(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記軸及び前記ハウジングのうちの、前記磁場形成部材が設けられた一方、または、前記磁場形成部材が設けられた前記フィルタが設けられた一方における、前記シール部材よりも上流側の位置に設けられた環状の電磁石であって、その上流側の面と下流側の面とを連通する連通孔を有する第2磁場形成部材を更に備え、
前記制御手段は、更に前記第2磁場形成部材の磁力を制御し、
前記シール部材は、前記第2磁場形成部材に軸方向で対向する環状の第2対向部分に更に磁性流体が含浸されており、前記第2対向部分に含浸された磁性流体に作用する磁力によって前記第2磁場形成部材に引き寄せられた前記第2対向部分が、前記第2磁場形成部材に接触することを特徴とする請求項5に記載のフィルタ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、相対的に回転する軸とハウジングとの間の環状隙間内を流通する流体に含まれる異物を除去する、フィルタと回転シールとを備えたフィルタ装置において、装置の小型化や、低摩擦トルクと耐圧性との両立が可能であり、更に、フィルタ交換が容易なフィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
すなわち、本発明に係るフィルタ装置は、
相対的に回転する軸とハウジングとの間の環状隙間内を流通する流体に含まれる異物を除去するフィルタ装置であって、
前記軸及び前記ハウジングのうちの一方に設けられた環状のフィルタと、
前記軸及び前記ハウジングのうちの前記フィルタが設けられていない他方と、前記フィルタとの間の環状隙間を封止する回転シールと、
を備え、
前記回転シールは、
柔軟性を有する環状のシール部材と、
磁場を形成する環状の磁場形成部材と、
を備え、
前記シール部材及び前記磁場形成部材のうちの一方が、前記フィルタに設けられると共に、前記シール部材及び前記磁場形成部材のうちの他方が、前記軸及び前記ハウジングのうちの前記フィルタが設けられていない他方に設けられ、
前記シール部材は、前記磁場形成部材よりも上流側に設けられると共に、前記磁場形成部材に軸方向で対向する環状の対向部分に磁性流体が含浸されており、前記磁性流体に作用する磁力によって前記磁場形成部材に引き寄せられた前記対向部分が、前記磁場形成部材に接触することを特徴とする。
【0008】
シール部材の対向部分に含浸された磁性流体には、磁場形成部材が形成する磁場からの磁力が作用する。ここで、対向部分は、シール部材の自由端側に位置するため、この磁力によって、含浸された磁性流体と共に磁場形成部材に引き寄せられる。これにより、柔軟性を有するシール部材が、揺動するように変形するため、対向部分が磁場形成部材に接触する。磁場形成部材に接触した対向部分は、当該磁力によって磁場形成部材に対して常に押圧されるため、シール部材と磁場形成部材との間に環状のシール面が安定的に形成される。そして、含浸された磁性流体の一部が、磁力によって更に磁場形成部材に引き寄せられて対向部分から滲み出す。そのため、対向部分と磁場形成部材との対向面間は、介在する磁性流体によって潤滑される。以上により、軸及びハウジングのうちのフィルタが設けられていない他方と、フィルタとの間の環状隙間が、軸とハウジングとの相対的な回転中においても、低摩擦トルクで安定的に封止される。
【0009】
ここで、シール部材及び磁場形成部材は、一方がフィルタに設けられると共に、他方が、軸及びハウジングのうちのフィルタが設けられていない他方に設けられる。そのため、軸とハウジングとの間の環状隙間内に、フィルタと回転シールとを一体的に設けることが可能になる。その結果、フィルタと回転シールとが別の部品で構成されたフィルタ装置に比して、装置を小型化することができる。
【0010】
また、シール部材は、磁場形成部材よりも上流側に設けられるため、環状隙間内を流通する流体の圧力は、シール部材に対して磁場形成部材方向に作用する。この流体圧力によって、シール部材の対向部分が磁場形成部材に対して更に押圧されるため、シール部材と磁場形成部材との間のシール面のシール性がより高くなる。つまり、流体の圧力が、シール性の向上に寄与する。そして、流体圧力が高いほど、対向部分がより強く押圧されるため、シール面のシール性がより高くなる。したがって、本発明に係るフィルタ装置によれば、高い流体圧力が作用する場合であっても、回転シールのシール性は好適に確保される。つまり、高い耐圧性が発揮される。
【0011】
また、シール部材は、柔軟性を有するため、対向部分が磁場形成部材に押圧された状態のまま、軸方向や径方向にある程度変形することができる。したがって、相対的に回転している軸及びハウジングの軸方向及び/または径方向の相対位置が、軸振れ等によってある程度変化しても、シール部材と磁場形成部材との間のシール面は好適に維持される。また、シール部材が磁場形成部材に引き寄せられるため、ハウジング内における軸の位置決めは、引き寄せられるシール部材が、磁場形成部材との間にシール面を形成できる範囲内で定めればよい。したがって、本発明に係るフィルタ装置の回転シールによれば、従来の磁性流体シール(軸と、ハウジングに設けられたポールピースとの間の微小な環状隙間に磁性流体が保持された磁性流体シール)に比して、軸の挿入時における位置決めが容易になる。その結果、フィルタ交換等の作業において、軸を取り出して再び挿入する必要がある場合には、当該作業が容易になる。なお、フィルタが軸に設けられた構成を採用すれば、ハウジングから軸を取り出すことによってフィルタを容易に交換することができる。
【0012】
また、本発明に係るフィルタ装置は、前記磁場形成部材が、前記シール部材よりも早く回転する構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、シール部材は、磁場形成部材よりも遅く回転するか、静止している。そのため、磁場形成部材に接触するように変形しているシール部材には、シール部材が磁場形成部材よりも速く回転している場合に比べて遠心力が作用しにくくなる。ゆえに、シール部材には、この変形を阻害する遠心方向の力が作用しにくくなるため、シール部材と磁場形成部材との間のシール面が好適に維持され易い。特に、シール部材が静止しており、磁場形成部材のみが回転している場合、すなわち、軸とハウジングのうちの何れか一方が静止している場合において、シール部材が静止している一方に設けられている場合には、シール部材には遠心力が作用しないため、シール面がより好適に維持される。
【0014】
また、本発明に係るフィルタ装置においては、前記フィルタは、強硬な材料から構成されてもよい。ここで、強硬な材料とは、例えば、金属やセラミック等が考えられる。この構成によれば、磁場形成部材及びシール部材のうちの一方を、フィルタに対して直接固定することが可能になるため、フィルタ装置をより小型化することができる。
【0015】
また、本発明に係るフィルタ装置においては、前記シール部材は、前記フィルタと同一の材料を用いて、前記フィルタと一体に設けられてもよい。ここで、異物を除去するフィルタと、磁性流体が含浸されるシール部材は、例えば、共に多孔質の材料から構成することができる。ゆえに、このような材料をフィルタとシール部材に用いて、シール部材をフィルタと一体に設ければ、部品点数を減らすことができるため、フィルタ装置をより小型化することができる。
【0016】
また、本発明に係るフィルタ装置においては、前記磁場形成部材は、電磁石であって、前記磁場形成部材の磁力を制御する制御手段を更に備えてもよい。このようにすれば、対向部分に含浸された磁性流体に作用する磁力を制御することができるため、シール部材と磁場形成部材との間のシール面のシール性を調整することが可能になる。また、ハウジングからの軸の取り出しや、ハウジングへの軸の挿入を行うときに、磁場形成部材の磁力をなくすことができるため、これらの作業が容易になる。
【0017】
また、本発明に係るフィルタ装置は、前記軸及び前記ハウジングのうちの、前記磁場形成部材が設けられた一方、または、前記磁場形成部材が設けられた前記フィルタが設けられた一方における、前記シール部材よりも上流側の位置に設けられた環状の電磁石であって、その上流側の面と下流側の面とを連通する連通孔を有する第2磁場形成部材を更に備え、前記制御手段は、更に前記第2磁場形成部材の磁力を制御し、前記シール部材は、前記第2磁場形成部材に軸方向で対向する環状の第2対向部分に更に磁性流体が含浸されており、前記第2対向部分に含浸された磁性流体に作用する磁力によって前記第2磁場形成部材に引き寄せられた前記第2対向部分が、前記第2磁場形成部材に接触するようにしてもよい。
【0018】
この構成によれば、制御手段によって、磁場形成部材のみに磁力が与えられている場合は、シール部材の対向部分が磁場形成部材に引き寄せられることによって、磁場形成部材とシール部材との間にシール面が形成される。この場合には、軸とハウジングとの間の環状隙間内を流通する流体は、フィルタ内を通過する。これに対し、第2磁場形成部材のみに磁力が与えられている場合は、シール部材の第2対向部分に含浸された磁性流体に第2磁場形成部材方向の磁力が作用するため、第2対向部分が第2磁場形成部材に引き寄せられてこれに接触し、シール部材と第2磁場形成部材との間にシール面が形成される。なお、この場合には、軸とハウジングとの間の環状隙間内を流通する流体は、まず第2磁場形成部材が有する連通孔を通過する。そして、第2対向部分が第2磁場形成部材に接触している場合は、シール部材と磁場形成部材とは離間する。そのため、連通孔を通過した流体は、フィルタ内に加えて、シール部材と磁場形成部材との間も通過する。ゆえに、この場合には、軸とハウジングとの間の環状隙間内により多くの流体を流通させることができる。つまり、流体から異物を除去する必要が無い場合等に、環状隙間内を流通する流体の流量を増大させることが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、相対的に回転する軸とハウジングとの間の環状隙間内を流通する流体に含まれる異物を除去する、フィルタと回転シールとを備えたフィルタ装置において、装置の小型化や、低摩擦トルクと耐圧性との両立が可能になる。また、軸の取り出しや挿入作業が容易になるため、フィルタ交換が容易なフィルタ装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0022】
[実施例1]
図1を参照して、本発明の実施例1に係るフィルタ装置について説明する。なお、本実施例に係るフィルタ装置は、例えば、一般産業用機器のクリーン環境や真空内への回転導入部において、相対的に回転する軸とハウジングとの間の環状隙間内を流通する流体に含まれる塵埃等の異物を除去するために適用可能である。
【0023】
図1を参照して、本発明の実施例1に係るフィルタ装置の構成について説明する。なお、
図1は、本実施例に係るフィルタ装置100の構成を示す模式的断面図である。フィルタ装置100は、相対的に回転する軸10とハウジング20との間の環状隙間30内を流通する流体に含まれる異物を除去するために設けられる。ここで、相対的に回転するとは、何れか一方が固定された状態で他方が回転する場合の他、双方が回転する場合も含む。双方が回転する場合には、双方が同じ回転方向に回転する場合と、互いに異なる方向に回転する場合を含む。また、本実施例においては、流体は気体、液体の何れでもよく、環状隙間30内を
図1に示される矢印の方向に流通する。
【0024】
フィルタ装置100は、軸10に設けられた環状のフィルタ110と、ハウジング20とフィルタ110との間の環状隙間を封止する回転シール120と、を備える。フィルタ110は、環状(円筒状)の形状を有し、その内周面が軸10の外周面に固定される。なお、固定方法の詳細は後述するが、フィルタ交換のために着脱可能に固定されることが好ましい。フィルタ110は、微細な細孔を有する強硬な材料(金属、セラミック等)から成り、上流側の端面から流入し、下流側の端面から流出する流体に含まれる塵埃等の固形の異物を除去(捕集)する。なお、フィルタ110の性能は、異物のサイズ等に応じて適宜定めればよい。
【0025】
回転シール120は、柔軟性を有する環状のシール部材130と、周囲に磁場を形成する環状の磁場形成部材としての磁石140とを備える。シール部材130は、孔の開いた円板状の部材であり、その外周面がハウジング20の軸孔21の内周面に直接固定される。また、磁石140は、孔の開いた円板状の永久磁石であり、その内周面がフィルタ110の外周面に直接固定される。ここで、シール部材130は、磁石140よりも上流側の位置に設けられる。なお、シール部材130は、ポーラスシリコンや微細な細孔が形成されたゴム等の、多孔質で柔軟性を有する材料から構成されるが、環状隙間30内を流通する流体が透過しないように、後述する対向部分131を除いて、その外面を流体が透過しない構成となっている(例えば、コーティング等の処理が施されている)。
【0026】
シール部材130は、その内径が、磁石140の外径よりも小さくなるように形成される。そのため、シール部材130は、その内径側且つ自由端側に、磁石140に軸方向で対向する環状の対向部分131を有する。なお、対向部分131は、磁石140に対向する対向面と、この対向面周辺の内側部分とを含む。そして、対向部分131には、磁性流体150が含浸されている。上述のように、シール部材130は、多孔質材料から構成されるため、含浸された磁性流体150は、毛細管現象によって対向部分131内に保持される。なお、含浸された磁性流体150が対向部分131外へ分散しないように、シール部材130の内部に仕切り等を設けてもよい。また、対向部分131のみを多孔質で柔軟性を有する材料で構成して、シール部材130の他の部分を液体が浸透しない柔軟材料で形成してもよい。
【0027】
ここで、シール部材130が固定される位置は、磁性流体150に作用する磁力によって、対向部分131が磁性流体150と共に磁石140に引き寄せられて、これに接触するような位置である。つまり、このような位置に固定されることにより、対向部分131が磁性流体150と共に磁石140に引き寄せられると、シール部材130は揺動するように変形するため、対向部分131が磁石140に接触する。磁石140に接触した対向部分131は、磁力によって磁石140に対して常に押圧されるため、シール部材130と磁石140との間に環状のシール面が安定的に形成される。そして、磁性流体150は、磁力によって更に磁石140に引き寄せられるため、その一部が対向部分131から滲み出して、対向部分131と磁石140との対向面間に介在する。この磁性流体150は、当該対向面間の潤滑剤として機能する。以上より、ハウジング20とフィルタ110との間の環状隙間は、軸10とハウジング20との相対的な回転中においても、回転シール120によって低摩擦トルクで安定的に封止される。
【0028】
<本実施例に係るフィルタ装置の優れた点>
本実施例に係るフィルタ装置によれば、環状隙間30内を流通する流体の圧力が高い場合であっても、回転シール120のシール性が好適に確保される。以下、この点について、詳細に説明する。
【0029】
まず、
図1を用いて、フィルタ装置100の使用時の状態について説明する。環状隙間30内を流体が矢印の方向に流通すると、フィルタ110とハウジング20との間は、回転シール120によって封止されているため、流体はフィルタ110内を通過する。これにより、流体内に含まれる異物はフィルタ110によって除去される。ここで、フィルタ110の抵抗によって、環状隙間30内におけるフィルタ110よりも上流側の領域の流体の圧力は、下流側の領域の流体圧力よりも高くなる。そして、シール部材130は、磁石140よりも上流側に設けられている。したがって、環状隙間30内を流通する流体の圧力は、シール部材130に対して磁石140方向に作用する。この流体圧力によって、対向部分131が磁石140に対して更に押圧されるため、シール部材130と磁石140との間のシール面のシール性がより高くなる。ここで、流体圧力が高いほど、対向部分131がより強く押圧されるため、シール面のシール性がより高くなる。また、シール性が高くなることによって、対向部分131と磁石140との対向面間に介在している磁性流体150が飛散しにくくなる。また、フィルタ110の抵抗により軸10が軸方向に動くおそれもあるが、柔軟性のあるシール部材130は磁石140の動きに追随することができるため、シール面を確実に維持することができる。したがって、本実施例によれば、高い流体圧力が作用する場合であっても、回転シール120のシール性は好適に確保される。
【0030】
また、本実施例においては、磁石140がフィルタ110に設けられると共に、シール部材130が、ハウジング20の軸孔21の内周面に設けられる。そのため、環状隙間30内に、フィルタ110と回転シール120とを一体的に設けることが可能になるため、フィルタ装置100を小型化することができる。特に、本実施例においては、フィルタ110は、強硬な素材から構成されている。そのため、磁石140をフィルタ110に対して直接固定することが可能になる。したがって、従来のフィルタ装置に比して、部品点数を少なくすることができるため、フィルタ装置100をより小型化することができる。
【0031】
ところで、軸10とハウジング20との相対的な回転中においては、軸振れや振動等によって、両部材が軸方向や径方向に不規則に運動(変位)することがある。ただし、本実施例おいては、柔軟性を有するシール部材130は、常に磁石140に引き寄せられているため、対向部分131が磁石140に対して押圧された状態のまま、軸方向や径方向に変形することができる。したがって、軸10やハウジング20の不規則な運動によって、相対的に回転している軸10とハウジング20との軸方向や径方向の相対位置が変化しても、シール部材130と磁石140との間のシール面は好適に維持される。
【0032】
また、本実施例においては、シール部材130が磁石140に引き寄せられるため、ハウジング20内における軸10の軸方向や径方向の位置決めは、引き寄せられるシール部材130が、磁石140との間にシール面を形成できる範囲内で定めればよい。したがって、本実施例に係る回転シール120によれば、軸とポールピースとの間の微小な環状隙間に磁性流体が保持された従来の磁性流体シールに比して、軸10の挿入時における位置決めが容易になる。ここで、フィルタ110には除去された異物が堆積するため、フィルタ110を交換する必要が生じ得る。本実施例によれば、軸10をハウジング20から取り出した場合であっても、再び挿入する際に容易に軸10の位置決めをすることができるため、容易にフィルタ交換を行うことができる。なお、本実施例によれば、フィルタ110が軸10に設けられているため、軸10を
図1における下方に取り出すことによって、フィルタ110を容易にハウジング20から取り出すことができる点においても有利である。
【0033】
また、本実施例においては、対向部分131と磁石140との対向面間は磁性流体150によって潤滑されるため、グリス等の潤滑剤が用いられた回転シールに比して、発塵を低減させることができる。また、本実施例においては、磁性流体150に作用する磁場はフィルタ110に設けられた磁石140によって形成される。そのため、本実施例によれば、軸10やハウジング20の材料として磁性材料を用いる必要が無いため、材料の選択肢が増える点においても有利である。また、本実施例によれば、柔軟性を有するシール部材130が、磁石140に引き寄せられることによってシール面が形成されるため、軸10やハウジング20の製造に高い寸法精度が要求されない点においても有利である。
【0034】
なお、本実施例においては、磁石140が、シール部材130よりも早く回転するようにしてもよい。これによれば、シール部材130は、磁石140よりも遅く回転するか、静止している。そのため、磁石140に接触するように変形しているシール部材130には、シール部材130が磁石140よりも速く回転している場合に比べて遠心力が作用しにくくなる。ゆえに、シール部材130には、この変形を阻害する遠心方向の力が作用しにくくなるため、シール部材130と磁石140との間のシール面が好適に維持され易くなる。特に、シール部材130が静止しており、磁石140のみが回転している場合、すなわち、ハウジング20が静止している場合は、シール部材130には遠心力が作用しないため、シール面がより好適に維持される。
【0035】
[実施例2]
次に、
図2を用いて、本発明の実施例2に係るフィルタ装置について説明する。上述の実施例1とは異なり、本実施例においては、回転シールのシール部材がフィルタに設けられており、磁場形成部材がハウジングに設けられている。なお、実施例1と同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。なお、
図2は、本実施例に係るフィルタ装置200の構成を示す模式的断面図である。
【0036】
フィルタ装置200は、軸10に設けられた環状のフィルタ110と、ハウジング20とフィルタ110との間の環状隙間を封止する回転シール220と、を備える。この回転シール220は、フィルタ110の外周面に直接固定された環状のシール部材230と、ハウジング20の軸孔21の内周面に直接固定された環状の磁石240と、を備える。なお、シール部材230及び磁石240の形状、材質、設置位置等は、それぞれ実施例1におけるシール部材130及び磁石140の形状、材質、設置位置等と同様である。ただし、シール部材230は、その外径が、磁石240の内径よりも大きくなるように形成される。そのため、シール部材230は、その外径側且つ自由端側に、磁石240に軸方向で対向する環状の対向部分231を有する。なお、対向部分231は、実施例1における対向部分131と同様に、磁石240に対向する対向面と、この対向面周辺の内側部分とを含む。そして、対向部分231には、磁性流体150が含浸されている。
【0037】
このように構成されるフィルタ装置200においても、実施例1に係るフィルタ装置100と同様の効果が奏される。つまり、磁性流体150に作用する磁力によって、対向部分231が磁石240に引き寄せられると、シール部材230が揺動するように変形するため、対向部分231が磁石240に接触する。これにより、シール部材230と磁石240との間に環状のシール面が形成されると共に、磁性流体150の一部によって対向部分231と磁石240との対向面間が潤滑される。したがって、ハウジング20とフィルタ110との間の環状隙間は、軸10とハウジング20との相対的な回転中においても、回転シール220によって低摩擦トルクで安定的に封止される。そして、シール部材230は、磁石240よりも上流側に設けられているため、環状隙間30内を流通する流体の圧力が、シール部材230と磁石240との間のシール面のシール性に寄与する。特に、流体圧力が高いほど、シール面のシール性がより高くなる。したがって、本実施例においても、回転シール220は高い耐圧性を発揮する。
【0038】
そして、本実施例においても、フィルタ110と回転シール220とを、環状隙間30内に一体的に設けることが可能になると共に、シール部材230を、強硬な素材から構成されるフィルタ110に対して直接固定することが可能になるため、フィルタ装置200をより小型化することができる。また、本実施例においても、柔軟性を有するシール部材230は磁石240に引き寄せられるため、相対的に回転している軸10とハウジング20の相対位置が変化しても、シール面は好適に維持される。また、ハウジング20に対する軸10の位置決めが容易になるため、容易にフィルタ交換を行うことができる。また、軸10やハウジング20の製造に高い寸法精度が要求されない点においても有利である。
【0039】
なお、本実施例においては、磁石240が、シール部材230よりも早く回転するようにしてもよい。これによれば、シール部材230は、磁石240よりも遅く回転するか、静止している。そのため、磁石240に接触するように変形しているシール部材230には、シール部材230が磁石240よりも速く回転している場合に比べて遠心力が作用しにくくなる。ゆえに、シール部材230には、この変形を阻害する遠心方向の力が作用しにくくなるため、シール部材230と磁石240との間のシール面が好適に維持され易くなる。特に、シール部材230が静止しており、磁石240のみが回転している場合、すなわち、軸10が静止している場合は、シール部材230には遠心力が作用しないため、シール面がより好適に維持される。
【0040】
[実施例3]
次に、
図3を用いて、本発明の実施例3に係るフィルタ装置について説明する。上述の実施例とは異なり、本実施例においては、フィルタがハウジングに設けられている。なお、上述の実施例と同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。なお、
図3は、本実施例に係るフィルタ装置300の構成を示す模式的断面図である。
【0041】
フィルタ装置300は、ハウジング20に設けられた環状のフィルタ310と、軸10とフィルタ310との間の環状隙間を封止する回転シール320と、を備える。フィルタ310は、環状(円筒状)の形状を有し、その外周面がハウジング20の軸孔21の内周面に固定される。なお、フィルタ310の材質や固定方法等は、上述の実施例におけるフィルタ110と同様である。回転シール320は、軸10の外周面に直接固定された環状のシール部材330と、フィルタ310の内周面に直接固定された環状の磁石340と、を備える。なお、シール部材330及び磁石340の形状、材質、設置位置等は、それぞれ上述の実施例におけるシール部材及び磁石の形状、材質、設置位置等と同様である。ただし、シール部材330は、その外径が、磁石340の内径よりも大きくなるように形成される。そのため、シール部材330は、その外径側且つ自由端側に、磁石340に軸方向で対向する環状の対向部分331を有する。なお、対向部分331は、上述の実施例における対向部分と同様に、磁石340に対向する対向面と、この対向面周辺の内側部分とを含む。そして、対向部分331には、磁性流体150が含浸されている。
【0042】
このように構成されるフィルタ装置300においても、上述の実施例に係るフィルタ装置と同様の効果が奏される。つまり、磁性流体150に作用する磁力によって、対向部分331が磁石340に引き寄せられると、シール部材330が揺動するように変形するため、対向部分331が磁石340に接触する。これにより、シール部材330と磁石340との間に環状のシール面が形成されると共に、磁性流体150の一部によって対向部分331と磁石340との対向面間が潤滑される。したがって、軸10とフィルタ310との間の環状隙間は、軸10とハウジング20との相対的な回転中においても、回転シール320によって低摩擦トルクで安定的に封止される。そして、シール部材330は、磁石340よりも上流側に設けられているため、環状隙間30内を流通する流体の圧力が、シール部材330と磁石340との間のシール面のシール性に寄与する。その結果、本実施例においても、上述の実施例におけるフィルタ装置と同様の効果が奏される。なお、フィルタ装置300においては、フィルタ310がハウジング20に対して固定されているため、軸10と共にハウジング20から取り出すことはできない。ただし、軸10を取り出せば、軸孔21内に作業用の空間を設けることができるため、フィルタ交換を容易に行うことができる。そして、フィルタ装置300によれば、回転シール320を備えることにより、軸10の挿入時における位置決めが容易になるから、フィルタ装置300においても、フィルタ交換を容易に行うことが可能になる。
【0043】
なお、本実施例においては、磁石340が、シール部材330よりも早く回転するようにしてもよい。これによれば、シール部材330は、磁石340よりも遅く回転するか、静止している。そのため、上述の実施例と同様に、シール部材330には、シール部材330が磁石340よりも速く回転している場合に比べて遠心力が作用しにくくなる。ゆえに、シール部材330と磁石340との間のシール面が好適に維持され易くなる。特に、シール部材330が静止しており、磁石340のみが回転している場合は、シール部材330には遠心力が作用しないため、シール面がより好適に維持される。
【0044】
[実施例4]
次に、
図4を用いて、本発明の実施例4に係るフィルタ装置について説明する。上述の実施例3とは異なり、本実施例においては、回転シールのシール部材がフィルタに設けられており、磁場形成部材が軸に設けられている。なお、実施例3と同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。なお、
図4は、本実施例に係るフィルタ装置400の構成を示す模式的断面図である。
【0045】
フィルタ装置400は、ハウジング20に設けられた環状のフィルタ310と、軸10とフィルタ310との間の環状隙間を封止する回転シール420と、を備える。回転シール420は、フィルタ310の内周面に直接固定された環状のシール部材430と、軸10の外周面に直接固定された環状の磁石440と、を備える。なお、シール部材430及び磁石440の形状、材質、設置位置等は、それぞれ上述の実施例におけるシール部材及び磁石の形状、材質、設置位置等と同様である。ただし、シール部材430は、その内径が、磁石440の外径よりも小さくなるように形成される。そのため、シール部材430は、その内径側且つ自由端側に、磁石440に軸方向で対向する環状の対向部分431を有する。なお、対向部分431は、上述の実施例における対向部分と同様に、磁石440に対向する対向面と、この対向面周辺の内側部分とを含む。そして、対向部分431には、磁性流体150が含浸されている。
【0046】
このように構成されるフィルタ装置400においても、上述の実施例3に係るフィルタ装置と同様の効果が奏される。つまり、対向部分431が磁石440に引き寄せられると、シール部材430が揺動するように変形するため、対向部分431が磁石440に接触する。これにより、シール部材430と磁石440との間に、潤滑されたシール面が形成される。そして、シール部材430は、磁石440よりも上流側に設けられているため、環状隙間30内を流通する流体の圧力が、シール部材430と磁石440との間のシール面のシール性に寄与する。その結果、本実施例においても、上述の実施例3におけるフィルタ装置と同様の効果が奏される。
【0047】
なお、本実施例においては、磁石440が、シール部材430よりも早く回転するようにしてもよい。これによれば、シール部材430は、磁石440よりも遅く回転するか、静止している。そのため、上述の実施例と同様に、シール部材430には、シール部材430が磁石440よりも速く回転している場合に比べて遠心力が作用しにくくなる。ゆえに、シール部材430と磁石440との間のシール面が好適に維持され易くなる。特に、シール部材430が静止しており、磁石440のみが回転している場合は、シール部材430には遠心力が作用しないため、シール面がより好適に維持される。
【0048】
[フィルタの固定方法]
本実施例に係るフィルタ装置においては、流体から除去された異物がフィルタに堆積するため、フィルタを交換する必要が生じる。そのため、フィルタは、軸またはハウジングに対して、着脱可能に固定されることが好ましい。ここで、既に述べたように、柔軟性を有するシール部材は、磁石に引き寄せられながら変形するため、軸に対してフィルタを固定する際には、高精度な位置制御は要求されない。ただし、フィルタには、環状隙間内を流通する流体圧力が軸方向に作用するため、固定方法はある程度堅固である必要がある。以下、軸またはハウジングに対するフィルタの固定方法を、図面を用いて説明する。なお、上述の実施例1に係るフィルタ装置100を例にして説明を行うが、他の実施例についても同様の固定方法を用いることができる。また、これらの固定方法は、シール部材や磁場形成部材を、軸またはハウジングに対して固定する際に用いてもよい。
【0049】
図5から
図7は、実施例1に係るフィルタ装置100における、軸10に対するフィルタ110の固定方法を示す模式的断面図である。なお、共通する構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0050】
図5に示される固定方法においては、フィルタ110は、フィルタ110の外向きフランジ部112に締結されたセットスクリュー90によって、軸10に対して固定されている。なお、軸10の外周面11と、フィルタ110の内周面111との間の隙間は、Oリング91によって封止されている。この固定方法においては、セットスクリュー90によって、フィルタ110の軸方向と回転方向の位置決めがなされる。なお、セットスクリュー90の数や締結力は適宜定めればよい。そして、セットスクリュー90を取り外せば、フィルタ110を軸10から容易に取り出すことができる。
【0051】
図6に示される固定方法においては、フィルタ110は、フィルタ110の軸方向両側に設けられた2つのスナップリング92、93によって固定されている。スナップリング92は、フィルタ110の軸方向一方側の端面に接しながら、軸10の外周面11に設けられた環状溝12に嵌め込まれている。なお、スナップリング92に設けられた軸方向下向きの凸部が、フィルタ110の軸方向一方側の端面に設けられた凹部113に嵌め込まれている。また、スナップリング93は、フィルタ110の軸方向他方側の端面に接しながら、軸10の外周面11に設けられた環状溝13に嵌め込まれている。この固定方法においては、スナップリング92、93によって、フィルタ110の軸方向及び径方向の位置決めがなされる。そして、スナップリング92、93を取り外せば、フィルタ110を軸10から容易に取り出すことができる。
【0052】
図7に示される固定方法においては、フィルタ110は、フィルタ110の外向きフランジ部114に設けられた環状溝115に嵌め込まれた環状のバネ94によって固定されている。この固定方法においては、バネ94によって、フィルタ110の軸方向と回転方向の位置決めがなされる。そして、バネ94を取り外せば、フィルタ110を軸10から容易に取り出すことができる。
【0053】
本実施例によれば、以上のような固定方法を用いることにより、軸10の外周面11に対して、フィルタ110を容易に着脱可能な状態で固定することができる。ゆえに、軸10をハウジング20から取り出した際に、容易にフィルタ110の交換を行うことができる。
【0054】
なお、
図5から
図7に示される固定方法は、実施例3及び4において、ハウジング20の軸孔21の内周面21に対して、フィルタ310を固定する際にも同様に適用することができる。
【0055】
[フィルタの他の例]
次に本発明に適用可能なフィルタの他の例を
図8から
図11を用いて説明する。まず、
図8及び
図9を用いて、シール部材が、フィルタと同一の材料を用いて、フィルタと一体に設けられた構成について説明する。
【0056】
図8は、上述の実施例2に係るフィルタ装置200における、フィルタ110とシール部材230とに替えて、フィルタ510が適用されたフィルタ装置500を示している。なお、フィルタ510は、シール部材としてのシール部が、フィルタと同一の材料を用いて、これに一体に設けられたフィルタである。なお、上述の実施例2と同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。なお、
図8は、フィルタ装置500の構成を示す模式的断面図である。
【0057】
柔軟性を有する多孔質の材料から構成されるフィルタ510は、円筒状のフィルタ部511と、このフィルタ部511の外周面に設けられた、孔の開いた円板状のシール部530と、を備える。つまり、シール部530は、フィルタ部511と同一の材料を用いて、単一の部品としてフィルタ部511と一体に設けられる。なお、この材料としては、柔軟性を有する多孔質の材料であって、更に、熱処理等の処理によって、細孔が塞がれると共に硬化するような材料が好ましい。このような材料としては、例えば、多孔質の有機高分子素材が挙げられる。このような材料を用いれば、フィルタ部511における、シール部530を除いた外周面に熱処理を施すことによって、当該外周面の細孔を塞いで硬化させることができる。これにより、フィルタ部511の内部を通過する流体が外周面から流出することを防止すると共に、フィルタ510の自重や流体の圧力によって変形しないフィルタ部511を構成することができる。また、シール部530の外面に対しても、後述する対向部分531を除いて、同様の処理を施すことによって、流体が透過しないようにすることができる。
【0058】
シール部530は、フィルタ装置200におけるシール部材230と同様の形状で構成される。そのため、シール部530は、その外径側且つ自由端側に、磁石240に軸方向で対向する環状の対向部分531を有する。なお、対向部分531は、磁石240に対向する対向面と、この対向面周辺の内側部分とを含む。そして、対向部分531には、磁性流体150が含浸されている。
【0059】
このように構成されるフィルタ装置500においても、上述の実施例2に係るフィルタ装置200と同様の効果が奏される。つまり、対向部分531が磁石240に引き寄せられると、シール部530が揺動するように変形するため、対向部分531が磁石240に接触する。これにより、シール部530と磁石240との間に、潤滑されたシール面が形成される。そして、シール部530は、磁石240よりも上流側に設けられているため、環状隙間30内を流通する流体の圧力が、シール部530と磁石240との間のシール面のシール性に寄与する。その結果、本実施例においても、上述のフィルタ装置200と同様の効果が奏される。なお、本実施例においては、シール部530と磁石240とが回転シールを構成する。そして、本実施例においても、磁石240が、シール部530よりも早く回転するようにしてもよい。このようにすれば、上述の実施例と同様に、シール部530と磁石240との間のシール面が好適に維持され易くなる。
【0060】
更に、本実施例によれば、シール部530が、フィルタ部511と同一の材料を用いて、これと一体に設けられるため、部品点数が減らすことができる。ゆえに、フィルタ装置の更なる小型化や、製造コストの低減が可能になる。
【0061】
また、
図9は、上述の実施例4に係るフィルタ装置400における、フィルタ310とシール部材430とに替えて、フィルタ610が適用されたフィルタ装置600を示している。なお、フィルタ610は、シール部材としてのシール部が、フィルタと同一の材料を用いて、これに一体に設けられたフィルタである。なお、上述の実施例4と同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。なお、
図9は、フィルタ装置600の構成を示す模式的断面図である。
【0062】
フィルタ610は、円筒状のフィルタ部611と、このフィルタ部611の内周面に設けられた、孔の開いた円板状のシール部630と、を備える。つまり、シール部630は、フィルタ部611と同一の材料を用いて、単一の部品としてフィルタ部611と一体に設けられる。なお、フィルタ610は、フィルタ部611及びシール部630が、上述のフィルタ510が有するフィルタ部511及びシール部530と同様の機能を備えるように、フィルタ510と同一の材料を用いればよい。
【0063】
シール部630は、フィルタ装置400におけるシール部材430と同様の形状で構成される。そのため、シール部630は、その内径側且つ自由端側に、磁石440に軸方向で対向する環状の対向部分631を有する。なお、対向部分631は、磁石440に対向する対向面と、この対向面周辺の内側部分とを含む。そして、対向部分631には、磁性流体150が含浸されている。
【0064】
このように構成されるフィルタ装置600においても、上述の実施例4に係るフィルタ装置400と同様の効果が奏される。そして、本実施例においても、磁石440が、シール部630よりも早く回転するようにしてもよい。このようにすれば、上述の実施例と同様に、シール部630と磁石440との間のシール面が好適に維持され易くなる。更に、フィルタ装置600によれば、フィルタ装置500と同様に、部品点数を減らすことができるため、フィルタ装置の更なる小型化や、製造コストの低減が可能になる。
【0065】
次に、
図10及び
図11を用いて、異物を除去するフィルタエレメントと、フィルタエレメントが収容されるホルダとを備えるフィルタについて説明する。
図10は、上述の実施例1に係るフィルタ装置100におけるフィルタ110に替えて、フィルタエレメントとホルダとから構成されるフィルタ710が適用されたフィルタ装置700を示している。なお、上述の実施例1と同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。なお、
図10は、フィルタ装置700の構成を示す模式的断面図である。
【0066】
フィルタ710は、内部を流通する流体に含まれる異物を除去するフィルタエレメント711と、このフィルタエレメントが収容された円筒形状のホルダ712とから構成される。ここで、ホルダ712は、金属等の強硬な材料から構成される。そのため、フィルタ装置100におけるフィルタ110と同様に、磁石140をホルダ712に設けることができる。これにより、フィルタエレメント711の材料としては、紙や中空糸膜等、柔軟な材料を用いることが可能になるため、フィルタの選択肢が増大する。なお、フィルタ装置700においても、シール性については、上述のフィルタ装置100と同様の効果が奏される。また、フィルタ710は、実施例2に係るフィルタ装置200にも適用可能である。
【0067】
図11は、上述の実施例3に係るフィルタ装置300における、フィルタ310に替えて、フィルタエレメントとホルダとから構成されるフィルタ810が適用されたフィルタ装置800を示している。なお、上述の実施例3と同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。なお、
図11は、フィルタ装置800の構成を示す模式的断面図である。
【0068】
フィルタ810は、上述のフィルタ710と同様に、フィルタエレメント811と、このフィルタエレメント811が収容された、円筒形状のホルダ812とから構成される。ここで、ホルダ812は、金属等の強硬な材料から構成される。そのため、上述のフィルタ装置700と同様に、フィルタの選択肢が増大する。なお、フィルタ装置800においても、シール性については、上述のフィルタ装置300と同様の効果が奏される。また、フィルタ810は、実施例4に係るフィルタ装置400にも適用可能である。
【0069】
[磁場形成部材の他の例]
次に、本発明に係るフィルタ装置の回転シールに適用可能な磁場形成部材の例を
図12から
図15を用いて説明する。
【0070】
図12から
図15は、上述の実施例1に用いられる磁石140及びその代替例の構成を示す正面図である。
図12に示される磁石140は、一方の面がN極で他方の面がS極で構成された環状の永久磁石を、同心状に、且つ一方の面側においてN極とS極が交互に並ぶように、複数個(
図12では3個)組み合わせたものである。この構成により、磁石140は、フィルタ装置100に適用された際に、対向部分131が磁石140に対して面接触するような磁場を形成することができる。また、磁石140が、フィルタ装置200に適用された際も同様である。
【0071】
なお、磁石140に替えて、
図13及び
図14に示される磁石を採用してもよい。
図13に示される磁石141は、一方の面がN極で他方の面がS極で構成された細長い永久磁石を、一方の面側においてN極とS極が交互に並ぶように、複数個(
図13では6個)組み合わせたものであり、全体として環状になっている。また、
図14に示される磁石142は、一方の面がN極で他方の面がS極で構成された扇形の永久磁石を、磁石142の一方の面側においてN極とS極が交互に並ぶように、複数個(
図14では8個)組み合わせたものである。
【0072】
また、磁石140に替えて、
図15に示される電磁石を採用してもよい。
図15に示される電磁石143は、一方の面がN極で他方の面がS極で構成された扇形の永久磁石を、磁石142と同様に組み合わせたものである。なお、電磁石143には、電磁石143の磁力を制御する制御手段としてのコントローラ144が、導線145を介して電気的に接続される。この構成により、電磁石143の磁力を制御することができるようになるため、例えば、環状隙間30内を流通する流体の圧力等に応じて、回転シールのシール性を調整することが可能になる。また、フィルタ交換時等において、ハウジング20からの軸10の取り出しや、ハウジング20への軸10の挿入を行うときは、電磁石143の磁力をなくすことができる。これにより、電磁石143への磁性流体の付着やシール部材の引き寄せが防止されるため、これらの作業が容易になる。なお、電磁石143をこれらのフィルタ装置に適用する際には、導線145は、フィルタ110や軸10の外周面や内部に設置すればよい。
【0073】
なお、磁石140、141、142、及び電磁石143においては、全体を構成する各磁石のうちの一部を、永久磁石や電磁石以外の磁性体で置き換えてもよい。また、磁石140、141、142、及び電磁石143は、大きさを変更することによって、他の実施例の磁石にも適用することができる。
【0074】
[第2磁場形成部材を備える実施例]
次に、
図16から
図20を用いて、第2磁場形成部材を備える実施例に係るフィルタ装置について説明する。これらの実施例においては、磁場形成部材は電磁石であって、更に、シール部材よりも上流側の位置に、第2磁場形成部材としての第2電磁石が設けられる。
【0075】
図16に示される実施例に係るフィルタ装置1100は、基本的な構成は上述の実施例1に係るフィルタ装置100と共通するが、磁石140に替えて電磁石143を備えており、更に、コントローラ144と第2電磁石146とを備えている。なお、実施例1と同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。なお、
図16は、フィルタ装置1100の構成を示す模式的断面図であって、電磁石143のみが磁力を有している状態を示している。また、
図17は、フィルタ装置1100の構成を示す模式的断面図であって、第2電磁石146のみが磁力を有している状態を示している。
【0076】
フィルタ装置1100の回転シール1120は、シール部材130と、フィルタ110の外周面に設けられた環状の電磁石143とを備えている。電磁石143の形状、寸法、設置位置等は、フィルタ装置100の磁石140と同様である。電磁石143は、導線145を介して、フィルタ装置11の外部に設けられたコントローラ144に電気的に接続されている。そして、フィルタ装置1100は、軸10における、シール部材130よりも上流側の位置に、環状(孔の開いた円板状)の電磁石である第2電磁石146を備えている。第2電磁石146は、その内周面が軸10の外周面に直接固定されており、導線148を介して、コントローラ144に電気的に接続されている。コントローラ144は、電磁石143と第2電磁石146の磁力を個別に制御することができる。
【0077】
第2電磁石146は、その外径が、シール部材130の内径よりも大きい。そのため、シール部材130は、その内径側の上流側に、第2電磁石146に軸方向で対向する環状の第2対向部分132を有する。なお、第2対向部分132は、第2電磁石146に対向する対向面と、この対向面周辺の内側部分とを含む。そして、対向部分132には、磁性流体150が含浸されている。なお、対向部分131と第2対向部分132は、磁性流体150の分散を抑制するために仕切りによって区画されてもよいし、磁性流体150が両対向部分間を移動できるようにしてもよい。
【0078】
なお、第2電磁石146が固定される位置は、第2電磁石146が磁力を有するときに、第2対向部分132に含浸された磁性流体150に作用する磁力によって、第2対向部分132が第2電磁石146に引き寄せられて、これに接触するような位置である。また、第2電磁石146における内周側、より詳細には、第2対向部分132に対向する部分よりも内周側には、第2電磁石146の上流側の面と下流側の面とを連通する連通孔147が設けられる。連通孔147の形状や個数は適宜定めればよい。
【0079】
以上のような構成を備えるフィルタ装置1100においては、コントローラ144によって電磁石143にのみ磁力が与えられている場合には、
図16に示されるように、対向部分131が電磁石143に引き寄せられることによって、シール部材130と電磁石143との間にシール面が形成される。これにより、ハウジング20とフィルタ110との間の環状隙間が封止されるため、環状隙間30内を流通する流体がフィルタ110によって濾過されることによって、流体内の異物が除去される。また、この場合には、フィルタ装置100が奏する効果と同様の効果が発揮される。
【0080】
一方、コントローラ144によって第2電磁石146にのみ磁力が与えられている場合には、
図17に示されるように、第2対向部分132が第2電磁石146に引き寄せられることによって、シール部材130は第2電磁石146と接触する。ゆえに、この場合には、シール部材130と第2電磁石146との間にシール面が形成される。なお、この場合には、環状隙間30内を流通する流体は連通孔147を通過する。ここで、この場合には、
図17に示されるように、シール部材130と電磁石143とは離間する。そのため、連通孔147を通過した流体は、フィルタ110内に加えて、シール部材130と磁石143との間も通過する。ゆえに、この場合には、環状隙間30内により多くの流体を流通させることが可能になる。したがって、本実施例によれば、流体から異物を除去する必要が無い場合等には、環状隙間30内を流通する流体の流量を増大させることが可能になる。
【0081】
なお、第2電磁石が設けられる構成は、実施例2から4の構成にも同様に適用することができるため、それらを順に説明する。
【0082】
図18に示される実施例に係るフィルタ装置1200は、基本的な構成は上述の実施例2に係るフィルタ装置200と共通するが、磁石240に替えて電磁石243を備えており、更に、コントローラ144と第2電磁石246とを備えている。なお、実施例2と同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。なお、
図18は、フィルタ装置1200の構成を示す模式的断面図であって、電磁石243のみが磁力を有している状態を示している。
【0083】
フィルタ装置1200の回転シール1220は、シール部材230と、ハウジング20の軸孔21の内周面に設けられた環状の電磁石243とを備えている。電磁石243の形状、寸法、設置位置等は、フィルタ装置200の磁石240と同様である。そして、フィルタ装置1200は、ハウジング20における、シール部材230よりも上流側の位置に、孔の開いた円板状の電磁石である第2電磁石246を備えている。第2電磁石246は、その外周面が軸孔21の内周面に直接固定されており、その内径がシール部材230の外径よりも小さい。そのため、シール部材230は、その外径側の上流側に、第2電磁石246に軸方向で対向する環状の第2対向部分232を有する。なお、第2対向部分232は、第2電磁石246に対向する対向面と、この対向面周辺の内側部分とを含む。そして、対向部分232には、磁性流体150が含浸されている。また、電磁石243及び第2電磁石246は、それぞれ導線245及び248を介してコントローラ144に電気的に接続されている。コントローラ144は、電磁石243と第2電磁石246の磁力を個別に制御することができる。
【0084】
なお、第2電磁石246が固定される位置は、第2電磁石246が磁力を有するときに、第2対向部分232が第2電磁石246に引き寄せられて、これに接触するような位置である。また、第2電磁石246における、第2対向部分232に対向する部分よりも外周側には、第2電磁石246の上流側の面と下流側の面とを連通する連通孔247が設けられる。
【0085】
以上のように構成されたフィルタ装置1200においても、フィルタ装置1100と同様の効果が奏される。つまり、コントローラ144によって電磁石243にのみ磁力が与えられている場合には、シール部材230と電磁石243との間にシール面が形成されることによって、ハウジング20とフィルタ110との間の環状隙間が封止される。この場合には、フィルタ装置200が奏する効果と同様の効果が発揮される。一方、コントローラ144によって第2電磁石246にのみ磁力が与えられている場合には、シール部材230と第2電磁石246との間にシール面が形成されるが、シール部材230と電磁石243とは離間する。ゆえに、この場合には、環状隙間30内により多くの流体を流通させることが可能になる。
【0086】
次に、
図19に示される実施例に係るフィルタ装置1300は、基本的な構成は上述の実施例3に係るフィルタ装置300と共通するが、磁石340に替えて電磁石343を備えており、更に、コントローラ144と第2電磁石346とを備えている。なお、実施例3と同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。なお、
図19は、フィルタ装置1300の構成を示す模式的断面図であって、電磁石343のみが磁力を有している状態を示している。
【0087】
フィルタ装置1300の回転シール1320は、シール部材330と、フィルタ310の内周面に設けられた環状の電磁石343とを備えている。電磁石343の形状、寸法、設置位置等は、フィルタ装置300の磁石340と同様である。そして、フィルタ装置1300は、ハウジング20における、シール部材330よりも上流側の位置に、孔の開いた円板状の電磁石である第2電磁石346を備えている。第2電磁石346は、その外周面が軸孔21の内周面に直接固定されており、その内径がシール部材330の外径よりも小さい。そのため、シール部材330は、その外径側の上流側に、第2電磁石346に軸方向で対向する環状の第2対向部分332を有する。なお、第2対向部分332は、第2電磁石346に対向する対向面と、この対向面周辺の内側部分とを含む。そして、対向部分332には、磁性流体150が含浸されている。また、電磁石343及び第2電磁石346は、それぞれ導線345及び348を介してコントローラ144に電気的に接続されている。コントローラ144は、電磁石343と第2電磁石346の磁力を個別に制御することができる。
【0088】
なお、第2電磁石346が固定される位置は、第2電磁石346が磁力を有するときに、第2対向部分332が第2電磁石346に引き寄せられて、これに接触するような位置である。また、第2電磁石346における、第2対向部分332に対向する部分よりも外周側には、第2電磁石346の上流側の面と下流側の面とを連通する連通孔347が設けられる。
【0089】
以上のように構成されたフィルタ装置1300においても、フィルタ装置1100と同様の効果が奏される。つまり、コントローラ144によって電磁石343にのみ磁力が与えられている場合には、シール部材330と電磁石343との間にシール面が形成されることによって、軸10とフィルタ310との間の環状隙間が封止される。この場合には、フィルタ装置300が奏する効果と同様の効果が発揮される。一方、コントローラ144によって第2電磁石346にのみ磁力が与えられている場合には、シール部材330と第2電磁石346との間にシール面が形成されるが、シール部材330と電磁石343とは離間する。ゆえに、この場合には、環状隙間30内により多くの流体を流通させることが可能になる。
【0090】
次に、
図20に示される実施例に係るフィルタ装置1400は、基本的な構成は上述の実施例4に係るフィルタ装置400と共通するが、磁石440に替えて電磁石443を備えており、更に、コントローラ144と第2電磁石446とを備えている。なお、実施例4と同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。なお、
図20は、フィルタ装置1400の構成を示す模式的断面図であって、電磁石443のみが磁力を有している状態を示している。
【0091】
フィルタ装置1400の回転シール1420は、シール部材430と、軸10の外周面に設けられた環状の電磁石443とを備えている。電磁石443の形状、寸法、設置位置等は、フィルタ装置400の磁石440と同様である。そして、フィルタ装置1400は、軸10における、シール部材430よりも上流側の位置に、孔の開いた円板状の電磁石である第2電磁石446を備えている。第2電磁石446は、その内周面が軸10の外周面に直接固定されており、その外径がシール部材430の内径よりも小さい。そのため、シール部材430は、その内径側の上流側に、第2電磁石446に軸方向で対向する環状の第2対向部分432を有する。なお、第2対向部分432は、第2電磁石446に対向する対向面と、この対向面周辺の内側部分とを含む。そして、対向部分432には、磁性流体150が含浸されている。また、電磁石443及び第2電磁石446は、それぞれ導線445及び448を介してコントローラ144に電気的に接続されている。コントローラ144は、電磁石443と第2電磁石446の磁力を個別に制御することができる。
【0092】
なお、第2電磁石446が固定される位置は、第2電磁石446が磁力を有するときに、第2対向部分432が第2電磁石446に引き寄せられて、これに接触するような位置である。また、第2電磁石446における、第2対向部分432に対向する部分よりも内周側には、第2電磁石446の上流側の面と下流側の面とを連通する連通孔447が設けられる。
【0093】
以上のように構成されたフィルタ装置1400においても、フィルタ装置1400と同様の効果が奏される。つまり、コントローラ144によって電磁石443にのみ磁力が与えられている場合には、シール部材430と電磁石443との間にシール面が形成されることによって、軸10とフィルタ310との間の環状隙間が封止される。この場合には、フィルタ装置400が奏する効果と同様の効果が発揮される。一方、コントローラ144によって第2電磁石446にのみ磁力が与えられている場合には、シール部材430と第2電磁石446との間にシール面が形成されるが、シール部材430と電磁石443とは離間する。ゆえに、この場合には、環状隙間30内により多くの流体を流通させることが可能になる。