特許第6530217号(P6530217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本碍子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6530217-ハニカム構造体 図000006
  • 特許6530217-ハニカム構造体 図000007
  • 特許6530217-ハニカム構造体 図000008
  • 特許6530217-ハニカム構造体 図000009
  • 特許6530217-ハニカム構造体 図000010
  • 特許6530217-ハニカム構造体 図000011
  • 特許6530217-ハニカム構造体 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6530217
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/022 20060101AFI20190531BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20190531BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
   F01N3/022 B
   B01D39/20 D
   B01D46/00 302
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-66895(P2015-66895)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-186264(P2016-186264A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2017年11月15日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】山本 博隆
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−228627(JP,A)
【文献】 特開2011−056464(JP,A)
【文献】 特開2013−202546(JP,A)
【文献】 特開2009−257321(JP,A)
【文献】 特開2009−262129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38
B01D 39/20,46/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端面である流入端面から他方の端面である流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造部と、所定の前記セルの前記流入端面側の端部に配設された流入側目封止部と、残余の前記セルの前記流出端面側の端部に配設された流出側目封止部と、を備えるハニカム構造体であり
前記ハニカム構造部には、側面に開口を有する穴部が1〜7個形成され、
前記穴部の前記開口の開口径が、3〜50mmであり、
前記ハニカム構造部の前記端面における最大長さの半分の値に対する、前記穴部の深さの合計の値が、1〜14であり、
前記ハニカム構造部の前記側面に、全ての前記穴部の前記開口の全部を覆うように配設され、前記ハニカム構造体と同材質である外周壁を更に備えているハニカム構造体。
【請求項2】
前記穴部が2個以上形成され、全ての前記穴部は、最も近い前記穴部同士の距離が、10mm以上である請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
全ての前記穴部が、前記ハニカム構造部の前記端面における最大長さの半分の長さより深い請求項1または2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記穴部が2個以上形成され、
前記ハニカム構造部の中心軸に直交し且つ前記ハニカム構造部の前記流入端面と向かい合う平面を端面側投影面とし、前記ハニカム構造部の前記中心軸方向から前記端面側投影面に前記ハニカム構造部の前記穴部を投影することを想定したとき、
前記端面側投影面に投影される全ての前記穴部は、一の前記穴部の中心軸と他の前記穴部の中心軸とのなす角が45°であるか、或いは、前記端面側投影面に投影される全ての前記穴部は、一の前記穴部の中心軸と他の前記穴部の中心軸とのなす角が90°である請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記穴部が2個以上形成され、
前記ハニカム構造部の中心軸に直交し且つ前記ハニカム構造部の前記流入端面と向かい合う平面を端面側投影面とし、前記ハニカム構造部の前記中心軸方向から前記端面側投影面に前記ハニカム構造部の前記穴部を投影することを想定したとき、
前記端面側投影面に投影される全ての前記穴部は、中心軸が互いに平行である請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記穴部が2個以上形成され、前記ハニカム構造部が円柱状であり、
前記ハニカム構造部の前記流出端面において、前記隔壁の厚さ方向に直交する方向をX軸とし、前記X軸に直交する方向をY軸とするとともに、前記ハニカム構造部の中心軸をZ軸とする座標軸を想定し、前記ハニカム構造部の前記中心軸方向の長さをLとし、前記ハニカム構造部の前記流出端面における半径をRとし、更に、前記Y軸に直交する平面を側面側投影面とし、前記Y軸の方向から前記側面側投影面に前記ハニカム構造部の前記穴部の前記開口を投影することを想定したとき、
前記側面側投影面に投影される全ての前記穴部の前記開口の中心は、Z軸方向においてはL/2〜3L/4の間に形成され、X軸方向においては−3R/4〜+3R/4の間に形成される請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記穴部の前記開口が塞がれている請求項1〜6のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記穴部の前記開口が閉塞材で塞がれており、
前記ハニカム構造部の側面及び前記穴部の前記開口を塞ぐ前記閉塞材の表面を覆うように配設された外周壁を備える請求項1〜7のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、長時間の使用でも圧力損失の急上昇が発生し難く、捕集効率が良好であり、十分なアイソスタティック強度が確保されたハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンは、燃焼による微粒子物質(以下、「PM」ということがある)を発生し、この微粒子物質には、発がん性が認められている。そのため、微粒子物質の大気に放出されてしまうことを防止することが必須である。そこで、現在では、従来の重量による微粒子排出量規制に加え微粒子個数を規制する厳しい規制が課せられている。
【0003】
ここで、燃焼の改善による微粒子物質の排出低減には限界があり、排気にフィルタを設置することが現在唯一の有効な手段となっている。このフィルタとしては、多孔質の隔壁をガスが通過するように設計したウォールフロー型のフィルタが有効である。具体的には、ウォールフロー型のフィルタとしては、流体の流路となるセルを流入端面側と流出端面側とで交互に目封止し、隔壁に排ガスが流れるようにしたハニカム構造体が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−254034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のフィルタ(ハニカム構造体)は、長時間使用することにより、粒子状物質がフィルタ内に堆積する。そして、このフィルタは、堆積した粒子状物質によってフィルタが目詰まりを生じ、フィルタの圧力損失が急上昇する現象が生じてしまうことがある(図7参照)。そのため、圧力損失の上昇を極力抑える必要がある用途には上記フィルタを使用し難い状況であった。つまり、上記フィルタの用途に制限があった。
【0006】
そこで、長時間の使用でも圧力損失の急上昇が発生し難く、捕集効率が良好であり、十分なアイソスタティック強度が確保されたフィルタ(ハニカム構造体)の開発が求められていた。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明の課題とするところは、長時間の使用でも圧力損失の急上昇が発生し難く、捕集効率が良好であり、十分なアイソスタティック強度が確保されたハニカム構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下に示す、ハニカム構造体が提供される。
【0009】
[1] 一方の端面である流入端面から他方の端面である流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造部と、所定の前記セルの前記流入端面側の端部に配設された流入側目封止部と、残余の前記セルの前記流出端面側の端部に配設された流出側目封止部と、を備えるハニカム構造体であり、前記ハニカム構造部には、側面に開口を有する穴部が1〜7個形成され、前記穴部の前記開口の開口径が、3〜50mmであり、前記ハニカム構造部の前記端面における最大長さの半分の値に対する、前記穴部の深さの合計の値が、1〜14であり、前記ハニカム構造部の前記側面に、全ての前記穴部の前記開口の全部を覆うように配設され、前記ハニカム構造体と同材質である外周壁を更に備えているハニカム構造体。
【0010】
[2] 前記穴部が2個以上形成され、全ての前記穴部は、最も近い前記穴部同士の距離が、10〜50mmである前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0011】
[3] 全ての前記穴部が、前記ハニカム構造部の前記端面における最大長さの半分の長さより深い前記[1]または[2]に記載のハニカム構造体。
【0012】
[4] 前記穴部が2個以上形成され、前記ハニカム構造部の中心軸に直交し且つ前記ハニカム構造部の前記流入端面と向かい合う平面を端面側投影面とし、前記ハニカム構造部の前記中心軸方向から前記端面側投影面に前記ハニカム構造部の前記穴部を投影することを想定したとき、前記端面側投影面に投影される全ての前記穴部は、一の前記穴部の中心軸と他の前記穴部の中心軸とのなす角が45°であるか、或いは、前記端面側投影面に投影される全ての前記穴部は、一の前記穴部の中心軸と他の前記穴部の中心軸とのなす角が90°である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0013】
[5] 前記穴部が2個以上形成され、前記ハニカム構造部の中心軸に直交し且つ前記ハニカム構造部の前記流入端面と向かい合う平面を端面側投影面とし、前記ハニカム構造部の前記中心軸方向から前記端面側投影面に前記ハニカム構造部の前記穴部を投影することを想定したとき、前記端面側投影面に投影される全ての前記穴部は、中心軸が互いに平行である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0014】
[6] 前記穴部が2個以上形成され、前記ハニカム構造部が円柱状であり、前記ハニカム構造部の前記流出端面において、前記隔壁の厚さ方向に直交する方向をX軸とし、前記X軸に直交する方向をY軸とするとともに、前記ハニカム構造部の中心軸をZ軸とする座標軸を想定し、前記ハニカム構造部の前記中心軸方向の長さをLとし、前記ハニカム構造部の前記流出端面における半径をRとし、更に、前記Y軸に直交する平面を側面側投影面とし、前記Y軸の方向から前記側面側投影面に前記ハニカム構造部の前記穴部の前記開口を投影することを想定したとき、前記側面側投影面に投影される全ての前記穴部の前記開口の中心は、Z軸方向においてはL/2〜3L/4の間に形成され、X軸方向においては−3R/4〜+3R/4の間に形成される前記[1]〜[5]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0015】
[7] 前記穴部の前記開口が塞がれている前記[1]〜[6]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0016】
[8] 前記穴部の前記開口が閉塞材で塞がれており、前記ハニカム構造部の側面及び前記穴部の前記開口を塞ぐ前記閉塞材の表面を覆うように配設された外周壁を備える前記[1]〜[7]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0017】
本発明のハニカム構造体は、ハニカム構造部の側面に開口する穴部が形成されている。そのため、本発明のハニカム構造体は、長時間の使用でも圧力損失の急上昇が発生し難く、捕集効率が良好であり、十分なアイソスタティック強度が確保されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明のハニカム構造体の一の実施形態におけるセルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。
図3】本発明のハニカム構造体の他の実施形態におけるハニカム構造体と端面側投影面とを模式的に示す平面図である。
図4】実施例1のハニカム構造体に形成された穴部の開口の位置を説明するための模式図である。
図5】実施例8のハニカム構造体に形成された穴部の開口の位置を説明するための模式図である。
図6】本発明のハニカム構造体における使用時間と圧力損失の関係を示すグラフである。
図7】従来のハニカム構造体における使用時間と圧力損失の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0020】
[1]ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の一実施形態は、図1図2に示すハニカム構造体100である。ハニカム構造体100は、多孔質の隔壁1を有するハニカム構造部10と、流入側目封止部3と、流出側目封止部4と、を備えている。ハニカム構造部10は、一方の端面である流入端面11から他方の端面である流出端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を区画形成する隔壁1を有している。また、流入側目封止部3は、所定のセル2の流入端面11側の端部に配設されたものである。また、流出側目封止部4は、残余のセル2の流出端面12側の端部に配設されたものである。ハニカム構造部10には、側面5に開口30aを有する穴部30が1〜7個形成されている。穴部30の開口30aの開口径Dは、3〜50mmである。ハニカム構造体100は、ハニカム構造部10の端面における最大長さの半分の値に対する、穴部30の深さの合計の値が、1〜14である。そして、ハニカム構造体100は、ハニカム構造部10の側面に、全ての穴部30の開口30aの全部を覆うように配設され、ハニカム構造体と同材質である外周壁20を更に備えている。
【0021】
このようなハニカム構造体100は、上記構成を採用することにより、長時間の使用により粒子状物質が堆積することに起因して生じる目詰まりが防止され、圧力損失の急上昇が発生し難いものである。即ち、従来のウォールフロー型のフィルタは、図7に示すように、長時間(所定の時間T)、排ガス中のPMを除去すると、このフィルタのセル2がPMによって閉塞されてしまい、圧力損失が急上昇してしまう。このように圧力損失が急上昇してしまうことを防止するため、定期的にPMを燃やすことでPMを除去し、フィルタを再生している。しかし、フィルタの再生の回数が増えると、エンジンの燃費が悪くなる。また、再生を行わないでフィルタ内のPMを除去することは手間が掛かる。一方、ハニカム構造体100によれば、長時間使用した場合(つまり、所定の時間Tを経過した場合)でも、圧力損失の急上昇が防止される(図6参照)。また、ハニカム構造体100は、ウォールフロー型のフィルタであるため、PMの捕集効率が良好である。また、通常、ハニカム構造体の内部に穴部30のような空間が形成されると、アイソスタティック強度が低下することも想定される。しかし、ハニカム構造体100は、十分なアイソスタティック強度が確保されている。このように、ハニカム構造体100は、圧力損失の急上昇を長期間防止することができ、良好な捕集効率が得られ、更に、アイソスタティック強度を十分に確保できるという効果を奏するものである。
【0022】
図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態におけるセルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【0023】
[1−1]ハニカム構造部:
ハニカム構造部10は、その側面5に開口30aを有する穴部30が形成されている。この穴部が形成されることにより、流入端面から流入した排ガスの一部は、隔壁を通過しないで排出される。即ち、流入セル2a(図2参照)に流入した排ガスの中には、穴部30に流入するものがある。そして、この穴部30に流入した排ガスは、穴部30に連なる流出セル2b(図2参照)からそのまま排出されることがある。このように、ハニカム構造体100には、排ガスの一部が、隔壁を通過することなくそのまま排出される経路がある。そのため、長期間、PMを捕集し続けることで隔壁が目詰まりを生じさせる状態となった場合であっても、上記経路があることにより、圧力損失が急上昇することを防止することができる。また、上記経路があることにより、隔壁が目詰まりを生じさせる状態となるまでに時間がかかり、仮に圧力損失の急上昇が発生するとしても、その発生時期を大幅に遅くすることができる。
【0024】
穴部の開口の形状は、円形、楕円形、三角形や四角形などの多角形などとすることができる。これらの中でも、穴部の開口の形状は、穴部を形成し易いという観点から、円形であることが好ましい。
【0025】
ここで、本明細書において、穴部は、スリット(溝)を含まない概念である。具体的には、穴部は、長径と、この長径に直交するもの(短径)との比(長径/短径)の値が、1〜2となるものであることが好ましい。なお、長径は、穴部の開口の外縁上の異なる2点を結ぶ線分のうち最も長いものである。
【0026】
穴部の開口の開口径は、3〜50mmであり、10〜40mmであることが好ましく、20〜30mmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、圧力損失の急上昇を長期間防止することができ、良好な捕集効率が得られ、更に、アイソスタティック強度を十分に確保できる。穴部の開口の開口径が下限値未満であると、圧力損失の急上昇を長期間防止することができない。また、従来のハニカム構造体(穴部が形成されていないもの)と同様に、圧力損失の急上昇を長時間防止することができない。上限値超であると、穴部から流出するPMの流出量が増加するため、PMの捕集効率が十分でなくなる。なお、「開口の開口径」とは、開口の外縁上の異なる2点を結ぶ線分のうち最も長いものの長さをいう。
【0027】
本発明のハニカム構造体は、ハニカム構造部の端面における最大長さの半分の値に対する、穴部の深さの合計の値(深さ/長さの比)は、1〜14であり、3〜12であることが好ましく、5〜10であることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、圧力損失の急上昇を長期間防止することができ、良好な捕集効率が得られ、更に、アイソスタティック強度を十分に確保できる。上記深さ/長さの比が下限値未満であると、圧力損失の急上昇を長期間防止することができない。上限値超であると、穴部から流出するPMの流出量が増加するため、PMの捕集効率が十分でなくなる。なお、「穴部の深さ」は、穴部の最も深い部分の深さのことをいう。
【0028】
穴部の数は、1〜7個であり、2〜6個であることが好ましく、3〜5個であることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、圧力損失の急上昇を長期間防止することができ、良好な捕集効率が得られ、更に、アイソスタティック強度を十分に確保できる。穴部が0個であると(即ち、穴部が形成されていないと)、圧力損失の急上昇を長期間防止することができない。穴部の数が7個超であると、PMの捕集効率が十分でなくなる。
【0029】
全ての穴部は、ハニカム構造部の端面における最大長さの半分より深いことが好ましい。このようにすることで、穴部を通過するPMが増加してPMの堆積を抑制することができる。そのため、圧力損失の急上昇を更に長期間防止することができる。ハニカム構造部の端面における最大長さの半分より浅い穴部があると、圧力損失の急上昇を長期間防止することができないおそれがある。
【0030】
穴部が2個以上形成される場合、全ての穴部は、最も近い穴部同士の距離が、10mm以上であることが好ましく、15mm以上であることが好ましく、20mm以上であることが更に好ましい。なお、上限値は、50mmとすることが好ましい。上記距離をこのような範囲とすることにより、ハニカム構造体のアイソスタティック強度を良好に確保することができる。上記距離が上記範囲外であると、ハニカム構造体のアイソスタティック強度を十分に確保できないおそれがある。「最も近い穴部同士の距離」とは、2個以上形成された穴部のそれぞれにおいて、最も近くに形成された穴部(近接穴部)を決定したとき、この近接穴部との最短の距離のことをいう。
【0031】
穴部が2個以上形成される場合、以下の条件(i)または(ii)を満たすことが好ましい。即ち、まず、図3に示すように、ハニカム構造部10の中心軸Oに直交し且つハニカム構造部10の流入端面11と向かい合う平面を端面側投影面41とする。そして、ハニカム構造部10の中心軸O方向から端面側投影面41にハニカム構造部10の穴部30を投影することを想定する。このとき、条件(i):端面側投影面41に投影される全ての穴部30は、一の穴部30の中心軸と他の穴部30の中心軸とのなす角が45°である。または、条件(ii):端面側投影面41に投影される全ての穴部30は、一の穴部30の中心軸と他の穴部30の中心軸とのなす角が90°である。図3は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態におけるハニカム構造体と端面側投影面とを模式的に示す平面図である。
【0032】
このような条件を満たすことで、穴部に排ガスを均一に取り込むことができ、穴部内におけるPMの堆積が均一になる。そのため、圧力損失の急上昇を長時間防止することができる。
【0033】
なお、条件(i)または(ii)を満たす穴部同士(一の穴部と他の穴部)は、隣り合っていなくてもよい。即ち、端面側投影面に投影された際に、各穴部の中心軸同士が上記角度を満たせばよく、ハニカム構造体のセルの延びる方向の位置関係については特に制限はない。
【0034】
条件(i)または(ii)を満たす穴部同士(一の穴部と他の穴部)は、一部の空間を共有するように互いに交差していてもよい。このように互いに交差していると、穴部に排ガスを均一に取り込むことができ、穴部内におけるPMの堆積が均一になる。そのため、圧力損失の急上昇を長時間防止することができる。
【0035】
条件(i)または(ii)を満たす穴部同士(一の穴部と他の穴部)は、空間を共有しないで交差していてもよい。つまり、条件(i)または(ii)を満たす穴部同士は、立体交差の関係にあってもよい。このように交差していると、空間を共有した場合の交差部が起因となる強度低下が改善されるため、アイソスタティック強度を確保することができる。
【0036】
また、穴部が2個以上形成される場合、以下の条件(a)を満たすことが好ましい。即ち、まず、ハニカム構造部の中心軸に直交し且つハニカム構造部の流入端面と向かい合う平面を端面側投影面とする。そして、ハニカム構造部の中心軸方向から端面側投影面にハニカム構造部の穴部を投影することを想定する。このとき、条件(a):端面側投影面に投影される全ての穴部は、中心軸が互いに平行である。
【0037】
このような条件を満たすことで、空間を共有した場合の交差部が起因となる強度低下が改善されるため、アイソスタティック強度を確保することができる。
【0038】
また、穴部が2個以上形成され、ハニカム構造部が円柱状である場合、以下の条件(α)を満たすことが好ましい。即ち、まず、図4図5に示すように、ハニカム構造部10の流出端面12において、隔壁の厚さ方向に直交する方向をX軸とし、このX軸に直交する方向をY軸とする。更に、ハニカム構造部10の中心軸OをZ軸とする。このような座標軸を想定する。次に、ハニカム構造部10の中心軸O方向の長さをLとし、ハニカム構造部10の流出端面12における半径をRとする。更に、Y軸に直交する平面を側面側投影面とし、Y軸の方向から側面側投影面にハニカム構造部10の穴部30の開口30aを投影することを想定する。このとき、条件(α):側面側投影面に投影される全ての穴部30の開口30aの中心は、Z軸方向においてはL/4〜3L/4の間に形成され、X軸方向においては−3R/4〜+3R/4の間に形成される。
【0039】
このような条件を満たすことで、穴部に排ガスを均一に取り込むことができ、穴部内におけるPMの堆積が均一になる。そのため、圧力損失の急上昇を長時間防止することができる。
【0040】
図4は、実施例1のハニカム構造体に形成された穴部の開口の位置を説明するための模式図である。図5は、実施例8のハニカム構造体に形成された穴部の開口の位置を説明するための模式図である。
【0041】
なお、ハニカム構造部の形状は、円柱状に限らない。例えば、三角柱状、四角柱状などの多角柱状、楕円柱状などとすることができる。
【0042】
隔壁の厚さは、50.8〜508.0μmであることが好ましく、203.2〜381.0μmであることが更に好ましく、254.0〜304.8μmであることが特に好ましい。隔壁の厚さが下限値未満であると、捕集効率が低下するおそれがある。上限値超であると、圧力損失が増加するおそれがある。
【0043】
隔壁の気孔率は、40〜70%であることが好ましく、42〜65%であることが更に好ましく、48〜59%であることが特に好ましい。気孔率の下限値未満であると、圧力損失が増加するおそれがある。上限値超であると、ハニカム構造体の強度が低下するためキャニング時にハニカム構造体が破損するおそれがある。気孔率は、水銀ポロシメータによって測定した値である。
【0044】
隔壁の材料としては、セラミックが好ましく、強度及び耐熱性に優れることより、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、及び炭化珪素−コージェライト系複合材料からなる群から選択される少なくとも1種が更に好ましい。これらの中でも、コージェライトが特に好ましい。
【0045】
ハニカム構造体のセルの延びる方向の長さは、101.6〜228.6mmとすることができる。
【0046】
ハニカム構造体100は、ハニカム構造部10の側面5に外周壁20(図1参照)を更に備えていてもよい。外周壁20は、ハニカム構造部10の側面5及び穴部30の開口30aを覆うように配設されていることが好ましい。このように外周壁20を配設することで、外周壁20の表面は平滑であるため、把持材がハニカム構造体100と擦れてハニカム構造体が劣化することを防止できる。ここで、穴部の開口を塞ぐようにこの穴部に閉塞材を配設してもよい。そして、外周壁20は、この閉塞材の表面(露出した面)上に配設することができる。なお、閉塞材を用いずに穴部を塞いでもよい。即ち、穴部の開口の開口径が30mm以下である場合、閉塞材を用いることなく、外周壁20を配設することができる。
【0047】
外周壁20の厚さは、0.5〜4.0mmであることが好ましく、0.8〜3.0mmであることが更に好ましく、1.0〜2.0mmであることが特に好ましい。外周壁の厚さが下限値未満であると、捕集効率が低下するおそれがある。上限値超であると、ハニカム構造体100全体の体積を一定とする場合、外周壁の分だけハニカム構造体の断面積が減少してしまう。そのため圧力損失が増大するおそれがある。
【0048】
[1−2]目封止部:
本発明のハニカム構造体は、流入側目封止部と流出側目封止部とを備えている。これらの目封止部の材料は、上述した隔壁と同様のものとすることができる。
【0049】
また、流入側目封止部及び流出側目封止部の深さは、適宜決定することができる。
【0050】
[2]ハニカム構造体の製造方法:
本実施形態のハニカム構造体の製造方法について説明する。まず、ハニカム構造体を作製するための坏土を調整し、この坏土を成形して、ハニカム成形体を作製する(成形工程)。その後、得られたハニカム成形体(或いは、必要に応じて行われた乾燥後のハニカム乾燥体)に目封止を施して目封止部(流入側目封止部及び流出側目封止部)を形成する(目封止部形成工程)。その後、焼成してハニカム焼成体を作製する。その後、このハニカム焼成体の側面に穴を開けて穴部を形成する。このようにしてハニカム構造体を得ることができる(ハニカム構造体作製工程)。なお、焼成する前のハニカム成形体の側面に穴を開けて穴部とすることもできる。
【0051】
以下、各製造工程について更に詳細に説明する。
【0052】
[2−1]成形工程:
まず、成形工程においては、セラミック原料を含有するセラミック成形原料を成形して、流体の流路となる複数のセルを区画形成するハニカム成形体を形成する。
【0053】
セラミック成形原料に含有されるセラミック原料としては、コージェライト化原料、コージェライト、ムライト、アルミナ、チタニア、炭化珪素、及びチタン酸アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種を含むものであることが好ましい。なお、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料であって、焼成されてコージェライトになるものである。
【0054】
このセラミック成形原料は、上記セラミック原料に、分散媒、有機バインダ、無機バインダ、造孔材、界面活性剤等を混合して調製することが好ましい。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
【0055】
セラミック成形原料を成形する際には、まず成形原料を混練して坏土とし、得られた坏土をハニカム形状に成形することが好ましい。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はなく、押出成形、射出成形等の従来公知の成形方法を用いることができる。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。
【0056】
焼成する前のハニカム成形体に穴を形成する場合、ドリル等の掘削工具を用いて、ハニカム成形体に穴を形成することができる。このように、焼成する前のハニカム成形体の段階で穴部となる穴を形成することにより、穴部の形成時に生じるクラックを抑制することができる。
【0057】
ハニカム成形体の形状は、特に限定されず、円柱状、中心軸に直交する断面が楕円形、レーストラック形状、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形の柱状等を挙げることができる。
【0058】
得られたハニカム成形体を乾燥してもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができ、なかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。
【0059】
[2−2]目封止部形成工程:
次に、ハニカム成形体(乾燥工程を採用する場合には、ハニカム乾燥体)に、目封止部を形成する。具体的には、まず、ハニカム成形体の流入端面に、流入セル2a(図2参照)が覆われるようにマスクを施し、マスクの施された端部(流入端部)を目封止スラリーに浸漬して、マスクが施されていない流出セルの開口部に目封止スラリーを充填する。その後、ハニカム成形体の流出端面について、流出セル2b(図2参照)が覆われるようにマスクを施し、マスクの施された端部(流出端部)を目封止スラリーに浸漬して、マスクが施されていない流入セルの開口部に目封止スラリーを充填する。このようにして、目封止部が形成されたハニカム成形体を得ることができる。
【0060】
目封止スラリーは、従来公知のハニカム構造体の目封止部の材料として使用されるものを適宜選択して使用することができる。
【0061】
[2−3]ハニカム構造体作製工程:
次に、得られたハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を得る。その後、得られたハニカム焼成体の側面に穴を開けて穴部を形成して、ハニカム構造体を作製する。
【0062】
なお、ハニカム成形体を焼成(本焼成)する前には、そのハニカム成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものであり、その方法は、特に限定されるものではなく、中の有機物(有機バインダ、分散剤、造孔材等)を除去することができればよい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼の条件としては、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、3〜100時間程度加熱することが好ましい。
【0063】
ハニカム成形体の焼成(本焼成)は、適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1410〜1440℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、4〜6時間が好ましい。
【0064】
ハニカム焼成体の側面に穴を開ける手段としては、ドリル等の掘削工具などを採用することができる。このように、ハニカム焼成体の段階で穴部となる穴を開ける場合、焼成時にハニカム成形体が収縮することによる穴部の径の変化を考慮する手間が生じない。
【0065】
更に外周壁を配設する場合、上記焼成後に閉塞材を、穴部の開口を覆うようにハニカム焼成体の側面に塗布した後、外周コート材で側面を塗布し、乾燥させて外周壁を形成することが好ましい。閉塞材としては、ハニカム構造体と同材質の条件を満たすものを用いることができる。また、外周コート材は、従来公知のハニカム構造体の外周壁を形成するために用いられるものを適宜採用することができる。また、穴部の開口径(穴径)が30mm以下であれば閉塞材を用いずに、外周コート材のみで穴(穴部の開口)を覆うこともできる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
コージェライト化原料100質量部に、造孔材を13質量部、分散媒を35質量部、有機バインダを6質量部、分散剤を0.5質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。コージェライト化原料としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、及びシリカを使用した。分散媒としては水を使用し、有機バインダとしてはヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用し、分散剤としてはエチレングリコールを使用した。
【0068】
次に、所定の金型を用いて坏土を押出成形し、セルの断面形状が四角形で、全体形状が円柱状のハニカム成形体を得た。
【0069】
次に、ハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。
【0070】
乾燥後のハニカム成形体(ハニカム乾燥体)に、目封止部を形成した。具体的には、まず、ハニカム乾燥体の流入端面に、流入セル(所定のセル)が覆われるようにマスクを施し、マスクの施された端部(流入端部)を目封止スラリーに浸漬して、マスクが施されていない流出セルの開口部に目封止スラリーを充填した。その後、ハニカム乾燥体の流出端面について、流出セル(残余のセル)が覆われるようにマスクを施し、マスクの施された端部(流出端部)を目封止スラリーに浸漬して、マスクが施されていない流入セルの開口部に目封止スラリーを充填した。その後、目封止部を形成したハニカム成形体を熱風乾燥機で乾燥した。このようにして、目封止ハニカム乾燥体を得た。
【0071】
次に、目封止ハニカム乾燥体について、450℃で5時間加熱することにより脱脂を行い、更に、1425℃で7時間加熱することにより焼成を行い、ハニカム焼成体を得た。
【0072】
次に、得られたハニカム焼成体の側面から、ドリルを用いて、5個の穴部を形成した。
【0073】
ハニカム構造部(ハニカム焼成体)の流出端面において、隔壁の厚さ方向に直交する方向をX軸とし、このX軸に直交する方向をY軸とする。更に、ハニカム構造部の中心軸をZ軸とする座標軸を想定する。そして、ハニカム構造部の中心軸方向の長さをLとし、ハニカム構造部の流出端面における半径をRとする。そして、Y軸に直交する平面を側面側投影面とする。更に、Y軸方向から上記側面側投影面にハニカム構造部の穴部の開口を投影することを想定する。このとき、側面側投影面に投影される全ての穴部の開口は、Z軸方向にはL/2の位置であった。また、X軸方向には、−2R/3、−R/3、0、+R/3、+2R/3の位置であった(図4参照)。なお、これらの位置は、穴部の開口の中心の位置である。
【0074】
そして、ハニカム構造部の中心軸に直交し且つハニカム構造部の流入端面と向かい合う平面を端面側投影面とする。また、ハニカム構造部の中心軸方向から上記端面側投影面にハニカム構造部の穴部を投影することを想定する。このとき、端面側投影面に投影される全ての穴部は、中心軸が互いに平行となるように形成されていた。
【0075】
また、全ての穴部は、ハニカム構造部を貫通する貫通孔であった。
【0076】
更に、全ての穴部における開口の直径は、20mmであった。そして、ハニカム構造部の端面における長さの半分の値に対する、穴部の深さの合計の値は、8.75mmであった。全ての穴部は、最も近い穴部同士の距離が10mm以上であった(表1参照)。
【0077】
なお、全ての穴部の開口には、閉塞材を充填して、穴部を閉塞させた。なお、閉塞材にはコージェライト粒子、セラミックファイバー、及びコロイド状酸化物を含むスラリーを用い、穴部の開口に閉塞材を充填した後、200℃で2時間乾燥させた。閉塞材の深さは、1.0mmであった。
【0078】
次に、ハニカム構造部の外周部を研削して、その後、ハニカム構造部の側面及び閉塞材の表面上に、外周コート材を塗布し、乾燥させて外周壁を形成して、ハニカム構造体を得た。外周コート材には、コージェライト化原料、水、アルコール、及び有機バインダを含むスラリーを用いた。
【0079】
このハニカム構造体は、端面の直径が143.8mm、セルの延びる方向における長さが152.4mmであった。また、隔壁の厚さが、304.8μmであった。また、セル密度が、47個/cmであった。
【0080】
得られたハニカム構造体について、以下に示す方法で、「圧力損失の急上昇」、「捕集効率」、及び「アイソスタティック強度比」の評価を行った。結果を表2に示す。
【0081】
[圧力損失の急上昇]
ハニカム構造体の圧力損失の急上昇について、以下のようにして評価を行った。まず、ディーゼルエンジン(3.0リットル、直噴コモンレール、直列6気筒)から排出される排ガスをハニカム構造体に流入させて、試験を開始する。即ち、200℃の上記排ガスを、3.0Nm/分の流量でハニカム構造体に流入させて、ハニカム構造体の流入端面側と流出端面側との圧力を測定した。そして、これらの圧力差を算出することにより、圧力損失(kPa)を求めた。
【0082】
上記の評価により、試験開始後の圧力損失が初期の圧力損失の20倍以上となる時間が、40時間以上となる場合を「A」とした。試験開始後の圧力損失が初期の圧力損失の20倍以上となる時間が、30時間以上40時間未満となる場合を「B」とした。試験開始後の圧力損失が初期の圧力損失の20倍以上となる時間が、20時間以上30時間未満となる場合を「C」とした。試験開始後の圧力損失が初期の圧力損失の20倍以上となる時間が、20時間未満となる場合を「D」とした。結果を表2に示す。なお、上記「初期の圧力損失」とは、試験開始直後から30秒間に測定される圧力損失の値の平均値である。
【0083】
[捕集効率]
ハニカム構造体の捕集効率を以下のように算出した。まず、軽油を燃料とするバーナーを用いて煤を発生させる。ガス全体の流量が1.5Nm/分となるように、燃焼ガスに所定量の空気を混合し、得られた混合ガスをハニカム構造体に導入して試験を開始する。混合ガスの温度は、200℃とし、混合ガス中の粒子状物質の濃度が4g/時間となるようにする。試験開始から120秒後にサンプリングを実施した。捕集効率は、以下の方法で算出した。
【0084】
ハニカム構造体の流出側に設けたサンプリング用の配管から、真空ポンプにより排ガスを60秒間サンプリングする。そして、排ガスをサンプリングする際に、排ガスを、ろ紙をセットしたホルダーに通す。これにより、PMをろ紙に捕集する。なお、予め、ろ紙の質量を測定しておく。ハニカム構造体の上流側からサンプリングした排ガス中のPMの質量(ろ紙に捕集されたPMの質量)と、ハニカム構造体の下流側からサンプリングした排ガス中のPMの質量(ろ紙に捕集されたPMの質量)とから、捕集効率(%)を算出する。具体的には、下記式(1)により、捕集効率(%)を求める。なお、捕集効率が50%以上である場合には、ハニカム構造体を、排ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタとして良好に用いることができる。
【0085】
捕集効率(%)={(PM質量A−PM質量B)/PM質量A}×100・・・(1)
(ただし、上記式(1)において、「PM質量A」は、ハニカム構造体の上流側(流入端面側)においてろ紙に捕集されたPMの質量(g)を示す。「PM質量B」は、ハニカム構造体の下流側(流出端面側)においてろ紙に捕集されたPMの質量(g)を示す。)
【0086】
この上記式(1)により算出される捕集効率が、70%以上である場合を「A」とし、60%以上70%未満である場合を「B」とし、50%以上60%未満である場合を「C」とし、50%未満である場合を「D」とした。結果を表2に示す。
【0087】
[アイソスタティック強度比]
アイソスタティック強度の測定は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格(JASO規格)のM505−87で規定されているアイソスタティック破壊強度試験に基づいて行った。アイソスタティック破壊強度試験は、ゴムの筒状容器に、ハニカム構造体を入れてアルミ製板で蓋をし、水中で等方加圧圧縮を行う試験である。即ち、アイソスタティック破壊強度試験は、缶体に、ハニカム構造体が外周面把持される場合の圧縮負荷加重を模擬した試験である。このアイソスタティック破壊強度試験によって測定されるアイソスタティック強度は、ハニカム構造体が破壊したときの加圧圧力値(MPa)で示される。そして、穴部が形成されていない比較例18のハニカム構造体のアイソスタティック強度を基準として、アイソスタティック強度比を算出した。なお、穴部を封止していないハニカム構造体の強度を測定する場合、穴部にゴム栓を挿入した。穴部に挿入したゴム栓は、穴部の開口と同じ形で同じ径を有するものを用いた。また、ゴム栓は、その硬さが、90であるものを用いた。なお、ゴム栓の硬さは、日本工業規格(JIS)K6253に準拠して測定されるデュロメータA硬さである。
【0088】
アイソスタティック強度比は、0.98以上であった場合を「A」とし、0.95以上0.98未満であった場合を「B」とし、0.90%以上0.95未満である場合を「C」とし、0.9未満であった場合を「D」とした。結果を表2に示す。
【0089】
表1中、「穴部の開口の開口径」は、各穴部の開口の開口径を示す。即ち、例えば、実施例1において、「20mm」と記すのは、5個の穴部の全ての開口の開口径が20mmであることを示す。表2中、「交差角度」は、端面側投影面において穴部の中心軸が互いになす角を示す。「穴部の封止」は、穴部の開口を塞いだか否かを示す。即ち、穴部の開口を塞いだ場合を「封止する」と示し、穴部の開口を塞がない場合を「封止しない」と示す。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
(実施例2〜19,21、参考例20、比較例1〜19)
表1〜表4に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、「圧力損失の急上昇」、「捕集効率」、及び「アイソスタティック強度比」の評価を行った。結果を表2,4に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
表1〜表4から、実施例1〜19,21及び参考例20のハニカム構造体は、比較例1〜19のハニカム構造体に比べて、長時間の使用でも圧力損失の急上昇が発生し難く、捕集効率が良好であり、十分なアイソスタティック強度が確保されていることが分かる。

【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明のハニカム構造体は、自動車等から排出される排ガスを浄化するフィルタとして採用することができる。
【符号の説明】
【0097】
1:隔壁、2:セル、2a:流入セル、2b:流出セル、3:流入側目封止部、4:流出側目封止部、5:側面、10:ハニカム構造部、11:流入端面、12:流出端面、20:外周壁、30:穴部、30a:開口、41:端面側投影面、100:ハニカム構造体、D:開口径、O:中心軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7