(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には、同一符号を付して、その説明を適宜省略または簡略化する。また、各図に記載の構成について、その形状、大きさおよび配置等は、この発明の範囲内で適宜変更することができる。
【0010】
実施の形態.
[炊飯器]
図1は、この発明の実施の形態に係る炊飯器の斜め上方から見た斜視図である。
図2は、
図1におけるX−X断面図。
図3は、
図2におけるY部分の拡大図。
図4は、内釜を斜め上方から見た斜視図である。
【0011】
図1及び
図2に示すように、この実施の形態に係る炊飯器100は、内釜収容部1aを有する炊飯器本体1と、内釜収容部1aに着脱自在に設置される内釜5と、炊飯器本体1の上方を覆う蓋体2とを備えている。
蓋体2は、炊飯器本体1に開閉自在に取り付けられる。ユーザは、蓋体2を開けて、例えば、内釜収容部1aに内釜5を設置し、または内釜収容部1aから内釜5を取り出すことができる。また、ユーザは、例えば、蓋体2を閉じて、内釜5の中に準備された米等の被調理物の調理等を行うことができる。
【0012】
[内釜]
図4に示すように、内釜5は、底部5aと、底部5aの上方で開口端部5dまで延びる筒部5cと、底部5aと筒部5cとの間のコーナー部5bと、を有する有底筒状の調理容器である。内釜5は、例えば、焼成した炭素材料を削り出すことによって形成される。
なお、内釜5は、例えば、鉄、アルミもしくは銅等の金属またはこれらを含む合金で形成されていてもよく、その場合には、鋳造、切削等の工程を経て形成される。
【0013】
この実施の形態の内釜5の筒部5cは、コーナー部5bと接続する下筒部5c1と、下筒部5c1の上方で開口端部5dまで延びる上筒部5c2とを含んでいる。
下筒部5c1は、上下方向に沿って、略直線状に形成された内周面を有する。上筒部5c2は、後述する鍔部50より上方の部分であり、下方から上方の開口端部5dに向かいながら、径方向に徐々に窄められた内周面を有している。
【0014】
また、下筒部5c1および上筒部5c2の外周面は、それぞれの内周面と概略同形状に形成されている。つまり、下筒部5c1の外周面は、上下方向に沿って、略直線状に形成されており、上筒部5c2の外周面は、下方から上方の開口端部5dに向かいながら、径方向に徐々に窄められて形成されている。
つまり、内釜5は、上端部が内釜5の最大径よりも小さく形成された概略壺形状の外形を有している。
【0015】
また、内釜5の外周面には、鍔部50が設けられている。鍔部50は、上筒部5c2の外周面から外方に突出している。鍔部50から上側に、筒部5c(上筒部5c2)が位置し、内釜5の内部において、鍔部50よりも上側に内釜5の内部空間が形成される。
また、内釜5の内周面は、下方から上方の開口端部5dに向かいながら、径方向に徐々に窄められている。鍔部50の下部から開口端部5dまでの高さh1は、内釜5の内側の内底部から開口端部5dまでの高さhの15パーセント以上である。
【0016】
[炊飯器本体]
図1及び
図2に示すように、炊飯器本体1は、上部が開口された内釜収容部1aを有する。内釜収容部1aの上端は、内釜5の鍔部50の下側を支持する鍔支持部1a1を構成している。鍔支持部1a1には、内釜5の鍔部50の下側に当接するリング状の内釜シール部材1a2が配設されている。
内釜シール部材1a2は、鍔部50の下側と鍔支持部1a1との間をシールするものであり、例えば、シリコン樹脂等の弾性を有する材質で形成されている。内釜5が炊飯器本体1に設置されると、内釜5の鍔部50の下方で、内釜5の外側と内釜収容部1aの内側との間が密閉される。
【0017】
また、炊飯器本体1は、主加熱手段7と温度センサ8と制御部10を有する。
温度センサ8は、内釜5の底部5aの中心付近の温度を検出するものであり、例えば、サーミスタで構成されている。制御部10は、後述する操作部3を操作したことによる入力や温度センサ8からの入力に基づき、主加熱手段7や後述する本体表示部4や上筒部加熱手段30など、炊飯器100を構成する各種部品の動作の制御を行うものであり、例えば、CPUまたは専用IC等を含んで構成されている。尚、制御部10は、本実施の形態において本体後部に設けられている。
【0018】
主加熱手段7は、内釜5の加熱を行うものであり、制御部10からの指示に基づいて動作する。主加熱手段7は、例えば、底部加熱手段7aとコーナー部加熱手段7bと下筒部加熱手段7cとを含んでいる。底部加熱手段7aは、内釜5の底部5aを加熱するものである。コーナー部加熱手段7bは、内釜5のコーナー部5bを加熱するものである。
なお、この実施の形態の例では、底部加熱手段7aおよびコーナー部加熱手段7bは、誘導コイルで構成されているが、底部加熱手段7aおよびコーナー部加熱手段7bは、電熱線等で構成されていてもよい。下筒部加熱手段7cは、内釜5の下筒部5c1を加熱するものであり、例えばコードヒータ等で構成されている。
【0019】
[蓋体]
図1〜
図3に示すように、蓋体2は、外蓋2aと内蓋2bを有する。外蓋2aは、炊飯器本体1の上方を覆うものである。外蓋2aは、炊飯器本体1の後方で、ヒンジ等の連結機構6によって、炊飯器本体1に開閉自在に取り付けられている。
【0020】
外蓋2aの上面には、操作部3と本体表示部4が設けられている。
操作部3は、炊飯器100への指示を行うものであり、例えばタッチセンサ等で構成されている。ユーザは、操作部3を操作して、調理メニューの選択、調理時間の設定等の指示を行うことができる。
本体表示部4は、炊飯器100の動作状態等を表示するものであり、例えば液晶パネル等で構成されている。操作部3および本体表示部4は、これらが一体的に形成されたタッチパネルで構成されていてもよい。
【0021】
外蓋2aの下面側には、内蓋2bが着脱自在に装着されている。内蓋2bは、内釜5の開口を覆うものであり、内蓋2bの下面側には、リング状の内釜シール部材12が配設されている。内釜シール部材12は、蓋体2を閉じたときに、内釜5の開口端部5dと当接して、内釜5の開口端部5dと内蓋2bとの間をシールするものである。内釜シール部材12は、例えば、シリコン樹脂等の弾性を有する材質で形成されている。
【0022】
また、内蓋2bには、蒸気穴2b1が形成されている。また、内蓋2bの蒸気穴2b1には、開閉弁11が設けられている。開閉弁11は、内釜5の内部の圧力によって上下するものである。炊飯時等に発生する蒸気の一部は、蒸気穴2b1を通って、内蓋2bの上方に設置されたカートリッジ20に導かれる。
【0023】
カートリッジ20は、内蓋2bの上方で、外蓋2aに着脱自在に装着されている。カートリッジ20は、炊飯時のおねば成分を含む蒸気を、おねば成分と蒸気とに分離し、分離した蒸気を炊飯器100の外部に導き、おねば成分を内釜5の内部へと戻すものである。 すなわち、内蓋2bの蒸気穴2b1を通ったおねば成分を含む蒸気は、カートリッジ20の流入部20aからカートリッジ20に流入し、カートリッジ20にておねば成分と蒸気とに分離され、分離された蒸気が蒸気排出部20bから排出される。
【0024】
ここで外蓋2aは、下面を構成する外蓋下面部2a1を下方に向けて開口する凹形状に構成することで、蓋体2の下端となる蓋下端2cより上側に、外蓋下面部2a1に囲まれた空間2dが形成されている。
このように蓋体2は、下方に開口するカップ形状を成しおり、下方を向く開口は円形状に構成されている。
【0025】
また、外蓋下面部2a1の上下方向に伸びる部位である内周面には、蓋体2の内側に向かって開口する凹部2a2が形成されている。この凹部2a2は、外蓋下面部2a1の内周面全体にわたって形成されている。
この凹部2a2には、内釜5の上筒部5c2を加熱する上筒部加熱手段30が設けられている。上筒部加熱手段30は、上筒部5c2と内外で対向する円筒形状の放熱板31と、放熱板31に周方向に沿って取り付けられるヒータ32から構成されている。
【0026】
尚、放熱板31の上端及び下端と凹部2a2の内壁面(外蓋2a)との間には、シール部材33が設けられており、放熱板31とシール部材33とで 凹部2a2の開口を塞いでいる。ヒータ32は、放熱板31と凹部2a2の内部に囲まれた空間に位置するよう、放熱板31に設けられる。
また、放熱板31の下方を支持する外蓋2aの部位は、放熱板31より内側に向かって突出している外蓋突出部2a3が形成されている。このように、外蓋突出部2a3を設けることで、使用者が放熱板31に直接触れにくくすることができる。
【0027】
[内釜の炊飯器本体への設置]
以上のように構成された内釜5を炊飯器本体1に設置して蓋体2を閉じた状態について説明する。
図2及び
図3に示すように、内釜5が炊飯器本体1に設置されると、内釜5の鍔部50の下部が内釜収容部1aの上端の鍔支持部1a1に当接して、内釜5が鍔支持部1a1で支持される。
【0028】
このような状態において、鍔部50の下部に位置する下筒部5c1は内釜収容部1aに収容される。鍔部50の下部よりも上方に位置する上筒部5c2は、内釜収容部1aから上方に突出して、外蓋2aの空間部2dに入り込む。この空間部2dに入り込んだ上筒部5c2は、放熱板31と内外に対向した状態となる。
【0029】
また、対向する上筒部5c2と放熱板31の間に挟まれた空間である放熱空間13は、蓋体2と炊飯器本体1の合わせ位置の隙間を通気部14として、炊飯器100の外部空間と連通した状態に構成されている。
尚、通気部14は、炊飯器本体1または蓋体2に形成された、放熱空間13を炊飯器100の外部と通気させる穴等の構成であってもよい。
【0030】
以上のように内釜5の内部に調理物(米と水)を入れた状態で炊飯器本体1に内釜5を収納して炊飯動作を開始する。尚、調理物の最大量は、鍔部50よりも下方の下筒部5c1に収まるように、内釜5の内部に基準線が設けられている。
制御部10は、加熱調理動作における沸騰工程において、主加熱手段7を動作させると共に、上筒部加熱手段30のヒータ32を停止しておく(動作させない)、又は、出力を弱く動作させることで、下筒部5c1は調理に適した状態に加熱して、上筒部5c2の温度が下筒部5c1の温度より低い状態となるように加熱調理動作を行う。
【0031】
沸騰工程が開始されると、主加熱手段7の動作により下筒部5c1と底部5aとコーナー部5bが加熱され、これに伴い調理物が沸騰して泡が内釜内部を上筒部5c2に向かって湧きあがる。
ここで、上筒部5c2の温度は、下筒部5c1とこれより下側の部分の温度より低い状態なので、湧き上がった泡が、上筒部5c2の内面で効率的に冷やされて壊れ、泡を構成していた煮汁が自重で下方へ戻され内釜5からおねばが吹き出るのを抑止する。つまり、内釜5からカートリッジ20へのおねばの侵入量を低減することができる。
【0032】
特に、対向する上筒部5c2と放熱板31の間に挟まれた放熱空間13は、蓋体2と炊飯器本体1の合わせ位置の隙間を通気部14として、炊飯器100の外部空間と連通した状態に構成されているので、上筒部5c2を下筒部5c1の温度より低く保つことができるので、効率よく吹き出る泡を冷却することができる。
【0033】
また、上筒部5c2を冷却するために、対向する上筒部5c2と放熱板31の間に挟まれた放熱空間13を低い温度に保つので、放熱板31近傍に結露が生じることがあるが、放熱板31と外蓋2aとの間にシール部材33が設けられているので、ヒータ32が設けられた空間に結露による水が浸入することを防ぐことができる。
【0034】
次に、制御部10は、沸騰工程が終了すると、ドライアップ工程、むらし工程、保温工程へと進む。
ドライアップ工程とは、水分を米の中心まで完全に吸水させ、米の中心まで完全に糊化させ、余分な水分が釜内にあれば完全に蒸発させる工程であり、沸騰温度より高いドライアップピーク温度(ドライアップ工程における最高の温度)まで釜内の温度を上昇させて、米の糊化を促進する工程である。
【0035】
むらし工程とは、米の表面についた水分を蒸発させ、米の水分を均一にし、米内部を完全に糊化させるための工程であり、米が焦げ付かず、釜温度が80℃以上を所定時間保持する工程である。
保温工程とは、炊飯動作終了後(むらし工程終了後)、炊きあがった米の温度を温かい状態に保つ工程である。
【0036】
制御部10は、ドライアップ工程、むらし工程、保温工程において、上筒部加熱手段30のヒータ32を動作させることにより、上筒部5c2を加熱する。これにより、ドライアップ工程、むらし工程、保温工程で米から蒸発した水蒸気が、上筒部5c2で冷却されて結露するのを防止することができる。
【0037】
この実施の形態に係る炊飯器本体1は、
図3に示すように、側方において、内釜収容部1aの上端の高さと実質的に等しい高さの部分を有しており、内釜5が内釜収容部1aに設置されると、鍔部50を含む上筒部5c2が炊飯器本体1から上方に突出する。
なお、上筒部5c2が、炊飯器本体1の周方向の全周に渡って、炊飯器本体1の上方から突出するように、炊飯器本体1が、周方向の全周に渡って、内釜収容部1aの上端の高さと概略等しい高さに形成されていてもよい。
【0038】
この実施の形態では、少なくとも上筒部5c2の周方向に沿った部分が、炊飯器本体1から上方に突出しているため、ユーザは、鍔部50を把持して、内釜5の取り出しを容易に行うことができる。外蓋2aは、炊飯器本体1から突出した上筒部5c2の外方を覆う上筒部カバー部2a1を有する。
【0039】
上記のように、この実施の形態では、内釜5の筒部5cは、内釜収容部1aに収容される被収容筒部となる下筒部5c1より下の部分(上筒部5c2の下側)と、内釜収容部1aから上方に突出する上筒部5c2とを含んでいる。
したがって、内釜収容部1aから上方に突出した上筒部5c2の外方には高温の内釜収容部1aがなく、上筒部5c2の外周面が蓋体2の下方で冷やされるようになっている。さらに、内釜収容部1aから上方に突出した上筒部5c2の外方には、放熱を行うための放熱空間13が形成されており、上筒部5c2の外周面が空気によって効率的に冷やされるようになっている。
【0040】
つまり、沸騰工程の際、上筒部5c2の温度が下筒部5c1の温度よりも低くなる。そのため、この実施の形態では、炊飯器100での加熱調理中に湧き上がった泡および蒸気が、上筒部5c2の内周面で冷やされるため、吹きこぼれのおそれが抑制されている。なお、好適には、放熱空間13は、通気部14によって、炊飯器100の外部と通気するように構成されており、上筒部5c2における放熱を効率良く行うことができる。
なお、上筒部5c2の外周面を冷却して吹きこぼれを抑制するためには、上筒部5c2の高さは、内釜5の内底部から開口端部5dまでの高さの15パーセント以上とするのが望ましい。
【0041】
さらに、この実施の形態では、上筒部5c2の内周面は、下方から上方の開口端部5dに向かいながら、径方向に徐々に窄められている。そのため、この実施の形態では、調理時等に発生した蒸気が、上筒部5c2の内周面に接触して凝縮し、内釜5の内部に例えば滴下して戻されるようになっている。
さらに、沸騰工程の際に湧き上がって内釜5の内周面を伝った泡が、上筒部5c2の内周面で、自重によって落下する。それらの結果、この実施の形態では、吹きこぼれのおそれが抑制されている。
さらに、この実施の形態では、加熱調理中に湧き上がった泡および蒸気が、内釜5の外側に排出されることが抑制されているため、例えば米等の被調理物の旨みを閉じ込めて調理を行うことができる。
【0042】
また、この実施の形態では、水位を表示する表示部54が、上筒部5c2の下方の下筒部5c1の内周面側に配設されており、被調理物は、上筒部5c2の下方の下筒部5c1に収容される。
そして、下筒部5c1の外方には、下筒部5c1を加熱する主加熱手段7が配設されている。このため、この実施の形態では、内釜5に準備された被加熱物を効率良く加熱することができる。
【0043】
さらに、この実施の形態では、内釜5の鍔部50の下部が、全周に渡って、内釜収容部1aの上端の鍔支持部1a1と当接しており、加熱調理時等の熱が、鍔部50の下方に閉じ込められるようになっている。そのため、この実施の形態では、内釜5に準備された米等の被調理物の加熱を効率良く行うことができる。
さらに、この実施の形態では、加熱調理時等の熱が、鍔部50の下方に閉じ込められるようになっているため、鍔部50の上方の放熱空間13で、上筒部5c2を効率良く冷やすことができる。
【0044】
また、この実施の形態の内釜5によれば、吹きこぼれのおそれを抑制することができるため、カートリッジ20の構成を簡略化し、小型化することができる。この実施の形態では、カートリッジ20の構成が簡略化されているため、カートリッジ20の洗浄が容易になっており、且つカートリッジ20が小型化されているため、炊飯器100の小型化を達成することができる。
上記のように、この実施の形態では、簡易な構成で、炊飯時のおねば等の吹きこぼれを抑制することができる。なお、内釜5の構成によって、吹きこぼれのおそれが十分に抑制されている場合には、カートリッジ20を省略することもできる。