特許第6529905号(P6529905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6529905
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】マルチルーメン・カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20190531BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20190531BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
   A61M25/00 530
   A61M25/00 534
   A61M1/36 149
   A61M25/14 516
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-509080(P2015-509080)
(86)(22)【出願日】2013年4月23日
(65)【公表番号】特表2015-518404(P2015-518404A)
(43)【公表日】2015年7月2日
(86)【国際出願番号】US2013037783
(87)【国際公開番号】WO2013163172
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年2月4日
【審判番号】不服2018-2805(P2018-2805/J1)
【審判請求日】2018年2月28日
(31)【優先権主張番号】13/453,663
(32)【優先日】2012年4月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514270331
【氏名又は名称】イージス メディカル テクノロジーズ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】クラーク、ティモシー、ダブリュー.アイ.
【合議体】
【審判長】 芦原 康裕
【審判官】 瀬戸 康平
【審判官】 長屋 陽二郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第7569029(US,B2)
【文献】 特表2011−502583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の脈管内に留置される、対称的な先端部を有するカテーテルであって、
近位端部と遠位端部とを有する、長手方向の中心軸に対して対称的な細長いカテーテル本体を有し、このカテーテル本体は、
前記カテーテルの前記遠位端部に吸入孔部を形成する第1の湾曲した内壁を有する第1のルーメンであって、当該第1の湾曲した内壁は前記吸入孔部から流入する流体を偏向させるものである、前記第1のルーメンと、
前記カテーテルの前記遠位端部に出口孔部を形成する第2の湾曲した内壁を有する第2のルーメンであって、当該第2の湾曲した内壁は前記出口孔部から流出する流体を偏向させるものである、前記第2のルーメンと、
前記カテーテル本体の内部の少なくとも一部分を通って長手方向に伸び、前記カテーテル本体の内部を前記1のルーメンと前記第2のルーメンとに分割する隔壁であって、前記1のルーメンと前記第2のルーメンは前記吸入孔部および前記出口孔部が隣接するように同位置で終端し、前記隔壁は前記カテーテルの遠位端部を超えて延長せず、前記吸入孔部および前記出口孔部と同位置で終端するものである、前記隔壁と
を有するものである、
カテーテル。
【請求項2】
請求項1記載のカテーテルにおいて、前記第1のルーメンと前記第2のルーメンのうちの少なくとも1つは少なくとも1つの開口部を有するものであるカテーテル。
【請求項3】
請求項記載のカテーテルにおいて、前記少なくとも1つの開口部は側穴部であるカテーテル。
【請求項4】
請求項1記載のカテーテルにおいて、前記カテーテルはその遠位端部において渦巻状にねじれており、それにより、前記カテーテルを通じて流れる流体をさらに偏向させるものであるカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年4月12日付で出願された米国仮特許出願第60/561,430号の利益を主張する2005年4月12日付で出願された米国特許出願第11/103,778号(現在の米国特許第7,569,029号)の継続出願として優先権を主張する2009年6月5日付で出願された米国特許出願第12/479,257号の一部継続出願である2012年4月23日付で出願された米国特許出願第13/453,663号の優先権を主張し、これらの参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本願はまた、2011年4月21日付で出願された「透析用カテーテル(Dialysis Catheter)」と題する米国仮特許出願第61/477,815号の優先権の利益も主張し、この参照によりその全体もまた本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、マルチルーメン・カテーテルに関し、より詳細には、中を通る流体を方向付ける湾曲または傾斜した壁を有する入口孔と出口孔とを備えたデュアルルーメン・カテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
デュアルルーメン・カテーテルは、多様な医療目的で長年にわたり使用に供されている。しかし、そのようなカテーテルが血液の除去と交換が関与する血液透析およびその他の治療用に開発されているのは、ほんのここ近年のことである。デュアルルーメン・カテーテルの一般的な形態は、Pfarreが米国特許出願第256,590号として米国でそのようなカテーテルの特許を取得した1882年頃まで遡る。この特許は、たとえば膀胱、直腸、胃、耳の洗浄およびドレナージに主として使用される、可撓性のあるデュアルルーメン・カテーテルを教示している。このタイプのカテーテル挿入では、カテーテルは、穿刺針やガイドワイヤを一切使用せずに身体の既存の開口部に導入される。
【0004】
より最近では、Blakeらが開発したカテーテルが米国特許第3,634,924号として特許を付与された。この特許は、太い静脈に導入するダブルルーメン心臓バルーン・カテーテルを教示しており、バルーンは静脈内で流れを制御するために膨らまされる。このカテーテルは、前腕前部または他の末梢静脈から血液とともにたとえば右心室を通って肺動脈のより細い分岐血管へと移動する「帆」としてバルーンを用いることで留置でき、そこで所期の機能を実行する。この特許は、単一の本体で2つのルーメンを使用することを教示しており、血液透析を含め多目的用として一般的になったタイプのデュアルルーメン構造の先端部をいかにして製造するかを説明している。その構造では、熱した金型で先端部を形成する間、一方のルーメンの端部を塞ぐ栓と、他方のルーメンの形を維持するワイヤとを使用する。
【0005】
一般的な用途のデュアルルーメン・カテーテルまたはマルチルーメン・カテーテルは、米国特許第701,075号、同第2,175,726号、同第2,819,718号、同第4,072,146号、同第4,098,275号、同第4,134,402号、同第4,180,068号、同第4,406,656号、同第4,451,252号、同第5,221,255号、同第5,380,276号、同第5,395,316号、同第5,403,291号、同第5,405,341号、同第6,001,079号、同第6,190,349号、同第6,719,749号、同第6,758,836号、および同第6,786,884号各明細書(それぞれ、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を含め他の特許でも教示されている。
【0006】
カテーテルによるバスキュラーアクセス法は、医療専門家らの間では、実に17世紀から長年にわたり知られている。しかし、1950年代初めにセルディンガー法が導入されて初めてバスキュラーアクセスを改善する新たなアプローチが使用できるようになった。この手法は、Sven Ivar Seldinger博士が1952年6月にヘルシンキで行われたCongress of the Northern Association of Medical Radiologyで行った講演をもとに発表された論文で教示された。この手法では、基本的には、まず中空針を用いて穿刺し、次いでこの針にワイヤを通して脈管内に位置決めする。針を引き抜き、ワイヤに被せて経皮的にカテーテルを導入する。ワイヤは後に抜去する。この手法により低侵襲なバスキュラーアクセスが可能になり、今ではこの手法は多数の医療手法においてアクセスを行う方法として許容されている。熱心に研究開発されているこのような手法のひとつに血液透析がある。
【0007】
血液透析は、患者の血液中の毒素を抽出または分離するために患者から一時的に血液を抜き取り、浄化した血液をその患者に戻すことと定義できる。血液透析は、腎障害または腎不全の患者、すなわち腎臓が血液を適切または十分に浄化できず、特に老廃物や水分を除去できない症例に適応される。
【0008】
慢性腎障害または慢性腎不全の場合、血液透析を反復的に行わなければならない。たとえば、腎移植が不可能かまたは治療上禁忌であるような末期の腎疾患患者は、年間100回から150回透析を受けなければならないこともある。結果として、その患者の余生にわたって血液透析を可能にするには数千回も血管にアクセスすることにもなる。
【0009】
1960年末頃、Stanley Shaldon博士と同僚らは、英国ロンドンのRoyal Free Hospitalで、深部の血管、具体的には大腿動脈および静脈に、経皮的にカテーテルを挿入することで血液透析を行う手法を開発した。この手法は、1961年10月14日版The Lancetの857〜859ページに掲載されたShaldon博士と共著者らの発表論文に記載された。Shaldon博士と共著者らは、血液透析用に、セルディンガー・ワイヤに被せて導入する、先細先端部を有するシングルルーメン・カテーテルを開発した。その後、Shaldon博士と同僚らは、シングルルーメンの入口および出口カテーテルを大腿静脈に挿入するようになり、これを1963年6月19日発行のBritish Medical Journalで報告した。入口カテーテルと出口カテーテルの両方を大腿静脈内に提供する目的は、透析の「セルフサービス」的アプローチの可能性を探ることであった。やがてShaldon博士はこれに成功し、患者は定期的に血液透析装置につなぐことができる埋め込み式カテーテルが体内にある間は相応に普段の生活ができるようになった。
【0010】
血液透析におけるデュアルルーメン・カテーテルの利点は、継続的な血液透析を確立するのに一度の静脈アクセスで事足りることである。一方のルーメンは患者から透析ユニットへの血流の導管として作用し、他方のルーメンは透析ユニットから患者に戻される処理済み血液の導管として作用する。これは、Shaldon博士が行ったように2本の別箇のカテーテルを留置するのに挿入を2回行う必要があった従来のシステムや、脱血と浄化返血とを交互に行う複雑な透析装置で1本のカテーテルを用いた従来のシステムとは対照的である。
【0011】
定期的な血液透析用にカテーテルを所定位置に留置したままにしておくShaldon博士の成功をもとに、さらに別の部位でも取組みがなされた。Shaldon博士は大腿静脈を使ったが、1977年頃、カナダのToronto Western HospitalのP.R.Uldall博士は、透析治療の合間にも留置したままとなる鎖骨下カテーテルの臨床試験を開始した。Uldall博士と共著者らは、これについて記述した論文を、1979年10月にDialysis and Transplantation,Volume 8,No.10で発表した。これに続きUldall博士は鎖骨下挿入用の同軸デュアルルーメン・カテーテルで実験を開始し、これは結果として1981年1月6日に発行されたカナダ国特許第1,092,927号となった。このカテーテルに特有の形態は市場で大成功を収めたわけではないが、定期的な血液透析用に鎖骨下静脈内に埋め込まれるデュアルルーメン・カテーテルの先駆けであった。
【0012】
血液透析用デュアルルーメン・カテーテルの開発における次なる重要なステップは、Martinに付与されたカナダ国特許第1,150,122号である。続いての開発は、これもMartinに付与された米国特許第4,451,252号に示されている。このカテーテルは、ルーメンが直径方向の隔壁によって隔てられ隣り合わせに配置されるという、周知のデュアルルーメン構成を利用している。この特許で示されている構造は、ルーメンの片方にセルディンガー・ワイヤを通し、このワイヤを経皮的にカテーテルを挿入するガイドとして用いることを可能にする先端部を提供している。このタイプの構造は、Edelmanの欧州特許出願第0079719号公報、および米国特許第4,619,643号、同第4,583,968号、同第4,568,329号、同第4,543,087号、同第4,692,141号、同第4,568,329号各明細書、および米国意匠特許第272,651号に示されており、この参照により各開示の全体が本明細書に組み込まれる。
【0013】
セルディンガー法により、または実際にはどのような類似の手法でも、カテーテルをガイドワイヤに被せて挿入するためには、カテーテル先端部は、皮膚に接触するときに折りたたまれないように十分な剛性がなければならない。カテーテルをワイヤに被せて導入しているときに皮膚の穿刺穴が大きくなってしまうからである。このことは、患者にとって苦痛でないように柔性と可撓性があるべきカテーテル本体の望ましい材料特性と多少矛盾する。この問題を解決しようと、一度の押し出し成形で本体と先端部を形成するという制限内において、さまざまな先端部が形成されてきた。その結果、先端部は一般に、より短い取入ルーメンにみいだされる余剰材料をいくらか使用して作成されることになった。このことは、他の問題、たとえば静脈内の長期間留置には不適切な非常に堅い先端部、停滞血液を溜め得る空隙、およびより長く緩やかな先端部と比べて挿入には望ましくない短い切り株のような先端部をもたらした。また、先端部を形成する十分な材料がいつもあるわけではないので、栓が付加されているが、成功率にばらつきがある。栓が正確に配置されないと、生じた構造に許容不可な空間ができる可能性があり、そこに血液が停滞し得るからである。
【0014】
また、多くの治療法、特に血液透析においてそうなりつつあるように、カテーテルを患者体内に長期間留置する場合は、先端部の剛性度はより重要になることも認識しなければならない。これは、カテーテルが静脈の中心にあることが理想であるが実際にはしばしば血管壁に支持されることになるからである。そのような状況下では、堅い先端部は、血管壁を損傷するか、長期間留置されると血管壁内に埋没してしまうことが考えられる。
【0015】
今日実施されている血液透析では、通常は2種類のカテーテルのいずれかを用いて患者から血液を抜いて処理し、処理後の血液を患者に戻している。もっとも一般的にはデュアルルーメン・カテーテルが使用され、各ルーメンは概ね筒形または半筒形の構成になっている。あるいは、それぞれ完全な筒形の構成を有する2本のチューブが、透析のための脱血用と処理済み血液の返血用に別々に用いられている。
【0016】
従来のデュアルルーメン・カテーテルで可能な流量は、別々のチューブを用いて透析のために脱血してから処理済み血液を静脈に戻す場合に得られる流量よりも、ふつうは低い。したがって、血液透析膜の許容量(最大流量)は増大しているので、2本のチューブを用いる方法はますます普及している。
【0017】
現在血液透析膜は、毎分500ml超の流量で血液を処理できる。処理速度はさらに上がる見込みである。しかし、流量が300ml/分を超えると、浄化した血液を静脈に戻すラインと浄化するために血液を除去するラインの両方で問題が生じる。静脈ラインからの高流量は、静脈内で先端部のしなりまたは「跳ね返り」を生じさせる可能性があり、その結果静脈内壁が損傷を受ける。動脈ラインへの同様の高流量は、静脈壁への孔部のへばりつきをもたらし、閉塞が生じる可能性がある。
【0018】
カテーテルのルーメンを通過する流量は、それがシングルルーメン・カテーテルでもデュアルルーメン・カテーテルでも、壁面の滑らかさ、管腔の内径または断面積、および管腔の長さを含め多くの要因によって制御される。もっとも重要な要因は、管腔の断面積である。管腔内の所与の断面積を流れる流体の力または速度は、外部からの押し出し力によって制御される。これは、静脈側ルーメンを通って処理済み血液を押す正圧および動脈側ルーメンを通って未処理血液を引く(吸い込みの)負圧である。
カテーテル内の高流量を提供することで生じる問題は、デュアルルーメン・カテーテルの構成においては増大する。デュアルルーメン・カテーテルの各ルーメンは通常はD字形を有するので、流量が制限されると推測されている。さらに、そのようなデュアルルーメン・カテーテルは、多くの場合、実質的にルーメンの軸線上でルーメンの端部が開口している主孔部を有するカテーテルである。したがって、頻繁に跳ね返りが生じる。跳ね返りのせいで静脈壁が損傷し、カテーテル先端部にフィブリンが堆積するきっかけとなる可能性がある。フィブリンの堆積はさらに孔部の閉塞をもたらす可能性がある。
【0019】
流出と流入の両方で側部孔を用いるデュアルルーメン・カテーテルがある。その一例が、Cruzらに付与された米国特許第5,571,093号に開示されたカテーテルである。しかし、そのようなカテーテルは、デュアルルーメン・カテーテルによる血液透析に関する問題、たとえばカテーテルの孔部の高い閉塞発生率ならびにある程度の跳ね返りを完全に解決しているわけではない。さらに、流量が高い場合は特に、静脈からカテーテルに入る血流の急な方向転換によって赤血球が傷つき損壊することがある。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許第0,256,590号明細書
(特許文献2) 米国特許第0,272,651号明細書
(特許文献3) 米国特許第0,701,075号明細書
(特許文献4) 米国特許第2,175,726号明細書
(特許文献5) 米国特許第2,819,718号明細書
(特許文献6) 米国特許第3,634,924号明細書
(特許文献7) 米国特許第4,072,146号明細書
(特許文献8) 米国特許第4,098,275号明細書
(特許文献9) 米国特許第4,134,402号明細書
(特許文献10) 米国特許第4,180,068号明細書
(特許文献11) 米国特許第4,403,983号明細書
(特許文献12) 米国特許第4,406,656号明細書
(特許文献13) 米国特許第4,451,252号明細書
(特許文献14) 米国特許第4,543,087号明細書
(特許文献15) 米国特許第4,568,329号明細書
(特許文献16) 米国特許第4,583,968号明細書
(特許文献17) 米国特許第4,619,643号明細書
(特許文献18) 米国特許第4,692,141号明細書
(特許文献19) 米国特許第5,221,255号明細書
(特許文献20) 米国特許第5,348,536号明細書
(特許文献21) 米国特許第5,378,230号明細書
(特許文献22) 米国特許第5,380,276号明細書
(特許文献23) 米国特許第5,395,316号明細書
(特許文献24) 米国特許第5,403,291号明細書
(特許文献25) 米国特許第5,405,341号明細書
(特許文献26) 米国特許第5,571,093号明細書
(特許文献27) 米国特許第6,001,079号明細書
(特許文献28) 米国特許第6,190,349号明細書
(特許文献29) 米国特許第6,409,700号明細書
(特許文献30) 米国特許第6,461,321号明細書
(特許文献31) 米国特許第6,719,749号明細書
(特許文献32) 米国特許第6,758,836号明細書
(特許文献33) 米国特許第6,786,884号明細書
(特許文献34) 米国特許第7,141,035号明細書
(特許文献35) 米国特許第7,569,029号明細書
(特許文献36) 米国特許第6,620,139号明細書
(特許文献37) 米国特許第5,464,398号明細書
(特許文献38) 米国特許出願公開第2003/0144623号明細書
(特許文献39) 米国特許出願公開第2004/0167463号明細書
(特許文献40) 米国特許出願公開第2005/0228339号明細書
(特許文献41) カナダ国特許出願公開第1092927号明細書
(特許文献42) カナダ国特許出願公開第1150122号明細書
(非特許文献)
(非特許文献1) Dr.Sven Ivar Seldinger MD @ Congress of the Northern Assoc.of Medical Radiology at Helsinki in June 1952
(非特許文献2) Dr.Shaldon-1961 edition of The Lancet at Pgs.857−859
(非特許文献3) Dr.Uldall-Dialysis & Transplanation,Volume 8,No.10 in October 1979
(非特許文献4) International Search Report for corresponding PCT Patent Application No.PCT/US2013/037783 dated October 7,2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本開示は、記載する特定のシステム、デバイス、および方法は変わる可能性があるので、それらに限定されない。本明細書で使用される用語は、具体的な型や実施形態を説明することだけを目的とし、本発明の範囲を限定するものではない。
【0021】
本明細書では、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈から明らかにそうでないことが示されていなければ、複数形のものを含むものとする。特に明言しない限り、本明細書で使用するすべての科学技術用語は当業者が通常理解するのと同じ意味をもつ。本明細書のいかなる記載も、本明細書に記載の実施形態が先行発明によってそのような開示に先行できないと認めるものとみなしてはならない。本明細書では、「有する(comprising)」という用語は「〜を含むがこれに限定されるものではない」ことを意味する。
【0022】
本発明の目的は、カテーテルの一方のルーメンから血液を抜き取り、他方のルーメンを通って処理済み血液を戻すことを必要とする血液透析、血漿瀉血、およびその他の治療法で使用される改良されたマルチルーメン・カテーテルを提供することである。
【0023】
別の目的は、高流量に対処することができるマルチルーメン・カテーテルを提供することである。
【0024】
さらに別の目的は、カテーテルの一方のルーメンから血液を抜き取り、他方のルーメンを通って処理済み血液を戻すことを必要とする血液透析、血漿瀉血、およびその他の治療法で使用されるより高効率なマルチルーメン・カテーテルを提供することである。
【0025】
さらに別の目的は、高流量を許容する一方で、静脈壁外傷および赤血球損壊を低減するマルチルーメン・カテーテルを提供することである。
【0026】
本発明のさらに別の目的は、ルーメンの孔部に流出入する血液の制御と方向付けを最大限化することによって再循環を最小限化する先端部構成を有するマルチルーメン・カテーテルである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記およびその他の目的は、本発明により、脈管内に留置される細長いカテーテル本体と、前記カテーテル本体の内部を長手方向に貫通して、第1のルーメンと第2のルーメンとに分割する隔壁とを有し、当該第1および第2のルーメンの各々は、前記カテーテル本体の対向する側部に設けられた孔部で終端する、湾曲または傾斜した内壁を有する遠位端部を有する装置を提供することによって実現する。前記ルーメンの前記遠位端部の前記湾曲または傾斜した内壁は、遷移部を提供し、ここで前記カテーテルに流出入する血液の流れは、ルーメン内を流れる方向と脈管内を流れる方向との間で流体の流れる方向を徐々に変化させる経路を移動する。
【0028】
一実施形態では、カテーテル本体に流出入する流れのパターンの方向変化は、実質的に螺旋状である。他の実施形態では、カテーテル本体に流出入する流れのパターンの方向は湾曲しており、さらに他の実施形態では、カテーテル本体に流出入する流れのパターンの方向は傾斜している。このように、これらの実施形態の流れパターンは、カテーテルのルーメンおよび脈管内で血液の動きの互い違いなパターンを生成することによって、より高効率な血液交換を提供している。
【0029】
別の実施形態では、ルーメンの孔部は長手方向に間隔をおかれている。このように、未処理血液の脱血と処理済み血液の返血はさらに隔てられ、処理済み血液の未処理血液による再循環の発生が有利にも最小限化される。離間間隔は特定の用途により変わり得るが、好ましくは約2cm〜約3cmである。好ましくは、患者からの脱血側のルーメンの孔部は、処理済み血液の返血側のルーメンの孔部の「上流」にある。
【0030】
本発明のこれらおよびその他の特徴は、次の図面の参照および以下の詳細な説明によって、より完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】流入側および流出側チューブに取り付けられた本発明のデュアルルーメン・カテーテルの斜視図である。
図2図1のデュアルルーメン・カテーテルの断面図である。
図3】流入側および流出側チューブから取り外されている本発明のデュアルルーメン・カテーテルの斜視図である。
図4図3のデュアルルーメン・カテーテルの別の斜視図である。
図5図3のデュアルルーメン・カテーテルの第3の斜視図である。
図6A】分割先端マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態の図である。
図6B】分割先端マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態の図である。
図6C】分割先端マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態の図である。
図6D】分割先端マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態の図である。
図7A】段状先端マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態の図である。
図7B】段状先端マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態の図である。
図7C】段状先端マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態の図である。
図7D】段状先端マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態の図である。
図7E】段状先端マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態の図である。
図8A】対称先端マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態の図である。
図8B】対称先端マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態の図である。
図8C】対称先端マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態の図である。
図8D】対称先端マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態の図である。
図8E】対称先端マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態の図である。
図9A】渦巻状ねじれ隔壁を有する対称先端マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態の図である。
図9B】渦巻状ねじれ隔壁を有する対称先端マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態の図である。
図9C】渦巻状ねじれ隔壁を有する対称先端マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態の図である。
図9D】渦巻状ねじれ隔壁を有する対称先端マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の装置によると、患者の脈管、たとえば静脈などに挿入されるようにされたカテーテル本体が提供される。前記カテーテル本体は、外壁と、前記カテーテル本体内部の長さに沿って長手方向に伸び、内壁と前記ルーメンの遠位端部側部に設けられた孔部とをそれぞれ有する2つの実質的に平行なルーメンを画成している隔壁とを有する。
【0033】
各ルーメンの遠位端部には、当該ルーメンの内壁の一部を湾曲または傾斜させて、孔部で終端する遷移部が画成されている。遷移部はこのように構成されているので、ルーメンの長さを流れる流体の流れを、ルーメンの長手方向からルーメン端部で側方に向いた孔部の横断方向へと徐々に偏向させる。
【0034】
ルーメンの側方に向いた孔部に流入する流体については、遷移部は、脈管内を移動する方向から流入時の横方向を経てルーメン内を移動する長手方向へと徐々に偏向させる。このようにして、遷移部は、ルーメンに流出入する流れの方向の緩やかな変化を提供する。ルーメン内を移動する流体の方向のこのように滑らかでより生理的な変化により、高流量での交換中のカテーテル先端部の跳ね返りが減少し、流体が受ける応力が低下し、より高効率で高流量のカテーテルへの流入およびカテーテルからの流出が可能になる。このように血液が流れる方向がより緩やかに変化すると、カテーテル先端部での血液滞留時間が長引かず、カテーテル内で血栓が形成される可能性を低下させることにもなる。血液の移送を必要とする血液透析、血漿瀉血、およびその他の治療法においては、ルーメン遠位端部の遷移部によって提供される応力低下により、血小板活性化、溶血、および脈管内壁の外傷の発生率が低下する。
【0035】
一実施形態では、カテーテルの第1のルーメンは、ルーメンの境界部分とボーラス先端部のノーズ部分との間の位置でボーラス先端部の一つの側に形成された、第1のボーラス洞内で終端している。第1のルーメンの末端部分のノーズ部分は、射出成型法で形成してノーズ部分および第1のボーラス洞の螺旋形状を生成することができ、したがってルーメン内を移動する血液などの流体は、第1のルーメンに流入するときにその流れの方向を滑らかに変えられる。カテーテルの第2のルーメンは、第1のボーラス洞から180度の方向に定められ、第1のルーメンのノーズ先端部と同様の射出成型による構成を有するノーズ部分を有する、第2のボーラス洞内で終端している。第1のルーメンのノーズ部分と第2のルーメンのノーズ部分は血流を互いに逆方向に方向付け、それによって処理済み血液と未処理血液との混和を減じている。好ましくは、この実施形態の第2のルーメンは第1のルーメンを約2cmから約3cm越えて延在し、その結果第2のルーメンの末端部分のノーズ部分が第1のルーメンの末端部分のノーズ部分から長手方向に離間している。
【0036】
別の実施形態では、第1のルーメンおよび第2のルーメンのノーズ部分内での終端部は、部分的に凹んで、ノーズ部分が張り出す態様を可能にして脈管壁を防御する働きをさせる。この設計は、カテーテルのルーメンが部分的または完全に閉塞する現象を低減させることを意図している。
【0037】
さらに別の実施形態では、カテーテル本体内に追加ルーメンが提供されてガイドワイヤの導入を可能にする。ガイドワイヤはこの追加ルーメン内に挿入され、カテーテル先端部を患者の脈管内に導入し適切に留置するのに使用される。ガイドワイヤ用の追加ルーメンは、第1および/または第2のルーメンと同じ位置で終端してもよいし、ルーメンの遠位端部を越えて遠位で終端してカテーテル本体にさらなる安定性を提供してもよい。このような構成においては、第1のルーメンおよび第2のルーメンの実質的に螺旋状の遷移部は、カテーテルの末端シャフト内で開口を機械的または熱的(たとえばレーザ)に削って生成することができる。
【0038】
さらに別の実施形態では、第1のルーメンと第2のルーメンは、たとえば隔壁中の分割可能な膜によって、隔壁の遠位部分に沿って分割することができる。このようにして、ルーメンを部分的に長手方向に互いに分離することができる。
【0039】
本明細書では、ルーメンの内壁に関する湾曲または傾斜への言及は、少なくともルーメンの内壁の一部分がルーメンの遠位端部で、ルーメンの長手方向から、この長手方向から傾斜した方向へと方向が遷移する、広範な構成を含む。このようにして、ルーメン内をどちらかの方向に移動する流体は、長手方向へとまたは長手方向から方向を変える際に、遷移部の湾曲または傾斜した壁に支持されることになる。
【0040】
遷移部におけるルーメン内壁のこの方向変化は、遷移部の一部または全体で一定であっても変化してもよく、実質的に単一の面内で流路の方向が変わるような二次元的または三次元的に延在することができる。好ましくは、ルーメン内壁の湾曲または傾斜は、三次元的に延在し、実質的に螺旋状である。本明細書では、螺旋パターンは、規則的および不規則的なパターンを含み、その長さにおいて一定のまたは変化する直径を有する。このような構成なので、遷移部を通って流体が移動するとその流体には螺旋状の流れパターンが与えられる。この螺旋状の流れパターンにより、面内再循環の発生率が低下する。血液の移送を必要とする血液透析、血漿瀉血、およびその他の治療法においては、この螺旋状の流れパターンにより、カテーテルを通じて患者に送達される処理済み血液が吸入孔部からカテーテルに再流入する頻度が低下する。このタイプの再循環が低減されると、より高効率な血液交換が可能になり、したがって治療時間も短縮できる。
【0041】
ルーメンの断面積および幾何学的形状は、互いに同じでも異なっていてもよい。好ましくは、各ルーメンの断面積は、カテーテルに流入しカテーテルから流出する同じような体積および流量に対処するために、同じ寸法である。好ましい形態では、各ルーメンの断面積は、約3.5mm〜約5mmであり、より好ましくは約4.5mm〜約5mmである。ルーメンの断面形状は、円形、半円形(D字形)、楕円形、半楕円形、滴形、または陰陽記号に似た湾曲した滴形を含めさまざまな形をとることができる。
【0042】
ルーメンの遠位端部の側壁に提供される孔部は、円形、半円形(D字形)、楕円形、半楕円形、滴形を含めあらゆる寸法と形状に対処できる。好ましくは、孔は、半楕円形であり、最大径は約3mm〜約6mmである。第1および第2のチャネルの末端空洞の表面積は、Mahurkarによる米国特許第4,808,155号明細書に示されているような従来の設計よりも大きい。その結果、流体と血液をより高効率で交換できる。
【0043】
本発明のカテーテルは、シリコーンまたはミズーリ州St.LouisのCarboline Companyが商標Carbothane(登録商標)として販売しているポリウレタンを含むポリウレタンなど、マルチルーメン・カテーテルに一般的に用いられる材料から製造することができる。
【0044】
本発明の別の態様では、本発明のカテーテルを患者の流体が流れる脈管と連通させて配置するステップを有する、患者体内で流体を交換する方法が提供される。好ましい実施形態では、交換された流体は血液を有し、流体が流れる患者の脈管は静脈である。本発明の方法は、患者からの脱血と患者への返血とを要する血液透析、血漿瀉血、およびその他の治療法を行うのに特に適している。本発明の方法は、限外濾過および/または静脈サンプリングのステップをさらに有することができる。
【0045】
次に図1図5を参照しながら図面に示されている実施形態を説明すると、カテーテル10の内部を二分して2つのルーメン14と16とを形成する隔壁12を有するカテーテル10が示されている。カテーテル10の遠位端部において、ルーメン14および16は、カテーテル10の対向する側部に設けられた孔部(port)22および24で終端する湾曲壁18および20を有する。図2に示すように、ルーメン14および16の断面形状は半円形である。図1および図3図5に示すカテーテルでは、ルーメン16はルーメン14の端部を越えて伸び、これにより、吸入孔部24は流出孔部22からさらに離間される。動作時は、血液などの流体は吸入孔部24から入り、湾曲壁20を通過しルーメン14を通ってチューブ32に流動する間にその方向を変える。チューブ32は、処理の対象となる流体を透析装置(図示せず)などの装置に流体を流動させる。処理後、処理済みの流体はチューブ30からルーメン16を通って患者に戻される。流体は、ルーメン16の端部で湾曲壁18および出口孔22によって偏向され患者の脈管内に流入する。
【0046】
図6A図6Dは、マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態を図示する。カテーテル60は、2つのルーメン61と62とを形成する分割先端部を含んでいる。この分割設計により、カテーテル内部を二分するのに用いられる共通の隔壁が排除される。ルーメン61と62は、その形状を画成する独自の壁をそれぞれ有する。カテーテル60の遠位端部において、ルーメン61および62は、カテーテル60の対向する側部に設けられた孔部65および66で終端する湾曲壁63および64を有することができる。例としてのみ示されるように、ルーメン61はルーメン62の端部を越えて伸び、これにより、吸入孔部65は流出孔部66からさらに離間される。動作時は、血液などの流体は吸入孔部65から入り、湾曲壁63を通過しルーメン61を通ってチューブ67に流動する間にその方向を変える。チューブ67は、流体を処理する透析装置(図示せず)などの装置に流体を流動させる。処理後、処理済みの流体はチューブ68からルーメン62を通って患者に戻される。流体は、ルーメン62の端部で湾曲壁64および出口孔66によって偏向され患者の脈管内に流入する。
【0047】
動作時は、カテーテル60のルーメン61と62とは弱い接着剤で接着されて、動作中カテーテルの構造的一体性を維持することができる。この接着剤は、カテーテル60の周りを流れる血液により溶解し、それによってルーメン61と62の少なくとも一部分が分割されるように、水溶性であってもよい。たとえば、カテーテル60は、その末端の5cmの部分に水溶性の接着剤を有し、この接着剤が溶解すると分割されるように製造することができる。
【0048】
所期の流体の流れおよび許容可能な流体の中断に基づいて、1もしくはそれ以上の側穴部69をカテーテル60に含むことができる。側穴部69は、血液または他の流体交換の追加の手段を提供するのに役立つ以外にも、患者への(からの)挿入/除去/交換の間、カテーテル60をガイドワイヤに装着する装着点としても役立つ。
【0049】
側穴部69は、流体の流れがルーメン先端部の周りで最適化されるように寸法決めし配置することができる。たとえば、側穴部69は、直径およそ1mmとし、孔部65および66からおよそ1cmのところに配置することができる。あるいは、側穴部はより小さい(たとえば0.5mm)、またはより大きく(たとえば1.5mm)てもよく、または別の場所に配置してもよい(たとえば孔部から1.5cmのところ)。側穴部69の寸法と場所によりカテーテル先端部でのせん断応力および血球の滞留時間が変化する可能性があるので、最適な均衡を得るのに直径およそ0.75mm〜1.2mmの側穴部を実装する場合がある。
【0050】
適切に間隔をとり寸法決めされた側穴部69などの側穴部を用いると、高度に最適化されたカテーテルを得ることができる。たとえば、図6A図6Dに示すカテーテル60に類似のカテーテルを用いることで、カテーテル内の流体の流れが最適化され、一方で再循環は大幅に減少する可能性がある。
【0051】
なお、図6A図6Dに示す側穴部69は、一例としてのみ示す。追加でまたは代わりの開口、たとえばスリット、フラップ、半円形の切り込み、および他の類似の形状を使用してもよい。加えて、側穴部は螺旋状の外形状を有していてもよく、当該側穴部を通過するあらゆる流体をさらに偏向させてもよい。
【0052】
図6A図6Dに示すように、湾曲壁63および64は、偏向部位を画成し、それにより、カテーテル60を流れる流体が偏向される。カテーテル60の用途、および所望の偏向量に応じて、湾曲壁63および64の角度を変えることができる。たとえば、湾曲壁63および64はおよそ54°であってもよい。あるいは、湾曲壁63および64は0°から90°の間であってもよい。典型的には、0°も90°も固有の欠点を有するので使用されない。0°では流体を偏向させることができない。90°では孔部がカテーテルの軸方向流路に対し直交することになる。吸入孔部においては、当該角度は、関連のあるルーメンを血管の側面に取着させる真空力の原因になることがある。側穴部は、生じ得るあらゆる真空圧を緩和するのに役立つが、カテーテル全体としての機能はやはり低下することになる。
【0053】
図7A図7Eは、マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態を図示する。カテーテル70は、2つのルーメン71と72とを形成する段状先端部を含んでいる。分割設計と同様に、この設計でも一方のルーメンが他方よりも長くなっている。段状先端部設計においても、カテーテル内部を二分して2つの孔部を形成し、これら孔部を越えて延在する先端部の隔壁は排除される。むしろ、ルーメン71および72は、その形状および当該ルーメンを通過する流体の流れを画定する湾曲壁をそれぞれ独自に有するので、流体の分離を維持するために延長された隔壁を必要としない。
【0054】
カテーテル70の遠位端部において、ルーメン71および72は、カテーテル70の対向する側部に設けられた孔部75および76で終端する湾曲壁73および74を有する。例としてのみ示されるように、ルーメン71はルーメン72の端部を越えて伸び、それによって段状先端部設計を形成し、吸入孔部75は流出孔部76からさらに離間される。前述したように、動作時は、血液などの流体は吸入孔部75から入り、湾曲壁73を通過しルーメン71を通ってチューブ77に流動する間にその方向を変える。チューブ77は、処理の対象となる流体を透析装置(図示せず)などの装置に流動させる。処理後、処理済みの流体はチューブ78からルーメン72を通って患者に戻される。流体は、ルーメン72の端部で湾曲壁74および出口孔76によって偏向され患者の脈管内に流入する。
【0055】
図6A図6Dを参照して上述したのと同様に、1もしくはそれ以上の側穴部(図7A図7Eでは図示せず)をカテーテル70に含むことができる。側穴部79は、血液または他の流体交換の追加の手段を提供するのに役立つ以外にも、患者への(からの)カテーテル挿入および/または除去および/または交換の間、カテーテル70をガイドワイヤに装着する装着点としても役立つ。
【0056】
図7A図7Eに示すように、湾曲壁73および74は、偏向部位を画成し、それにより、カテーテル70を流れる流体が偏向される。カテーテル70の用途、および所望の偏向量に応じて、湾曲壁73および74の角度を変えることができる。たとえば、湾曲壁73および74はおよそ54°であってもよい。あるいは、湾曲壁73および74は0°から90°の間であってもよい。典型的には、0°も90°も固有の欠点を有するので使用されない。0°では流体を偏向させることができない。90°では孔部がカテーテルの軸方向流路に対し直交することになる。吸入孔部においては、当該角度は、関連のあるルーメンを血管の側面に取着させる真空力の原因になることがある。側穴部は、生じ得るあらゆる真空圧を緩和するのに役立つが、カテーテル全体としての機能はやはり低下することになる。
【0057】
図8A図8Eは、マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態を図示する。カテーテル80は、2つのルーメン81と82が同じ地点で終端して孔部が隣接するような対称先端部を含む。加えて、一般的な従来技術とは異なり、本明細書で示す対称先端部設計においても、ルーメン81および82の遠位端部を越えて伸びることにより孔部を越えて伸びる隔壁は排除される。むしろ、隔壁は孔部と同一地点で終端するように短くされている。ルーメン81および82は、その形状および当該ルーメンを通過する流体の流れを画定する湾曲壁をそれぞれ独自に有するので、流体の分離を維持するために延長された隔壁を必要としない。図8Dに示すように、ルーメン81および82の断面形状は半円形である。
【0058】
カテーテル80の遠位端部において、ルーメン81および82は、カテーテル80の対向する側部に設けられた孔部85および86で終端する湾曲壁83および84を有する。この対称先端部の実施形態では、ルーメン81はルーメン82と同一地点まで伸び、それによって対称的な先端部の設計を形成している。前述したように、動作時は、血液などの流体は吸入孔部85から入り、湾曲壁83を通過しルーメン81を通ってチューブ87に流動する間にその方向を変える。チューブ87は、処理の対象となる流体を透析装置(図示せず)などの装置に流動させる。処理後、処理済みの流体はチューブ88からルーメン82を通って患者に戻される。流体は、ルーメン82の端部で湾曲壁84および出口孔86によって偏向され患者の脈管内に流入する。湾曲壁83および84を設けて流体を偏向させることによって、この設計では孔部を越えて伸びる隔壁を排除し、一方で吸入孔部85から入る流体と混合する出口孔86からの流体量をなおも低く維持している。
【0059】
図6A図6Dを参照して上述したのと同様に、1もしくはそれ以上の側穴部89をカテーテル80に含むことができる。側穴部89は、血液または他の流体交換の追加の手段を提供するのに役立つ以外にも、患者への(からの)挿入および/または除去および/または交換の間、カテーテル80をガイドワイヤに装着する装着点としても役立つ。
【0060】
側穴部89は、流体の流れがルーメン先端部の周りで最適化されるように寸法決めし配置することができる。たとえば、側穴部89は、直径およそ1mmとし、孔部85および86からおよそ1cmのところに配置することができる。あるいは、側穴部はより小さい(たとえば0.5mm)、またはより大きく(たとえば1.5mm)てもよく、または別の場所に配置してもよい(たとえば孔部から1.5cmのところ)。側穴部89の寸法と場所によりカテーテル先端部でのせん断応力および血球の滞留時間が変化する可能性があるので、最適な均衡を得るのに直径およそ0.75mm〜1.2mmの側穴部を実装する場合がある。
【0061】
適切に間隔をとり寸法決めされた側穴部89などの側穴部を用いると、高度に最適化されたカテーテルを得ることができる。たとえば、図8A図8Eに示すカテーテル80に類似のカテーテルを用いることで、カテーテル内の流体の流れが最適化され、一方で再循環は大幅に減少する可能性がある。
【0062】
なお、図8A図8Eに示す側穴部89は、一例としてのみ示す。追加でまたは代わりの開口、たとえばスリット、フラップ、半円形の切り込み、および他の類似の形状を使用してもよい。加えて、側穴部自体が螺旋状の輪郭を有して、そこを通過するあらゆる流体をさらに偏向させてもよい。
【0063】
図8A図8Eに示すように、湾曲壁83および84は、偏向部位を画成し、それにより、カテーテル80を流れる流体が偏向される。カテーテル80の用途、および所望の偏向量に応じて、湾曲壁83および84の角度を変えることができる。たとえば、湾曲壁83および84はおよそ54°であってもよい。あるいは、湾曲壁83および84は0°から90°の間であってもよい。典型的には、0°も90°も固有の欠点を有するので使用されない。0°では流体を偏向させることができない。90°では孔がカテーテルの軸方向流路に対し直交することになる。吸入孔部においては、当該角度は、関連のあるルーメンを血管の側面に取着させる真空力の原因になることがある。側穴部は、生じ得るあらゆる真空圧を緩和するのに役立つが、カテーテル全体としての機能はやはり低下することになる。
【0064】
図9A図9Dは、マルチルーメン・カテーテルの代替実施形態を図示する。カテーテル90は、2つのルーメン91と92が同じ地点で終端して孔部が隣接するような対称先端部を含む。加えて、一般的な従来技術とは異なり、本明細書で示す対称先端部設計においても、ルーメン91および92の遠位端部を越えて伸びることにより孔部を越えて伸びる隔壁を排除する。むしろ、隔壁は孔部と同一地点で終端するように短くされている。ルーメン91および92は、その形状および当該ルーメンを通過する流体の流れを画定する湾曲壁をそれぞれ独自に有するので、流体のを分離を維持する延長された隔壁を必要としない。図9Dに示すように、ルーメン91および92の断面形状は半円形である。
【0065】
図8A図8Eに示すカテーテル80とは異なり、カテーテル90は遠位端部に渦巻状のねじれを含む。図9Cに示すように、渦巻状ねじれを有するカテーテル90のねじれ部分100は、1°〜359°の範囲で回転できるが、最適値は、カテーテルを通って送られる流体の粘性や体積によって、この範囲内の中間の値となる。たとえば、人間の透析用のカテーテルであれば、カテーテル遠位端部から約4cm延出する範囲内で約135°回転させるのが最適な場合がある。あるいは、カテーテル遠位端部からおよそ1cm〜5cm延出する範囲内で約120°〜約150°の範囲が最適な場合がある。
【0066】
カテーテル90の遠位端部において、ルーメン91および92は、カテーテル90の対向する側部に設けられた孔部95および96で終端する湾曲壁93および94を有する。この対称先端部の実施形態では、ルーメン91はルーメン92と同一地点まで伸び、それによって対称的な先端部の設計を形成している。前述したように、動作時は、血液などの流体は吸入孔部95から入り、湾曲壁93を通過してルーメン91のねじれ部分100を通ってチューブ97に流動する間にその方向を変える。チューブ97は、処理の対象となる流体を透析装置(図示せず)などの装置に流動させる。処理後、処理済みの流体はチューブ98からルーメン92を通って患者に戻される。流体は、ルーメン92の端部でねじれ部分100および湾曲壁94によって偏向され、出口孔96を通って患者の脈管内に流入する。湾曲壁93および94ならびにねじれ部分100を設けて流体を偏向させることによって、この設計では孔部を越えて伸びる隔壁を排除し、一方で吸入孔部95から入る流体と混合する出口孔96からの流体の量をなおも低く維持している。
【0067】
図6A図6Dを参照して上述したのと同様に、1もしくはそれ以上の側穴部99をカテーテル90に含むことができる。側穴部99は、血液または他の流体交換の追加の手段を提供するのに役立つ以外にも、患者への(からの)挿入および/または除去および/または交換の間、カテーテル90をガイドワイヤに装着する装着点としても役立つ。
【0068】
側穴部99は、流体の流れがルーメン先端部の周りで増大するように寸法決めし配置することができる。たとえば、側穴部99は、直径およそ1mmとし、孔95および96からおよそ1cmのところに配置することができる。あるいは、側穴部はより小さい(たとえば0.5mm)、またはより大きく(たとえば1.5mm)てもよく、または別の場所に配置してもよい(たとえば孔部から1.5cmのところ)。側穴部99の寸法と場所によりカテーテル先端部でのせん断応力および血球の滞留時間が変化する可能性があるので、最適な均衡を得るのに直径およそ0.75mm〜1.2mmの側穴部を実装する場合がある。
【0069】
適切に間隔をとり寸法決めされた側穴部99などの側穴部を用いると、高度に最適化されたカテーテルを得ることができる。たとえば、図9A図9Dに示すカテーテル90に類似のカテーテルを用いることで、カテーテル内の流体の流れが最適化され、一方で再循環は大幅に減少する可能性がある。
【0070】
なお、図8A図8Eに示す側穴部99は、一例として示すだけである。追加でまたは代わりの開口、たとえばスリット、フラップ、半円形の切り込み、および他の類似の形状を使用してもよい。加えて、側穴部自体が螺旋状の輪郭を有して、そこを通過するあらゆる流体をさらに偏向させてもよい。
【0071】
図9A図9Dに示すように、湾曲壁93および94は、偏向部位を画成し、それにより、カテーテル90を流れる流体が偏向される。カテーテル90の用途、および所望の偏向量に応じて、湾曲壁93および94の角度を変えることができる。たとえば、湾曲壁93および94はおよそ54°であってもよい。あるいは、湾曲壁93および94は0°から90°の間であってもよい。典型的には、0°も90°も固有の欠点を有するので使用されない。0°では流体を偏向させることができない。90°では孔部がカテーテルの軸方向流路に対し直交することになる。吸入孔部においては、当該角度は、関連のあるルーメンを血管の側面に取着させる真空力の原因になることがある。側穴部は、生じ得るあらゆる真空圧を緩するのに役立つが、カテーテル全体としての機能はやはり低下することになる。
【0072】
本発明を構造的特性および/または方法論的行為に特化して説明してきたが、添付の特許請求の範囲で定義される本発明は、記載された特定の特性や行為に必ずしも限定されないことを理解すべきである。特定の特性や行為はむしろ、請求項の発明を実施する例示的形態として開示されている。
【0073】
上記に開示したさまざまな特性およびその他の特性、またはそれらの代替は、多くの他の異なるシステムまたは用途と組み合わせることができる。現時点では予測されないもしくは予期されない代替、それらの変更、変形、または改良が当業者により今後なされるかもしれないが、それら各々も開示の実施形態によって包含されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図9C
図9D