(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記正極層の電解質層側の面は、JIS B0601:2001(ISO 4287:1997)に規定される最大高さRzが20μm以下である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の二次電池の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されるように正極層における固体電解質層と対抗する面側に位置する正極活物質の粒径を大きくすると、正極層と負極層と間で短絡が生じやすくなる。
【0007】
本発明の目的は、正極層および負極層間を短絡することなく、二次電池の充放電特性を高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、一態様として、基板上に、集電体、正極層、電解質層および負極層が順次積層された二次電池であって、正極層は、重量平均粒子径が2μm以下である粉状体からなる正極活物質を含み、正極層の全領域、または、正極層の電解質層側に位置する一部領域において、粉状体の少なくとも一部は凝集構造を構成している二次電池を提供する。
【0009】
粉状体の重量平均粒子径が2μm以下であることにより、正極層における電解質層に対向する面の表面粗さを低減させることができる。この表面粗さが小さくなることにより、正極層と負極層と間での短絡が生じにくくなる。また、粉状体の少なくとも一部が凝集構造を構成することにより、正極層内の導電材による厚さ方向への導電パスが形成されやすくなり、正極層の導電性を向上させることができる。
【0010】
粉状体の重量平均粒子径は、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。
【0011】
正極層の導電率は、2S/cm以上であることが好ましく、3S/cm以上であることがより好ましく、4S/cm以上であることが特に好ましい。
【0012】
本発明は、他の態様として、基板上に、集電体、正極層、電解質層および負極層が順次積層された二次電池の製造方法であって、金属酸化物からなる正極活物質を、比誘電率が0.1以上10以下の無極性有機溶媒中で粉砕して、重量平均粒子径が2μm以下の粉状体からなる正極活物質を得て、得られた粉状体の正極活物質と、導電助材と、バインダーと、有機溶媒とを含むペーストを形成し、得られたペーストを用いて正極層を形成することを特徴とする二次電池の製造方法を提供する。
【0013】
金属酸化物からなる正極活物質を、比誘電率が0.1以上10以下の無極性有機溶媒中で粉砕することにより、正極活物質表面は無極性溶媒由来の有機物で修飾される。バインダーの溶解性上、ペーストの溶媒には高沸点の極性有機溶媒を使用せざるを得ず、極性の違いから得られた正極活物質はペースト内や、正極層中で凝集構造を構成しやすくなる。それゆえ、正極層の導電性が高まりやすくなる。
【0014】
無極性有機溶媒の比誘電率は0.1以上5以下であることが好ましい。
【0015】
粉状体の重量平均粒子径は、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。
【0016】
上記のペーストを用いて印刷法により集電体上に正極層を形成することにより、効率的に正極層を形成することができる。
【0017】
正極層の導電性をより安定的に高める観点から、正極層に含まれる正極活物質の粉状体の少なくとも一部は凝集構造を構成していることが好ましい。
【0018】
正極層と負極層とが短絡する可能性をより安定的に低減させる観点から、正極層の電解質層側の面は、JIS B0601:2001(ISO 4287:1997)に規定される最大高さRzが20μm以下であることが好ましい。上記の最大高さRzは6μm以下であることがより好ましい。
【0019】
正極層の導電率は、2S/cm以上であることが好ましく、3S/cm以上であることがより好ましく、4S/cm以上であることが特に好ましい。
【0020】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る二次電池を示す断面図である。
図1に示されるように、二次電池100は、基板102上に、集電体104、正極層106、電解質層108および負極層110が順次積層されている。
【0024】
基板102は、集電体104等二次電池100の構成部材を支持する。構造部材が支持できる機械的強度を有する限り、基板102に材料、寸法、形状等の制限は無い。ただし、後に説明する二次電池100の製造工程において、焼成等熱処理が施されるので、熱処理に耐え得る程度の耐熱性を有することが好ましい。また、二次電池100の製造工程において使用される有機溶媒やリチウム塩等に対し化学的安定性を有することが好ましい。基板102として、たとえばガラス基板、金属箔、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のフィルムを例示することができる。
【0025】
集電体104は、正極層106および負極層110に接続され、正極層106および負極層110から電荷を集め、供給する。集電体104は、電解質層108に含まれるポリマー電解質に対し化学的に安定な金属等の導電体からなることが好ましい。集電体104として、アルミニウム、銅、ステンレス鋼を例示することができる。なお、正極層106に接続される集電体104にはアルミニウム、ステンレス鋼が好ましく、負極層110に接続される集電体104には銅、ステンレス鋼が好ましい。
【0026】
正極層106は、二次電池100の正極として機能する。正極層106は、正極活物質および導電助材を含み、バインダーで固着される。正極活物質は粒子状物質(粉状体)であり、リチウム含有複合酸化物、たとえばマンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)を例示することができる。導電助材としてたとえばアセチレンブラックが例示される。バインダーとしてポリエチレンオキサイド(PEO)樹脂、エチレン/プロピレンオキサイド共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂が例示される。バインダーにポリエチレンオキサイド(PEO)樹脂、エチレン/プロピレンオキサイド共重合体を用いる場合は、正極層106には、リチウム塩たとえばリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)が添加されても良い。
【0027】
正極活物質を構成する粉状体は、正極層106の全領域にわたって同一粒径で含まれても良い。この場合、正極層106の全領域に渡る正極活物質を構成する粉状体の平均粒径(重量平均粒径、以下同じ。)は2μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。あるいは、正極活物質を構成する粉状体は、正極層106の厚さ方向において粒径が変化してもよい。この場合、正極層106の電解質層108側に位置する一部領域に含まれる正極活物質を構成する粉状体の平均粒径は2μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。
【0028】
正極層106に含まれる正極活物質を構成する粉状体の平均粒径を、正極層106の全領域にわたって、または、正極層106の電解質層108側に位置する一部領域において、2μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下とすることにより、正極層106における電解質層108に対向する面の表面粗さを小さくすることができる。このため、電解質層108が薄い場合であっても正極層106および負極層110間の短絡の発生を抑制することができる。正極層106における電解質層108に対向する面の好ましい表面粗さの程度として、JIS B0601:2001(ISO 4287:1997)に規定される最大高さRzが20μm以下であることが例示される。上記の最大高さRzは、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。
【0029】
図5は本発明の一実施形態に係る二次電池の正極層の構造を概念的に示す断面図である。
図6は、従来技術の一例に係る二次電池の正極層の構造を概念的に示す断面図である。
図7は、従来技術の他の一例に係る二次電池の正極層の構造を概念的に示す断面図である。
【0030】
図6に示されるように、従来技術の一例に係る二次電池の正極層106’では、正極活物質AMは比較的粗大な粒径(20μm程度が例示される。)を有する粉状体からなる。このため、正極活物質AMからなる粉状体間に適度な隙間が生じ、この隙間に、バインダーに分散した導電助材EMが充填されて、正極層106’の厚さ方向に導電パスが形成されやすい。このような導電パスEPにより、従来技術の一例に係る二次電池の正極層106’は比較的高い導電率(8S/cm以上が例示される。)を有することができる。しかしながら、このような粗大な粒径を有する粉状体からなる正極活物質AMを備える正極層106’は、電解質層に対向する面の表面粗さが大きくなりやすく、正極層106’と負極層と間での短絡が生じやすい。
【0031】
そこで、
図7に示される二次電池の正極層106”のように、正極活物質AMからなる粉状体の粒径を小さくする(2μm以下が例示される。)ことにより、電解質層に対向する面の表面粗さを小さくして、正極層106”と負極層との間での短絡が生じる可能性を低減させることができる。しかしながら、このように、正極活物質AMからなる粉状体の粒径を小さくすると、隣接する粉状体間の隙間が小さくなり、この隙間内に、バインダーに分散した導電助材EMが充填されにくくなる。このため、正極層106”の厚さ方向に導電パスEPが形成されにくくなって、正極層106”の導電率が低下してしまう(2S/cm未満が例示される。)。
【0032】
そこで、本発明の一実施形態に係る二次電池100では、正極層106の全領域、または、正極層106の電解質層108側に位置する一部領域において、正極活物質AMからなる粉状体は、少なくとも一部が凝集構造AS(
図5中、一例を白い点線で囲まれた領域として示した。)を構成している。
図5に示される正極層106では正極層106の全領域にわたって凝集構造ASが存在する。このような凝集構造ASにより、バインダーに分散した導電助材EMが厚さ方向に連続して位置することが容易となり、その結果、正極層106の厚さ方向に導電パスEPが形成されやすい。この導電パスEPにより電荷の移動が容易に行われるため、正極層106の導電率を高めることが可能である。正極層106の導電率が高まることは、二次電池100の充放電特性を向上させることに資する。限定されない例示として、正極活物質AMからなる粉状体の凝集構造ASを有する正極層106の導電率は、2S/cm以上であることが好ましく、3S/cm以上であることがより好ましく、4S/cm以上であることが特に好ましい。
【0033】
なお、正極層106は、印刷法により形成された後、熱プレスされたものであってもよい。正極層106を印刷法により形成し、熱プレスすることで、正極層106の平坦性が向上し(すなわち、上記の最大高さRzが小さくなり)、正極層106および負極層110間の短絡の可能性をより低くすることができる。
【0034】
電解質層108は、二次電池100の電解質として機能する。電解質層108は、Liイオン伝導性を有する粉末状のガラスセラミックスおよびバインダーを含む。Liイオン伝導性を有するガラスセラミックスとして、Li
4−2xZn
xGeO
4(LISICON)系固体電解質、Li−Al−Ti−PO
4(LATP)系固体電解質、Li
1+XGe
2−yAl
yP
3O
12(LAGP)系固体電解質を例示することができる。バインダーとして、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの共重合体を例示することができる。バインダーには、Liイオン伝導率を向上する支持電解質が添加されてもよく、支持電解質として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を挙げることができる。
【0035】
負極層110は、二次電池100の負極として機能する。負極層110は、負極活物質がバインダーで固着された層であり、炭素系材料を含んでもよい。負極活物質としてハードカーボンが例示できる。バインダーとしてポリエチレンオキサイド(PEO)樹脂、エチレン/プロピレンオキサイド共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂が例示できる。バインダーにポリエチレンオキサイド(PEO)樹脂、エチレン/プロピレンオキサイド共重合体を用いる場合は、負極層110には、リチウム塩たとえばリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)が添加されても良い。
【0036】
以下、全固体型二次電池100の製造方法を説明する。
図2から
図4は、全固体型二次電池100の製造方法を工程順に示した断面図である。
【0037】
まず、
図2に示すように、基板102の上に集電体104を形成する。集電体104の形成には、メッキ法、スパッタ法等を用いることができる。集電体104となる導電皮膜のパターニングには、たとえばフォトマスクを用いた金属層等のエッチング法またはリフトオフ法を用いることができる。
【0038】
次に、
図3に示すように、集電体104の上に正極層106を形成する。正極層106は、印刷および焼成により形成できる。本実施形態に係る製造方法では、次に説明するように、粉状体の正極活物質AMと、導電助材EMと、バインダーと、適切な有機溶媒とを含むペーストを形成し、このペーストを用いて正極層106を印刷法などにより形成する。
【0039】
まず、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)など金属酸化物からなる正極活物質を、比誘電率が0.1以上10以下の無極性有機溶媒中で粉砕して重量平均粒子径が2μm以下の粉状体からなる正極活物質AMを得る。また、上記の正極活物質は無極性有機溶媒中で粉砕されることにより、その粉体表面は無極性有機溶媒由来の有機物で修飾される。この正極活物質を極性溶媒中に分散させると、その極性の差により凝集体を構成する。この正極活物質を用いてペーストを調製することにより、そのペーストから形成された正極層106中において、正極活物質AMの粉状体が凝集構造ASを構成することが容易となる。
【0040】
比誘電率が0.1以上10以下の無極性有機溶媒として、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素化合物(四塩化炭素など水素の全てがハロゲン化されたものを含む。)、酢酸エチル等エステル化合物、ジエチルエーテルなどエーテル化合物が例示される。これらの中でも、比誘電率が0.1以上5以下である無極性溶媒が好ましく、そのような化合物として、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルムなどが例示される。
【0041】
導電助材EMとしてアセチレンブラックが例示される。正極層106内に導電パスを形成しやすくする観点から、導電助材EMの重量平均粒径は、正極活物質AMの粉状体の重量平均粒径よりも小さいことが好ましい。バインダーとしてポリエチレンオキサイド(PEO)樹脂、エチレン/プロピレンオキサイド共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂が例示される。また、適切な有機溶媒として、バインダーの溶解性と、スクリーン印刷による製造工程を加味して、高沸点極性溶媒であるN−メチル−2−ピロリジノンやγ-ブチロラクトンが例示される。
【0042】
こうして得られた正極層106の印刷用のペーストを用いて、例えばスクリーン印刷により正極層106のパターンに印刷する。当該印刷パターンを、たとえば120℃、60分の条件で焼成し、正極層106を形成する。印刷および焼成は、大気雰囲気中で実施することができる。
【0043】
次に、
図4に示すように、正極層106の上に電解質層108を形成する。電解質層108は、印刷および焼成により形成できる。すなわち、電解質層108の印刷用のペーストとして、適切な溶媒で粘度調整されたバインダーに電解質であるガラスセラミックスを混錬したものを調製し、例えばスクリーン印刷により電解質層108のパターンに印刷する。バインダーには、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの共重合体を例示することができ、Liイオン伝導率を向上する支持電解質が添加されてもよく、支持電解質として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を挙げることができる。当該印刷パターンを、たとえば100℃、60分の条件で焼成し、電解質層108を形成する。
【0044】
次に、電解質層108の上に負極層110を積層形成して
図1に示す全固体型二次電池100が製造できる。負極層110は、印刷および焼成により形成できる。すなわち、負極層110の印刷用のペーストとして、適切な溶媒(たとえば、N−メチル−2−ピロリジノン)で粘度調整されたバインダー(たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂)に負極活物質を混錬したもの調製し、例えばスクリーン印刷により負極層110のパターンに印刷する。当該印刷パターンを、たとえば120℃、60分の条件で焼成し、負極層110を形成する。以上のようにして、
図1に示す二次電池100が作製される。作製された全固体型二次電池100は、さらに、100℃、24時間程度の真空加熱乾燥処理を施しても良い。
【0045】
最後に、負極層110にポリマー電解質を塗布・含浸する工程が施される。ポリマー電解質が負極層110や電解質層108に供給されることにより、十分に伝導しきれなかったリチウムイオンが電解質層108内を伝導できるようになり、電解質層108がイオン伝導体として機能するようになる。さらに、100℃、24時間程度の真空加熱乾燥処理を施しても良い。
【0046】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0047】
(実施例1)
重量平均粒径が20μmの市販のマンガン酸リチウムを入手し、市販マンガン酸リチウムにヘプタンを用いて回転数200rpmで48時間のボールミル粉砕を施して、重量平均粒径が0.5μmの粉状体(A)を得た。なお、粉状体の粒径は、大塚電子社製のZeta Potential & Particle Size Analyzer (ELS−Z2)を用いて、動的光散乱(DLS)法により測定した。
【0048】
得られた粉状体(A)を80質量部と、導電材としてのアセチレンブラックを10質量部と、バインダーとしてのポリビニルフッ化ビニリデン(PVdF、クレハ社製「製品名:KF♯1120」)を5質量部と、固体電解質であるLAGPを5質量部と、適量の有機溶媒であるN−メチル−2−ピロリジノンとを混錬してペーストを得た。
【0049】
このペーストを用いて印刷法により集電体上に正極層を形成した。乾燥条件は、大気圧下120℃60分間、および真空環境下100℃24時間であった。
【0050】
(比較例1)
重量平均粒径が20μmの市販のマンガン酸リチウムを入手し、市販マンガン酸リチウムにイソプロピルアルコールを用いて回転数200rpmで48時間のボールミル粉砕を施して、重量平均粒径が0.5μmの粉状体を(B)を得た。
【0051】
得られた粉状体(B)を80質量部と、導電材としてのアセチレンブラックを10質量部と、バインダーとしてのポリビニルフッ化ビニリデン(PVdF、クレハ社製「製品名:KF♯1120」)を5質量部と、固体電解質であるLAGPを5質量部と適量の有機溶媒であるN−メチル−2−ピロリジノンとを混錬してペーストを得た。
【0052】
このペーストを用いて印刷法により集電体上に正極層を形成した。乾燥条件は、大気圧下120℃60分間、および真空環境下100℃24時間であった。
【0053】
(比較例2)
重量平均粒径が20μmの市販のマンガン酸リチウム(C)を80質量部と、導電材としてのアセチレンブラックを10質量部と、バインダーとしてのポリビニルフッ化ビニリデン(PVdF、クレハ社製「製品名:KF♯1120」)を5質量部と、固体電解質であるLAGPを5質量部と、適量の有機溶媒であるN−メチル−2−ピロリジノンとを混錬してペーストを得た。
【0054】
このペーストを用いて印刷法により集電体上に正極層を形成した。乾燥条件は、大気圧下120℃60分間、および真空環境下100℃24時間であった。
【0055】
(試験例1)粉砕後のマンガン酸リチウムの観察
実施例1および比較例1において粉砕したマンガン酸リチウムについて、走査型電子顕微鏡により観察した。その結果、ヘプタン中で粉砕した実施例1に係るマンガン酸リチウムは、
図8に示されるように、凝集構造を構成するものが観察された。これに対し、ヘプタンよりも極性の高いイソプロピルアルコール中で粉砕した比較例1に係るマンガン酸リチウムは、
図9に示されるように、凝集構造を構成するものはほとんど認められなかった。
【0056】
(試験例2)正極層の導電率の測定
実施例1、比較例1および比較例2により作製した正極層の導電率を測定した。その結果を
図10に示す。
図10に示されるように、未粉砕のマンガン酸リチウムを用いた比較例2に係る正極層の導電率が最も高く、イソプロプルアルコール中で粉砕した比較例1に係る正極層の導電率が最も低くなった。ヘプタン中で粉砕した実施例1に係る正極層の導電率は、イソプロプルアルコール中で粉砕した比較例1に係る正極層の導電率よりも高い結果となった。
【0057】
(試験例3)正極層の表面粗さの測定
実施例1、比較例1および比較例2により作製した正極層の表面粗さを測定した。その結果を
図10に示す。
図12に示されるように、未粉砕のマンガン酸リチウムを用いた比較例2に係る正極層の表面粗さが最も大きくRzとして20μm程度であった。これに対し、粉砕品を用いた実施例1および比較例1に係る正極層の表面粗さはいずれもRzとして4μm程度であった。
【0058】
このように、マンガン酸リチウムを粉砕する際の有機溶媒が無極性溶媒であるか否かによって、正極層の表面粗さは変化しなかったが、粉砕の際の有機溶媒が無極性溶媒であることによって、正極層の導電率が高くなった。したがって、マンガン酸リチウムを粉砕する際の有機溶媒を無極性溶媒とすることによって、二次電池における正極層と負極層と間での短絡が生じにくくなるうえに、正極層の導電性を高めて二次電池の充放電特性を高めることが可能である。
【0059】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。