等のビタミンD、α−トコフェロール等のビタミンE、フィロキノン、メナキノン等のビタミンKといった脂溶性ビタミン類、チアミン等のビタミンB
1、リボフラビン等のビタミンB
2、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン等のビタミンB
6、シアノコバラミン等のビタミンB
12、ニコチン酸、ニコチン酸アミド等のナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸等のビタミンB群、ビタミンCといった水溶性ビタミン類が挙げられる。ミネラル類としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リン、ヨウ素、鉄、銅、マンガン、セレン、亜鉛、クロム、モリブデン等、一般的なミネラル類が挙げられる。
【0032】
本発明のアミノ酸組成物には、飲食品等の製造に通常使用される、他の食品用等の素材又は食品添加物を添加することができ、例えば増粘剤、懸濁化剤、分散剤、甘味剤、矯味剤、保存剤、香料、有機酸、ゲル化剤、pH調整剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
増粘剤の例としては、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、トラガント末、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の高分子が挙げられる。懸濁化剤の例としては、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ベントナイトなどが挙げられる。分散剤の例としては、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどが挙げられる。甘味剤の例としては、ブドウ糖、果糖、転化糖、ソルビトール、キシリトール、グリセリン、単シロップなどが挙げられる。矯味剤の例としては、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、アセスルファムカリウム、マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、カカオ末などが挙げられる。保存剤の例としては、中鎖脂肪酸モノグリセライド、グリシン、有機酸塩(例えば酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム)、エタノールなどが挙げられる。香料の例としては、レモンフレーバー、オレンジフレーバー、グレープフルーツフレーバー、チョコレートフレーバー、アップルフレーバー、dl−メントール、l−メントールなどが挙げられる。有機酸の例としては、無水クエン酸、クエン酸、dl−リンゴ酸、酒石酸、d−酒石酸、アスコルビン酸、酢酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、マロン酸等が挙げられる。ゲル化剤の例としては、カンテン、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、ペクチン、ジェランガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、トラガント及びゼラチンなどが挙げられる。pH調整剤の例としては、クエン酸水和物またはその塩、無水リン酸一水素ナトリウム、酒石酸またはその塩、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。
【0034】
尚、本発明のアミノ酸組成物は、一般的な食品等の製造技術により製造することができる。
【0035】
本発明のアミノ酸組成物を摂取することにより、等カロリーの糖質摂取時と比較して、摂取直後の血糖値の上昇を抑制することができる。ここで「等カロリーの糖質」とは、本発明のアミノ酸組成物に含有された糖質並びにアラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上の合計カロリーと等しいカロリーを有する糖質であって、本発明のアミノ酸組成物に含有されたものと同じ種類の糖質を意味する。血糖値は自体公知の方法で測定することができ、目的に応じて適切な方法を選択することができる。「摂取直後の血糖値の上昇」とは、対象に応じて変わりうるが、例えば健常なヒトの成人においては摂取から90分後まで、好ましくは60分後まで、より好ましくは30分後までに起こる血糖値の上昇を意味する。また血糖値上昇の抑制を評価する方法は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マウス又はヒトで評価する方法などが挙げられる。具体的には、例えば、対象個体に本発明のアミノ酸組成物を摂取させ、摂取前及び摂取してから一定時間後(例えば、15分後)の血糖値変化(摂取してから一定時間後の血糖値から摂取前の血糖値を引いた値であり、通常、正の値である)を調べる。同様に等カロリーの糖質を摂取させ、血糖値変化を調べる。本発明のアミノ酸組成物を摂取させた場合に、等カロリーの糖質を摂取させた場合よりも、血糖値変化がより低い値である場合、血糖値の上昇が抑制されたと評価することができる。
【0036】
また本発明のアミノ酸組成物を摂取することにより、等カロリーの糖質摂取時と比較して、長時間の運動による血糖値低下を抑制することができる。ここで「等カロリーの糖質」とは、上記定義した通りである。長時間の運動による血糖値低下の抑制を評価する方法は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マウス又はヒトにより評価する方法などが挙げられる。具体的には、例えば、対象個体に本発明のアミノ酸組成物を摂取させ、一定期間(例えば、15分間)の休息期間の後、運動を開始させる。長時間の運動(例えば、60分間以上の運動、90分間以上の運動など)後、血糖値を測定し、血糖値変化(運動後の血糖値から摂取前の血糖値を引いた値)を調べる。同様に等カロリーの糖質を摂取させ、血糖値変化を調べる。本発明のアミノ酸組成物を摂取させた場合に、等カロリーの糖質を摂取させた場合よりも、血糖値変化がより高い値で維持されている場合、血糖値の低下が抑制されたと評価することができる。「長時間の運動」は、対象個体の年齢、性別、体重、運動の種類などに応じた、十分に長い時間の運動であり、例えば、健常なヒトの成人においては30〜180分間、好ましくは45〜150分間、より好ましくは60〜120分間の運動である。
【0037】
本発明のアミノ酸組成物は、以上のような摂取直後の血糖値の上昇を抑制する効果及び摂取後の長時間の運動による血糖値低下を抑制する効果を有することから、エネルギー補給、特に長時間の運動前のエネルギー補給において有用である。
【0038】
さらに本発明のアミノ酸組成物は、運動パフォーマンスを向上させることができる。「運動パフォーマンス」とは、一般に、運動において強度、速度、持久力、精度などに関して所望の結果を達成するための、対象の有する能力をいう。本発明においては、「運動パフォーマンス」は主に持久力に関する能力をいう。
運動パフォーマンスの向上は、例えば、対照と比較して、疲労に達するまでのより長い運動時間又は距離などとして認識されうる。対照は適宜設定してよいが、等カロリーの糖質を摂取した対照を使用することが好ましい。
運動パフォーマンスの評価方法は特に限定されず、当該分野において公知の方法、例えば、トレッドミルや流水プールを用いて試験し評価する方法を用いることができる。具体的な試験としては、対象に運動負荷をかけ、運動を継続できなくなるまでの時間を測定する。または、運動強度(例えば走行速度)を次第に増加させ、対象が運動を継続できなくなるまでの時間を測定する。あるいは、一定の運動後、市販の自発行動量計などを用いて対象の自発行動量を測定し、対象の疲労の程度を評価する。また運動パフォーマンスの向上は、例えば、心拍数などの生理的パラメータの改善としても認識されうる。
【0039】
本発明のアミノ酸組成物は、運動パフォーマンス向上(例えば、持久力向上)のために用いられる組成物として有用である。
【0040】
本発明にいう組成物は、健康補助食品、保健機能食品、サプリメントなどの特定の機能を有し、健康維持などを目的とする医薬品類似の食品組成物、また特定の作用・効果を発揮させるための、食品用の添加剤、医薬品を意味する。
【0041】
本発明は、アラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上を含有することを特徴とする糖質摂取直後の血糖値上昇抑制剤(以下、本発明の血糖値上昇抑制剤とも言う)をさらに提供する。
当該剤は、糖質摂取直後の血糖値上昇を抑制することができる。血糖値上昇の抑制は、対照(例えば等カロリーの糖質を摂取した同じ個体)と比較することにより、本発明のアミノ酸組成物の場合と同様に調べることができる。ここで「等カロリーの糖質」とは、当該剤に含有されたアラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上のアミノ酸並びに摂取される糖質の合計カロリーと等しいカロリーを有する糖質であって、当該摂取される糖質と同じ種類の糖質を意味する。ここで糖質は、エネルギー補給源となる限り、任意の糖類であってよい。
【0042】
本発明は、アラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上を含有することを特徴とする長時間の運動による血糖値低下抑制剤(以下、本発明の血糖値低下抑制剤とも言う)をさらに提供する。
当該剤は、糖質摂取後の長時間の運動による血糖値低下を抑制することができる。血糖値低下の抑制は、対照(例えば等カロリーの糖質を摂取した同じ個体)と比較することにより、本発明のアミノ酸組成物の場合と同様に調べることができる。ここで「等カロリーの糖質」とは、本発明の血糖値上昇抑制剤について上記定義した通りである。
【0043】
本発明は、アラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上を含有することを特徴とする運動パフォーマンス向上剤(以下、本発明の運動パフォーマンス向上剤とも言う)をさらに提供する。
当該剤は、運動パフォーマンスを向上させることができる。当該剤は、糖質と共に摂取することが好ましい。ここで糖質は、エネルギー補給源となる限り、任意の糖類であってよい。運動パフォーマンスの向上は、対照(例えば等カロリーの糖質を摂取した同じ個体)と比較することにより、本発明のアミノ酸組成物の場合と同様に調べることができる。ここで「等カロリーの糖質」とは、本発明の血糖値上昇抑制剤について上記定義した通りである。
【0044】
本発明の血糖値上昇抑制剤、血糖値低下抑制剤及び運動パフォーマンス向上剤(以下、本発明の剤とも言う)におけるアラニン、プロリン及びグリシンに関する説明、それらの配合割合、並びに当該剤の形態などについては、上記本発明のアミノ酸組成物に関する記載を適用することができる。
また本発明にいう剤は、特定の作用・効果を発揮させるための、医薬品、食品用の添加剤、また健康補助食品、保健機能食品、サプリメントなどの特定の機能を有し、健康維持などを目的とする医薬品類似の食品組成物として提供することができる。
【0045】
本発明の剤における1投与量中のアラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上のアミノ酸の合計量は2.5g〜15g、好ましくは3g〜12g、より好ましくは4g〜10gである。
本発明の剤におけるアラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上の合計濃度は、固形分として、通常、2重量%〜50重量%であり、好ましくは3重量%〜30重量%であり、より好ましくは5重量%〜20重量%である。
【0046】
本発明の剤の形態がゼリー状又は液状である場合、本発明の剤におけるアラニン、プロリン及びグリシンのいずれか1種以上の合計濃度は、通常、1重量%〜10重量%であり、好ましくは1.5重量%〜8重量%であり、より好ましくは2重量%〜6重量%である。
【0047】
本発明の剤は、糖質を必ずしも含まなくてよいが、糖質を含む場合には、その種類、配合量等は、上記本発明のアミノ酸組成物と同様に適宜決定することができる。
また本発明の剤が糖質を含まない場合には、糖質を摂取するタイミングは、本発明の剤の摂取と同時であっても別々であってもよく、またいずれを先に摂取してもよい。
【0048】
本発明の剤には、アラニン、プロリン及びグリシン以外の他のアミノ酸、ビタミン類、ミネラル類、食品用素材又は食品添加物を適宜添加することができる。これらについては、上記本発明のアミノ酸組成物で用いたものと同じものを用いることができる。
【0049】
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
<実施例1>
C57BL/6Jマウス(日本クレア)オスを、東北薬科大式回転車(永澤理化学機器店)による走行運動への馴化を行った後、試験に供した。実験当日、一晩絶食させたマウスの血糖値を尾静脈採血により測定した後、(1)デキストリン 1.25g/kg、(2)デキストリン 1g/kg、DL−アラニン(Ala) 0.125g/kg、L−プロリン(Pro) 0.125g/kg、(3)デキストリン 2.5g/kg、(4)デキストリン 2g/kg、DL−Ala 0.25g/kg、L−Pro 0.25g/kg、(5)デキストリン 1.5g/kg、(6)デキストリン 1g/kg、DL−Ala 0.25g/kg、L−Pro 0.25g/kg、(7)デキストリン 3g/kg、(8)デキストリン 2g/kg、DL−Ala 0.5g/kg、L−Pro 0.5g/kg、(9)デキストリン 2g/kg、(10)デキストリン 1g/kg、DL−Ala 0.5g/kg、L−Pro 0.5g/kgのいずれかを経口投与した(18匹/群)。尚、各試薬は、マウス体重(kg)あたり10mlの水に溶解して投与した。投与15分後に血糖値を測定した後、回転車にて10.5m/分の速度で走行運動負荷を開始した。90分の運動負荷後、再び血糖値を測定した。血糖値測定はいずれもグルコカードG
+メーター(アークレイ)を用いて行った。その結果を
図1及び2に示す。
図1に投与15分後の投与前血糖値からの変化を、
図2に90分運動負荷後の投与前血糖値からの変化を示す。いずれの用量でも、デキストリンとAla及びProを同時に投与すると、等カロリーのデキストリン単独投与に比べて、投与15分後の血糖値上昇、運動負荷後の血糖値低下が抑制された。この結果より、本発明のアミノ酸含有組成物が血糖値上昇抑制作用・運動負荷時の血糖値維持作用を持つものとして有用であることが示された。
【0051】
<実施例2>
C57BL/6Jマウス(日本クレア)オスを、東北薬科大式回転車(永澤理化学機器店)による走行運動への馴化を行った後、試験に供した。試験方法は、実施例1と同様である。投与物は、(1)デキストリン 3g/kg、(2)デキストリン 2g/kg、DL−Ala 1g/kg、(3)デキストリン 2g/kg、DL−Ala 0.5g/kg、グリシン(Gly) 0.5g/kg、(4)デキストリン 2g/kg、DL−Ala 0.5g/kg、L−Pro 0.5g/kg、(5)デキストリン 2g/kg、DL−Ala 0.7g/kg、Gly 0.3g/kg、(6)デキストリン 2g/kg、DL−Ala 0.7g/kg、L−Pro 0.3g/kg、(7)デキストリン 2g/kg、DL−Ala 0.8g/kg、Gly 0.1g/kg、L−Pro 0.1g/kg、(8)デキストリン 2g/kg、DL−Ala 0.5g/kg、L−Gly 0.25g/kg、L−Pro 0.25g/kgのいずれかを経口投与した(6匹/群)。血糖値変化の結果を
図3及び4に示す。
図3に投与15分後の投与前血糖値からの変化を、
図4に90分運動負荷後の投与前血糖値からの変化を示す。いずれの用量でも、デキストリンとAla単独、Ala及びGlyの2種類、Ala及びProの2種類、又はAla、Gly及びProの3種類を同時に投与すると、等カロリーのデキストリン単独投与に比べて、投与15分後の血糖値上昇、運動負荷後の血糖値低下が抑制された。この結果より、本発明のアミノ酸含有組成物が血糖値上昇抑制作用・運動負荷時の血糖値維持作用を持つものとして有用であることが示された。
【0052】
<実施例3>
C57BL/6Jマウス(日本クレア)オスを、東北薬科大式回転車(永澤理化学機器店)による走行運動への馴化を行った後、試験に供した。試験方法は、実施例1と同様である。投与物は、(1)デキストリン 2g/kg、(2)デキストリン 1g/kg、DL−Ala 1g/kg、(3)デキストリン 1g/kg、Gly 1g/kg、(4)デキストリン 1g/kg、L−Pro 1g/kgのいずれかを経口投与した(6匹/群)。血糖値変化の結果を
図5及び6に示す。
図5に投与15分後の投与前血糖値からの変化を、
図6に90分運動負荷後の投与前血糖値からの変化を示す。デキストリン単独投与に比べ、デキストリンとAla、Gly、Proいずれかのアミノ酸の混合物(デキストリン単独と等カロリー)を投与すると、投与15分後の血糖値上昇、運動負荷後の血糖値低下が抑制された。この結果より、本発明のアミノ酸含有組成物が血糖値上昇抑制作用・運動負荷時の血糖値維持作用を持つものとして有用であることが示された。
【0053】
<実施例4>
C57BL/6Jマウスオスを、トレッドミル(アルコシステム)による走行運動に馴化させた後、試験に供した。マウスを一晩絶食させた後、(1)水、(2)グルコース 1g/kg、L−アラニン(Ala) 1g/kgのいずれかを経口投与し(6匹/群)、投与15分後より22m/分でトレッドミルによる走行運動を開始させた。マウスが電気グリッド上から脱出できず、5秒経過した時点で疲労困憊したと判断し、マウスが疲労困憊するまでの走行時間を測定した。その結果を
図7に示す。
図7に疲労困憊までの走行時間を示す。水投与群に比べ、エネルギー源としてグルコースとAlaを同時に投与した群(グルコース+Ala投与群)では走行時間が延長し、エネルギー補給によって運動パフォーマンスが低下することはなく、水投与時よりも向上することが明らかとなった。
【0054】
<実施例5>
C57BL/6Jマウスオスを、トレッドミルによる走行運動に馴化させた後、試験に供した。マウスを一晩絶食させた後、(1)デキストリン 2g/kg、(2)デキストリン 1g/kg及びL−アラニン(Ala) 1g/kgを経口投与した。投与15分後より26m/分の速度でトレッドミルにより90分間の走行運動を負荷した。運動負荷後、ケージに移し、自発行動量計(NS−AS01:ニューロサイエンス社)を用いて行動量を3時間測定した(
図8中、デキストリン及びデキストリン+Ala)。対照として、上記(1)又は(2)を投与した個体について、(1)又は(2)の代わりに水を投与して同様に自発行動量を測定した(
図8中、デキストリン(水投与時)及びデキストリン+Ala(水投与時))。また、一晩絶食後、運動負荷をかけず安静状態のマウスの自発行動量も、同様に3時間測定した(
図8中、安静時)。
図8に自発行動量の結果を示す(6−12匹/群)。水投与時に比べ、エネルギーとなるデキストリンを投与すると行動量が増加した。デキストリンとAlaを同時投与すると、デキストリン単独と等エネルギー(カロリー)量にも関わらず、デキストリン単独投与以上の行動量の増加が観察された。この結果より、デキストリンとAlaを同時に投与することで、デキストリン単独投与時以上に走行運動負荷による疲労が軽減され、自発行動量が増加することが明らかとなった。
【0055】
<実施例6>
C57BL/6Jマウスオスを、トレッドミルによる走行運動に馴化させた後、試験に供した。マウスを一晩絶食させた後、まず非投与時に14m/分の速度で60分間走行運動を負荷した。60分後より、5分毎に2m/分ずつ36m/分まで速度を増加させ、疲労困憊までの走行時間を測定した。測定1週間後に、再び一晩絶食後、(1)デキストリン 2g/kg、(2)デキストリン 1g/kg及びL−アラニン(Ala) 1g/kgを経口投与し(9匹/群)、非投与時と同様な検討を行った。なお、14m/分の速度での走行運動負荷は、経口投与15分後より開始した。非投与時からの走行時間増加量を
図9に示す。また、投与直前から14m/分で60分走行後までの血糖値変化を
図10に、14m/分で60分走行後の肝臓中グリコーゲン量を
図11に示す。
図9に示すように、等エネルギー(カロリー)量のデキストリン単独投与に比べてデキストリンとAla同時投与時には、非投与時からの走行時間増加量が大きくなった。また
図10及び11に示すように、同じ運動負荷後の血糖値変化、肝臓中グリコーゲン量もデキストリン+Ala投与群の方が高値を示した。以上より、デキストリンとAla同時投与によって、運動負荷による血糖値低下が抑制されること、及び肝臓中グリコーゲン量が維持されることが示された。さらに、デキストリンとAla同時投与によって、デキストリン単独投与に比べて運動負荷の増加に長時間耐えられるようになることが明らかとなった。
【0056】
<実施例7>
C57BL/6Jマウスオスを、京大松元式運動量測定流水槽石原改良版(アニテック)による遊泳運動に馴化させた後、試験に供した。マウスを一晩絶食させた後、(1)デキストリン 2g/kg、(2)デキストリン 1g/kg及びL−アラニン(Ala) 1g/kgのいずれかを経口投与し(39匹/群)、投与15分後より11m/分で遊泳運動を開始させた。マウスの鼻先が水没して7秒経過した時点を疲労困憊とし、マウスが疲労困憊するまでの遊泳時間を測定した。その結果を
図12に示す。
図12に示すように、等エネルギー(カロリー)量を経口投与したにも関わらず、デキストリン単独投与に比べてAlaを同時に投与すると、遊泳時間が約30%延長することが明らかとなった。
【0057】
<実施例8>
イオン交換水に各成分を添加し、加熱・溶解後、口栓付きアルミパウチに充填することにより、以下の組成を有するゼリーのアミノ酸組成物(100g)を製造した。イオン交換水49.00g、DL−アラニン4.50g、L−プロリン0.50g、デキストリン44.50g、酸味料(クエン酸及びクエン酸ナトリウム)0.80g、ゲル化剤(寒天)0.60g及び香料0.10g。
【0058】
<実施例9>
イオン交換水に各成分を添加し、加熱・溶解後、口栓付きアルミパウチに充填することにより、以下の組成を有するゼリーのアミノ酸組成物(130g)を製造した。イオン交換水78.85g(60.65重量%)、DL−アラニン4.50g(3.46重量%)、L−プロリン0.50g(0.38重量%)、デキストリン44.50g(34.23重量%)、酸味料(クエン酸及びクエン酸ナトリウム)0.74g(0.57重量%)、ゲル化剤(寒天)0.78g(0.6重量%)及び香料0.13g(0.10重量%)。
【0059】
<実施例10>
イオン交換水に各成分を添加し、加熱・溶解後、口栓付きアルミパウチに充填することにより、以下の組成を有するジェルのアミノ酸組成物(100g)を製造した。イオン交換水48.85g、DL−アラニン4.50g、L−プロリン0.50g、デキストリン44.50g、グラニュー糖0.75g、酸味料(クエン酸及びクエン酸ナトリウム)0.80g及び香料0.10g。
【0060】
<実施例11>
C57BL/6Jマウス(日本クレア)オスを、東北薬科大式回転車(永澤理化学機器店)による走行運動への馴化を行った後、試験に供した。実験当日、一晩絶食させたマウスの血糖値を尾静脈採血により測定した後、(1)デキストリン 1.25g/kg、(2)デキストリン 1g/kg、DL−Ala 0.225g/kg、L−Pro 0.025g/kgのいずれかを経口投与した(18匹/群)。
各試薬は、マウス体重(kg)あたり10mlの水に溶解して投与した。投与15分後に血糖値を測定した後、回転車にて10.5m/分の速度で走行運動負荷を開始した。運動開始後30分、65分、100分、135分及び170分に血糖値を測定した。血糖値測定はいずれもグルコカードG
+メーター(アークレイ)を用いて行った。
図13に投与前、投与15分後(運動開始後0分)及び運動開始後の血糖値の変化を示す。デキストリン単独に比べ、デキストリンとAla及びProの混合物は、投与15分後の血糖値上昇、ならびに運動負荷100分後以降の血糖値低下を有意に抑制した。この結果より、本発明のアミノ酸含有組成物が血糖値上昇抑制作用ならびに運動負荷時の血糖値維持作用を持つものとして有用であることが示された。
【0061】
<実施例12>
C57BL/6Jマウス(日本クレア)オスを、京大松元式運動量測定流水槽石原改良版(アニテック)による遊泳運動に馴化させた後、試験に供した。マウスを試験開始3時間前から絶食させた後、(1)デキストリン 2g/kg、(2)デキストリン 1g/kg、DL−Ala 0.9g/kg、L−Pro 0.1g/kgのいずれかを経口投与し(18匹/群)、投与15分後より11m/分で遊泳運動を開始させた。マウスの鼻先が水没して7秒経過した時点を疲労困憊とし、マウスが疲労困憊するまでの遊泳時間を測定した。
図14に示すように、等エネルギー(カロリー)量のデキストリン単独投与に比べて、デキストリンとAla及びProの混合物投与は、遊泳時間を延長することが明らかとなった。
【0062】
<実施例13>
C57BL/6Jマウス(日本クレア)オスを、トレッドミルによる走行運動に馴化させた後、試験に供した。マウスを一晩絶食させた後、蒸留水を経口投与し、投与15分後から14m/分の速度で60分間走行運動を負荷した。60分後より、5分毎に2m/分ずつ36m/分まで速度を増加させ、疲労困憊までの走行時間を測定し、各動物の運動能力を評価した。1週間後に、運動能力(走行時間)に差がないように2群にわけ、再び一晩絶食後、(1)デキストリン 2g/kg、(2)デキストリン 1g/kg、DL−Ala 0.9g/kg、L-Pro 0.1g/kgのいずれかを経口投与し(9匹/群)、蒸留水投与時と同様の検討を行った。走行時間を
図15に、各動物の蒸留水投与時の走行時間を差し引いた走行時間増加量を
図16に示す。
図15及び16に示すように、デキストリン、DL−Ala及びL-Pro混合物投与は、等エネルギー(カロリー)量のデキストリン単独投与に比べて、走行時間及び走行時間増加量が大きくなった。以上より、デキストリン、Ala及びProの混合物投与は、デキストリン単独投与に比べて運動負荷の増加に長時間耐えられるようになることが明らかとなった。
【0063】
以上述べたことから、本発明により提供されるアミノ酸組成物が、摂取直後の血糖値上昇を抑制すること、長時間運動後の血糖値の低下を抑制すること、及び運動前に摂取することで運動パフォーマンスを向上させることが明らかである。