特許第6529064号(P6529064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6529064
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】光通信システム、および光通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/2587 20130101AFI20190531BHJP
   H04B 10/572 20130101ALI20190531BHJP
   G02F 1/015 20060101ALI20190531BHJP
   H01S 5/0687 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
   H04B10/2587
   H04B10/572
   G02F1/015 502
   H01S5/0687
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-7083(P2015-7083)
(22)【出願日】2015年1月16日
(65)【公開番号】特開2016-134692(P2016-134692A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年9月4日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人情報通信研究機構、「高い臨時設営性を持つ有無線両用通信技術の研究開発」副題「光ファイバ伝送とW帯無線伝送を柔軟に切替可能な通信方式を実現する要素デバイス及びシステム化技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】アブデルモウラ ベッカリ
(72)【発明者】
【氏名】西村 公佐
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−124886(JP,A)
【文献】 特開2013−255086(JP,A)
【文献】 特開2003−169021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B10/00−10/90
H04J14/00−14/08
G02F 1/015
H01S 5/0687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを介してセントラルステーション(Central Station)とリモートノード(Remote Node)との間で光伝送を行なう光通信システムであって、
前記セントラルステーションは、
前記リモートノードから自装置宛ての光伝送に用いるレーザ光を発生するチューナブルレーザダイオード(Tunable Laser Diode)と、
波長が可変であるチューナブル光バンドパスフィルタ(Optical Band-Pass Filter)と、
前記チューナブルレーザダイオードに対して、前記リモートノードの温度を示す情報に対応する波長のレーザ光を発生するように制御すると共に、前記チューナブル光バンドパスフィルタに対して、前記波長を制御したレーザ光に対応する波長のレーザ光を抽出するように制御するコントローラと、
前記リモートノードで変調されたレーザ光を受信するフォトダイオード(Photodiode)と、を備え、
前記リモートノードは、
前記セントラルステーションで発生したレーザ光に対して変調を行なう光変調器(Optical Modulator)と、
温度を測定し、測定した温度を示す情報を前記セントラルステーションに提供する温度センサ(Temperature Sensor)と、を備え、
前記リモートノードの温度に応じた波長を有するレーザ光が、前記セントラルステーションから前記リモートノードに提供され、前記リモートノードで変調されて、前記リモートノードから前記セントラルステーションへ返送され、前記セントラルステーションにおいて、前記リモートノードの温度に応じた波長を有するレーザ光が抽出されることを特徴とする光通信システム。
【請求項2】
前記コントローラは、
リモートノードの温度と、リモートノードに配置された光変調器が所望の特性を奏する波長とが対応したルックアップテーブル(Look-up Table)と、
前記ルックアップテーブルから前記リモートノードの温度を示す情報に対応する波長を特定し、前記特定した波長のレーザ光を発生するように前記チューナブルレーザダイオードを制御するコントロールシステム(Control System)と、を備えることを特徴とする請求項1記載の光通信システム。
【請求項3】
前記光変調器は、電界吸収型変調器(Electro-Absorption Modulator)、半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier)、反射型半導体光増幅器(Reflective Semiconductor Optical Amplifier)、反射型電界吸収型変調器(Reflective Electro-Absorption Modulator)のいずれかであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光通信システム。
【請求項4】
光ファイバを介してセントラルステーション(Central Station)とリモートノード(Remote Node)との間で光伝送を行なう光通信方法であって、
前記セントラルステーションにおいて、
チューナブルレーザダイオード(Tunable Laser Diode)が、前記リモートノードから自装置宛ての光伝送に用いるレーザ光を発生するステップと、
前記チューナブルレーザダイオードに対して、前記リモートノードの温度を示す情報に対応する波長のレーザ光を発生するように制御すると共に、波長が可変であるチューナブル光バンドパスフィルタ(Optical Band-Pass Filter)に対して、前記波長を制御したレーザ光に対応する波長のレーザ光を抽出するように制御するステップと、
前記リモートノードで変調されたレーザ光を受信するステップと、を含み、
前記リモートノードにおいて、
前記セントラルステーションで発生したレーザ光に対して変調を行なうステップと、
温度を測定し、測定した温度を示す情報を前記セントラルステーションに提供するステップと、を含み、
前記リモートノードの温度に応じた波長を有するレーザ光が、前記セントラルステーションから前記リモートノードに提供され、前記リモートノードで変調されて、前記リモートノードから前記セントラルステーションへ返送され、前記セントラルステーションにおいて、前記リモートノードの温度に応じた波長を有するレーザ光が抽出されることを特徴とする光通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを介してセントラルステーション(Central Station)とリモートノード(Remote Node)との間で光伝送を行なう技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、セントラルステーションとリモートノードの間を結ぶための光通信システムが提案されている。図8は、従来の典型的な光通信システムの概略構成を示すブロック図である。セントラルステーション1は、下りリンクの波長λdownのレーザ光を発生する第1のレーザダイオード(LD:Laser Diode)3、波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)フィルタ4、光バンドパスフィルタ(OBPF:Optical Band-Pass Filter)5、および上りリンクの波長λupのレーザ光を受信する第2のフォトダイオード(PD:Photodiode)7を備えている。
【0003】
また、リモートノード11は、例えば、屋外に設置される基地局等の分散アンテナ局(DAS: Distributed Antenna System)として構成され、WDMフィルタ12、下りリンクの波長λdownのレーザ光を受信する第1のPD13、上りリンク用の信号を出力する上りリンク信号部15(Uplink signal)、半導体光変調器17(Semiconductor based Optical Modulator)、および上りリンクの波長λupのレーザ光を発生する第2のLD19を備えている。セントラルステーション1とリモートノード11は、光ファイバ20によって接続されている。
【0004】
ここで、一般的に、レーザダイオードや光変調器は、温度特性を有している。屋外に設置されるリモートノード11の環境温度が変化し、例えば、気温がTからTに上昇したとすると、第2のLD19や半導体光変調器19は、その影響を受けて禁止帯幅(Bandgap)が縮小する。半導体光変調器19については、同一波長の光に対して吸収量が増加するため、気温がTのときの光強度Iに対して、Tに時の光強度Iが小さくなってしまう。一方、気温がTからTに低下すると、同一波長の光に対しては吸収量が減少する。その結果、Tの時の消光比ER(Extinction Ratio)に対して、気温がTのときのERが、小さくなってしまう。
【0005】
このように、光伝送システムでは構成デバイスの特性が温度変化により変化し、結果としてシステム全体の伝送性能が劣化するため、これを補償する必要がある。例えば、特許文献1には、光変調器の性能を最適化するために、光変調器に対して適切なバイアス電圧を提供するためのバイアスコントローラが開示されている。また、特許文献2には、温度変化による過度の波長ドリフトを避けるために、CWDM(Coarse Wavelength Division Multiplexing)送信機におけるレーザを、加熱または冷却する技術が開示されている。また、特許文献3には、独立した複数の光チャネルを用いる光デバイスにおいて、熱ドリフトを検出し、モニタリングし、補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第8670676号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0185684号明細書
【特許文献3】米国特許第8725000号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の技術では、アンテナ局としてのリモートノードの側に変調器のバイアスコントローラや温度調整機能が必要となったり、その他の構成が必要となったりするため、アンテナ局側の構成を簡素化することが容易ではない。特に多くのリモートノードを分散配置するDASのような構成においては、レーザダイオードが温度変化の影響を受けず、かつ光変調器の特性変動を補償できるようにしつつ、アンテナ局側の構成を極力簡素化することが望ましい。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、システムの伝送性能がリモートノードの温度変化の影響を受けないようにしつつ、アンテナ局側の構成を極力簡素化することができる光通信システム、および光通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の光通信システムは、光ファイバを介してセントラルステーション(Central Station)とリモートノード(Remote Node)との間で光伝送を行なう光通信システムであって、前記セントラルステーションは、前記リモートノードから自装置宛ての光伝送に用いるレーザ光を発生するチューナルブルレーザダイオード(Tunable Laser Diode)と、前記リモートノードの温度を示す情報に対応する波長のレーザ光を発生するように前記チューナルブレーザダイオードを制御するコントローラと、前記リモートノードで変調されたレーザ光を受信するフォトダイオード(Photodiode)と、を備え、前記リモートノードは、前記セントラルステーションで発生したレーザ光に対して変調を行なう光変調器(Optical Modulator)と、温度を測定し、測定した温度を示す情報を前記セントラルステーションに提供する温度センサ(Temperature Sensor)と、を備え、前記リモートノードの温度に応じた波長を有するレーザ光が、前記セントラルステーションから前記リモートノードに提供され、前記リモートノードで変調されて、前記リモートノードから前記セントラルステーションへ返送されることを特徴とする。
【0010】
このように、リモートノードからセントラルステーション宛ての光伝送に用いるレーザ光を発生するチューナルブルレーザダイオードが、セントラルステーションに設けられているため、光源としてのチューナブルレーザダイオードがリモートノードにおける温度変化の影響を受けることがなくなる。また、リモートノードにおける温度を検出し、その温度を示す情報がリモートノードからセントラルステーションに提供され、セントラルステーションでは、コントローラがリモートノードの温度を示す情報に対応する波長のレーザ光を発生するようにチューナルブレーザダイオードを制御するので、温度による光変調器の動作特性の変動を予め補償することが可能となる。これにより、レーザダイオードが温度変化の影響を受けず、かつ光変調器の特性の変動を補償できるようにしつつ、リモートノードの構成を極力簡素化することが可能となる。
【0011】
(2)また、本発明の光通信システムにおいて、前記コントローラは、リモートノードの温度と、リモートノードに配置された光変調器が所望の特性を奏する波長とが対応したルックアップテーブル(Look-up Table)と、前記ルックアップテーブルから前記リモートノードの温度を示す情報に対応する波長を特定し、前記特定した波長のレーザ光を発生するように前記チューナブルレーザダイオードを制御するコントロールシステム(Control System)と、を備えることを特徴とする。
【0012】
このように、ルックアップテーブルからリモートノードの温度を示す情報に対応する波長を特定し、特定した波長のレーザ光を発生するようにチューナブルレーザダイオードを制御するので、波長の制御を迅速かつ確実に行なうことが可能となり、リモートノードの環境温度の変化にリアルタイムに追従することが可能となる。
【0013】
(3)また、本発明の光通信システムは、前記リモートノードで変調されたレーザ光を受信し、前記コントローラで波長が制御されたレーザ光に対応する波長のレーザ光を抽出して、前記フォトダイオードに出力するチューナブル光バンドパスフィルタ(Optical Band-Pass Filter)をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
このように、コントローラで波長が制御されたレーザ光に対応する波長のレーザ光を抽出して、フォトダイオードに出力するので、チューナブルレーザダイオードで波長が変更されても、それに対応するレーザ光を抽出することが可能となる。これにより、ノイズ除去を有効に実行することが可能となる。
【0015】
(4)また、本発明の光通信システムにおいて、前記光変調器は、電界吸収型変調器(EAM:Electro-Absorption Modulator)、半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)、反射型半導体光増幅器(RSOA:Reflective Semiconductor Optical Amplifier)、反射型電界吸収型変調器(REAM:Reflective Electro-Absorption Modulator)のいずれかであることを特徴とする。
【0016】
この構成により、レーザダイオードが温度変化の影響を受けず、かつ光変調器の特性の変動を補償できるようにしつつ、リモートノードの構成を極力簡素化する光通信システムを、容易に構築することが可能となる。
【0017】
(5)また、本発明の光通信方法は、光ファイバを介してセントラルステーション(Central Station)とリモートノード(Remote Node)との間で光伝送を行なう光通信方法であって、前記セントラルステーションにおいて、前記リモートノードから自装置宛ての光伝送に用いるレーザ光を発生するステップと、前記リモートノードの温度を示す情報に対応する波長のレーザ光を発生するように前記チューナルブレーザダイオードを制御するステップと、前記リモートノードで変調されたレーザ光を受信するステップと、を含み、前記リモートノードにおいて、前記セントラルステーションで発生したレーザ光に対して変調を行なうステップと、温度を測定し、測定した温度を示す情報を前記セントラルステーションに提供するステップと、を含み、前記リモートノードの温度に応じた波長を有するレーザ光が、前記セントラルステーションから前記リモートノードに提供され、前記リモートノードで変調されて、前記リモートノードから前記セントラルステーションへ返送されることを特徴とする。
【0018】
このように、リモートノードからセントラルステーション宛ての光伝送に用いるレーザ光を発生するチューナルブルレーザダイオードが、セントラルステーションに設けられているため、光源としてのチューナブルレーザダイオードがリモートノードにおける温度変化の影響を受けることがなくなる。また、リモートノードにおける温度を検出し、その温度を示す情報がリモートノードからセントラルステーションに提供され、セントラルステーションでは、コントローラがリモートノードの温度を示す情報に対応する波長のレーザ光を発生するようにチューナルブレーザダイオードを制御するので、温度による光変調器の動作特性の変動を予め補償することが可能となる。これにより、レーザダイオードが温度変化の影響を受けず、かつ光変調器の特性の変動を補償できるようにしつつ、リモートノードの構成を極力簡素化することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光源としてのチューナブルレーザダイオードがリモートノードにおける温度変化の影響を受けることがなくなる。また、温度による波長の変動を予め補償することが可能となる。これにより、レーザダイオードが温度変化の影響を受けず、かつ光変調器の特性の変動を補償できるようにしつつ、リモートノードの構成を極力簡素化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】光変調器の吸収特性の温度による変動を模式的に示す図である。
図2】第1の実施形態に係る光通信システムの概略構成を示すブロック図である。
図3】ルックアップテーブルの構成例を示す図である。
図4】コントロールシステムによる波長の制御の様子を示す図である。
図5】第2の実施形態に係る光通信システムの概略構成を示すブロック図である。
図6A】第3の実施形態に係る光通信システムの概略構成を示すブロック図である。
図6B】RSOA607の概略構成を示す図である。
図7A】第4の実施形態に係る光通信システムの概略構成を示すブロック図である。
図7B】REAM707bの概略構成を示す図である。
図8】従来の光通信システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者らは、アンテナ局としてのリモートノードに光源としてのレーザダイオードおよび光変調器がある場合は、温度変化による影響を補償するための構成が複雑化してしまうことに着目し、光源としてのレーザダイオードをセントラルステーション側に設けて、上りリンクでその光源を利用すると共に、リモートノードの温度情報をセントラルステーションに提供し、その温度に応じて生じる光変調器の特性の変動を補償できるように予め決められた波長のレーザ光を発生させることによって、温度変化の影響を補償すると共に、リモートノードの構成を簡素化できることを見出し、本発明に至った。
【0022】
すなわち、本発明の光通信システムは、光ファイバを介してセントラルステーション(Central Station)とリモートノード(Remote Node)との間で光伝送を行なう光通信システムであって、前記セントラルステーションは、前記リモートノードから自装置宛ての光伝送に用いるレーザ光を発生するチューナルブルレーザダイオード(Tunable Laser Diode)と、前記リモートノードの温度を示す情報に対応する波長のレーザ光を発生するように前記チューナルブレーザダイオードを制御するコントローラと、前記リモートノードで変調されたレーザ光を受信するフォトダイオード(Photodiode)と、を備え、前記リモートノードは、前記セントラルステーションで発生したレーザ光に対して変調を行なう光変調器(Optical Modulator)と、温度を測定し、測定した温度を示す情報を前記セントラルステーションに提供する温度センサ(Temperature Sensor)と、を備え、前記リモートノードの温度に応じた波長を有するレーザ光が、前記セントラルステーションから前記リモートノードに提供され、前記リモートノードで変調されて、前記リモートノードから前記セントラルステーションへ返送されることを特徴とする。
【0023】
これにより、本発明者らは、光源としてのチューナブルレーザダイオードがリモートノードにおける温度変化の影響を受けることをなくし、また、温度による光変調器の特性の変動を予め補償することを可能とした、その結果、レーザダイオードが温度変化の影響を受けず、かつ光変調器の特性の変動を補償できるようにしつつ、リモートノードの構成を極力簡素化することを可能とした。以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
【0024】
図1は、光変調器の吸収特性の温度変化の一例として、EAMの吸収特性を示す図である。図1において、横軸が「逆方向電圧(Reverse voltage)」であり、縦軸が「透過率(Transmittance)」である。図1に示すように、温度変化によって、光変調器、即ちEAMの吸収特性が変化するため、最適な動作条件も変わってしまうが、レーザ光の波長を変更することによって、温度変化を補償することが可能となる。例えば、温度Tの時には波長λでEAMが入力電気信号に対して最適となるように動作している。一方で、波長λに対しては、同じ入力電気信号に対しては消光比が十分得られず、結果として光伝送性能が低下する。温度がT+ΔTに上昇すると、図1の点線に示すように、EAMの特性が変化し、波長λを保ったままでは信号強度が低下する。そこで、温度がT+ΔTに上昇した時には、EAMが最適動作する波長λに変える。すなわち、温度T+ΔTでの波長λの吸収特性が、温度Tでの波長λの吸収特性とほぼ同じになることを利用して、EAMを最適点で動作させる。
【0025】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態に係る光通信システムの概略構成を示すブロック図である。セントラルステーション101は、下りリンクの波長λdownのレーザ光を発生する第1のLD103、WDM(Wavelength Division Multiplexing)フィルタ104、サーキュレータ105を備えている。また、波長と温度とが予め対応付けられたルックアップテーブル106で特定された波長となるように、レーザダイオード(第2のLD109)を制御するコントロールシステム107、波長が可変であるチューナブルレーザとしての第2のLD109、波長が可変であるチューナブルフィルタとしてのOBPF(Optical Band-Pass Filter)111、および上りリンクの波長λupのレーザ光を受信する第2のPD113を備えている。なお、ルックアップテーブル106およびコントロールシステム107は、コントローラを構成する。
【0026】
また、リモートノード201は、例えば、屋外に設置される基地局等のアンテナ局(DAS:Distributed Antenna System)として構成される。アンテナ局としてのリモートノード201は、無線を用いることとするが、例えば、有線の中継局であっても良い。下りリンクの波長λdownのレーザ光を受信する第1のPD203、WDMフィルタ204、サーキュレータ205、上りリンク用の信号を出力する上りリンク信号部206(Uplink signal)、電界吸収型変調器(EAM:Electro-Absorption Modulator)207、光増幅器208(Optical Amplifier)、温度センサ209(Temperature Sensor)を備えている。セントラルステーション101とリモートノード201は、光ファイバ200によって接続されている。
【0027】
本実施形態では、セントラルステーション101からリモートノード201宛ての信号を下りリンクの信号と呼称し、その逆に、リモートノード201からセントラルステーション101宛ての信号を上りリンクの信号と呼称する。第1のLD103で発生した波長λdownのレーザ光は、WDMフィルタ104、光ファイバ200、WDMフィルタ204を経て第1のPD203で受光される。
【0028】
一方、温度センサ209が、リモートノード201の温度を測定し、測定した温度を示す情報を「M2M Communication Link」を介してセントラルステーション101のルックアップテーブル106に提供される。ここで、リモートノード201の温度を示す情報は、光ファイバ200を介しても良いし、インターネット等の他のネットワークを介してセントラルステーション101に提供されるように構成することも可能である。
【0029】
図3は、ルックアップテーブルの構成例を示す図である。図3に示すように、ルックアップテーブルでは、温度と光変調器(すなわちEAM207)の最適動作が得られる波長とが予め対応付けられている。このため、温度が定まると、波長も定まることとなる。
【0030】
図2において、ルックアップテーブル106は、リモートノード201から取得した温度を示す情報に基づいて、レーザ光の波長を抽出する。ルックアップテーブル106で決定された波長は、コントロールシステム107に入力され、コントロールシステム107は、ルックアップテーブル106で決定された波長λcompのレーザ光を発生させるように、第2のLD109を制御する。また、コントロールシステム107は、OBPF111に対し、入力波長λupを抽出するように制御する。
【0031】
図4は、コントロールシステム107による波長の制御の様子を示す図である。温度TがTであるときの上りの光信号の波長λupが、λであるとすると、温度TがTに上昇したときの上りの光信号の波長λupは、(λ+λcomp)とする。
【0032】
図1において、第2のLD109は、コントロールシステム107の制御を受けて、波長λ+λcomp(λupと書いても良い)レーザ光を発生する。波長λ+λcompのレーザ光は、サーキュレータ105、WDMフィルタ104を介して光ファイバ200でリモートノード201に伝送される。リモートノード201では、波長λ+λcompのレーザ光が、WDMフィルタ204、サーキュレータ205を介して、EAM207に入力される。
【0033】
EAM207は、上りリンク信号部206から上りリンク信号の入力を受けて、光変調を行なう。EAM207で光変調されたレーザ光が、光増幅器208、サーキュレータ205、WDMフィルタ204、光ファイバ200を介してセントラルステーション101に伝送される。セントラルステーション101では、WDMフィルタ104、サーキュレータ105を介して、上りの光信号がOBPF111に入力され、(λup=λ+λcomp)の波長が抽出され、第2のPD113に入力される。
【0034】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る光通信システムの概略構成を示すブロック図である。第1の実施形態と異なるのは、リモートノード201の光変調器が、半導体光増幅器「Semiconductor Optical Amplifier(SOA)」となっている点である。なお、SOA507は変調機能と増幅機能を兼ね備えるので、光増幅器208は必要な場合にのみ設ければ良い。その他の構成については、第1の実施形態と同様である。
【0035】
(第3の実施形態)
図6Aは、第3の実施形態に係る光通信システムの概略構成を示すブロック図である。第1の実施形態と異なるのは、リモートノード201の光変調器が、反射型半導体光増幅「Reflective SOA607」、すなわち、RSOA607となっている点である。これにより、リモートノード201にサーキュレータを設ける必要が無くなり、リモートノード201の構成をより簡素化させることが可能となる。
【0036】
図6Bは、RSOA607の概略構成を示す図である。RSOA607は、紙面に向かって左側の端部に「anti-reflection (AR) coating」が施されており、受光したレーザ光を透過する。また、紙面に向かって右側の端部に「high reflection (HR) coating」が施されており、ここで受光したレーザ光を反射する。紙面に向かって左側からRSOA607に入射したレーザ光(injected seed light)は、光変調、反射および光増幅されて、出射する(modulated light)。その他の構成については、第1の実施形態と同様である。
【0037】
(第4の実施形態)
図7Aは、第4の実施形態に係る光通信システムの概略構成を示すブロック図である。第1の実施形態と異なるのは、リモートノード201の光変調器が、反射型電界吸収変調器としての「Reflective EAM707b」、すなわち、REAM707bとなっている点である。また、REAM707bに加えて、REAMの挿入損失を補償するためのSOA707aが設けられている。なお、SOA707aは変調器としては用いられず、単に通過する光信号を増幅するだけである。これらのSOA707aおよびREAM707bは、モノリシックに集積されても良い。これにより、リモートノード201にサーキュレータを設ける必要が無くなり、リモートノード201の構成をより簡素化させることが可能となる。
【0038】
図7Bは、REAM707bの概略構成を示す図である。REAM707bは、紙面に向かって左側の端部に「anti-reflection (AR) coating」が施されており、受光したレーザ光を透過する。また、紙面に向かって右側の端部に「high reflection (HR) coating」が施されており、ここで受光したレーザ光を反射する。紙面に向かって左側からREAM707bに入射したレーザ光(injected seed light)は、光変調および反射されて、出射する(modulated light)。なお、その他の構成については、第1の実施形態と同様である。
【0039】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、上りの光信号の光源(第2のLD109)を、リモートノード201ではなく、セントラルステーション101に設け、上り用の光通信に用いるため、リモートノード201の環境温度が変化しても、光源が影響を受けることがなくなる。また、リモートノード201の温度を測定し、その温度変化に基づいて、予め上りの光信号の光源の波長を変化させておくため、リモートノード201の光変調器、すなわち、EAM207、SOA507、RSOA607、またはSOA707aおよびREAM707bが、温度変化の影響を受けたとしても、これを補償することが可能となる。これにより、レーザダイオードが温度変化の影響を受けず、かつ光変調器の特性の変動を補償できるようにしつつ、リモートノードの構成を極力簡素化することが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
101 セントラルステーション
103 第1のLD
104 WDMフィルタ
105 サーキュレータ
106 ルックアップテーブル
107 コントロールシステム
109 第2のPD
111 OBPF(Tunable OBPF)
113 第2のPD
200 光ファイバ
201 リモートノード
203 第1のPD
204 WDMフィルタ
205 サーキュレータ
206 上りリンク信号部
207 EAM
208 光増幅器
209 温度センサ
507 SOA
607 RSOA(Reflective SOA)
707a SOA
707b REAM(Reflective EAM)
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8