(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6529294
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】パワーコンディショナの雷保護システム
(51)【国際特許分類】
H02H 7/122 20060101AFI20190531BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20190531BHJP
G01W 1/10 20060101ALN20190531BHJP
【FI】
H02H7/122
H02J13/00 301A
H02J13/00 311C
!G01W1/10 E
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-53537(P2015-53537)
(22)【出願日】2015年3月17日
(65)【公開番号】特開2016-174480(P2016-174480A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2018年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻澤 裕也
(72)【発明者】
【氏名】石田 聡
【審査官】
杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平2−165092(JP,A)
【文献】
特開平10−197652(JP,A)
【文献】
特開2000−131458(JP,A)
【文献】
特開2000−166079(JP,A)
【文献】
特開2001−286079(JP,A)
【文献】
特開2009−19915(JP,A)
【文献】
特開2009−165275(JP,A)
【文献】
特開2009−168604(JP,A)
【文献】
特開2011−101557(JP,A)
【文献】
特開2013−70476(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0211290(US,A1)
【文献】
国際公開第2007/048421(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/10
H02H 7/122
H02J 3/38
H02J 7/35
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光パネルにより発電された電力を系統に逆潮流させるためのパワーコンディショナと、このパワーコンディショナが接続されるブレーカを備えた配電盤と、このパワーコンディショナの負荷側に設けられ、系統から配電盤に侵入した雷電流を地絡させる避雷器と、避雷器の動作を検出する検出ユニットと、検出された避雷器の動作に基づいて前記ブレーカに遮断信号を送りパワーコンディショナを系統から遮断する制御装置とを備えたことを特徴とするパワーコンディショナの雷保護システム。
【請求項2】
請求項1記載の雷保護システムを複数システム連携させ、ネットワークを介してサーバに接続したパワーコンディショナの雷保護システムであって、各雷保護システムは、検出された避雷器の動作を雷情報としてサーバに通信する機能と、雷情報に場所情報を付加する機能とを備え、
サーバは、通信された場所情報と雷情報との記憶手段と、この記憶手段に記憶された情報に基づいて雷発生地域を特定する特定手段と、特定された雷発生地域の制御装置に対して警報情報を出力する警報手段とを備えることを特徴とするパワーコンディショナの雷保護システム。
【請求項3】
サーバの警報手段は、雷発生地域を複数に分割したうえ系統が電圧回復するのに要する時間差を設けて警報情報を出力し、各雷保護システムの制御装置は、警報情報に基づきパワーコンディショナが接続されるブレーカに遮断信号を送ることを特徴とする請求項2記載のパワーコンディショナの雷保護システム。
【請求項4】
雷発生地域の発電量に応じて分割数を定めることを特徴とする請求項3記載のパワーコンディショナの雷保護システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電システムのパワーコンディショナを落雷事故から保護するパワーコンディショナの雷保護システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムは、太陽光パネルと、太陽光パネルにより発電された電力を系統に逆潮流させるためのパワーコンディショナとを備えている。パワーコンディショナは太陽光パネルにより発電された直流電力を所定電圧の交流電力に変換する機能を持つ高価な設備である。このためパワーコンディショナを落雷事故から保護することが強く要求され、従来から避雷器を設けて雷サージを大地に逃がし、内部機器を保護することが行われている。しかし避雷器を設けても避雷器自体が雷サージによって焼損することもあり、パワーコンディショナを雷撃から完全に保護できないのが実情である。
【0003】
そこで特許文献1には、太陽光パネルが設置された住宅の屋根に雷光及び雷鳴のセンサを取付けて雷雲の位置を特定し、雷雲が所定距離以内に接近したときに開閉器を開いてパワーコンディショナを解列し、直撃雷から保護することが提案されている。解列により送・配電系統からパワーコンディショナは切り離されるので、直撃雷による雷撃を避けることができる。
【0004】
しかし落雷事故は直撃雷のみならず誘導雷によっても発生する。誘導雷は直撃雷とは異なり、雷雲が数km以上離れた位置にあっても送・配系統を通じて伝播する。従って特許文献1に記載のような雷雲が所定距離以内に接近したときに開閉器を開く方法を採用しても、遠方の雷雲に起因する誘導雷による損害を受ける可能性がある。
【0005】
また、同一地域に多数の太陽光発電システムが設置されている場合には、各太陽光発電システムは発電された電力を同一の配電系統に逆潮流させている。このため、雷雲が接近したと判断して各太陽光発電システムが一斉に解列されると、その系統の電圧が一時的に大きく変動するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−101557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の主な目的は、誘導雷からパワーコンディショナを保護することができるパワーコンディショナの雷保護システムを提供することである。また本発明の他の目的は、雷雲接近時における系統電圧の変動を抑制することができるパワーコンディショナの雷保護システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、太陽光パネルにより発電された電力を系統に逆潮流させるためのパワーコンディショナと、このパワーコンディショナが接続されるブレーカを備えた配電盤と、
このパワーコンディショナの負荷側に設けられ、系統から配電盤に侵入した雷電流を地絡させる避雷器と、避雷器の動作を検出する検出ユニットと、検出された避雷器の動作に基づいて前記ブレーカに遮断信号を送
りパワーコンディショナを系統から遮断する制御装置とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載の雷保護システムを複数システム連携させ、ネットワークを介してサーバに接続したパワーコンディショナの雷保護システムであって、各雷保護システムは、検出された避雷器の動作を雷情報としてサーバに通信する機能と、雷情報に場所情報を付加する機能とを備え、サーバは、通信された場所情報と雷情報との記憶手段と、この記憶手段に記憶された情報に基づいて雷発生地域を演算する特定手段と、特定された雷発生地域の制御装置に対して警報情報を出力する警報手段とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、サーバの警報手段は、雷発生地域を複数に分割したうえ
系統が電圧回復するのに要する時間差を設けて警報情報を出力し、各雷保護システムの制御装置は、警報情報に基づきパワーコンディショナが接続されるブレーカに遮断信号を送ることを特徴とするものである。
更に請求項4の発明は、雷発生地域の発電量に応じて分割数を定めることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパワーコンディショナの雷保護システムによれば、数km以上の遠方から
系統を通じて伝播する誘導雷を検出した場合にも、その検出状況に応じて制御装置がブレーカに遮断信号を送り、パワーコンディショナを
系統から解列することができる。このように本発明のシステムは雷雲が接近する前にパワーコンディショナを解列することができるので、誘導雷からパワーコンディショナを保護することができる。
【0012】
また請求項2の発明のように複数システムを連携させ、サーバが雷発生地域の制御装置に対して警報情報を出力するようにしておけば、より確実にパワーコンディショナを保護することができる。しかも請求項3の発明のように、雷発生地域を複数に分割したうえ
系統が電圧回復するのに要する時間差を設けて警報情報を出力するようにしておけば、同一の配電系統に接続された太陽光発電システムの解列のタイミングをずらすことができ、解列時における系統電圧の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】請求項1の発明の実施形態を示す説明図である。
【
図2】請求項2の発明の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は請求項1の発明の実施形態を示す説明図であり、1は太陽光発電システムの太陽光パネル、2は各太陽光パネル1で発電された電力を集める接続箱、3は発電された電力を系統に逆潮流させるためのパワーコンディショナである。
【0015】
4は太陽光発電システムが設置された家屋の配電盤であり、主幹ブレーカ5の二次側に接続された母線バー6に、多数の分岐ブレーカ7が接続されている。パワーコンディショナ3はパワコン用のブレーカ8を介して系統に接続されており、このブレーカ8を遮断することによりパワーコンディショナ3を系統から解列できるようになっている。
【0016】
この
パワーコンディショナ3の負荷側の配電盤4には、系統から母線バー6に雷サージが侵入したときに雷サージを地絡させる避雷器9が組み込まれている。避雷器9としては、商用電圧に対しては絶縁体であるが高電圧に対しては導体として機能する公知の避雷器を用いることができる。避雷器9の地絡線10にはCT等の検出ユニット11が取付けられている。この検出ユニット11は避雷器9の動作を検出し、避雷器9が動作して地絡電流が検出されたときには、制御装置12は雷情報(誘導雷の発生)として判定する。この制御装置12はEMS(エネルギマネジメントシステム)13に接続されている。本実施形態では、避雷器9、検出ユニット11、制御装置12は全て配電盤4の内部に設けられているが、配電盤の外部に設けても差し支えない。
【0017】
前記したように雷雲が遠方にあるときにも系統を通じて誘導雷が伝播するが、伝播した誘導雷は検出ユニット11により検出される。制御装置12は所定時間内に所定回数の雷情報を判定したとき、例えば10分間に3回以上の雷情報を判定したとき、雷雲が接近したものと判断して前記のブレーカ8に遮断信号を送り、ブレーカ8を遮断する。好ましくはブレーカ8を外部信号引外し機構を備えたブレーカとしておき、遮断信号としてパルス信号を用いることができる。これによってパワーコンディショナ3を系統から解列することができ、誘導雷からパワーコンディショナ3を保護することができる。なお、パワーコンディショナ3とともに雷サージに弱いコンピュータ等の特定機器も外部信号引外し機構を備えたブレーカを制御することによって、同時に系統から解列させるようにしてもよい。
【0018】
制御装置12は所定時間以上、例えば30分以上にわたり避雷器9の動作がなければ雷の影響はなくなったものと判断する。ブレーカ8が自動投入機構を備えておらず手動で再投入しなければならない場合には、EMS13にブレーカ8の再投入が必要であるとの表示をさせる。しかしブレーカ8として自動投入機構を備えたブレーカを用いた場合には、制御装置12からの投入信号によって再投入を行わせることができる。
【0019】
上記した
図1の実施形態はブレーカ8の解列を分電盤に内蔵した制御装置12で単独制御する雷保護システムであるが、
図2に示す第2の実施形態では、
図1に示した雷保護システムが複数連携されている。各雷保護システムは、検出された避雷器9の動作を雷情報としてサーバに通信する機能と、雷情報に場所情報を付加する機能とを備える。具体的には、各雷保護システムのEMS13がネットワーク14を介してサーバ15と接続されており、複数のEMS13からの雷情報はサーバ15に集められる。また各EMS13の場所情報はIPアドレスとともに予めサーバ15に登録されている。
【0020】
サーバ1には、通信されてきた場所情報と雷情報とを関連付けて記憶する記憶手段17が設けられており、各雷保護システムから送られてきた雷情報を蓄積する。
【0021】
サーバ15の特定手段18は、記憶手段17に記憶された雷情報の発生位置、発生時刻、発生回数等に基づいて、誘導雷の影響を受けている雷発生地域を特定する。例えば、10分間に誘導雷が3回以上検出された場所を雷発生地域とする。雷発生地域は雷情報が出力された位置と、雷情報が出力されなかった位置に基づいて特定される。例えば
図3において、●印が雷情報が出力された位置、×印が雷情報が出力されなかった位置であるとすると、その中間に引いた直線ABCDで囲まれる地域を雷発生地域とする。なお、雷情報が出力された位置から所定距離だけ外側に引いた直線によって雷発生地域を特定することもできる。
【0022】
サーバ15の警報手段19は、特定された雷発生地域のEMS13に警報情報を出力する。EMS13は誘導雷が発生したことを画面に表示する。警報情報はEMS13を介して雷保護システムの制御装置12に送られ、制御装置12は遮断信号を発してブレーカ8を遮断し、パワーコンディショナ3を系統から解列する。
【0023】
このようなパワーコンディショナ3の解列を雷発生地域内の全部の太陽光発電システムで同時に行った場合には、系統への電力供給量が急激に減少するため、系統電圧の低下を招くことがある。このため
図3に示すように雷発生地域を複数に分割し、時間差を持たせて警報情報を出力し、解列のタイミングをずらすことが好ましい。この時間差は系統が電圧回復するのに要する時間、例えば15秒程度とすることができる。
【0024】
図3では4つの地域に分割したが、分割数は対象地域の発電量によって定めることができる。各太陽光発電システムの発電量はEMS13からサーバ15に随時送信されているため、サーバ15の特定手段18は分割数を適宜決定することができる。具体的には発電量に閾値を設定しておき、発電量の多い場合(例えば閾値の200%以上)には8分割、発電量の少ない場合(例えば閾値の150%以下)は4分割する等の決定が可能である。
【0025】
このようにしてパワーコンディショナ3を解列すれば、雷雲が更に接近して直撃雷を受けた場合にもパワーコンディショナ3を雷害から保護することができる。また誘導雷の初期段階において解列させることによって、誘導雷からの保護も可能である。
【0026】
サーバ15の特定手段18は、雷発生地域において所定時間(例えば30分)以上にわたり雷情報を受信しなければ、雷雲が去ったものと判断して雷発生地域の指定を解除する。この解除も同時に行なうと系統の電圧上昇を引き起こすので、上記と同様に分割して順次行なうことが好ましい。解除情報はサーバ15から各EMS13に対して行われ、EMS13はその旨を画面に表示し、ブレーカ8の手動投入を行わせる。ブレーカ8が自動投入機構を備えている場合には、EMS13からに指示により自動的に再投入を行ない、平常状態に復帰させる。
【0027】
以上に説明したように、本発明によれば、直撃雷のみならず誘導雷からもパワーコンディショナ3を保護することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 太陽光パネル
2 接続箱
3 パワーコンディショナ
4 配電盤
5 主幹ブレーカ
6 母線バー
7 分岐ブレーカ
8 パワコン用のブレーカ
9 避雷器
10 地絡線
11 検出ユニット
12 制御装置
13 EMS(エネルギマネジメントシステム)
14 ネットワーク
15 サーバ
16 通信ユニット
17 記憶手段
18 特定手段
19 警報手段