(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記サブローラを2つ備える上、2つの前記メインローラにおける少なくとも1つを回転駆動する駆動手段を更に備えており、各前記メインローラの直径は250mm〜400mmの範囲内にあり、各前記サブローラの直径は30mm〜160mmの範囲内にあり、各前記サブローラのそれぞれの中心軸の間の距離は、155mm〜320mmの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のダイシング手段。
前記サブローラは、該サブローラ本体の円筒状の両端にそれぞれある2つの軸端部を更に有するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のダイシング手段。
前記サブローラは、該サブローラ本体の円筒状の両端にそれぞれある2つの軸端部と、2つの前記軸端部とそれぞれ隣接する設置部と、前記サブローラ本体の外表面において凹設されている取付け孔とを更に有するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のダイシング手段。
シリコンインゴットを保持しながら下方へ送ることができる送りユニットと、前記送りユニットにより送られてきた前記シリコンインゴットからウエハを切り出すダイシング手段と、を備え、
前記ダイシング手段は、
それぞれの回転軸が前記送りユニットの下方にある所定の水平面において互いに間隔を開けるように平行に配置されている2つのメインローラと、
太さが40μm〜80μmの範囲内にあり、前記メインローラの延伸方向における一端側から他端側にかけて、前記2つのメインローラを交互に往復するよう略コイル状に前記2つのメインローラに巻き付けられたワイヤソーと、
それぞれ中空の円筒状に形成されているサブローラ本体と、該サブローラ本体の円筒状の両端にそれぞれある2つの軸端部とを有し、前記サブローラ本体の直径が前記メインローラの直径の半分より短く形成され、且つ前記所定の水平面における投影位置が前記2つのメインローラのそれぞれの回転軸の間となるように前記2つのメインローラと平行に配置されると共に、前記所定の水平面と直交する高さ方向において、最高点が前記2つのメインローラよりも高い位置となるよう配置することにより、前記ワイヤソーの一部を加工エリアとして下から押し上げると共に、中心軸が前記高さ方向において前記メインローラの最高点より低い位置にある2つのサブローラとを備え、
前記ワイヤソーは、前記2つのメインローラを交互に往復するよう略コイル状に前記2つのメインローラに巻き付けられるため、前記2つのサブローラにより下から押し上げられる複数の前記加工エリアを有しており、
前記送りユニットは、前記所定の水平面における投影位置が前記2つのサブローラの間となるように配置されており、
前記ワイヤソーの各前記加工エリアの前記所定の水平面における投影位置が、前記メインローラの回転軸と直交し、且つ、
前記2つのメインローラがそれらの回転軸を中心として、時計回りと反時計回りへの回転を交互に繰り返した際に、前記ワイヤソーは前記2つのメインローラにより駆動されてその延伸方向に沿って往復運動することを特徴とするダイシング装置。
2本の前記メインローラにおける1本を第1のメインローラとし、他の1本を第2のメインローラとし、2本の前記サブローラにおいて前記第1のメインローラと前記送りユニットとの間にある1本を第1のサブローラとし、他の1本を第2のサブローラとすると、
前記送りユニットの隣で前記第1のメインローラの上方に位置している上側洗浄ユニットを有する洗浄手段を更に備えており、前記上側洗浄ユニットは、中心管体部と、該中心管体部から外側へ延伸して前記第1のサブローラに向かって開口する複数のノズルとを有するように構成されており、
前記複数の加工エリアが存在する平面を加工平面とし、
前記上側洗浄ユニットが有する各前記ノズルのそれぞれが開口する方向は、前記加工平面と10°〜80°の範囲内にある鋭角をなすようになっていることを特徴とする請求項7に記載のダイシング装置。
前記所定の水平面と直交し、且つ前記送りユニットにより保持される前記シリコンインゴットのすぐ隣を通過する参考面の、前記第1のサブローラまでの最短距離である第1の最短距離は、10mm〜30mmの範囲内にあり、且つ、
前記参考面の、前記第1のメインローラまでの最短距離である第2の最短距離は、60mm〜130mmの範囲内にあることを特徴とする請求項8に記載のダイシング装置。
前記機材用意工程において、前記第1のメインローラの近くに配置され、前記第1のメインローラ及び第2のメインローラの時計回りの回転と反時計回りの回転に応じて前記ワイヤソーの一端部を繰り出し、且つ巻き取ることができる第1のスプールと、前記第2のメインローラの近くに配置され、前記第1のメインローラ及び第2のメインローラの時計回りの回転と反時計回りの回転に応じて前記ワイヤソーの他端部を繰り出し、且つ巻き取ることができる第2のスプールと、をも用意し、
前記加工工程において、前記第1のスプールと前記第2のスプールは前記ワイヤソーの繰り出しと巻き取りを繰り返すうち、前記第2のスプールが前記ワイヤソーを巻き取った分より、繰り出した分が上回り、そして前記第1のスプールが前記ワイヤソーを繰り出した分より、巻き取った分が上回るように前記第1のスプールと前記第2のスプールを制御することにより、前記ワイヤソーが前記シリコンインゴットに対して加工を行った加工エリアは前記第1のスプールにより徐々に回収されるようになり、
前記洗浄工程において、前記第1のスプールが前記ワイヤソーの繰り出しを行い、前記第2のスプールが前記ワイヤソーの巻き取りを行うように前記第1のスプールと前記第2のスプールを制御することにより、前記ワイヤソーが前記シリコンインゴットに対して加工を行った加工エリアを前記第2のスプールに回収することを特徴とする請求項11に記載のダイシング方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】従来のダイシング手段の一例が示されている模式図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態の構成が示されている斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態の構成が示されている分解斜視図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態の構成が示されている断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態の作動方法が示されている断面図である。
【
図6】本発明に用いられるサブローラの第1の構成例が示されている断面図である。
【
図7】本発明に用いられるサブローラの第2の構成例が示されている断面図である。
【
図8】本発明に用いられるサブローラの第3の構成例が示されている断面図である。
【
図9】本発明においてサブローラが取付けられている構成が示されている一部断面図である。
【
図10】本発明における設置リングの構成が示されている断面図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態の構成が示されている斜視図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態の作動方法が示されている断面図である。
【
図13】本発明の第3の実施形態の構成が示されている斜視図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態においてサブローラが取付けられている構成が示されている一部断面図である。
【
図15】本発明の第4の実施形態の構成が示されている斜視図である。
【
図16】本発明の第5の実施形態の構成が示されている斜視図である。
【
図17】本発明の第6の実施形態の構成が示されている斜視図である。
【
図18】本発明の第7の実施形態の構成及び作動方法が示されている断面図である。
【
図19】本発明の第7の実施形態の構成及び作動方法が示されている一部拡大断面図である。
【
図20】本発明の第7の実施形態に用いられる上側洗浄ユニットの構成が示されている模式図である。
【
図21】本発明の第7の実施形態に用いられる第1の下側洗浄ユニットの構成が示されている模式図である。
【
図22】本発明の第7の実施形態に用いられる第2の下側洗浄ユニットの構成が示されている模式図である。
【
図23】本発明のダイシング方法が示されているフローチャートである。
【
図24】本発明のダイシング方法における機材用意工程が示されている模式図である。
【
図25】本発明のダイシング方法における加工工程が示されている模式図である。
【
図26】本発明のダイシング方法における加工工程でシリコンインゴットからウエハを切り出す様子が示されている模式図である。
【
図27】本発明のダイシング方法における洗浄工程が示されている模式図である。
【
図28】本発明のダイシング方法において送りユニットが上方へ移動する様子が示されている模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の各好ましい実施形態について詳しく説明する。
【0013】
図2〜
図5に本発明の第1の実施形態であるダイシング装置が示され、
図2は該ダイシング装置の構成が示されている斜視図であり、
図3はその分解斜視図であり、
図4はその断面図であり、そして
図5はその作動方法が示されている断面図である。
【0014】
図示されているように、本発明のダイシング装置は、シリコンインゴット20を保持しながら下方へ送ることができる送りユニット22と、送りユニット22により送られてきたシリコンインゴット20からウエハを切り出すダイシング手段3と、を備えている。
【0015】
そして本発明のダイシング手段は、シリコンインゴット20からウエハを切り出すダイシング手段であって、それぞれの回転軸512が所定の水平面S1において互いに間隔を開けるように平行に配置されている2つのメインローラ51と、メインローラ51の延伸方向における一端側から他端側にかけて、2つのメインローラ51を交互に往復するよう略コイル状に2つのメインローラ51に巻き付けられたワイヤソー21と、直径がメインローラ51の直径の半分より短く形成され、且つ水平面S1における投影位置が2つのメインローラ51のそれぞれの回転軸512の間となるように2つのメインローラ51と平行に配置されると共に、水平面S1と直交する高さ方向において、最高点が前記2つのメインローラ51よりも高い位置となるよう配置することにより、ワイヤソー21の一部を加工エリア211として下から押し上げる少なくとも1つ(この実施形態では2つ)のサブローラ52とを備えている上、ワイヤソー21の加工エリア211の水平面S1における投影位置が、メインローラ51の回転軸512と直交し、且つ、2つのメインローラ51がそれらの回転軸512を中心として、時計回りと反時計回りへの回転を交互に繰り返した際に、ワイヤソー21は2つのメインローラ51により駆動されてその延伸方向に沿って往復運動するようになっている。
【0016】
なお、本発明において用いられるワイヤソーとしては、例えばダイヤモンドの砥粒を有し、太さが40μm〜80μm程度のダイヤモンドワイヤソーを使用することができるが、これに限らず好適なものを用いることもできる。
【0017】
各メインローラ51は直径が250mm〜400mmの範囲内にありことが好ましく、各サブローラ52は直径が30mm〜160mmの範囲内にあることが好ましい。
【0018】
2つのサブローラ52は、それぞれの中心軸の間の距離を切削するシリコンインゴット20の太さに応じて調整することが可能であるが、200mm〜290mmの範囲内にあるように配置されることが好ましい。そしてこの場合、サブローラ52の直径は60mm〜90mmの範囲内にあることが好ましい。また、2つのサブローラ52のそれぞれの中心軸529の間の距離は、155mm〜320mmの範囲内にあるように設定することが好ましい。
【0019】
この実施形態において、2つのメインローラ51をそれぞれ回転駆動する駆動手段6としてのモータ61と、各メインローラ51を及びサブローラ52を保持する保持手段4と、を備えている。
【0020】
保持手段4は、各メインローラ51のそれぞれの端部を回転可能に受け入れて保持する4つの保持座41を有すると共に、2つのメインローラ51の同一側にある2つの保持座41は、連結アーム42により連結されている。そして各連結アーム42は2つのサブローラ52を回転可能に保持できるように構成されている。
【0021】
また、2つのサブローラ52の間に相当する箇所の下側には、シリコンインゴット20に対して加工を行う際において生じる破片や微粒子を受け取る収容手段23が配置されている。
【0022】
ワイヤソー21は、2つのメインローラ51を交互に往復するよう略コイル状に2つのメインローラ51に巻き付けられると共に、2つのサブローラ52により下から押し上げられてテンションがかけられた複数の加工エリア211を有している。
【0023】
そしてメインローラ51の表面には、ワイヤソー21を受け入れて案内することができる複数のワイヤ溝511が形成されており、そしてサブローラ52の表面には、互いに間を開けて配置され,且つワイヤソー21が有する各加工エリア211によりそれぞれ嵌め込まれる複数のワイヤ溝520が形成されている。この実施形態では、各ワイヤ溝511またはワイヤ溝520は所定の間隔を空けるように形成されているが、これらに限らず、必要に応じて隣り合う2つワイヤ溝511またはワイヤ溝520の間隔を調整することは可能である。
【0024】
メインローラ51とサブローラ52との位置関係については、前記高さ方向において、サブローラ52の最低点は、メインローラ51の最高点と同等の高さ、または該最高点より低い位置にあることが好ましく、そしてサブローラ52の中心軸529は、メインローラ51の最高点と同等の高さ、または該最高点より低い位置にあることが好ましい。
【0025】
この実施形態において、サブローラ52の中心軸529は、メインローラ51の最高点より低い位置にある。
【0026】
上記構成により、
図5に示されるように、送りユニット22がシリコンインゴット20を保持しながら該シリコンインゴット20をワイヤソー21が有する各加工エリア211へ移動させると、2つのメインローラ51の時計回りと反時計回りへの繰り返し回転により駆動されるワイヤソー21は、その延伸方向に沿って往復運動しながら、該シリコンインゴット20を切削することができる。
【0027】
この実施形態において、2つのサブローラ52が前記高さ方向において同じ高さで配置されているので、2つのサブローラ52により押し上げられるワイヤソー21の各加工エリア211も水平面S1と平行に配置されているので、シリコンインゴット20を均一的に切削することができる。
【0028】
本発明におけるサブローラ52がシリコンインゴット20に対して加工を行う際において受ける力の大きさは、サブローラ52が回転する際における慣性能率に比例するため、サブローラ52が回転する際における慣性能率が高ければ高いほど、ワイヤソー21が有する各加工エリア211の磨耗は速くなる。そしてワイヤソー21が磨耗して80μm以下になると、ワイヤソー21が切れてしまう可能性が飛躍に高くなる。一方、サブローラ52を細く形成することにより慣性能率を軽減しようとすると、サブローラ52自体の強度が足りずに加工中に折れてしまう恐れもある。従って、本発明はサブローラ52の直径をメインローラ51の3分の1〜5分の1程度、即ち60mm〜90mmの範囲内にすると共に、サブローラ52の中心軸529を、前記高さ方向においてメインローラ51の最高点と同等の高さ、または該最高点より低い位置に配置することによりこの問題点を克服する。
【0029】
以下は
図6〜
図9を用いて、本発明においてサブローラ52の慣性能率を軽減することができる各構成例について詳しく説明する。
【0030】
図6〜
図9に本発明の第1の実施形態に用いられるサブローラ52の各構成例が示されている。
【0031】
図6にサブローラ52の第1の構成例が示されており、図示されているように、本発明に用いられるサブローラ52は、中空の円筒状に形成されているサブローラ本体521と、該サブローラ本体521の円筒状の両端にそれぞれ形成され且つ外径がサブローラ本体521より細い2つの軸端部522とを有するように構成されることができる。このように、サブローラ52のサブローラ本体521を中空の円筒状に形成することにより、その慣性能率を軽減することができる。
【0032】
図7にサブローラ52の第2の構成例が示されており、図示されているように、本発明に用いられるサブローラ52は、例えばアルミニウムなどの軽い金属材により中実の円柱状に形成されているサブローラ本体521と、鉄などの比較的に重い金属材により形成されて該サブローラ本体521の円筒状の両端にそれぞれ取付けられた2つの軸端部522とから構成されることもできる。この構成においては、例えば各軸端部522を加熱してからサブローラ本体521に取り付け、そして冷却した後固定ピン523を各軸端部522及びサブローラ本体521を挿通することにより作成することができる。このように複数種類の材料により作成されたサブローラ52は、鉄材料のみで作成されたサブローラより17%の慣性能率を軽減することができる。
【0033】
図8にサブローラ52の第3の構成例が示されており、図示されているように、この第3の構成例は中空の円筒状に形成されているサブローラ本体521と、該サブローラ本体521の円筒状の両端にそれぞれ取付けられた2つの軸端部522と、2つの軸端部522をそれぞれサブローラ本体521に固定する固定ピン523と、中空の円筒状に形成されたサブローラ本体521内に充填されている発泡材524と、サブローラ本体521の外表面に被布されている保護材525とを有するように構成されている。この構成例において、サブローラ本体521は炭素繊維強化炭素複合材料により構成され、発泡材524としては例えばエチレンビニルアセタートを使用することができ、そして保護材525としては、ポリウレタンを使用することができる。このように複数種類の材料により作成されたサブローラ52は、鉄材料のみで作成されたサブローラより50%の慣性能率を軽減することができる。
【0034】
なお、保護材525が被布されているのは、ワイヤソー21がシリコンインゴット20を切削する際、ワイヤソー21を押し上げるサブローラ52も切削されるためであり、ワイヤ溝520は該保護材525の表面に形成されている。
【0035】
図9にサブローラ52の第4の構成例が示されており、図示されているように、この第3の構成例は
図8にサブローラ52の第3の構成例の2つの軸端部522とサブローラ本体521との間に、直径が軸端部522より長く、且つサブローラ本体521より短い設置部528を設ける上、2つの軸端部522にそれぞれ取り付けられている軸受け526と、各軸受け526にそれぞれ取り付けられているスリーブ527と、を更に備えている。このように、サブローラ52に軸受け526配置して保持手段4の連結アーム42に取付けることによって、サブローラ52回転状態をスムーズにキープすることができる。
【0036】
上記のように、ワイヤソー21がシリコンインゴット20を切削する際、ワイヤソー21を押し上げるサブローラ52も切削されるので、サブローラ52の表面に形成されている保護材525が磨耗すると設置しなおす必要があり、そしてワイヤ溝520は保護材525の表面に形成されるため、保護材525を取り替えるたびに新たに形成する必要もある。しかし、サブローラ52は連結アーム42に回転自在に取付ける必要がある一方、ワイヤ溝520を保護材525の表面に形成する際、サブローラ52が軸受け526並びにスリーブ527対して回転自在のままでは、ワイヤ溝520の形成は難しいので、この際、サブローラ52の1つの前記スリーブ527と接続されている設置リング9を該スリーブ527の近くにある前記設置部528に設置し、そして該設置リング9を挿通してサブローラ本体521の外表面において凹設されている取付け孔530に、ボルト状の係止手段92挿し込むことにより、スリーブ527とサブローラ本体521との相対回転を制限することにより、スリーブ527及びサブローラ本体521を回転させながらワイヤ溝520を形成することができる。
【0037】
また、
図10に示されているように、設置リング9は半円環状の下リング部911と、半円環状の上リング部912と、下リング部911と上リング部912との間に介在する水密シール913とを有するように構成することができる。
【0038】
上記のように、本発明における
図2のサブローラ52がシリコンインゴット20に対して加工を行う際において受ける力の大きさは、サブローラ52が回転する際における慣性能率に比例するため、サブローラ52を慣性能率を軽減できる構成にすることにより、保護材525の使用寿命を延ばすことができると共に、ワイヤソー21の砥粒が剥離する確率を抑えて磨耗する速度を抑えることもできる。更に、各メインローラ51に関しては、上記サブローラ52の構成例を参考としてその慣性能率を軽減することもできる。
【0039】
図11は本発明の第2の実施形態の構成が示されている斜視図であり、
図12は本発明の第2の実施形態の作動方法が示されている断面図である。
【0040】
図示のように、本発明の第2の実施形態は第1の実施形態と多く共通しているが、この第2の実施形態には一本のサブローラ52のみが配置されている。即ち、本発明においてサブローラ52の数は第1の実施形態のようには2本に限らず、一本のみでも本発明の効果を果たすことができる。そして
図12に示されているように、一本のみのサブローラ52により押し上げられるワイヤソー21の各加工エリア211も水平面S1と平行にならずに斜めに配置されているのでシリコンインゴット20に対する切削効果を向上させることができる。
【0041】
図13は本発明の第3の実施形態の構成が示されている一部省略斜視図であり、
図14は本発明の第3の実施形態においてサブローラが取付けられている構成が示されている一部断面図である。
【0042】
図示のように、本発明の第2の実施形態は第1の実施形態と多く共通している。
図13には本発明の第3の実施形態が有する2本のサブローラ52を省略することにより、保持手段4の保持座41がメインローラ51を保持する構造、並びに連結アーム42がサブローラ52を保持する構造を見やすく表示している。
【0043】
即ち、この第3の実施形態において、保持手段4の保持座41には、各メインローラ51のそれぞれの端部を回転可能に受け入れて保持する4つ保持孔411が形成されている。そして連結アーム42は隣接する2つの保持孔411の間に配置され、且つ各サブローラ52の一つの軸端部522を下から受け入れて保持するサポータ421と、サポータ421に対応して該サポータ421が受け入れて保持するサブローラ52の軸端部522を上から覆うカバー422と、を有するように構成されている。
【0044】
また、各サブローラ52を取付ける前では、
図13に示されているように、校正棒81を各サポータ421及びカバー422の間に挿し込まれた2つ(図中では1つのみ表示)の校正棒81が前記所定の水平面S1と平行且つ前記高さ方向において同じ高さを有すことを確認してから、またはそのように調整してから、各サブローラ52を取付けることができる。
【0045】
更に、
図14に示されているように、この実施形態に用いられるサブローラ52は
図9に示されるように軸受け526及びスリーブ527を備えた第4の構成例と多く共通している上、スリーブ527の外表面に、スリーブ527とサポータ421またはカバー422との間に介在するダンパー80が配置されている上、スリーブ527の外表面にはダンパー80が嵌め込まれる環状溝800が形成されている。ちなみに、この実施形態に用いられるダンパー80はOリングである。
【0046】
このように、ダンパー80を配置することにより、連結アーム42に取付けられるサブローラ52の安定性を確保することができる。更に、ダンパー80がスリーブ527とサポータ421またはカバー422との間に介在することにより、スリーブ527とサポータ421またはカバー422とのサイズ的誤差に対応することもできる。
【0047】
図15は本発明の第4の実施形態の構成が示されている斜視図である。図示のように、本発明では各サブローラ52を回転駆動するサブ駆動モータ62を更に配置することができる。即ち、サブローラ52が回転する構成としては、メインローラ51と連動して回転するように構成してもよく、サブローラ52を回転駆動させる例えばサブ駆動モータ62などの駆動手段を設けることも可能である。そしてサブ駆動モータ62を設ける利点としては、メインローラ51を駆動するモータ61に対する出力の要求を下げることができ、低出力のモータ61及びサブ駆動モータ62を用いることでコストを節約する可能性もある。
【0048】
図16は本発明の第5の実施形態の構成が示されている斜視図である。図示のように、本発明ではメインローラ51とサブローラ52とを連動させる連動ベルト63をメインローラ51とサブローラ52に掛け渡すこともできる。この構成により、サブローラ52はメインローラ51と安定して連動することができる。
【0049】
図17は本発明の第6の実施形態の構成が示されている斜視図である。図示のように、サブローラ52は連結アームに取付ける必要はなく、隣のメインローラ51が取付けられている保持座41に連結されているサブローラ保持ブロック43に取付けることも可能である。
【0050】
図18は本発明の第7の実施形態であるダイシング装置の構成及び作動方法が示されている断面図であり、
図19は
図18に示されるダイシング装置の一部拡大断面図である。
【0051】
図示のように、本発明の第7の実施形態であるダイシング装置は、シリコンインゴット20を保持しながら下方へ送ることができる送りユニット22と、送りユニット22により送られてきたシリコンインゴット20からウエハを切り出すダイシング手段3と、洗浄手段7と、を備えている。
【0052】
送りユニット22については、所定の水平面S1における投影位置が2つのサブローラ52の間となるように配置されているが、シリコンインゴット20を保持しながら搬送することができる従来の構成を用いることができるのでその詳しい説明を省略し、そしてダイシング手段3としては、この第7の実施形態において第1の実施形態のダイシング手段が用いられているので、その詳しい説明は第1の実施形態を参照されたい。一方、この第7の実施形態に関しては、説明の便宜のため、2本のメインローラ51における1本を第1のメインローラ513とし、他の1本を第2のメインローラ514とし、2本のサブローラ52において第1のメインローラ513と送りユニット22との間にある1本を第1のサブローラ531とし、他の1本を第2のサブローラ532とする。
【0053】
この第7の実施形態において、送りユニット22とダイシング手段3との位置関係に関しては、所定の水平面S1と直交し、且つ送りユニット22により保持されるシリコンインゴット20のすぐ隣を通過する参考面S2の、第1のサブローラ531までの最短距離である第1の最短距離D1は、10mm〜30mmの範囲内にあり、且つ、参考面S2の、第1のメインローラ513までの最短距離である第2の最短距離D2は、60mm〜130mmの範囲内にあるように配置されることが好ましい。
【0054】
洗浄手段7は、送りユニット22の隣で第1のメインローラ513の上方に位置している上側洗浄ユニット71と、第1のメインローラ513の隣(
図18の断面図では第1のメインローラ513を介して送りユニット22より外側)で、前記高さ方向において上側洗浄ユニット71の下方に位置している第1の下側洗浄ユニット72と、第2のメインローラ514の隣(
図18の断面図では第2のメインローラ514を介して送りユニット22より外側)で、前記高さ方向において上側洗浄ユニット71の下方に位置している第2の下側洗浄ユニット73と、を有している。
【0055】
そして
図19に示されているように、上側洗浄ユニット71は第1のサブローラ531に対して洗浄液を噴きかけるように配置構成され、第1の下側洗浄ユニット72は第1のメインローラ513に対して洗浄液を噴きかけるように配置構成されており、そして
図18に示されているように、第2の下側洗浄ユニット73は第2のメインローラ514に対して洗浄液を噴きかけるように配置構成されている。
【0056】
図20は本発明の第7の実施形態に用いられる上側洗浄ユニット71の構成が示されている模式図であり、
図21は本発明の第7の実施形態に用いられる第1の下側洗浄ユニット72の構成が示されている模式図であり、
図22は本発明の第7の実施形態に用いられる第2の下側洗浄ユニット73の構成が示されている模式図である。
【0057】
図18及び
図20に示されているように、上側洗浄ユニット71は中心管体部711と、該中心管体部711から外側へ延伸する複数のノズル712とを有するように構成されていると共に、上側洗浄ユニット71の各ノズル712から第1のサブローラ531までの第3の最短距離D3は、100mmに設定されることが好ましく、そして隣り合う2つのノズル712は、120mmの間隔を空けて配置されることがこのましい。この構成により、洗浄液を噴きかける際の死角をなくすことができる。
【0058】
図18及び
図21に示されているように、第1の下側洗浄ユニット72は中心管体部721と、該中心管体部721から外側へ延伸する複数のノズル722とを有するように構成されていると共に、第1の下側洗浄ユニット72の各ノズル722から第1のメインローラ513までの第4の最短距離D4は、100mmに設定されることが好ましく、そして隣り合う2つのノズル722は、120mmの間隔を空けて配置されることがこのましい。この構成により、洗浄液を噴きかける際の死角をなくすことができる。
【0059】
図18及び
図22に示されているように、第2の下側洗浄ユニット73は中心管体部731と、該中心管体部731から外側へ延伸する複数のノズル732とを有するように構成されていると共に、第2の下側洗浄ユニット73の各ノズル732から第2のメインローラ514までの第5の最短距離D5は、100mmに設定されることが好ましく、そして隣り合う2つのノズル732は、120mmの間隔を空けて配置されることがこのましい。この構成により、洗浄液を噴きかける際の死角をなくすことができる。
【0060】
更に、ワイヤソー12が有する複数の加工エリア211が存在する平面を加工平面S3とし、上側洗浄ユニット71が有する各ノズル712それぞれが開口する方向は、加工平面S3と10°〜80°の範囲内にある鋭角θをなすようになっていることが好ましい。
【0061】
次いで、
図23〜
図28を用いて本発明のダイシング方法について詳しく説明する。
図23は本発明のダイシング方法が示されているフローチャートであり、図示のように、本発明のダイシング方法は、機材用意工程100と、加工工程200と、洗浄工程300とを順番に実行する。
【0062】
図24は本発明のダイシング方法における機材用意工程100が示されている模式図であり、図示のように、機材用意工程100は、ワイヤソー21が巻き付けられているダイシング手段3と、シリコンインゴット20を保持しながら下方にあるダイシング3手段のワイヤソー21へ送ることができる送りユニット22と、ダイシング手段3の隣りに配置されている洗浄手段7と、を用意する工程である。
【0063】
用意するダイシング手段3としては、それぞれの回転軸512が送りユニット22の下方にある所定の水平面S1において互いに間隔を開けるように平行に配置されている第1のメインローラ513及び第2のメインローラ514と、第1のメインローラ513及び第2のメインローラ514の延伸方向における一端側から他端側にかけて、第1のメインローラ513及び第2のメインローラ514を交互に往復するよう略コイル状に第1のメインローラ513及び第2のメインローラ514に巻き付けられた前記ワイヤソー21と、所定の水平面S1における投影位置が第1のメインローラ513及び第2のメインローラ514のそれぞれの回転軸512の間となるように、第1のメインローラ513及び第2のメインローラ514と平行に配置されると共に、ワイヤソー21の一部を加工エリア211として下から押し上げる第1のサブローラ531及び第2のサブローラ532とを備えることにより、ワイヤソー21が第1のメインローラ513及び第2のメインローラ514を交互に往復するよう略コイル状に第1のメインローラ513及び第2のメインローラ514に巻き付けられるため、第1のサブローラ531及び第2のサブローラ532により下から押し上げられる複数の加工エリア211を有するようになっており、洗浄手段7は、送りユニット22の隣で第1のメインローラ513の上方に位置し、第1のサブローラ531に対して洗浄液を噴きかける上側洗浄ユニット71と、第1のメインローラ513の隣で上側洗浄ユニット71の下方に位置し、第1のメインローラ513に対して洗浄液を噴きかける第1の下側洗浄ユニット72と、第2のメインローラ514の隣で上側洗浄ユニット71の下方に位置し、第2のメインローラ514に対して洗浄液を噴きかける第2の下側洗浄ユニット73と、を有していることが好ましい。
【0064】
また、送りユニット22とダイシング手段3との位置関係に関しては、上記第7の実施形態に述べたように、所定の水平面S1と直交し、且つ送りユニット22により保持されるシリコンインゴット20のすぐ隣を通過する参考面S2の、第1のサブローラ531までの最短距離である第1の最短距離D1は、10mm〜30mmの範囲内にあり、且つ、参考面S2の、第1のメインローラ513までの最短距離である第2の最短距離D2は、60mm〜130mmの範囲内にあるように配置されることが好ましい。
【0065】
更に、この実施形態では、第1のメインローラ513の近くに配置され、第1のメインローラ513及び第2のメインローラ514の時計回りの回転と反時計回りの回転に応じてワイヤソー21の一端部(この実施形態では第1のメインローラ513側の端部)を繰り出し、且つ巻き取ることができる第1のスプール533と、第2のメインローラ514の近くに配置され、第1のメインローラ513及び第2のメインローラ514の時計回りの回転と反時計回りの回転に応じてワイヤソー21の他端部(この実施形態では第2のメインローラ514側の端部)を繰り出し、且つ巻き取ることができる第2のスプール534と、をも用意する。後述の
図28に示されているように、第1のメインローラ513及び第2のメインローラ514が図示のように反時計回りで回転する際、第1のスプール533はワイヤソー21を放出し、第2のスプール534はワイヤソー21を巻き取り、そして第1のメインローラ513及び第2のメインローラ514が時計回りで回転する際、第1のスプール533はワイヤソー21を巻き取り、第2のスプール534はワイヤソー21を放出するようになっている。
【0066】
図25は本発明のダイシング方法における加工工程200が示されている模式図であり、
図26は本発明のダイシング方法における加工工程200でシリコンインゴット20からウエハ202を切り出す様子が示されている模式図である。
【0067】
加工工程200では、
図24及び
図25に示されているように、ダイシング手段3の第1のメインローラ513及び第2のメインローラ514を時計回りと反時計回りへ繰り返して回転駆動することにより、第1のメインローラ513及び第2のメインローラ514と連動する前記ワイヤソー21をその延伸方向に沿って往復運動させながら、送りユニット22を作動させて該送りユニット22が保持するシリコンインゴット20をワイヤソー21の加工エリア211に押し付けてウエハに切り出させることを実行する。
【0068】
加工工程200が行われた結果として、送りユニット22が保持するシリコンインゴット20は
図26に示されているように、ワイヤソー21の各加工エリア211によって複数枚のウエハ202に切り出される。
【0069】
図27は本発明のダイシング方法における洗浄工程が示されている模式図であり、
図28は本発明のダイシング方法において送りユニット22が上方へ移動する様子が示されている模式図である。
【0070】
図示されているように、洗浄工程300は、加工工程200において送りユニット22が保持するシリコンインゴット20から複数枚のウエハ202に切り出される後、洗浄手段7を作動させてウエハ202を洗浄する工程であるが、この洗浄工程300では、上側洗浄ユニット71に第1のサブローラ531に対して洗浄液を噴きかけさせることにより該第1のサブローラ531に洗浄液を付着させてワイヤソー21により切り出されるウエハ202の間に運び込まれ、そして第1の下側洗浄ユニット72に第1のメインローラ513に対して洗浄液を噴きかけさせることにより該第1のメインローラ513洗浄液を付着させてワイヤソー21により切り出されるウエハ202の間に運び込まれることにより、シリコンインゴット20からウエハ202に切り出す際において生じる微粒子を洗浄する。
【0071】
更に、本発明のダイシング方法では、第1のスプール533と第2のスプール534を以下のように制御することがこのましい。
【0072】
加工工程200において、第1のスプール533と第2のスプール534はワイヤソー21の繰り出しと巻き取りを繰り返すが、第2のスプール534がワイヤソー21を巻き取った分より、繰り出した分が上回り、そして第1のスプール533がワイヤソー21を繰り出した分より、巻き取った分が上回るように制御することにより、ワイヤソー21がシリコンインゴット20に対して加工を行って磨耗した加工エリア211は第1のスプール533により徐々に回収されると共に、第2のスプール534から新しい加工エリア211を送り出し続けることができる。
【0073】
そして洗浄工程300において、第1のスプール533がワイヤソー21の繰り出しを行い、第2のスプール534がワイヤソー21の巻き取りを行うように制御することにより、加工工程200において第1のスプール533が一旦回収していた磨耗した加工エリア211を繰り出して第2のスプール534に回収され、そしてこの磨耗した加工エリア211に洗浄液が付着してウエハ202の間に運び込まれるので、ウエハ202の表面を通過するワイヤソー21はすでに磨耗した加工エリア211であるため、ウエハ202の表面を傷つけるリスクを下げることができる。
【0074】
以上は本発明の各好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。