(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と称する)を説明する。
【0023】
(恒温槽1の全体構成)
図1は、本発明の恒温槽の好ましい実施形態を示す正面図である。
図2は、
図1に示す恒温槽1の内部構造における温度調整用の通風経路例や、恒温槽内に収容された保管対象物の例であるボトルBやボトル温度計29等を模式的に示す側面図である。
【0024】
図1と
図2に示す恒温槽1は、内部温度を精密に制御して管理することができる箱型の保管庫である。この恒温槽1は、例えば、
図2に例示するように、保管対象物である複数のボトルBを、好ましくは低温状態を維持した状態で保管することができ、低温恒温槽あるいは冷蔵庫ともいう。恒温槽1は、薬品等を収容したボトルBを、所定温度(例えば4℃)の低温の状態に保持できるように、恒温槽1内を温度制御して保管管理する。
【0025】
図1と
図2に示すように、この恒温槽1は、本体2と、ドア(扉)3,3を備える。本体2とドア3,3は、金属製であり、例えばSUS(ステンレス鋼)により作られている。本体2は、好ましくは箱型の収容体であり、
図1に示すように、本体2は、上面4と、下面5と、左右の側面6,7と背面8と、前面9を有している。
【0026】
本体2は、内部に収容部20を有する。本体2の前面9には、ボトルB等を出し入れするための長方形の開口部10が設けられている。本体2とドア3,3は、外部に対する密封性と断熱性を保持している。扉3の開放時の温度変動を軽減する為の内扉(ガラス)を含む。
【0027】
図1に示すように、例えば両開き式のドア3,3は、本体2に対して、ヒンジ部11を用いて、開閉可能に取り付けられている。ドア3,3は、本体2の前面9の開口部10を開閉可能に密閉して閉じる。
【0028】
図1に示すように、各ドア3,3は、本体2の収容部20内が見えるように、透光性を有する例えばガラス窓3Rを有している。
図2に示すように、ドア3,3の内側には、金属フィンガ3Bと、パッキン3Cが配置されている。四角形状のパッキン3Cは、本体2の開口部10の四辺の周囲部分に配置されている。ドア3,3が開口部10を閉じると、ドア3は、パッキン3Cを用いて収容部20を密閉状態に保持する。
【0029】
図1に示すように、ドア3,3は、取っ手3A,3Aと、認証付ドアロック12と、非常ドアロック13を備える。認証付ドアロック12は、認証を受けた使用者が,例えば認証用のカードを近づけることで、ドア3,3を施錠したり、逆にドア3,3の施錠を解除することができる。
【0030】
この認証付ドアロック12は、例えば商用電源からの電源供給を受けて動作する電磁式ドアロックを採用できる。このように、ドア3,3は、認証付ドアロック12を備えているために、恒温槽1が通常の連続運転を行っている際に、認証された使用者以外の者がドア3,3を開けることができない。従って、恒温槽1の収容部20内に保管されているボトルBは、認証された使用者以外の者は取り出すことができない。これにより、恒温槽1がボトルBを連続して低温保管をしているときに、ボトルBの保管上のセキュリティの保持ができる。
【0031】
また、
図1に示す非常ドアロック13は、非常時、例えば停電時に、ドア3がロック(施錠)状態にして、ドア3が開かないようにすることで、収容部20内のボトルBが不用意に持ち出されないようになっている。このように、恒温槽1が停電により外部から電源供給を受けられない場合に、恒温槽1の収容部20内に保管されているボトルBは、認証された使用者以外の者は取り出すことができない。これにより、恒温槽1は、停電時に、ボトルBの保管上のセキュリティの保持ができる。但し、装置管理者が所有する鍵で、非常ドアロック13を解錠する事が出来る。収納部20内のボトルBを温度上昇から救出する為、解錠後は別の保管庫又は保管ボックス等に移す。
【0032】
図1と
図2に示すように、本体2の内部には、直方体形状の収容部20が設けられている。この収容部20は、
図2に例示するように、保存対象物である例えば薬品を充填した複数のボトルBを収容して、これらのボトルBを、所定温度、例えば2℃から8℃の温度範囲で保管する事が好ましく4℃で運転する。
図1と
図2に示すように、収容部20は、上面20A、下面20B、左右の側面20C,20D、背面20Eを有する。
【0033】
図2に例示するように、この収容部20内には、少なくとも1つの棚板21が、着脱可能に水平に配置されている。この棚板21の上下位置は、変更可能である。棚板21の上には、少なくとも1つのボトルBを載せて所定温度範囲で保管する。その為に、ボトル温度計29は温度変動の一番大きい箇所に設定し、ボトルBが所定温度範囲を超え無い様に保管する事が出来る。
【0034】
図2と
図3に例示するように、在荷監視システムとしてのRFIDを使用した場合の事例では、各ボトルBには、ボトルBに関する情報を発信するための情報発信部としての、識別素子22が配置されている。
図3に示すように、恒温槽1の収容部20の内面には、複数のアンテナ23A,23B,23C,23Dが、配置されている。
【0035】
RFIDは、識別素子22に記憶されているボトルBの個別情報を、無線通信により例えばアンテナ23A,23B,23C,23Dにより受信して読み取る。アンテナ23A,23B,23C,23Dは、ボトルBの個別情報を受信する情報受信部の例である。すなわち、識別素子22が、例えばアンテナのいずれかから無線で問い合わせを受けると、識別素子22は、例えばボトルBの製造番号(ロット番号)、ボトルBの中に入っている薬品の種類等のボトルB(薬品)に関する情報を、次に説明するアンテナへ無線で送信する。
【0036】
これらのアンテナは、上述したボトルBの識別素子22から送信されてくる例えばボトルBの個別情報としての、製造番号(ロット番号)、ボトルBの中に入っている薬品の種類等のボトルB(薬品)に関する情報を、を受信する。
なお、棚板21の構造と材質は、識別素子22の電波の送信を阻害しないものである。
【0037】
在荷監視システムとしては、RFID以外に、重量やカメラモニターとバーコードを組合わせた監視システムもある。在荷監視システムの情報は、温度データ、装置のステータスと共に管理者にデータ送信出来る機構を有する。
【0038】
図2に示すように、温度調整空気導入経路30が、収容部20内の温度調整をするために、収容部20の外側に沿って設けられている。すなわち、温度調整空気導入経路30は、収容部20の上面20A,下面20B,左右の側面20C,20D,背面20Eの外側において温度調整空気CWを通して、温度調整空気CWを収容部20内に導入する。
【0039】
図2に示す温度調整空気導入経路30は、背面20Eの後側に、温度調整器31を有している。この温度調整器31は、熱交換器32とヒータ33を有する。温度調整器31の熱交換器32とヒータ33は、収容部20の槽内の温度調整を行う。
【0040】
例えば、熱交換器32により作られた低温の温度調整空気CWは、
図2の矢印で示すように、背面20Eの経路部30Aから、上面20Aの経路30Bを経て、上面20Aの開口部20Hから、収容部20内に吹き出される。そして、収容部20内に吹き出された温度調整空気CWは、下面20の開口部20Jから経路30Cに入って、経路30Cを経て、熱交換器32側に戻るようになっている。これにより、温度調整器31は、収容部20内の温度を指定の低温状態に維持した状態で、ボトルBの温度を、所定温度で保管出来る。ボトルBが収納出来る範囲を棚板21に記載し、範囲内に収納し運用する。
【0041】
なお、温度調整器31は、ヒータ33と熱交換器32を備えているので、収容部20内の温度調整は、例えば0℃から60℃程度までの温度範囲で行うことができる。
【0042】
(恒温槽1の各要素の電気接続ブロック)
次に、
図3を参照して、恒温槽1の各要素の電気接続例を説明する。
図3は、恒温槽1の各要素の電気接続例を示すブロック図である。
【0043】
恒温槽1は、
図3に例示する各要素を備えている。
図3に示す在荷監視部としての在荷監視システム99は、本体2の収容部20の庫内におけるボトルBの在荷情報DSを監視する。この在荷情報DSとは、収容部20内に収容されている各ボトルBに関する個別情報であり、例えば収容部20内にあるボトルBの製造番号(ロット番号)、ボトルBの中に入っている薬品の種類等の情報を含んでいる。例えば、同システムに関して、在荷監視をRFIDで実施した場合では、
図3に示す在荷監視システム99は、在荷監視制御部40と、RFIDアンテナ23Aから23Dと、各ボトルBの識別素子22と、在荷監視システムコンバータ50を有する。在荷監視制御部40は、RFIDアンテナ23Aから23Dにも電気的に接続されている。
【0044】
また、
図3に示す在荷監視システムコンバータ50は、在庫監視制御部40と認証付ドアロック12に電気的に接続されている。この認証付ドアロック12は、使用者が例えば認証カードを近づけることで、ドア3,3の施錠状態を解除してドア3,3を開けることができる。
【0045】
在荷監視システムコンバータ50は、外部通信モジュール51(外部通信モジュールともいう)に電気的に接続されている。在荷監視制御部40が、上述した在荷情報DSを、在荷監視システムコンバータ50に出力する。認証付ドアロック12は、認証付ドアロック12が施錠状態か解錠状態であるかを示す施錠解錠情報RRを、在荷監視システムコンバータ50に出力する。
【0046】
これにより、この在荷情報DSと施錠解錠情報RRは、在荷システムコンバータ50において集約されて集約情報Gとして、外部通信モジュール51へ出力されるようになっている。外部通信モジュール51は、この集約情報Gを本体2の外部へ無線または有線で送信する。
【0047】
一方、
図3に示す制御用温度計60は、例えば熱電対を用いることができる。この制御用温度計60は、
図3に例示するように、収容部20内の任意の位置、例えば収容部20の奥側の上部の位置に配置されている。
図3に示すように、制御用温度計60は、温度調整器31と温度モニタ62に電気的に接続されている。
【0048】
温度調整器31は、異常警報部61に電気的に接続されている。温度調整器31は、制御用温度計60からの収容部20内の測定温度情報Mに基づいて、収容部20内(槽内)を一定温度で低温度に連続保持できるように温度調整を行うことで、各ボトルBの温度は、所定温度である好ましくは4℃に保持される。
【0049】
図3の複数のボトル温度計29は、
図3に例示するように棚板21の上の任意の位置に置かれている。各ボトル温度計29は、保管対象物であるボトルBの温度を直接測定する代わりに、ボトルBのダミーとして測定して、ボトル温度計29が測定したボトル温度情報BTの温度をボトルBの温度とみなす。このボトル温度計29は、保管対象物温度計の例である。
【0050】
図2に例示するように、ボトル温度計29は、ダミーボトルDBを有している。このダミーボトルDBの大きさや材質は、例えばボトルBのものと同様のものとすることができる。ダミーボトルDBの中には、ボトル内部液29Wとして例えば無毒性グリコールが収容されており、温度センサ29Pがこのグリコールの温度を測定するようになっている。
【0051】
このボトル内部液29Wは、ボトルBに収容されている薬品に相当するダミーの薬品である。これにより、このボトル温度計29は、収容部20内におけるボトルBの温度を直接測定するのに代えて、収容部20内におけるボトルBの薬品の温度をモニタリングすることができる。
【0052】
ボトル温度計29Wは、本体2に外界雰囲気の影響を受け易く、液温変動の最も大きい場所に設置するのが望ましい。
図2に例示するように、複数のボトル温度計29は、例えばドア3を開けると温度変化が生じやすい位置であるドア3寄りの前側の位置や、ドア3からは離れた収容部20の奥側の位置に配置するのが好ましい。
【0053】
図2のボトル温度計29は、収容部20内の棚板21の上に、ボトルBとは別に配置されて、ボトルBの温度のモニタリングを行う。
図3のように、ボトル温度計29が検出するボトル温度情報BTの温度は、ワークであるボトルBの温度として扱う。すなわち、ボトルB内の薬品の温度は直接測定できないので、ボトル温度計29が測定するボトル温度情報BTの温度が、ボトルBの温度情報の温度であるとして扱われる。このボトル温度情報BTの温度は、温度モニタ62のボトル温度表示部64によりデジタル表示される。
【0054】
図4は、温度モニタ62を示している。この温度モニタ62は、
図3にも示すように、本体2の上面4に配置されている。
図4に示すように、温度モニタ62は、制御温度表示部63と、ボトル温度表示部64を有している。
【0055】
図3に示す制御温度表示部63は、制御用温度計60からの測定温度情報Mにより、収容部20内の制御された温度をデジタル表示する。ボトル温度表示部64は、ボトル温度計29からのボトル温度情報BTにより、各ボトルBの温度をデジタル表示する。
【0056】
図3に示す異常警報部61は、例えば
図4に示すように、温度モニタ62に配置されている。異常警報部61は、例えば
図4に示す異常警報灯61A,61Bと、異常警報音発生部61Cを有している。異常警報灯61Aは、ボトルBが所定温度(例えば4℃)を超えた温度、例えばアラーム設定値の6℃を超えたときに点灯して、ボトルBの温度の異常上昇を警報する。異常警報灯61Bは、ボトルBが所定温度を下回った温度、例えば2℃を下回ったときにも点灯して、ボトルBの温度の異常下降を警報する。
【0057】
同様にして、異常警報音発生部61Cは、ボトルBが所定温度(例えば4℃)を超えた温度、例えばアラーム設定値の6℃を超えたときに、警報音を発生する。また、異常警報音発生部61Cは、ボトルBが所定温度を下回った温度、例えば2℃を下回ったときにも、警報音を発生する。
【0058】
図3に示すUPS電源(無停電電源装置)70は、本体2に電源供給している商用電源が停電したときに、温度モニタ62と、外部通信ユニット51に電源を供給する。ドア(扉)解放警報部71は、予め設定された時間を超えてドア3,3を開けているときに、警報音を発生する。ドア解放警報部71は、温度調整器31に電気的に接続されている。
【0059】
図3に示す非常ドアロック13が、商用電源が停電時に認証付ドアロック12の電磁ロックが解除されたときには、非常ドアロック13が
図1のドア3,3を強制的に施錠することで、ドア3,3が開かないようにする。
【0060】
このように、停電時には、ドア3,3が開かないようにすることで、収容部20内のボトルBが不用意に持ち出されない。このため、恒温槽1が停電により外部から電源供給を受けていない場合に、認証された使用者以外の者がドア3を開けることができないので、ボトルBの保管上のセキュリティの保持ができる。
【0061】
また、認証された使用者以外の者がドア3,3を開けることができない。このため、もしも、収容部20内の温度が上がってしまうことにより、ボトルB内の薬品の温度が例えば8℃を超えた場合にはこの薬品は使用できないので、この使用できない薬品のボトルBを誤って取り出して使用することを、防げる。
【0062】
このように、
図3に示す認証付ドアロック12は、ドア3,3を不用意に開けることを制限するために、既に認証済みの使用者だけがドア3,3を開錠できる。このため、恒温槽1が通常の低温連続運転を行っている際に、認証された使用者以外の者がドア3,3を開けることができないので、ボトルBの保管上のセキュリティ保持ができる。
【0063】
しかも、非常ドアロック13は、非常時、例えば停電時に、ドア3,3をロック状態にして、ドア3,3が開かないようにすることで、収容部20内のボトルBが不用意に持ち出されないようになっている。このため、恒温槽1が停電により外部から電源供給を受けていない場合に、認証された使用者以外の者がドア3,3を開けることができないので、ボトルBの保管上のセキュリティの保持ができる。
【0064】
図3に示す保管庫コンバータ80は、収容部20内の温度と状態、ボトル温度情報BT等の情報、そしてこれら情報の異常警報を集約して、集約情報Pとして、外部通信ユニット51へ出力する。外部通信ユニット51は、この集約情報Pを、本体2の外部に対して、無線もしくは有線で出力するようになっている。
【0065】
(恒温槽1におけるボトルBの温度制御例)
次に、
図5を参照して、
図2の恒温槽1の収容部20内に保管されているボトルBの温度制御例を説明する。
図5は、恒温槽1の収容部20内に保管されているボトルBの温度制御例を示している。
【0066】
図5では、縦軸が温度T(℃)を示し、横軸が時間(t)を示している。
図5の縦軸には、好ましい温度設定例を示している。例えば、ボトル温度TPが4℃であり、ボトル温度の下限値T2が2℃であり、ボトル温度の上限値T1が8℃である。そして、ボトル温度の警告をするためのアラーム設定値TSは、8℃よりも低い温度である例えば6℃である。このボトル温度TPは、上述した
図5に示すボトル温度計29により得られるボトル温度情報BTの温度である。
【0067】
図5には、ボトル温度TPの曲線TT,TT1と、収容部20(槽内)温度の曲線TRを示している。
図5に示す収容部20内に配置されたボトルBのボトル温度TPが4℃で維持された状態で、時間t0において、
図2のドア3が開くと、ボトル温度TPの曲線TTと、槽内温度の曲線TRは、4℃から共に上昇を始める。
【0068】
図5において時間t0から時間tCになると、ドア3,3が開いているので、槽内温度の曲線TRは、上限値T1(8℃)よりもさらに上昇することにより、ボトル温度TPの曲線TTが所定温度の4℃からアラーム設定値TSの6℃を超えるおそれがある。
【0069】
このように、ボトル温度TPが予め定めたアラーム設定値TS(例えば6℃)を超えると、
図3に示す異常警報音発生部61Cは、警報音(アラーム)を発生する。異常警報音発生部61Cが警報音を発生することで、警報を受けた使用者はドア3,3をすぐに閉じることができる。これにより、ドア3,3を開けたとしても、ボトルB内の薬品が上限値T1を超えることがないようにドア3,3を閉めることができる。
【0070】
なお、時間t0から時間tCの時間Δtの値は、変数であり、例えばボトルの大きさや材質、薬品の種類や量等により異なる。
【0071】
図5において、さらに時間tDにおいてドア3を閉めると、槽内温度の曲線TRは下がって槽内温度の曲線TRは再び所定温度4℃を維持するので、ボトル温度の曲線TTは、上限値T1(8℃)を超えないようにして、再び徐々に下がって4℃になっていく。
【0072】
例えば、時間tDにおいて、槽内温度の曲線TRは4℃である。ボトル温度TPの曲線TTが下がっていって例えば5℃位になったときに、使用者が時間tDにおいて再びドア3,3を開けたとすると、ボトル温度TPの曲線TTは、ボトル温度TPの曲線TT1に示すように、再び上昇する。
【0073】
そして、時間tEにおいてボトル温度TPがアラーム設定値TSを超えるので、
図3に示す異常警報音発生部61Cは、再び警報音(アラーム)を発生する。異常警報音発生部61Cが警報音を発生することで、警報を受けた使用者は、ドア3,3を時間tEにおいてすぐに閉じることができる。これにより、ドア3,3を再び開けたとしても、ボトルB内の薬品が上限値T1を超えることがないように、ボトルBは収容部20内において所定温度の4℃で保管することができる。
【0074】
収容部20において、
図3に示すように、温度制御を2つの温度、すなわちボトル温度計29から得られるボトルBの温度と、収容部20内の制御用温度計60により得られる収容部20内の環境温度を得るようにする。これにより、ボトルBの温度の上昇を押さえる事が出来るので、ボトルBは収容部20内において、規定範囲で温度制御が出来る。
【0075】
(恒温槽1の動作)
次に、
図6から
図8を参照して、恒温槽1の動作例を説明する。
図6は、恒温槽1の通常の動作例を示すフローであり、
図7は、ドア3を開けて収容部20内からボトルB(薬品)を取り出す場合のフローである。
図8は、商用電源が停電した場合のフローである。
【0076】
(1)通常の運転動作例
まず、
図6を参照して、恒温槽1の通常の運転動作例を説明する。
【0077】
図6に示すステップS1では、
図2に示すドア3は開口部4を閉じてロック(施錠)状態になっていて、収容部20は密閉されている。
【0078】
図6のステップS2では、収容部20内(庫内)の温度の管理のために、
図3に示す制御用温度計60が、収容部20内の温度を検出して測定温度情報Mを温度調整器31へ出力している。この温度調整器31は、制御用温度計60からの収容部20内の測定温度情報Mに基づいて、収容部20内(槽内)を一定の指定温度に保持する。
【0079】
これにより、
図2に示す恒温槽1は、収容部20内に収容されている薬品の入ったボトルBを、予め定めた一定の所定温度(例えば、
図5に示すボトル温度TP=4℃の低温度)の状態で低温保管するように連続運転される。
【0080】
図6のステップS3では、恒温槽1の低温連続運転の状況、すなわち
図3に示す在荷情報DSと施錠解錠情報RRを含む集約情報Gと、収容部20内の温度と状態、ボトル温度の情報、そしてこれら情報の異常警報を集約した集約情報Pは、外部通信ユニット51に出力する。外部通信ユニット51は、この集約情報G,Pを、外部に対して、無線または有線の通信により送信する。
【0081】
図6のステップS4において、恒温槽1の低温連続運転中は、制御用温度計60は、収容部20内の環境温度を監視して、温度調整器31の動作の制御をすることで収容部20内は低温状態になっているので、ボトル温度TP(薬品の保管温度)は所定温度である例えば4℃に維持される。
【0082】
図6のステップS5において、温度モニタ62は、ボトル温度計29からのボトル温度情報BTにより得て、通常の恒温槽1の低温連続運転の状況では、ボトルBの薬品の温度が、
図5に示す上限値T1の温度(8℃)を超えない任意の温度である所定温度(4℃)であることを確認する。
【0083】
図6のステップS6では、使用者が例えばドア3,3を開けたときには、
図2に示すボトルBの温度が、
図5に示すアラーム設定値TSを超えた場合には、ステップS7に移る。
【0084】
ステップS7では、
図3に示す異常警報部61の異常警報灯61Aは、
図5に示すボトルBのボトル温度TPがアラーム設定値TPである例えば6℃を超えた温度で点灯する。同時に、異常警報音発生部61Cが警報音を発生する。
【0085】
これにより、警報を受けた使用者は、直ぐにドア3,3を閉じて収容部20の温度がこれ以上上がらないようにして、ボトルBのボトル温度TPがアラーム設定値TSを超えないように、収容部20内の低温状態を保持することができる。従って、ボトル温度TPの温度上昇により、ボトルB内の薬品が使用不可になってしまうことを、確実に防ぐことができ、薬品の無駄な廃棄を無くすことができる。
【0086】
上述したように、薬品の保管庫である恒温槽1の収容部20内(庫内)の温度は、
図3に示す制御用温度計60により監視をして、温度調整器31により制御している。しかも、収容部20内に保管されている各ボトルB内の薬品の保管温度は、ボトル温度計29から得られるボトル温度情報BTにより管理をしている。
【0087】
これにより、恒温槽1は、制御用温度計60による収容部20内の温度管理系統と、ボトル温度計29によるボトル温度情報BTの温度(薬剤温度)の温度管理系統と、の合計2つの温度管理系統を装備している。
【0088】
このため、恒温槽1は、低温で連続運転しながら、恒温槽1における保管対象物であるボトルB内の薬品の温度を、所定温度(例えば4℃)になるように精密に温度管理することができる。ボトル温度計29から得られるボトルBの温度と、収容部20内の制御用温度計60により得られる収容部20内の環境温度を得るので、2重の温度管理を行うことで、ボトルBの温度の上昇を押さえる事が出来るので、ボトルBは収容部20内において、規定範囲で温度制御が出来る。
【0089】
(2)ボトル(薬品)を取り出す場合の運転動作例
次に、
図7を参照して、認証された使用者が、ボトルB(薬品)を取り出す場合の運転動作例を説明する。
【0090】
図7のステップS11では、認証された使用者は、例えば認証番号を記憶したカードを、ドア3の認識装置に近づけることで、認証番号を入力する。これにより、
図1と
図7に示す認証付ドアロック12は、ドア3,3のドアロックを解除することができるので、使用者はドア3,3を開けて収容部20内のボトルBにアクセスして、ボトルBの取出しや交換作業が行える。
【0091】
図7のステップS13では、
図2に示すドア3の解放時間が、予め定めた設定時間である、例えば
図5に示す時間t0から時間tCの時間Δtに達した場合には、ステップS14において、
図2のドア(扉)解放警報部71は、警報音を発生することで、使用者に対してドア3,3を直ちに閉めて、収容部20内を閉鎖するように警報することができる。
【0092】
そして、
図7のステップS15では、警報を受けた使用者がドア3,3を閉めることで、ドア3,3が予め定めた設定時間内に閉まったときには、ドア3,3は、
図1の認証付ドアロック12によりロックされるので、認証を受けた使用者以外の者が不用意に開けることができない。
【0093】
一方、
図7のステップS16において、
図5に示すボトル温度TPがアラーム設定値TS(例えば6℃)を超えた場合には、ステップS17において、ボトル温度TPは異常上昇しているので、異常警報部61の異常警報灯61Aが点灯するとともに、異常警報音発生部61Cが警報音を発生する。
【0094】
このため、警報を受けた使用者は、ボトル温度TPは異常上昇していることを、光と音で確認することができるので、使用者はドア3,3をすぐに閉めて、ボトルBの温度上昇を防ぐことができる。これにより、ボトルBの温度上昇により、ボトルB内の薬品が使用不可になってしまうことを、確実に防ぐことができ、薬品の無駄な廃棄を無くすことができる。
【0095】
図7のステップS16において、
図5に示すボトル温度TPがアラーム設定値TSの温度を超えていない場合には、ステップS15に移る。
【0096】
図7のステップS18では、ドア3が設定時間内に閉まると、認証付ドアロック12がドア3を施錠した段階で、
図3の温度調整器31は、収容部20内(庫内)を一定の指定温度まで下げるので、
図5に例示するように、ボトルBは、所定温度であるボトル温度TP(例えば4℃)まで冷却されるので、ボトルBの冷却状態が保持される。すなわち、収容部20内(庫内)は、一定の指定温度に連続して保持される。ステップS19では、外部通信ユニット51は、
図3に示す集約情報G,Pを、本体2の外部に対して、無線または有線の通信により送信する。
【0097】
なお、
図5に例示するボトル温度TPがアラーム設定値TSを下回った段階で、
図3の異常警報部61の異常警報灯61Aが消灯し、異常警報音発生部61Cのアラームは解除される。アラーム設定値TSは、ドア3,3を閉めた後に、
図5のボトル温度TPが上限値T1(例えば8℃)を超えないように、所定温度である4℃で冷却保存される。
【0098】
(3)ボトル(薬品)を取り出す場合の運転動作例
次に、
図8を参照して、恒温槽1が接続されている商用電源が停電になった場合の運転動作例を説明する。
【0099】
図8のステップS21において、
図1に示す恒温槽1は、低温恒温槽として連続運転動作することで、
図2に示すように収容部20内に収容されている薬品の入ったボトルBは、予め定めた所定温度(例えば、
図2に示すボトル温度TP=4℃の低温度)に低温保管されている。
【0100】
図8のステップS22において商用電源が停電すると、ステップS23では、
図1に示す認証付ドアロック12には電源供給が無くなるので、ドア3の施錠が解除されてしまう。そこで、非常ドアロック13がUPS電源70から電源供給を受けることで、非常ドアロック13が認証付ドアロック12に代えて、ドア3,3を施錠する。
【0101】
これにより、停電が生じても、認証された使用者以外の者がドア3,3を開けることができないことから、収容部20内のボトルBを持ち出せないようにして確実に保管できる。すなわち、恒温槽1が停電により外部から電源供給を受けていない場合に、認証された使用者以外の者がドア3,3を開けることができないので、ボトルBの保管上のセキュリティ保持ができる。
【0102】
図8のステップS24において商用電源が停電していると、収容部20内(庫内)の温度をモニタする
図3に示す温度モニタ62と、外部通信ユニット50には、UPS電源70から電源供給を受ける。このため、ステップS25では、商用電源が停電していて外部から電源供給を受けることができなくても、温度モニタ62の制御温度表示部63は、収容部20内(庫内)の温度異常やボトル温度異常を、表示することができる。
【0103】
温度モニタ62のボトル温度表示部64は、
図5に示すボトルBのアラーム設定値TSの温度を超えた異常温度状態を、表示することができる。停電時であっても、
図3の外部通信ユニット51は、収容部20内(庫内)の温度異常やボトルBの温度異常を、本体2の外部に対して、無線または有線で通信することができる。
【0104】
図8のステップS26において、停電時には、認証された使用者は、
図3の非常ドアロック13による
図1のドア3,3のロック状態を手動で解除することができる。このため、使用者は、停電時であっても、収容部20内の各ボトルBを取り出して、取り出した各ボトルBは、別の恒温槽等の低温状態を保持している装置内へ、緊急避難処置として移すことができる。
【0105】
これにより、ボトル温度の温度上昇により、ボトルB内の薬品が使用不可になってしまうことを、確実に防ぐことができ、薬品の無駄な廃棄を無くすことができる。
【0106】
恒温槽1は、ボトルBを低温保管できる低温保管庫である。この恒温槽1は、ボトル温度計から得られるボトルBの温度と、収容部20内に配置されている制御用温度計60により得られる収容部20内の温度により、ボトルBの温度について、2重の温度管理を行うことができるとともに、収容部20内に収容されているボトルBの在荷管理を行うことができる。これにより、実際に保管されている物品であるボトルBの実温度と、実温度に求められる収容部20内の温度を管理温度帯内でコントロールする為の雰囲気温度管理とを連動でき、収容部20内の雰囲気温度の調節が遅れることなく、ボトルBの実温度が逸脱してしまうのを防ぐことができる。
【0107】
上述したように、本発明の実施形態の恒温槽1は、温度の調整された状態で保管対象物としての例えばボトルBを保管するための収容部20を有する本体2と、本体2の収容部20を開閉するドア3と、収容部20内のボトルBの温度情報BTを検出する保管対象物温度計としてのボトル温度計29と、収容部20内の温度を検出する制御温度計60と、ボトルBに配置されて、収容部20内のボトルBに関する情報を送信する情報発信部としての例えば識別素子22と、本体2に配置されて、識別素子22からのボトルBに関する情報を受信する情報受信部としてのアンテナ23Aから23Dと、本体2に配置されて、ボトルBの温度を所定温度(例えば4℃)に保持するために、制御温度計60で検出する収容部20内の温度に基づいて、収容部20内の温度を調整する温度調整器31を備える。
【0108】
これにより、ボトル温度計29は、ボトルBの温度を検出でき、温度調整器31は、制御用温度計60より検出した収容部20内の温度に基づいて、保管対象物であるボトルBの温度を所定温度に保持するように収容部20内の温度を調整する。このため、保管対象物であるボトルBを保管する際に、保管対象物であるボトルBの温度と、収容部20内の雰囲気温度とを用いて、2重の温度管理をすることができるので、厳重な管理の基で、保管対象物の精密な温度管理を行うことができる。例えば、ボトルBの温度を所定温度(例えば4℃)に保持するように収容部20内の温度を調整するので、ボトルBを保管する際に、厳重な管理の基で、ボトルBの精密な温度管理を行うことができる。
【0109】
恒温槽1は、収容部20内のボトルBについての在荷情報を監視する在荷監視部99と、ボトルBの温度情報BTと、在荷監視部からの在荷情報DSとを、本体2の外部に送信する外部通信ユニット51を有する。
【0110】
これにより、外部通信ユニット51は、本体2の外部へ、ボトルBの温度情報BTと、在荷監視部99からの在荷情報DSを送信することができるので、ボトルBの保管状況を、本体2から離れた位置で確認できる。
【0111】
保管対象物は、薬品を収容しているボトルBであり、ボトル温度計29は、内部液を入れたボトルDBと、ボトル内部液29Wの温度を測定するセンサ29Pを有する。
【0112】
これにより、ボトル温度計29は、ボトルBの温度を直接測定する代わりに、ダミーで測定して、ボトルBの温度とみなすことで、ボトル温度計29を適宜収容部20内に置くだけで、ボトルBの温度を正確にしかも容易に得ることができる。
【0113】
本体2は、収容部20内の温度を検出することで、温度調整器31により収容部20内の温度を制御して調整させる制御用温度計60と、収容部20内の温度とボトル温度計29からのボトルBの温度情報BTを表示する温度モニタ62と、本体2への電源供給が停止した場合に、外部通信ユニット51と温度モニタ62に電源供給をするための非常電源70を有する。
【0114】
これにより、制御用温度計60が温度調整器31による収容部20内の温度調整を正確に行うことができ、本体2に電源供給がない停電時であっても、外部通信ユニット51と温度モニタ62は、非常電源であるUPS電源から電源供給して動作させることができる。このため、温度モニタ62は、収容部20内の温度異常を表示でき、外部通信ユニット51は、停電時の収容部20内の温度異常状態を、本体2の外部へ通知することができる。
【0115】
恒温槽1は、ドア3を施錠するドアロック12と、本体2への電源供給が停止してドアロック12がドア3を施錠できない場合に、ドアロック12に代えてドア3を施錠する非常ドアロック13を有する。
【0116】
これにより、本体2への電源供給が停止して停電状態になっても、非常ドアロック13がドア3を施錠することから、収容部20内のボトルBが不用意に持ち出されないことから、ボトルBの保管上のセキュリティの保持ができる。
【0117】
恒温槽1では、ドア3が解放されている場合に、ボトルBの温度が、予め定めた温度のアラーム設定値TSを超えると、温度異常上昇の警報を発する異常警報部61を有する。
【0118】
これにより、ボトルBの温度が、予め定めた温度のアラーム設定値TSを超えると、異常警報部61が温度異常上昇の警報を発するので、使用者はすぐにドア3を閉めてボトルBの温度上昇を防ぐことができる。従って、ボトルBの温度上昇により、ボトルB内の薬品等の物質が使用不可になってしまうことを、確実に防ぐことができ、薬品等の物質の無駄な廃棄を無くすことができる。
【0119】
また、上述した恒温槽1では、好ましくは外部通信ユニット51により収容部20内の温度調整器31の制御温度のデータも外部に送信する。これにより、制御温度を外部に出力することで、連続データより恒温槽1の不具合の予兆管理を行うことができる。夜間に扉3の開閉が無い時の温度安定性、扉3の開放時の温度復帰時間より、装置としての恒温槽1のコンディションを迅速に掌握して、恒温槽1の不具合発生前に恒温槽1の診断対応を行うことができる。
【0120】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、各実施形態は一例であり、特許請求の範囲に記載される発明の範囲は、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更できるものである。
【0121】
上述した実施形態の恒温槽1は、例えば保管対象物としては、所定温度の低温で保管する必要がある薬品を例に挙げているが、これに限らず、他の種類や分野の保管対象物であっても良い。
【0122】
各ボトルBには、情報を発信するための情報発信部として、例えば識別素子22が配置されているが、情報発信部は、他の種類のものであっても良い。情報受信部としてのアンテナの配置数や配置位置や配置姿勢は、任意に設定できる。
【0123】
棚板21の配置枚数等は、
図2に示す例に限定されない。精密な温度管理を要する薬品等は、例えばガラス製のボトル状の容器に限らず、他の形状の容器であっても良い。ドア3は両開き式(観音開き式)でなく、片開き式でも良い。上述した恒温槽1の動作例に限定されず、恒温槽1の動作は任意に変更することができる。