特許第6530379号(P6530379)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6530379閉塞サージ軽減のための部分的通気システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6530379
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】閉塞サージ軽減のための部分的通気システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20190531BHJP
【FI】
   A61F9/007 130B
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-510673(P2016-510673)
(86)(22)【出願日】2014年3月4日
(65)【公表番号】特表2016-516528(P2016-516528A)
(43)【公表日】2016年6月9日
(86)【国際出願番号】US2014020104
(87)【国際公開番号】WO2014175961
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2017年2月6日
(31)【優先権主張番号】13/871,078
(32)【優先日】2013年4月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー ピー.ソレンセン
(72)【発明者】
【氏名】ミハイル アー.オフチンニコフ
(72)【発明者】
【氏名】サティッシュ ヤラマンチリ
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−531676(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0313343(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目の病態を治療するための手術システムであって、
ハンドピースと、
前記ハンドピースと流体連通し、流体を手術部位へ運ぶように構成される、灌注導管と、
前記ハンドピースと流体連通し、流体を前記手術部位から運び去るように構成される、吸引導管と、
前記吸引導管と接合するポンプであって、前記吸引導管内で真空圧を創成して、前記吸引導管を通して流体を引き出すように構成される、ポンプと、
前記吸引導管と流体連通し、前記吸引導管内の前記真空圧を逃すように構成される、真空逃し弁と、
前記手術部位と関連付けられる圧力を検出するように配置及び構成される第1の圧力センサと、
前記吸引導管に沿って位置する第2の圧力センサであって、前記第2の圧力センサが、前記吸引導管内の吸引圧力をモニターするように構成される、第2の圧力センサと、
中に記憶された、第1の圧力閾値及び第2の圧力閾値を有し、前記真空逃し弁、前記第1の圧力センサ及び前記第2の圧力センサと通信する制御装置であって、前記第1の圧力センサにより検出された前記圧力が前記第1の圧力閾値より低い場合、前記吸引導管内の前記真空圧を減少させるために前記真空逃し弁を部分的に開放し、前記吸引導管内の前記真空圧が大気圧に達することなく大気圧に向かって減少するように、前記真空逃し弁を制御するように構成され、かつ前記第2の圧力センサにより検出された前記圧力が前記第2の圧力閾値より高い場合、前記真空逃し弁を閉鎖するように、前記真空逃し弁を制御するように構成され、前記真空逃し弁が部分的に開放される量が、前記第1の圧力閾値と前記第2の圧力センサによって検出された前記圧力との間の差に相関する、制御装置と、を備える、システム。
【請求項2】
前記第1の圧力センサが、前記ハンドピース上に位置する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の圧力センサが、前記灌注導管内の灌注圧力を検出するために前記灌注導管に沿って位置する灌注導管圧力センサである、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
通気貯槽、ならびに前記ポンプをバイパスし、前記吸引導管及び前記通気貯槽と流体連通するバイパス導管をさらに備え、前記真空逃し弁が、前記バイパス導管に沿って位置し、前記通気貯槽が、前記吸引導管と流体連通する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記真空逃し弁が前記吸引導管内の前記真空圧を減少させるとき、前記真空逃し弁は、通気貯槽流体が前記バイパス導管に入ることを可能にするように構成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記第2の圧力センサが、前記ポンプと前記手術部位との間に位置する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の圧力センサが、前記手術部位から304.8ミリメートル未満に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記真空逃し弁が、45度未満の角度位置まで部分的に開放されるように制御される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記真空逃し弁が、30度未満の角度位置まで部分的に開放されるように制御される、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は、超音波水晶体乳化吸引手術に、より具体的には白内障手術中に眼で経験される圧力をより良好に調節する装置に関する。
【0002】
ヒトの眼は、角膜と呼ばれる澄んだ外側の一部分を通して光を伝導し、水晶体を経て網膜上に像の焦点を合わせることにより、視覚を提供するように機能する。この焦点が合った像の質は、眼のサイズ及び形状、ならびに角膜及びレンズの透明度を含む、多くの要因に依存する。年齢または疾患のためにレンズの透明度が下がったとき、網膜に伝導され得る光の減少のために、視覚は悪くなる。眼のレンズのこのような欠陥は、医学的に白内障として知られる。この病態のための承認された治療は、レンズの外科的除去及び人工眼内レンズ(IOL)によるレンズ機能の置換である。
【0003】
米国では、白内障レンズの大部分が、超音波水晶体乳化吸引術と呼ばれる外科技術により除去される。超音波水晶体乳化吸引術手順のために好適な、典型的な手術用ハンドピースは、超音波駆動水晶体乳化吸引術用ハンドピースと、灌注はめ管で囲まれた、取り付けられた中空の切断針と、電子制御卓とからなる。ハンドピース組立品は、電線及び可撓性導管により制御卓に取り付けられる。電線を通して、制御卓は、ハンドピースにより、取り付けられた切断針に伝導される電力レベルを変化させる。可撓性導管は、手術部位に灌注流体を供給し、ハンドピース組立品を通して眼から吸引流体を引き出す。
【0004】
典型的なハンドピースの作動部分は、1組の圧電性結晶に直接的に取り付けられた、中心に位置する、中空共鳴棒または警音器である。この結晶は、超音波水晶体乳化吸引術中に警音器及び取り付けられた切断針の両方を駆動するために必要とされる要求される超音波振動を供給し、制御卓により制御される。結晶/警音器組立品は、可撓性取付物により、ハンドピースの中空体または外殻内につるされる。ハンドピース体は、この体の遠位末端の直径が減少した一部分または円錐形頭部で終わる。典型的に、この円錐形頭部は、切断針の長さのほとんどを囲む、中空の灌注はめ管を受けるように雄ねじである。同様に、警音器の穴は、切断先端の雄ねじ山を受容するように、その遠位末端で雌ねじである。また、灌注はめ管は、円錐形頭部の雄ねじ山上にねじって取り付けられる、雌ねじ穴を有する。切断針は、その先端が灌注はめ管の開放末端を過ぎて所定の量だけ突出するように、調節される。
【0005】
超音波水晶体乳化吸引術手順中、切断針の先端及び灌注はめ管の末端は、眼の外組織の小さな切開を通って、眼の前部区分に挿入される。外科医は、振動する先端がレンズを断片化するように、切断針の先端を眼のレンズと接触させる。生じる断片は、この手順中に眼に提供される灌注溶液と共に、切断針の内部穴を通して眼から、通気貯槽へ吸引される。
【0006】
手順全体を通して、灌注流体は、眼にポンプ注入され、灌注はめ管と切断針との間を過ぎ、灌注はめ管の先端で及び/または灌注はめ管内にその末端近くに切開された1つ以上の口または開口部から、眼内に出る。この灌注流体は、乳化されたレンズの除去中に眼の虚脱を防ぐので、重要である。また、灌注流体は、超音波切断針の振動により発生した熱から眼組織を保護する。さらに、灌注流体は、乳化されたレンズ断片を、眼からの吸引のために懸濁する。
【0007】
超音波水晶体乳化吸引術手順中の一般的な現象は、手術手順全体を通して起こる変化する流速から生じる。変化する流速は、灌注流体供給から眼への灌注流体通路中の変化する圧力低下をもたらし、したがって前部チャンバー内の圧力(眼内圧またはIOPとも呼ばれる)の変化を引き起こす。より高い流速は、より大きな圧力低下をもたらし、IOPを低下させる。IOPが低下するにつれ、眼内の作動空間は減少する。
【0008】
超音波水晶体乳化吸引術プロセス中の別の一般的な合併症は、吸引針の妨害または閉塞から生じる。灌注流体及び乳化された組織が、眼の内部から中空の切断針を通して吸引されるにつれて、針穴の直径より大きい組織片が針の先端内で詰まるようになる場合がある。先端が詰まる間、真空圧が先端内で蓄積する。目詰まりが除去されたとき、閉塞破壊がある。目詰まりが除去されたときに眼内の前部チャンバー中で生じる圧力の急降下は、閉塞後サージとして知られる。この閉塞後サージは、いくつかの場合、比較的大量の流体及び組織があまりに速く、眼から吸引されることを引き起こす場合があり、可能性として眼の虚脱を引き起こし、及び/またはレンズカプセルが裂けることを引き起こす。
【0009】
様々な技術が、このサージを減少させるために設計されてきた。しかしながら、閉塞後サージを減少させ、様々な流動条件全体を通して安定なIOPを維持する、改善された超音波水晶体乳化吸引術用装置について要求が残っている。本開示は、先行技術の1つ以上の欠点に取り込む。
【発明の概要】
【0010】
例示的な態様では、本開示は、眼の病態を治療するための手術用システムを対象とする。このシステムは、ハンドピース、ハンドピースと流体連通して手術部位へ流体を運ぶように構成される灌注導管、及びハンドピースと流体連通して手術部位から流体を運び去るように構成される吸引導管を含む。また、このシステムは、吸引導管と接合し、吸引導管内で真空圧を創成して吸引導管を通して流体を引き出すように構成される、ポンプを含む。システムは、吸引導管と流体連通して吸引導管内の真空圧を逃すように構成される真空逃し弁を含む。また、システムは、手術部位と関連付けられる圧力を検出するように配置及び構成される圧力センサ、ならびに真空逃し弁及び圧力センサと通信して圧力センサにより検出された圧力が第1の圧力閾値より低い場合、吸引導管内の真空圧を減少させるように真空逃し弁を制御するように構成される制御装置を含む。制御装置は、真空圧が眼で測定される−50mmHgより低い真空レベルに達する前に、真空圧の減少を停止させるように真空逃し弁を制御するように構成される場合がある。
【0011】
一態様では、圧力センサは、ハンドピース上に位置する。一態様では、システムは、通気貯槽、ならびにポンプをバイパスして吸引導管及び通気貯槽と流体連通するバイパス導管を含み、真空逃し弁は、バイパス導管に沿って位置し、通気貯槽は、吸引導管と流体連通する。
【0012】
例示的な態様では、本開示は、吸引システムを操作する方法を対象とする。この方法は、超音波水晶体乳化吸引術用ハンドピースと流体連通する吸引導管を通して流体を方向付けることと、吸引導管と接合するポンプを用いて吸引導管内で真空圧を創成して手術部位から吸引導管内へ吸引流体を引き出すことと、圧力センサで手術部位と関連付けられる圧力を検出することと、手術部位と関連付けられる圧力が第1の圧力閾値より低い場合、吸引導管内で真空逃し弁を用いて真空圧を逃すことであって、真空圧を逃すことが、約−50mmHgより高い真空圧を維持するように真空逃し弁を用いることを含む、逃すこととを含む。
【0013】
例示的な態様では、本開示は、吸引システムを操作する方法を対象とする。この方法は、吸引導管と接合するポンプを用いて吸引導管内で真空圧を創成して手術部位から吸引導管内へ流体を引き出すことと、圧力センサで手術部位と関連付けられる圧力を検出することと、手術部位と関連付けられる圧力センサにより検出された圧力を第1の圧力閾値と比較することと、手術部位と関連付けられる圧力が第1の圧力閾値より低い場合、真空圧を部分的にのみ通気するように吸引導管内の真空圧を制御するように真空逃し弁を開放し、一方で、約−50mmHgより高い真空での真空圧を維持するように真空逃し弁を用いることとを含む。
【0014】
上記方法のいずれかの一態様では、圧力センサは、ハンドピース上に位置する。一態様では、真空逃し弁は、ポンプをバイパスして吸引導管及び通気貯槽と流体連通するバイパス導管上に位置し、通気貯槽は、吸引導管と流体連通する。
【0015】
上記一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方は、本質的に例示及び説明であり、本開示の範囲を限定することなく、本開示の理解を提供することが意図されると、理解されるべきである。その点で、本開示の追加の態様、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明から当業者に明らかであろう。
【0016】
付属の図面は、本明細書で開示される装置及び方法の実施形態を例示し、説明と共に本開示の原理を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本明細書で説明される教示及び原理を実行する、本開示の一態様に従う例示的な超音波水晶体乳化吸引手術用制御卓の例示である。
図2】本開示の原理に従う、吸引を駆動する流体素子サブシステムを含む様々なサブシステムを示す、図1の超音波水晶体乳化吸引術用制御卓のブロック図である。
図3】本開示の一態様に従う、図1及び2の超音波水晶体乳化吸引手術用制御卓と使用可能な例示的な流体素子サブシステムの図である。
図4】本開示の原理と一致する一実施形態に従う、図3のシステムを操作する方法を例示するフローチャートである。
図5】本開示の原理と一致する一実施形態に従う、図3のシステムを操作する方法を例示するフローチャートである。
図6】本開示の原理と一致する一実施形態に従う、図3のシステムを操作する方法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の原理の理解を促進する目的のために、図面で例示される実施形態をここで参照し、特定の言語を、これを説明するために使用する。それにもかかわらず、本開示の範囲の限定は意図されないことが理解されるであろう。説明される装置、器具、方法、及び本開示の原理の任意のさらなる適用に対する任意の変更及びさらなる改変は、本開示が関連する分野の当業者が通常想起し得るように完全に企図される。具体的には、一実施形態について説明される特徴、構成要素、及び/またはステップは、本開示の他の実施形態について説明される特徴、構成要素、及び/またはステップと合わせることができることが完全に企図される。しかしながら、簡潔にするために、これらの組み合わせの多くの反復は、別に説明しない。単純にするために、いくつかの場合、同じ参照番号が、同じまたは同様の部分を言及するために図面全体を通して使用される。
【0019】
本開示は概して、超音波水晶体乳化吸引術手順を行うための装置、システム、及び方法に関する。超音波水晶体乳化吸引術中、所定の範囲にIOPを維持する、またはすばやく戻すことは、手順の成功にとって重要である場合がある。IOPの変化、例えば閉塞破壊のための変化の早期検出は、吸引線内の真空圧を減少させるために十分な時間を提供し、これにより閉塞後サージ及びその望ましくない効果を減少させ、または防ぐことができる。真空圧は、大気圧より低い圧力であり、真空圧を増大させることは、圧力をさらに低下させることである。真空圧を減少させ、または逃すことは、圧力を大気圧により近くすることである。
【0020】
本明細書で開示される装置、システム、及び方法は、手術部位での閉塞破壊をすばやく検出するための圧力センサを有するハンドピースを含む。本明細書で開示される例示的な実施形態では、閉塞破壊が検出された場合、ポンプバイパス導管上に位置する真空逃し弁は、吸引線内の真空圧を減少させる(真空圧を大気圧により近くする)ために開放し、これにより閉塞後サージを減少させ、または防ぐ。例示的な一実施形態では、真空圧を減少させるために開放した後、真空逃し弁は、圧力が十分に回復した場合などの発動事象に基づいて閉鎖され得る。すなわち、真空逃し弁が開放された後、吸引圧力センサは、吸引圧力が回復し、閾値真空圧より高いかどうかを検出する場合がある。そうである場合、真空逃し弁は、吸引導管内の真空圧を減少させるように閉鎖される。システムは、その後、別の閉塞破壊が検出されるまで、正常作動を再び続ける。いくつかの態様では、システムは、真空圧がより高い真空圧から減少した真空圧(大気圧により近い圧力)に変化するように、真空逃し線で真空を部分的にのみ逃すように構成される。
【0021】
図1は、一般的に100と呼ばれる、例示的な乳化手術用制御卓を例示する。図2は、超音波水晶体乳化吸引術手順を行うために作動する様々なサブシステムを示す、制御卓100のブロック図である。制御卓100は、基部筐体102を含み、これはコンピュータ単位103、ならびに乳化手術手順中にシステム作動及び性能に関するデータを示す、関連付けられた表示器スクリーン104を伴う。また、制御卓100は、超音波水晶体乳化吸引手術手順を行うために共に使用される、いくつかのサブシステムを含む。例えば、サブシステムは、例えば、足ペダル108を含む足ペダルサブシステム106、ハンドピース112を含む流体素子サブシステム110、切断針を有するハンドピース112を伴う超音波振幅を発生する超音波発生器サブシステム116、及び硝子体切除術ハンドピース122を含む空気圧式硝子体切除術用カッターサブシステム120のうちの1つ以上を含む。これらのサブシステムは、この手順の様々な態様を行うために重複及び協同する場合がある。
【0022】
図3は、流体素子サブシステム110及びハンドピース112を示す図を例示する。流体素子サブシステム110は、ハンドピース112と流体連通する灌注システム300及び吸引システム305を含む。
【0023】
灌注システム300は、ハンドピース112上に位置するはめ管320と流体連通する灌注流体源310及び可撓性灌注導管315を含む。灌注システム300は、灌注流体源310とハンドピース112との間に伸展し、流体を手術部位(眼として図3で標識を付けられる)へ運ぶ。一実施例では、滅菌流体は、生理食塩水流体であるが、しかしながら、他の流体を使用してもよい。灌注流体源310は、機械的に加圧される流体源、例えば図3で示される固定圧力システムであり得る。代替の実施形態では、灌注流体源310は、IVポールにより懸濁された源である。源の上昇を調節することは、灌注導管315を通した手術部位への流動レベルを制御することができる。他の流体源も、企図される。
【0024】
吸引システム305は、ハンドピース112と流体連通するように位置する吸引導管325、吸引センサ330、吸引導管325と接合するポンプ335、及び通気貯槽340を含む。いくつかの実施形態では、通気貯槽340は、排水袋または導管の交点であってよい。他の通気貯槽も企図される。見られ得るように、吸引システム305は、手術部位(眼)から通気貯槽340に、最終的には排水または廃棄貯槽341まで伸展する。ポンプ335は、ポンプ335と眼との間の吸引導管325内で真空圧を創成して、吸引流体を手術部位から通気貯槽340中へ引き出す。また、バイパス導管345は、吸引線325及び通気貯槽340、ならびにポンプ335をバイパスして流体連通する。真空逃し弁350は、バイパス導管345に沿って位置し、開閉することにより吸引導管325内の真空圧を制御する。示される例示的な実施形態では、真空逃し弁350は、可変真空逃し弁である。一実施形態では、可変真空逃し弁は、回転弁である。以下により詳細に説明されるように、IOPを受け入れられるレベルに維持し、またはすばやく戻すことができるように、閉塞サージの効果を減少させるために、真空逃し弁350の開閉を制御することができる。例えば、真空逃し弁350を、吸引導管325中の真空圧を少なくとも部分的に緩和または減少させるように、制御することができる。真空逃し弁350を、吸引導管325中の真空圧を減少させるように、完全に開放または部分的に開放することができる。真空逃し弁350を、吸引導管325中の真空圧を増大させる(その圧力と大気圧との差を増大させ、その圧力を大気圧から離す)ように、完全に閉鎖または部分的に閉鎖することができる。しかしながら、真空逃し弁は、閉鎖プロセスであるので、真空圧は、まだ減少し続ける場合がある。すなわち、真空逃し弁が閉鎖された場合、真空圧は増大し(大気圧から離れ)、閉鎖プロセス中、真空圧は減少する場合がある(大気圧へ近づく)。
【0025】
真空逃し弁350の開放に際して、吸引導管325内の真空圧は、通気貯槽340からバイパス導管345中へ流体を引き出す。一実施形態では、真空逃し弁350の開放は、吸引導管325内の真空圧を減少させる。別の実施形態では、真空逃し弁350の開放は、吸引導管325内の真空圧を維持し、または吸引導管325内の真空圧の増大速度を遅延させる。それゆえ、真空逃し弁350の開放は、真空圧を減少させることにより、真空圧を維持することにより、または真空圧の増大速度を遅延させることにより、真空圧を制御する。真空逃し弁350の閉鎖に際して、真空圧は減少し続ける。しかしながら、圧力逃し弁350の閉鎖のために、吸引導管325内の真空圧は、以下に説明される所望の真空圧範囲内に維持することができる。上記に示されるように、いくつかの実施形態では、吸引導管325を含む吸引システム305は、ハンドピース112の切断先端355と流体連通し、手術手順中、先端355を通して吸引システム305中へ、流体及び乳化した粒子を吸引するために使用される。
【0026】
また、流体素子サブシステム110は、ハンドピース112内に位置する圧力センサ365、吸引圧力センサ330、及び真空逃し弁350と通信する、制御装置360を含む。制御装置360は、真空逃し弁350を作動させ、ならびに/またはセンサ365及び330から受容される情報を検出するための、実行可能なプログラムを含み得る処理装置ならびに記憶装置を含む場合がある。一実施形態では、制御装置360は、圧力の逸脱、例えば閉塞サージを軽減するために弁350を制御するように構成される、PID制御装置である。
【0027】
一実施例では、制御装置360は、所望の圧力限界を確立する、1つ以上の事前に確立された圧力閾値を含む場合がある。測定または検出された圧力がこれらの事前に確立された閾値を超える場合、制御装置360は、圧力を所望のレベルに戻すように弁を制御する。一実施例では、閾値は、真空圧設定、流速、及び眼内圧(IOP)の関数である。制御装置360は、眼圧の表示としての灌注圧力に関する第1の圧力閾値、及び最小作動圧力または最小真空圧に関する第2の圧力閾値を含む場合がある。同様の閾値は、流速及び真空設定について含まれる場合がある。例えば、システムが正常条件下で(閉塞または閉塞破壊を伴わずに)作動する真空圧の範囲を表す、吸引導管内の所望の真空圧範囲がある場合がある。これらの閾値は、操作者による入力であってよく、または製造中に事前設定及び記憶してもよい。
【0028】
また、制御装置360は、圧力センサ365及び吸引圧力センサ330からの情報を受容する。制御装置360は、圧力センサ365及び吸引圧力センサ330から受容した情報に基づいて、真空逃し弁350の作動を制御するように構成される。圧力センサ365は、手術部位に近接してハンドピース112上に位置し、いくつかの実施形態では、手術部位から12インチ(304.8ミリメートル)未満に配置される。ハンドピースのその場所から、圧力センサ365は、手術部位と関連付けられる流体圧力を検出する。圧力センサ365は眼に対して近位であるために、(閉塞破壊中に起こり得るような)圧力の変化をすばやく検出することができ、実時間サージ抑制を可能にする。いくつかの実施形態は、閉塞破壊の50ミリ秒以内ほどすばやく、圧力変化を検出する。このような速い応答時間は、IOPが過度に負の影響を受ける前に、制御装置360が、圧力の逸脱に対する応答をすばやく提供することを可能にすることができる。
【0029】
示される例示的な実施形態では、圧力センサ365は、灌注導管315に沿ってハンドピース112に配置される。ハンドピース112の近位末端で示されるが、他の実施形態では、それは遠位末端に配置され、はめ管320に近位に配置されてもよい。一実施形態では、圧力センサ365は、ハンドピース112内の灌注導管315に沿って位置する灌注圧力センサ365である。灌注圧力センサは、灌注導管315内の灌注圧力を検出する。別の実施形態では、圧力センサ365は、ハンドピース112中に位置し、灌注導管315以外の通信要素を通して手術部位と流体連通する。例えば、圧力センサ365は、手術部位と通信する、それ自体の別々の管またはプローブ内に配置することができる。このような一実施形態では、別々の管またはプローブは、ハンドピース112とは独立であるが、圧力センサ365が手術部位に近接した範囲内に配置されることを可能にする。代替の実施形態では、それは、はめ管320内またはハンドピース112上のどこかに配置されてよい。
【0030】
作動中、灌注流体は、灌注導管315を通して手術部位に提供される。示される例示的な実施形態では、センサ365は、灌注導管315内の灌注圧力を検出するように、灌注導管315に沿って位置する。制御装置360は、センサ365を用いて圧力を連続的にモニターする。閉塞破壊中に起こり得るように、灌注圧力が、制御装置に記憶される第1の圧力閾値より低く下がった場合、制御装置360は、真空逃し弁350を開放して、吸引導管325内の真空圧を減少させ、閉塞後サージを減少させ、または防ぐ。吸引圧力センサ330が、吸引圧力が第2の圧力閾値より高いことを検出した場合、制御装置360は、真空逃し弁350を閉鎖して、吸引導管325内の圧力の増大速度を制御し、しばらく経過した後に、吸引システムが正常作動で続けることを可能にする。すなわち、一旦、システムが、吸引圧力が第2の圧力閾値より高いことを検出したら、真空逃し弁は閉鎖し始め、閉鎖プロセス中、真空圧は、速度は変えられても減少し続ける(大気圧により近くなる)。一旦、真空逃し弁が閉鎖したら、真空圧は増大し(大気圧から離れ)、または(それが正常作動条件真空圧である場合)同じままであり得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、制御装置360は、真空レベルが追従性の完全な喪失を伴わずに正常作動条件真空レベルの±50%に戻るように、真空逃し弁350を開放することによりシステムを通気する。例えば、いくつかの実施形態では、正常作動条件真空レベルは、約−50mmHgより高い真空であり、真空レベルは、例えば吸引センサにより検出されるとき、吸引線で真空を創成するポンプ近くで−50mmHgを超えて上昇しないように制御される。いくつかの実施形態では、真空レベルは、吸引センサにより検出されるとき、圧力が約−100mmHg上昇することを防ぐように制御される。他の実施形態では、真空レベルは、圧力が−150mmHgを超えて上昇することを防ぐように制御される。さらに他の閾値が、企図される。いくつかの実施形態では、第2の圧力閾値は、圧力が上記に特定される圧力を超えて上昇しないことを確実にするように設定される。
【0032】
したがって、いくつかの実施形態では、圧力が大気圧まで上昇しないように、システムは、真空圧を部分的にのみ通気し、真空圧が維持される。このようにして、制御装置は、真空圧が非常に高い真空からより低い好適な真空に減少するように、真空圧を制御するように真空逃し弁を使用することができる。本明細書で使用される、用語、真空圧の「部分的通気」または真空圧を「部分的に通気する」は、真空圧が大気圧に向かって減少するが、真空圧が大気圧に達することを防ぐように制御されることを意味すると意図される。
【0033】
いくつかの実施形態では、真空逃し弁350の開放の量及び速度は、吸引圧力(吸引圧力センサにより測定される)と圧力設定点閾値との間の差に相関する。すなわち、圧力の逸脱が最小である場合、真空逃し弁350は、最小開放設定まで部分的にのみ開放され、圧力の逸脱がより大きい場合、真空逃し弁は、より大きな量で開放される。このために、システムは、追従性または保持力を低下させない。その代わり、弁の制御は、閾値を超える逸脱に応答して弁を完全に開閉することによっては達成され得ない、サージ軽減のための制御及び安定性を提供することができる。
【0034】
いくつかの例示的な実施形態では、真空逃し弁350は、吸引センサ330から取られた測定を伴わずに閉鎖するように制御される。例えば、いくつかの例示的な実施形態では、真空逃し弁350は、所定の期間、開放位置と閉鎖位置との間で迅速に律動することにより、吸引導管325内の真空圧を減少させる。例えば、弁は、閉塞により創成された真空圧を緩和するために、制御装置360により指揮されるように迅速に開閉することができる。制御装置360は、検出された圧力読み取りに基づいてではなく、事前に設定された長さの時間後に弁を閉鎖するので、このような実施形態は、センサ330を含まなくてよい。閉塞後サージは、所定の期間、真空逃し弁350を律動させることに基づいて防がれるであろうという仮定のために、吸引センサ330は必要でない。他の実施形態では、真空逃し弁350は、真空圧を緩和するように、所定の時間、一回開放するように制御することができる。例えば、真空逃し弁350は、例えば0.040秒間のみ開放し、次いで自動的に閉鎖するように構成することができる。いくつかの実施形態では、真空逃し弁350は、約0.025秒間、他の実施形態では、0.025秒間未満の期間、開放し得る。これらの期間は単に例示であり、他の期間が企図される。一態様では、真空逃し弁350が開放され得る所定の時間及び弁が開放され得る程度は、上記に説明される様式で、検出された真空圧のレベルまたは閾値からの逸脱量に基づいて選択することができる。また、このような実施形態は、正常作動で続ける前にしばらく待機して、システムが閉塞破壊から回復することを可能にすることができる。
【0035】
図4は、システムを操作するための例示的な方法410を例示する。ステップ415では、圧力センサ365は、手術部位と関連付けられる圧力を検出し、検出された圧力を制御装置360に通信する。したがって、制御装置は、検出された圧力値を受容する。例えば、及び上記に説明されるように、圧力センサ365は、灌注導管圧力を用いて灌注圧力を検出する灌注圧力センサであってよく、またははめ管320上に位置し、手術部位近くの圧力を検出するセンサであってもよい。
【0036】
ステップ420では、制御装置360は、閉塞破壊が起こったかどうかを決定する。これは、圧力センサ365により測定された圧力を、所定の圧力閾値または第1の圧力閾値と比較して、この圧力が第1の圧力閾値より下がったかどうかを決定することを含み得る。圧力が、第1の圧力閾値より下がった場合、制御装置360は、閉塞破壊が起こったことを決定する。しかしながら、圧力が第1の圧力閾値以上のままである場合、制御装置360は、閉塞破壊が起こっていないことを決定する。閉塞破壊が起こっていない場合、正常作動がステップ425、続いてステップ415で続く。閉塞破壊が起こった場合、次のステップはステップ430である。
【0037】
ステップ430では、制御装置360は、吸引導管325中の真空圧を減少させる、または逃すために、真空逃し弁350を開放する、または少なくとも部分的に開放するように作動する。真空逃し弁350の開放または少なくとも部分的な開放に際して、吸引導管325内の真空圧は、通気貯槽からバイパス導管345中へ流体を引き出す。この通気貯槽からバイパス導管345中への流体の動きは、吸引導管325内の真空圧の量を緩和または減少させる。上記に説明されるように、いくつかの実施形態では、真空逃し弁350の開放は、真空圧を維持する、または真空圧の減少速度を増大させる。上記に説明されるように、いくつかの実施形態では、制御装置360は、検出された圧力と圧力閾値との間の差に基づいて、弁が開放される量を調節する。したがって、これらの実施形態では、制御装置360は、実際の検出された圧力と第1の閾値との間の差を決定し、次いでこの差に基づいて真空逃し弁を制御することができる。一実施形態では、制御装置は、閾値からの逸脱の量を伴う弁設定に対応する表を含む。作動中、制御装置360は、この表中に見られるデータに基づいて、ある特定の量、弁350を開放することができる。
【0038】
ステップ435では、制御装置360は、吸引圧力が所定の真空圧または第2の圧力閾値より高いかどうかを決定する。制御装置360は、吸引導管325に沿って位置する吸引圧力センサ330で吸引圧力を検出することによりこれを行う。制御装置360は、吸引圧力センサ330と通信し、それから情報を連続的に受容することができる。制御装置360は、吸引圧力330から受容した情報を第2の圧力閾値と比較する。真空圧が第2の圧力閾値以下である場合、真空圧は最小作動圧力より低く、次のステップは、ステップ430に戻ることであり、ここでは真空逃し弁350は開放したままである。
【0039】
圧力が所定の真空圧より高い場合、ステップ440では、真空逃し弁350は閉鎖され、システムが閉塞破壊後に回復することを可能にするためにしばらく経過する。いくつかの態様では、第2の圧力閾値は、真空圧力閾値であり、システムは、真空逃し弁がシステム内の特定の真空を常に維持するように制御されるように取り計らう。真空逃し弁350の閉鎖後、ポンプの連続作動は、所望の真空圧範囲内の吸引導管325内の真空圧を維持するであろう。次のステップは、ステップ425であり、これは正常作動で続けることである。この方法を用いて、閉塞破壊が検出され、真空圧は閉塞破壊後サージを減少させ、または防ぐように制御される。このため、手術中のIOPを、所望の範囲内に維持することができ、IOPの変動は比較的安定であり、これにより乱流の増大及び内皮細胞損傷の可能性を減少させる。
【0040】
代替の実施形態では、図5で例示されるように、システムを操作する方法は、一般的に参照数字510により言及される。ステップ515、520、525、及び530は、それぞれ、方法410のステップ415、420、425、及び430と実質的に同様であり、それゆえ、詳細には説明しない。図5の方法510のステップ535で、真空逃し弁がステップ530で開放された後、真空逃し弁は所定の時間後に閉鎖される。ステップ540では、システムはしばらく待機し、その後、ステップ525で、正常作動で続く。正常作動は、システムが閉塞破壊後に回復または正常化することを可能にするためにしばらく待機した後、再び続けられる。
【0041】
別の代替の実施形態では、図6で例示されるように、システムを操作する方法は、一般的に参照数字610により言及される。ステップ615、620、625、及び640は、それぞれ、方法510のステップ515、520、525、及び540と実質的に同様であり、それゆえ、詳細には説明しない。以下の節から理解されるように、図6の方法は、図5を参照して上記に説明される時間に基づいた作動の代わりに、位置に基づいた作動を使用する。
【0042】
図6の方法は、図3の真空逃し弁350が特定の角度位置まで開放する回転弁である場合、実行することができる。この実施形態では、制御装置360は、弁が開放される量を示すフィードバックを受容する。真空逃し弁350が所定の角度設定に達した場合、制御装置360は、それを閉鎖する。
【0043】
図6を参照して、ステップ630では、制御装置360が、閉塞破壊が起こったと決定した場合、制御装置360は、真空逃し弁630を特定の角度位置まで開放する。いくつかの実施例では、特定の角度位置は、約45度未満、いくつかの実施例では、約30度未満の角度位置である。したがって、いくつかの実施形態では、制御装置360は、特定の位置命令を真空逃し弁350に送る。ステップ635では、制御装置360は、真空逃し弁を閉鎖するように真空逃し弁350を制御する。これは、制御装置360が、弁350が特定の角度位置にあると決定した場合に起こり得る。いくつかの実施形態では、角度位置は、様々な量の逸脱を補填するために、測定された圧力に基づいて実行中に選択することができる。
【0044】
当業者は、本開示により包含される実施形態が、上記に説明される特定の例示的な実施形態に限定されないことを理解するであろう。その点で、例示的な実施形態が示され、説明されたが、広範囲の改変、変化、及び置換が上記開示において企図される。このような変形は本開示の範囲から逸脱することなく、上記になされ得ることが理解される。したがって、付属の請求項は、広く、本開示と一致する様式で解釈されることが適切である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6