特許第6530392号(P6530392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6530392相乗効果を有し組織修復を行う微粒子を備えた真皮基質とその製造方法
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  • 特許6530392-相乗効果を有し組織修復を行う微粒子を備えた真皮基質とその製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6530392
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】相乗効果を有し組織修復を行う微粒子を備えた真皮基質とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/60 20060101AFI20190531BHJP
   A61L 27/24 20060101ALI20190531BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20190531BHJP
   A61L 27/00 20060101ALI20190531BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20190531BHJP
   A61L 15/20 20060101ALI20190531BHJP
   A61L 15/32 20060101ALI20190531BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20190531BHJP
   A61F 13/00 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
   A61L27/60
   A61L27/24
   A61L27/22
   A61L27/00
   A61L27/20
   A61L15/20 100
   A61L15/32 310
   A61L15/32 100
   A61L15/28 100
   A61F13/00 305
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-529742(P2016-529742)
(86)(22)【出願日】2014年7月7日
(65)【公表番号】特表2016-525410(P2016-525410A)
(43)【公表日】2016年8月25日
(86)【国際出願番号】TR2014000251
(87)【国際公開番号】WO2015012775
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2017年6月14日
(31)【優先権主張番号】2013/09048
(32)【優先日】2013年7月25日
(33)【優先権主張国】TR
(73)【特許権者】
【識別番号】517032185
【氏名又は名称】デルミス ファーマ サグリク ヴェ コズメティク ウルンレリ サナイ ヴェ ティカレット アノニム シルケティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オゼル,ケブセル オズゲン
(72)【発明者】
【氏名】ゴクセ,エブレン ホーマン
(72)【発明者】
【氏名】エログル,イペク
(72)【発明者】
【氏名】タンリべルディ,サキネ トゥンカイ
【審査官】 菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−325652(JP,A)
【文献】 ARTIFICIAL ORGANS,2002年,Vol.26, No.7,p.636-646
【文献】 International Journal of Nanomedicine,2012年,Vol.7,p.1841-1850
【文献】 Minerva ginecologica,2010年,Vol.62, No.3,p.195-201
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/60
A61F 13/00
A61L 15/20
A61L 15/28
A61L 15/32
A61L 27/00
A61L 27/20
A61L 27/22
A61L 27/24
WPI
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真皮基質製造方法(10)であって、
‐コラーゲン溶液系を調製するステップ(111)と、
‐ラミニンをコラーゲン溶液に添加し混合するステップ(112)と、
‐前記混合物を冷凍保存するステップ(113)と、
‐前記保存した混合物を凍結乾燥するステップ(114)と、
‐前記凍結乾燥物を架橋結合するステップ(115)と、
を備える真皮基質系を調製するステップ(11)と、
‐ヒアルロン酸(HA)が純水に溶解されるポリマー水溶液を調製するステップ(121)と、
‐ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)とレスベラトロールがアルコール中に混合され溶解されるリン脂質、酸化防止剤、アルコールの混合物を調製するステップ(122)と、
‐前記水溶液を前記アルコール混合物に添加し混合するステップ(123)と、
‐得られた混合物全体を噴霧乾燥するステップ(124)と、
を備える、レスベラトロール装填ヒアルロン酸(HA)−ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)微粒子を形成するステップ(12)と、
前記レスベラトロール装填ヒアルロン酸(HA)−ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)微粒子が、凍結乾燥物である前記真皮基質上に噴霧されて、前記微粒子と前記真皮基質が合わされるステップ(13)と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
0.7〜0.75gのジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)と0.05〜0.1gのレスベラトロールが350mLのアルコールに混合され溶解されるリン脂質、酸化防止剤、アルコールの混合物の調製ステップ(122)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の真皮基質製造方法(10)。
【請求項3】
前記水溶液が前記アルコール混合物に添加され40±1℃で混合される(123)ことを特徴とする請求項1に記載の真皮基質製造方法(10)。
【請求項4】
0.1%(w/v)の濃度でウシのコラーゲンを0.1M酢酸溶液に添加することによるコラーゲン溶液の調製ステップ(111)を備えることを特徴とする請求項1に記載の真皮基質製造方法(10)。
【請求項5】
調製された2.5mlの前記コラーゲン溶液を取り出し、20μlのラミニンを添加して氷浴中で混合することによって、ラミニンを前記コラーゲン溶液に添加するステップ(112)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の真皮基質製造方法(10)。
【請求項6】
前記コラーゲンとラミニンの混合物が−20±1℃の温度で一晩12時間放置される前記混合物の冷凍保存ステップ(113)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の真皮基質製造方法(10)。
【請求項7】
冷凍および放置された混合物が24時間凍結乾燥され、その結果、前記混合物内に存在する感熱性生体材料の劣化が防止される前記保存された混合物の凍結乾燥ステップ(114)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の真皮基質製造方法(10)。
【請求項8】
凍結乾燥物構造が紫外線架橋(UV−架橋)装置を用いて254nm波長下で架橋結合される凍結乾燥物の架橋結合ステップ(115)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の真皮基質製造方法(10)。
【請求項9】
0.2gのヒアルロン酸(HA)が150mLの純水に溶解されるポリマー水溶液の調製ステップ(121)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の真皮基質製造方法(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慢性創傷の治療に使用され、構造内に相乗効果を有する酸化防止剤入りの微粒子を含み、真皮組織を迅速に修復することができる真皮基質およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーム、ジェル、ローション、軟膏などの従来製品が慢性創傷の治療に使用されている。前記製品を治療の際に有効にするため、頻繁な塗布が必要とされる。さらに、塗布量も標準化しなければならない。
【0003】
しかしながら、従来のアプローチの一部を成すこうした問題を排除することができるかもしれない現行の治療がある。このような治療では、大きな組織欠損領域を新たな組織で補う異種移植片および移植片の移植方法が適用される。これらの方法は痛みを伴うと同時に、ドナーに基づく欠点を有する可能性がある。
【0004】
慢性創傷治療において既知な最新の最終段階は革新的な製剤を含む。微粒子系と基質系は、従来技術の方法よりも有効な治療方法を提供する。実行された文献研究の結果、領域の治癒を助け、必要な機械的支持を提供し、閉塞作用を通じて各種創傷の結果である欠損組織領域を補う基質が開発されていることが分かった。特にコラーゲン−キトサン、コラーゲン−ゼラチン、コラーゲン−グリコサミノグリカン、コラーゲン−ヒアルロン酸組成物を含む真皮基質が調製され、これらに繊維母細胞を培養することによって創傷組織の治癒が観察されている。
【0005】
真皮基質は、細胞の成長と発育を効果的に支持するために天然または合成ポリマーで調製される系であり、創傷の治療の際にこれらを使用することで新たな視野が開かれてきた。これらの構造の主目的は、損傷を負った組織を再成長させて、この領域に様々な生体材料および生物活性分子を担持させることである。
【0006】
近年、様々な特徴を備えた、上皮を治癒させる市販製品が存在する。前記製品では、天然ポリマーであるキトサンを含めて調製した創傷パッチが使用される、あるいは合成ポリウレタンやPLGAなどのポリマーが使用されて、ケラチン生成細胞が表皮に小さなコロニーを形成する培地が提供されることによって上皮がより急速に形成される。上皮が置換される前記製品では、2次元構造が提供される。しかしながら、上皮形成に好ましいこの2次元は、3次元構造を必要とする代替治療では十分ではない。
【0007】
創傷領域は感染や類似の合併症に無防備であり、感染を防止する最も効果的なアプローチはできるだけ早急に効果的な治療を施すことである。最初の6時間が、創傷を負った後の細菌定着にとって最も重要な期間である。感染を防止する最も効果的な方法は、創傷全体に無菌パッチを当てることで創傷を封止し、無菌パッチによる封止前に創傷を無菌状態下で浄化することである。こうした条件は抗生物質治療よりもずっと有効である。このため、創傷をすぐに被覆し、真皮層の自己修復を高め、組織領域と置き換わる完全な層状組織を成長させることが、最新の研究で扱わなければならない重要課題である。
【0008】
創傷治療に使用される従来のアプローチ(軟膏、クリーム、ジェル、ローション)は、創傷の感染、保護されずにいる生存組織の乾燥や熱損失、タンパク質、赤血球、白血球、免疫因子や微量元素の損失といった基本的な問題を克服することができない。
【0009】
従来の製剤の最も大きな欠点の一つは、塗布量が変動する場合があり、その結果、塗布量を標準化することができず、頻繁な塗布が必要とされることである。塗布の実行の度、患者は痛みを覚え、このことが治療手順をより困難にする。さらに、これらの製剤で使用される界面活性剤または防腐剤や香料などの成分によりアレルギー反応が起こる可能性がある。従来の療法の他に、大きな組織欠損の場合に実行される治療である移植片の移植も多くの欠点を有する。これらの欠点は、ドナーから病気が移されることや、移植片を採取するドナー領域に新たな創傷を形成することなどである。自家移植片は好ましい材料であるが、場合によっては、患者に移植するのに適切な肌組織がない場合がある。これに加えて、移植片組織を採取する領域に新たな創傷が生成される。もう1つの欠点として、これらの手順は外科的処置を必要とする場合がある。感染などの合併症を防止し、前記欠点を克服するため、治療期間を短縮する革新的なアプローチが必要とみなされる。
【0010】
これらの目的を達成するために調製された、コラーゲン、キトサン、ゼラチンを含む製剤は2次元系であり、物理的支持を提供するには不十分である。この課題を克服するため、コラーゲンを用いて調製される真皮基質が確実に化学物質を含む3次元となるように使用される方法は、細胞を成長させるのに必要な条件を損なう。現行の技術では、前記目的を達成するように開発された製品は微粒子を含んでおらず、細胞をわずかに早く成長させることのできる創傷パッチのように作用する。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、慢性創傷治療の効率を高め、治癒期間を低減し、確実に組織修復する真皮基質を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、コラーゲンとラミニンだけでなく、その相乗効果によって組織修復速度を速めるのに寄与する酸化防止剤を担持する微粒子を含む真皮基質を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、真皮と他の成分の天然構造内に配置されたタンパク質から成る薬剤が使用される、組織修復を可能にする真皮基質の製造方法を得ることである。
【0014】
本発明の別の目的は、化学的方法ではない架橋方法を使用することによって細胞成長と組織修復を支援する真皮基質製造方法を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、組織修復を可能とし、感熱性生体材料が凍結乾燥手順の適用によって劣化するのを防止する真皮基質製造方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の目的を達成するため、組織修復を行う真皮基質製造方法を添付図面に示す。図面は以下に示す。
【0017】
図1】本発明に係る方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
相乗効果を有し組織修復を行う真皮基質製造方法(10)は、
‐真皮基質系を調製することと(11)、
‐コラーゲン溶液系を調製することと(111)、
‐ラミニンをコラーゲン溶液に添加し混合することと(112)、
‐混合物を冷凍保存することと(113)、
‐保存した混合物を凍結乾燥することと(114)、
‐凍結乾燥物を架橋結合することと(115)、
‐微粒子を形成することと(12)、
‐ポリマー水溶液を調製することと(121)、
‐リン脂質、酸化防止剤、およびアルコールの混合物を調製することと(122)、
‐水溶液をアルコール混合物に添加し混合することと(123)、
‐得られた混合物全体を噴霧乾燥することと(124)、
‐微粒子と真皮基質系とを合わせることと(13)、
を備える。
【0019】
本発明に係る方法(10)は主に、真皮基質系と微粒子系とを別々に調製することと、これに続き微粒子を真皮基質に噴霧することによってこれら2つの系を物理的に合わせることに基づく。
【0020】
本発明に係る方法(10)によると、まず真皮基質系を調製する(11)ためにコラーゲンを酢酸溶液に添加することによってコラーゲン溶液が調製される(111)。本発明の好適な適用では、ウシのコラーゲンが0.1%〜0.1Mの濃度の酢酸溶液で添加される(111)。
【0021】
これに続き、ラミニンがコラーゲン溶液に添加される(112)。本発明の好適な実施形態では、調製されたコラーゲン溶液2.5mlが取り出され、20μlのラミニンが添加され、すべてが氷浴内で混合される(112)。氷浴を用いるのは、混合物内に存在するタンパク質構造の劣化を防止するためである。本発明の好適な実施形態では、混合は10−Gプローブを使用して1分間、3000サイクル/分の速度で実行される。
【0022】
コラーゲンとラミニンを含む混合物は、−20±1℃の温度で12時間放置され、冷凍される(113)。これに続き、冷凍された前記混合物が、24時間凍結乾燥される(114)。これによって、前記混合物内の感熱性生体材料の劣化が確実に防止される。
【0023】
得られたコラーゲンとラミニンを含む凍結乾燥物構造は、紫外線架橋(UV−架橋)装置を用いて254nm波長下で架橋結合される(115)。別の場所で、微粒子を形成するため(12)、ポリマー水溶液が調製される(121)。これを確保するため、0.2gのヒアルロン酸ナトリウム塩(HA)が使用され、150mlの純水に溶解される。その間、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)とレスベラトロールがアルコールに混合されて溶解される(122)。本発明の好適な実施形態では、0.7〜0.75gのDPPCと0.05〜0.1gのレスベラトロール350mlがエタノールに添加されて混合される(122)。レスベラトロール(酸化防止剤)の使用はタンパク質構造を形成するコラーゲンとラミニンとの相乗効果をもたらし、その結果、組織修復に関する最終生成物の効率が高まる。加えて、最終生成物の基質の完全性が長期間確実に保持される。
【0024】
調製されたHA溶液(121)はアルコール内のDPPCおよびレスベラトロール溶液(122)に添加され、40±1℃で混合される(123)。調製された混合物全体が噴霧乾燥器内に配置され、微粒子が噴霧によって得られる(124)。本発明の好適な実施形態では、噴霧乾燥器は、当初の温度が180℃、噴霧速度が400L/hとなるように調節された。
【0025】
レスベラトロールを装填し、噴霧乾燥器を用いて作製されたHA微粒子は、予め乾燥粉末として作製された真皮基質(11)上に噴霧され、前記2つの系を合わせる(13)。本発明の好適な実施形態によると、噴霧される微粒子は50μmのレスベラトロールを含む、得られたこれらの基質は特に慢性創傷治療に使用され、創傷の治癒速度を大幅に早める。
【0026】
本発明に係る方法を用いて取得される真皮基質の径および厚を判定するため、自動コンパスが使用されて、基質の径および厚が評価される。実行した分析の結果、得られた真皮基質の平均径は2.24±0.05cmであり、測定された厚さは0.23±0.04cmであった。
【0027】
表面形態の判定のために走査電子顕微鏡および共焦点顕微鏡を用いて得られた真皮基質の孔径が最大で約100μmであると測定された。これに加えて、3次元コラーゲン繊維が存在し、微粒子が架橋結合されていることが観察された。
【0028】
保水性を持つように調製された基質が20秒間、37±1℃の水中に放置され、その後で重量が測定された。当初の重量のパーセントを計算し、試験終了後に測定された重量と比較したところ、保水能力は84±1.5%であると判定された。
【0029】
TA−XTおよびテクスチャ解析装置を使用して、真皮基質の機械的特性を判定した。分析の結果、硬度26〜21N、圧縮度23〜18N/mm、凝集度0.93〜1、弾性値0.8〜1が、基質の属するパワー時間曲線によって算出された。湿気含有量の判定の結果、本発明に係る真皮基質の湿気量は0.2%であると算出された。真皮基質内の微粒子の寸法は、レーザ回析法を用いて15〜30μmであると算出された。
【0030】
SEMを用いて得られた画像から分かるように、製剤は球形であり、滑らかな表面を有する。SEMで観察された粒径と、予め実行したレーザ回析分散法の結果とを比較して、寸法が一定であることが分かった。
【0031】
調製された微粒子の薬剤担持能力は0.5〜1mg、封入効率は97%〜98.7%であると算出された。
【0032】
微粒子からのレスベラトロールの放出量を判定するため、様々なレスベラトロール濃度で微粒子製剤からの活性物質放出研究を実行した。分析結果が示すように、24時間で製剤から放出されたレスベラトロール量は73〜85%であった。
【0033】
微粒子からのレスベラトロールの放出に関連して、ヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ酵素の作用を調査した。真皮基質に対する酵素効果を調べるため、ヒアルロニダーゼとコラゲナーゼ酵素とで別個の酵素劣化研究を実行した。微粒子を含んでいない真皮基質は30分間でコラゲナーゼにより酵素的に劣化したが、レスベラトロール装填微粒子を含む真皮基質は劣化に2倍の時間を費やした。レスベラトロールは創傷治癒のサポートに有効であるだけでなく、コラゲナーゼに対して基質の完全性をより長い期間保護することでも有益であった。
【0034】
共焦点顕微鏡3Dソフトウェアプログラムが、微粒子が真皮基質において均質に分布されているか、およびどこに集中しているかを判定するために使用された。共焦点研究は一新され、データはこのプログラムの下で評価されている。実行された形態研究が示すように、微粒子は真皮基質の上面でより均質に分布され、完全に基質と接触していることが分かった。
【0035】
ヒトの真皮の線維芽細胞(インビトロゲンC−013−5C)を、製作者の指示に従い37±0.5℃および5%COの高湿条件下で培養した。レスベラトロール溶液は、レスベラトロールを含まない製剤とレスベラトロールを含む微粒子製剤とで24時間培養され、細胞活力に関するすべてのサンプルの作用を検査した。空である、あるいは活性物質を実際に含むレスベラトロール溶液または製剤は細胞毒性を持たないことが観察され、50μmのレスベラトロール含有量に相当する濃度で細胞増殖効果を発揮することが示された。分析した細胞内のトータルグルタチオン、マロンジアルデヒド、超酸化物ジスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどの酸化的ストレスパラメータについて検査した。得られた結果では、レスベラトロールに関して調剤された薬剤種は分子レベルで酸化活性を有することが分かった。
【0036】
結論として、近年の研究によると、創傷治癒は製剤内の選択された成分に左右され、真皮の天然構造を形成するタンパク質を含む革新的な製剤は効率的な治療を提供し、治療期間を短縮することができる。長期的な創傷治療のために新たな薬剤担持系を作製する必要があることは自明である。選択された組み合わせを含む新世代の製剤は存在しない。組織修復に関連する真皮基質とレスベラトロールとの相乗効果は、本発明で初めて評価された。
図1