特許第6530189号(P6530189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム・アンド・ハース電子材料株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6530189-電気銅めっき液 図000014
  • 特許6530189-電気銅めっき液 図000015
  • 特許6530189-電気銅めっき液 図000016
  • 特許6530189-電気銅めっき液 図000017
  • 特許6530189-電気銅めっき液 図000018
  • 特許6530189-電気銅めっき液 図000019
  • 特許6530189-電気銅めっき液 図000020
  • 特許6530189-電気銅めっき液 図000021
  • 特許6530189-電気銅めっき液 図000022
  • 特許6530189-電気銅めっき液 図000023
  • 特許6530189-電気銅めっき液 図000024
  • 特許6530189-電気銅めっき液 図000025
  • 特許6530189-電気銅めっき液 図000026
  • 特許6530189-電気銅めっき液 図000027
  • 特許6530189-電気銅めっき液 図000028
  • 特許6530189-電気銅めっき液 図000029
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6530189
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】電気銅めっき液
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/38 20060101AFI20190531BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
   C25D3/38
   C25D7/00 J
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-266608(P2014-266608)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-125095(P2016-125095A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】592165510
【氏名又は名称】ローム・アンド・ハース電子材料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 陽子
(72)【発明者】
【氏名】酒井 誠
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 睦子
(72)【発明者】
【氏名】森永 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】林 慎二朗
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0084277(US,A1)
【文献】 特開2000−034593(JP,A)
【文献】 特開平05−230687(JP,A)
【文献】 特開2000−273684(JP,A)
【文献】 特開2006−265632(JP,A)
【文献】 特開2001−026898(JP,A)
【文献】 特開2002−080993(JP,A)
【文献】 特開2004−307898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 3/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水もしくは水とアルコール類の混合物、銅イオン、酸、ノニオン系界面活性剤並びに下記式(4)の構造を有する化合物であるアルキルイミダゾリウムベタインを含有することを特徴とする、電気銅めっき液
【化1】
(式中、Rは炭素数1〜24の直鎖または分岐のアルキル基を表す。)。
【請求項2】
アルキルベタイン型界面活性剤の含有量が0.01〜100mg/Lである、請求項に記載の電気銅めっき液。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気銅めっき液を用いて、基板上に電気めっきを行う方法。
【請求項4】
水もしくは水とアルコール類の混合物、銅イオン、酸、ノニオン系界面活性剤並びに下記式(4)の構造を有する化合物であるアルキルイミダゾリウムベタインを含有する電気銅めっき液を用いて基板上に電気銅めっきを行い銅回路パターンを製造する工程を含む電子回路の製造方法
【化2】
(式中、Rは炭素数1〜24の直鎖または分岐のアルキル基を表す。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気銅めっき液に関し、より詳細には、矩形の銅析出物を得ることができる電気銅めっき液、及び当該めっき液を用いて矩形の銅析出物を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、数マイクロメートルから数十マイクロメートルの配線幅のパターンを有するファインピッチ回路を有するプリント配線基板を作成する際には、セミアディティブ法が用いられている。このセミアディティブ法によるプリント配線基板の製造方法は、絶縁基板上にスパッタリング法、真空蒸着法等により数十から数百ナノメートルの膜厚の導電性金属層(導電性シード層とも呼ばれる)を形成した後、その表面にレジスト層を形成し、露光及び現像によってめっき不要部分にめっきレジスト層を形成する。その後、導電性シード層に通電してレジスト非形成部に電気めっき法により銅回路を形成し、めっきレジストを剥離することにより、導電性シード層と電気めっき層からなる回路パターンが形成される。その後、絶縁層形成、電子部品実装等を行い、プリント回路基板となる。プリント配線基板上にファインピッチ回路を形成する場合には、深さが約5マイクロメートルから約30マイクロメートル、幅が数マイクロメートルから数十マイクロメートルのレジスト間の溝(レジストパターン)内部に銅めっきを行い、銅回路(銅回路パターン)を形成する必要がある。
【0003】
通常、銅回路パターンは基板面(底部)に対し垂直方向に形成されるため、銅回路パターンの断面形状は、頂部が平坦もしくはほぼ平坦で、かつ側部が底部及び頂部に対して直角もしくはほぼ直角の「矩形」となる。しかし、微小間隙のレジストパターン内部に銅めっきを行う際には、レジストパターン底部の両サイドのコーナー部分、すなわち溝の底面と側面によって作られる角部分にはめっき電流が流れにくく、またレジストパターン開口部内のめっき液の撹拌が不十分であるため、めっき金属が析出しにくい。このため、レジスト剥離後の回路パターンの断面を観察すると矩形とはなっておらず、銅回路パターン断面の頂面部の両端がゆるやかに下がった凸型(以下、本明細書において「ラウンド型」とも言う。)となる現象が生じる。このような回路では、層間接続時、ワイヤーボンディングやソルダーボンディング時に問題が生じたり、めっき膜厚の管理、そして導体断面積が矩形の回路の場合に比べて小さくなるという問題があるため、改善が求められてきた。
また、ファインピッチ回路を有する基板にビア(例えば直径30〜80マイクロメートル)が存在する場合、レジストパターンとビアの双方に対して同時に銅めっきを行う必要がある。しかしレジストパターンの溝の幅とビア直径が異なると、従来の銅めっき液では銅回路パターン形状に問題が生じたりまたはビア内に空隙を有する不十分な銅析出が生じる問題があり、改善が求められてきた。
【0004】
従来から、電気銅めっきに使用する界面活性剤としては、種々のものが知られている。例えば特許文献1には、グリシン系両性界面活性剤と、ベンジルアンモニウムクロライド系のカチオン界面活性剤を併用した電気めっき浴が開示されている。
また、特許文献2には二種類以上の疎水性の異なる高分子界面活性剤を併用した酸性銅めっき液が開示されている。ここで二種類以上の疎水性の異なる高分子界面活性剤としては、二種類以上の疎水性の異なる非イオン界面活性剤か、または非イオン界面活性剤とそれ以外の界面活性剤の場合が記載され、それ以外の界面活性剤としては両性界面活性剤が開示されている。
しかし、本発明者らの実験によると、両性界面活性剤とカチオン系界面活性剤を併用した場合には、ファインピッチ回路パターンの銅析出は不十分であり、形成された回路パターンの断面はラウンド型となることがわかった。また、ポリマー型の非イオン界面活性剤とポリマー型の両性界面活性剤を併用した場合には、ビア内の銅析出が不十分となるため、微細レジストパターンとビアの双方を有する基板に対しては使用できないことが判明した。
このため、回路パターンの両端部にも銅が析出するいわゆる矩形の断面を有するファインピッチ回路を形成することができ、同時に良好なビアフィルを行うことができる、電気銅めっき液の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許文献1:特開2005−126740号公報
特許文献2:特開2004−307898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の主な目的は、ファインピッチ回路パターンのような幅が狭い回路パターンに対して断面形状が、従来技術を用いた場合と比較してより矩形化された回路パターンを得ることができ、同時に良好なビアフィルも行うことができる電気銅めっき液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ノニオン系界面活性剤及びアルキルベタイン型界面活性剤を併用した電気銅めっき液を用いることにより、矩形断面形状を有する回路パターンを得ることができるとともに、良好なビアフィルを行うことができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、ノニオン系界面活性剤及びアルキルベタイン型界面活性剤を含有する電気銅めっき液に関するものである。
アルキルベタイン型界面活性剤は、アミド基を含有するアルキルベタイン型界面活性剤又はアルキルイミダゾリウムベタイン型界面活性剤が好ましい。
特にアルキルアミドプロピルベタイン型界面活性剤、例えば下記構造式(1)で示される化合物が好ましい。
【0009】
【化1】
【0010】
式中、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜24の直鎖または分岐のアルキル基である。
【0011】
また、本発明は上記の電気銅めっき液を用いて基板上に電気めっきを行う方法に関するものである。
さらには、本発明は上記の電気銅めっき液を用いて基板上に電気めっきを行う方法を用いて製造された、電子回路に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例1にて得られたライン/スペース比(L/S)20μm/20μmのパターン上のめっき断面の超深度形状測定顕微鏡写真である。
図2図2は、実施例1にて得られた幅100μmのパターン上のめっき断面の超深度形状測定顕微鏡写真である。
図3図3は、実施例2にて得られたライン/スペース比(L/S)20μm/20μmのパターン上のめっき断面の超深度形状測定顕微鏡写真である。
図4図4は、実施例2にて得られた幅100μmのパターン上のめっき断面の超深度形状測定顕微鏡写真である。
図5図5は、実施例3にて得られたライン/スペース比(L/S)20μm/20μmのパターン上のめっき断面の超深度形状測定顕微鏡写真である。
図6図6は、比較例2にて得られたライン/スペース比(L/S)20μm/20μmのパターン上のめっき断面の超深度形状測定顕微鏡写真である。
図7図7は、比較例2にて得られた幅100μmのパターン上のめっき断面の超深度形状測定顕微鏡写真である。
図8図8は、比較例3にて得られたライン/スペース比(L/S)20μm/20μmのパターン上のめっき断面の超深度形状測定顕微鏡写真である。
図9図9は、比較例4にて得られたライン/スペース比(L/S)20μm/20μmのパターン上のめっき断面の超深度形状測定顕微鏡写真である。
図10図10は、実施例4にて得られたライン/スペース比(L/S)20μm/20μmのパターン上のめっき断面の超深度形状測定顕微鏡写真である。
図11図11は、実施例4にて得られた幅100μmのパターン上のめっき断面の超深度形状測定顕微鏡写真である。
図12図12は、実施例5にて得られたライン/スペース比(L/S)20μm/20μmのパターン上のめっき断面の超深度形状測定顕微鏡写真である。
図13図13は、実施例5にて得られた幅100μmのパターン上のめっき断面の超深度形状測定顕微鏡写真である。
図14図14は、実施例6にて得られたライン/スペース比(L/S)20μm/20μmのパターン上のめっき断面の超深度形状測定顕微鏡写真である。
図15図15は、実施例6にて得られた幅100μmのパターン上のめっき断面の超深度形状測定顕微鏡写真である。
図16図16は、ビアの測定を説明するためのビアの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、用語「めっき液」及び「めっき浴」は互いに交換可能に用いられる。℃は摂氏度、g/Lはグラムパーリットル、ml/Lはミリリットルパーリットル、μmはマイクロメートル、m/minはメートルパー分、A/dm2及びASDはアンペアパー平方デシメートルを意味する。
また「矩形化」とは銅回路パターンの断面形状を、頂部が平坦もしくはほぼ平坦であって側部が底部及び頂部に対して直角もしくはほぼ直角の「矩形」にすることを意味する。
【0014】
本発明は、ノニオン系界面活性剤及びアルキルベタイン型界面活性剤を含有する電気銅めっき液に関する。
【0015】
ノニオン系界面活性剤の例としては、ポリエチレングリコール(PEG);ポリオキシプロピレングリコール;ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマーやランダムコポリマー等;または、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールにアルキルエーテルが付加されたものなどを例示することができるが、これらに限定されない。
これらノニオン系界面活性剤は、一種でも二種以上用いてもよい。ノニオン系界面活性剤の含有量は、好ましくは0.005〜10g/L、さらに好ましくは0.05〜2g/Lである。ノニオン系界面活性剤の分子量(重量平均分子量)は、好ましくは500〜12000である。
【0016】
本発明のめっき液はさらに、アルキルベタイン型界面活性剤を含有する。アルキルベタイン型界面活性剤とノニオン系界面活性剤を併用することにより、本発明の優れた効果を有するめっき液が得られる。
ここでアルキルベタイン型界面活性剤とは、両性界面活性剤の一種であり、分子内に第四級アンモニウム、及びカルボキシル基を含有する化合物を指す。
好ましくは、本発明で用いられるアルキルベタイン型界面活性剤は下記構造式で表される化合物である。
【0017】
【化2】
【0018】
式中、R、R及びRは置換もしくは非置換の炭素数1〜30、炭素数1−24もしくは炭素数1−12の直鎖または分岐のアルキル基を表し、R、R及びRのうちの少なくとも2つの基が連結してヘテロ原子として窒素又は酸素を含む飽和もしくは不飽和複素環を形成してもよい。Rは化学結合または置換もしくは非置換の炭素数1−30、炭素数1−24もしくは炭素数1−12の直鎖または分岐のアルキレン基を表す。R〜Rのアルキル基又はアルキレン基の置換基としては、例えばC1〜C24アルキルアミド基又は水酸基が挙げられる。
【0019】
アルキルベタイン型界面活性剤は、一種類でもよいし、二種類以上を用いてもよい。アルキルベタイン型界面活性剤の含有量は、好ましくは10〜100mg/L、さらに好ましくは10〜80mg/Lである。
【0020】
アルキルベタイン型界面活性剤の中でも、特にアミド基を含有するアルキルベタイン型界面活性剤が好ましい。アミド基を含有するアルキルベタイン型界面活性剤は、例えば下記構造式(3)で表すことができる。
【0021】
【化3】
【0022】
ここで、R及びRは、置換もしくは非置換の炭素数1〜30、炭素数1−24もしくは炭素数1−12の直鎖または分岐のアルキル基を表し、Rは化学結合または炭素数1〜12のアルキレン基、Rは置換もしくは非置換の炭素数1−30又は炭素数6〜12の直鎖または分岐のアルキレン基、Rは置換もしくは非置換の炭素数1−24もしくは炭素数1−12の直鎖または分岐のアルキル基を表す。R〜Rのアルキル基又はアルキレン基の置換基としては、例えば水酸基が挙げられる。
【0023】
特に好ましいアミド基を含有するアルキルベタイン型界面活性剤として、アルキルアミドプロピルベタイン型界面活性剤が挙げられ、例えば下記構造式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0024】
【化4】
【0025】
ここで、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜24、好ましくは1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基である。Rの置換基としては例えば水酸基が挙げられる。
【0026】
別の好ましいアルキルベタイン型界面活性剤として、アルキルイミダゾリウムベタイン型界面活性剤が挙げられる。アルキルイミダゾリウムベタイン型界面活性剤はアルキルイミダゾリウムベタイン化合物であればよく、アルキルイミダゾリウムベタインは、イミダゾリウム環が開環した構造であってもよい。アルキルイミダゾリウムベタインのアルキル基は例えば炭素数1〜24、好ましくは1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基である。
アルキルイミダゾリウムベタインの例としては、例えば川研ファインケミカル株式会社の製品ソフタゾリンCH、ソフタゾリンCH−R、ソフタゾリンCL、ソフタゾリンCL−R、ソフタゾリンLHL、ソフタゾリンLHL−SF、ソフタゾリンNS、ソフタゾリンSF及びソフタゾリンSFD、三洋化成工業株式会社の製品レボン105及びレボンCIB、日油株式会社の製品ニッサンアノンGLM−R及びニッサンアノンGLM−R−LVが挙げられる。
好ましいイミダゾリニウムベタインとしては、例えば下記構造式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0027】
【化5】
【0028】
式4中、Rは炭素数1〜24、好ましくは1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基である。
【0029】
本発明の電気銅めっき液は上記ノニオン系界面活性剤及びアルキルベタイン型界面活性剤の二種類以外の界面活性剤を含有し得る。
一態様において本発明の電気銅めっき液は、上記ノニオン系界面活性剤及びアルキルベタイン型界面活性剤の二種類以外の界面活性剤を含有しない。
【0030】
本発明の電気銅めっき液は、上記二種類の界面活性剤の他、銅イオン及び酸を含有し、任意にさらにハロゲンイオン及び/または硫黄系有機化合物を含有する。
銅イオンは水溶性銅塩としてめっき液に添加することができ、水中で銅イオンを生成するものであればいかなる化合物をも用いることができる。銅イオン源の例としては、硫酸銅、塩化銅、酢酸銅、メタンスルホン酸銅、ホウフッ化銅などが含まれる。これらのうち、硫酸銅が特に好ましい。銅イオンの含有量は、銅イオンとして10〜70g/L、好ましくは25〜60g/Lである。
【0031】
本発明の電気銅めっき液に含まれる酸は、無機酸または有機酸のいずれでもよい。これらの酸はめっき液のpHを酸性に調整するとともに、めっき液中で伝導塩としての役割を果たす。酸の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、ホウフッ化水素酸、フェノールスルホン酸などが含まれる。これらのうち、硫酸がもっとも好ましい。酸の含有量は、10〜180g/L、好ましくは30〜150g/Lである。
【0032】
本発明の電気銅めっき液は、ハロゲンイオンを含有し得る。ハロゲンイオンは、界面活性剤とともにめっき液中で光沢補助剤の役割を果たす。ハロゲンイオンとしては塩素イオンまたは臭素イオンを用いることができる。ハロゲンイオンの含有量は、1〜200mg/L、好ましくは25〜75mg/Lである。
【0033】
本発明の電気銅めっき液は、任意成分として硫黄系有機化合物を含有し得る。硫黄系有機化合物は、めっき液中で光沢剤の役割を果たす。硫黄系有機化合物の例としては、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸塩、3,3’−ジチオビス(1−プロパンスルホン酸塩)、チオ尿素、3−[(エトキシチオキソメチル)チオ]−1−プロパンスルホン酸塩、3−[[(ジメチルアミノ)チオキソメチル]チオ]−1−プロパンスルホン酸塩などが含まれる。
硫黄系有機化合物の含有量は、好ましくは0.1〜200mg/L、さらに好ましくは0.2〜20mg/Lである。
【0034】
本発明のめっき浴は酸性浴であることが好ましい。浴が中性またはアルカリ性であると、水酸化銅や酸化銅の沈殿が発生するためである。好ましいめっき浴のpHは4以下、さらに好ましくは1以下である。
【0035】
本発明の電気銅めっき液は、その他必要に応じてレベラーなどの一般に電気銅めっき液に用いられる添加剤を含有することができる。
【0036】
本発明の電気銅めっき液に用いる溶媒は好ましくは水であるが、メタノールやエタノールなどのアルコール類、アセトンなどの有機溶媒を含む水であってもよい。
【0037】
本発明の電気銅めっき浴を用いて、基板上に銅めっき析出を形成することができる。基板上の銅めっきを析出させる箇所は、あらかじめ導電性を付与しておくことが好ましい。本発明の電気銅めっき液は、特にファインピッチ回路の電気銅めっきに適している。ファインピッチ回路とは、数マイクロメートルから数十マイクロメートルの幅のパターンを有する回路を言う。
ファインピッチ回路を電気銅めっきで形成する際には、銅めっきをレジストパターン内部に隙間なく析出させる必要がある。レジストパターン内部のめっき析出に空隙が生じると、その箇所での電気配線が細くなったり、極端な場合には回路が切断される等の問題が生じるためである。
前述のように、銅回路パターンは基板面に対し垂直方向に形成されるため、レジストパターン内部に隙間なく銅が析出した場合には、析出した銅回路パターンの断面形状は側部が底部及び頂部に対してほぼ直角の矩形となる。一方で、めっき析出が不十分であった場合には、所望の高さまでめっきが析出せず頂部が低くなったり、レジストパターン底部のコーナー部分に銅めっきが析出せず銅回路パターンの頂部がラウンド型となってしまうなどの場合がある。これらの不十分なめっき状態は、めっき後のパターンの断面形状を観察することにより判別することができる。
本発明の電気銅めっきに用いられるレジストパターンの溝の幅及び深さに制限はないが、例えば幅は、200マイクロメートル以下、好ましくは100マイクロメートル以下、さらに好ましくは50マイクロメートル以下、より好ましくは20マイクロメートル以下であり、レジストパターンの深さは5マイクロメートルから30マイクロメートルまで、好ましくは7マイクロメートルから25マイクロメートルまでである。
また、基板によっては微細配線パターンとともにビア(例えば直径30〜80マイクロメートル、深さ20〜60マイクロメートルの円柱状の穴)を有するものがあり、これらも微細配線パターンと同時に銅めっきが行われる。しかし、微細配線パターンの溝とビアはその開口径及び深さが大きく異なるため、いずれかへの銅析出にすぐれていても、もう一方への銅析出が不十分となる場合が多かった。本発明の電気銅めっき液は、いずれに対しても空隙を有しない良好な銅析出が得られるものである。
【0038】
本発明の電気銅めっき液を用いて基板上に電気銅めっきを行う際には、電気銅めっきにおいて通常用いられる方法で行うことができる。たとえば導電化処理を施した基板と本発明のめっき液を接触させ、電極と被めっき物である基板との間に電流を流すことによって行うことができる。
【0039】
電気銅めっき液の温度は、好ましくは5〜50℃、さらに好ましくは20〜28℃である。また、めっきを行う際の電流は直流電流でもよいし、パルス電流でもよい。電流密度は好ましくは0.5〜4A/dm、さらに好ましくは1〜3A/dmである。
【実施例】
【0040】
以下本発明を実施例に基づいて説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0041】
実施例1
以下の組成の電気銅めっき液を調整した。
<めっき液組成>
硫酸銅五水和物 :200g/L (銅として80g/L)
硫酸 :100g/L
塩素イオン :50g/L
SPS :2mg/L
界面活性剤1 ノニオン系界面活性剤1(ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体)(UCON(商標)Lubricant 50HB260) 1g/L
界面活性剤2 アルキルアミドプロピルベタイン型界面活性剤1(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン:川研ファインケミカル株式会社製ソフタゾリンCPB−R、以下「アミド型1」と言う)50mg/L
残部 :脱イオン水
【0042】
径65μm、深さ35μmのマイクロビアを有するパネル基板とラインとスペース(L/S)が20μm/20μmで深さが25μmのレジストパターン形状と幅100μmで深さが25μmの溝を有するレジストパターン形状を有するパターン基板を酸洗浄(アシッドクリーナー(商標)(ACID CLEANERTM) 1022−B:10%/ロームアンドハース電子材料製、40℃/3分間)、水洗浄(30−40℃、1分間)脱イオン水洗浄(室温、1分間)。続いて、酸洗浄(10%硫酸、1分間)その後、上記めっき液を用いて室温にて36分、1.5ASDにて電気銅めっきを行った。目標銅めっき厚は12μmであった。電極は含リン銅を用いた。その後脱イオン水で洗浄し、得られた回路部の断面形状を超深度形状測定顕微鏡 VK−8510(KEYENCE社製)にて観察した。
【0043】
実施例2
界面活性剤1をノニオン系界面活性剤2(ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体)UCON(商標)Lubricant 50HB2000 1g/Lに、界面活性剤2をアルキルアミドプロピルベタイン型界面活性剤2(第一工業製薬製アモーゲンCBH、以下「アミド型2」と言う)50mg/Lに変更した以外は実施例1と同じ操作を行った。
【0044】
実施例3
界面活性剤2をアルキルイミダゾリウムベタイン型界面活性剤1(2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン:川研ファインケミカル株式会社製ソフタゾリンCL−R、以下「イミダゾリウム型1」と言う)50mg/Lに変更した以外は実施例1と同じ操作を行った。
【0045】
実施例4
界面活性剤2をアルキルイミダゾリウムベタイン型界面活性剤2(2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン:川研ファインケミカル株式会社製ソフタゾリンCH−R、以下「イミダゾリウム型2」と言う)50mg/Lに変更した以外は実施例1と同じ操作を行った。
【0046】
実施例5
界面活性剤2をアルキルイミダゾリウムベタイン型界面活性剤3(N−ヤシ油脂肪酸アシル−N'−カルボキシエチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム:川研ファインケミカル株式会社製ソフタゾリンSFD、以下「イミダゾリウム型3」と言う)50mg/Lに変更した以外は実施例1と同じ操作を行った。
【0047】
実施例6
界面活性剤2をアルキルイミダゾリウムベタイン型界面活性剤4(N−ヤシ油脂肪酸アシル−N'−カルボキシエチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム:川研ファインケミカル株式会社製ソフタゾリンNS、以下「イミダゾリウム型4」と言う)30mg/Lに変更した以外は実施例1と同じ操作を行った。
【0048】
比較例1
界面活性剤2を添加しなかった以外は実施例1と同じ操作を行った。
【0049】
比較例2
界面活性剤2を下記構造式の化合物(カチオン系界面活性剤、HUNTSMAN製JEFFAMINE(商標)T−403 Polyetheramine、以下「カチオン系」と言う)10mg/Lに変更した以外は実施例1と同じ操作を行った。
【0050】
【化6】
【0051】
比較例3
界面活性剤2を下記構造式のカチオンポリマー化合物(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ製エソミンC/25カチオンポリマー、以下「カチオンポリマー1」と言う)10mg/Lに変更した以外は実施例1と同じ操作を行った。
【0052】
【化7】
【0053】
比較例4
界面活性剤2を下記構造式のカチオンポリマー化合物(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ製エソプロポミンC18−18カチオンポリマー、以下「カチオンポリマー2」と言う)10mg/Lに変更した以外は実施例1と同じ操作を行った。
【0054】
【化8】
【0055】
比較例5
界面活性剤1をアニオン系界面活性剤(ナフタレン−1,3,6−トリスルホン酸三ナトリウム水和物)に、界面活性剤2をアルキルイミダゾリウムベタイン型界面活性剤5(2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン:花王社製アンヒトール20Y−B、以下「イミダゾリウム型4」と言う)10mg/Lに変更した以外は実施例1と同じ操作を行った。
【0056】
比較例6
界面活性剤1を(ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体)UCON(商標)Lubricant 75H−90000に、界面活性剤2を下記構造の両性界面活性剤化合物(ラウリルアミドプロピルヒドロキシスルタイン:川研ファインケミカル株式会社製ソフタゾリンLSB−R、以下「両性界面活性剤」と言う)10mg/Lに変更した以外は実施例1と同じ操作を行った。
【0057】
結果を以下の表1及び2に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
ビア充填は、図16に示した表面部Aとビアホール中央部分の窪んでいる最低部分もしくは凸部分Bの高低差から算出した。窪みの場合は、プラスの数値となり、盛り上がってフィリングされている場合はマイナスの数字で表現した。
ビア充填=A−B(μm)
【0060】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16