特許第6530215号(P6530215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6530215
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】レンズユニットおよびカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20060101AFI20190531BHJP
   G03B 11/00 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
   G02B7/02 D
   G02B7/02 A
   G02B7/02 B
   G02B7/02 Z
   G03B11/00
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-64131(P2015-64131)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-184082(P2016-184082A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2017年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】317015179
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(72)【発明者】
【氏名】平田 弘之
(72)【発明者】
【氏名】牧野 由多可
【審査官】 金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−098429(JP,A)
【文献】 特開2014−122971(JP,A)
【文献】 特開2005−070366(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/199765(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0076971(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G03B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の鏡筒と、前記鏡筒の内側に前記鏡筒の軸方向に並んで設けられる複数のレンズとを備えているレンズユニットであって、
複数の前記レンズのうちの最も結像側に位置する前記レンズよりも結像側に、円環板状の金属製の遮光リングが設けられていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
複数の前記レンズのうちの最も結像側に位置する前記レンズと、
前記鏡筒の内側に設けられ、前記レンズを結像側から支持する支持部との間に、
前記遮光リングが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
金属製の鏡筒と、前記鏡筒の内側に前記鏡筒の軸方向に並んで設けられる複数のレンズと、複数の前記レンズのうちの最も結像側に位置する前記レンズより結像側に配置される光学フィルタとを備えているレンズユニットであって、
円環板状の金属製の遮光リングが、前記光学フィルタと前記鏡筒の結像側に形成された光学フィルタ受け部とにより挟み込まれることにより固定されていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項4】
前記鏡筒の内側には、前記レンズを結像側から支持する支持部が設けられ、
前記光学フィルタ受け部は、前記支持部の結像側の面であることを特徴とする請求項3に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記光学フィルタ受け部は、前記鏡筒の結像側の端部に形成された円形状の窪みである凹部であり、前記凹部の底面と前記光学フィルタとの間に前記遮光リングが挟み込まれることにより固定されていることを特徴とする請求項3に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記遮光リングは、ステンレス鋼材で構成されていることを特徴とする請求項1または請求項3に記載のレンズユニット。
【請求項7】
複数の前記レンズは、ガラスレンズであることを特徴とする請求項1または請求項に記載のレンズユニット。
【請求項8】
前記鏡筒の結像側の端面に黒染め処理が施されていないことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のレンズユニット。
【請求項9】
前記光学フィルタは、前記鏡筒に接着剤により固定されていることを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載のレンズユニット。
【請求項10】
金属製の鏡筒と、前記鏡筒の内側に前記鏡筒の軸方向に並んで設けられる複数のレンズとを備え、複数の前記レンズのうちの最も結像側に位置する前記レンズよりも結像側に、円環板状の金属製の遮光リングが設けられているレンズユニットと、
前記レンズユニットにより結像された画像を撮像する撮像素子とを備えることを特徴と
するカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズユニットおよびカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーナビ等のために車にモニタが搭載されることから、例えば、バックモニタシステムとして、車両のバックに搭載された車載カメラが撮影した映像をモニタに表示することが行われている。また、このカメラをバックだけではなく、車両の前後左右に備え、車両の周囲を見渡せるような画像を略リアルタイムで合成してモニタに表示するようなシステムも開発されている。
【0003】
このような障害物や人物などの画像を正確に速く認識するなどのセンシング機能を有する車載カメラにおいて、レンズユニットには、ステンレス鋼やアルミニウム合金などの金属製の鏡筒およびガラス製のレンズが用いられ、高い信頼性を実現している(例えば、特許文献1参照)。
このレンズユニットにおいては、筒状の鏡筒に一群のレンズとして、複数のレンズが略鏡筒内に光軸方向に重ねて配置されている。
【0004】
従来、このようなレンズユニットにおいて、ゴーストやフレアを抑制するために、ステンレス鋼やアルミニウム合金などの金属製の鏡筒の内面および撮像素子側(像面側)の端面に黒染め処理をして反射防止をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−292927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のように鏡筒に黒染め処理を施すと、厚み精度が悪化するため、レンズユニットとしての必要精度を確保できない場合が生じ、製造歩留りが悪いという問題がある。
例えば、黒染め処理無しの金属製鏡筒の内径の加工精度が±0.005〜±0.007mm程度であるのに対して、黒染め処理を施した後の厚み精度(内径精度)が±0.015〜±0.017mm程度となり、このため特にレンズの光軸と直交する偏心精度を高めることができない。したがって、レンズの光軸の偏心精度を高めることができない。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、製造コストを低減しつつ、レンズの光軸の偏心精度を高めることができるレンズユニットおよびカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のレンズユニットは、金属製の鏡筒と、前記鏡筒の内側に前記鏡筒の軸方向に並んで設けられる複数のレンズとを備えているレンズユニットであって、複数の前記レンズのうちの最も結像側に位置する前記レンズよりも結像側に、遮光リングが設けられていることを特徴とする
【0009】
このような構成によれば、複数の前記レンズのうちの最も結像側に位置する前記レンズよりも結像側に、遮光リングが設けられているので、金属製の鏡筒の内面に黒染め処理等の反射防止処理を施さなくても、ゴーストやフレアを抑制するための反射防止を図ることができる。このため、鏡筒の内径の加工精度を高めることができるので、レンズの光軸と直交する偏心精度を高めることができる。したがって、レンズの光軸の偏心精度を高めることができる。また、金属製の鏡筒の内面に黒染め処理等の反射防止処理を施さなくて良いので、製造コストを低減することができる。
【0010】
また、本発明のレンズユニットは、金属製の鏡筒と、前記鏡筒の内側に前記鏡筒の軸方向に並んで設けられる複数のレンズと、前記鏡筒の一方の端部に配置される光学フィルタとを備えているレンズユニットであって、前記鏡筒の前記一方の端部の端面に、遮光リングが前記端面と前記光学フィルタとにより挟み込まれることにより固定されていることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、鏡筒の結像側の端部の端面に遮光リングが端面と光学フィルタとにより挟み込まれることにより固定されているので、金属製の鏡筒の内面に黒染め処理等の反射防止処理を施さなくても、ゴーストやフレアを抑制するための反射防止を図ることができる。このため、鏡筒の内径の加工精度を高めることができるので、レンズの光軸と直交する偏心精度を高めることができる。したがって、レンズの光軸の偏心精度を高めることができる。また、金属製の鏡筒の内面に黒染め処理等の反射防止処理を施さなくて良いので、製造コストを低減することができる。
【0012】
本発明の前記構成において、複数の前記レンズは、ガラスレンズであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の前記構成において、前記鏡筒の結像側の端面に黒染め処理が施されてないことが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、鏡筒の結像側の端部の端面にも黒染め処理が施されていないので、製造コストをより低減することができる。
【0015】
また、本発明の前記構成において、前記光学フィルタは、前記鏡筒に接着剤により固定されていることが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、例えば、鏡筒の一方の端部の端面に遮光リングを配置し、光学フィルタを鏡筒に接着剤により固定することなどにより、遮光リングを固定することができるので、遮光リングの取り付け作業を効率的に行うことができる。
【0017】
本発明のカメラモジュールは、金属製の鏡筒と、前記鏡筒の内側に前記鏡筒の軸方向に並んで設けられる複数のレンズとを備え、複数の前記レンズのうちの最も結像側に位置する前記レンズよりも結像側に、遮光リングが設けられているレンズユニットと、
前記レンズユニットにより結像された画像を撮像する撮像素子とを備えることを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、カメラモジュールは、上述の本発明のレンズユニットと同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、製造コストを低減しつつ、レンズの光軸の偏心精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係るカメラモジュールを示す断面図である。
図2図1の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1および図2に示すように、この実施の形態のレンズユニット100は、鏡筒1と、鏡筒1内に配置される複数(本例では5枚)のレンズ2,3,4,5,6と、鏡筒1のレンズ2,3,4,5,6が像を結ぶ結像側(撮像素子7が配置される側)の端部に配置される光学フィルタ8と、レンズ2とレンズ6との間に配置される複数(本例では3枚)の環状の遮光リング22,23,24および複数(本例では3つ)の環状のスペーサ(中間環)25,26,27と、鏡筒1の結像側の端部の端面と光学フィルタ8との間に挟まれている環状の遮光リング28とを備えている。
このレンズユニットは、例えば、自動車の後方側や前方側、自動車の周囲を撮影するために設けられる車載カメラに用いられる。
【0022】
鏡筒1は、ステンレス鋼あるいはアルミニウム合金等の金属から形成されている。
この鏡筒1には、その内面および結像側(撮像素子7が配置される側)の端部の端面を含めてすべての部分に、黒染め処理が施されていない。
なお、鏡筒1の外形部は、意匠的な理由等で黒染め処理を施しても良い。重要な点は、レンズ2,3,4,5,6を光軸OAと直交する方向に位置規制をする鏡筒1の内面および結像側端部の端面が、黒染め処理されていないことである。
ここで、黒染め処理とは、ステンレス鋼の代表的な処理として、例えば、黒色三価クロムめっき処理、アルミ合金の代表的な処理として、例えば、黒色アルマイト処理が挙げられる。これらの黒染め処理は、良好な反射防止機能を有する反面、膜厚バラツキが大きく、金属鏡筒の精度低下を招く問題を抱えている。
【0023】
鏡筒1内には、鏡筒1の軸方向に沿って1つのレンズ群を構成する5枚のレンズ2,3,4,5,6が並べて配置される。鏡筒1の軸方向と略一致するように各レンズ2,3,4,5,6の光軸OA方向(鏡筒1の軸線方向)に配置されている。鏡筒1の一方の端部が結像側として撮像素子7に向いて配置され、他方の端部が物体側として撮影対象を向いて配置される。5枚のレンズ2,3,4,5,6はすべて、ガラスレンズ(ガラス製のレンズ)である。
【0024】
レンズ2,3,4,5,6、スペーサ25,26,27および遮光リング22,23,24は、鏡筒1の内部に、物体側から結像側に向かって挿入されて設置されるようになっている。鏡筒1内には、レンズ6、遮光リング25、スペーサ27、レンズ5、レンズ4、スペーサ26、遮光リング24、スペーサ25、レンズ3、遮光リング23およびレンズ2が撮像素子7側から物体側に向かってこの順に配置されている。隣接する各部材は互いに当接している。
【0025】
遮光リング25、遮光リング24および遮光リング23は、通過光の範囲を制限するためのものであり、本例では金属製である。
また、スペーサ27、スペーサ26およびスペーサ25は、本例ではステンレス鋼あるいはアルミニウム合金等の金属から形成されている。
【0026】
鏡筒1の内周側は、径の異なる複数(5つ)の保持部32,33,34,35,36が物体側から結像側に向かってこの順に設けられている。保持部32,33,34,35および36はそれぞれ、レンズ2,3,4,5および6を保持するために設けられている。保持部32,33,34,35,36の内径は、物体側から結像側に向かってこの順に次第に小径になっている。保持部36内には、レンズ6、遮光リング25およびスペーサ27が嵌入されている。レンズ6のフランジ部の結像側の面は、鏡筒1の径方向内方に環状に突出する支持部37に当接している。保持部35内には、レンズ5が嵌入されている。保持部34内には、レンズ4およびスペーサ26が嵌入されている。保持部33内には、遮光リング24、スペーサ25およびレンズ3が嵌入されている。保持部32内には、レンズ2が嵌入されている。
【0027】
鏡筒1の物体側の端部の外周面には、雄ねじが形成されており、この雄ねじに断面形状がコ字状の蓋体53の筒部の内周面の雌ねじが螺合されている。蓋体53の天板の中央部は開口されている。蓋体53を鏡筒1にねじ込むことにより、レンズ6、遮光リング25、スペーサ27、レンズ5、レンズ4、スペーサ26、遮光リング24、スペーサ25、レンズ3、遮光リング23およびレンズ2が蓋体53の天板と鏡筒1の支持部37とに挟持されて鏡筒1内に固定されている。
【0028】
スペーサ26の内周面は、ねじ形状に形成されており、これにより時間のかかる切削加工の加工速度を高めることができ、生産性を向上させることができるとともに、ゴーストを効果的に防止することができる。
【0029】
鏡筒1の結像側(撮像素子7が配置される側)の端部には、支持部37より先端側に、遮光リング28を収容し固定するシリンダ状(扁平な円筒状)の凹部62が形成されている。凹部62の底面63は、鏡筒1の軸線と直交する環状(円環状)の平面となっている。この凹部62の底面63は、鏡筒1の結像側(撮像素子7が配置される側)の端面を構成している。
【0030】
この凹部62の円環状の底面63に先ず薄い円環板状の遮光リング28を配置し、次いで扁平な円柱状の光学フィルタ8を凹部62内に嵌入し、次いで光学フィルタ8の外周面と鏡筒1の凹部62の内周面との間に接着剤72を入れ、その後硬化させることにより、遮光リング28が鏡筒1の凹部62内に固定される。光学フィルタ8の外周面と凹部62の内周面との間に接着材72が介在されて、光学フィルタ8と鏡筒1とは強固に固定される。接着剤72としては、例えば熱硬化型エポキシ樹脂や、紫外線硬化型アクリル樹脂が用いられる。紫外線硬化型の接着剤72は、紫外線を照射することにより短時間で硬化するので取り扱いが容易である。一方、熱硬化型エポキシ樹脂の接着剤72は、耐熱性に優れ、信頼性試験後の接着強度が高い特長がある。また、接着剤72は、チキソ性を有することで、フィルタ8と凹部62の間に染み込むことなく、多少盛り上がった形態で、接着することができる(図2参照)。
【0031】
遮光リング28は、金属製である。遮光リング28は、例えば、例えばSUS304(オーステナイト系ステンレス鋼)製であり、表面に黒色酸化被膜を形成することで、反射防止機能を有する。なお、他の遮光リング22,23,24も同様に構成されている。
また、スペーサ(中間環)25,26,27は、SUS303(オーステナイト系ステンレス鋼)製であり、黒色三価クロムめっきを表面に施すことで、反射防止機能を有する。スペーサ25,26,27は、レンズの光軸OAと直交する方向の位置規制をする訳ではないので、黒染めの厚みバラツキによる精度低下の問題はない。スペーサ25,26,27の材質は、アルミニウム合金、例えばA5056にサテン処理(化学的または物理的凹凸処理)を行った後、黒色アルマイト処理をすることでも代用出来る。
【0032】
光学フィルタ8は、例えば、外光の特定の周波数成分を除去する目的でガラスに多層膜を蒸着させたものであり、この実施の形態では、光学フィルタ8が、赤外線カットフィルタ(赤外線除去フィルタ)とされている。
なお、光学フィルタ8は、上述のように特定の周波数成分を除去するものならば、赤外線カットフィルタに限られるものではない。
【0033】
例えば、光学フィルタ8として、可視光帯域の光を透過し、可視光帯域に隣接する第1の近赤外帯域の光を遮断し、さらに第1の近赤外帯域よりも長波長の第2の近赤外帯域の光を透過する光学フィルタを用いてもよい。この光学フィルタによれば、第2の近赤外波長帯域を、夜間撮影の際に補助的に使用される赤外線照明の出力波長(例えば880nm等)に合わせることにより、昼間は、第2の近赤外帯域を除く赤外帯域の光が遮断され良好に撮影が可能であり、夜間にも、光学フィルタを透過する第2の近赤外帯域を利用した赤外線照明の光によって撮影が可能になる。
【0034】
鏡筒1の外周面の結像側(撮像素子7が配置される側)の端部分には、雄ねじ72が形成されており、また中央部分には雄ねじ72よりも大径の嵌合部73が形成されている。
このように構成されたレンズユニット100は、台座としてのホルダー(マウント)200に取り付けられる。ホルダー200は、レンズユニット100が取り付けられる筒部202と、筒部202の外周面から袴状に外方および下方に延びる基部203とを備えている。基部203の先端は、筒部202の結像側の端よりも撮像素子7側に突出している。ホルダー200は、ステンレス鋼あるいはアルミニウム合金等の金属から形成されている。ホルダー200をアルミニウム合金で形成する場合には、ダイキャスト工法で製造できるため、より複雑な形状にすることができる。
【0035】
ホルダー200の筒部202は、物体側の部分が結像側の部分よりも大径になっている。筒部202の大径の部分の内周面には、嵌合部222が形成され、また小径の部分の内周面には、雌ねじ223が形成されている。レンズユニット100は、鏡筒1の嵌合部73をホルダー200の嵌合部222に嵌合させてガイドとして機能させつつ、雄ねじ72
を雌ねじ223にねじ込むことで、ホルダー200に取り付けられる。
【0036】
このように、レンズユニット100およびホルダー200にそれぞれ、嵌合部73および嵌合部222と雄ねじ72および雌ねじ223とが設けられているので、嵌合部73と嵌合部222とを嵌合させつつ、雄ねじ72を雌ねじ223にねじ込むことができる。このため、レンズユニット100をホルダー200に実装する時に、鏡筒1を回転させることにより、光学系の光軸OA倒れを防ぎつつ、ピント調整を行うことができる。
【0037】
また、ホルダー200の筒部202の結像側の端部には、径方向内方に向かって光学フィルタ28の外周部近傍まで延びる環状の突出部225が形成されている。
この突出部225は、ダストトラップ部を構成する。すなわち、上述のように、鏡筒1を回転させてピント調整を行う際に、金属製のねじ同士を歯み合わせるので、鏡筒1およびホルダー200の雄ねじ72および雌ねじ223の削れ粉が撮像素子7に落下し、画像に黒いシミが発生する虞がある。そこで、突出部225の撮像素子7側の面に粘着物質を塗布したダストトラップ部を形成して、削れ粉をダストトラップ部に付着させ、画像へのシミの発生を防止することができる。
【0038】
このようなレンズユニット100は、ホルダ200、撮像素子7、配線基板、信号処理回路、フレキシブル配線シートおよびコネクタ等とともに、カメラモジュールを構成する。なお、カメラモジュール(撮像装置)とは、少なくともレンズユニットと撮像素子とを備えたものを言う。
撮像素子7は、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)といった一般的な撮像素子により構成される。撮像素子7の撮像面(主面)には複数の画素がマトリクス状に形成されている。撮像素子7は、配線基板上に配置され、ホルダー200の基部203の内側の収納空間に収納される。
【0039】
カメラモジュールは、次のように動作する。物体側から入射する光は、レンズユニット100のレンズを介して撮像素子7に入射する。撮像素子7は、入射した像を電気信号に変換する。信号処理回路は、撮像素子7からの電気信号に対して信号処理(A/D変換、画像補正処理等)を実行する。信号処理回路から出力される電気信号は、フレキシブル配線シートおよびコネクタを介して外部の電子機器に接続される。
【0040】
上述のように構成されたレンズユニット100およびカメラモジュールにあっては、鏡筒1の結像側(撮像素子7が配置される側)の端部の端面(凹部62の底面63)に遮光リング28がこの端面と光学フィルタ8とにより挟み込まれることにより固定されているので、金属製の鏡筒1の内面に黒染め処理等の反射防止処理を施さなくても、ゴーストやフレアを抑制するための反射防止を図ることができる。このため、鏡筒1の内径の加工精度を高めることができるので、レンズの光軸OAと直交する偏心精度を高めることができる。したがって、レンズの光軸OAの偏心精度を高めることができる。また、金属製の鏡筒の内面に黒染め処理等の反射防止処理を施さなくて良いので、製造コストを低減することができる。
【0041】
また、鏡筒1の内周面だけでなく、鏡筒1の結像側(撮像素子7が配置される側)の端面にも黒染め処理(表面処理)が施されてないので、製造コストをより低減することができる。
また、光学フィルタ8が鏡筒1に接着剤72により固定されているので、鏡筒1の凹部62の底面63に遮光リング28を配置し、光学フィルタ8を鏡筒1の凹部62に接着剤72により固定することにより、遮光リング28を固定することができるため、遮光リング28の取り付け作業を効率的に行うことができる。
【0042】
なお、上述の実施の形態においては、複数のレンズ2,3,4,5,6がすべてガラスレンズにしたが、複数のレンズ2,3,4,5,6の一部または全部を樹脂製等の他の材料のレンズにしてもよい。
また、上述の実施の形態においては、遮光リング22,23,24,28およびスペーサ25,26,27をすべて金属製にしたが、これらの一部または全部を樹脂製等の他の材料のものにしても良い。
また、上述の実施の形態においては、ホルダー200を金属製としたが、樹脂製等の他の材料ものにしても良い。
また、上述の実施の形態においては、光学フィルタ8を金属製にしたが、樹脂製等の他の材料のものにしても良い。この場合、レンズの光軸OAの偏心精度は低下する虞があるが、金属製の鏡筒1の内面に黒染め処理等の反射防止処理を施さなくても、ゴーストやフレアを抑制するための反射防止を図ることができる。
また、上述の実施の形態においては、鏡筒1に光学フィルタ8を接着剤72により固定するようにしたが、他の方法により固定するようにしてもよい。
【0043】
また、上述の実施の形態においては、鏡筒1の結像側の端部の端面63に遮光リング28をこの端面63と光学フィルタ8とにより挟み込むことにより固定するようにしたが、鏡筒の端面63あるいは光学フィルタ8に接着剤により固定するようにしてもよいし、さらには他の方法により固定してもよい。
【0044】
また、上述の実施の形態においては、光学フィルタ8と遮光リング28とを鏡筒1の外側の結像側に固定するようにしているが、鏡筒1内において、最も結像側に位置するレンズ6よりも結像側に遮光リング28を設けるようにしてもよい。例えば、鏡筒1の結像側の支持部37とレンズ6との間に光学フィルタ8および遮光リング28を設けるようにしてもよい。この場合、光学フィルタ8、遮光リング28およびレンズ6を結像側からこの順に嵌入できる鏡筒1を用いるのが好ましい。要は、最も結像側に位置するレンズ6よりも結像側に光学フィルタ8および遮光リング28を設置するようにしてもよい。さらには、光学フィルタ8を用いないで、最も結像側に位置するレンズ6よりも結像側に遮光リング28を設置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 鏡筒
2,3,4,5,6 レンズ
8 光学フィルタ
28 遮光リング
63 凹部の底面(端面)
72 接着剤
100 レンズユニット
図1
図2