特許第6530265号(P6530265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6530265
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】車両搭載型クレーン用アウトリガ装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/78 20060101AFI20190531BHJP
   B66C 23/44 20060101ALI20190531BHJP
   B60S 9/12 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
   B66C23/78 C
   B66C23/44 A
   B60S9/12
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-139128(P2015-139128)
(22)【出願日】2015年7月10日
(65)【公開番号】特開2017-19633(P2017-19633A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】506002823
【氏名又は名称】古河ユニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(72)【発明者】
【氏名】王 微鳥
(72)【発明者】
【氏名】石田 大成
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−220860(JP,A)
【文献】 特開2013−071495(JP,A)
【文献】 特開2002−274783(JP,A)
【文献】 実開平07−023782(JP,U)
【文献】 特開2003−146079(JP,A)
【文献】 特開2018−090422(JP,A)
【文献】 実開平2−103084(JP,U)
【文献】 特開2017−105616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/00 − 23/94
B60S 9/00 − 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックのシャシフレーム上に架装搭載される車両搭載型クレーンに装備されるアウトリガ装置であって、
前記シャシフレーム上に横架して取り付けられる中空のベースと、該ベース内に嵌装されるとともに作業時にはベースから側方に張り出される横アウトリガと、該横アウトリガの側端に突設された軸受および該軸受に同軸に外嵌する中空円筒状のボスを有する手動で回転可能な回転機構と、該回転機構の前記ボスに基端部が連結されて前記軸受まわりに接地部が上方を向く格納姿勢と接地部が下方を向く接地姿勢とに位置する縦アウトリガと、前記格納姿勢と前記接地姿勢とにおける姿勢保持力を付与するとともに相互の姿勢に手動で回転させる作業を外部からのエネルギー供給による動力源を用いずに弾性エネルギーを蓄積した蓄勢力により補助する補助機構とを備えることを特徴とする車両搭載型クレーン用アウトリガ装置。
【請求項2】
前記補助機構は、封入ガスの反力を発生させるガススプリングと、二つのリンクとを有し、
前記ガススプリングは、当該ガススプリングの基端部が前記縦アウトリガの接地部側に枢支されるとともに、当該ガススプリングの先端部が、前記縦アウトリガの回転機構側で前記二つのリンクの連結部に枢支され、
前記二つのリンクは、前記縦アウトリガが回転するときに前記回転機構の周囲を回り込むように、第一のリンクの基端部が、前記縦アウトリガの基端部に枢支されるとともに、第二のリンクの基端部が、前記横アウトリガの側端であって前記回転機構よりも下方の位置に枢支されている請求項1に記載の車両搭載型クレーン用アウトリガ装置。
【請求項3】
前記回転機構は、前記ボスと前記軸受との相対回転を拘束する拘束機構を備え、
前記拘束機構は、前記縦アウトリガの前記格納姿勢および前記接地姿勢のときに、前記ボスと前記軸受との軸心を通るとともに前記軸心に沿った方向と直交し且つ水平に貫通形成された嵌挿孔と、該嵌挿孔に嵌挿される拘束ピンとを有する請求項1または2に記載の車両搭載型クレーン用アウトリガ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦アウトリガを手動で回転させるアウトリガ装置に係り、特に、トラックのシャシフレーム上に架装搭載される車両搭載型クレーン用アウトリガ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、縦アウトリガの接地部が上方を向く格納姿勢と下方を向く接地姿勢とに、縦アウトリガを手動で回転させるアウトリガ装置(以下、「手動式の回転型アウトリガ装置」ともいう)が開示されている。
同文献に開示されるアウトリガ装置は、アウトリガ格納時には、格納姿勢において、縦アウトリガの最低地上高さがシャシフレーム上面よりも高くなるので、燃料タンク等の補機類と縦アウトリガとの干渉が生じることがない。そのため、トラックにクレーンを架装搭載するときに、燃料タンク等の補機類の移設が不要であり容易に架装搭載できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−274783号公報
【特許文献2】特開2013−71495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のアウトリガ装置は、主に小型トラックのシャシフレーム上に架装搭載される車両搭載型クレーン用のアウトリガ装置として用いられる場合であれば、縦アウトリガ単体は、通常、小型軽量であり、格納時の回転操作も手動で行うことに問題はない。
しかしながら、この種のアウトリガ装置を大型トラックに架装搭載する車両搭載型クレーン用のアウトリガ装置として使用する場合は、車両質量に比例してアウトリガ装置自体も大型化する。そのため、縦アウトリガを手動で回転させることが困難となる。
【0005】
即ち、大型トラックが最大積載量の荷物を積んだ場合、車両全体の質量は25tほどになるため、それに見合った縦アウトリガに装備される油圧シリンダ一本当たりの大きさや質量、およびトラックのシャシフレームの高さを考慮すると、縦アウトリガを手動で回転させることは難しい。なお、格納の際に必要とする人の力は、およそ200(N)(約20(kgf))以下が理想である。
【0006】
ここで、例えば特許文献2の第2実施形態に開示されるように、縦アウトリガの回転駆動用に、油圧シリンダを別途に設ければ、大型トラックへの対応も可能となるものの、縦アウトリガの回転駆動用の油圧シリンダを追加すれば、回転駆動用の油圧シリンダおよびその油圧回路の増ラインを含めた装備を要するため、コストが大幅に上昇するという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、アウトリガ装置自体を大型化する場合や、大型トラックに架装搭載する場合であっても、油圧シリンダによる動力を用いることなく、格納姿勢と接地姿勢とのそれぞれに縦アウトリガを人力で位置させ得る車両搭載型クレーン用アウトリガ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る車両搭載型クレーン用アウトリガ装置は、トラックのシャシフレーム上に架装搭載される車両搭載型クレーンに装備されるアウトリガ装置であって、前記シャシフレーム上に横架して取り付けられる中空のベースと、該ベース内に嵌装されるとともに作業時にはベースから側方に張り出される横アウトリガと、該横アウトリガの側端に突設された軸受および該軸受に同軸に外嵌する中空円筒状のボスを有する手動で回転可能な回転機構と、該回転機構の前記ボスに基端部が連結されて前記軸受まわりに接地部が上方を向く格納姿勢と接地部が下方を向く接地姿勢とに位置する縦アウトリガと、前記格納姿勢と前記接地姿勢とにおける姿勢保持力を付与するとともに相互の姿勢に手動で回転させる作業を外部からのエネルギー供給による動力源を用いずに弾性エネルギーを蓄積した蓄勢力により補助する補助機構とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る車両搭載型クレーン用アウトリガ装置によれば、外部からのエネルギー供給による動力源を用いずに弾性エネルギーを蓄積した蓄勢力により、手動で回転させる作業を補助する補助機構を備え、この補助機構は、縦アウトリガの格納姿勢と接地姿勢とにおける姿勢保持力を付与するとともに相互の姿勢に手動で回転させる作業を蓄勢力で補助するので、アウトリガ装置自体を大型化する場合や、大型トラックに架装搭載する場合であっても、油圧シリンダによる動力を用いることなく、格納姿勢と接地姿勢とのそれぞれに縦アウトリガを人力で位置させることができる。
【0010】
ここで、本発明の一態様に係る車両搭載型クレーン用アウトリガ装置において、前記補助機構は、封入ガスの反力を発生させるガススプリングと、二つのリンクとを有し、前記ガススプリングは、当該ガススプリングの基端部が前記縦アウトリガの接地部側に枢支されるとともに、当該ガススプリングの先端部が、前記縦アウトリガの回転機構側で前記二つのリンクの連結部に枢支され、前記二つのリンクは、前記縦アウトリガが回転するときに前記回転機構の周囲を回り込むように、第一のリンクの基端部が、前記縦アウトリガの基端部に枢支されるとともに、第二のリンクの基端部が、前記横アウトリガの側端であって前記回転機構よりも下方の位置に枢支されていることは好ましい。
このような構成であれば、二つのリンクは、縦アウトリガが回転するときに、回転機構の周囲を回り込むので、回転機構と干渉することなく、且つコンパクトに納まるため、ガススプリングと二つのリンクとによる簡素な構造から補助機構を構成する上で好適である。
【0011】
また、本発明の一態様に係る車両搭載型クレーン用アウトリガ装置において、前記回転機構は、前記ボスと前記軸受との相対回転を拘束する拘束機構とを備え、前記拘束機構は、前記縦アウトリガの前記格納姿勢および前記接地姿勢のときに、前記ボスと前記軸受との軸心を通るとともに前記軸心に沿った方向と直交し且つ水平に貫通形成された嵌挿孔と、該嵌挿孔に嵌挿される拘束ピンとを有することは好ましい。
このような構成であれば、回転機構のボスと軸受とを貫通する嵌挿孔と、この嵌挿孔に嵌挿される拘束ピンとにより、格納姿勢および接地姿勢をそれぞれ拘束することができるので、簡素な構造から回転機構の拘束機構を構成する上で好適である。
【発明の効果】
【0012】
上述のように、本発明によれば、アウトリガ装置自体を大型化する場合や、大型トラックに架装搭載する場合であっても、油圧シリンダによる動力を用いることなく、格納姿勢と接地姿勢とのそれぞれに縦アウトリガを人力で位置させることができるアウトリガ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一態様に係る車両搭載型クレーン用アウトリガ装置を装備したトラックの一実施形態の模式的説明図であり、同図は、アウトリガ装置の格納状態において、トラックの要部を後部から見た図を示している。
図2図1のアウトリガ装置の斜視図であり、同図では、図1の右側のアウトリガ装置を上方から見下ろした図を示している。
図3図1のアウトリガ装置の説明図であり、同図(a)は図1の右側のアウトリガ装置の要部拡大図、(b)は同図(a)の右側面図である。
図4図3に示すアウトリガ装置の基端部の拡大図((a)、(b))である。
図5図1のアウトリガ装置の回転動作を説明する図((a)〜(e))である。
図6】補助機構による補助力の設定条件を説明する図であり、同図は図5(b)を拡大した図を示している。
図7】横アウトリガをベースから側方に張り出した状態を示す斜視図である。
図8】縦アウトリガを回転させて接地姿勢にした状態を示す斜視図である。
図9図1のアウトリガ装置を接地状態にした図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一態様に係る車両搭載型クレーン用アウトリガ装置の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。このアウトリガ装置は、トラックのシャシフレーム上に架装搭載される車両搭載型クレーンに装備されるものである。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0015】
図1に示すように、このアウトリガ装置10は、作業車であるトラック1のシャシフレーム2上に横架して取り付けられる中空のベース11と、ベース11内に嵌装された横アウトリガ12と、横アウトリガ12に連結された縦アウトリガ20とを備える。アウトリガ装置10は、アウトリガ装置10の格納時には、同図に示すように、縦アウトリガ20の接地部が上方を向く格納姿勢にあり、縦アウトリガ20の最低地上高さが、シャシフレーム2の上面の高さよりも高くなっている。なお、このトラック1は、シャシフレーム2上に荷台を設置するため、燃料タンク3等の補機類がシャシフレーム2の上面よりも上方に突出しないように、シャシフレーム2の左右側面に装備される。
【0016】
以下、上記縦アウトリガ20とその回転機構について説明する。
図2および図3に示すように、縦アウトリガ20は、筒状のシリンダチューブ21と、シリンダチューブ21内に油圧によりスライド移動可能に設けられたシリンダロッド22とを有する。シリンダロッド22の先端には、裏面が地面に接地する接地部となるフロート23が取り付けられている。シリンダチューブ21には、横アウトリガ12の張り出しと格納を行う際に把持するためのハンドル27が基端側の左右の二箇所に設けられている。
【0017】
縦アウトリガ20のシリンダチューブ21には、その基端部に、横アウトリガ12側に向けて軸線が水平に配置された中空円筒状のボス24が突設されている(図3参照)。ボス24は、横アウトリガ12側端のプレート13に設けた軸受14に回転可能に支承され、ボス24と軸受14とにより縦アウトリガ20の回転機構4を構成している。回転機構4は、縦アウトリガ20の格納姿勢(0°)から接地姿勢(180°)までの範囲で縦アウトリガ20を回転自在に支持している(図5参照)。横アウトリガ12のプレート13には、縦アウトリガ20の格納姿勢および接地姿勢をそれぞれ支持するための、シリンダ回転終了時のストッパ15、16がそれぞれの姿勢に対応する位置に設けられている。
【0018】
この回転機構4には、ボス24と軸受14との相対回転を拘束する拘束機構が設けられている。拘束機構は、図4に拡大図示するように、縦アウトリガ20の回転を拘束するための拘束ピン26と、拘束ピン26が嵌挿される嵌挿孔25とを有する。嵌挿孔25は、軸受14とボス24の軸心を通り、縦アウトリガ20の格納姿勢および接地姿勢のときに、軸心に沿った方向と直交し且つ水平(図4(b)での左右)に貫通形成されている。嵌挿孔25は、軸受14とボス24を貫通しているため、嵌挿孔25の左右どちらからでも拘束ピン26を嵌脱できる。
【0019】
また、ボス24外周の左右側面には、拘束ピン26の脱落を防止するためのキー溝29mが形成されたブラケット29がそれぞれ固定され、拘束ピン26の基端部側には、ストッパキー26kが突設されている。これにより、拘束ピン26の嵌脱時は、拘束ピン26のストッパキー26kがキー溝29mに対向する位置まで拘束ピン26を回転させなければ、拘束ピン26のストッパキー26kがキー溝29mから外れることはない。
【0020】
拘束ピン26は、縦アウトリガ20が上方を向く格納姿勢(図2参照)と、下方を向く接地姿勢(図8参照)とにあるときに嵌挿孔25に嵌入されることで、縦アウトリガ20の格納姿勢および接地姿勢を確実に固定可能になっている。なお、図3に示すように、シリンダチューブ21の接地部側には、縦アウトリガ20を回転し易いように、また、作業者の片方の手で縦アウトリガ20を抑え、他方の手で拘束ピン26を容易に嵌脱できるように、左右の二箇所にハンドル28が設けられている。
【0021】
さらに、このアウトリガ装置10は、作業者が縦アウトリガ20を手動で回転させる作業を補助するための補助機構6を備えている。
補助機構6は、図2および図3に示すように、封入ガスで反力を発生させるガススプリング30と、二つのリンク31,32とを有する。ガススプリング30は、当該ガススプリング30の基端部(この例ではチューブ側)が縦アウトリガ20の接地部側に支軸33を介して枢支される。この例では、ガススプリング30の基端部は、縦アウトリガ20の車幅方向内側であってシリンダチューブ21の径方向中央の位置に且つその外周面に凸設されたボスに設けられて軸線が車幅方向に沿って水平な支軸33によって軸支されている。
【0022】
また、当該ガススプリング30の先端部(この例ではロッド側)は、二つのリンク31,32の連結部に枢支されている。この例では、ガススプリング30のロッド先端は、第一のリンク31と第二のリンク32の連結部に連結軸36を介して同軸に軸支されている。連結軸36の軸線の向きは支軸33と平行である。なお、ガススプリング30のロッドには、傷防止用の保護具を装着することが望ましい。そして、二つのリンク31,32は、第一のリンク31の基端部が、縦アウトリガ20の基端側の位置に支軸34を介して枢支されるとともに、第二のリンク32の基端部が、横アウトリガ12側端のプレート13の、回転機構4よりも下方の位置に支軸35を介して枢支されている。支軸34、35の軸線の向きも支軸33と平行である。
【0023】
このように、2つのリンク31,32は、先端相互が同じ位置で軸支され、二つのリンク31,32の基端側は、第一のリンク31の基端部が縦アウトリガ20の基端側の位置に軸支され、第二のリンク32の基端部が横アウトリガ12側端のプレート13に軸支されることで、2つのリンク31,32が、軸受14とボス24の軸心を挟んで対向する位置に軸支される。これにより、縦アウトリガ20が格納姿勢のときは、図3(b)に示すように、2つのリンク31,32が「くの字」の姿勢を形成し、「くの字」の姿勢のリンク相互がなす凹の部分によって、縦アウトリガ20が、図5(a)〜(e)に示すように180°回転するときに、回転機構4の周囲を回り込むことにより、回転機構4との干渉を回避可能になっている。
【0024】
ここで、2つのリンク31,32同士の先端の連結部は、図3および図6に示すように、ガススプリング30の先端部が同軸に軸支されているので、ガススプリング30の推力は、連結部の連結軸36に直接作用し、ガススプリング30の推力が二つのリンク31,32を介して縦アウトリガ20に作用する。これにより、図6に示すように、2つのリンク31,32により、縦アウトリガ20が回転機構4の支軸中心まわりに180°回転しても、2つのリンク31,32同士の連結軸36中心と、支軸中心間の距離Aはほぼ一定に保たれる。
【0025】
そして、縦アウトリガ20を手動で回転させるときの補助機構6による補助力は、格納姿勢と接地姿勢との間のどの角度においても、ガススプリング30のカタログ値の推力を目安として算出可能である。
つまり、図6に示すように、ガススプリング30の推力F1は、作用・反作用の関係で、縦アウトリガ20と2つのリンク31,32同士の連結部の両方に掛かる。推力F1は、縦アウトリガ20を持ち上げる方向に働き、第一のリンク31に掛かる分力F2は、縦アウトリガ20を下げる方向に働く。よって、同図において、ガススプリングの推力F1によって縦アウトリガ20を持ち上げる方向に働く回転軸まわりのモーメントは、(F1・A−F2・B)となる。また、ハンドル28の位置において縦アウトリガ20を持ち上げるために必要な力Fは、縦アウトリガ20の自重によるモーメントからガススプリング30の推力F1によるモーメントを引いた値を上回ればよいので、(F>(G・C−(F1・A−F2・B))/D)となる。
【0026】
ここで、本実施形態では、作業者が手動で縦アウトリガ20を回転させて持ち上げるため、人が要する揚力(持ち上げる力)として、200N(約20kgf前後)以内で操作可能に設定されている。つまり、ハンドル28の位置において、(200N≧(G・C−(F1・A−F2・B))/D)を満たすように補助力を設定すれば、作業者が手動で縦アウトリガ20を容易に持ち上げることができる。本実施形態では、この条件を満たすように補助力を設定している。
【0027】
次に、このアウトリガ装置10を用いた作業およびアウトリガ装置10の作用・効果について説明する。
作業を開始するときは、作業者は、まず、図7に示すように、横アウトリガ12を手動でベース11から車両の側方に衝止する位置まで引き出す。このとき、縦アウトリガ20は格納姿勢に保持されている。次いで、作業者は、拘束ピン26を嵌挿孔25から抜き、次いで、図5(a)〜(e)に示すように、縦アウトリガ20を下方に向けて反時計まわりに180°回転させる。作業者が縦アウトリガ20を手動で下方に回転させる際には、上記補助機構6が縦アウトリガ20の落下に抗する上向きの方向に作用するため、急激な落下(回転)が防止される。よって、急激な落下(回転)が起こらないように、人が手で支える力を上記補助機構6が補助するので、縦アウトリガ20を安全かつ容易に接地側に向けて回転させることができる。
【0028】
これにより、図8に示すように、縦アウトリガ20が下方を向く接地姿勢となる。作業者は、縦アウトリガ20を接地姿勢にしたら、拘束ピン26を嵌挿孔25に挿入して接地姿勢を確実に固定する。次いで、作業者は、シリンダロッド22を伸長させて、図9に示すように、フロート23を接地させてトラック1の安定を確保する。
アウトリガ装置10を格納するときは、作業者は、まず、シリンダロッド22を最縮小させてフロート23を収容する。次いで、作業者は、拘束ピン26を嵌挿孔25から抜き、縦アウトリガ20を手動で上方に時計まわりに180°回転させて格納姿勢とする。作業者が縦アウトリガ20を手動で上方に回転させる際には、上記補助機構6が縦アウトリガ20の落下に抗する上向きの方向に作用するため、手動で回転させる力を上記補助機構6が補助するので、縦アウトリガ20を容易に格納側に向けて回転させることができる。その後に、拘束ピン26を嵌挿孔25に挿入して格納姿勢を確実に固定する。次いで、横アウトリガ12をベース11内に押し込み格納する。
【0029】
このように、このアウトリガ装置10は、格納時には、縦アウトリガ20の最低地上高さがシャシフレーム2の上面の高さよりも高くなる回転型アウトリガ装置なので、燃料タンク3等の補機類と縦アウトリガ20との干渉が生じることがない。そのため、トラック1に車両搭載型クレーンを架装搭載するときに、補機類の移設が不要であり容易に架装搭載できる。そして、このアウトリガ装置10は、作業者が縦アウトリガ20を手動で回転させる手動式なので、油圧シリンダおよびその油圧回路の増ラインを含めた装備が不要であり、コスト増を抑えることができる。
【0030】
特に、このアウトリガ装置10によれば、作業者が縦アウトリガ20を手動で回転させる作業を補助する補助機構6を備えており、この補助機構6は、封入ガスの反力を発生させるガススプリング30と、二つのリンク31,32とを有し、縦アウトリガ20の格納姿勢と接地姿勢とにおける姿勢保持力を付与するとともに、相互の姿勢に手動で回転させる作業を封入ガスの反力で補助するので、アウトリガ装置自体を大型化する場合や、大型トラックに架装搭載する場合であっても、油圧シリンダによる動力を用いることなく、格納姿勢と接地姿勢とのそれぞれに縦アウトリガ20を人力で位置させることができる。
【0031】
また、格納姿勢の初期作動時(0°)付近は、図6の、縦アウトリガ20の自重によるモーメントにおける距離「C」は、「0」ないし限りなく0に近いため、縦アウトリガ20の自重モーメント(G・C)は作用しない。即ち、縦アウトリガ20の格納姿勢付近では、ガススプリング30の推力F1による縦アウトリガ20を持ち上げる方向に働く回転軸まわりのモーメントによって、作業者が拘束ピン26を抜く作業中も、抜いた後も、補助機構6で付与される姿勢保持力を超える外力が回転方向に作用しない限り縦アウトリガ20が倒れることはなく、安全が確保されている。
【0032】
同じく接地姿勢時(180°)付近においても、距離「C」は、「0」ないし限りなく0に近いため、縦アウトリガ20の自重モーメント(G・C)は作用しない。但し、その場合の効果では、補助機構6で付与される姿勢保持力を超える外力が接地姿勢方向に作用しない限り、縦アウトリガ20の自重だけでは鉛直方向真下となる接地姿勢(180°)には到達しない。即ち、接地姿勢時(180°)付近では、人力によって、縦アウトリガ20を接地姿勢位置へと押し込める必要がある。
【0033】
但し、例えば万が一、作業者が縦アウトリガ20を持ち上げる最中に、誤って縦アウトリガ20から手を離してしまった場合でも、補助機構6で付与される姿勢保持力は、シリンダ当接位置となる接地姿勢位置では、丁度、自重落下に対するクッションとしての機能を果たす。よって、ストッパ15にぶつかる衝撃を緩和し、それらの破損を防止できる。
なお、本発明に係るアウトリガ装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
【0034】
例えば、上記実施形態では、補助機構6は、ガススプリング30の封入ガスで反力を発生させることで、弾性エネルギーを蓄積した蓄勢力により、外部からのエネルギー供給による動力源を用いずに手動で回転させる作業を補助する例を示したが、これに限らず、補助機構6は、弾性エネルギーを蓄積した蓄勢力を用いる構造であれば、例えば金属などの弾性体の復元力を利用し、弾性エネルギーを蓄積する構造としてもよい。
【0035】
また、例えば上記実施形態では、縦アウトリガ20が手動回転される方向が、車両の前後方向である例を説明したが、これに限らず、例えば、縦アウトリガ20が手動回転される方向が車幅方向の場合であっても、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 トラック(作業車)
2 シャシフレーム
3 燃料タンク(補機類)
4 回転機構
6 補助機構
10 アウトリガ装置
11 ベース
12 横アウトリガ
13 プレート
14 軸受
15 ストッパ
16 ストッパ
20 縦アウトリガ
21 シリンダチューブ
22 シリンダロッド
23 フロート
24 ボス
25 嵌挿孔
26 拘束ピン
27 ハンドル
28 ハンドル
29 ブラケット
30 ガススプリング
31 第一のリンク
32 第二のリンク
33、34、35 支軸
36 連結軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9