(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
バルブの弁座漏れを検査する検査装置であって、供試弁の二次側にフローセンサを接続し、このフローセンサの二次側に、前記供試弁からの微小漏れを外気に逃がし、かつ変動する外気の浸入を防ぐ逆止め機能を持つタンクを接続したことを特徴とする弁座漏れ検査装置。
前記供試弁の加圧供給側である一次側に第1開閉弁を設け、この第1開閉弁と前記供試弁の一次側との間に圧力計と第1排気弁を設けた請求項1乃至4の何れか1項に記載の弁座漏れ検査装置。
前記供試弁の一次側と二次側をクランプするクランプ治具には、クランプ時のシールのためにOリングを装着した請求項1乃至6の何れか1項に記載の弁座漏れ検査装置。
【背景技術】
【0002】
バルブの製造時に行われる圧力試験には、耐圧部の強度・漏れの有無を確認する弁箱耐圧試験(シェルテスト)と、弁座からの漏れの有無を確認する弁座漏れ試験(シートテスト)があり、出荷前のバルブの試験・検査の中で最も重要とされている。弁座漏れ試験には、バルブの種類・用途・使用環境などに応じて、独立した規格が詳細に設定され、バルブ製品が規格に定義された基準を満たすものであるか否かが試験される。
【0003】
このような規格例として「JISB2003:2013 バルブの検査通則」があり、試験流体としての水又は空気が、所定圧力で弁閉状態のバルブに加圧充填されて弁座漏れが試験される。そして、前記の規格例によれば、例えばレート2、呼び径50Aの空気圧試験の場合におけるバルブの許容漏れ量は、15mm
3/sec以下と規定されることから、相当程度の微小な許容漏れ量となる。
【0004】
従って、このような類の規格に準拠したバルブであるか否かを検査する弁座漏れ検査装置にも、高精度な微小漏れ量検知能力が不可欠となる。
【0005】
従来、上記のような微小漏れ流量を高精度に検査する装置に関し、例えば特許文献1、2が提案されている。同文献1に示される微小流量測定装置では、バルブや管継手などの被測定物を密封容器に収容すると共に、測定時間の短縮を図るため、この密封容器内に所定量の流体を充填する流体充填装置が接続された構成が採られており、被測定物に供給された圧縮空気がシール箇所などから漏洩した場合、密封容器から流出する流体の流量が測定されるものである。
【0006】
同文献2に示されるリークテスト装置は、開閉自在な密封容器内に容器又は管などの供試体を収容し、この供試体に試験用気体を充填する構成が採られており、密封容器には排気流路が接続され、この排気流路に熱式流量計などの質量流量計が設けられていると共に、質量流量計の上流側の開閉弁を介した排気経路と平行なバイパスが設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に示される類の検査装置では、大気の揺らぎの影響を排除した高精度な微小流量測定を実現するため、被測定物を内部に完全に密封する密封機構が必要となるものであるが、この密封機構は、大型な密封容器のほか、シリンダ、電磁弁などから成る複雑かつ高価なものである。よって、この類の検査装置は製作コストが極めて悪くなる問題がある。しかも、ハンドルやフランジのある形状のものを被覆するには密閉容器としてかなり広い容積のもの用意をしなければならない問題もある。
【0009】
特許文献2のリークテスト装置においても、供試体を収容する密封容器が必要なので、密封機構を採用することによる上記問題を有している。また、密閉容器の開閉によって生ずる際の密閉容器内の圧力変動がバイパスの開閉弁を介して排出口に導かれるようにすることで、質量流量計の指示の変動の防止が図られているものの、この質量流量計の二次側は排気口を介して大気に開放されている。一般的にフローセンサの2次側は、試験流体の流れを滞留させず安定した流れとするため、大気側に開放されていることが望ましいとされているが、流量計の二次側が大気開放されている場合、大気圧の揺れが質量流量計に直接影響して測定が不安定になる問題がある。
【0010】
これに対し、大気圧の揺れの影響を拾わないようにするため、例えば単純に質量流量計の二次側を閉塞したとしても、二次側の内圧が上昇するだけであり、この場合は微小な流量が検出可能となるわけではない。従来から、とりわけ微小漏れ流量を高精度に検査する場合においては、大気開放により流量計が悪影響を受ける問題は同文献2に示されるような類の検査装置に共通するものであったが、この問題を効果的に解消した先行技術の提案は未だになされていない。
【0011】
そこで、本発明は上記問題を解決するために開発されたものであり、その目的とするところは、密閉機構を使用しない簡素な構成により装置の大幅なコスト低減と省スペース化を実現すると共に、流量計の二次側を大気開放しつつも大気の揺れなどによる悪影響を極めて効果的に遮蔽することで、微小漏れ流量の高精度な検出を可能とした弁座漏れ検査装置とこれを用いた弁座漏れ検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、バルブの弁座漏れを検査する検査装置であって、供試弁の二次側にフローセンサを接続し、このフローセンサの二次側に、供試弁からの微小漏れを外気に逃がし、かつ変動する外気の浸入を防ぐ逆止め機能を持つタンクを接続した弁座漏れ検査装置である。
【0013】
請求項2に係る発明は、タンクは、軟質製のチューブとし、このチューブに半径方向の切込部を形成して逆止め機能を発揮するようにした弁座漏れ検査装置である。
【0014】
請求項3に係る発明は、フローセンサは、熱式質量流量センサとした弁座漏れ検査装置である。
【0015】
請求項4に係る発明は、チューブを非密封状態のカバーで被覆した弁座漏れ検査装置である。
【0016】
請求項5に係る発明は、供試弁の加圧供給側である一次側に第1開閉弁を設けこの第1開閉弁と供試弁の一次側との間に圧力計と第1排気弁を設けた弁座漏れ検査装置である。
【0017】
請求項6に係る発明は、供試弁の二次側とフローセンサとの間に第2開閉弁と第2排気弁を設けた弁座漏れ検査装置である。
【0018】
請求項7に係る発明は、供試弁の一次側と二次側をクランプするクランプ治具には、クランプ時のシールのためにOリングを装着した弁座漏れ検査装置である。
【0019】
他の発明は、フローセンサの二次側を流下する流体を外気に逃がしつつ、フローセンサの二次側への外気の浸入を防ぐ逆止め機能を維持した状態で流体の流量をフローセンサで測定する検査方法である。
【0020】
また、供試弁の一次側流路を密封空間とし、この密封空間に圧縮エアを供給する一方、供試弁の二次側流路はフローセンサへの接続を断ちつつ大気圧に開放した加圧工程において、所定の加圧時間の後、前記圧縮エアの圧力値が検査圧力以上の場合に、この圧力値を基準値として弁座漏れ検査を行う検査方法である。
【0021】
具体的には、第1開閉弁と第2開閉弁とを閉とし、第1排気弁と第2排気弁とを開とした初期状態において、第1排気弁と第2開閉弁を閉とし、かつ第1開閉弁と第2排気弁を開とした後に加圧供給源である圧縮エアを供給し、圧力計の値が検査圧力以上であれば基準圧力として記憶させるようにした。また、弁座漏れ検査のうち大漏れ検査工程の場合は、第1開閉弁と第1排気弁を閉として、試験流体である圧縮エアを供試弁の一次側に内封させて基準圧力か否かを判別して大漏れ検査工程を行うようにした。一方、弁座漏れ検査のうち微小漏れ検査工程の場合は、第2排気弁を閉とし、かつ第2開閉弁を開として圧力計の値の降下やフローセンサの計測により微小漏れ検査工程を行うようにした。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明によると、フローセンサの二次側に、供試弁からの微小漏れを外気に逃がし、かつ変動する外気の浸入を防ぐ逆止め機能を有するタンクを接続したので、弁座漏れ検査の際は、供試弁の二次側に形成されたフローセンサの検査空間内の試験流体の状態は、内圧の上昇が抑えられて外気圧とほぼ同じ圧力を維持したまま、外気からの揺らぎや逆流などの影響をほぼ受けることなく、弁座から流入する微小漏れ流量とタンクから外気へ流出する流量とが略同じとなる定流量状態となる。このため、少なくともフローセンサ近傍の試験流体は一方向性の略整流状態に維持され、フローセンサは外気からの影響を受けることなく、弁座からの微小漏れのみに起因した大気側へ向かう微小な質量移動量、すなわち弁座漏れ流量にほぼ等しい微小流量を極めて高精度に計測可能となる。よって、極めて高精度かつ安定した弁座漏れ検査が可能となる。
【0023】
また、供試弁を被覆するような密封容器が不要であるから、弁座漏れ検査装置を安価、簡易、かつコンパクトに構成することができると共に、装置の使用性・汎用性も大幅に高まる。
【0024】
請求項2に記載の発明によると、タンクを、半径方向に形成して逆止め機能を発揮するようにした切込部を有する軟質製のチューブとしたので、極めて安価かつ簡易に逆止め機能を持つタンクを構成できる。また、安価で簡素なチューブは容易に交換可能であるから、逆止め機能を持つタンク、延いては弁座漏れ検査装置のメンテナンス性・使用性も大幅に高まる。
【0025】
請求項3に記載の発明によると、フローセンサを熱式質量流量センサとしたので、試験流体としての圧縮エアなどのガスの計測に好適な熱式流量センサが使用可能となると共に、広い流量範囲で高精度な質量流量計測が可能となる。
【0026】
請求項4に記載の発明によると、チューブを非密封状態のカバーで被覆したので、弁座漏れ検査の際、供試弁の二次側に形成されたフローセンサの検査空間内の試験流体に対し、フローセンサの計測に外気が与える揺らぎなどの悪影響を、効果的に遮蔽することができる。よって、弁座漏れ検査をさらに高精度化できる。
【0027】
請求項5に記載の発明によると、供試弁の一次側に第1開閉弁を設け、この第1開閉弁と供試弁の一次側との間に第1排気弁を設けたので、試験流体の充填後にこれらを閉じることで、供試弁の一次側に試験流体を充填して内封することができる。また、第1開閉弁と供試弁の一次側との間に圧力計を設けたので、供試弁の一次側の圧力を計測できる。さらに、これらを組み合わせ、供試弁の一次側に内封された試験流体の圧力を計測することにより、例えば、弁座漏れ検査の初期段階で、弁座漏れの著しい粗悪な供試弁を検出・排除可能となる。
【0028】
請求項6に記載の発明によると、供試弁の二次側とフローセンサとの間に第2開閉弁を設けたので、弁座漏れ検査における試験流体の充填の際、これを閉じることで、試験流体のフローセンサ側への流入を阻止することができ、計測開始前のフローセンサが試験流体から悪影響を受けることがない。また、第2排気弁を設けたので、これを開けることで、供試弁の二次側を大気圧に開放することができる。さらに、第2排気弁を開け、第2開閉弁を閉じると、供試弁の二次側が大気側に開放されることにより、供試弁の一次側への圧縮エアの供給に伴って生ずる、供試弁の二次側における圧力変動を緩和できる。
【0029】
請求項7に記載の発明によると、クランプ治具には、クランプ時のシールのためにOリングを装着したので、供試弁とクランプ治具との間をOリングにて簡単にシール可能となると共に、供試弁とクランプ治具との間のクランプ箇所の耐圧性が極めて向上して圧力による弾性変形が防止され、もってフローセンサによる高精度な流量計測を行うことができる。
【0030】
他の発明によると、フローセンサの二次側を外気に逃がしつつ、外気の浸入を防いだ状態で流量を測定するから、極めて微小な流量の場合であっても、フローセンサに曝される測定対象流体の流れは、高精度にその微小な流量に応じた流れとなり、外気による揺らぎや逆流などによる影響が極めて低減され、もって高精度な微小流量測定が可能となる。
【0031】
また、各弁と圧縮エアとの適切な制御操作により供試弁の一次側の流路空間内の試験流体の内圧と検査圧力とを比較判別する検査工程が可能となり、この工程でフローセンサによる流量計測前に不合格品を適切に検出・排除することで、弁座漏れ検査を合理化することができると共に、個々の供試弁に応じた検査圧力以上の適切な圧力を、基準圧力として抽出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明の弁座漏れ検査装置とこれを用いた弁座漏れ検査方法の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0034】
図1は、本実施形態における本発明の弁座漏れ検査装置の構成を示したブロック図であり、1は第1開閉弁、2は第1排気弁、3は第2排気弁、4は第2開閉弁、5は供試弁、6はクランプ治具、7はフローセンサ、8はタンク、9は圧力計、10、11はそれぞれ2次側流路、12は1次側流路を示している。
【0035】
図1に示すように、本実施形態の弁座漏れ検査装置は、バルブの弁座漏れを検査する検査装置であって、供試弁5の二次側に、2次側流路10、11を介して、フローセンサ7を接続し、このフローセンサ7の二次側に、供試弁5からの微小漏れを外気に逃がし、かつ変動する外気の浸入を防ぐ逆止め機能を持つタンク8を接続している。また、供試弁5の加圧供給側である一次側に、1次側流路12を介して、第1開閉弁1を設け、この第1開閉弁1と供試弁5の一次側との間に、圧力計9及び排気路を介した第1排気弁2を設けると共に、供試弁5の二次側とフローセンサ7との間に第2開閉弁4及び排気路を介した第2排気弁3を設けている。
【0036】
試験流体の加圧供給源は図示していないが、本実施形態では同図において第1開閉弁1の左側(1次側)に接続され、試験流体が第1開閉弁1を介して1次側流路12内へ供給可能となる。なお、試験流体も適宜選択可能であるが、本実施形態では圧縮エアを使用している。また、第1排気弁2を開けると、1次側流路12内部が大気側へ開放され、また、1次側流路12内部の内圧は、圧力計9で計測可能である。同様に、第2排気弁を開けると、2次側流路10内部が大気側へ開放され、第2開閉弁4の開閉により、2次側流路10と11との間が開閉されると共に、2次側流路10乃至11内の試験流体の流量は、フローセンサ7で計測可能である。
【0037】
フローセンサ7は、所定レベルの微小流量が計測可能な流量計であればとくに制限はないものの、熱式質量流量センサが好適である。本実施形態では、この熱式質量流量センサとして、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術などを利用した半導体式の少なくとも0.15ml/min程度の質量流量測定能力を有する所定の熱式マイクロフローセンサを使用している。近年、この種のマイクロフローセンサは、MEMS技術などによるマイクロ化により、高感度かつワイドレンジ(流量)、高速応答、低消費電力、かつ省スペースな各種のフローセンサを利用することが可能である。
【0038】
上記センサの基本構造の一例としては、一辺約1.7mm、厚さ約0.5mmのシリコンチップを基台として、基台中央に形成された深さ約200μmのキャビティ上に窒化シリコン製の厚さ約1μmのダイヤフラムが設けられ、このダイヤフラムの中央にヒータを、ヒータの両側に上流側および下流側の温度センサ(白金薄膜などで形成された測温抵抗体)をそれぞれ設けてマイクロフローセンサが構成され、これがセンサ素子となる。流体に流れがある場合、ヒータに対して上流側と下流側の温度分布が非対称に勾配を生じることから、上流側および下流側の各温度センサに抵抗値差が生じる。この抵抗値差を、ヒータを所定の制御回路で流体温度より高い一定温度に制御しつつ、所定の抵抗ブリッジからなる出力回路により電圧差として取り出し、取り出された出力値が、所定の関数でセンサ上面を流れる流体の質量流速に変換される。センサ近傍の質量流速勾配は、フローチャンネルの各種の特性(流路径、絞りなどの整流機構、平均流速など)や、流体の種類、あるいはフローセンサの設置状態などで決まることから、フローセンサを用途に合った口径のフローチャンネルに設置し、予め精密な流量校正(センサ出力と流量の関係の取得)を行うことで、計測データから極めて高い再現性で流量値が得られる。
【0039】
また、フローセンサ7にて弁座からの微小漏れ流量を計測する段階では、第2排気弁3を閉じ、第2開閉弁4を開けた状態における供試弁5の二次側の流路内部空間、すなわち
図1においては閉じた状態の供試弁5の弁座、第2排気弁3、およびタンク8で閉塞された2次側流路10、11の内部空間が、フローセンサ7の検査空間となる。
【0040】
第1開閉弁1、第1排気弁2、第2排気弁3、第2開閉弁4は、それぞれ開閉制御可能なバルブであれば制限はないが、本例では所定の電磁弁(ソレノイドバルブ)を使用している。また、圧力計9は、例えば1KPa(0.01気圧程度)程度の圧力測定能力を有する所定の圧力計を使用している。さらに、図示していないが本発明の弁座漏れ検査装置は、各種の弁やセンサに接続された制御部(マイコン)が備えられている。制御部は、例えば、基準圧力などの記憶手段(メモリ)、弁駆動部、演算処理部、データ入出力部などを有するほか、インタフェース部、表示部なども備えられ、弁の開閉や測定値の処理などの各種処理・工程を制御可能に構成されている。
【0041】
図2は、本発明の弁座漏れ検査装置に供試弁5をクランプ治具6、6’でクランプした状態を示した断面図である。供試弁5には特に制限はなく本発明の実施に応じて適宜選択可能であるが、同図に示すように、本実施形態においては、供試弁5として呼び径80Aのフランジ接続形鋳鉄製グローブ弁を用いている。供試弁5としてはこの他、例えば呼び径1/4〜1/2インチのねじ込み接続形のゲート弁やグローブ弁、呼び径40〜80A(mm)のフランジ接続形のゲート弁やグローブ弁などでもよく、その他の各種バルブに適用できる。
【0042】
図2に示す供試弁5は、ステム14の頂部にはハンドル13が設けられ、ステム14はねじ部やパッキンなどを介して軸装部に軸着しており、ハンドル13の回動によりステム14は軸装部を回動しながら上下動可能となっている。また、ステム14の下部には弁体15が加締め固定され、この弁体15は、ステム14と供回りしながら弁室内を上下動することで弁座50に着座・離間し、これにより供試弁5が開閉される。
【0043】
図2に示すように、供試弁5は、1次側領域16の端面と2次側領域19の端面が、それぞれ左右から円板状のクランプ治具6、6’でクランプ(挟持固定)されている。この状態で、1次側領域16の端面が図左側のクランプ治具6のOリング17に圧接されることで外気からシールされつつ、1次側領域16が流路孔18と連通接続している。同様に、2次側領域19の端面も図右側のクランプ治具6’のOリング17’に圧接シールされ、2次側領域19が流路孔18’と連通接続している。Oリング17、17’は、供試弁5の1次側領域16あるいは2次側領域19の端面をシール可能な形状であり、本実施形態においては、流路孔18、18’と同心円状にクランプ治具6の端面の装着溝に装着されている。流路孔18は、
図1における1次側流路12に連通し、流路孔18’は、
図1における2次側流路10に連通している。
【0044】
図3は、
図2におけるクランプ治具6に、Oリング17、17’に替えて、クランプ時のシールのためにゴム製厚肉ディスク状のシール部材20、20’を装着した状態を示している。シール部材20は全面ゴム製の押さえ治具であり、クランプ治具6を異なる形状・サイズのバルブのクランプに共用化するために好適であるが、このシール部材20でシールした場合、弾性を有するシール部位の面積が大き過ぎることから、一次側16に圧縮エアを加圧充填した際、試験流体の圧力によりシール部材20、20’が弾性変形して揺らぎを生じやすくなり、この揺らぎが弁体15に影響して2次側領域19の内圧が変動し、フローセンサ7による微小な流量計測に悪影響を及ぼしやすくなる。よって、
図2に示すOリング17ように、バルブの形状・サイズに適合して弾性シール部位の面積を必要最小限とし内圧による弾性変形で揺らいだりすることがないシール部材によるシールが好適である。
【0045】
図4は、本実施形態における弁座漏れ検査装置のタンクとカバーの構造を示しており、
図1に模式的に示したタンク8の要部を拡大した部分拡大断面図である。前述のように本発明のタンク8は、供試弁5からの微小漏れを外気に逃がし、かつ変動する外気の浸入を防ぐ逆止め機能を持っている。
図1に示したタンク8は、
図4に示した軟質製のチューブ30に対応しており、円筒形状のチューブ30には半径方向の切込部32を形成して逆止め機能を発揮するようにしていると共に、このチューブ30を非密封状態のカバー23で被覆している。
【0046】
図4に示すように、カバー23は、透明なアクリル製円筒形状部材であって、両端部が金属製の基部22、22’の側面にそれぞれ形成された円形状凹部24、24’に非シール状態で着脱可能に装着されている。この非シール状態は、円形状凹部24、24’と、カバー23の両端部との間に僅かな隙間が空くように遊嵌固定されていることによる。同図右側に示す基部22には、
図1に示した2次側流路11と連通接続した流路孔25が形成され、流路孔25の開口端部には、継手26の雄ねじ部27を螺合可能なめねじ部28が形成されている。
【0047】
本発明の弁座漏れ検査装置のカバーは、タンク外周付近の大気の乱れや振動などからタンクを保護し、タンクの持つ微少量排気の逆止め機能を安定して発揮させることを目的としており、一方で、タンクを完全に密閉してしまうと、タンクから排気されたエアがカバー内に充満してタンクからのエア排気ができなくなりタンクの内圧が上昇してしまうことから、非密封構造でタンクを被覆するものである。よって、このような機能を発揮するカバーであれば、上記実施の形態に示したものに限定されないものであって、例えばカバー23の形状ように、円筒形状に限られず、その他、材質や大きさ、さらにタンクを非密封状態で被覆する構造などにも制限はない。このため、例えば、カバー23に適当なスリットなどを設けてタンク8の非密封状態を確保してもよい。
【0048】
チューブ30は、樹脂製などの軟質製筒状部材であり、本例では、シリコン製のソフトホース(ポリウレタンチューブ)を使用しており、同図に示すように、一端部は蓋部材31で閉塞され、他端部が継手26に接続されている。継手26も金属製の略筒状部材であり、一端部に雄ねじ部27が形成され、他端部がチューブ30に接続されている。このため、チューブ30の内部と継手26の内部とは連通している。また、チューブ30の内径側と継手26の内径側には、耐圧用の筒状部材29が挿通するように設けられ、チューブ30と継手26の接続部が強化されている。
【0049】
図4において、チューブ30の適当な中腹上半位置には、半径方向を向くように適宜の深さ・幅の切込部32が1本形成されている。この切込部32は、チューブ30に内圧が加わっていない時は閉じて外気を遮断可能な弁スリットとして機能する逆止め作用を有する。これに対して、切込部32が内圧によらず常時開いている単なるスリットの場合は、弁座漏れにより僅かに上昇する内圧がチューブ30内で維持されず、これにより切込部32を介してチューブ30内に外気が浸入し易くなることから、好ましくない。この切込部32の逆止め作用は後述する。
【0050】
図4に示すように、継手26の雄ねじ部27を基台22のめねじ部28へ螺合することで、チューブ30をワンタッチ式に基台22へ着脱可能となっており、弁座漏れ検査の際には、継手26を介してチューブ30が基台22に接続され、チューブ30を被覆するように、カバー23が基台22、22’に装着される。また、基台22に接続完了後は、チューブ30の内部、継手26の内部、および流路孔25の内部が、外部に対してシール状態で連通した空間を形成し、この空間内の流体は、同図において切込部32の開閉のみで外部と連通可能となる。
【0051】
本実施形態では、チューブ30は、外径Φ6mm、内径Φ4mm、長さ30mmであり、筒状部材(耐圧ホース)29は、外径Φ4mm、内径Φ2mmであり、切込部32の幅は0.2mmに形成している。また、蓋部材31側のチューブ30一端から雄ねじ部27側の継手26一端までの全長は、50mmである。
【0052】
本発明の弁座漏れ検査装置のタンクは、弁座漏れ検査工程において、弁閉状態の供試弁の弁座から二次側に漏れ出た微小流量のエアを、その流れを妨げないように大気に逃がす一方、大気の変動がフローセンサに及ばないようにすることを目的として、フローセンサの二次側に設けられており、具体的には、フローセンサの二次側に漏れ出たエアーの圧力をそのまま維持する領域を、省スペースで形成するために設けられている。バルブのような大容量の容器から漏れる流量の感度を保つには、大気圧開放状況では感度の維持ができないため、超低抵抗での流量制御が必要となるためである。
【0053】
よって、本発明のタンクに必要となる機能は、少なくとも、弁座漏れ検査装置の簡素化・省スペース化機能と、二次側の大気開放によりフローセンサの流量計測が受ける外気の揺らぎなどによる悪影響の防止機能、そして弁座漏れによる微小なタンク内圧の上昇に応じた微小流量の安定したリリーフ機能である。
【0054】
このような機能を発揮するタンクであれば、上記実施形態に示したタンク5(チューブ30)に制限されるものではなく、その形状、材質、大きさ・サイズ、硬度、取付け態様等、さらに、逆止め機能を発揮する構造(切込部32の構造)は、検査対象となる供試弁の種類・使用条件などに応じて適宜選択可能である。例えば、微小流量により弁開状態となる逆止弁、微小圧で開くチャッキ弁、二次側に小さな穴の開いた金属製タンクなどにより、上記本発明のタンクの機能の発揮を図るようにしてもよく、また、切込部32の構造も、上記実施形態に示した構造に限らず、切込の本数、方向、位置、幅・深さ、あるいは切込の形状(一字状の他、十字状、*状など、さらに星状など任意の形状への打ち抜き)等も、実施に応じて適宜選択可能である。
【0055】
これに対し、例えば、フローセンサを備えた流路(
図1においては2次側流路11)を長尺配管として大気開放箇所をフローセンサから遠く離して大気からの影響を抑制するようにしたり、あるいは従来のようにフローセンサの2次側を密封容器で密封するようにしても、装置の簡素化あるいは省スペース化を実現できない問題が残るので、本発明の課題の解決手段となりえない。
【0056】
次に、本発明の検査方法の一例を説明する。本実施形態は、前述した本発明の弁座漏れ検査装置を使用した弁座漏れ検査方法である。
図5は、本発明の弁座漏れ検査方法を説明したフローチャート図である。本発明の検査方法は、フローセンサ7の二次側を流下する流体を外気に逃がしつつ、フローセンサ7の二次側への外気の浸入を防ぐ逆止め機能を維持した状態で流体の流量をフローセンサ7で測定するものである。
【0057】
供試弁5の弁座漏れ検査方法を実施する際は、
図2、3で説明すると、供試弁5の弁体15を所定のシール力で弁座50に着座させると共に、1次側と2次側をクランプ治具6、6’でクランプし、1次側領域16に試験流体である圧縮エアを加圧充填した状態で、試験流体が弁座50から2次側領域19へ漏れる弁座漏れ流量を検査するものである。試験流体の弁座漏れ流量は、閉弁した弁体15と弁座50のシール状態などに応じて様々な値をとり得る。
【0058】
図5において、ステップS0は、本発明の弁座漏れ検査方法における初期状態を示している。初期状態では、第1開閉弁1と第2開閉弁4とを閉とし、第1排気弁2と第2排気弁3とを開としている。第1開閉弁1を閉じていることで、図示しない加圧供給源から圧縮エアは供試弁5に供給されず、第2開閉弁4を閉じていることで、供試弁5とフローセンサ7との間が気密に遮断されている。また、第1排気弁2、第2排気弁3を開けていることで、供試弁5の1次側流路12内、2次側流路10内を、それぞれ大気圧に開放している。
【0059】
図5において、ステップS1、S2、S3は、本発明の弁座漏れ検査方法の加圧工程を示している。この加圧工程は、供試弁5の一次側流路12を密封空間とし、この密封空間に圧縮エアを供給する一方、供試弁5の二次側流路10はフローセンサ7への接続を断ちつつ大気圧に開放する。そして、所定の加圧時間の後、圧縮エアの圧力値が検査圧力以上の場合に、この圧力値を基準値として弁座漏れ検査を行う。
【0060】
ステップS1においては、第1排気弁2と第2開閉弁4とを閉とし、かつ第1開閉弁1と第2排気弁3とを開とし、この状態で、加圧供給源から圧縮エアが1次側流路12内に加圧供給される。圧縮エアの供給圧、すなわち検査圧力は、例えば0.6MPaなどの所定圧力に設定される。第1排気弁2を閉じることで1次側流路12内は密封空間となり圧縮エアを加圧充填可能となる。この際、第2排気弁3を開として2次側流路10内を大気圧に開放していることで、供試弁5の一次側への圧縮エアの供給に伴って生ずる供試弁5の二次側における圧力変動を緩和するようにしている。また、第2開閉弁4を閉じることで、供試弁5の2次側の圧力変動が計測開始前のフローセンサ7に影響することを防止している。上記供試弁5の1次側への試験圧力による圧縮エアの加圧時間は、例えば5〜10秒などの所定時間に設定される。なお、上記工程を
図2、3で説明すると、所定の弁閉状態にある供試弁5に対し、その1次側16に圧縮エアが加圧充填され、弁座50が弁座漏れを生じる状態の場合、加圧充填された圧縮エアが供試弁5の弁座漏れ流量として2次側19に漏出するようになる。
【0061】
ステップS2においては、ステップS1における所定の加圧時間の後、圧力計9による計測圧力が検査圧力(0.6MPa)以上であるか否かを判定する。計測圧力が検査圧力未満の場合は、大量の弁座漏れが生じていると判断できることから不合格と判断(No判定)し、ステップS3へ検査を進め、計測圧力が検査圧力以上である場合は合格と判断(Yes判定)し、ステップS4へ検査を進める。ステップS3においては、第1開閉弁1を閉じ、第1排気弁2を開けて1次側流路12内の圧縮エアを大気開放し、検査を初期状態へ戻す。
【0062】
上記加圧工程を備えることにより、大量の弁座漏れを生じる供試弁を、検査工程の初期段階で検知・除去可能となり、弁座漏れ検査方法を合理化することができる。
【0063】
ステップS4においては、ステップS2における圧力計9における上記計測圧力が検査圧力以上である場合において、その計測圧力を基準圧力として弁座漏れ検査装置の記憶手段に記憶させる。この基準圧力は、後の工程で所定の基準値として使用される。
【0064】
図5において、ステップS5、S6、S7は、本発明の弁座漏れ検査方法の大漏れ検査工程を示している。大漏れ検査工程では、第1開閉弁1と第1排気弁2を閉として、試験流体である圧縮エアを供試弁5の一次側に内封させて基準圧力か否かを判別する。
【0065】
ステップS5においては、第1開閉弁1と第1排気弁2とを閉じて、加圧供給源と供試弁5とを遮断し、圧縮エアを供試弁5の1次側流路12内に内封させるようにする。この際、第2排気弁3は開、第2開閉弁4は閉のままである。
【0066】
ステップS6においては、ステップS5で1次側流路12内に内封した圧縮エアの圧力を、この内封状態を所定時間(3秒など)維持した後に圧力計9で計測し、この計測圧力が所定の第1規定圧力以上であるか否かを判定する。計測圧力が第1規定圧力未満の場合は、弁座漏れが大漏れであると判断できることから不合格と判断(No判定)し、ステップS7へ検査を進め、計測圧力が第1規定圧力以上である場合は合格と判断(Yes判定)し、ステップS8へ検査を進める。この第1規定圧力は、例えば上記基準圧力の98%などの所定圧力に設定される。ステップS7においては、第1開閉弁1を閉じ、第1排気弁2を開けて1次側流路12内の圧縮エアを大気開放し、検査を初期状態へ戻す。
【0067】
上記大漏れ検査工程を備えることにより、所定量の大漏れを生じる供試弁を、フローセンサによる微小漏れ検査工程に進める前に検知・除去可能となり、弁座漏れ検査方法を合理化することができる。フローセンサによる微小漏れ検査は、検査工程・検査時間が比較的大きく、また、大流量計測により校正値が狂うなど、フローセンサ自体の負担・消耗もあることから、この大漏れ検査工程により微小漏れ検査対象とする価値がある供試弁を十分な精度で選別しておくことが好ましい。
【0068】
図5において、ステップS8、S9、S10、S11、S12は、本発明の弁座漏れ検査方法の微小漏れ検査工程を示している。微小漏れ検査工程では、第2排気弁3を閉とし、かつ第2開閉弁4を開として圧力計9の値の降下やフローセンサ9の計測により検査工程を行うようにしている。
【0069】
ステップS8においては、第2排気弁3を閉、第2開閉弁4を開とする。また、第1開閉弁1、第1排気弁2はともに閉のまま維持されている。この状態では、供試弁5の1次側の試験流体は、1次側流路12内への内封が維持され、かつ弁座から漏れる試験流体は、2次側流路10、11を介してフローセンサ7にて検知可能な状態となる。よって圧力計9による圧力降下や、フローセンサ7による流量計測により、微小な弁座漏れ流量を高精度に計測可能な状態となる。
【0070】
ステップS9においては、ステップS8で1次側流路12内に内封した圧縮エアの圧力を、この内封状態を所定の検査時間(20秒など)中に維持して圧力計9で計測し、この計測圧力が所定の第2規定圧力以上であるか否かを判定する。計測圧力が第2規定圧力未満の場合は、弁座漏れが大きい判断できることから不合格と判断(No判定)し、ステップS10へ検査を進め、計測圧力が第2規定圧力以上である場合は合格と判断(Yes判定)し、ステップS11へ検査を進める。この第2規定圧力は、例えば上記基準圧力の96%などの所定圧力に設定される。ステップS10においては、第1開閉弁1を閉じ、第1排気弁2を開けて1次側流路12内の圧縮エアを大気開放し、検査を初期状態へ戻す。
【0071】
ステップS11においては、所定の検査期間内にフローセンサ7で流量計測し、この計測流量が所定の規定流量以下であるか否かを判定する。計測流量が規定流量以上の場合は、弁座漏れに該当することから不合格と判断(No判定)し、ステップS12へ検査を進め、計測流量が規定流量以下である場合は合格と判断(Yes判定)し、ステップS13へ検査を進める。本ステップの検査期間は、例えばステップS9の検査時間(20秒)の内の、後半期間あるいは最後の所定期間(20秒の内の後半ラスト10秒)などの所定期間に設定される。このように検査期間を、ステップS9の検査時間の開始時から所定時間経過後に設定し、第2開閉弁4を開として圧縮エアの開放に伴う2次側流路11内の圧力変動の緩和を待つようにすることで、フローセンサ7による流量計測を安定化させることができる。ステップS12、13においては、第2開閉弁4を閉じ、第2排気弁3を開けて2次側流路10内の圧縮エアを大気開放し、検査を初期状態へ戻す。
【0072】
圧力計9の値の降下と、フローセンサ7の計測とを適切に組み合わせた上記微小漏れ検査工程を備えることにより、フローセンサ7による高精度な微小漏れ検査をすべき対象を適切に抽出可能となり、弁座漏れ検査を適切に合理化することができる。
【0073】
ここで、上記微小漏れ検査工程における、タンク8(チューブ30)の逆止め作用を説明する。先ず、弁座からの圧縮エアの微小漏れ量(具体的には0.15ml/min程度)が上記検査空間内に流入し、チューブ30内の内圧が徐々に上昇していく。一方で、上記のように、チューブ30の切込部32は、内外の差圧が無い場合はチューブ30の弾性による形状復元力により閉じた状態にある。そして、微小漏れ量の流入による内圧上昇に伴うチューブ30の膨張により、切込部32が形状変化して徐々に開いていき、内圧が大気圧(0.1MPa程度)を所定値上回ったとき、切込部32が開いてチューブ30の内外が僅かに連通状態(通気可能状態)となる。これにより、チューブ30内部の圧縮エアが、外部にリリーフされる状態となる。
【0074】
このリリーフ状態では、上記のように、弁座漏れにより圧縮エアが検査空間内に流入する微小な流量(或はこれに伴う内圧上昇分)と、切込部32から流出する微小な流量(或は切込部32を開けるために必要な差圧)とが高精度に釣り合って連続的にエアが流出入しているような状態となり、弁座から漏れてきたエア流量分のみがそのまま外部へ連続的に押し出されていく状態が実現される。これに対して、チューブ30の内圧が所定値以下となれば、その圧力変化(負圧)に素早く応じるように切込部32が閉じて逆止め機能を発揮することで外気が切込部32から逆流入することを防止し、検査空間内のエアの流れが外気の逆流によって揺らぎなどの影響を受けることが防止される。この状態では、検査空間内の圧縮エアの流れが、外気の影響を受けずに、弁座漏れによる流入量に応じた一方向性の流れとなり、フローセンサ7による高精度な微小流量計測が可能となる。
【実施例】
【0075】
続いて、本発明のタンク(チューブ)による上記作用効果を検証した実施例を説明する。本実施例では、上記検査空間内に設けられたフローセンサ7の状態と同様に、所定の流路空間内に流量計測可能にフローセンサ7を設け、この流路空間の一方側から内部へ弁座漏れ量を想定した微小流量を供給可能に構成すると共に、前記流路空間の他方側を、大気に開放した場合、および本発明のタンク(チューブ)で閉塞した場合に分けて、フローセンサで前記微小流量を計測し、両者の流量データの比較から、フローセンサによる流量計測の安定性を確認したものである。
【0076】
先ず、前記流路空間に弁座漏れ量として供給する微小流量を0.25ml/minに設定し、上記実施形態で使用したフローセンサ7にて流量を計測した。以下の表1は、流路空間の一端側に上記実施形態で使用した本発明のチューブ30を有する場合、表2は、チューブ30を有さず単に大気開放した場合における、それぞれの測定時間(1秒ごと10秒間)ごとの流量測定値(ml/min)であり、3回分の計測(測定1〜測定3)を表にしたものである。また、
図6(a)は、表1に示す3回分の計測値の平均値(ave)をグラフ化したグラフ図であり、
図6(b)も同様に、表2に示す平均値(ave)をグラフ化したグラフ図である。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
表1(
図6(a))に示すように、本発明のタンク(チューブ30)を有する場合の流量測定値は、少なくとも測定期間内において、実際の微小流量である0.25ml/minに近い値を維持したまま安定している。これに対して、表2(
図6(b))に示しように、本発明のタンク(チューブ30)を有さず単に大気開放した場合の流量測定値は、測定時間の経過と共に、実際の微小流量を下回って下降し続けている。したがって、この実施例によれば、大気開放した場合の微小流量計測は不安定であり実際の微小流量の計測は困難であること、及び、本発明のタンク(チューブ30)を有した微小流量測定では、実際の微小流量に近い値に安定した値の計測が可能であることが実証された。
【0080】
以下の表3は、微小流量の供給をゼロとして、前記流路空間の一端側に本発明のチューブ30を有する場合と、チューブ30を有さず単に大気開放した場合における、測定時間(1秒ごと10秒間)ごとの流量計測値(ml/min)を示している。また、
図6(c)は、表3の計測値をグラフ化したグラフ図である。ここで、測定時間1秒〜5秒まではチューブ30を有した状態、測定時間6秒〜10秒まではチューブ30を外して大気開放した状態における測定値である。
【0081】
【表3】
【0082】
表3(
図6(c))に示すように、本発明のタンク(チューブ30)を有する場合(測定時間1〜5秒)は、実際の値(ゼロ)に近い値を維持して安定していることから、フローセンサが大気の揺らぎなどによる流量計測の悪影響をほとんど受けていないことがわかる。これに対して、本発明のタンク(チューブ30)を有さない場合(測定時間6〜10秒)は、実際は流量が無いにも拘らず揺らぎが計測されており、とくに、流路空間の大気開放箇所付近において意図的に微小な乱流を発生させている本例では、マイナス値の計測が大きいことから、大気側から流路空間内へ向かう揺らぎの影響を大きく受けていることがわかる。したがって、この実施例によっても、本発明のタンク(チューブ30)を有している場合は、大気開放した場合と比較して、微小流量計測においてフローセンサが受ける大気の揺らぎなどの悪影響が極めて効果的に遮蔽されていることが実証された。
【0083】
更に、本発明は、前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。