【文献】
Haacke, E.M. et al.,Susceptibility-Weighted Imaging: Technical Aspects and Clinical Applications, Part 1,Am. J. Neuroradiol. (AJNR),米国,2009年 1月,30,19-30
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の色相はシアンであり、前記第2の色相はマゼンタであり、又は前記第1の色相はマゼンタであり、前記第2の色相はシアンである、請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記画像生成部は、第1のスケール係数に基づいて前記位相画像に対して、前記第1の色相の色系列を割り当て、第2のスケール係数に基づいて前記強度画像に対して前記第2の色相の色系列を割り当てることにより、前記合成画像を生成する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を用いて、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置について説明する。
【0008】
図1は、実施形態に係るMRIシステムの概略ブロック図である。
図1に示すMRIシステムは、ガントリ10(概略断面で示す)と、これに接続された各種の関連システム構成要素とを有する。少なくともガントリ10は、通常はシールドルーム内に配置される。
図1に示すMRIシステムは、実質的に同軸の円筒形に配置された静磁場B
0磁石12と、Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイル14と、大型の全身用RF(Radio Frequency)コイル(WBC:Whole Body Coil)16とを有する。この円筒形に配置される要素の横軸に沿って、患者寝台11によって支持された患者(被検体)9の頭部を実質的に取り囲むように、イメージングボリューム18が示される。1以上のより小型のアレイRFコイル19を、イメージングボリューム18内で患者9の頭部に、より近接して結合してもよい。当業者には明らかなように、表面コイル等のように、全身用コイルと比較して小さいコイルやアレイコイルは、特定の身体部分(例えば、腕、肩、肘、手首、膝、脚、胸、背骨等)に合わせて設計されることが多い。以後、そのような小型のRFコイルを、アレイコイル(AC:Array Coil)またはフェーズドアレイコイル(PAC:Phased Array Coil)と呼ぶ。これらは、RF信号をイメージングボリューム18内に送信するよう構成された少なくとも1つのコイルと、イメージングボリューム18において、上記の例における患者の頭部等の被検体からのRF信号を受信するよう構成された複数の受信コイルとを含んでもよい。
【0009】
システム制御部22は、ディスプレイ24、キーボード26、及びプリンタ28に接続された入出力ポートを有する。当然のことながら、ディスプレイ24は、制御入力もできるようにタッチスクリーンタイプのものであってもよく、マウス等の入出力装置を設けてもよい。
【0010】
システム制御部22はシーケンス制御部30に接続され、シーケンス制御部30は、Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイルドライバ32、ならびにRF送信機34及び送受信スイッチ(T/R)36(同じRFコイルが送信と受信の両方に使用される場合)を制御する。シーケンス制御部30は、MRIイメージング(核磁気共鳴(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)イメージングとしても知られている)技術を実装するための適切なマップ/MRIデータ収集プログラムコード構造38を含み、そのような技術にはパラレルイメージングも含まれ得る。以下に説明するように、シーケンス制御部30は、診断MRI画像を得るためのタグ画像及びコントロール画像を得るために、対応する所定のタグパルスシーケンス及び所定のコントロールパルスシーケンスを適用するように構成されてもよい。また、シーケンス制御部30は、EPIイメージングやパラレルイメージング用に構成されてもよい。さらに、シーケンス制御部30により、1回以上の準備スキャン(プリスキャン)シーケンス、及びメインスキャンMR画像(診断MRI画像)を取得するためのスキャンシーケンスを容易にできる。
【0011】
MRIシステムは、ディスプレイ24に送られる処理画像データを作成するために、入力をMRIデータプロセッサ42に送るRF受信機40を有する。また、MRIデータプロセッサ42は、前に生成されたMRデータ、画像(例えば、強度画像や位相画像)やマップ、システム構成パラメータ(マップ/MRI画像メモリ)46、画像再構成プログラムコード構造/強度位相画像合成器44及び、プログラム記憶装置(画像再構成/強度画像と位相画像の合成のための記憶されたプログラムコード構造)50にアクセスするように構成される。
【0012】
また
図1に、プログラム記憶装置50の一般的な説明を示す。プログラム記憶装置50では、(例えば、コントロール画像及びタグ画像の画像再構成のため、以下に説明するような差分画像等の生成のため、選択されたMRI画像特性のシミュレーションのため、MRIの後処理のための)格納されたプログラムコード構造が、MRIシステムの各種データ処理構成要素へアクセス可能な非一時的コンピュータ可読記憶媒体に格納される。当業者には明らかなように、プログラム記憶装置50をセグメント化して、少なくとも一部分を、MRIシステムの処理コンピュータのうち、通常操作においてそのような格納されたプログラムコード構造を最優先で必要とする別のコンピュータに直接接続してもよい(すなわち、システム制御部22に普通に格納したり直接接続するのではなく)。
【0013】
実際に、当業者には明らかなように、
図1は、後述する例示的実施形態を実現するために修正された典型的なMRIシステムの、非常に高度な概略図を示したものである。システム構成要素は様々な論理集合の「ボックス」に分割することができ、通常、多数のデジタル信号プロセッサ(Digital Signal Processor:DSP)と、マイクロプロセッサと、専用処理回路(例えば、高速AD変換用、高速フーリエ変換用、アレイ処理用等)とを含む。これらのプロセッサの各々は、通常、クロック制御された「状態マシン」であり、物理データ処理回路は、クロックサイクル(または、所定数のクロックサイクル)毎に、ある物理状態から別の物理状態に移る。
【0014】
処理回路(例えば、CPU、レジスタ、バッファ、演算装置)の物理状態が、操作過程でクロックサイクルに応じて徐々に変化するだけでなく、関連データ記憶媒体の物理状態(例えば、磁気記憶媒体内のビット記憶場所)も、このようなシステムの操作過程において、ある状態から別の状態に変換される。例えば、画像再構成処理や、時として以下に説明するようなコントロール画像及びタグ画像からの差分画像生成の終了時に、物理的記憶媒体内のコンピュータ可読でアクセス可能なデータ値の記憶場所の配列は、ある初期状態(例えば、全て一様に「0」値、または全て「1」値)から新しい状態に変換され、そのような配列における物理的場所の物理状態は、最小値と最大値との間で変化して、実世界の物理的事象及び物理的条件(例えば、イメージングボリューム空間内の内部物理構造)を表す。当業者には明らかなように、命令レジスタに順次読み込まれたMRIシステムの1つ以上のCPUによって実行されたときに、MRIシステム内で特定のシーケンスの動作状態を引き起こし遷移させる特定構造のコンピュータ制御プログラムコードと同様に、そのような格納データ値の配列は物理的構造を表し構成する。
【0015】
シーケンス制御部30が収集するMRデータは、例えば複素数データであり、強度情報及び位相情報を含む。ここで、位相画像と強度画像とでは、組織に関して得られる情報が異なる。位相画像と強度画像とは個別に見ることができるが、余分な位相画像の量が増えると、放射線医に余分な手間がかかる。その結果として、血流定量化や磁化率強調画像(Susceptibility−Weighted Imaging:SWI)等の数少ない適用例を除いて、位相画像から入手できる情報の多くが臨床診断において使用されない。
【0016】
SWIは、最近開発された技術であり、位相情報を用いて強度画像におけるコントラストを強調する。SWIは、強度画像と位相画像とを組み合わせることにより、放射線医が位相情報を入手しやすいようにするものであり、特に神経画像領域において重要な適用例がある。SWIは、対象の特徴が強調されるように、位相情報を用いて強度画像をスケーリングする(例えば、拡大する)。SWIは、通常、長いエコー時間(TE:Echoing Time)(例えば、1.5Tで40〜80ms、3Tで20ms)でグラディエントエコー画像を収集して、組織間の局所的な磁化率の変化に対して感度が高い磁化率強調強度画像を生成する。SWIは、血管や鉄分等の適用対象の所望の位相コントラストを得るために、長いTEで用いられる。
【0017】
しかし、SWIでは、強度と位相を合成した画像において、強度画像よりも高いコントラスト等を得ることができるが、コントラストの起因(すなわち、コントラストの原因が強度画像にあるのか、それとも位相画像にあるのか)等、非常に有用となり得る情報の一部が、画像合成のプロセスの間に失われる。
【0018】
さらに、組織間の局所的な磁化率の変化に対して感度をもたせるために、SWIでは比較的長いエコー時間(1.5Tで40〜80ms、3Tで20ms)が用いられるので、SWI信号が計測される際には、短いT2信号、すなわち短いT2*信号は存在しない。さらに、SWIでは、画像において好ましくないネガティブコントラストを生じる場合があり、また、ボクセル内のディフェージングによる信号欠落に影響されやすい場合もある。
【0019】
また、いくつかの適用例では、超短エコー時間(例えば、0.1ms)で収集した画像において、大きな位相のばらつきが最近報告されている。
【0020】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、強度画像と位相画像のいずれの情報も失うことなく、強度情報と位相情報との両方を同時に可視化する。具体的には、シーケンス制御部30は、撮像シーケンスを実行して、位相画像及び強度画像を収集する。MRIデータプロセッサ42に含まれる画像生成部は、位相画像に対して第1の色相の色系列を割り当てた画像と、強度画像に対して第1の色相とは異なる色相である第2の色相の色系列を割り当てた画像とを合成して、合成画像を生成する。後述するが、このことにより、MRIデータプロセッサ42に含まれる画像生成部は、あらゆるTE(すなわち、長いTEや超短TEに限定されない)で収集される位相画像と強度画像の両方を可視化でき、また、元の位相情報及び強度情報を失うことなく、強度画像と位相画像の可視化を同時に単純化し容易にすることができる。
【0021】
ここで、第2の色相は、例えば、第1の色相と、表色系において異なる位置に配置される色相である。表色系の一例としては、例えば、色彩を、色相、明度、彩度のいわゆる色の3属性によって定量的に表現するマンセル表色系がある。この表色系では、色の特定の波長が際立っていることによる色の様相の相違である「色相(hue)」を、例えば、赤(R)、黄赤(YR)、黄(Y)、黄緑(GY)、緑(G)、青緑(BG)、青(B)、紫青(PB)、紫(P)、赤紫(RP)のように、主要10色相に分類して色相環を形成する。
【0022】
すなわち、表色系において異なる位置に配置される具体例としては、例えば、第2の色相が、第1の色相と、マンセル表色系における主要10色相のうち互いに異なる主要10色相に属する例が挙げられる。一例として、第1の色相はシアンであり、第2の色相はマゼンタであり、又は第1の色相はマゼンタであり、第2の色相はシアンである。
【0023】
また、色相環として、異なる色相環、例えば、日本色研配色体系(PCCS:Practical Color Coordinates System)における24色色相環で色相を定義してもよい。
【0024】
また、MRIデータプロセッサ42に含まれる画像生成部は、その他の表色系、例えば、CIE表色系、RGB表色系、XYZ表色系、CIELUV色空間等において、位相画像に割り当てられた色系列と、強度画像に割り当てられた色系列が、離れた色となるように、色系列を割り当ててもよい。
【0025】
また、強度画像に割り当てられる色系列と、位相画像に割り当てられる色系列が、異なる色相の色系列である場合について説明したが、実施形態は、これらの色系列が、異なる(色の3属性としての狭義の意味の)色相である場合に限られない。すなわち、これらの色系列が、異なる色合いであってもよい。例えば、MRIデータプロセッサ42に含まれる画像生成部は、位相画像に対して第1の色合いの色系列を割り当てた画像と、強度画像に対して、第1の色合いと非類似である第2の色合いの色系列を割り当てた画像とを合成して、合成画像を生成してもよい。例えば、MRIデータプロセッサ42に含まれる画像生成部は、第1の色合いとして、「赤」、第2の色合いとして、「青」を選択してもよい。また、例えば、MRIデータプロセッサ42に含まれる画像生成部は、第1の色合いとして、「ivory」、第2の色合いとして、「darkslateblue」を選択してもよい。
【0026】
また、別の例として、MRIデータプロセッサ42に含まれる画像生成部は、位相画像に対して第1の原色を含む色系列を割り当てた画像と、強度画像に対して、第1の原色とは異なる第2の原色を含む色系列を割り当てた画像とを合成して、合成画像を生成する。
【0027】
ここで、原色の組とは、残りの2つの色を混ぜても、その色を作ることができないような色の組である。モニターディスプレイや、プロジェクターを用いた投影など、光を重ねて色を生成する加法混合の場合、例えば、原色の組として、光の三原色(赤(R),緑(G),青(B))が選ばれる。もっとも、他の組、例えば、オレンジ、緑、紫を3原色として選択することも妨げられない。また、必要に応じて、sRGB等その他の色空間を採用してもよい。
【0028】
また、顔料や絵の具、カラ―印刷のように、物体光=入射光-補色となるような減法混合の場合、例えば、原色の組として、シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)が選ばれる。また、MRIデータプロセッサ42に含まれる画像生成部は、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M),イエロー(Y)の各成分に、必要に応じて、黒(K)の成分を適宜加えても良い。
【0029】
このように、位相画像及び強度画像それぞれに異なる色系列を割り当て、それらの画像を合成してカラ―画像を生成することで、もともとの位相及び強度の情報を失うことなく、強度及び位相画像を同時に、視覚化を容易にすることができる。この結果、強度画像のみが臨床に用いられている現在の標準的な医療現場の現状と比較して、強度及び位相画像の両方を用いた診断が可能になる。実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、合成画像を表示する表示部(一例として、ディスプレイ24)を更に備え、表示部は、位相画像及び強度画像のうち少なくとも1つの画像を、合成画像と同時に又は別個に表示する。
【0030】
そして、実施形態において、シーケンス制御部30は、UTE(Ultrashort Echo Time)撮像を行って位相画像及び強度画像を収集することが好適である。
【0031】
例えば、最近、数種類の組織にUTE(またはゼロTE)撮像を適用して収集した画像において、位相コントラストが際立つことが報告されている。例えば、膝のイメージング適用例と肺のイメージング適用例の両方において重要な高いコントラストが、超短エコー時間で取得した位相画像から得られることが、最近発見された。この情報を用いて、超短TEシーケンスやゼロTEシーケンスで収集した強度画像に対して、重要な情報を加えることができる。UTE(超短UT)撮像においては、位相画像は、正確な診断を実現するのに役立ち得る付加的な情報となりうる。
【0032】
実施形態による画像再構成及び処理により、従来技術と比べていくつかの利点が得られる。利点として挙げられることとして、例えば以下のようなことがある。多くの従来の臨床現場において、主に強度情報のみが用いられる一方で、実施形態が提供するMRイメージングの臨床診断のための便利でフレキシブルな技術及びシステムでは、強度情報と位相情報の両方を同時に用い、合成後も強度画像と位相画像のいずれの情報も失うことがない。
【0033】
また、超短TE(UTE)でMRイメージングする場合でも、位相画像において存在が確認できる組織の構造及び特性に関する付加的な重要情報が使用できる。また、筋骨格のイメージングにおいて、強度画像または位相画像を単独で取得するよりも、脂肪/水の画素をより良く可視化することができ、よりはっきりとした画像コントラスト及び詳細が得られる。
【0034】
例えば、UTE撮像を用いない通常のエコータイム(TE)でMRイメージングをした場合においては、上述した付加的な重要情報を含む位相画像を得ることができない。すなわち、エコータイム(TE)が長い場合は、位相が回転してしまう結果、十分な信号雑音強度のある信号を収集することができない。しかしながら、エコータイムが極めて小さいUTE撮像を行うことにより、通常は見ることができない信号を見ることができる。ここで、UTE撮像を行う方法としては、例えば、時間軸方向に対して対称的でないパルスであるハーフパルスを印加し、k空間の中心から放射状(radial)にサンプリングする方法があるが、実施形態はこれに限られず、例えばハーフパルスを用いず、UTE撮像を行っても良い。
【0035】
UTE撮像における位相画像の特徴として、例えば、骨と筋肉とにおける位相画像の信号値の値が挙げられる。例えば、骨におけるプロトンは、筋肉におけるプロトンに比べて動いていない(ソリッドである)ため、位相画像における信号強度としては、ほとんど値を持たず、例えば、低い信号値の信号となっている。換言すると、骨の位相画像は、脂肪抑制画像に類似した画像となる。これに対して、筋肉におけるプロトンは、骨におけるプロトンと比べて、動いているため、位相画像における信号強度としては、高い信号値の信号となっている。
【0036】
このように、実施形態に係るイメージングシーケンスを実行することで、MRIデータプロセッサ42に含まれる画像生成部は、一度の撮像で、通常の強度画像と、脂肪抑制に類似する画像と、互いに異なる性質を持った二つの種類の画像を得ることができる。
【0037】
また、骨の部分で位相画像の信号強度がほとんど値をもたない(ブラック)になることから、例えば骨と筋肉の境界を、通常の強度画像を用いるより、より容易に判別することができる。これにより、例えば筋肉と骨の境界でがんが浸潤している場合などへの、診断への応用が考えられる。
【0038】
また、SWIと比較して、UTE撮像を行う方法は、ポジティブ・コントラストの撮像方法であり、また、TE時間が短く、従って撮像時間が短いという利点がある。
【0039】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置のUI(User Interface)としては、様々なものが考えられる。例えば、MRIデータプロセッサ42に含まれる画像生成部は、個々の色表示チャネル毎にカラースケール及びコントラストを個別に調整して所望の合成画像コントラストを実現してもよい。また、例えば、強度情報または位相情報を強調または抑制するツールが提供されてもよい。さらに、例えばSWIなどの技術とは対照的に、実施形態により、常にポジティブコントラストが得られるようにしてもよく、また、長いTE時間を必要としなくてもよい。
【0040】
また、MRIデータプロセッサ42に含まれる画像生成部は、合成画像に占める強度画像データと位相画像データとの割合を適宜調整する機能を含んでもよい。合成画像は、組織評価の改良に用いることができる。組織評価のために、別個の強度画像と位相画像から入手できる全情報を用いてもよい。
【0041】
MRIデータプロセッサ42に含まれる画像生成部は、様々な方法を用いて、強度画像と位相画像を生成することができる。例えば、MRIデータプロセッサ42に含まれる画像生成部は、2πの不定性を取り除くために位相接続した、実際の位相画像を用いて、またはSWIのようにハイパスフィルター処理された位相画像を用いて、位相画像を生成してもよい。この時、位相画像の画素値は、複素数値を取る再構成MR画像の画素の、虚部をIとし、実部をRとすると、tan
−1(I/R)と算出することができる。そして、強度画像(ここでは、例えば、強度MR画像の各画素が、複素数値を取る再構成MR画像の画素の実数部と虚数部の2乗和の平方根に基づく)と位相画像を、異なる色の表示チャネルに対する入力として用いることにより制御可能に合成して、合成カラー画像データを生成する。そして、生成された合成カラ―画像データは、可視化のためディスプレイ画面に表示される。MRIデータプロセッサ42に含まれる画像生成部は、例えば、個々の色表示チャネル毎に、相対的表示画素強度(輝度)、カラースケール、コントラスト等をフレキシブルに調整(すなわち、「チューニング」)して、所望の画像コントラストが得られるように、例えば、強度情報または位相情報が強調または抑制されるように、またはある組織の特徴が強調されるように、個別のカラースケールバー等を設けてもよい。
【0042】
図2は、
図1のMRIシステムの一部を示すブロック
図200である。ブロック
図200は、例えばMRIデータプロセッサ42に対応する。また、強度画像生成部212、位相画像生成部210、画像合成器208等の処理は、一例として、MRIデータプロセッサ42に含まれる画像生成部の処理に対応する。画像生成部202は、メモリ204に格納されたMRIスキャンからのk空間データを入力として受け取る。画像生成部202に含まれる位相画像生成部210及び強度画像生成部212は、メモリ204からk空間データを受け取って、それぞれ位相画像及び強度画像を生成する。画像合成器208は、位相画像生成部210及び強度画像生成部212からそれぞれ位相画像及び強度画像を受け取って、合成画像を生成する。画像合成器208は、合成画像をディスプレイ206に表示する。
【0043】
メモリ204に格納されるk空間データは、被検体の任意の部位のMRIスキャンから収集されてもよい。また、メモリ204は、
図1に示すマップ/MRI画像メモリ46を含んでもよい。
【0044】
画像生成部202は、位相画像生成部210及び強度画像生成部212を有し、位相画像生成部210及び強度画像生成部212はそれぞれ、メモリ204から得たk空間データから強度画像と位相画像を生成する。
【0045】
画像合成器208は、入力として、位相画像生成部210から位相画像を受け取り、また強度画像生成部212から強度画像を受け取り、これらの入力画像を合成して、操作者(例えば、放射線医)に表示する合成画像とする。
【0046】
画像合成器208における強度画像と位相画像の合成は、入力部214から受け取ったリアルタイムの操作者による入力と、構成メモリ216に格納された予め構成された設定との一方または両方に基づいてもよいし、これらの一方または両方により制御されてもよい。また、入力部214は、例えば
図1のキーボード26等を含んでもよい。
【0047】
操作者による入力及び予め構成された設定により、色制御部218、スケール制御部220、コントラスト制御部221、及び輝度制御部222のうち1以上を動作させてもよい。色制御部218は、入力された強度画像と位相画像のうち少なくとも一方に対する色(または、色相)の割り当てを制御するように動作してもよい。スケール制御部220は、合成画像に対する各入力画像のダイナミックレンジ等の寄与を制御する。コントラスト制御部221は、強度画像と位相画像とのコントラストを制御する。輝度制御部222は、合成画像の輝度を制御する。コントラスト制御部221と輝度制御部222のそれぞれを、強度画像と位相画像について個別に調整できるようにしてもよい。また、図示していないが、画像生成部202は、合成画像の明度を制御する明度制御部や、合成画像の彩度を制御する彩度制御部を有してもよい。
【0048】
実施形態によっては、ブロック
図200は、独立型コンピュータシステム(例えば、
図1に示すMRIシステムの一部ではないコンピュータシステム)であってもよい。この独立型コンピュータシステムは、先に実行したMRIスキャンに基づく格納された複素数値MR画像データにアクセスしてもよく、または、そのようなメモリ内の複素数値MR画像データから先に生成された別個の強度画像と位相画像にもアクセスしてもよい。これら格納されたデータに基づき、コンピュータシステムは、表示される合成画像を生成する。
【0049】
一実施形態によると、被検体のスキャンに続き、デフォルト設定または予め構成された設定に従い、最初に合成画像が表示される。次に、操作者は、最適な合成画像(特に、臨床対象の特徴が明瞭に見えたり、強度画像だけのときや位相画像だけのときよりもはっきりと見分けることができるような合成画像)を得るために、画像合成において制御可能なパラメータを調整してもよい。
【0050】
一実施形態によると、ImageJ(http://imagej.nih.gov/ij/)等のツールが、合成画像を形成するために用いられる。例えば、ImageJを使用する場合、強度画像データをシアン色表示チャネルに割り当て、位相画像データをマゼンタ色表示チャネルに割り当ててもよい。シアン色表示チャネル及びマゼンタ色表示チャネルからの入力を用いて合成表示画像を生成するように、ImageJを構成してもよい。マゼンタ色表示チャネル及びシアン色表示チャネルが、現在好まれている。しかし、当業者には明らかなように、他の色チャネルの割り当てを用いてもよく、また、特定の解剖学的組織や状況に合わせて色チャネルの割り当てを最適化してもよい。
【0051】
図3は、実施形態に係るUI(User Interface)300の概略図である。一実施形態によると、UI300は、合成画像を表示する表示領域302を有してもよい。実施形態によっては、表示領域302は、ユーザの選択に基づき、別個の強度画像と位相画像を表示してもよく、別個の強度画像と位相画像及び合成画像を表示してもよく、合成画像及び強度画像と位相画像のうち一方を表示してもよく、または合成画像のみを表示してもよい。
【0052】
画像スケール制御インタフェース304、色選択インタフェース306、コントラスト制御インタフェース308、及び輝度制御インタフェース310を操作者が操作して、表示領域302に表示される合成画像の諸相を調整してもよい。一実施形態によると、(画像)スケール制御インタフェース304、色選択インタフェース306、コントラスト制御インタフェース308、及び輝度制御インタフェース310の操作により、操作者(例えば、ユーザまたは放射線医)は、スケール制御部220、色制御部218、コントラスト制御部221、及び輝度制御部222のそれぞれへ入力を行うことができる。スケール制御インタフェース304、色選択インタフェース306、コントラスト制御インタフェース308、及び輝度制御インタフェース310のそれぞれは、例えば、スライダ、調整可能ダイヤル、メニュー、プルダウンメニュー、テキスト入力領域、操作者の入力に基づいて操作されて対応する値の変化を表示することができる任意の他のUI要素のうち1以上を含んでもよい。また、図示されていないが、UI300は、明度を制御する明度制御インタフェースや、彩度を制御する彩度制御インタフェースを含んでも良い。
【0053】
一例として、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、ユーザからの入力を受け付ける入力部214を更に備える。この時、画像生成部202は、入力部214が受け付けた入力に基づいて、第1の色相(位相画像に割り当てる色相)若しくは第2の色相(強度画像に割り当てる色相)を制御する。例えば、ユーザから、色選択インタフェース306を通じて、第1の色相として、「シアン」を、第2の色相として、「マゼンタ」を設定するような入力を受け付けると、画像生成部202は、第1の色相として、「シアン」を、第2の色相として、「マゼンタ」を設定する。
【0054】
また、別の例として、画像生成部202は、入力部214が受け付けた入力に基づいて、第1の色相の色系列を割り当てた画像、又は第2の色相の色系列を割り当てた画像の明度、彩度若しくは輝度を制御する。また、同様に、画像生成部202は、入力部214が受け付けた入力に基づいて、第1の色相の色系列を割り当てた画像、又は第2の色相の色系列を割り当てた画像のダイナミックレンジを制御する。例えば、ユーザから、コントラスト制御インタフェース308、輝度制御インタフェース310、スケール制御インタフェース304、又は図示されていない彩度制御インタフェースや明度制御インタフェース等を通じて、位相画像、(あるいは強度画像、合成画像)の明度(あるいは彩度、輝度)を上昇させる旨の入力を受け付けると、画像生成部202は、位相画像(強度画像、合成画像)の明度(彩度、輝度)が上昇するように、位相画像(強度画像、合成画像)の明度(彩度、輝度)を制御する。また、例えば、ユーザから、例えばスケール制御インタフェース304を通じて、位相画像(強度画像、合成画像)の明度(彩度、輝度)のダイナミックレンジに関する入力を受け付けると、画像生成部202は、入力部214が受け付けた入力に基づいて設定を行うことで、位相画像(強度画像、合成画像)に対して色系列を割り当てた画像の明度(彩度、輝度)に関するダイナミックレンジを制御する。ここで、ダイナミックレンジに関する入力を受け付けるとは、具体的には、例えば、位相画像(強度画像、合成画像)の明度(彩度、輝度)の最小値、最大値、又は最小値及び最大値に関する入力を受け付けることを言う。
【0055】
更に、格納されたプロフィール312についての選択オプションとして、色表示チャネルのダイナミックレンジまたは輝度のいずれかに対して初期値を設定したり、色表示チャネルに対してスケーリング係数を設定したりする等、1以上の先に格納された設定プロフィールを選択できるようにしてもよい。実施形態によっては、所定の組織や診断特性を対象にして格納したプロフィールは、その後の選択及び使用のために格納してもよい。
【0056】
図4は、実施形態に係る強度画像と位相画像との合成プロセス400に係るフローチャートである。一実施形態によると、合成プロセス400を実行する際に、操作404〜418は、その1以上を実行しなくてもよく、図示されている以外の順番で実行されてもよい。強度画像と位相画像を合成して、例えば上述のUI300に合成画像を表示するために、合成プロセス400を実行してもよい。
【0057】
操作402でシステム制御部22が合成プロセス400を開始した後、操作404において、システム制御部22は、撮像に向けたMRIシステム及び被検体の準備完了を受け付ける。準備は、被検体の位置合わせ、コイルの構成、プリスキャン等を含んでもよい。
【0058】
操作406において、シーケンス制御部30は、撮像及びデータ収集を行い、この結果、磁気応答測定値を用いてk空間にデータが充填される。シーケンス制御部30は、撮像において、2D/3Dフィールドエコー(Field Echo:FE)、高速フィールドエコー(Fast Field Echo:FFE)、平衡定常自由歳差運動(Balanced Steady-State Free Precession:bSSFP)、UTE撮像(Ultrashort Echo Time:UTE)等の、しかしこれらに限定されない、所定のイメージングパルスシーケンスを実行してもよい。実施形態によると、測定されたk空間データは、フーリエ変換適用後に複素数画像データとして格納される。フーリエ変換の前に、グリッディングを行ってもよい。実施形態によっては、3直交軸上の実際のk空間軌道が測定され、渦電流等、傾斜磁場システムの不完全性を補正するために使用される。
【0059】
操作408において、MRIデータプロセッサ42に含まれる画像生成部202は、k空間データから強度画像の生成を行う。本明細書で述べる強度画像は、実数部と虚数部を組み合わせたものであり、フーリエ変換を適用した後の各画像画素における複素数データ点に対して√(R
2+I
2)(ここで、Rは実数成分、Iは虚数成分)として計算される。また、任意の適切な再構成技術を用いて、強度画像を形成してもよい。一実施形態によると、強度画像は従来方法で生成される。
【0060】
操作410において、画像生成部202は、k空間データから位相画像の生成を行う。位相画像は、フーリエ変換した後の各画像画素における複素数データ点に対してtan
−1(I/R)として計算される。また、位相は、複素数の複素引数として知られている。位相画像再構成は、任意の適切な再構成技術に従って実行してもよい。実施形態によっては、位相画像は、磁場不均一性と位相折り返しを取り除いた後で、再構成される。後述の
図5は、一実施形態による位相画像を形成する技術を示す。
【0061】
操作412において、例えば、画像生成部202は、操作408で生成された強度画像と、操作410で生成された位相画像を基に、合成画像を生成する。合成画像は、一実施形態によると、第1の色表示チャネル上で受信した位相画像と、第2の色表示チャネル上で受信した強度画像とを合成することにより得られる、合成カラー画像である。対応する強度画像と位相画像を、異なる色表示チャネルへの入力として用いて(例えば、シアンのチャネルを強度画像に割り当て、マゼンタのチャネルを位相画像に割り当てる)、合成カラー画像を生成してもよい。色表示チャネルの割り当ては、当然ながら、フレキシブルであり、操作者により制御される。色表示チャネルは、CMYK、RGB(これらに限定されない)等の色モデルのそれぞれのチャネルを有してもよい。第1の色表示チャネルと第2の色表示チャネルとで異なる色とするのが好ましいが、実施形態によっては、第1の色表示チャネルと第2の色表示チャネルが同じ色を表示してもよい。例えば、第1の表示チャネルと第2の表示チャネルの両方を、グレースケール等の単色用に構成してもよい。しかし、同一色が第1の表示チャネルと第2の表示チャネルに割り当てられると、操作者は、合成画像において、強度画像に起因する諸相と位相画像に起因する諸相とを区別できなくなることがある。
【0062】
換言すると、画像生成部202は、第1のスケール係数に基づいて位相画像に対して、第1の色相の色系列を割り当て、第2のスケール係数に基づいて強度画像に対して第2の色相の色系列を割り当てることにより、合成画像を生成する。
【0063】
ここで、スケール係数は、色表示チャネルにおける色と画像との対応関係を表す係数である。例えば、「マゼンタ」という色は、16進表記で、「#EC008C」に対応し、RGB表記で「255、0、255」に対応し、CMYK表記で「0、100、0、0」、マンセル値の表記で「5RP 5/14」に対応する。スケール係数は、画像の信号値と、信号値の対応関係を示す識別子である。例えば、画像生成部202は、第1のスケール係数として、信号値が「0.1」の値に対して、「5RP 1/14」の色、すなわち、色相が「5RP」(マゼンタ)であり、明度が「1」であり、彩度が「14」である色を割り当てる。また、例えば、画像生成部202は、第1のスケール係数として、信号値が「0.2」の値に対して、「5RP 2/14」の色、すなわち、色相が「5RP」(マゼンタ)であり、明度が「2」であり、彩度が「14」である色を割り当てる。また、スケール係数の例はこれに限られず、例えば異なる信号値に対して、異なる彩度や輝度を割り当てても良い。
【0064】
スケール係数の別の例として、例えば、画像生成部202は、第1のスケール係数として、信号値が「0」の値に対して、RGB表記で、「255、0、255」の色を割り当てる。また、画像生成部202は、第1のスケール係数として、信号値が「0.5」の値に対して、RGB表記で、「255、122、123」の色を割り当てる。また、画像生成部202は、第1のスケール係数として、信号値が「1.0」の値に対して、RGB表記で、「255、255、0」の色を割り当てる。このようにして、画像生成部202は、画像の異なる信号値に対して、異なる色を割り当てる。
【0065】
変形例として、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、ユーザから第1のスケール係数及び第2のスケール係数の入力を受け付ける入力部を更に備え、画像生成部202は、当該入力部で受け付けた入力結果に基づいて、合成画像を生成してもよい。ここで、入力部の例としては、例えば
図1におけるキーボード26等であり、また入力部は、
図2の入力部214のように画像生成部202の中に組み込まれても良い。
【0066】
個々の色表示チャネル毎にカラースケール(例えば、比率)やコントラスト(例えば、ダイナミックレンジ)を別々に(すなわち、独立して)調整して、例えば、ある種類の組織の強度情報または位相情報を強調し、または抑制するように、合成画像コントラストを実現してもよい。実施形態によっては、輝度等、合成カラー画像に影響を及ぼす他のパラメータを設定してもよい。さらに、色表示チャネルは、独立して設定してもよく、または、1対として設定してもよい。例えば、合成画像が2つの色表示チャネルに基づく一実施形態において、第1のチャネルのスケーリングを第1の割合(例えば、60%)に調整することにより、自動的に第2のチャネルのスケーリング(例えば、40%)を調整することができる。
【0067】
所望の合成画像コントラストを実現するために、個々の色表示チャネル毎のダイナミックレンジとコントラストを独立して調整することができる。例えば、操作者は、最適なコントラストを実現するために、強度画像と位相画像の一方または両方のダイナミックレンジを調整してもよい。同様に、強度画像と位相画像の一方または両方の輝度を、独立して調整することができる。
【0068】
色の合成は、線形伸張やヒストグラム平坦化等の標準的な色合成技術を含む、任意の色合成技術に基づいてもよい。他の色合成技術として、例えば、画素単位で(すなわち、合成画像の画素毎に)、対応する画素を加算し、画素間の差分を取り、または他の合成技術を用いてもよい。
【0069】
操作414において、表示部(例えば、
図1のディスプレイ24や
図2のディスプレイ206)は、診断のために合成画像を表示する。表示部は、例えば、形成された合成画像だけ、または、形成された合成画像及び強度画像と位相画像の一方または両方を、操作者または放射線医が見るために、UI300等のUIに表示してもよい。
【0070】
操作416において、システム制御部22は、合成画像は最適であるとユーザが入力したか否かをもとに移行の処理を変化させてもよい。合成画像が最適であるとユーザが入力していない場合(操作416否定)、すなわち合成画像が満足できるものでない場合、システム制御部22は、操作418において、合成画像を改善するための1以上のユーザ入力を再受け付けする。システム制御部22は、受け付けた入力データをMRIデータプロセッサ42に送信する。MRIデータプロセッサ42は、システム制御部22が受け付けた入力データを基に、操作412に戻り、新たな合成画像を生成する。換言すると、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、生成された合成画像を表示する表示部(例えばディスプレイ24)と、表示部に表示された結果に基づいて、ユーザから入力を受け付ける入力部(例えばキーボード26)とを更に備え、画像生成部202は、入力部214で受け付けた入力結果に基づいて、更に合成画像を生成する。
【0071】
操作412〜416は、強度画像と位相画像がユーザ制御部の影響を受ける度に、繰り返してもよい。実施形態によっては、操作418において、ユーザは、画像スケール制御インタフェース304、色選択インタフェース306、コントラスト制御インタフェース308、及び輝度制御インタフェース310のうち1以上を操作して、強度画像と位相画像の合成を制御してもよい。
【0072】
ユーザ制御部はUI300内に設けてもよく、そうすることによって、操作者が組織の特徴を容易に評価し可視化することができる。所望の合成画像コントラストを実現するために、合成カラー画像と、個々の色表示チャネル毎のカラースケール及びコントラストを調整するツールとを表示するよう、UIを構成してもよい。また、実施形態によっては、UIが、強度画像と位相画像の少なくとも一方を表示できるようにしてもよい。UIは、各特徴がより良く可視化できるように色制御のスケールを含んでもよい。UIは、対象とする組織の特徴について所望のコントラストが得られるように、位相と強度の両方のダイナミックレンジを制御するためのバーを含む。例えば、強度チャネル及び位相チャネルのダイナミックレンジが適切であると、骨の種類の違いだけでなく、骨密度の違いも見ることができる場合がある。UIの例を
図3に示す。
【0073】
操作416において、操作者にとって合成画像が満足できるものであれば(操作416肯定)、合成プロセス400は終了する。一実施形態によると、合成画像が満足できるものか否かの判定は、操作者が、合成画像において、特定の臨床診断的様相を視覚的に見分けられるか否かに基づく。例えば、別個の強度画像と位相画像のいずれにおいても明瞭性が不十分で視覚的に見分けることのできない特定の臨床的様相が、合成画像において見分けられる場合がある。例を
図6及び
図7に示す。実施形態によっては、合成画像が満足できるものか否かの判定を自動化してもよい。例えば、画像内に明確な臨床的特徴を視覚的に示すことができる自動画像解析に基づいて、判定してもよい。
【0074】
図5は、実施形態に係る位相画像の生成プロセス500に係るフローチャートである。一実施形態によると、生成プロセス500を実行する際に、操作504〜508は、その1以上を実行しなくてもよく、図示されている以外の順番で実行されてもよい。画像生成部202は、例えば、上述の合成プロセス400で使用する位相画像を生成するため、生成プロセス500を実行してもよい。
【0075】
操作502でプロセスを開始した後、操作504において、1以上の低分解能画像が生成される。一実施形態によると、例えば、画像再構成の前に同じk空間データをローパスフィルタ処理して低分解能画像を再構成することにより、位相画像を生成することができる。
【0076】
操作506において、低分解能の位相画像の複素共役に、高分解能画像を乗算する。次に、結果として得られた画像の位相、すなわちexp(i*(Φ
h−Φ
l))から、所望の位相画像が生成される。ここで、Φ
hは強度画像と同時に取得される最大分解能画像の位相を表し、Φ
lは低分解能画像の位相を表す。
【0077】
操作508において、合成で用いる位相画像が、操作506における計算に基づき取得される。
【0078】
次に、実施形態に係る強度画像、位相画像、及び合成画像の特徴について説明する。
【0079】
図6Aは、実施形態に係る強度画像の一例である。
図6Aは、例えば強度画像生成部212が生成した、異なる組織である組織A,組織B,組織Cが描出された強度画像の一例を示している。例えば、組織Aが第1の筋肉組織、組織Bが第2の筋肉組織であり、組織Cが骨であるような場合を想定している。
図6Aでは、組織A(第1の筋肉組織)と組織C(骨)が同じような信号輝度で描出されている。一方で、組織B(第2の筋肉組織)は、組織A(第1の筋肉組織)及び組織C(骨)よりも明るく描出される。したがって、ユーザは、強度画像においては、組織Bと組織A(又は組織Bと組織C)を区別できるが、組織Aと組織Cを区別することが困難である。
【0080】
図6Bは、実施形態に係る位相画像の一例である。すでに述べたように、UTE撮像を行った時、筋肉と骨は、位相画像において異なる信号強度の振る舞いを有する。例えば、骨におけるプロトンは、筋肉におけるプロトンに比べて動きが少ないため、位相画像における信号強度としては、ほとんど値を持たず、「ブラック」な(暗い)信号となる。これに対して、筋肉におけるプロトンは、骨におけるプロトンと比べて、動いているため、位相画像における信号強度としては、「ホワイト」な(明るい)信号となっている。この結果、
図6Bに示すように、位相画像においては、組織C(骨)の信号値が、組織A及び組織B(筋肉)の信号値より、低下する。これにより、画像生成部202は、脂肪抑制画像に類似した画像を得ることができる。
【0081】
図6Cは、実施形態に係る合成画像の一例である。強度画像及び位相画像のブレンド比を適宜調整することにより、例えば
図6Cのように、画像生成部202は、組織A,組織B,組織Cを明瞭に区別することのできる画像を生成することができる。具体的には、強度画像では、組織A及び組織Cと、組織Bとの間で信号強度に第1のコントラストが生じた。また、位相画像では、組織A及び組織Bと、組織Cとの間で信号強度に第2のコントラストが生じた。合成画像では、合成条件を適宜変えることにより、画像生成部202は、第1のコントラスト及び第2のコントラストの両方が保存された画像を生成することができ、診断に役立てることができる。
【0082】
図7と
図8は、それぞれ実施形態により形成された膝のMRIスキャンと肺のMRIスキャンを示す。東芝Vantage Titan 3Tスキャナ(日本、大田原市)でスポイルドグラディエントエコーモードにて実行する3DラジアルUTEシーケンスを用いて、イメージング実験を行った。共通の収集パラメータとして、FA=5°、等価の読み出しマトリクス424*424、ADCピッチ時間=4μs、TE/TR=0.19ms/5.0msとした。膝のイメージングについて、6分24秒で76800本の放射状ラインをサンプリングし、画像分解能は等方的に0.63mmであった。肺のイメージングについて、7分24秒で38400本の放射状ラインを呼吸ゲート法でサンプリングし、画像分解能は等方的に1.18mmであった。造影剤は投与しなかった。
【0083】
図7は、実施形態に係る膝領域の強度画像602、位相画像604、及び合成画像606の例である。全ての画像において、膝関節軟骨が極めて詳細に描写されている。
【0084】
図7の左列は、強度画像602を示している。強度画像602では、筋肉よりも脂肪信号の方が僅かに明るい。軟骨の可視化は、脂肪信号によって不明瞭になる(矢印610で示された部位を参照)。
【0085】
図7の中央の列は、位相画像604を示している。相対的にコントラストが弱いにもかかわらず、位相画像604では、脂肪信号(暗色)と水信号(グレー)の違いがはっきりと見られ、より良く可視化された構造的特徴も見られる(612等の短い矢印で示された部位を参照)。
【0086】
図7の右列は、合成画像606を示している。モノクロで示されているが、画像生成部202は、合成画像606を、カラ―画像として生成する。例えば、800M,801M,802M,803M,804M,805M,806M及び807Mで示される領域は、「マゼンタ」で着色されている。また、例えば、800C,801C,802C,803C,804C及び805Cで示される領域は、「シアン」で着色されている。合成画像606により、強度画像602と位相画像604の両方の詳細を、より簡単に(例えば、より良く、すなわち、より明瞭に)同時に見ることができる。例えば、脂肪が支配的なボクセルと水が支配的なボクセルの識別が向上し、これにより、強度画像602と比べ、軟骨(例えば、矢印610で示された部位)及び滑液(例えば、長い矢印614で示された部位)をより良く可視化できる。例えば、ボックス630で示される領域では、位相画像604において高コントラスト領域であるので、合成画像606において、強度画像602のみでは見ることのできなかった微小な構造が正確に描出されている。
【0087】
図8は、実施形態に係る肺領域の強度画像702、位相画像704、及び合成画像706の例である。
【0088】
図8の左列は、強度画像702を示している。強度画像702には、超短TEを用いたことにより、肺実質、大きな裂溝(例えば、強度画像702内の矢印710で示された部位)、及び血管が描写されている。
【0089】
図8の中央の列は、位相画像704を示している。位相画像704は非常に異なるコントラストを示し、強度画像702に対する補足情報が得られる。一部の血管壁は、その内部の血液信号が暗く見えるために、明瞭に可視化される。気道は、おそらく輪状軟骨等の組織があるため、ポジティブコントラストで示されている。また、位相画像704では、肺実質が非常に良く可視化されている。位相画像704には、ネガティブコントラストで大きな裂溝が見える(例えば、位相画像704内の矢印710で示された部位)。
【0090】
図8の右列は、合成画像706を示している。モノクロで示されているが、画像生成部202は、合成画像706を、カラ―画像として生成する。例えば、900M,901M及び902Mで示される領域は、「マゼンタ」で着色されている。また、例えば、900C,901C,902Cで示される領域は、「シアン」で着色されている。
【0091】
合成画像706でも、強度画像702と位相画像704の両方の詳細が見える。例えば、ボックス730で囲まれた領域では、位相画像704において高コントラスト領域であるので、合成画像706において、強度画像702のみによっては見えなかった微小な構造が正確に描出されている。また、肺実質が容易に可視化され(例えば、合成画像706内の矢印710で示された部位)、異なる位相挙動の血管が異なる色で示されている。
【0092】
UTEシーケンスで収集された人体の膝画像と肺画像において、顕著な位相差があることが確認された。この位相差により、組織の特徴を入手するうえでの重要な情報が得られる。強度画像と位相画像を融合して合成画像を得ることにより、強度情報と位相情報を同時に容易に可視化でき、臨床現場においてMR位相情報の利用範囲を広げることができる。
【0093】
上記の実施形態では、合成画像の生成を、磁気共鳴イメージング装置で行う場合について説明した。しかし、上記の合成画像の生成は、例えば、画像処理装置によって行われてもよい。かかる画像処理装置は、UTE撮像を行うことにより収集された位相画像及び強度画像を取得し、位相画像に対して第1の色相の色系列を割り当てた画像と、強度画像に対して第1の色相とは異なる色相である第2の色相の色系列を割り当てた画像とを合成して、合成画像を生成してもよい。
【0094】
以上述べた少なくとも一つの実施形態によれば、強度情報と位相情報を同時に可視化することができる。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。