(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明の実施の形態に係る印刷装置の実施例1を印刷装置PRとし、
図1〜
図33を参照して説明する。
【0014】
(実施例1)
実施例1の印刷装置PRは、例えば再転写方式の印刷装置であって、いわゆるカードを被印刷物として製造するカードプリンタである。
印刷装置PRは、
図1に示されるように、筐体PRaと、筐体PRaの内部に収められた転写装置51と、再転写装置52と、を有している。
印刷装置PRは、透かし部分がない通常の画像の転写印刷と、透かし部分のある透かし部分付き画像の転写印刷と、の両方を実行可能とされている。
【0015】
印刷装置PRは、転写装置51において、インクリボン11のインクを転写体である中間転写フィルム21に転写し、画像を形成する。さらに、再転写装置52において、中間転写フィルム21に転写形成された画像を、別の転写体であるカード素材31aに再転写して、画像が印刷形成されたカード31を形成する。
転写装置51は、インクリボン11用の供給リール12及び巻き取りリール13を装脱自在に取り付け可能である。
取り付けられた供給リール12及び巻き取りリール13は、それぞれ駆動用のモータMt12及びモータMt13の駆動により回転する。モータMt12,Mt13の回転速度及び回転方向は、印刷装置PRに備えられた制御部CTにより制御される。
【0016】
インクリボン11は、供給リール12と巻き取りリール13との間で、複数のガイドシャフト14に案内され所定の走行経路に掛け渡される。
インクリボン11の走行経路の途中には、頭出し用のインクリボンセンサ15が配置されている。
インクリボンセンサ15は、インクリボン11の頭出しマーク(図示せず)を検出し、リボンマーク検出情報J1(
図2参照)を制御部CTに向け送出する。
インクリボン11は、
図3に示されるように、リボンベース11aと、リボンベース11aの一面側に形成されたイエローインクIYのインク層11Y,マゼンタインクIMのインク層11M,シアンインクICのインク層11C,及び金属光沢の銀色を呈するメタルインクSのインク層11Sを有する。インクリボン11の詳細は後述する。また、以下の説明において、イエローインクIY,マゼンタインクIM,及びシアンインクICはそれぞれカラーインクCIKとも称する。
【0017】
図1において、インクリボン11の走行経路におけるインクリボンセンサ15と巻き取りリール13との間に、サーマルヘッド16が配置されている。
サーマルヘッド16は、掛け渡されたインクリボン11のリボンベース11a側の面(
図3参照)に対し離接する(
図5の矢印Da方向)。
このサーマルヘッド16の離接動作は、ヘッド離接駆動部D16により制御部CTの制御の下で実行される。
【0018】
転写装置51は、装填されたインクリボン11に対する
図1の左方側に、中間転写フィルム21用の供給リール22及び巻き取りリール23が装脱自在に取り付け可能である。
取り付けられた供給リール22及び巻き取りリール23は、それぞれ駆動用のモータMt22及びモータMt23の駆動により回転する。モータMt22,Mt23の回転速度及び回転方向は、制御部CTにより制御される。
【0019】
中間転写フィルム21は、供給リール22と巻き取りリール23との間で、複数のガイドシャフト24に案内されて所定の走行経路に掛け渡される。
中間転写フィルム21の走行経路の途中には、頭出し用のフレームマークセンサ25が配置されている。
フレームマークセンサ25は、中間転写フィルム21のフレームマークを検出し、フレームマーク検出情報J2(
図2参照)を制御部CTに向け送出する。
中間転写フィルム21は光透過性を有する。例えば、フレームマークセンサ25を光センサとし、フレームマークを光遮断する部分として形成して、光の透過と遮断との違いによりフレームマークを検出する。
【0020】
中間転写フィルム21の走行経路におけるフレームマークセンサ25と供給リール22との間には、モータMt26の駆動によって回転するプラテンローラ26が配置されている。
モータMt26の回転速度及び回転方向は、制御部CTにより制御される。
【0021】
図5にも示されるように、サーマルヘッド16は、ヘッド離接駆動部D16による離接動作で、インクリボン11に対して離接する。この離接動作をするのはプラテンローラ26でもよく、サーマルヘッド16とプラテンローラ26とは相対的に離接すればよい。
詳しくは、サーマルヘッド16は、インクリボン11をプラテンローラ26に向け押圧し、プラテンローラ26との間に中間転写フィルム21とインクリボン11とを挟んで圧接させる圧接位置(
図5に示される位置)と、インクリボン11から離隔した離隔位置(
図1に示される位置)と、の間を移動する。サーマルヘッド16が圧接位置にあるときに、後述する転写が行われる。
【0022】
インクリボン11及び中間転写フィルム21は、サーマルヘッド16が離隔位置にある状態で、巻き取りリール13,23側への巻き取り及び供給リール12,22への巻き戻しがそれぞれ独立してできるようになっている。これは、それぞれ、モータMt12,Mt13及びモータMt22,Mt23の動作により実行される。
【0023】
インクリボン11及び中間転写フィルム21は、サーマルヘッド16が圧接位置にある状態で、互いに密着して供給リール側又は巻き取りリール側に移動可能となっている。この移動は、モータMt12,Mt13,Mt22,Mt23及びモータMt26の駆動による供給リール12,22,巻き取りリール13,23、及びプラテンローラ26の回転により制御部CTの制御により実行される。
【0024】
図1及び
図2に示されるように、印刷装置PRは、制御部CT,記憶部MR,及び通信部37を備えている。通信部37は、外部から送られるデータ等を入力するための入力部として機能する。
制御部CTは、中央処理装置(CPU)CTaと、画像データ送出部CTbと、を有する。
図2に示されるように、画像データ送出部CTbは、カラー画像データ送出部CT1とメタル画像データ送出部CT2と、を有する。
【0025】
外部のデータ機器38からは、通信部37を介して、制御部CTに転写画像情報J3(
図2及び
図7参照)が供給される。供給された転写画像情報J3は、記憶部MRに記憶され、制御部CTにより適宜参照される。
記憶部MRには、印刷装置PRの全体の動作を制御するための動作プログラムと、予め設定されたメタルインクSの基本転写パターンPtS(
図9参照)を特定する画像データであるメタルパターンデータSNsと、が記憶される。
【0026】
転写画像情報J3は、
図7に示されるように、カラーインクCIKで転写する無光沢のカラー画像(以下、無光沢カラー画像とも称する)の画像データであるカラー画像データSN1と、メタルインクSで転写する画像の画像データであるメタル画像データSN2と、を含んでいる。
【0027】
画像データ送出部CTbは、メタル画像データSN2が透かし部分のデータを含まない場合には、次のようにデータ生成などを実行する。
すなわち、画像データ送出部CTbは、外部から供給されたカラー画像データSN1及びメタル画像データSN2に基づき、転写のためのカラー転写画像データSN1A及びメタル転写画像データSN2Aを生成してサーマルヘッド16に向け出力する。
また、画像データ送出部CTbは、メタル画像データSN2が透かし部分のデータを含む場合には、次のようにデータ生成などを実行する。
すなわち、画像データ送出部CTbは、カラー画像データSN1及びメタル画像データSN2と、メタルパターンデータSNsと、に基づいて、透かし部分付き画像の転写のためのカラー転写画像データSN1B及び透かし転写画像データSN2Bを生成し、サーマルヘッド16に向け出力する。
【0028】
より具体的に説明する。
カラー画像データ送出部CT1は、透かし部分なしの画像の転写を行う場合、カラー画像データSN1に基づいて次の画像データを生成する。
すなわち、インク層11YのイエローインクIYで転写する画像の画像データSN1y,インク層11MのマゼンタインクIMで転写する画像の画像データSN1m,及びインク層11CのシアンインクICで転写する画像の画像データSN1cを生成する。
そして、カラー画像データ送出部CT1は、画像データSN1y,SN1m,SN1cを、カラー転写画像データSN1Aとしてサーマルヘッド16に送出する。
【0029】
カラー画像データ送出部CT1は、透かし部分付きの画像の転写を行う場合、カラー画像データSN1及びメタルパターンデータSNsに基づいて次の画像データを生成する。
すなわち、インク層11Yのイエローインクで転写する画像の画像データSN1By,インク層11Mのマゼンタインクで転写する画像の画像データSN1Bm,及びインク層11Cのシアンインクで転写する画像の画像データSN1Bcを生成する。
そして、カラー画像データ送出部CT1は、画像データSN1By,SN1Bm,SN1Bcを、透かし部分付き画像用のカラー転写画像データSN1Bとしてサーマルヘッド16に送出する。
カラー転写画像データSN1Bの生成方法については後述する。
【0030】
メタル画像データ送出部CT2は、転写画像が、透かし効果を強調する必要のない画像(ここでは、便宜的に透かし部分なしの画像と称する)の場合は、透かし部分付き画像用の透かし転写画像データSN2Bは生成しない。この場合、メタル画像データSN2に基づいて、単に光沢感が得られる部分をメタルインクSで転写するメタル転写画像データSN2Aを生成し、サーマルヘッド16に送出する。
【0031】
メタル画像データ送出部CT2は、転写画像が、透かし効果を強調する必要のある透かし部分付きの画像を転写する場合、メタルパターンデータSNs及びメタル画像データSN2に基づいて、メタルインクSで転写する透かし転写画像データSN2Bを生成し、サーマルヘッド16に送出する。透かし転写画像データSN2Bの生成方法については後述する。
【0032】
画像データ送出部CTbは、サーマルヘッド16が圧接位置にあるとき、中間転写フィルム21のフレームF(
図4参照:詳細は後述)それぞれに転写するカラー転写画像データSN1A又はSN1Bと、メタル転写画像データSN2A又は透かし転写画像データSN2Bと、をサーマルヘッド16へ適宜タイミングで供給する。
カラー転写画像データSN1A,SN1Bは、カラーインクCIKの転写のためのデータである。また、メタル転写画像データSN2A及び透かし転写画像データSN2Bは、メタルインクSの転写のためのデータである。
カラー転写画像データSN1A,SN1B、並びに、メタル転写画像データSN2A及び透かし転写画像データSN2Bの供給タイミングは、フレームマーク検出情報J2などに基づいて制御部CT全体として決定される。
【0033】
インクリボン11は、
図3(a),(b)に示されるように、帯状のリボンベース11aと、リボンベース11a上に塗布形成されたインク層11bと、を有している。
インクリボン11は、インク層11bとして、四種のインク層を有する。この四種のインク層を所定順に並べたインク組11b1が、インクリボン11の延在方向(帯方向:矢印DRa参照)に繰り返し塗布されている。
具体的には、インク組11b1は、イエローインクIYのインク層11Y,マゼンタインクIMのインク層11M,シアンインクICのインク層11C,及びメタルインクSのインク層11Sであり、この順で帯方向に塗布されている。
【0034】
イエローインクIY,マゼンタインクIM,及びシアンインクICは昇華型であり、光透過性を有する。また、昇華量が、サーマルヘッド16によって加えられる熱量に応じて調整可能なので、転写画像の濃淡を、濃度階調で表現可能である。
【0035】
メタルインクSは、例えば灰色の溶融型インクであって、金属粒子又は金属フレークを含有して光沢性を有し、光不透過性である。金属は、例えばアルミニウム、銀である。
メタルインクSの転写で転写体に形成されたメタルインク転写部は、入射光を狭指向性で概ね鏡面的に反射する。これにより、メタルインク転写部は、視認方向が概ね反射方向となった場合、金属光沢の銀色として視認される。
【0036】
中間転写フィルム21は、
図4(a),(b)に示されるように、帯状のフィルムベース21aと、フィルムベース21a上に積層形成された、剥離層21b及び転写用受像層21cを有している。
中間転写フィルム21においてピッチLbにて一定間隔で区切られる領域がフレームFである。
【0037】
転写装置51において、中間転写フィルム21とインクリボン11とは、
図5に示されるように、転写用受像層21cとインク層11bとが直接対向する向きで掛け渡される。
転写用受像層21cは、加熱により昇華したインク層11Y,11M,11Cのインク、及び加熱により溶融したインク層11SのメタルインクSを受容して固定する。
これにより、
図5に示されるサーマルヘッド16の圧接状態において、転写用受像層21cに圧着したインク層11bからインクが転写され、転写用受像層21cに画像が印刷形成される。
【0038】
この転写において、インク層11Y,11M,11Cの各カラーインクCIKは、サーマルヘッド16に供給されたカラー転写画像データSN1A又はカラー転写画像データSN1Bに応じた加熱パターンで転写される。
また、インク層11SのメタルインクSは、サーマルヘッド16に供給されたメタル転写画像データSN2A又は透かし転写画像データSN2Bに応じた加熱パターンで転写される。
【0039】
サーマルヘッド16は、
図6に示されるように、インクリボン11の幅方向に整列配置されたn個の発熱抵抗体16aを有する。また、サーマルヘッド16は、カラー転写画像データSN1A及びメタル転写画像データSN2A、又は、カラー転写画像データSN1B及び透かし転写画像データSN2Bに応じ、複数の発熱抵抗体16aそれぞれに独立して通電するヘッドドライバ16bを有している。
【0040】
転写する画像の帯方向(縦)におけるライン数(通電のONとOFFとを選択できる数に相当)をライン数LNaとすると、被画像形成体である中間転写フィルム21には、画像が、幅×縦=m×LNaのドットで形成される。
m個の発熱抵抗体16aは、n個の内の少なくとも一方端の発熱抵抗体を除く連続するm個として選択される。
また、印刷装置PRとして、例えば再転写する転写体の外形86mm×54mmなるカードに300dpiの画像を形成する場合、mは約1000、LNaの値は約600とされる。
【0041】
転写装置51は、インクリボン11と中間転写フィルム21とを密着移動させて、サーマルヘッド16の各発熱抵抗体16aを、カラーインクCIKの転写ではカラー転写画像データSN1A又はSN1Bに基づいて、また、メタルインクSの転写ではメタル転写画像データSN2A又は透かし転写画像データSN2Bに基づいて適宜加熱する。そして、インクリボン11のインク層11bの各インクを中間転写フィルム21の転写用受像層21cにおける同一のフレームFに重畳転写させる。
これにより、転写用受像層21cのフレームFに所望の光沢付きカラー画像を転写形成することができる。この画像形成動作の詳細は、後述する。
【0042】
図1に戻り、印刷装置PRは、転写装置51において転写体である中間転写フィルム21の転写用受像層21cに形成した画像(以下、中間画像Pとも称する)の一部を、さらに別の転写体であるカード素材31aに再転写してカード31とする再転写装置52を備えている。
【0043】
再転写装置52は、再転写部ST1と、再転写部ST1にカード素材31aを供給する供給部ST2と、再転写部ST1を通過したカード31を搬出する搬出部ST3と、を有している。
供給部ST2は、カード素材31aの姿勢を90°回動する姿勢転換部ST2aを有する。供給部ST2は、さらに、スタッカ32に立ち姿勢で装填された複数のカード素材31aの中から、
図1の最右となる一枚を上方に持ち上げて、姿勢転換部ST2に供給する。
【0044】
姿勢転換部ST2aは、姿勢転換したカード素材31aを再転写部ST1に搬送供給する。
再転写部ST1において、カード素材31aは、中間転写フィルム21と共に圧接挟持されながら、搬出部ST3に向け移動する。カード素材31aには、中間転写フィルム21の転写用受像層21cが圧接する。
【0045】
この圧接移動で、転写装置51によって転写用受像層21cに形成された中間画像Pの一部の範囲が、カード素材31aに転写され形成画像Pcが形成される。
すなわち、カード素材31aの表面上に形成画像として形成画像Pcが再転写によって形成され、カード31とされる。
【0046】
記憶部MRには、転写装置51を含む印刷装置PRの全体の動作を実行するための動作プログラム、及び転写する画像の情報である転写画像情報J3などが予め記憶される。記憶部MRの記憶内容は、制御部CTにより適宜参照される。
転写画像情報J3は、外部のデータ機器38(
図2参照)などから入力部である通信部37を介して制御部CTに供給され、記憶部MRに記憶される。
【0047】
次に、透かし部分付き画像を転写する際の、カラー転写画像データSN1B及び透かし転写画像データSN2Bの生成方法を、
図8〜
図24を参照して詳述する。
印刷装置PRは、透かし部分付きカラー画像と、透かし部分のない通常のカラー画像と、の両方の画像を選択的に転写体に印刷形成できる。
【0048】
転写動作において、制御部CTは、次に実行する転写が、透かし部分付きの転写であるか、透かし部分なしの転写であるかを判定する(
図8:Step1)。
この判定は、通信部37を介した外部からの指示に基づいて行う。また、外部からの指示の替わりに、転写画像情報J3に透かし画像情報J3aを含めておき、判定を、透かし画像情報J3aに基づいて行うようにしてもよい。
透かし画像情報J3aは、メタル画像データSN2が透かし画像に対応したものであるか否かを示す情報である(
図7に一点鎖線で記載)。
【0049】
(Step1)の判定が否(No)の場合、制御部CTは、透かし部分のないカラー画像を転写形成する通常の転写動作を実行する(Step2)。すなわち、カラー画像データ送出部CT1はカラー転写画像データSN1Aを生成し、メタル画像データ送出部CT2はメタル転写画像データSN2Aを生成し、それぞれを用いてカラーインクCIK及びメタルインクSの転写動作を実行する。
【0050】
(Step1)の判定が是(Yes)の場合、制御部CTは、透かし部分付きのカラー画像として形成画像Pcを転写形成する透かし転写動作を実行する。
透かし転写動作におけるカラー画像データ送出部CT1及びメタル画像データ送出部CT2の処理は、並列処理となる。
【0051】
まず、メタル画像データ送出部CT2の処理を先に説明する。
図8に示されるように、メタル画像データ送出部CT2は、記憶部MRから、そこに記憶されているメタルパターンデータSNsを読み込む(Step21)。
メタルパターンデータSNsは、透かし転写動作においてメタルインクSで転写する画像の基本となる基本転写パターンPtSを特定するデータである。
【0052】
図9は、基本転写パターンPtSを説明するための模式図である。
基本転写パターンPtSは、メタルインクSで転写可能な最小画素サイズをメタル画素Mgとし、形成画像Pcの全体又は一部となる領域を、複数のメタル画素MgのマトリックスMで対応づけたときに、そのマトリックスMに対し所定のパターンでメタルインクSを転写させるものである。
図9では、マトリックスMの例として、25行×25列の合計625個のメタル画素Mgからなるものを示している。
また、ここで説明する例では、メタル画素Mgのサイズと昇華型のカラーインクCIKで転写可能な最小単位の画素とを同じとしてある。
【0053】
図9に示されるマトリックスMにおいて、625個のメタル画素Mgのうち、メタルインクSが転写されるメタル画素Mgにハッチングを付してある。すなわち、マトリックスMには、市松模様状の転写パターンでメタルインクSが転写する例が示されており、この市松模様状の転写パターンが基本転写パターンPtSである。
【0054】
基本転写パターンPtSでメタルインクSを転写することで、マトリックスMの全メタル画素に転写するいわゆるベタ転写をした場合と比べて、単位面積あたりのメタルインクSの占有面積は概ね半分になる。
すなわち、マトリックスMのすべてのメタル画素MgにメタルインクSを転写させた場合と比べて、基本転写パターンPtSで転写させた場合、マトリックスM全領域での光の正反射強度は、概ね半分となる。
【0055】
以下、基本転写パターンPtSでのメタルインクSの転写において、メタル画素Mgのうち、メタルインクSが転写される画素(ハッチング付)をメタル転写画素Mgyと称し、メタルインクSが転写されない画素(白ヌキ)をメタル非転写画素Mgnと称する(
図9参照)。
すなわち、基本転写パターンPtSは、透かし転写画像Ptを含む所定の画像領域において、メタル転写画素Mgyとメタル非転写画素Mgnとを、それぞれ分散して平均的に混在させるパターンとして設定される。
【0056】
図8に戻り、メタル画像データ送出部CT2は、記憶部MRから、そこに記憶されているメタル画像データSN2を読み込む(Step22)。(Step21)と(Step22)との実行順は限定されず、逆でもよい。
【0057】
メタル画像データSN2は、透かし効果が発揮される透かし部分を特定する画像データである。
メタル画像データSN2で転写される透かし部分(以下、透かし転写画像Ptとも称する)の一例が、
図10に示されている。
この例において、透かし転写画像Ptは、アルファベットの「N」を透かし効果をもって視認可能とする画像である。
すなわち、メタル画像データSN2は、「N」を視認できるようにメタル転写画素Mgyの配置が決められたデータである。また、メタル画像データSN2は、マトリックスMに対するメタル転写画素Mgyの位置も決められている。
【0058】
通常は、メタルパターンデータSNsの転写領域サイズ及び画素の行列数と、メタル画像データSN2の転写領域サイズ及び画素の行列数とを、たとえばマトリックスMのように一致させておくので、透かし転写画像Ptの転写位置及び転写領域に対する大きさは調整不要である。
もちろん、通信部37を介した外部指示などによって、透かし転写画像Ptの位置又は大きさを変更可能としてもよい。また、メタル画像データSN2を、転写領域サイズを含めないデータとして、透かし転写画像Ptの位置及び大きさを、外部指示によって設定するように構成してもよい。
【0059】
図8に戻り、メタル画像データ送出部CT2は、読み込んだメタルパターンデータSNsとメタル画像データSN2とを合成して、透かし転写画像データSN2Bを生成する(Step23)。
この透かし転写画像データSN2Bにより転写される透かし転写合成画像PtGは、
図11に示される。
【0060】
次に、カラー画像データ送出部CT1の処理を説明する。
図8において、カラー画像データ送出部CT1は、メタル画像データ送出部CT2と同様に、メタルパターンデータSNsを記憶部MRから読み込む(Step11)。
また、カラー画像データ送出部CT1は、記憶部MRから、そこに記憶されているカラー画像データSN1を読み込む(Step12)。
(Step11)と(Step12)との実行順は限定されず、逆でもよい。
【0061】
カラー画像データ送出部CT1は、カラーインクCIKの転写パターンCPを、予め設定された複数種の転写パターンCPから選択して設定する(Step13)。
複数種の転写パターンCPは、この例において、転写パターンCPA〜CPEの五種であり、
図12に示される。
転写パターンCPは、カラー画像データSN1で特定されるカラー画像PdをイエローインクIY,マゼンタインクIM,及びシアンインクICで転写形成する際の各インクの転写位置を、画素単位で、メタルパターンデータSNsにおけるメタル転写画素Mgyとメタル非転写画素Mgnとにパターン化して対応づけたものである。
【0062】
図12は、単にメタル転写画素Mgy及びメタル非転写画素Mgnと、それぞれに転写するインクIY,IM,ICとの対応を示す表である。
図12に示されるように、転写パターンCPB〜CPEにおいて、イエローインクIY,マゼンタインクIM,及びシアンインクICは、それぞれについて、メタル転写画素Mgy及びメタル非転写画素Mgnの一方が転写不可となる。
図12では、転写不可の画素に対応するセルに×を記載し、転写可能の画素に対応するセルを、イエローインクIYの場合は白ヌキ、マゼンタインクIMの場合は通常のハッチング、シアンインクICの場合はクロスハッチングとしている。
各転写パターンCPは、次に説明する通りである。
【0063】
転写パターンCPAは、イエローインクIY,マゼンタインクIM,及びシアンインクICを、メタル非転写画素Mgnとメタル転写画素Mgyとのいずれにも転写可能とするパターンである。
【0064】
転写パターンCPBは、イエローインクIYをメタル非転写画素Mgnにのみ転写可能とし、マゼンタインクIM及びシアンインクICをメタル転写画素Mgyにのみ転写可能とするパターンである。
【0065】
転写パターンCPCは、イエローインクIYをメタル転写画素Mgyにのみ転写可能とし、マゼンタインクIM及びシアンインクICをメタル非転写画素Mgnにのみ転写可能とするパターンである。転写パターンCPCは、転写パターンCPBの逆のパターンとなっている。
【0066】
転写パターンCPDは、イエローインクIY,マゼンタインクIM,及びシアンインクICを、メタル非転写画素Mgnにのみ転写可能とし、メタル転写画素MgyにはイエローインクIY,マゼンタインクIM,及びシアンインクICを転写しないパターンである。
【0067】
転写パターンCPEは、イエローインクIY,マゼンタインクIM,及びシアンインクICを、メタル転写画素Mgyにのみ転写可能とし、メタル非転写画素MgnにはイエローインクIY,マゼンタインクIM,及びシアンインクICを転写しないパターンである。転写パターンCPEは、転写パターンCPDの逆のパターンとなっている。
【0068】
このように、転写パターンCPB〜CPEでは、各インクIY,IM,ICを転写する際に、メタル非転写画素Mgnとメタル転写画素Mgyの内の一方を転写可能なメタル画素とし、他方を転写不可のメタル画素として設定する。
そのため、転写可としたメタル画素に対応する色成分をどのように設定するか、については、例えば次に説明する成分分離設定方法に基づいて設定するようになっている。
【0069】
図13は、例えば転写パターンCPBによって各インクIY,IM,ICを転写する際の成分分離設定方法の例を説明するための図である。
図13(a)は、カラーインクCIKで転写可能な最小画素をカラー画素Rgとし、転写領域を、複数のカラー画素RgのマトリックスMRSで対応づけたものである。
マトリックスMRSは、この例において、4行5列の合計20のカラー画素Rgからなる。
また、マトリックスMRSは、マトリックスMの1〜4行、1〜5列の部分に対応するものとして記載してある。
従って、
図13(a)のマトリックスMRSにおいて、ハッチングを付与したカラー画素Rgは、メタル転写画素Mgyに対応し、白ぬきのカラー画素Rgは、メタル非転写画素Mgnに対応している。
【0070】
各カラー画素Rgは、R(行・列)の符号で特定される。例えば、2行3列のカラー画素Rgは、カラー画素R23である。
各カラー画素Rgには、イエロー,マゼンタ,及びシアンそれぞれの色成分情報が紐付されている。
すなわち、カラー画素R23には、イエロー成分Y23,マゼンタ成分M23,及びシアン成分C23の情報が紐付けされている。
【0071】
図13(b),(c),(d)は、それぞれ転写パターンCPBによるイエローインクIY,マゼンタインクIM,シアンインクICの転写パターンを示している。また、×付の画素は、転写パターンCPBにおいて各インクでの転写を不可とした画素である。
すなわち、イエローインクIYは、
図13(b)に示されるように、メタル非転写画素Mgnに対応するカラー画素Rgのみに転写可能とされている。また、マゼンタインクIM及びシアンインクICは、
図13(c)及び
図13(d)に示されるように、メタル転写画素Mgyにのみ転写可能とされている。
【0072】
カラー画像データ送出部CT1は、(Step13)で設定した転写パターンが、転写パターンCPA以外の転写パターンCPB〜CPEの場合に(Step14:No)、
図13(b)〜(d)に示されたインクIY,IM,ICの転写を実行させるための成分分離設定方法を選択設定する(Step16)。この例では、成分分離設定方法として、次に説明する間引き分離方法と、平均分離方法と、のいずれかを選択設定可能とされている。
【0073】
<間引き分離方法>
マゼンタインクIM及びシアンインクICの転写には、それぞれ対応するカラー画素Rgのマゼンタ成分及びシアン成分をそのまま適用する。
例えば、M11及びC11には、それぞれカラー画素R11のマゼンタ成分及びシアン成分を適用する。また、M22及びC22には、それぞれカラー画素R22のマゼンタ成分及びシアン成分を適用する。
【0074】
一方、イエローインクIYの転写には、対応するカラー画素Rgを含む行が、その1列目の画素が転写可能画素である場合、同じ行の列数の大きい側に隣接するカラー画素Rgのイエロー成分を適用する。これは、
図13(b)における偶数行が該当する。
また、対応するカラー画素Rgを含む行が、その1列目の画素が転写不可画素である場合、同じ行の列数の小さい側に隣接するカラー画素Rgのイエロー成分を適用する。これは、
図13(b)における奇数行が該当する。
【0075】
例えば、Y12及びY14には、それぞれカラー画素R11及びR13のイエロー成分を適用する。また、Y21及びY23には、それぞれカラー画素R22及びR24のイエロー成分を適用する。
【0076】
<平均分離方法>
イエローインクIYの転写には、対応するカラー画素Rgのイエロー成分と、そのカラー画素に対して同じ行で隣接するカラー画素Rgのイエロー成分と、の平均値を適用する。
隣接するカラー画素は、対応するカラー画素Rgを含む行が、その一列目の画素が転写可能画素である場合(
図13(a)における偶数行)、同じ行の列数の大きい側に隣接するカラー画素Rgとする。
また、対応するカラー画素Rgを含む行が、その一列目の画素が転写不可画素である場合(
図13(a)における奇数行)、隣接するカラー画素は、同じ行の列数の大きい側に隣接するカラー画素Rgとする。
【0077】
マゼンタインクIMの転写には、対応するカラー画素Rgのマゼンタ成分と、そのカラー画素Rgに対して同じ行で隣接するカラー画素Rgのマゼンタ成分と、の平均値を適用する。
シアンインクICの転写には、対応するカラー画素Rgのシアン成分と、そのカラー画素Rgに対して同じ行で隣接するカラー画素Rgのシアン成分と、の平均値を適用する。
【0078】
隣接するカラー画素Rgは、対応するカラー画素Rgを含む行が、その一列目の画素が転写可能画素の場合(
図13(c),(d)における奇数行)、同じ行の列数の大きい側に隣接するカラー画素Rgとする。
また、対応するカラー画素Rgを含む行が、その一列目の画素が転写不可画素の場合(
図13(c),(d)における偶数行)、隣接するカラー画素は、同じ行の列数の大きい側に隣接するカラー画素Rgとする。
【0079】
図8に戻り、カラー画像データ送出部CT1は、(Step13)において上述のカラーインクCIKの例えば五種の転写パターンCPA〜CPEから一つを選択設定する。
カラー画像データ送出部CT1は、転写パターンCPAを選択設定した場合(Step14のYes)、カラー画像データSN1における各カラー画素Rgに対応したイエロー成分,マゼンタ成分,及びシアン成分をそのまま用いてカラー転写画像データSN1Bを生成する(Step15)。
【0080】
カラー画像データ送出部CT1は、転写パターンCPA以外の転写パターンCPB〜CPEを選択設定した場合(Step14のNo)、上述のように、成分分離方法を、例えば、間引き分離方法と平均分離方法とのいずれか一方に選択設定する(Step16)。
【0081】
カラー画像データ送出部CT1は、カラー画像データSN1に対し、選択設定した転写パターンCP及び成分分離方法を適用して、カラー転写画像データSN1Bを生成する(Step15)。
【0082】
カラー転写画像データSN1Bは、上述のように、インク層11YのイエローインクIYで転写する画像の画像データSN1By,インク層11MのマゼンタインクIMで転写する画像の画像データSN1Bm,及びインク層11CのシアンインクICで転写する画像の画像データSN1Bcを含むデータである。
【0083】
カラー画像データ送出部CT1は、(Step13)及び(Step15)の、転写パターン及び成分分離方法の選択判断を、通信部37を介した外部からの指示に基づいて行う。また、転写画像情報J3に選択判定情報J3bを含めておき、カラー画像データ送出部CT1が、外部からの指示の替わりに、選択判断を選択判定情報J3bに基づいて行うようにしてもよい。
【0084】
選択判定情報J3bは、メタル画像データSN2が透かし画像に対応する場合に、カラー画像データSN1からカラー転写画像データSN1Bを生成する際に適用する転写パターン及び成分分離方法を指定する情報である(
図7に一点鎖線で記載)。
【0085】
図8に戻り、制御部CTは、(Step15)及び(Step23)によってカラー転写画像データSN1B及び透かし転写画像データSN2Bが生成されたら、まず、中間転写フィルム21に、カラーインクCIKを、カラー転写画像データSN1Bにより転写し、カラー画像Pdを転写形成する(Step3)。
次に、メタルインクSを、透かし転写画像データSN2Bによってカラー画像Pdに重畳して転写し、中間画像Pを転写形成する(Step4)。
【0086】
(Step2)の通常転写、又は、(Step3)及び(Step4)の透かし転写を経て形成された中間画像Pは、カード素材31aに再度転写され(Step5)、(Step2)を経た場合は、光沢付きの形成画像Pcとされる。また、(Step4)を経た場合は、透かし部分付き形成画像Pctとされる。
【0087】
次に、転写装置51による、カラー転写画像データSN1B及び透かし転写画像データSN2Bを用いた中間転写フィルム21への具体的画像形成動作及び方法について、
図14〜
図24を参照して説明する。すなわち、
図8の(Step3)及び(Step4)の動作及び方法である。
転写装置51は、三色のカラーインクCIK及びメタルインクSの転写動作それぞれにおいて、巻き戻し動作及び頭出し動作を行う。
【0088】
以下に説明する動作手順は、中間転写フィルム21のフレームF1に、中間画像Pを転写する手順である。
図14及び
図15には、インクリボン11の搬送方向(帯方向)に不動のサーマルヘッド16と、サーマルヘッド16の位置に対するインクリボン11及び中間転写フィルム21の位置と転写内容とが示されている。
また、転写動作で密着対向させているインクリボン11のインク層11bの面と中間転写フィルム21の転写用受像層21cの面とを、左右に並べて記載している。
【0089】
まず、
図14に示されるように、イエローのインク層11Y1とフレームF1との位置合わせを頭出し動作で行う。
次いで、サーマルヘッド16を圧接状態としてインクリボン11と中間転写フィルム21とを
図14の下方に密着移動させながら、インク層11Y1のイエローインクIYを、画像データSN1ByによってフレームF1に転写し、画像Y(1)を形成する。
この密着移動は一つのフレーム分行う。送り方向は、インクリボン11は巻きとり方向(順送り)となり、中間転写フィルム21は巻き戻し方向(逆送り)となる。
形成された画像Y(1)は、選択設定した転写パターンCPが、例えば転写パターンCPBの場合、
図13(b)に対応する市松模様状にイエローインクIYが転写された画像である。
【0090】
図15は、中間転写フィルム21に画像Y(1)を転写し終わった状態が示されている。
すなわち、中間転写フィルム21のフレームF1には、イエローインクIYの画像Y(1)が転写形成されている。
【0091】
図15に示されるように、インク層11Y1のイエローインクIYで画像Y(1)を転写したフレームF1には、次に、インク層11M1のマゼンタインクIMを、画像データSN1Bmによって画像M(1)として重畳転写する。
重畳転写される画像M(1)は、転写パターンCPBの場合、
図13(c)に対応する画像である。
【0092】
画像M(1)の重畳転写では、まず、
図16に示されるように、マゼンタのインク層11M1とフレームF1との位置合わせを頭出し動作で行う。
【0093】
次いで、サーマルヘッド16を圧接状態としてインクリボン11と中間転写フィルムとを、
図16の下方に密着移動させながら、インク層11M1のマゼンタインクIMを、フレームF1に画像データSN1Bmによる画像M(1)で重畳転写する。
これにより、フレームF1には、
図17に示される、画像Y(1)と画像M(1)とが重畳した画像が形成される。
マゼンタインクIMは、転写パターンCPBにおいて、画像Y(1)におけるイエローインクIYが転写されていない画素に転写される。従って、マゼンタインクIMが重畳転写された段階での画素単位での転写状態は、転写パターンCPBを適用した場合、
図18に示されるようになる。
【0094】
同様にして、インク層11C1のシアンインクICを、フレームF1に、画像データSN1cによる画像C(1)で重畳転写する。
これにより、フレームF1には、画像Y(1)と画像M(1)と画像C(1)との重畳画像が形成される。
シアンインクICが重畳転写された段階での画素単位での転写状態は、転写パターンCPBを適用した場合、
図19に示されるようになる。
【0095】
さらに、同様にして、インク層11S1のメタルインクSを、フレームF1に、メタル画像データ送出部CT2で生成した透かし転写画像データSN2Bによる透かし転写合成画像PtGである画像S(1)で重畳転写する。
【0096】
図20には、四色目のメタルインクSによる画像S(1)を転写し終えた状態が示されている。
すなわち、フレームF1には、画像Y(1),画像M(1),画像C(1),及び画像S(1)が重畳転写されて、画像P(1)が中間画像Pとして形成されている。以下、中間画像Pを形成する最小画素を中間画像画素Pgと称する。
メタルインクSが重畳転写された段階での画素単位の転写状態は、転写パターンCPBを適用した場合、透かし転写画像Ptがない部分において、
図21に示されるようになる。
図21において、メタルインクSを転写した中間画像画素Pgにはハッチングが付与されている。
【0097】
この状態での中間転写フィルム21の模式的断面図が
図22に示される。
具体的には、中間転写フィルム21に形成された中間画像Pにおける
図21の画素Pg22及びPg23に対応する中間画像画素Pgの模式的断面図である。
【0098】
転写用受像層21cには、昇華して転写されたイエローインクの染料YI(白ヌキ)、マゼンタインクの染料MI(通常ハッチ付与)、シアンインクの染料CI(クロスハッチ付与)、メタルインクSの顔料SI(長方形)が受像されている。
メタルインクSの顔料SIは、転写順が最後であるため、転写用受像層21cにおけるフィルムベース21aから遠い側に受像されている。
【0099】
画像P(1)は、メタルインクSが、透かし転写画像データSN2Bに基づいて転写された画像である。
そのため、透かし転写画像Ptに対応しない部分は、基本転写パターンPtSに従い、メタルインクSが転写された画素(画素Pg22)に隣接する画素(画素Pg23)には、メタルインクSは転写されていない。
そして、メタルインクSが転写された画素(画素Pg22)には、マゼンタインクIM及びシアンインクICの転写が許容され、メタルインクSが転写されていない画素(画素Pg23)には、イエローインクIYの転写が許容される。
一方、透かし転写画像Ptに対応した部分では、イエローインクIYが転写された画素にもメタルインクSが重畳転写される。
【0100】
フレームF2以降のフレームも、フレームF1に画像P(1)を形成したのと同様に、画像P(2)以降を形成することができる。
そして、各フレームFに形成した中間画像Pの一部が、再転写装置52によって、カード素材31aに再転写され、透かし部分付き形成画像Pctとして転写形成される。
【0101】
図23は、中間転写フィルム21において、
図20に示された、フレームF1に形成された画像P(1)をカード素材31aに再転写した後の状態が示されている。
詳しくは、画像P(1)の一部が、カード素材31aに転写されて再転写範囲P(1)c(点描部分)となっている。
【0102】
図24は、再転写済みのカード31の部分断面図である。
図24(a)は、透かし転写画像Ptに対応していない部分であり、
図22に示された部分を再転写した状態を示す。また、
図24(b)は、透かし転写画像Ptに対応した部分の例を示している。
【0103】
図24(a),(b)に示されるように、未転写のカード31であるカード素材31aの一面に、転写用受像層21cが転写されている。
転写により、転写用受像層21cのリボンベース11aとは反対側の面が、カード素材31a側の面になるので、カード素材31a側にメタルインクS(顔料SI)が位置する。
転写パターンCPBの適用により、カード素材31aに形成された形成画像PcにおいてメタルインクSが転写された部分(画素Pg22)には、メタルインクSの顔料SIの上に、シアンインクICの染料CI及びマゼンタインクIMの染料MIが載るようになっている。
また、メタルインクSが転写されていない部分(画素Pg23)には、イエローインクIYの染料YIが受容される。
また、透かし転写画像Ptに対応した画素については、
図24(b)に示されるように、イエローインクIYの染料YIは、メタルインクSの顔料SIの上に載るようになっている。
【0104】
図25(a),(b)は、それぞれ
図24(a),(b)で断面図示されたカード31に対し、一方向から光LGが照射された状態を示す模式図である。
【0105】
図25(a)において、メタルインクSが転写されたメタルインク転写部Ac(画素Pg22を代表とする
図11でハッチングが付与された画素に対応する部分)は、光LGを、狭指向性をもって概ね正反射し、反射光LGaとして出光する。
この反射光LGaは、マゼンタインクIM及びシアンインクICが光透過性を有することから、メタルインクSの上に載っているマゼンタインクIM及びシアンインクICの色を反映した光沢色で視認される。
【0106】
メタルインクSが転写されていないメタルインク非転写部Ad(画素Pg23を代表とする
図11でハッチングが付与されていない画素に対応する部分)は、光LGがカード素材31aの表面に入光すると、イエローインクIYが光透過性を有することから、カード素材31aの表面に達し、その表面が樹脂板としての一般的な表面粗さを有することから乱反射する(乱反射光LGb参照)。
【0107】
従って、観察者の目Eが、反射光LGaの出光方向にあるとき、メタルインク転写部Acは、メタルインク非転写部Adに対し際立って明るく、金属光沢を有するカラー領域として視認される。
一方、観察者の目Eが、反射光LGaの出光方向にないときは、目Eには、メタルインク転写部Acからの反射光LGaよりもメタルインク非転写部Adからの乱反射光LGbの方がはるかに多く届く。そのため、相対的に、メタルインク転写部Acは暗い領域として視認される。
【0108】
透かし転写画像Ptの部分に対応した
図25(b)においては、隣接画素ともどもメタルインクSが転写されたメタルインク転写部Acとされているので、観察者の目Eの視認方向が反射光の出向方向に概ね一致したときに、透かし転写画像Ptを強い光沢画像として認識することができる。
【0109】
この光沢画像の性質から、透かし転写画像Ptが光沢画像として視認できる視認方向から見たときの、その透かし転写画像Ptの見え方は、
図26に示されるように、透かし転写画像Ptの背景画像となるカラー画像Pdの明度(濃度)によって異なる。
詳しくは、透かし部分付き形成画像Pctにおいて、カラー画像Pdが、
図26(a)に示されるような明度が低く(高濃度で)暗い画像の場合、
図26(b)に示されるような明度が高く(低濃度で)明るい画像の場合より、透かし転写画像Ptは、視認方向により、相対的にカラー画像Pdよりも明るい領域として視認され得る。
以下、この
図26(a)に示されるような、透かし転写画像Ptが周囲に対して明るく見える状態を、便宜的に正光沢状態と称する。
【0110】
また、透かし転写画像Ptが光沢画像として視認しにくい視認方向から見たときの、その透かし転写画像Ptの見え方も、
図27に示されるように、透かし転写画像Ptの背景画像となるカラー画像Pdの明度(濃度)によって異なる。
詳しくは、透かし部分付き形成画像Pctにおいて、カラー画像Pdが、
図27(a)に示されるような明度が低く(高濃度で)暗い部分である場合よりも、
図27(b)に示されるような明度が高く(低濃度で)明るい部分であった場合の方が、透かし転写画像Ptは、周囲に対してよりはっきりと暗い領域として明瞭に視認され得る。
以下、この
図27(b)に示されるような、透かし転写画像Ptが周囲に対して暗く見える状態を、便宜的に負光沢状態と称する。
【0111】
次に、透かし部分付き形成画像Pctを、基本転写パターンPtSを用いることなく透かし転写画像PtのみをメタルインクSで転写形成した場合と、基本転写パターンPtSと透かし転写画像Ptとを合成した透かし転写合成画像PtGによってメタルインクSで転写形成した場合と、での、透かし転写画像Ptの見え方の違いを説明する。
この説明において、
図25及び概念図である
図28〜
図33を参照する。
【0112】
この説明において、カード素材31aに形成された透かし部分付き形成画像Pctは、透かし転写画像Ptとしての「N」の文字と、文字「N」を含む所定範囲に、文字「N」の背景画像として無光沢のカラー画像Pdと、から構成されているものとする。
【0113】
図28及び
図29は、カラー画像Pdの明度が十分に高い場合(低濃度の場合)であって、
図28は、基本転写パターンPtSを用いない場合、
図29は用いた場合を示す。
図30及び
図31は、カラー画像Pdの明度が十分に低い場合(高濃度の場合)であって、
図30は、基本転写パターンPtSを用いない場合、
図31は用いた場合を示す。
図32及び
図33は、明度が上記二つの中間の場合(中濃度の場合)であって、
図32は、基本転写パターンPtSを用いない場合、
図33は用いた場合を示す。
【0114】
まず、
図28及び
図29のカラー画像Pdの明度が高い場合(低濃度の場合)について説明する。
図28(a),
図29(a)は、視認方向が透かし転写画像Ptの反射方向とは異なる場合(以下、「*方向」と表記)であり、
図28(b),
図29(b)は、概ね一致する場合(以下、「○方向」と表記)である。
図28(c),
図29(c)は、*方向と○方向との状態それぞれにおける、カラー画像Pd及び透かし転写画像Ptの視認される明度(以下、視認明度と称する)を示すグラフである。
【0115】
明度によらない共通の振る舞いとして、基本転写パターンPtSを用いない場合、カラー画像Pdは、カラーインクCIKのみで表現され、
図25(a)におけるメタルインク非転写部Adに相当する振る舞いをする。
すなわち、カラー画像Pdは、乱反射光LGbによって視認される。そのため、カラー画像Pdの視認明度は、視認方向によらずほぼ一定となる。
これに対し、透かし転写画像Ptは、概ね正反射するため、視認方向によって視認明度が大きく変化する。
【0116】
一方、基本転写パターンPtSを用いた場合、カラー画像Pdは、カラーインクCIKとメタルインクSとの両方で表現される。そして、メタルインクSの基本転写パターンPtSが市松模様状であることから、面積として半分がメタルインク転写部Ac相当の、残り半分がメタルインク非転写部Ad相当の振る舞いをする。
すなわち、カラー画像Pdは、乱反射光LGbで視認される面積が、基本転写パターンPtSを用いない場合と比べて半分となる。
これにより、カラー画像Pdの視認明度は、視認方向によって異なるものとなる。
【0117】
この振る舞いに基づいて、各明度での透かし転写画像Ptの見え方の違いを説明する。
まず、カラー画像Pdの明度が高い場合(低濃度の場合)について説明する(
図28及び
図29参照)。
【0118】
図28に示される、明度が十分に高く基本転写パターンPtSを用いない場合において、*方向では、透かし転写画像Ptの視認明度は、カラー画像Pdの視認明度よりも顕著に低く、差分ΔPt1の分だけ負光沢状態として視認される
○方向では、透かし転写画像Ptの視認明度はその全面が正反射することにより大幅に増加し、カラー画像Pdの視認明度よりも顕著に高く、差分ΔPt2の分だけ正光沢状態として視認される。
【0119】
一方、
図29に示される、明度が高く基本転写パターンPtSを用いた場合において、
詳しくは、*方向では、カラー画像Pdの視認明度は、乱反射光LGbの領域が半分になることから減少して、透かし転写画像Ptの視認明度よりわずかに大きいだけの値となる。
カラー画像Pdと透かし転写画像Ptとの視認明度の差分ΔPt3は、生じるものの僅かな値となるから、透かし転写画像Ptは実質的に視認されない。
【0120】
○方向では、カラー画像Pdの視認明度は、反射光LGaの領域を半分有することから増加するものの、乱反射光LGb分を加味しても、全領域が反射光LGaを出光する透かし転写画像Ptの視認明度に対しては、その半分をやや超える程度の値となる。
従って、差分ΔPt4は大きく生じて、透かし転写画像Ptは良好に視認される。
【0121】
このように、カラー画像Pdの明度が高く、かつ基本転写パターンPtSを用いない場合、透かし転写画像Ptは、視認方向によらず視認される状態にあって、透かし効果が得られない。
これに対し、基本転写パターンPtSを適用することで、視認方向によって透かし転写画像Ptの視認不可と視認可との二つの状態が生じ、良好な透かし効果が得られる。また、視認可能な状態は、背景となるカラー画像Pdとの視認明度差が大きい正光沢状態であるから、透かし効果は高品位である。
【0122】
次に、カラー画像Pdの明度が低い場合(高濃度の場合)について説明する(
図30及び
図31参照)。
【0123】
図30に示される、明度が低く基本転写パターンPtSを用いない場合、カラー画像PdはカラーインクCIKのみで表現され、
図25(a)のメタルインク非転写部Adに相当する振る舞いをする。
すなわち、カラー画像Pdは、乱反射光LGbによって視認され、カラー画像Pdの視認明度は、視認方向によらず低明度でほぼ一定となる。
これに対し、透かし転写画像Ptは、視認方向によって視認明度が大きく変化する。
【0124】
詳しくは、*方向では、透かし転写画像Ptの視認明度は、カラー画像Pdの視認明度と同等程度であり、差分ΔPt5の分だけ負光沢状態となる。しかしながら、差分ΔPt5はわずかであって、透かし転写画像Ptは実質的に視認されない。
【0125】
○方向では、透かし転写画像Ptの視認明度はその全面が正反射することで大幅に増加し、カラー画像Pdの視認明度よりも顕著に高く、差分ΔPt6の分だけ正光沢状態として視認される。
【0126】
一方、
図31に示される、明度が低く基本転写パターンPtSを用いた場合、カラー画像Pdの視認明度は、カラー画像Pdの明度が高い場合と同様に、視認方向によって異なるものとなる。
詳しくは、*方向では、カラー画像Pdの視認明度は、元々の明度が十分に低いことから、透かし転写画像Ptの視認明度よりもやや小さい値となる。両者の差分ΔPt7は生じるもののわずかであるから、透かし転写画像Ptは実質的に視認されない。
【0127】
○方向の場合、カラー画像Pdの視認明度は、反射光LGaの領域を半分有することから増加するものの、乱反射光LGb分を加味しても、全領域が反射光LGaを出光する透かし転写画像Ptの視認明度の半分をやや超える程度となる。
従って、差分ΔPt8は大きく生じて、透かし転写画像Ptは正光沢状態で良好に視認される。
【0128】
このように、カラー画像Pdの明度が低く、基本転写パターンPtSを用いない場合、透かし転写画像Ptは、視線方向によって視認不可と視認可の二つの状態が生じ、透かし効果が得られる。
また、基本転写パターンPtSを用いても、○方向では、透かし転写画像Ptとカラー画像Pdとの視認明度の差分ΔPt8が、基本転写パターンPtSを用いない場合の差分ΔPt6より小さいものの、透かし転写画像Ptを視認するには十分に得られる。
従って、透かし転写画像Ptの透かし効果は維持される。
【0129】
このように、カラー画像Pdの明度が低い場合には、基本転写パターンPtSの適用有無に拘わらず、視認方向によって、透かし転写画像Ptの視認不可と視認可のふたつの状態が生じ、良好な透かし効果が得られる。また、視認可能な状態は、背景となるカラー画像Pdとの視認明度差が大きい正光沢状態であるから、透かし効果は高品位である。
【0130】
次に、カラー画像Pdの明度が、中間の場合(中濃度の場合)について説明する(
図32及び
図33参照)。
【0131】
図32に示される、中間明度で基本転写パターンPtSを用いない場合、カラー画像Pdの視認明度は、視認方向によらず、中程度の明度でほぼ一定となる。
これに対し、透かし転写画像Ptは、視認方向によって視認明度が大きく変化する。
【0132】
詳しくは、*方向では、透かし転写画像Ptの視認明度は、カラー画像Pdの視認明度より低く、差分ΔPt9の分だけ負光沢状態となる。この差分ΔPt9は、透かし転写画像Ptが負光沢状態で視認され得る値である。
○方向では、透かし転写画像Ptの視認明度は、その大幅に増加し、カラー画像Pdの視認明度よりも顕著に高く、差分ΔPt10の分だけ正光沢状態として視認される。
【0133】
一方、
図33に示される中間明度で基本転写パターンPtSを用いた場合、カラー画像Pdの視認明度は、カラー画像Pdの明度が高い場合と同様に、視認方向によって異なるものとなる。
詳しくは、*方向において、カラー画像Pdの視認明度は、カラー画像Pdの明度が高い場合と低い場合との中間の、透かし転写画像Ptの視認明度とほぼ同じ値となる。両者の差分ΔPt11は、小さい値となり、透かし転写画像Ptは実質的に視認されない。
【0134】
○方向では、カラー画像Pdの視認明度は、カラー画像Pdの明度が高い場合と低い場合との中間の値となる。
従って、差分ΔPt12は、ある程度の値が生じて透かし転写画像Ptは正光沢状態で視認される。
【0135】
このように、カラー画像Pdの明度が中間的な値で、かつ基本転写パターンPtSを用いない場合、透かし転写画像Ptは、視認方向によらず視認できる状態にあって、透かし効果が得られない。
これに対し、基本転写パターンPtSを適用することで、視認方向によって透かし転写画像Ptの視認不可と視認可との二つの状態が生じ、良好な透かし効果が得られる。また、視認可能な状態は、背景となるカラー画像Pdとの視認明度差が大きい正光沢状態であるから、透かし効果は高品位である。
【0136】
上述のように、カラー画像Pdの転写に基本転写パターンPtSを適用することで、背景画像であるカラー画像Pdの明度によらず、透かし転写画像Ptの良好な透かし効果が得られる。
【0137】
ところで、カラー画像の転写に基本転写パターンPtSを適用すると、上述のように、面積としてカラー画像Pdの約半分の領域がメタルインク転写部Acとされる。
そのため、カラー画像Pdの内容によっては、基本転写パターンPtSを適用しない場合と比較して、視認方向での色の見え方が、特に明るさの点で調整が望まれる程度に異なる場合も想定される。
例えば、メタルインク転写部Acを有することで、*方向において色が必要以上に暗く見える虞がある。
【0138】
そこで、
図12を参照して説明したように、転写パターンCPとして、通常の転写パターンCPAに加えて複数の転写パターンCPB〜CPEを用意し、所望の色の見え方を調整できるよう選択設定可能としている。
特に、転写パターンCPB及びCPCは、イエロー,マゼンタ,シアンの各インクの内、最も明度の高いイエローインクIYを転写する画素を、他のマゼンタインクIM及びシアンインクICを転写する画素と異ならせて分離転写するものといる。
これにより、カラー画像Pdを明るく視認させる調整が容易になっている。
【0139】
さらに、転写パターンCPBは、メタル非転写画素Mgnに最も明度の高いイエローインクIYのみを転写させるので、カラー画像Pdの視認明度向上が効果的に図れる。
【0140】
以上詳述したように、実施例1の印刷装置PRによれば、透かし効果を発揮させる透かし転写画像Ptの背景となるカラー画像Pdの転写形成において、透かし転写画像Ptを含む領域について、メタルインクSの転写画素を分散して平均的に混在させる基本転写パターンPtSを適用するようになっている。
【0141】
これにより、カードなどの転写体に再転写形成した透かし部分付きカラー画像は、背景となるカラー画像Pdの明度(濃度)によらず、視認方向に応じて透かし転写画像Ptの視認可能状態と実質的に視認困難な視認不可状態とが生じ、良好な透かし効果が得られる。
また、視認可能状態は、常に正光沢状態となり、背景との間で十分な明度差が生じるので、高品位の透かし効果が得られる。
また、良好な透かし部分付きカラー画像が表面に形成されたカードを製造することができる。
【0142】
(実施例2)
実施例1は、印刷装置PRとして、制御部CTに画像データ送出部CTbを有する例を説明したが、これに限定されるものではない。
画像データ送出部CTbを外部のコンピュータ61に備え、そのコンピュータ61と印刷装置とで印刷システムを構成してもよい。
実施例2として、その印刷システムの一例である印刷システムSYを説明する。印刷システムSYの概略構成は
図34に示される。
【0143】
印刷システムSYは、印刷装置PRAとコンピュータ61とを含んで構成される。
印刷装置PRAは、実施例1の印刷装置PRに対し、制御部CTの替わりに、画像データ送出部CTbを有していない制御部CTAを備える点のみが異なる。
すなわち、印刷装置PRAは、中央処理装置CTaを有する制御部CTA,記憶部MR,転写装置51,及び再転写装置52を備えている。
【0144】
一方、コンピュータ61は、中央処理装置63及び記憶部MRと、印刷装置PRAを駆動するためのプリンタドライバ62と、を有する。コンピュータ61は、プリンタドライバプログラムに基づく中央処理装置63の制御によって、印刷装置PRAに画像データを送出する動作を実行するようになっている。
プリンタドライバ62は、印刷装置PRにおける画像データ送出部CTbに相当するブロックを有する。
すなわち、プリンタドライバ62は、カラー画像データ送出部CT1と、メタル画像データ送出部CT2とを有する。
カラー転写画像データSN1A,SN1Bは、プリンタドライバ62のカラー画像データ送出部CT1で生成される。
メタル転写画像データSN2A及び透かし転写画像データSN2Bは、メタル画像データ送出部CT2で生成される。
【0145】
カラー転写画像データSN1A,SN1B、並びに、メタル転写画像データSN2A及び透かし転写画像データSN2Bは、印刷装置PRAに向けて有線又は無線で送出される。
印刷装置PRAとコンピュータ61とは、例えばインターネット回線を介して接続される。
【0146】
コンピュータ61におけるカラー転写画像データSN1B及び透かし転写画像データSN2Bの生成と、印刷装置PRAにおける転写動作及び再転写動作の実行とは、連続的に実行されるものでなくてよい。
カラー転写画像データSN1B及び透かし転写画像データSN2Bの生成方法は実施例1と同じであり、印刷装置PRAにおける転写及び再転写動作も実施例1の印刷装置PRと同じであり、実施例1と同様の効果が得られる。
【0147】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0148】
基本転写パターンPtSは、上述の市松模様状が好ましいが、市松模様状に限定されるものではない。メタル転写画素Mgyとメタル非転写画素Mgnとが、それぞれ分散して平均的に混在するパターンであればよい。
カラー画像Pdにおいて基本転写パターンPtSを適用する領域は、カラー画像Pdの全体でなくてよい。少なくとも透かし転写画像Ptを含むその近傍領域であればよい。
【0149】
また、透かし転写画像Ptは、カラー画像Pd内に複数設けてよい。その場合、基本転写パターンPtSを適用する領域は、複数の透かし転写画像Ptを含むように、或いは、それぞれの透かし転写画像Ptに対応したものとして設定することができる。
後者の場合、それぞれの領域の転写パターンCPを同じパターンとしてよく、或いは、背景となる画像の内容や透かし転写画像Ptの内容に応じて異なる転写パターンCPとしてもよい。
【0150】
インクリボンは、三色(イエロー,マゼンタ,及びシアン)のカラーインクCIKとメタルインクSとの合計四色のインク層を有するものとして説明したが、四色(イエロー,マゼンタ,シアン,及びブラック)のカラーインクCIKとメタルインクSとの合計五色のインク層を有するものであってもよい。
この五色のインク層を有するインクリボンを用いた場合の動作は、ブラックインクの重畳転写動作が1回増えるのみであって、他については四色のインクリボン11の場合と同様に実行できる。
【0151】
印刷装置PR,PRAは、再転写方式の印刷装置であるが、再転写部ST1を利用せず、インクリボン11からの転写による形成画像を有する製品(カードなどの被印刷物)を製造する転写装置であってもよい。
詳しくは、例えば、中間転写フィルム21の転写済みのフレームFを所定の形状に切り出して、フィルム状カードとする転写装置であってもよい。また、中間転写フィルム21の替わりにカードなどの転写体に直接転写する転写装置であってもよい。
【0152】
これらの再転写をせずに被印刷物としての製品を得る転写装置において、インクリボン11から各インクを重畳転写する転写体が光透過性の場合、印刷装置PR,PRAにおける転写動作と同様に、カラーインクCIKを転写した後にメタルインクSを転写させる。
これにより、転写体を、転写した側の面とは反対側から見た場合に、光沢画像を視認できる。
【0153】
一方、インクリボン11から各インクを重畳転写する転写体が光不透過性の場合、最初にメタルインクSで光沢画像を転写し、その後、各カラーインクCIKの画像を転写する。
これにより、形成した画像は、転写体に最も近い側にメタルインクSがあり、そのメタルインクS上にカラーインクCIKが載った構造となる。
そのため、転写した側から見た場合に光沢画像を視認することができる。