(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の電力推定装置、電力推定方法及び電力推定プログラムを、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、電力推定システム1aの構成の第1例を示す図である。電力推定システム1a(電力見える化システム)は、機器の消費電力量を推定するシステムである。空調機器や照明機器などの機器は、消費電力量を削減することを目的として、電力特性が向上した機種に更新(変更)される場合がある。
【0008】
電力推定システム1aは、更新前及び更新後で機器の運用データを共通にしたシミュレーションによって、更新前の機器の消費電力量と、更新後の機器の消費電力量とを推定する。すなわち、電力推定システム1aは、更新後の対象機器群20に対する電力負荷の条件と同じ条件の下で更新前の機器を動作させた場合における、更新前の機器の消費電力量を推定する。電力推定システム1aは、更新後の対象機器群20に対する電力負荷の条件の下で更新後の機器を動作させた場合における、更新後の機器の消費電力量を推定する。
【0009】
電力推定システム1aは、更新前の機器の消費電力量の推定値と更新後の機器の消費電力量の推定値との差に基づいて、更新後の機器の電力特性(電力効率)が更新前と比較して向上したことに由来する消費電力削減量(以下、「機器由来消費電力削減量」という。)を推定する。すなわち、機器由来消費電力削減量は、更新後の機器の電力特性が更新前と比較して向上したことを要因とする消費電力削減量である。
【0010】
電力推定システム1aは、更新後の機器の消費電力量の実測値と、機器由来消費電力削減量とに基づいて、更新後に機器の運用方法が更新前と比較して改善されたことに由来する消費電力削減量(以下、「運用由来消費電力削減量」という。)を推定する。すなわち、運用由来消費電力削減量は、更新後に機器の運用方法が更新前と比較して改善されたことを要因とする消費電力削減量である。これによって、電力推定システム1aは、機器由来消費電力削減量と運用由来消費電力削減量とを区別することができる。
【0011】
機器の運用方法とは、例えば、ユーザが照明機器の照明をこまめに消すという運用方法、外気温度が高い窓側のブラインドをユーザが下ろすことによって室内の空調負荷を低減させるという運用方法、明るい窓側のブラインドをユーザが上げることによって室内の照明負荷を低減させてから照明装置の発光部を消灯させるという運用方法、明るい窓側のブラインドをユーザが下げることによって室内の照明負荷を増加させてから照明装置の発光部を点灯させるという運用方法、ユーザが空調機器の運転をこまめに停止するという運用方法である。
【0012】
電力推定システム1aは、電力計10と、対象機器群20と、電力推定装置30とを備える。電力計10は、商用等の電力系統から対象機器群20に供給された電力量を実測する。すなわち、電力計10は、更新後の対象機器群20の消費電力量を実測する。電力計10は、更新後の対象機器群20の消費電力量の実測値を、電力推定装置30に送信する。
【0013】
対象機器群20は、運用データが実測される対象である機器群である。運用データは、対象機器群20の機器の運用に関するデータである。例えば、運用データは、運転日データと、運転時間帯データと、負荷率データとを、機器ごとに含む。運転日は、機器が運転された日を示す。運転時間帯の開始時刻は、運転日における機器の運転開始(オン)の時刻(タイミング)を示す。運転時間帯の終了時刻は、運転日における機器の運転停止(オフ)の時刻を示す。負荷率とは、定格消費電力(最大需要電力)に対する、運転時間帯における平均消費電力(平均需要電力)の割合である。負荷率は、百分率で表現されてもよい。運用データは、外気温度データと、色温度データとを、機器ごとに更に含んでもよい。以下、更新後の対象機器群20の機器の運転に関する実測データを「実運用データ」という。
【0014】
対象機器群20は、一例として、空調機器21と、照明機器22と、要冷機23である。対象機器群20は、例えば、店舗、工場、住宅、学校、病院等に備えられる。対象機器群20は、対象機器群20の実運用データを、オンラインで通信部31に送信する。
【0015】
空調機器21は、室内を冷房又は暖房する機器である。空調機器21は、外気温度及び室内温度を測定するためのセンサを備えてもよい。空調機器21は、空調機器21の実運用データを、通信回線を介して通信部31に送信する。例えば、空調機器21は、機器の運転開始又は運転停止の時刻を示す情報を、通信回線を介して通信部31に送信する。例えば、空調機器21は、外気温度を測定する。外気温度は、空調負荷(暖房負荷、冷房負荷)の一つである。空調機器21は、外気温度データを、通信回線を介して通信部31に送信する。空調機器21は、複数でもよい。
【0016】
照明機器22は、蛍光灯やLED(Light Emitting Diode)照明などの機器である。照明機器22は、照明機器22の実運用データを、通信回線を介して通信部31に送信する。例えば、照明機器22は、機器の運転開始又は運転停止の時刻を示す情報を、通信回線を介して通信部31に送信する。例えば、照明機器22は、照明機器22の発光部の色温度データを、通信回線を介して通信部31に送信する。照明機器22は、複数でもよい。
【0017】
要冷機23は、冷蔵装置又は冷凍装置である。要冷機23は、除霜のためのヒータを備えてもよい。要冷機23は、要冷機23の実運用データを、通信回線を介して通信部31に送信する。例えば、要冷機23は、機器の運転開始又は運転停止の時刻を示す情報を、通信回線を介して通信部31に送信する。要冷機23は、複数でもよい。
【0018】
電力推定装置30は、パーソナルコンピュータ装置やサーバ装置等の情報処理装置である。電力推定装置30は、通信部31と、データベース32と、更新前模擬部33と、更新後模擬部34と、機器由来決定部35と、運用由来決定部36と、出力部37とを備える。
【0019】
通信部31と、更新前模擬部33と、更新後模擬部34と、機器由来決定部35と、運用由来決定部36と、出力部37との一部または全部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより機能するソフトウェア機能部である。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってもよい。
【0020】
通信部31は、更新後の対象機器群20の消費電力量の実測値を、オンラインで電力計10から取得する。通信部31は、更新後の対象機器群20の消費電力量の実測値を、データベース32に記憶させる。通信部31は、更新後の対象機器群20の実運用データを、通信回線を介して対象機器群20から取得する。通信部31は、更新後の対象機器群20の実運用データを、データベース32に記憶させる。
【0021】
通信部31は、更新前の対象機器群20の消費電力量の実測値を、オンラインで電力計10から取得してもよい。通信部31は、更新前の対象機器群20の実運用データを、通信回線を介して対象機器群20から取得してもよい。通信部31は、更新前の対象機器群20の消費電力量の実測値と、更新前の対象機器群20の実運用データとを、データベース32に記憶させてもよい。
【0022】
データベース32は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の不揮発性の記憶媒体(非一時的な記録媒体)を有する記憶装置を用いて構成される。データベース32は、例えば、RAM(Random Access Memory)やレジスタなどの揮発性の記憶媒体を有していてもよい。データベース32は、クラウドコンピューティング技術によってデータを記憶してもよい。
【0023】
データベース32は、更新前の対象機器群20の消費電力量の実測値を記憶する。データベース32は、更新後の対象機器群20の消費電力量の実測値を記憶する。データベース32は、対象機器群20の電力特性の仕様(カタログデータ)を、機器ごとの一覧(リスト)の形式で記憶する。
【0024】
例えば、データベース32は、更新前の対象機器群20の電力特性の仕様を記憶する。例えば、データベース32は、更新前の空調機器21の電力特性の仕様を記憶する。例えば、データベース32は、更新前の照明機器22の電力特性の仕様を記憶する。例えば、データベース32は、更新前の要冷機23の電力特性の仕様を記憶する。
【0025】
例えば、データベース32は、更新後の対象機器群20の電力特性の仕様を記憶する。例えば、データベース32は、更新後の空調機器21の電力特性の仕様を記憶する。例えば、データベース32は、更新後の照明機器22の電力特性の仕様を記憶する。例えば、データベース32は、更新後の要冷機23の電力特性の仕様を記憶する。例えば、データベース32は、電気料金を消費電力量に対応付けて記憶してもよい。
【0026】
図2は、更新前の空調機器21の電力特性の仕様の例を示す図である。更新前の空調機器21の電力特性の仕様では、予め定められた第1の外気温度における、冷房の定格能力(kW)と冷房の定格消費電力(kW)とが、空調機器21に供給される電力の交流周波数ごとに対応付けられている。第1の外気温度は、例えば、摂氏35度である。
図2では、一例として、冷房の定格能力「14.0kW」と冷房の定格消費電力「4.0kW」とが、空調機器21に供給される電力の交流周波数「50Hz」に対応付けられている。
【0027】
空調機器21の定格能力とは、空調機器21が室内を安定して冷房する能力(冷房能力)又は暖房する能力(暖房能力)である。定格能力(kW)は、室内の広さに応じて異なる。定格消費電力とは、空調機器21が定格能力を発揮する場合における、空調機器21の消費電力である。
【0028】
更新前の空調機器21の電力特性の仕様では、予め定められた第2の外気温度における、暖房の定格能力(kW)と、暖房の定格消費電力(kW)とが、空調機器21に供給される電力の交流周波数ごとに対応付けられている。第2の外気温度は、例えば、摂氏7度である。
図2では、一例として、暖房の定格能力「14.0kW」と暖房の定格消費電力「3.5kW」とが、空調機器21に供給される電力の交流周波数「50Hz」に対応付けられている。
【0029】
更新前の空調機器21の仕様では、中間能力と中間消費電力とが、空調機器21に供給される電力の交流周波数ごとに対応付けられていてもよい。中間能力とは、定格能力の約半分の能力である。中間消費電力とは、中間能力を発揮する場合における消費電力である。更新前の空調機器21の仕様では、最小能力と最小消費電力とが、空調機器21に供給される電力の交流周波数ごとに対応付けられていてもよい。最小能力とは、中間能力よりも低い最小の能力である。最小消費電力とは、最小能力を発揮する場合における消費電力である。
【0030】
図3は、更新前の照明機器22の電力特性の仕様の例を示す図である。更新前の照明機器22の仕様では、定格電力と消費電力と色温度とが、照明機器22に供給される電力の交流周波数ごとに対応付けられている。照明機器22の消費電力は、色温度に応じて異なる。
図3では、定格電力「10W」と消費電力「9.5W」と色温度「6000K」とが対応付けられている。
【0031】
図4は、更新前の要冷機23の電力特性の仕様の例を示す図である。更新前の要冷機23の仕様では、定格電力と消費電力とが、要冷機23に供給される電力の交流周波数ごとに対応付けられている。
図4では、定格電力「10kW」と消費電力「4.0kW」とが対応付けられている。
【0032】
図5は、更新後の空調機器21の電力特性の仕様の例を示す図である。更新後の空調機器21の仕様では、第1の外気温度における、冷房の定格能力(kW)と冷房の定格消費電力(kW)とが、空調機器21に供給される電力の交流周波数ごとに対応付けられている。
図5では、一例として、冷房の定格能力「14.0kW」と冷房の定格消費電力「3.0kW」とが、空調機器21に供給される電力の交流周波数「50Hz」に対応付けられている。
【0033】
更新後の空調機器21の仕様では、第2の外気温度における、暖房の定格能力(kW)と、暖房の定格消費電力(kW)とが、空調機器21に供給される電力の交流周波数ごとに対応付けられている。
図5では、一例として、暖房の定格能力「14.0kW」と暖房の定格消費電力「2.5kW」とが、空調機器21に供給される電力の交流周波数「50Hz」に対応付けられている。
【0034】
図6は、更新後の照明機器22の電力特性の仕様の例を示す図である。更新後の照明機器22の仕様では、定格電力と消費電力と色温度とが、照明機器22に供給される電力の交流周波数ごとに対応付けられている。照明機器22の消費電力は、色温度に応じて異なる。
図6では、一例として、定格電力「10W」と、消費電力「9.0W」と、色温度「6000K」とが対応付けられている。
【0035】
図7は、更新後の要冷機23の電力特性の仕様の例を示す図である。更新後の要冷機23の仕様では、定格電力と消費電力とが、要冷機23に供給される電力の交流周波数ごとに対応付けられている。
図7では、定格電力「10kW」と消費電力「3.0kW」とが対応付けられている。
【0036】
図8は、更新後の対象機器群20の実運用データの例を示す図である。更新後の対象機器群20の実運用データでは、機器と、運転日と、運転時間帯と、負荷率とが対応付けられている。
図8では、一例として、機器「空調機器21」と、運転日「11月11日」と、運転時間帯「09:00−18:00」と、負荷率「20%」とが対応付けられている。暖房の空調機器21の消費電力は、一例として、暖房の定格消費電力「2.5kW」の負荷率「20%」に相当する0.5kWである。
【0037】
図8では、一例として、機器「照明機器22」と、運転日「11月11日」と、運転時間帯「09:00−19:00」と、負荷率「90%」とが対応付けられている。照明機器22の消費電力は、一例として、定格消費電力「10W」の負荷率「90%」に相当する9.0kWである。
【0038】
図8では、一例として、機器「要冷機23」と、運転日「11月11日」と、運転時間帯「00:00−24:00」と、負荷率「30%」とが対応付けられている。要冷機23の消費電力は、一例として、定格消費電力「10kW」の負荷率「30%」に相当する3.0kWである。
【0039】
空調機器21には、外気温度が対応付けられていてもよい。
図8では、一例として、機器「空調機器21」と、外気温度「摂氏20度」とが対応付けられている。
図8では、一例として、照明機器22には、色温度が対応付けられていてもよい。
図8では、一例として、機器「照明機器22」と、色温度「6000K」とが対応付けられている。
【0040】
図1に示す更新前模擬部33は、更新前の空調機器21の仕様を、データベース32から取得する。更新前模擬部33は、更新前の照明機器22の仕様を、データベース32から取得する。更新前模擬部33は、更新前の要冷機23の仕様を、データベース32から取得する。更新前模擬部33は、更新後の対象機器群20の実運用データを、データベース32から取得する。
【0041】
更新前模擬部33(更新前決定部)は、更新後の対象機器群20の実運用データに基づいて、更新前の対象機器群20の動作を模擬(シミュレーション)する。すなわち、更新前模擬部33は、更新後の対象機器群20に対する電力負荷の条件と同じ条件の下で、更新前の対象機器群20の動作を模擬する。例えば、更新前模擬部33は、更新後の対象機器群20の運転日と運転時間帯と負荷率と、
図2〜
図4に示す更新前の対象機器群20の仕様とに基づいて、更新前の対象機器群20の動作を模擬する。
【0042】
例えば、更新前模擬部33は、空調機器21の運転日と運転時間帯と負荷率と、
図2に示す更新前の空調機器21の仕様とに基づいて、更新前の空調機器21の動作を模擬する。負荷率には、運転時間帯における外気温度による空調負荷が含められてもよい。
【0043】
例えば、更新前模擬部33は、照明機器22の運転日と運転時間帯と負荷率と、
図3に示す更新前の照明機器22の仕様とに基づいて、更新前の照明機器22の動作を模擬する。負荷率には、色温度に応じた照明負荷が含められてもよい。負荷率には、運転時間帯に室内に窓から入射した光の量に応じた照明負荷が含められてもよい。
【0044】
例えば、更新前模擬部33は、要冷機23の運転日と運転時間帯と負荷率と、
図4に示す更新前の要冷機23の仕様とに基づいて、更新前の要冷機23の動作を模擬する。
【0045】
更新前模擬部33は、模擬の結果に基づいて、更新前の対象機器群20の消費電力量の推定値を決定する。更新前模擬部33は、予め定められた期間における、更新前の対象機器群20の消費電力量の推定値を決定する。予め定められた期間は、例えば、1年間である。更新前模擬部33は、更新前の消費電力量の推定値を、更新前の機器ごとに決定してもよい。更新前模擬部33は、更新前の対象機器群20の消費電力量の推定値を、機器由来決定部35に送信する。
【0046】
更新前模擬部33は、1年間に必要とされる冷房能力及び暖房能力の総和(以下、「総合負荷」という。)を推定してもよい。更新前模擬部33は、総合負荷の推定値を、機器由来決定部35に送信してもよい。更新前模擬部33は、更新前の空調機器21機器の1年間における消費電力量と総合負荷とに基づいて、更新前の空調機器21の通年エネルギー消費効率(Annual Performance Factor: APF)を推定(決定)してもよい。通年エネルギー消費効率とは、1年間における機器の消費電力量によって総合負荷を除算した結果である。省エネルギー性能は、通年エネルギー消費効率の値が大きいほど高い。
【0047】
通年エネルギー消費効率や消費電力量は、例えば、日本工業規格(JIS B8616:2015)に示された条件に基づいて算出される。条件は、例えば、数式で表現される。数式は、表計算ソフトウェアに含まれていてもよい。更新前模擬部33は、更新前の対象機器群20の通年エネルギー消費効率の推定値を、機器由来決定部35に送信してもよい。
【0048】
図9は、更新前の空調機器21の消費電力量の推定値の例を示す図である。
図9では、期間と、総合負荷の推定値と、消費電力量の推定値と、エネルギー消費効率の推定値とが対応付けられている。
【0049】
図9では、一例として、冷房期間の夏季について、総合負荷の推定値「7000kWh」と、消費電力量の推定値「1200kWh」とが対応付けられている。
図9では、一例として、冷房期間の夏季以外について、総合負荷の推定値「3000kWh」と、消費電力量の推定値「800kWh」とが対応付けられている。
図9では、一例として、冷房期間について、総合負荷の推定値の合計値「10000kWh」と、消費電力量の推定値の合計値「2000kWh」と、通年エネルギー消費効率の推定値「5.0(=10000/2000)」とが対応付けられている。
【0050】
図9では、一例として、暖房期間の冬季について、総合負荷の推定値「2000kWh」と、消費電力量の推定値「600kWh」とが対応付けられている。
図9では、一例として、暖房期間の冬季以外について、総合負荷の推定値「0kWh」と、消費電力量の推定値「0kWh」とが対応付けられている。
図9では、一例として、暖房期間について、総合負荷の推定値の合計値「2000kWh」と、消費電力量の推定値の合計値「600kWh」と、通年エネルギー消費効率の推定値「3.3(=2000/600)」とが対応付けられている。
【0051】
図9では、一例として、通年(1年間)について、総合負荷の推定値「12000kWh」と、消費電力量の推定値「2600kWh」と、通年エネルギー消費効率の推定値「4.6(=12000/2600)」とが対応付けられている。
【0052】
図1に示す更新後模擬部34(更新後決定部)は、更新後の空調機器21の仕様を、データベース32から取得する。更新後模擬部34は、更新後の照明機器22の仕様を、データベース32から取得する。更新後模擬部34は、更新後の要冷機23の仕様を、データベース32から取得する。更新後模擬部34は、更新後の対象機器群20の実運用データを、データベース32から取得する。
【0053】
更新後模擬部34は、更新後の対象機器群20の実運用データに基づいて、更新後の対象機器群20の動作を模擬(シミュレーション)する。すなわち、更新後模擬部34は、更新後の対象機器群20に対する電力負荷の条件の下で、更新後の対象機器群20の動作を模擬する。例えば、更新後模擬部34は、更新後の対象機器群20の運転日と運転時間帯と負荷率と、
図5〜
図7に示す更新後の対象機器群20の仕様とに基づいて、更新後の対象機器群20の動作を模擬する。
【0054】
例えば、更新後模擬部34は、空調機器21の運転日と運転時間帯と負荷率と、
図5に示す更新後の空調機器21の仕様とに基づいて、更新後の空調機器21の動作を模擬する。負荷率には、運転時間帯における外気温度による空調負荷が含められてもよい。
【0055】
例えば、更新後模擬部34は、照明機器22の運転日と運転時間帯と負荷率と、
図6に示す更新後の照明機器22の仕様とに基づいて、更新後の照明機器22の動作を模擬する。負荷率には、色温度に応じた照明負荷が含められてもよい。負荷率には、運転時間帯に室内に窓から入射した光の量に応じた照明負荷が含められてもよい。
【0056】
例えば、更新後模擬部34は、要冷機23の運転日と運転時間帯と負荷率と、
図7に示す更新後の要冷機23の仕様とに基づいて、更新後の要冷機23の動作を模擬する。
【0057】
更新後模擬部34は、模擬の結果に基づいて、更新後の対象機器群20の消費電力量の推定値を決定する。更新後模擬部34は、予め定められた期間における、更新後の対象機器群20の消費電力量の推定値を決定する。予め定められた期間は、例えば、1年間である。更新後模擬部34は、更新後の消費電力量の推定値を、更新後の機器ごとに決定してもよい。更新後模擬部34は、更新後の対象機器群20の消費電力量の推定値を、機器由来決定部35に送信する。
【0058】
更新後模擬部34は、総合負荷を推定してもよい。更新後模擬部34は、総合負荷の推定値を、機器由来決定部35に送信してもよい。更新後模擬部34は、更新後の空調機器21機器の1年間における消費電力量と総合負荷とに基づいて、更新後の空調機器21の通年エネルギー消費効率(APF)を推定(決定)してもよい。更新後模擬部34は、更新後の対象機器群20の通年エネルギー消費効率の推定値を、機器由来決定部35に送信してもよい。
【0059】
図10は、更新後の空調機器21の消費電力量の推定値の例を示す図である。
図10では、期間と、総合負荷の推定値と、消費電力量の推定値と、エネルギー消費効率の推定値とが対応付けられている。
【0060】
図10では、一例として、冷房期間の夏季について、総合負荷の推定値「7000kWh」と、消費電力量の推定値「1000kWh」とが対応付けられている。
図10では、一例として、冷房期間の夏季以外について、総合負荷の推定値「3000kWh」と、消費電力量の推定値「500kWh」とが対応付けられている。
図10では、一例として、冷房期間について、総合負荷の推定値の合計値「10000kWh」と、消費電力量の推定値の合計値「1500kWh」と、通年エネルギー消費効率の推定値「6.7(=10000/1500)」とが対応付けられている。
【0061】
図10では、一例として、暖房期間の冬季について、総合負荷の推定値「2000kWh」と、消費電力量の推定値「500kWh」とが対応付けられている。
図10では、一例として、暖房期間の冬季以外について、総合負荷の推定値「0kWh」と、消費電力量の推定値「0kWh」とが対応付けられている。
図10では、一例として、暖房期間について、総合負荷の推定値の合計値「2000kWh」と、消費電力量の推定値の合計値「500kWh」と、通年エネルギー消費効率の推定値「4.0(=2000/500)」とが対応付けられている。
【0062】
図10では、一例として、1年間(通年)について、総合負荷の推定値「12000kWh」と、消費電力量の推定値「2000kWh」と、通年エネルギー消費効率の推定値「6.0(=12000/2000)」とが対応付けられている。
【0063】
図1に示す機器由来決定部35は、予め定められた期間について、更新前の対象機器群20の消費電力量と、更新後の対象機器群20の消費電力量とを、更新後模擬部34から取得する。予め定められた期間は、例えば、1年間である。機器由来決定部35は、更新後の対象機器群20の通年エネルギー消費効率を、更新後模擬部34から取得してもよい。
【0064】
機器由来決定部35は、更新後の対象機器群20の消費電力量の推定値と、更新前の対象機器群20の消費電力量の推定値との差を決定する。例えば、機器由来決定部35は、更新前の対象機器群20の消費電力量の推定値から、更新後の対象機器群20の消費電力量の推定値を減算する。機器由来決定部35は、更新前の対象機器群20の消費電力量の推定値から更新後の対象機器群20の消費電力量の推定値を減算した結果を、機器由来消費電力削減量と決定する。機器由来決定部35は、機器由来消費電力削減量を運用由来決定部36及び出力部37に送信する。
【0065】
運用由来決定部36は、更新前の対象機器群20の消費電力量の実測値を、データベース32から取得する。運用由来決定部36は、更新後の対象機器群20の消費電力量の実測値を、データベース32から取得する。
【0066】
運用由来決定部36は、更新前の対象機器群20の消費電力量の実測値と、更新後の対象機器群20の消費電力量の実測値との差を決定する。例えば、更新前の対象機器群20の消費電力量の実測値から、更新後の対象機器群20の消費電力量の実測値を減算する。運用由来決定部36は、更新前の対象機器群20の消費電力量の実測値から更新後の対象機器群20の消費電力量の実測値を減算した結果を、更新後の対象機器群20の消費電力削減量と決定する。運用由来決定部36は、更新後の対象機器群20の消費電力削減量を示す情報を取得してもよい。
【0067】
運用由来決定部36は、更新後の対象機器群20の消費電力削減量に基づいて、電気料金の削減額(以下、「電気料金削減額」という。)を決定してもよい。例えば、運用由来決定部36は、更新後の対象機器群20の消費電力削減量の実測値に電気料金単価を乗算した結果を、更新後の対象機器群20の電気料金削減額の実測値と決定する。例えば、運用由来決定部36は、更新前の対象機器群20の電気料金の実測値から、更新後の対象機器群20の電気料金の実測値を減算した結果を、更新後の対象機器群20の電気料金削減額の実測値と決定してもよい。
【0068】
運用由来決定部36は、機器由来消費電力削減量を、機器由来決定部35から取得する。運用由来決定部36は、更新後の対象機器群20の消費電力削減量と、機器由来消費電力削減量との差を決定する。例えば、運用由来決定部36は、更新後の対象機器群20の消費電力削減量から、機器由来消費電力削減量を減算する。更新後の対象機器群20の消費電力削減量から機器由来消費電力削減量を減算した結果を、運用由来消費電力削減量と決定する。
【0069】
出力部37(表示部)は、表示装置である。出力部37は、消費電力量削減量を表示する。出力部37は、機器由来消費電力削減量を示すデータと、運用由来消費電力削減量を示すデータとを表示する。例えば、出力部37は、機器由来消費電力削減量を示すデータと、運用由来消費電力削減量を示すデータとを、対比可能に表形式で表示する。出力部37は、電気料金削減額を表示してもよい。出力部37は、通信装置でもよい。出力部37は、通信装置である場合、消費電力量削減量を示すデータを他の装置に送信する。
【0070】
図11は、消費電力量削減量の表示の第1例を示す図である。
図11では、更新前の対象機器群20の消費電力量の推定値「3600kWh」と、更新後の対象機器群20の消費電力量の推定値「3000kWh」とが対応付けられている。
図11では、更新前の対象機器群20の消費電力量の実測値「3600kWh」と、更新後の対象機器群20の消費電力量の実測値「2800kWh」とが対応付けられている。
【0071】
図11では、更新後の対象機器群20の消費電力削減量の実測値「800kWh」と、機器由来消費電力削減量の実測値又は推定値「600kWh」と、運用由来消費電力削減量の実測値又は推定値「200kWh」とが対応付けられている。更新後の対象機器群20の消費電力削減量の実測値「800kWh」は、更新前の対象機器群20の消費電力量の実測値「3600kWh」から、更新後の対象機器群20の消費電力量の実測値「2800kWh」を減算した結果である。
【0072】
図11では、更新後の対象機器群20の電気料金削減額の実測値「80000」と、機器由来の電気料金削減額の実測値又は推定値「60000」と、運用由来の電気料金削減額の実測値又は推定値「20000」とが対応付けられている。
【0073】
以上のように、第1の実施形態の電力推定装置30は、更新前模擬部33(更新前決定部)と、更新後模擬部34(更新後決定部)と、機器由来決定部35と、運用由来決定部36とを持つ。更新前模擬部33は、更新後の機器の運用に関するデータに基づいて更新前の機器の消費電力量の推定値を決定する。更新後模擬部34は、更新後の機器の運用に関するデータに基づいて更新後の機器の消費電力量の推定値を決定する。機器由来決定部35は、更新前の機器の消費電力量の推定値と更新後の機器の消費電力量の推定値との差を、機器由来消費電力削減量と決定する。運用由来決定部36は、更新後の機器の消費電力削減量の実測値を取得し、機器由来消費電力削減量と更新後の機器の消費電力削減量の実測値との差を、運用由来消費電力削減量と決定する。
【0074】
これによって、第1の実施形態の電力推定装置30は、更新後の機器の電力特性が更新前と比較して向上したことに由来して更新後に削減できた消費電力量(機器由来消費電力削減量)と、更新後に機器の運用方法が更新前と比較して改善されたことに由来して更新後に削減できた消費電力量(運用由来消費電力削減量)とを区別することができる。
【0075】
第1の実施形態の電力推定装置30は、更新後の機器から取得した実運用データが示す条件の下で更新前の機器が運転されたと仮定した場合における更新前の機器の消費電力量を、シミュレーションによって推定することができる。
【0076】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、運用データが実測される対象ではない機器群の消費電力量を電力推定装置30が更に推定する点が、第1の実施形態と相違する。第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0077】
図12は、電力推定システム1bの構成の第2例を示す図である。電力推定システム1bは、電力計10と、対象機器群20と、電力推定装置30と、非対象機器群40とを備える。非対象機器群40は、実運用データが実測される対象ではない機器群である。非対象機器群40は、例えば、撮像機器、昇降機、パーソナルコンピュータ装置等の情報処理装置である。撮像機器は、例えば、防犯カメラである。
【0078】
電力計10は、商用等の電力系統から対象機器群20に供給された電力量を実測する。すなわち、電力計10は、更新後の対象機器群20及び非対象機器群40の消費電力量を実測する。電力計10は、更新後の対象機器群20及び非対象機器群40の消費電力量の実測値を、電力推定装置30に送信する。出力部37は、消費電力量削減量を表示部に表示する。
【0079】
図13は、消費電力量削減量の表示の第2例を示す図である。
図13では、更新前の対象機器群20の消費電力量の推定値「3600kWh」と、更新後の対象機器群20の消費電力量の推定値「3000kWh」とが対応付けられている。
図13では、更新前の対象機器群20及び非対象機器群40の消費電力量の実測値「4600kWh」と、更新後の対象機器群20及び非対象機器群40の消費電力量の実測値「3800kWh」とが対応付けられている。
【0080】
図13では、更新後の対象機器群20及び非対象機器群40の消費電力削減量の実測値「800kWh」と、機器由来消費電力削減量の実測値「600kWh」と、運用由来消費電力削減量の実測値「200kWh」とが対応付けられている。更新後の対象機器群20及び非対象機器群40の消費電力削減量の実測値は、更新前の対象機器群20及び非対象機器群40の消費電力量の実測値から、更新後の対象機器群20及び非対象機器群40の消費電力量の実測値を減算した結果である。
【0081】
図13では、更新後の対象機器群20及び非対象機器群40の電気料金削減額の実測値「80000」と、機器由来の電気料金削減額の実測値「60000」と、運用由来の電気料金削減額の実測値「20000」とが対応付けられている。更新後の対象機器群20及び非対象機器群40の電気料金削減額の実測値は、更新前の対象機器群20及び非対象機器群40の電気料金の実測値から、更新後の対象機器群20及び非対象機器群40の電気料金の実測値を減算した結果である。
【0082】
以上のように、第2の実施形態の出力部37は、更新前の対象機器群20及び非対象機器群40の消費電力削減量を示すデータと、更新後の対象機器群20及び非対象機器群40の消費電力削減量を示すデータとを表示する。第2の実施形態の出力部37は、更新前の対象機器群20及び非対象機器群40の消費電力削減量を示すデータと、更新後の対象機器群20及び非対象機器群40の消費電力削減量を示すデータとを、他の装置に送信してもよい。
【0083】
これによって、第2の実施形態の電力推定装置30は、更新前の対象機器群20及び非対象機器群40の消費電力削減量と、更新後の対象機器群20及び非対象機器群40の消費電力削減量とを表示することができる。
【0084】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、更新前の機器の消費電力量の推定値と更新後の機器の消費電力量の推定値との差を更新後の機器の電力特性に由来する消費電力削減量と決定する機器由来決定部と、更新後の機器の消費電力削減量の実測値を取得し更新後の機器の電力特性に由来する消費電力削減量と更新後の機器の消費電力削減量の実測値との差を更新後の機器の運用に由来する消費電力削減量と決定する運用由来決定部とを持つことにより、更新後の機器の電力特性が更新前と比較して向上したことに由来する消費電力削減量と、更新後に機器の運用方法が更新前と比較して改善されたことに由来する消費電力削減量とを区別することができる。
【0085】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。