(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、各図面の寸法比率は、必ずしも実際の寸法比率とは一致していない。
【0021】
まず、一実施形態のステージを備える基板処理装置について説明する。
図1は、基板処理装置の一例であるプラズマ処理装置50を概略的に示す断面図である。プラズマ処理装置50は、容量結合型平行平板プラズマエッチング装置であり、略円筒状の処理容器52を備えている。処理容器52は、例えば、その表面に陽極酸化処理がされたアルミニウムから構成されている。この処理容器52は接地されている。
【0022】
処理容器52の底部上には、ステージSTが配置されている。
図1に示すように、ステージSTは、プレート2、ケース4、熱交換器6及び流路部8を備えている。
図2を参照して、ステージSTについて詳細に説明する。
図2は、ステージSTの分解斜視図である。
図2に示すステージSTは、処理容器52内で基板を支持するための載置台として利用される。
【0023】
プレート2は、円盤形状を有しており、例えばアルミニウムといった金属によって構成されている。プレート2は、表面2aと裏面2bを有している。プレート2の表面2aの上には、基板Wが載置され得る。
【0024】
ケース4は、例えばステンレスといった金属によって構成されており、側壁4aと底壁4bとを有している。側壁4aは、円筒形状を有しており、その内部に収容空間ASを画成している。側壁4aは、円筒軸線方向に沿って延びており、プレート2を下方から支持する。底壁4bは、側壁4aの下端部に接続されている。側壁4aの上端面4cには、該上端面4cに沿って環状に延在するOリング10が設けられ得る。この上端面4cには、例えばねじ止めによってOリング10を介してプレート2が気密に固定される。これにより、収容空間ASがステージよって上方から画成される。側壁4aには、供給管12及び回収管14が設けられている。供給管12は、側壁4aの径方向に沿って延びており、第1の開口16を介して収容空間ASに連通している。回収管14は、側壁4aの径方向に沿って延びており、第2の開口18を介して収容空間ASに連通している。
【0025】
熱交換器6及び流路部8は、ケース4の収容空間AS内に収容される。
図3及び
図4を参照して、熱交換器6について詳細に説明する。
図3(a)は熱交換器6の上方からの斜視図であり、
図3(b)は下方からの斜視図である。
図3に示すように、熱交換器6は、隔壁20、複数の第1の管22及び複数の第2の管24を含んでいる。熱交換器6は、プレート2の裏面2bの複数の領域であり、2次元的に分布し、且つ互いに内包しない該複数の領域に対して個別に熱交換媒体を供給して、供給した熱交換媒体を回収するように構成されている。
【0026】
隔壁20は、全体として略円柱形状をなしており、略円柱柱状のセル部Cを複数有している。これらのセル部Cは互いに結合されている。複数のセル部Cは、円形の断面形状を有する複数の空間Sをそれぞれ画成している。即ち、隔壁20は、プレート2の下方において2次元的に分布し、且つ互いに内包しない複数の空間Sを形成する。複数のセル部Cのうち1つのセル部Cを
図4に示す。
図4はセル部Cの上方からの斜視図である。
【0027】
複数の第1の管22はそれぞれ、平面視において対応の空間Sの略中心位置を通って延在している。これら複数の第1の管22は、プレート2の裏面2b(
図2参照)に向けて互いに略平行に延びている。複数の第1の管22の各々は、その周囲の空間を画成する隔壁20によって囲まれている。また、複数の第1の管22の各々は、第1の開口端22a及び第2の開口端22bを有している。第1の開口端22aは、裏面2bに対面するように配置されている。第2の開口端22bは、第1の開口端22aの反対側に位置しており、空間Sの下方に位置している。複数の第1の管22は、後述する熱交換媒体供給装置42から熱交換媒体を受けて第1の開口端22aから吐出する管として機能する。
【0028】
複数の第2の管24は、複数の空間Sにそれぞれ連通するよう隔壁20に接続されている。複数の第2の管24の各々の下端部には、開口24aが設けられている。複数の第2の管24は、複数の第1の管22の第1の開口端22aから吐出され、当該第1の管22を囲む空間S内に回収された熱交換媒体を外部に排出される管として機能する。
【0029】
また、複数の第1の管22の周囲を囲む空間Sは、複数の第1の開口端22aから吐出された熱交換媒体をそれぞれ対応する第2の管24に導くための複数の流路FCを構成している。この熱交換器6においては、第1の管22、当該第1の管を囲む空間Sを画成する隔壁20、及び、当該空間Sに連通する第2の管24は、熱交換部を構成している。よって、熱交換器6は、互いに内包しないように二次元的に並べられた複数の熱交換部を有している。このような熱交換器6は、樹脂を主成分として構成され得る。一実施形態では、熱交換器6は、3Dプリンタを用いて形成される。
【0030】
また、複数の空間Sの内部には、複数の調整機構100がそれぞれ設けられている。これら調整機構100の各々は、流路FCのコンダクタンスが当該流路FC内を流れる熱交換媒体の温度に応じたコンダクタンスになるように、熱交換媒体の温度によって変形する。調整機構100の詳細については、後述する。
【0031】
次に、流路部8について説明する。
図5は、流路部8の斜視図である。流路部8は、熱交換器6の下方に配置されており、熱交換器6に熱交換媒体を供給するための流路、及び、熱交換器6から熱交換媒体を回収するための流路を提供する。
【0032】
図5に示すように、流路部8は、略円柱形のブロック体であり、上面8a及び側面8bを有している。また、流路部8は、側面8bから突出する第1の集合部29及び第2の集合部30を有している。この流路部8には、その内部を貫通する複数の第1の流路26、及び複数の第2の流路28が形成されている。即ち、流路部8には、その上面8aから第1の集合部29又は第2の集合部30に向けて当該流路部8の内部を貫通する小径の空洞が複数形成されており、これらの空洞が複数の第1の流路26及び複数の第2の流路28を構成している。複数の第1の流路26は、一端部26a及び他端部26bをそれぞれ有している。これらの一端部26aは、流路部8の上面8aにおいて熱交換器6の複数の第1の管22にそれぞれ対応する位置に形成されており、複数の第1の管22の第2の開口端22bにそれぞれ接続される。複数の第1の流路26の他端部26bは、第1の集合部29に局所的に集められている。第1の集合部29は、ケース4の第1の開口16に対応する位置に形成されており、ケース4内に収容された状態において第1の開口16に対面する。
【0033】
複数の第2の流路28は、一端部28a及び他端部28bをそれぞれ有している。複数の第2の流路28の一端部28aは、流路部8の上面8aにおいて熱交換器6の複数の第2の管24の開口24aにそれぞれ対応する位置に形成されており、複数の第2の管24の開口24aにそれぞれ接続される。複数の第2の流路28の他端部28bは、第2の集合部30に局所的に集められている。第2の集合部30は、ケース4の第2の開口18に対応する位置に形成されており、ケース4内に収容された状態において第2の開口18に対面する。なお、一実施形態では、流路部8は、樹脂を主成分として構成され得る。
【0034】
図1の説明に戻り、プラズマ処理装置50について説明する。ステージSTのプレート2の表面2aには、静電チャック54が設けられている。静電チャック54は、導電膜である電極56を一対の絶縁層又は絶縁シート間に配置した構造を有している。電極56には、直流電源58が電気的に接続されている。この静電チャック54は、直流電源58からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力により基板Wを静電吸着保持することができる。
【0035】
ケース4の供給管12及び回収管14には(
図2参照)、第1の配管40a及び第2の配管40bの一端がそれぞれ接続されている。第1の配管40a及び第2の配管40bの他端は、処理容器52の外部に設けられた熱交換媒体供給装置42の供給口及び回収口にそれぞれ接続されている。熱交換媒体供給装置42は、第2の配管40bから回収口を介して回収した熱交換媒体の温度をステージSTの目標温度に調整し、ステージSTの目標温度に調整された熱交換媒体を供給口を介して第1の配管40aに供給する。例えば、ステージSTの目標温度が50℃である場合には、第1の配管40a及び第2の配管40bを介して50℃に調整された熱交換媒体がステージSTに循環供給される。なお、熱交換媒体とは、プレート2との熱の交換を目的としてステージST内を流通する流体であり、プレート2から熱を吸収する冷媒、及び、プレート2に熱を与える熱媒を含む概念である。熱交換媒体としては、例えば水、フッ素系液体等が用いられる。
【0036】
熱交換媒体供給装置42から供給された熱交換媒体は、第1の配管40a、供給管12、複数の第1の流路26を経て複数の第1の管22の第1の開口端22aからプレート2の裏面2bに向けて吐出される。そして、複数の第2の管24において回収された熱交換媒体は、複数の第2の流路28、回収管14、第2の配管40bを経て熱交換媒体供給装置42に戻される。このように熱交換媒体供給装置42とステージSTとの間で熱交換媒体が循環することにより、静電チャック54上に載置された基板Wの温度が目標温度になるように制御される。なお、熱交換媒体供給装置42から供給される熱交換媒体の温度は、後述の制御部Cntによって制御され得る。
【0037】
また、処理容器52内には、上部電極60が設けられている。この上部電極60は、下部電極として機能するプレート2の上方において、当該プレート2と対向配置されており、プレート2と上部電極60とは、互いに略平行に設けられている。この上部電極60は、下部電極と共にプラズマを発生する手段として機能する。これら上部電極60とプレート2との間には、例えば基板Wにプラズマエッチングを行うための処理空間PSが画成されている。
【0038】
上部電極60は、絶縁性遮蔽部材62を介して、処理容器52の上部に支持されている。上部電極60は、電極板64及び電極支持体66を含み得る。電極板64は、処理空間PSに面しており、複数のガス吐出孔64aを画成している。この電極板64は、ジュール熱の少ない低抵抗の導電体又は半導体から構成され得る。電極板64は、接地されている。
【0039】
電極支持体66は、電極板64を着脱自在に支持するものであり、例えばアルミニウムといった導電性材料から構成され得る。この電極支持体66は、水冷構造を有し得る。電極支持体66の内部には、ガス拡散室66aが設けられている。このガス拡散室66aからは、ガス吐出孔64aに連通する複数のガス通流孔66bが下方に延びている。また、電極支持体66にはガス拡散室66aに処理ガスを導くガス導入口66cが形成されており、このガス導入口66cには、ガス供給管68が接続されている。
【0040】
ガス供給管68には、バルブ72及びマスフローコントローラ(MFC)74を介して、ガス源70が接続されている。なお、MFCの代わりにFCSが設けられていてもよい。ガス源70は、処理ガスのガス源である。このガス源70からの処理ガスは、ガス供給管68からガス拡散室66aに至り、ガス通流孔66b及びガス吐出孔64aを介して処理空間PSに吐出される。ガス供給管68及びガス源70は、ガスを供給する手段として機能する。
【0041】
また、プラズマ処理装置50は、接地導体52aを更に備え得る。接地導体52aは、略円筒状の接地導体であり、処理容器52の側壁から上部電極60の高さ位置よりも上方に延びるように設けられている。
【0042】
また、プラズマ処理装置50では、処理容器52の内壁に沿ってデポシールド76が着脱自在に設けられている。また、デポシールド76は、ステージSTの外周にも設けられている。デポシールド76は、処理容器52にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するものであり、アルミニウム材にY
2O
3等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。
【0043】
処理容器52の底部側においては、ステージSTと処理容器52の内壁との間に排気プレート78が設けられている。排気プレート78は、例えば、アルミニウム材にY
2O
3等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。この排気プレート78の下方において処理容器52には、排気口52eが設けられている。排気口52eには、排気管53を介して排気装置80が接続されている。排気装置80は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、処理容器52内を所望の真空度まで減圧することができる。また、処理容器52の側壁には基板Wの搬入出口52gが設けられており、この搬入出口52gはゲートバルブ81により開閉可能となっている。
【0044】
一実施形態においては、プラズマ処理装置50は、高周波電源HFG、高周波電源LFG、整合器MU1、及び、整合器MU2を更に備えている。高周波電源HFGは、プラズマ生成用の高周波電力を発生するものであり、27MHz以上の周波数、例えば、40MHzの高周波電力を整合器MU1を介して、プレート2に供給する。整合器MU1は、高周波電源HFGの内部(又は出力)インピーダンスを負荷インピーダンスに整合させる回路を有している。また、高周波電源LFGは、イオン引き込み用の高周波バイアス電力を発生するものであり、13.56MHz以下の周波数、例えば、3MHzの高周波バイアス電力を、整合器MU2を介してプレート2に供給する。整合器MU2は、高周波電源LFGの内部(又は出力)インピーダンスを負荷インピーダンスに整合させる回路を有している。なお、下部電極はプレート2と別体として設けられても良い。
【0045】
また、一実施形態においては、プラズマ処理装置50は、制御部Cntを更に備え得る。この制御部Cntは、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、プラズマ処理装置50の各部、例えば電源系やガス供給系、駆動系等を制御する。この制御部Cntでは、入力装置を用いて、オペレータがプラズマ処理装置50を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができ、また、表示装置により、プラズマ処理装置50の稼働状況を可視化して表示すことができる。さらに、制御部Cntの記憶部には、プラズマ処理装置50で実行される各種処理をプロセッサにより制御するための制御プログラムや、処理条件に応じてプラズマ処理装置50の各構成部に処理を実行させるためのプログラム、即ち、処理レシピが格納される。
【0046】
次に、一実施形態の調整機構について説明する。
図6(a)は、一実施形態の調整機構100の斜視図である。なお、
図6(a)では、熱交換器6の隔壁20の一部を破断して示している。
図6(b)は、
図6(a)を上方から見た平面図である。
【0047】
調整機構100は、
図6(a)に示すように、隔壁20と第1の管22との間に形成された流路FC内に配置されている。この調整機構100は、流路FC内を流れる熱交換媒体の温度に応じて変形することで流路FCのコンダクタンスを熱交換媒体の温度に応じたコンダクタンスに調整する。より詳細には、調整機構100は、流路FC内を流れる熱交換媒体の温度に応じて、流路FCのコンダクタンスを互い異なるものとする定常モード及び第1の補正モードの何れかで動作する。
【0048】
まず、調整機構100の構成について説明する。調整機構100は、第1の環状板102、第2の環状板104、及び変形部106を有している。第1の環状板102及び第2の環状板104は、中心孔が形成された環状の板材であり、当該中心孔に第1の管22が挿入された状態で第1の管22と隔壁20との間に設けられている。第1の環状板102及び第2の環状板104は、樹脂、金属等の任意の材料から構成され得る。
【0049】
第1の環状板102は、第1の管22の中心軸線Zを中心に回転可能なように第1の管22と隔壁20との間に配置されている。第1の環状板102の中心軸線Zから所定の距離dだけ離間した径方向の位置には、板厚方向に貫通する第1の貫通孔102aが形成されている。この第1の貫通孔102aは、直径Dの円形を呈している。
【0050】
第1の環状板102の下方には、第2の環状板104が設けられている。第2の環状板104は、第1の環状板102と同径の環状の板材であり、第1の環状板102と同軸に固定配置されている。第2の環状板104の中心軸線Zから所定の距離dだけ離間した径方向の位置には、板厚方向に貫通する第2の貫通孔104aが形成されている。即ち、第2の貫通孔104aは、第1の環状板102が中心軸線Zを中心に回転したときに、中心軸線Z方向から見て第1の貫通孔102aが通過する位置に形成されている。この第2の貫通孔104aは、第1の貫通孔102aと同径、即ち直径Dの円形を呈している。
【0051】
これら第1の環状板102及び第2の環状板104は、隙間CLを介して互いに対面している。第1の環状板102と第2の環状板104との間の距離、即ち、隙間CLの幅wは、第1の貫通孔102a及び第2の貫通孔104aの直径Dよりも小さくなっている。
【0052】
第1の環状板102の上方には、変形部106が設けられている。この変形部106は、温度によって変形して、中心軸線Zに対して周方向における第1の貫通孔102aと第2の貫通孔104aとの相対的距離が変化するように、第1の環状板102を中心軸線Zを中心に回転させる機能を有している。
【0053】
変形部106は、相対的に熱膨張率の高い湾曲板材と相対的に熱膨張率の低い湾曲板材とが貼り合わされて形成された帯状体であり、相対的に熱膨張率の高い湾曲板材が外側に面するように第1の管22の周囲に螺旋状に巻かれている。即ち、変形部106は熱膨張率の異なる2枚の板材を貼り合わせたバイメタル構造体から構成されている。
【0054】
変形部106は、一端及び他端を有している。変形部106の一端は、第1の管22の外側面に固定されている。変形部106の他端は、連結部106Cを介して第1の環状板102に接続されている。
【0055】
変形部106は、温度が高くなると当該変形部106の外側の湾曲板材が内側の湾曲板材に比べて膨張して、曲率が大きくなるように変形する。即ち、変形部106の温度が高くなると、当該変形部106は中心軸線Z方向から見て内側に縮むように変形する。反対に、変形部106は、温度が低くなると変形部106の外側の湾曲板材が内側の湾曲板材と比べて収縮して、曲率が小さくなるように変形する。即ち、変形部106の温度が低くなると、変形部106は中心軸線Zから見て外側に広がるように変形する。
【0056】
次に、調整機構の定常モードについて説明する。定常モードは、ステージSTの温度を維持するための動作モードである。調整機構100は、変形部106が定常状態であるときに定常モードとして動作する。変形部106は、当該変形部106の温度がステージSTの目標温度(基準温度)と一致しているときに定常状態となる。この定常モードでは、第1の貫通孔102aが、中心軸線Z方向から見て第2の貫通孔104aと重ならない位置に配置される。
【0057】
調整機構100が定常モードで動作しているときには、第1の管22の第1の開口端22aから吐出されて流路FCを流れる熱交換媒体は、第1の貫通孔102a、隙間CL、第2の貫通孔104aを通って第2の管24に回収される。第1の環状板102と第2の環状板104との隙間CLの幅wは、第1の貫通孔102a及び第2の貫通孔104aの直径Dよりも小さいので、第1の貫通孔102aが、中心軸線Z方向から見て第2の貫通孔104aと重ならない位置に配置されているときには熱交換媒体の流路の断面積が小さなものとなる。したがって、調整機構100が定常モードで動作しているときには、調整機構100が後述の第1の補正モードに設定されているときよりも熱交換媒体の流路FCのコンダクタンスが小さくなる。
【0058】
次に、
図7(a)、(b)を参照して調整機構100の第1の補正モードについて説明する。
図7(a)は第1の補正モードで動作する調整機構100の斜視図であり、
図7(b)は、
図7(a)を上方から見た平面図である。第1の補正モードは、ステージSTの温度を当該ステージSTの目標温度よりも低い第1の温度から当該目標温度に戻すための動作モードである。調整機構100は、変形部106の温度がステージSTの目標温度よりも低い第1の温度になったときに第1の動作モードで動作する。
図7(a)、(b)に示すように、第1の補正モードでは、第1の貫通孔102aが、中心軸線Z方向から見て第2の貫通孔104aと重なる位置に配置される。
【0059】
変形部106の温度がステージSTの目標温度よりも低い第1の温度になると、変形部106は中心軸線Zを中心として外側に広がるように変形する。このような変形により、変形部106の端部に接続される連結部106Cの位置は、第1の環状板102の周方向において変形部106の巻き方向と反対方向(即ち、
図7(b)の時計回り方向)に移動する。これに伴い、第1の環状板102が変形部106の巻き方向と反対方向に回転し、第1の貫通孔102aが第2の貫通孔104aに対して近づく方向に移動する。その結果、中心軸線Z方向から見て第1の貫通孔102aが第2の貫通孔104aと重なる位置に配置される。
【0060】
調整機構100が第1の補正モードで動作しているときには、第1の管22の第1の開口端22aから吐出されて流路FCを流れる熱交換媒体は、第1の環状板102と第2の環状板104との間の隙間CLを通過することなく、第1の貫通孔102a及び第2の貫通孔104aを通って第2の管24に回収される。したがって、第1の貫通孔102aが第2の貫通孔104a上に配置されているときには、熱交換媒体の流路の断面積が大きくなる。よって、調整機構100が第1の補正モードで動作しているときには、調整機構100が定常モードで動作しているときよりも熱交換媒体の流路FCのコンダクタンスが大きくなる。
【0061】
次に、ステージST内部の熱交換媒体の流れについて説明する。
図8は、調整機構100が定常モードで動作しているときの熱交換器6内の熱交換媒体の流れを模式的に示す断面図である。
【0062】
熱交換媒体供給装置42によって第1の開口16からステージST内に供給された熱交換媒体は、流路部8の複数の第1の流路26を通過し、第2の開口端22bを介して複数の第1の管22にそれぞれ流入する。第2の開口端22bから流入した熱交換媒体は、複数の第1の管22に沿って上方に移動し、第1の開口端22aからプレート2の裏面2bに向けて放出される。第1の開口端22aから放出された熱交換媒体は、第1の開口端22aに対面するプレート2の裏面2bに接触することでプレート2との間で熱交換を行う。
【0063】
プレート2と熱交換を行った熱交換媒体は、流路FCを通って下方に移動する。そして、流路FCを流れる熱交換媒体は、第1の貫通孔102a、第1の環状板102と第2の環状板104との間の隙間CL、第2の貫通孔104aを通って第2の管24に流入する。第2の管24に流入した熱交換媒体は、第2の管24の開口24aから空間Sの外部に排出される。空間Sから排出された熱交換媒体は、開口24aに接続された複数の第2の流路28、第2の開口18を介して熱交換媒体供給装置42に戻される。
【0064】
次に、
図9を参照してステージSTの温度が外乱によって低下したときのステージST内部の熱交換媒体の流れについて説明する。
図9は、調整機構100が第1の補正モードで動作しているときの熱交換器6内の熱交換媒体の流れを模式的に示す断面図である。
【0065】
図9に示すように、ステージST上に当該ステージSTの目標温度よりも低温の基板Wが載置され、ステージSTの温度が低下したケースについて説明する。ステージST上に低温の基板Wが載置されると、プレート2の温度が低下する。これに伴い、プレート2に向けて吐出された熱交換媒体はプレート2によって熱が奪われることとなり、流路FCを流れる熱交換媒体の温度がステージSTの目標温度よりも低くなる。これにより、流路FC内に配置された変形部106の温度が熱交換媒体によって冷却され、変形部106が定常状態と比べて中心軸線Zから見て外側に広がるように変形する。そして、変形部106の温度が第1の温度に達すると、第1の貫通孔102aが中心軸線Z方向から見て第2の貫通孔104aと重なる位置に配置される。即ち、調整機構100が第1の補正モードに設定される。
【0066】
図9に示すように、調整機構100が第1の補正モードで動作している場合には、流路FCを流れる熱交換媒体が、第1の環状板102と第2の環状板104との間の隙間CLを通過することなく、第1の貫通孔102a及び第2の貫通孔104aを通って第2の管24まで流れることとなる。したがって、流路FCのコンダクタンスが高くなり、流路FCを流れる熱交換媒体の流量が増加する。流路FCを流れる熱交換媒体の流量が増加すると、熱交換媒体とステージSTとの間の熱交換量が増加する。ステージSTの目標温度に設定された熱交換媒体は、第1の温度であるステージSTに熱を与えることになるが、流路FC内の熱交換媒体の流量が増加されると熱交換媒体からステージSTに与えられる熱量が増加することになる。即ち、調整機構100が第1の補正モードで動作することにより、ステージSTの温度を目標温度に戻すような加熱が行われることとなる。この加熱によって、ステージSTの温度が目標温度に戻されると、変形部106が定常状態に戻り、再び調整機構100が定常モードで動作することになる。
【0067】
以上説明したように、このように、ステージSTでは、ステージSTの温度が外乱によって低下したときには、ステージSTの温度を目標温度に戻すように調整機構100が熱交換媒体の流量を調整する。この調整は、熱交換器6の流路FCの内部で行われることになるので、外乱によってステージSTの温度が低下した場合であっても、短時間でステージSTの温度を目標温度に補正することが可能となる。さらに、上述のステージSTでは、調整機構100が流路FCの内部を流れる熱交換媒体の温度に応じて変形することによって流路FCのコンダクタンスが調整されるので、外部からの制御によることなく、自律的にステージSTの温度を制御することが可能となる。
【0068】
次に、別の実施形態に係る調整機構について説明する。
図10(a)は、別の実施形態に係る調整機構110を示す斜視図である。
図10(b)は、
図10(a)の上方からの平面図である。なお、以下では、上述の調整機構100と同一の説明は省略し、異なる点について主に説明する。
【0069】
まず調整機構110の構成について説明する。調整機構110は、第2の環状板104に代えて、第2の環状板114を備えている。第2の環状板114の中心軸線Zから所定の距離dだけ離間した径方向の位置には、第2の貫通孔114a及び第3の貫通孔114bが形成されている。即ち、第2の貫通孔114a及び第3の貫通孔114bは、第1の環状板102が中心軸線Zを中心に回転したときに、中心軸線Zから見て第1の貫通孔102aが通過する位置に形成されている。第2の貫通孔114a及び第3の貫通孔114bは、第1の貫通孔102aと同径、即ち直径Dの円形を呈している。
【0070】
調整機構110は、流路FC内を流れる熱交換媒体の温度に応じて、流路FCのコンダクタンスを互いに異なるものとする定常モード、第1の補正モード、及び第2の補正モードの何れかの動作モードで動作する。調整機構110は、変形部106が定常状態であるときに定常モードとして動作する。また、調整機構110は、変形部106がステージSTの目標温度よりも低い第1の温度になったときに第1の補正モードで動作し、変形部106がステージSTの目標温度よりも高い第2の温度になったときに第2の補正モードで動作する。
【0071】
まず定常モードで動作する調整機構110について説明する。定常モードは、ステージSTの温度を維持するための動作モードである。
図10(a)、(b)に示すように、調整機構110が定常モードで動作しているときには、第1の貫通孔102aが、中心軸線Z方向から見て第2の貫通孔114a及び第3の貫通孔114bとの間の位置に配置される。言い換えれば、第2の貫通孔114aは、目標温度(基準温度)において第1の貫通孔102aが配置される周方向の位置に対して当該周方向において一方側の位置に配置されており、第3の貫通孔114bは、目標温度において第1の貫通孔102aが配置される周方向の位置に対して周方向において他方側の位置に配置されている。
【0072】
第1の貫通孔102aが、中心軸線Z方向から見て第2の貫通孔104aと重ならない位置に配置されているときには、第1の管22の第1の開口端22aから吐出されて流路FCを流れる熱交換媒体は、第1の貫通孔102a、隙間CLを経て、第2の貫通孔114a又は第3の貫通孔114bを通って第2の管24に回収される。ここで、第1の環状板102と第2の環状板104との隙間CLの幅wは、第1の貫通孔102a及び第2の貫通孔104aの直径Dよりも小さいので、第1の貫通孔102aが、中心軸線Z方向から見て第2の貫通孔104aと重ならない位置に配置されているときには熱交換媒体の流路の断面積が小さなものとなる。したがって、調整機構110が定常モードで動作しているときには、調整機構110が後述の第1又は第2の補正モードに設定されているときよりも熱交換媒体の流路FCのコンダクタンスが小さくなる。
【0073】
次に、
図11(a)、(b)を参照して、調整機構110の第1の補正モードについて説明する。
図11(a)は第1の補正モードで動作する調整機構100の斜視図であり、
図11(b)は、
図11(a)を上方から見た平面図である。第1の補正モードは、ステージSTの温度を当該ステージSTの目標温度よりも低い第1の温度から当該目標温度に戻すための動作モードである。第1の補正モードでは、第1の貫通孔102aが、中心軸線Z方向から見て第2の貫通孔114aと重なる位置に配置される。
【0074】
例えば、ステージST上に低温の基板Wが載置されることによって熱交換媒体の温度がステージSTの目標温度よりも低い第1の温度になると、変形部106は中心軸線Zから見て外側に広がるように変形する。このような変形により、変形部106の端部に接続される連結部106Cの位置は、第1の環状板102の周方向において変形部106の巻き方向と反対方向(即ち、
図11(b)の時計回り方向)に移動する。これに伴い、第1の環状板102が変形部106の巻き方向と反対方向に回転し、第1の貫通孔102aが第2の貫通孔104aに対して近づく方向に移動する。その結果、中心軸線Z方向から見て第1の貫通孔102aが第2の貫通孔114aと重なる位置に配置される。
【0075】
調整機構110が第1の補正モードで動作しているときには、第1の管22の第1の開口端22aから吐出されて流路FCを流れる熱交換媒体は、第1の環状板102と第2の環状板104との間の隙間CLを通過することなく、第1の貫通孔102a及び第2の貫通孔114aを通って第2の管24に回収される。したがって、第1の貫通孔102aが第2の貫通孔114a上に配置されているときには熱交換媒体の流路の断面積が大きくなる。よって、調整機構110が第1の補正モードで動作しているときには、調整機構110が定常モードで動作しているときよりも、熱交換媒体の流路FCのコンダクタンスが大きくなる。
【0076】
このように熱交換媒体のコンダクタンスが大きくなると、流路FCを流れる熱交換媒体の流量が増加する。流路FCを流れる熱交換媒体の流量が増加すると、熱交換媒体とステージSTとの間の熱交換量が増加する。ステージSTの目標温度に設定された熱交換媒体は、第1の温度であるステージSTに熱を与えることになるが、流路FC内の熱交換媒体の流量が増加されると熱交換媒体からステージSTに与えられる熱量が増加することになる。即ち、調整機構110が第1の補正モードで動作した場合には、ステージSTの温度が目標温度に戻るようにステージSTが加熱されることとなる。この加熱によって、ステージSTの温度は目標温度に近づくように補正される。この温度補正によって、ステージSTの温度が目標温度に戻されると、変形部106が定常状態に戻り、再び調整機構110が再び定常モードで動作することになる。
【0077】
次に、
図12(a)、(b)を参照して調整機構110の第2の補正モードについて説明する。
図12(a)は第2の補正モードで動作する調整機構110の斜視図であり、
図12(b)は、
図12(a)を上方から見た平面図である。第2の補正モードは、ステージSTの温度を当該ステージSTの目標温度よりも高い第2の温度から当該目標温度に戻すための動作モードである。第2の補正モードでは、第1の貫通孔102aが、中心軸線Z方向から見て第3の貫通孔114bと重なる位置に配置される。
【0078】
例えば処理容器52内に生成されたガスのプラズマによって、ステージSTに熱量が加えられると流路FC内を流れる熱交換媒体の温度が上昇する。そして、熱交換媒体の温度がステージSTの目標温度よりも高い第2の温度になると、変形部106は中心軸線Zから見て内側に縮まるように変形する。このような変形により、変形部106の端部に接続される連結部106Cの位置は、第1の環状板102の周方向において変形部106の巻き方向(即ち、
図12(b)の反時計回り方向)に移動する。これに伴い、第1の環状板102が変形部106の巻き方向と同じ方向に回転し、第1の貫通孔102aが中心軸線Zを中心とした周方向において第3の貫通孔114bに対して近づく方向に移動する。その結果、第1の貫通孔102aが第3の貫通孔114b上に配置される。
【0079】
調整機構110が第2の補正モードで動作しているときには、第1の管22の第1の開口端22aから吐出されて流路FCを流れる熱交換媒体は、第1の環状板102と第2の環状板104との間の隙間CLを通過することなく、第1の貫通孔102a及び第3の貫通孔114bを通って第2の管24に回収される。したがって、第1の貫通孔102aが第3の貫通孔114b上に配置されているときには、熱交換媒体の流路の断面積が大きくなる。よって、調整機構110が第2の補正モードで動作しているときには、調整機構110が定常モードで動作しているときよりも熱交換媒体の流路FCのコンダクタンスが大きくなる。
【0080】
このように熱交換媒体のコンダクタンスが大きくなると、流路FCを流れる熱交換媒体の流量が増加する。流路FCを流れる熱交換媒体の流量が増加すると、熱交換媒体とステージSTとの間の熱交換量が増加する。ステージSTの目標温度に設定された熱交換媒体は、第2の温度であるステージSTから熱を奪うことになるが、流路FC内の熱交換媒体の流量が増加されると熱交換媒体がステージSTから奪う熱量が増加することになる。即ち、調整機構110が第2の補正モードで動作した場合には、ステージSTの温度を目標温度に戻すようにステージSTが冷却されることとなる。この冷却によって、ステージSTの温度は目標温度に近づくように補正される。この温度補正によって、ステージSTの温度が目標温度に戻されると、変形部106が定常状態に戻り、再び調整機構110が再び定常モードで動作する。
【0081】
以上のように、調整機構110を備えるステージSTにおいても、ステージの温度が外乱によって目標温度からずれた場合に、熱交換媒体の流量を増加させることによって短時間でステージSTの温度を目標温度に補正することが可能となる。さらに、調整機構110によれば、ステージSTの温度が目標温度よりも低い第1の温度になった場合、及び、ステージSTの温度が目標温度よりも高い第2の温度になった場合の双方でステージSTの温度を目標温度に補正することが可能である。
【0082】
次に、更に別の実施形態に係る調整機構について説明する。
図13は、更に別の実施形態に係る調整機構120を示す斜視図である。本実施形態では、
図13に示すように、第1の管22の外縁が矩形の断面形状を有し得る。さらに、隔壁20は、その内部に第1の管22との間に矩形の断面形状を有する空間を画成し得る。
【0083】
図13に示すように、調整機構120は複数の板状体124によって構成されている。
図13に示す実施形態では、第1の管22の4面の外側面に沿って4つの板状体124がそれぞれ設けられている。板状体124は、熱交換媒体の温度に応じて後述する他端部124bと第1の管22との距離が変化するように構成されている。
【0084】
これらの板状体124は、相対的に熱膨張率の高い板材と相対的に熱膨張率の低い板材とを貼り合わせた板状の部材であり、相対的に熱膨張率の高い板材が第1の管22の外側面に対面するように配置されている。即ち、板状体124は熱膨張率の異なる2枚の板材を貼り合わせたバイメタル構造体から構成されている。
【0085】
複数の板状体124の各々は、一端部124a及び他端部124bを有している。板状体124の一端部124aは、第1の管22の外側面の上部に固定されている。板状体124の他端部124bは、一端部124aの下方に位置している。この他端部124bは第1の管22の外側面に対して固定されずに遊離している。これらの板状体124は、その温度がステージSTの目標温度と一致しているときに定常状態となる。この定常状態では、複数の板状体124の各々は、
図13に示すように、一端部124aから他端部124bに近づくにつれて徐々に隔壁20に近づくように湾曲している。
【0086】
また、板状体124は、温度が高くなると当該板状体124の第1の管22側に設けられた板材が隔壁20側に設けられた板材に比べて膨張することによって湾曲が大きくなるように変形する。反対に、板状体124は、温度が高くなると当該板状体124の第1の管22側に設けられた板材が隔壁20側に設けられた板材に比べて収縮することによって湾曲が小さくなるように変形する。
【0087】
次に、板状体124が定常状態であるときのステージST内部の熱交換媒体の流れについて説明する。
図14(a)に示すように、板状体124が定常状態であるときには、板状体124は一端部124aから他端部124bに近づくにつれて徐々に隔壁20に近づくように湾曲している。したがって、他端部124bと第1の管22との距離が大きくなっており、流路FCの断面積が小さくなっている。このため、板状体124が定常状態であるときには、熱交換媒体の流路FCのコンダクタンスは比較的小さなものとなる。
【0088】
次に、
図14(b)を参照して、ステージSTの温度が外乱によって低下したときのステージST内部の熱交換媒体の流れについて説明する。例えば、
図14(b)に示すように、ステージST上に当該ステージSTの目標温度よりも低温の基板WがステージST上に載置されると、プレート2の温度が低下する。これに伴い、プレート2に向けて吐出された熱交換媒体の熱がプレート2に奪われることになり、流路FCを流れる熱交換媒体の温度がステージSTの目標温度よりも低くなる。これにより、流路FC内に配置された板状体124が熱交換媒体によって冷却される。板状体124が冷却されると、板状体124は隔壁20側への湾曲が小さくなるように変形する。このような変形により、板状体124の他端部124bと隔壁20との距離が大きくなり、板状体124が定常状態であるときに比べて熱交換媒体の流路の断面積が大きくなる。よって、熱交換媒体の流路FCのコンダクタンスが大きくなる。
【0089】
このように熱交換媒体の流路FCのコンダクタンスが大きくなることにより、流路FCを流れる熱交換媒体の流量が増加する。流路FCを流れる熱交換媒体の流量が増加すると、熱交換媒体からステージSTに与えられる熱量が増加することになる。これにより、故に、ステージSTの温度が目標温度よりも低くなると、ステージSTの温度が目標温度に近づくように補正されることとなる。この温度補正によって、ステージSTの温度が目標温度に戻されると、板状体124が定常状態に戻り、再び熱交換媒体の流量が小さくなる。
【0090】
以上のように、調整機構120を備えるステージSTにおいても、ステージの温度が外乱によって目標温度からずれた場合に、熱交換媒体の流量を増加させることによって短時間でステージSTの温度を目標温度に補正することが可能となる。
【0091】
次に、更に別の実施形態に係る調整機構について説明する。
図15は、更に別の実施形態に係る調整機構130を示す斜視図である。なお、以下では、上述の調整機構100と同一の説明は省略し、異なる点について主に説明する。
【0092】
まず調整機構130の構成について説明する。調整機構130は第1の環状板102、第2の環状板104、及び変形部106に代えて、変形部132を備えている。変形部132は、相対的に熱膨張率の高い湾曲板材と相対的に熱膨張率の低い湾曲板材とが貼り合わされた帯状の板材であり、相対的に熱膨張率の高い湾曲板材が内側に面するように第1の管22の周囲に螺旋状に巻かれている。即ち、変形部132は熱膨張率の異なる2枚の板材を貼り合わせたバイメタル構造を有している。
【0093】
変形部132は、一端及び他端を有している。変形部132の一端は、第1の管22の外側面に固定されている。さらに、変形部132には、隔壁20に向けて突出するように設けられた第1の突出板部132a、第2の突出板部132b、及び第3の突出板部132cが設けられている。第1の突出板部132aは変形部132の一端の近傍に設けられており、第3の突出板部132cは変形部132の他端に設けられている。第2の突出板部132bは、変形部132の長さ方向において第1の突出板部132aと第3の突出板部132cとの間に設けられている。また、第1の突出板部132a、第2の突出板部132b、及び第3の突出板部132cは、高さ方向において互いに異なる位置に設けられている。
【0094】
調整機構130は、流路FC内を流れる熱交換媒体の温度に応じて、定常モード及び第1の補正モード何れか一方の動作モードで動作する。調整機構130は、変形部132が定常状態であるときに定常モードとして動作する。また、調整機構130は、変形部132がステージSTの目標温度よりも低い第1の温度になったときに第1の補正モードで動作する。
【0095】
まず定常モードで動作する調整機構130について説明する。定常モードは、ステージSTの温度を維持するための動作モードである。
図15に示すように、定常モードでは、中心軸線Z方向から見て、第1の突出板部132a、第2の突出板部132b、及び第3の突出板部132cが互いに重ならない位置に配置される。この定常モードでは、流路FC内の熱交換媒体の流れが第1の突出板部132a、第2の突出板部132b、及び第3の突出板部132cのそれぞれによって阻害されることになるので、流路FCのコンダクタンスは後述の第1の補正モードよりも小さくなる。
【0096】
次に、
図16を参照して、調整機構130の第1の補正モードについて説明する。
図16は第1の補正モードで動作する調整機構100の斜視図である。第1の補正モードは、ステージSTの温度を当該ステージSTの目標温度よりも低い第1の温度から当該目標温度に戻すための動作モードである。第1の補正モードでは、中心軸線Z方向から見て、第1の突出板部132a、第2の突出板部132b、及び第3の突出板部132cが互いに重なる位置に配置される。
【0097】
例えば、ステージST上に低温の基板Wが載置されることによって熱交換媒体の温度がステージSTの目標温度よりも低い第1の温度になると、変形部132は中心軸線Z方向から見て内側に縮まるように変形する。このような変形により、
図16に示すように、中心軸線Z方向から見て、第1の突出板部132a、第2の突出板部132b、及び第3の突出板部132cが互いに重なる位置に配置される。
【0098】
この第1の補正モードでは、流路FC内の熱交換媒体の流れが第1の突出板部132aのみよって阻害されることになるので、定常モードに比べて熱交換媒体の流路FCのコンダクタンスが大きくなる。このように熱交換媒体のコンダクタンスが大きくなると、流路FCを流れる熱交換媒体の流量が増加する。流路FCを流れる熱交換媒体の流量が増加すると、熱交換媒体とステージSTとの間の熱交換量が増加する。したがって、調整機構110が第1の補正モードで動作した場合には、ステージSTの温度が目標温度に戻るようにステージSTが加熱されることとなる。この加熱によって、ステージSTの温度は目標温度に近づくように補正される。この温度補正によって、ステージSTの温度が目標温度に戻されると、変形部132が定常状態に戻り、再び調整機構130が再び定常モードで動作することになる。
【0099】
以上のように、調整機構120を備えるステージSTにおいても、ステージの温度が外乱によって目標温度からずれた場合に、熱交換媒体の流量を増加させることによって短時間でステージSTの温度を目標温度に補正することが可能となる。
【0100】
以上、種々の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。例えば、上述した実施形態では、種々の実施形態のステージをプラズマ処理装置に適用したが、ステージが適用される対象は、プラズマ処理装置に限定されず、任意の基板処理装置に適用することができる。
【0101】
また、上述の調整機構100、120、130は、熱交換媒体の温度がステージSTの温度よりも低いときに流路FCのコンダクタンスを大きくするように構成されているが、熱交換媒体の温度がステージSTの温度よりも高いときに流路FCのコンダクタンスを大きくするように構成されてもよい。このような構成は、例えば温度変化に応じた変形方向が上述の実施形態と反対方向になるようにバイメタル構造体を設計することによって実現することができる。