(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6530511
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】エンジンまたはコンプレッサ用のケース
(51)【国際特許分類】
F02F 1/00 20060101AFI20190531BHJP
F04B 39/12 20060101ALI20190531BHJP
F04B 39/14 20060101ALI20190531BHJP
F16J 10/00 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
F02F1/00 S
F04B39/12 E
F04B39/14
F16J10/00 Z
F16J10/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-558774(P2017-558774)
(86)(22)【出願日】2016年1月28日
(65)【公表番号】特表2018-505995(P2018-505995A)
(43)【公表日】2018年3月1日
(86)【国際出願番号】EP2016051739
(87)【国際公開番号】WO2016124466
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2017年10月2日
(31)【優先権主張番号】102015101459.9
(32)【優先日】2015年2月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr−Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ エルビエ
【審査官】
櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】
実開平05−064484(JP,U)
【文献】
特開2006−183530(JP,A)
【文献】
実開昭49−132308(JP,U)
【文献】
特開平05−099068(JP,A)
【文献】
特開2005−344727(JP,A)
【文献】
実開昭59−081785(JP,U)
【文献】
特開2003−214173(JP,A)
【文献】
実開平03−068576(JP,U)
【文献】
特表2010−502881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00
F04B 39/12
F04B 39/14
F16J 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンまたはコンプレッサであって、
クランクシャフトを収容するための、2つの端面(31a,31b)を有する細長いクランク室(31)と、前記クランクシャフトの回転により往復運動させられる各1つのピストンを収容するための少なくとも2つのシリンダ室(32a,32b,53a,53b)を備えたケースであって、前記クランク室(31)は、第1の端面(31a)に開口(33,51)を有しており、該開口(33,51)を介して前記クランクシャフトを前記クランク室(31)内へ導入することができるようになっており、前記クランク室(31)の内径は、前記第1の端面(31a)から第2の端面(31b)まで単調に先細に縮小しているケース(3,5)と、
クランクシャフトと、
シリンダ室毎に1つのコネクティングロッド(41a,41b)とを有しており、該コネクティングロッド(41a,41b)は、第1のコネクティングアイ(42a,42b)で以て前記クランクシャフトに、かつ第2のコネクティングアイ(43a,43b)で以て、前記シリンダ室(32a,32b,53a,53b)内で摺動するピストンに、それぞれ回動可能に支持されているものにおいて、
前記クランクシャフトの軸線に沿って支持された2つの前記コネクティングロッド(41a,41b)を比べると、前記クランク室(31)の各内径と共に、前記第1のコネクティングアイ(42a,42b)の領域(44a,44b)の前記コネクティングロッド(41a,41b)の外径および/または前記第1のコネクティングアイ(42a,42b)の内径も、前記第1の端面(31a)側の前記コネクティングロッド(41a)よりも前記第1の端面(31a)から遠く離れた前記コネクティングロッド(41b)の方が、小さく形成されていることを特徴とする、エンジンまたはコンプレッサ。
【請求項2】
前記ピストンは、それぞれ同じ直径および/または同じ行程距離を有している、請求項1記載のエンジンまたはコンプレッサ。
【請求項3】
前記クランク室(31)の第1の端面(31a)にフランジ(52)が配置されている、請求項1または2記載のエンジンまたはコンプレッサ。
【請求項4】
前記クランクシャフトは、被動部もしくは駆動部との接続のために、前記フランジ(52)を貫通して案内されている、請求項3記載のエンジンまたはコンプレッサ。
【請求項5】
前記フランジは、
当該エンジンまたはコンプレッサを車両のエンジンルーム内に取り付けるように形成されており、かつ/または
前記クランクシャフトを介して駆動される別のユニットをエンジンまたはコンプレッサに取り付けるように形成されている、請求項3または4記載のエンジンまたはコンプレッサ。
【請求項6】
前記クランク室(31)は、前記第1の端面(31a)から前記第2の端面(31b)まで先細に、円錐形または切頭円錐形に延在している、請求項1から5までのいずれか1項記載のエンジンまたはコンプレッサ。
【請求項7】
前記円錐または前記切頭円錐の周壁は、その対称軸線に対して0.5〜10度の角度だけ傾斜している、請求項6記載のエンジンまたはコンプレッサ。
【請求項8】
前記ケース(3,5)は一体に鋳造されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のエンジンまたはコンプレッサ。
【請求項9】
前記ケース(3,5)は少なくとも部分的に、アルミニウム、マグネシウム、チタン、またはアルミニウム合金、マグネシウム合金、またはチタン合金から成っている、請求項1から8までのいずれか1項記載のエンジンまたはコンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンまたはコンプレッサ用の、コスト効率良く製造されるべきケース、該ケースを有するエンジンまたはコンプレッサ、ならびに製造方法に関する。
【0002】
背景技術
トラックおよびバスの空気ブレーキ装置に圧縮空気を供給するためには、通常1つ〜2つのピストンを備えたコンプレッサが使用される。駆動源を介してクランクシャフトが回転させられる。各コネクティングロッドは、クランクシャフトとピストンの両方に、回動可能に支持されている。クランクシャフトの回転運動は、コネクティングロッドにより、シリンダ内のピストンの昇降運動に変換される。この昇降運動に基づき、空気が圧縮される。このようなコンプレッサのケースは通常、砂型または金型内で鋳鉄から一体に鋳造される。択一的に、砂型に一体的に注型されたねずみ鋳鉄シリンダを、高圧鋳造により製造されたアルミニウム製の基礎ケースに取り付けることが知られている。
【0003】
2つ以上のシリンダを備えたコンプレッサの場合、運転中に内部でクランクシャフトが運動する大きなクランク室を高圧鋳造法で製造することは極めて困難である。よってクランク室を含むケース部分は、しばしば2つの部分から製造される。このことは鋳造後に手間のかかる組立を要し、各ケース部分間の結合箇所は原則として漏れを生じやすい。
【0004】
課題および解決手段
よって本発明の課題は、簡単に一体に製造することができ、したがって従来技術により複数部分から製造されたケースよりも簡単に取り付けられると同時に、漏れが生じにくい、エンジンまたはコンプレッサ用のケースを提供することにある。
【0005】
この課題は本発明に基づき、主請求項記載のケース、副請求項記載のエンジンまたはコンプレッサ、ならびに別の副請求項記載の製造方法により解決される。別の有利な構成は、これらを引用する従属請求項に記載されている。
【0006】
本発明の対象
本発明の枠内で、エンジンまたはコンプレッサ用のケースが開発された。このケースは、細長いクランク室を有しており、クランク室は2つの端面を有している。細長いとは、クランク室が1つの軸線に沿って延在しており、この軸線に対して垂直方向の伸長よりも、軸線に沿った伸長の方が大きいことを意味する。クランク室は、クランクシャフトの収容に用いられる。
【0007】
さらに、少なくとも1つのシリンダ室が設けられており、シリンダ室内でピストンがクランクシャフトの回転により往復運動させられる。
【0008】
クランク室は第1の端面に開口を有しており、この開口を介してクランクシャフトをクランク室内へ導入することができるようになっている。本発明に基づき、クランク室の内径は、第1の端面から第2の端面まで単調に先細に縮小している。
【0009】
単調に先細に縮小しているとは、クランク室の内径が、その軸線に沿って第1の端面から第2の端面に到るまで連続して減少しているか、または部分的に同じであるだけで、それ以上には増大しないことを意味する。
【0010】
このように形成されたクランク室は、成形マンドレルをケース材料で鋳包むことにより、鋳造によって特に簡単に製造され得る、ということが判った。このような成形マンドレルは、鋳包み後にその第1の端部側においてケースから引き出すことができるようにするために、第1の端部から第2の端部まで単調に先細になっている必要がある。これまでの従来技術に基づく、真っ直ぐな円筒形状または多数のアンダカットを有するクランク室は、前記の簡単な方法では製造することができなかった。クランク室の、本発明に基づく賦形により、ケースを一体に形成すると同時に、極めてコンパクトに形成することができる。
【0011】
この場合はまず、複数のシリンダを有するエンジンまたはコンプレッサでは、1つのシリンダの少なくとも1つのコネクティングロッドのために供与されるクランク室内の運動空間が極めて少なく、これにより通常、コネクティングロッドは比較的細く寸法決めされざるを得ず、かつ/またはクランクケースボデーは前記第1の端部付近の方が、より大きくなっていなければならない、という欠点が考慮された。この欠点は、ケースの大幅に簡単な製造により相殺されることが判った。
【0012】
有利には、クランク室は第1の端面から第2の端面まで先細に、円錐形または切頭円錐形に延在している。有利には、この円錐または切頭円錐の周壁は、その対称軸線に対して0.5〜10度、好適には0.5〜5度、極めて特に好適には1〜5度の角度だけ、傾斜している。この場合に、製造に用いられた成形マンドレルを、鋳包み後に最も簡単に除去することができる。ケースは、有利には一体に鋳造されており、有利には少なくとも部分的に、アルミニウム、マグネシウム、チタン、アルミニウム合金、マグネシウム合金またはチタン合金、またはダイカスト可能な別の軽量合金から成っている。クランクケースは両端面から、それぞれその内側に向かって先細に、円錐形または切頭円錐形に延在していてもよく、これは例えば2つの成形マンドレルを鋳包み、次いで互いに反対の方向に引き出すことにより製造可能である。これにより、第2の端面付近でコネクティングロッドに供与される運動空間が拡大され得る。2シリンダ型コンプレッサの場合は例えばこのようにして、両シリンダに関して同一に寸法決めされたコネクティングロッドを使用することができる、ということが達成され得る。
【0013】
本発明によるエンジンまたはコンプレッサは、本発明によるケースを有している。このケース内には、各1つのピストンを収容するための少なくとも2つのシリンダ室が設けられている。ピストンの駆動は、クランクシャフトにより行われる。このためシリンダ室毎にコネクティングロッドが設けられており、コネクティングロッドは、第1のコネクティングアイで以てクランクシャフトに、かつ第2のコネクティングアイで以て、シリンダ室内で摺動するピストンに、それぞれ回動可能に支持されている。クランクシャフトの軸線に沿って支持された2つのコネクティングロッドを比べると、クランク室の各内径と共に、第1のコネクティングアイの領域のコネクティングロッドの外径および/または第1のコネクティングアイの内径も、本発明に基づき先細に縮小している。
【0014】
ケースが例えば2つのシリンダを有している場合には、第1のシリンダの方が第2のシリンダよりも、クランクシャフトをクランク室内へ導入可能な開口に近くなる。この場合、クランク室の内径がより大きくなっている第1のコネクティングロッドの場所には、クランクシャフトを中心とした第1のコネクティングアイの運動用に、より多くの運動空間が供与されている。クランクケースの内径がより小さくなっている第2のコネクティングロッドの場所には、クランクシャフトの周りに相応して小さな運動空間が、クランクシャフトを中心とした第2のコネクティングロッドの第1のコネクティングアイの運動用に供与されている。この小さな運動空間に、第2のコネクティングロッドは本発明に基づき適合されている。
【0015】
もちろん、両シリンダにおいて比較的小さなコネクティングロッドを使用することも可能である。ただし、コネクティングロッドは当然のことながら、厚さが増大するにつれて、より安定性も増す。よって、2つの異なる部品の製造にかかる手間がやや増大しても、2つの異なる大きさのコネクティングロッドを使用することで、各コネクティングロッドにより伝達可能な出力が、全体的に向上され得る。コネクティングロッドの正確な寸法は、用途に応じて、コンプレッサ運転またはエンジン運転の出力要求に基づいて決定される。
【0016】
一般に、クランクシャフトの軸線に沿ってコンプレッサの駆動部の最も近くに位置するコネクティングロッドは、機械的に最も激しく負荷されることになる。このことは、コネクティングロッドをクランクシャフトに結合するクランクピンにも当てはまる。よって有利には、駆動部はクランクシャフトの第1の端面が位置する端部に接続されている。この場合、駆動部の最も近くに位置するコネクティングロッドは、クランク室内で最大限の運動の自由を有することになると共に、相応して比較的厚く寸法決めされていてよい。
【0017】
本発明の1つの有利な構成では、各ピストンは同じ直径および/または同じ行程距離を有している。特に好適には、各ピストンは同じ直径と、同じ行程距離の両方を有している。この場合は空気圧縮が一様に行われ、クランク室の先細りが、コンプレッサの下流側に接続された空気供給装置に影響を及ぼすことは最早ない。このためにコンプレッサは、有利にはただ1つの圧縮段しか有していない。
【0018】
有利には、クランク室の第1の端面にフランジが配置されている。このフランジは、ケースを種々様々な被動部、駆動部および車両のエンジンルーム内のその他のハードウェアに、ケース用鋳型を何ら変更する必要なしに、接続することができる。特に有利には、クランクシャフトは被動部もしくは駆動部との接続のために、フランジを貫通して案内されている。
【0019】
これに対して択一的に、または組み合わされて、フランジはさらに別の機能を満たしていてもよい。本発明の別の有利な構成では、フランジは、エンジンまたはコンプレッサを車両のエンジンルーム内に取り付けるように形成されていてよい。択一的に、または組み合わされて、フランジは、クランクシャフトを介して駆動される別のユニットをエンジンまたはコンプレッサに取り付けるように形成されていてもよい。前記別のユニットは、例えばパワーステアリングポンプであってよい。
【0020】
シリンダ室は、完全にケース内に配置されていてよい。しかしまたシリンダ室は、ケース内で始まって、別個の構成部材としてケースに取り付けられるシリンダ内に続いていてもよい。シリンダ摺動面は、摩耗部分である。シリンダ摺動面が摩耗した場合には、ケース全体を放棄せねばならない場合よりも、別個に取り付けられたシリンダのみを交換する方が廉価である。さらに、このようにして重量を節減することができる。例えば、ケース用の材料としては、アルミニウムが特に有利である。なぜならば、アルミニウムは軽量だからである。これに対して、鋼はより酷使に耐えられ、ひいてはシリンダ摺動面としてより良好に適している。アルミニウムから成るケースと、鋼から成るシリンダとを用いて、両材料特有の利点を組み合わせることができる。
【0021】
本発明の枠内で、本発明によるケースの製造方法も開発された。この方法が優れているのは、2つの端部を有していて、第1の端部から第2の端部に向かって外径が単調に先細に縮小されている細長い成形マンドレルをケース材料で鋳包むことにより、クランク室が製造される点である。ケース材料としては、特にアルミニウムが有利である。
【0022】
クランク室は、ケース内で最大の中空空間を成すため、クランク室の製造は特に重要であることが判った。この中空空間には、流し込まれた材料が冷えて中空空間が自己支持するようになるまで、成形マンドレルにより安定性が与えられる。このようにして、ケースの一体製造は大幅に簡略化される。有利には、成形マンドレルは鋳包み後に、その第1の端部がケースから引き出される。しかしまた、ダイカスト法とは異なる別の方法では、成形マンドレルを例えば破砕することにより、またはエッチング剤を用いて溶解することにより、破壊して除去することが有意な場合もある。
【0023】
ケース材料は、成形マンドレルの材料に可能な限り付着しにくいことが望ましい。よって成形マンドレルは、有利にはケース材料とは別の材料から成っている。
【0024】
成形マンドレルは、特に円錐または切頭円錐として先細に延在していてよい。有利には、この円錐または切頭円錐の周面は、その対称軸線に対して5〜30度、好適には5〜15度の角度だけ、傾斜している。
【0025】
この角度よりもはるかに大きな角度で成形マンドレルが先細になっている場合には、クランク室の第2の端部が、クランクシャフトを中心としたコネクティングロッドの運動に関して、場合により極度に狭くなってしまう。前記角度よりもはるかに小さな角度で成形マンドレルが先細になっている場合には、冷えたケース材料から成形マンドレルを引き出すことが著しく困難になり、引き出そうとすると、場合によっては折れることがある。
【0026】
詳細な説明
以下に、本発明の対象を図面につき説明するが、これにより本発明の対象が限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】従来技術に基づき2つの部分から製造されたクランクケースを示す図である。
【
図2】従来技術に基づき2つの部分から製造されたクランクケースを、駆動源との接続用の付加的なフランジと共に示す図である。
【
図4】本発明の1つの構成に基づき、2つのシリンダを備えるケース内で使用される2つのコネクティングロッドの比較図である。
【
図5】本発明によるケースを、駆動部または被動部との接続用の付加的なフランジと共に示す外観図である。
【0028】
図1には、従来技術に基づき2つの部分から製造されたコンプレッサケースが示されている。このコンプレッサケースは、ケース部分11および12から成っている。コンプレッサケースの、クランクシャフトが導入される一方の端部13では、駆動源との接続部にT字形のシールが必要な点が欠点である。このシールは漏れを生じやすい。
【0029】
図2には、従来技術に基づく別のコンプレッサケースが示されている。このケースも、2つの部分21および22から製造されている。駆動源に対する接続用には、付加的なフランジ23が設けられている。このフランジにより、両ケース部分21および22相互のシールは、駆動源接続部に対するシールから分離されている。これにより、漏れの危険は縮小されるが、手間のかかる組立が依然として必要とされている点が欠点であり、かつこのために必要なねじやナットに、ユーザはしばしば空間的な狭さのため、接近することが困難である。
【0030】
図3には、本発明によるケース3の製造が示されている。このケース3は、クランク室31ならびに第1のシリンダ室32aおよび第2のシリンダ室32bを有している。クランク室31は、2つの端部31aおよび31bを有している。クランク室31は端部31aに開口33を有しており、開口33を介してクランクシャフトをクランク室31内へ導入することができる。
図3に示した状態では、この開口33内とクランク室31の一部とに、成形マンドレル34の端部34aおよび34bが位置している。この成形マンドレル34は、その端部34aから第2の端部34bまで先細になっている。
図3に示した位置では、流し込まれた材料が冷えた後で、成形マンドレル34は既に、ケース3から部分的に引き出された状態にある。
【0031】
図4には、
図3に示したコンプレッサケースの実施例において使用される2つのコネクティングロッドの比較図が示されている。線Aの左側には、第1のコネクティングロッド41aと、第1のコネクティングロッド41aがクランク室内で必要とする運動空間45aとが書き込まれている。線Aの右側には、第2のコネクティングロッド41bと、第2のコネクティングロッド41bがクランク室内で必要とする運動空間45bとが書き込まれている。第2のコネクティングロッド41bは、第1のシリンダ室32aよりも開口33から遠く離れたシリンダ室32b内で使用される。シリンダ室32a内では、第1のコネクティングロッド41aが使用される。シリンダ室32aに供与されている運動空間の方が大きくなっている。
【0032】
第1のコネクティングロッド41aは、第1のコネクティングアイ42aと、第2のコネクティングアイ43aとを有している。第1のコネクティングロッド41aは、第1のコネクティングアイ42aで以てクランクシャフトに回動可能に、かつ回転軸線をクランクシャフトの回転軸線に対してずらされて、支持されている。これにより第1のコネクティングロッド41aは、クランクシャフトが1回転することにより、1回昇降運動させられるようになっている。この運動は、ピストンに対して回動可能に支持された第2のコネクティングアイ43aにより、ピストンの昇降運動に変換される。第1のコネクティングアイ42aを包囲する領域は、符号44aで示されている。クランクシャフトを中心とした運動における前記領域の最大作用半径が、第1のコネクティングロッド41aがクランク室内で必要とする運動空間45aを決定する。
【0033】
第2のコネクティングロッド41bも同様に第1のコネクティングアイ42bを有しており、第1のコネクティングアイ42bで以てクランクシャフトに支持されている。第2のコネクティングロッド41bは、その第2のコネクティングアイ43bで以て、第2のピストンに支持されている。コネクティングアイ42bは、領域44bにより包囲されており、領域44bの最大作用半径により、コネクティングロッド全体がクランク室31内で必要とする運動空間45bが決定される。第2のコネクティングロッド41bの運動空間45bは、第1のコネクティングロッド41aの運動空間45aよりも小さくなっている。これは、シリンダ室32bの場所におけるクランク室31の内径が、シリンダ室32aの場所に比べて先細に縮小された、という事実を考慮したものである。
【0034】
図5には、完成した本発明によるケース5の外観図が示されている。クランク軸を導入することができる開口51には、フランジ52が被せ嵌められている。ケース5がコンプレッサで使用される場合には、このフランジ52に駆動部が接続される。これに対してケース5がエンジンで使用される場合には、フランジ52に被動部が接続される。シリンダ室53aおよび53bは、部分的にのみケース5内に位置しており、取付け手段55を備えた基底板54で終わっている。基底板54には後でシリンダヘッドが取り付けられる。ピストンは、シリンダ室53aおよび53bのアルミニウム上で直接に摺動するのではなく、プレス嵌めされたシリンダライナ上で摺動し、シリンダライナは、摩耗した場合には交換可能である。
【0035】
ケースは、高圧鋳造法で製造され得るが、例えば砂型鋳造または金型鋳造等の別のアルミニウム鋳造法でも製造され得る。またケースは、必ずしもアルミニウムから製造されていなくてもよく、例えば鋳鉄から製造されていてもよい。
【符号の説明】
【0036】
11,12 ケース部分
21,22 ケース部分
3 ケース
31 クランク室
31a,31b クランク室31の端部
32a,32b シリンダ室
33 クランク室31の端部31aに形成された開口
34 成形マンドレル
34a,34b 成形マンドレル34の端部
41a,41b コネクティングロッド
42a,42b コネクティングロッド41aおよび41bの第1のコネクティングアイ
43a,43b コネクティングロッド41aおよび41bの第2のコネクティングアイ
44a,44b 第1のコネクティングアイ42aもしくは42bを包囲する領域
45a,45b クランク室31内のコネクティングロッド41a,41bの運動空間
5 ケース
51 ケース5の開口
52 フランジ
53a,53b シリンダ室
54 基底板
55 取付け手段