特許第6530552号(P6530552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6530552
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】色石の色品質の検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/52 20060101AFI20190531BHJP
   G01N 21/87 20060101ALI20190531BHJP
   G09F 5/04 20060101ALI20190531BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
   G01J3/52
   G01N21/87
   G09F5/04 P
   G09B19/00 G
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-502242(P2018-502242)
(86)(22)【出願日】2015年7月29日
(65)【公表番号】特表2018-524598(P2018-524598A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】CN2015085476
(87)【国際公開番号】WO2017015912
(87)【国際公開日】20170202
【審査請求日】2018年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】518014036
【氏名又は名称】デン、ウェンシュアイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】デン、ウェンシュアイ
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−516193(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0149369(US,A1)
【文献】 特開2007−178424(JP,A)
【文献】 米国特許第04527895(US,A)
【文献】 米国特許第07388656(US,B1)
【文献】 特開平01−313723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00− 3/52
G01N 21/84−21/958
G09F 5/04
G09B 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色石の色を、総量が一定な、視覚的に異なる色成分からなる全体として、前記色石の色の色調、色濃度、及び相対彩度を測定する色石の色品質の検出に用いられる色石の色標準ライブラリの作成方法であって、
(1)標準環境下で、特定の色の複数の色石のサンプルのトレーニングセットにおける前記色石のサンプルの色の黒度、彩度、及び色相を測定し、前記色成分は、有色成分と、白の視覚成分とを含み、前記有色成分は、黒の視覚成分と、すべてのカラー視覚成分とを含み、前記黒度は前記黒の視覚成分の前記色石の色における含有率であり、前記彩度は前記カラー視覚成分の前記色石の色における含有率であるステップと、
(2)前記黒度、前記彩度、及び前記色相により前記色石のサンプルの色の前記色調、前記色濃度、前記相対彩度を算出するステップであって、
前記色調は、赤、緑、黄、青の4つの心理学的原色及びその遷移中間色の一つを基準として、a.色調=x%副次心理学的原色寄りの主心理学的原色である計算方式と、b.色調=y%主心理学的原色寄りの遷移中間色である計算方式との2つの計算方式の一つを採用して算出された色石の色の色相の純粋さ及び色の傾向を表し、x%は副次心理学的原色が色相に占める割合であり、y%は色相における主心理学的原色、副次心理学的原色が占める百分率の差値の半分であり、
前記主心理学的原色とは、前記色相における割合が50%以上の心理学的原色を指し、前記副次心理学的原色とは、前記色相における割合が50%未満の心理学的原色を指し、前記色相における2つの心理学的原色の割合がいずれも50%である場合に、そのうちの任意の一方の心理学的原色を前記主心理学的原色とし、他方を前記副次心理学的原色とし、前記遷移中間色は赤、緑、黄、青の4つの心理学的原色のうち反対しない任意の2つの心理学的原色の遷移中間色であり、
前記色濃度=黒度+彩度であり、
前記相対彩度=彩度/色濃度であるステップと、
(3)前記ステップ(2)で算出された前記色調、前記色濃度、及び前記相対彩度に基づいて、前記トレーニングセットにおける前記複数の色石のサンプルのそれぞれに代表される各特定の色を鑑別、分類し、量的に定義して前記色石の色標準ライブラリを得るステップであって、前記特定の色の品質は、前記色調、前記色濃度、及び前記相対彩度により量的に定義された色の名称により、直観的に表現及び区別されることができる、ステップとを含む、色石の色標準ライブラリの作成方法。
【請求項2】
前記複数の色石のサンプルを前記トレーニングセットとして収集するステップをさらに備える、請求項1に記載の色石の色標準ライブラリの作成方法。
【請求項3】
前記黒度、彩度、及び色相は、自然表色系測色計を採用して直接に測定するか、又は、前記色石のサンプルと自然表色系の標準カラーカードとを人工目視で対比して判定する、請求項1又は2に記載の色石の色標準ライブラリの作成方法。
【請求項4】
前記黒度、彩度は、それぞれオストワルド表色系により測定された黒色量と純色量に相当し、前記色相は、自然表色系により測定される、請求項1又は2に記載の色石の色標準ライブラリの作成方法。
【請求項5】
前記標準環境は、D50、D55、及びD65の標準光源の照明環境からなる群から選ばれる一つである、請求項1から4のいずれか一項に記載の色石の色標準ライブラリの作成方法。
【請求項6】
前記ステップ(3)に行われる鑑別、分類、及び量的定義は、さらに天然色命名法又は前記色相により前記色石のサンプルに代表される特定の色を命名することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の色石の色標準ライブラリの作成方法。
【請求項7】
色石の色を総量が一定な、視覚的に異なる色成分からなる全体として、前記色石の色の色調、色濃度、及び相対彩度を測定する色石の色品質の検出方法であって、
(1)標準環境下で、被測定前記色石の色の黒度、彩度、及び色相を測定し、前記色成分は、有色成分と白の視覚成分とを含み、前記有色成分は、黒の視覚成分と、すべてのカラー視覚成分とを含み、前記黒度は、前記黒の視覚成分の前記色石の色における含有率であり、前記彩度は、前記カラー視覚成分の前記色石の色における含有率であるステップと、
(2)前記黒度、前記彩度、及び前記色相により、前記被測定色石の色の前記色調、前記色濃度、前記相対彩度を算出するステップであって、
前記色調は、赤、緑、黄、青の4つの心理学的原色及びその遷移中間色の一つを基準として、a.色調=x%副次心理学的原色寄りの主心理学的原色である計算方式と、b.色調=y%主心理学的原色寄りの遷移中間色である計算方式とのうちの一つを採用して算出された色石の色の色相の純粋さ及び色の傾向を表し、x%は、副次心理学的原色が色相に占める割合であり、y%は、色相における主心理学的原色、副次心理学的原色が占める百分率の差値の半分であり、
前記主心理学的原色とは、前記色相における割合が50%以上の心理学的原色を指し、前記副次心理学的原色とは、前記色相における割合が50%未満の心理学的原色を指し、前記色相における2つの心理学的原色の割合がいずれも50%である場合に、そのうちの任意の一方の心理学的原色を前記主心理学的原色とし、他方を前記副次心理学的原色とし、前記遷移中間色は、赤、緑、黄、青の4つの心理学的原色のうちの反対しない任意の2つの心理学的原色の遷移中間色であり、
前記色濃度=黒度+彩度であり、
前記相対彩度=彩度/色濃度であるステップと、
(3)前記ステップ(2)で算出された前記色調、前記色濃度、及び前記相対彩度に基づいて、請求項1から6のいずれか一項に記載の色石の色標準ライブラリの作成方法で予め作成された色標準ライブラリにおいて、前記被測定色石の色に相応する特定の色を調べ、前記特定の色の称を用いて前記被測定色石の色と色品質を表すステップとを含む、色石の色品質の検出方法。
【請求項8】
前記黒度、彩度、及び色相は、自然表色系測色計を採用して直接に測定するか、又は、色石のサンプルと自然表色系の標準カラーカードとを人工目視で対比して判定する、請求項7に記載の色石の色品質の検出方法。
【請求項9】
前記黒度、彩度は、それぞれオストワルド表色系により測定された黒色量と純色量に相当し、前記色相は、自然表色系により測定される、請求項7に記載の色石の色品質の検出方法。
【請求項10】
前記標準環境は、D50、D55、及びD65の標準光源の照明環境からなる群から選ばれる一つである、請求項7から9のいずれか一項に記載の色石の色品質の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジュエリー品質の検出の分野に関し、特に、色石の色品質の検出に用いられる色石の色標準ライブラリの作成方法及び色石の色品質の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
色石の色の品質は、宝石の品質及び価値に決定的な影響があるので、色石の色品質の検出も色石の品質検出の最も重要な部分となっている。しかし、色石の色は非常に直観的なものであるが、その品質については、客観的に検出し、正確、適切に表現することが難しい。実際に、宝石業界は、今でも、全業界に一般的に承認され、受け入れられている科学的な検出方法はまだ一つも存在しない。
【0003】
宝石業における伝統的な色品質の評価方法では、一般的に天然色命名法を採用して色石の色の品質を表現し、即ち、周知される似た物に譬えて、象徴的な天然色で宝石の色を命名し、その品質を区分する。例えば、アップルグリーンで翡翠の青りんごのような浅緑色を表し、翠緑で翡翠の青葉のような純緑を表現し、ピーマングリーンで翡翠のピーマンのような濃緑色を表現し、ピジョンブラッドでルビーの鳩の血のような鮮紅色を表現し、コーンフラワーブルーでサファイアのコーンフラワーのような真っ青を表現し、桃色でトルマリンの桃の花のようなライトピンクを表現するなどである。天然色命名法は、色石の典型的な色の外観を生き生きと直観的に示すことができるだけでなく、象徴的に宝石の色のほぼすべての品質特徴を同時に表すこともでき、しかも、極めて強いビジネス吸引力もあるので、日常の理解、交流、応用にとって非常に便利であり、最も実用的、且つ、最も使いやすい色品質の評価方法であると言える。より具体的に色石の色の品質を判別するために、一般的には、色の純粋さ、濃淡、深浅、明暗、軽重、寒暖、ひいては陰陽などの直観的な視覚的特徴で色石の色を形容、比較する。例えば、「純粋、濃、陽、均一」で翡翠の色の品質、即ち、いわゆる色調が純粋か否か、色が濃いか否か、鮮やかか否か、均一か否かを評価する。しかしながら、現在の伝統的な方法は、主観的な経験に頼って行わなければならず、従来の品質検査技術で明確に解釈し標準化し難いので、多くの宝石品質検査機関に、あまり正式的ではない品質評価方法と思われ、実際的に色石の色品質の科学的検出に応用されることができない。スイス宝石研究所(GRS)による宝石品質鑑定書では、天然色命名法により宝石の色の品質を表現し、例えば、「ピジョンブラッド」でルビーのうち最も高品質の赤色を表現しているが、鑑定書には、「ピジョンブラッド」に対応する検出根拠については一言も触れず、「ピジョンブラッド」を客観的な検出結論ではなく、ビジネス名称として付けたに過ぎず、つまり、GRSによるルビーの色が「ピジョンブラッド」であるか否かについての判断は、全く検出人の主観的経験に頼るものである。
【0004】
従来の色石の色品質の検出方法は、いずれも色の3要素理論(即ち、色の三つの基本的な心理学的属性(色相(hue)、明度(lightness)、彩度(chroma))により系統的に色を表す)に基づいて発展したものであり、例えば、マンセル表色系のHV/C表色法における色の三要素の計量指標である色相(hue)、明度(value)、彩度(chroma)を品質検出の指標(実際応用では用語名称が異なることがある)として、色石の色の品質を検出、格付け、表現し、これは、(羅香蘭、丘志力、李榴芬、魏巧坤、黎志偉が発表した「国際流行の色石の品質格付け評価体系の比較及びその啓発」、北京、宝石と宝石学雑誌、2010年第1期)には、全面的に紹介され、主に、GemSetサンプル比色法、GemDialogueカラーカード比色法(米国特許第US4527895号)及びCIE分光光度測色法の三つのものがある。
【0005】
1.GemSetサンプル比色法
【0006】
GemSetは、米国宝石学会(GIA)がマンセル表色系に基づいて開発した色石の色品質の格付け専用のプラスチックモールド比色系統であり、マンセル明度(Munsell value)を色調(tone)に、マンセル彩度(Munsell chroma)を飽和度(saturation)に変えた以外に、マンセル表色系の研究手法をほぼそのままに色石の色の検出、区別に用いたものである。GemSetサンプル比色法は、既に色の三要素が確定されたプラスチックモールドと対比して宝石の色の色相(hue)、色調(tone)、及び飽和度(saturation)を判定することにより、色石の色の品質を検出し、予め作成した色品質レベル表により宝石の色の品質レベルを区別し表す。
【0007】
この方法の欠点は、あまりに専門的であり、特定の色に関する専門用語、計測方式、及び品質表示方法は宝石業界の市場習慣、及び人間の言語、思惟習慣に即しておらず、例えば、この方法における色調(tone)(実はマンセル明度(Munsell value)である)とは、高ければ高いほどよい又は低ければ低いほどよいというわけではなく、適切にすればよく、また、いわゆる「vslbG」、「vstbG」色相、「ファンシービビッドパープルピンク(fancy vivid purple pink)」という品質の表現はいずれも具体的な色のイメージ及び評価標準を生じさせ難いので、理解、交流、把握するのに不利である。そして、このシステムにおける色の概念の混用は、理解に大きな困難をもたらし、例えば、飽和度(saturation)の品質を示す灰色、褐色、濃い、鮮やかという用語の間には必然的なロジック関係がなく、表現対象がそれぞれに異なる複数の色特徴で飽和度(saturation)を表す方式はマンセル表色系の業界規範に合致しないだけでなく、人間の色に対する認知習慣にも一致しておらず、いわゆる飽和度(saturation)のレベルシンボル(GemSetは、マンセル彩度値(Munsell chroma)を6つのレベルに簡略化している)もマンセル表色系における彩度値(Munsell chroma)と混同しやすい。このほか、このシステムは、人為的な主観要素が大きく、サンプルの包含できる色が限られ、プラスチックサンプルが老化しやすく、サンプルシステムの体積が膨大であり、使用、操作に不便であるなどの問題がある。以上のような多くの欠点が存在しているので、GIAは、さらにGemSetに基づいて、コンピューター色ディジタル符号化技術と組み合せて、GIASquare色石の色品質検出システムを開発したが、検出方法、検出工程がより専門的、複雑的になったので、完全に市場の実情から離れ、実用性が欠如している。
【0008】
2.GemDialogueカラーカード比色法(米国特許番号第4527895号)
【0009】
GemDialogueシステムは、Howard Rubinがマンセル表色系に基づいて発明した色石の色品質の評定専用のカラーカード比色系統であり、アメリカ宝石貿易協会(AGTA)に認められ、推薦されたものであり、現在の国際宝石品質検出分野で広く使われている。このシステムは24枚の単体のカラーカードと、色マスクとからなり、21枚の透明のカラーカードは、21色の所定の色彩を代表し、カラーカード毎に、高い順に100、90、……10計10個の飽和度帯に分けられた。3枚の色マスクは、それぞれ不透明の黒/白色、透明の灰色、透明の褐色であり、それぞれの色マスクも10個のレベルに分けられ、カラーカードと重ねて色石の色とマッチングするために用いられる。GemDialogueカラーカード比色法は、カラーカードと色マスクを重ねて色石の色にマッチングすることにより、カラーカードの色及び飽和度帯、色マスクの色及び色マスク量で宝石の色の品質を模擬的に検出し、所定の「カラーカードの色、飽和度帯/色マスク量、色マスクの色」の形式及び予め作成した色品質レベル表によって、色石の色を表現し、品質レベルを分ける。
【0010】
GemDialogueは、マンセル表色系に基づいて発展したものであるが、その色の概念は絶対にマンセル表色系のHV/C表色法における色の三要素と混同してはならず、つまり、カラーカードと色マスクを重ねることにより得られた色の色相(hue)は、カラーカードと色マスクの色相(hue)の両方に決められ、彩度(chroma)及び明度(lightness)は、カラーカードと色マスクの彩度(chroma)、明度(value)の両方に決められ、GemDialogueカラーカード比色法は、実際に、宝石の色自身の物性特徴ではなく、GemDialogueカラーカードの特徴的なパラメータにより色石の色の品質を検出し、表す。大衆消費市場にとって、その付加した概念の用語、計測及び表色方式は、色の三要素と比べて、実はより専門的で、見慣れないものであり、宝石業界の伝統と人の色に対する認知習慣に即していないだけでなく、色の三要素と混同して理解に支障が出やすく、使用者の専業のレベルに対する要求が高く、実用性があまり高くない。つまり、専門的な訓練を受けなければ、また、説明書又はカラーカードの本物を見なければ、いわゆるカラーカード又は色マスク、カラーカードの飽和度帯又は色マスク量が一体何であるか、また、宝石の色とどのような関係にあるかを明らかに解釈することが難しく、B1G、B2G、G2B、R2O、O2Yといったカラーカードの番号と「P2B 100/80 black」といったカラー番号がどのような色を指すか、具体的にはどのような様子であるか、また、各カラーカードの間はどのような、どれだけの差別があるかを正確に理解し把握することも難しく、自然に具体的な宝石の色と繋がることも勿論不可能である。そして、このシステムは、異なるカラーカードの間の色差はあまり大きすぎて、測量の結果の精度があまり高くない問題も存在している。形式的には互いに独立し干渉しないが、実際には(色の三要素などの色の特徴)互いにあいまいで干渉するカラーカードと色マスクを重ねることにより、宝石の色の品質を検出することは、操作が複雑であるだけでなく、異なるカラーカードと色マスクを組み合わせても同様又は相似の色を得ることもあり、検出結果が不正確になりかねない。なお、このシステムの色マスクのレベルが高ければ高いほど、色品質が低いという指標パラメータと品質が逆相関する評定方式も人間の思惟習慣に矛盾している。
【0011】
3.CIE分光光度測色法
【0012】
CIE分光光度測色法は、純物理的な専門の色研究方法であり、三原色を混合することで任意の色を得ることができるという原理に基づき、色の三刺激値及びCIE色座標を計算することにより、色を表すものであり、一般的には、光源色、即ち色光の研究に用いられ、実は色石の物体色の検出及び表現に適しておらず、且つ、非常に専門的、抽象的、複雑、煩雑、高価である。中国現行の『翡翠の格付け』標準を例として、この標準は、分光光度計により翡翠の色の分光反射比又は透過比を測量し、さらに、対応する色光の三刺激値及び主波長、刺激純度(Pe)を求め、主波長で色相(hue)を模擬し、刺激純度で彩度(chroma)を模擬して、翡翠の色の品質を検出する。しかしながら、比色学における主波長、刺激純度が示すのは色光の客観的な属性であるのに対し、色の三要素において、色相(hue)、彩度(chroma)が示すのは色の心理学的属性であり、両者の間は厳密的な等量対応関係がなく、この標準は色光の客観的な属性と色の心理学的属性とすり替えて検出することは、理論的に厳密性を欠いており、分光光度計で測定された輝度率(人間の明度(lightness)上の視覚を同効果で引き起こすことができる)も、翡翠の色の明度(lightness)の模擬検出に用いることができず、依然としてGemDialogueカラーカード比色法により、いわゆる「明度(lightness)」を検出する必要がある。しかし、GemDialogueカラーカード比色法においては、色の明度(lightness)の検出がなく、検出することもできないので、異なる色系統間の概念の置換により宝石の色の品質を検出することは、実行できない。また、この標準は、実際の操作において、いわゆる「彩度(chroma)」の検出結論を人間の常識経験における色濃度(strength)の感覚にマッチングさせるために、異なる翡翠に対して異なる照明と測量方式を採用する(例えば、普通の翡翠に対しては反射照明によって分光反射比を測量するが、墨緑の翡翠に対しては透過照明によって分光透過比を測量する)ことも、明らかに客観性を欠いている。
【0013】
以上の3つの方法以外に、例えば、タイ国立宝石研究所(GIT)では、直接にマンセル表色系の標準カラーカードを用いて、色石の色の三要素を目視で対比して、宝石の色品質を検出する方法もある。ただし、色の三要素自身も宝石業界に周知されていない。宝石業は、一般業種であり、大部分の人は専門的な色に関する理論背景を持っていないが、HV/C表色法における色の三要素の計測方法は、物理性を重視しており(よって、色彩学では、このような研究方法が心理物理学方法と言われ、色の三要素が心理物理量と言われている)、専門性が強く、一般人はその特定な計測方式における人為的に規定した抽象的な数値が示す具体的な意味を勿論理解し難い。例えば、宝石業界では、大部分の人はHV/C表色法における色相(hue)が異なる色、又は色相(hue)が同一であるが明度(lightness)が異なる色の彩度(chroma)の範囲が異なることを知らず、各色相(hue)、各明度(lightness)はそれぞれどのぐらいの彩度(chroma)の尺度があるか、また、最大彩度(chroma)はそれぞれどのぐらいであるかも知らない。例えば、7.5Y8/6、5Y9/6、5Y8/8、2.5GY9/12といった色相(hue)とカラー番号も、人に自然色彩を連想させ、具体的なカラー印象とカラー概念を形成することが難しい。実際に、色の三要素が示す色の特徴は人間の常識経験における色調(whether a hue is pure or not)、色濃度(how strong or how weak a color is)、鮮やかさ(how vivid a color is)などの品質特徴によく似ており、似て非なる色の三要素を色石の色品質の検出指標として用いることは、宝石業界における伝統的な実践経験及び宝石の色の品質特徴を明確に解釈し難いだけでなく、概念の混同と理解の困難もかなりもたらしやすい。
【0014】
したがって、如何に科学的で合理的に色石の色の品質を検出、表現することは、ずっと、国際宝石品質検出分野の最も重要な問題である。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、より人間の色に対する認知習慣に即しており、より宝石業界の伝統的な実践経験に即しており、より適切で実行可能な色石の色品質の検出方法を提供することにより、従来の色石の色品質の検出方法があまり専門的で複雑であり、色石の色の品質を明確に解釈し、客観的に検出し、直観的に反映し、分かりやすく表現することが難しく、宝石市場の実際の要求を満足できない問題を徹底的に解決することを目的としている。
【0016】
以上の目的を達成するために、本発明は以下のような技術手段を採用する。
【0017】
色石の色を、総量が一定な、視覚的に異なる色成分からなる全体として、前記色石の色の色調(hue-purity)、色濃度(color-strength)、及び相対彩度(relative chromaticity)を測定する色石の色品質の検出に用いられる色石の色標準ライブラリの作成方法であって、(1)複数の色石のサンプルをトレーニングセットとして収集するステップと、(2)標準環境下で、前記トレーニングセットにおける前記色石のサンプルの色の黒度(blackness)、彩度(chromaticness)、及び色相(hue)を測定し、前記色成分は、有色成分と、白の視覚成分とを含み、前記有色成分は、黒の視覚成分と、すべてのカラー視覚成分とを含み、前記黒度(blackness)は前記黒の視覚成分の前記色石の色における含有率であり、前記彩度(chromaticness)は前記カラー視覚成分の前記色石の色における含有率であるステップと、(3)前記黒度(blackness)、前記彩度(chromaticness)、及び前記色相(hue)により前記色石のサンプルの色の前記色調(hue-purity)、前記色濃度(color-strength)、前記相対彩度(relative chromaticity)を算出するステップであって、前記色調(hue-purity)は、赤、緑、黄、青の4つの心理学的原色及びその遷移中間色の一つを基準として、a.色調(hue-purity)=x%副次心理的原色寄りの主心理的原色である計算方式と、b.色調(hue-purity)=y%主心理的原色寄りの遷移中間色である計算方式との2つの計算方式の一つを採用して算出された色石の色の色相(hue)の純粋さ及び色の傾向を表し、x%は副次心理学的原色が色相(hue)に占める割合であり、y%は色相(hue)における主心理学的原色、副次心理学的原色が占める百分率の差値の半分であり、前記主心理学的原色とは、前記色相(hue)における割合が50%以上の心理学的原色を指し、前記副次心理学的原色とは、前記色相(hue)における割合が50%未満の心理学的原色を指し、前記色相(hue)における2つの心理学的原色の割合がいずれも50%である場合に、そのうちの任意の一方の心理学的原色を前記主心理学的原色とし、他方を前記副次心理学的原色とし、前記遷移中間色は赤、緑、黄、青の4つの心理学的原色のうち反対しない任意の2つの心理学的原色の遷移中間色であり、前記色濃度(color-strength)=黒度(blackness)+彩度(chromaticness)であり、前記相対彩度(relative chromaticity)=彩度(chromaticness)/色濃度(color-strength)であるステップと、(4)ステップ(3)で算出された前記色調(hue-purity)、前記色濃度(color-strength)、及び前記相対彩度(relative chromaticity)に基づいて、前記トレーニングセットにおける各色石のサンプルに代表される特定の色を鑑別、分類し、量的定義して前記色石の色標準ライブラリを得るステップとを含む色石の色品質の検出に用いられる色石の色標準ライブラリの作成方法。
【0018】
反対色説(opponent color theory)により、人間の視覚システムは、反対する黒と白の2つの無彩色と、反対する赤と緑、反対する黄と青の4つの心理学的原色と計6つの互いに似ていない固有の基本色覚からなり、いずれの色も視覚上で黒、白の2つの無彩色及び多くて2つの互いに反対しない心理学的原色に相似することが可能である。以上の技術手段では、赤、緑、黄、青の4つの心理学的原色のうち、赤と緑は反対しており、黄と青は反対しているので、赤と黄、赤と青、黄と緑、緑と青はいずれも反対しておらず、反対しない2つの心理学的原色の間には遷移中間色があり、例えば、黄色と赤色の遷移中間色はオレンジ色であり、赤色と青色の遷移中間色は紫色である。
【0019】
前記黒度(blackness)、彩度(chromaticness)、及び色相(hue)は、自然表色系(NCS)測色計により直接に測定するか、又は、前記色石のサンプルと自然表色系(NCS)の標準カラーカードとを人工目視で対比して判定することが好ましい。
【0020】
前記黒度(blackness)、彩度(chromaticness)は、それぞれオストワルド表色系(Ostwald Color System)により測定された黒色量と純色量に相当し、前記色相(hue)は、自然表色系(NCS)により測定されることが好ましい。
【0021】
前記標準環境は、D50、D55、及びD65の標準光源の照明環境からなる群から選ばれる一つであることが好ましい。
【0022】
前記ステップ(4)に行われる鑑別、分類、及び量的定義は、さらに天然色命名法又は前記色相(hue)により前記色石のサンプルに代表される特定の色を命名することを含むことが好ましい。
【0023】
色石の色品質の検出に用いられる色石の色標準ライブラリを作成する場合に例えば、ピジョンブラッド、コーンフラワーブルー、エメラルド、翠緑、桃色、ワインレッド、黄金色など、既に定着した天然色命名法で命名できる宝石の色に対しては、市場では広く認可されている色石の色サンプルを選択してトレーニングセットを作成し、本発明における定量化された色調(hue-purity)、色濃度(color-strength)、相対彩度(relative chromaticity)により、色石のサンプルに代表される特定の色を正確に定義し、作成した色石の色標準ライブラリにおいて、天然色命名法で色石の色と色品質を命名、表現することができる。市場価値があまり高くない又はまだ適切な表現がない色に対しては、作成した色石の色標準ライブラリにおいて、得られた色調(hue-purity)に応じて、直接に色相(hue)で分類、命名することができ、具体の命名方法は、「副次心理学的原色+トーン+主心理学的原色」であり、例えば、色調(hue-purity)が30%黄寄りの緑色である場合、黄トーン付の緑色と命名できる。遷移中間色を基準として色石の色の色調(hue-purity)を表示する場合に、命名方法は「主心理学的原色+トーン+遷移中間色」とすることができ、例えば、色調(hue-purity)が5%青寄りの紫色である場合、青トーン付の紫色と命名でき、色調(hue-purity)が9%赤寄りの紫色である場合、赤トーン付の紫色と命名でき、色調(hue-purity)が10%赤寄りのオレンジ色である場合、赤トーン付のオレンジ色と命名でき、色の名称にすべての色調(hue-purity)、色濃度(color-strength)、相対彩度(relative chromaticity)ひいては色の比例、形態、均一さ、多様性などの特徴を含める必要がない。
【0024】
色石の色を、総量が一定な、視覚的に異なる色成分からなる全体として、前記色石の色の色調(hue-purity)、色濃度(color-strength)、及び相対彩度(relative chromaticity)を測定する色石の色品質の検出方法であって、(1)標準環境下で、被測定前記色石の色の黒度(blackness)、彩度(chromaticness)、及び色相(hue)を測定し、前記色成分は、有色成分と白の視覚成分とを含み、前記有色成分は、黒の視覚成分と、すべてのカラー視覚成分とを含み、前記黒度(blackness)は、前記黒の視覚成分の前記色石の色における含有率であり、前記彩度(chromaticness)は、前記カラー視覚成分の前記色石の色における含有率であるステップと、(2)前記黒度(blackness)、前記彩度(chromaticness)、及び前記色相(hue)により、前記被測定色石の色の前記色調(hue-purity)、前記色濃度(color-strength)、前記相対彩度(relative chromaticity)を算出するステップであって、前記色調(hue-purity)は、赤、緑、黄、青の4つの心理学的原色及びその遷移中間色の一つを基準として、a.色調(hue-purity)=x%副次心理学的原色寄りの主心理学的原色である計算方式と、b.色調(hue-purity)=y%主心理学的原色寄りの遷移中間色である計算方式とのうちの一つを採用して算出された色石のカラー色相(hue)の純粋さ及び色の傾向を表し、x%は、副次心理学的原色が色相(hue)に占める割合であり、y%は、色相(hue)における主心理学的原色、副次心理学的原色が占める百分率の差値の半分であり、前記主心理学的原色とは、前記色相(hue)における割合が50%以上の心理学的原色を指し、前記副次心理学的原色とは、前記色相(hue)における割合が50%未満の心理学的原色を指し、前記色相(hue)における2つの心理学的原色の割合がいずれも50%である場合に、そのうちの任意の一方の心理学的原色を前記主心理学的原色とし、他方を前記副次心理学的原色とし、前記遷移中間色は、赤、緑、黄、青の4つの心理学的原色のうちの反対しない任意の2つの心理学的原色の遷移中間色であり、前記色濃度(color-strength)=黒度(blackness)+彩度(chromaticness)であり、前記相対彩度(relative chromaticity)=彩度(chromaticness)/色濃度(color-strength)であるステップと、(3)ステップ(2)で算出された前記色調(hue-purity)、前記色濃度(color-strength)、及び前記相対彩度(relative chromaticity)に基づいて、予め作成した色石の色標準ライブラリから相応するカラーを調べ、相応する色の名称で前記被測定色石の色と色品質を表すステップとを含む色石の色品質の検出方法。
【0025】
前記黒度(blackness)、彩度(chromaticness)、及び色相(hue)は、自然表色系(NCS)測色計を採用して直接に測定するか、又は、色石のサンプルと自然表色系(NCS)の標準カラーカードとを人工目視で対比して判定することが好ましい。
【0026】
前記黒度(blackness)、彩度(chromaticness)は、それぞれオストワルド表色系(Ostwald Color System)により測定された黒色量と純色量に相当し、前記色相(hue)は、自然表色系(NCS)により測定されることが好ましい。
【0027】
前記標準環境は、D50、D55、及びD65の標準光源の照明環境からなる群から選ばれる一つであることが好ましい。
【0028】
本発明の従来技術に対する有益効果は、以下のとおりである。色とは実際に可視光が視神経を刺激することにより生じた感覚であり、例えば、主波長、輝度率など種々の光学的パラメータ及び色を生成する顔料などのような物理的属性を有するだけでなく、色の三要素及び本発明における色濃度(color-strength)の概念などのような心理学的属性も有する。従来の色石の色品質の検出方法は、色の三要素などの既存の物理的な専門理論方法の機械的な運用に頼りすぎる(色石の色を「客観的な物理量」として研究する)ので、品質検査技術が市場の実情から遠く離れている。本発明は、最初に純心理学的な色彩研究方法を宝石品質検出分野に取り入れ、創造的に色石の色を純粋の心理学的感覚として研究を行い、従来の色石の色の品質検査方法と比べて、本発明により提供される色石の色品質の検出方法の論理的法則性がより強く、完全に人間の生理的視覚の法則にしたがって宝石の色の色調(hue-purity)、色濃度(color-strength)、及び相対彩度(relative chromaticity)を測定し、それらを宝石の色の品質検出指標とし、更に、天然色命名法で、色石の色を分類、命名するので、人間の色に対する認知習慣、思惟習慣、及び業界の伝統に合致した色石の色の品質の検出、鑑別、表現を本当に実現した。より科学的、合理的、確実、簡単、効果的であるだけでなく、より直観的で分かりやすい。例えば、自然表色系(NCS)測色計でカラー番号(当該カラー番号には黒度(blackness)、彩度(chromaticness)、及び色相(hue)が含まれている)を測定するだけで、色石の色の品質を素早く算出、特定できる。全ての品質検出指標は、いずれも色石自身の直観的な色の特徴であり、且つ、鑑別、比較は、いずれも「最も」を基準とすることができる(色調(hue-purity)が純粋であるほど、色濃度(color-strength)及び相対彩度(relative chromaticity)が大きいほどよい)。人間の視覚システムに固有の基本色覚で色石の色の色調(hue-purity)を鑑別し、分かりやすい天然色命名法、及び百分率で色石の色及びその品質指標の品質などを算出し、表すので、専門的な色理論について勉強しなくても素早く理解、把握、運用できるので、市場の普及に有利し、確実に実行できる色石の品質標準を設立し、色石の市場の健全で順調な発展を推進することに、重大で、積極的な意義がある。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、好ましい実施形態により、本発明を更に説明する。
【0030】
本発明で提供する検出方法の原理は以下のとおりである。
【0031】
色石は、色が鮮やかであるほど、色の品質がよい。本発明で提供する色石の色品質の検出方法は、色石の色を、総量が一定な、視覚的に異なる色成分からなる全体として、宝石の色の色調(hue-purity)、色濃度(color-strength)、相対彩度(relative chromaticity)を測定し、色調(hue-purity)、色濃度(color-strength)、相対彩度(relative chromaticity)で色石の色の鮮やかさ(vividness)を特定して色の品質を検出する。そのうち、色調(hue-purity)は、色石の色の色相(hue)の純粋さであり、色濃度(color-strength)は色石の色における有色成分の濃さであり、相対彩度(relative chromaticity)は、同類の色調(hue-purity)、同等の色濃度(color-strength)の色におけるカラー視覚成分の相対的な純度、又はある色の同類の色における相対的な鮮やかさ(vividness)を示すためのものである。そのうち、同類の色調(hue-purity)とは、色相(hue)に含まれる色成分が同じであり、且つ含まれている色成分の割合が所定の変化範囲内にあることを意味する。同等の色濃度(color-strength)とは、色濃度(color-strength)が所定の範囲内にあることを意味する。同類の色とは、同類の色調(hue-purity)、同等の色濃度(color-strength)を有する色を意味する。有色成分は、黒の視覚成分と、すべてのカラー視覚成分を含み、白の視覚成分と反対する。色調(hue-purity)、色濃度(color-strength)、相対彩度(relative chromaticity)の三つの品質検出指標は、完全な色品質検出システムを構成する。つまり、色石の色の色調(hue-purity)が純粋であるほど、色濃度(color-strength)、相対彩度(relative chromaticity)が大きいほど、宝石の色が鮮やかになり、色品質がよくなる。
【0032】
色調(hue-purity)、色濃度(color-strength)、相対彩度(relative chromaticity)の概念及び計測方法をより明らかに解釈するために、以下にHV/C表色系における色の三要素及び飽和度(saturation)、鮮やかさ(vividness)と対比することにより、更に説明する。
【0033】
色の三要素における色相(hue)は、色の様相、例えば、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫などを示すためのものであり、無彩色(有彩色と反対する)である黒、白、灰は色相(hue)を有していない。HV/C表色系では、システムにおける所定の番号で色相(hue)を表し、例えば、マンセル表色系において、2.5Gで一種の黄緑を表し、10BGで一種の青緑を表し、5PBで一種の青を表すなどである。それに対して、本発明では、色調(hue-purity)は、同類の色相(hue)(色相に含まれる色成分が同じであり、含まれている色成分の割合が所定の変化範囲にあることを指す)の相対的差異を鑑別することを重んじ、ある具体的な色を基準として色石の色の色相(hue)の純粋さ及び色の傾向を算出して、宝石の色の品質、例えば、ルビーの赤色は純正であるか否か(偏色があるか否か)、黄色に偏るかそれとも青に偏るか、具体的にどれだけ偏るかを検出、表現するものである。両者の意味が違うので、計測及び表現方式も区別がある。
【0034】
色の三要素では、明度(lightness)は、色の明るさを示すためのものであり、現代のカラーオーダシステムは、一般的に、真っ黒の明度(lightness)を0とし、真っ白の明度(lightness)を10として、視覚の等色差性原則にしたがって、0〜10の計11段階に分け、明度(lightness)が大きいほど、明るい色を表し、小さいほど、暗い色を表す。彩度(chroma)は、色における色彩刺激の強さを示すためのものであり、無彩色である黒、白、灰は、彩度(chroma)を有していない。HV/C表色系では、明度(lightness)が同等である無彩色を0として、視覚の等色差性原則にしたがって、彩度(chroma)を分度測定する。色相(hue)が異なる色の最大彩色刺激の強さ(即ち、純色の刺激の強さ)及び色相(hue)が同一であるが明度(lightness)が異なる色の最大彩色刺激の強さがそれぞれ異なるので、各色相(hue)、各明度(lightness)の彩度(chroma)の範囲及び最大彩度(chroma)もそれぞれ異なり、例えば、マンセル表色系における大部分の色相(hue)の最大彩度(chroma)は、10以上であるが、色相(hue)の最大彩度(chroma)が20に達するものもある。それに対して、本発明における色濃度(color-strength)は、物理学における濃度(concentration)の概念と類比して生成された心理学意味での色の概念であり、宝石の色の直観的な濃淡の特徴を示すためのものであり、色を全体として理解し計測してはじめて意味がある。つまり、色が黒であるほど、有色であるほど、濃くなり、白であるほど、淡くなる。換言すると、黒色、灰色、及びすべての色彩は、いずれも色に関する心理感覚での色濃度(strength)を増やし、白色のみが色濃度(strength)を低下させる。明らかに、この色濃度(color-strength)と色の三要素における彩度(chroma)は、2つの異なるものを指し、明度(lightness)とも明らかな区別があり、例えば、常識経験から言えば、黒色に近いブルーブラックのサファイアの色濃度(color-strength)は高いが、明度(lightness)、彩度(chroma)は共に低い。
【0035】
HV/C表色系における明度(lightness)、彩度(chroma)、及びいわゆる飽和度(saturation)が示す色の特徴は、常識経験における鮮やかさ(vividness)とある程度似ているので、明度(lightness)、彩度(chroma)又は飽和度(saturation)を直接に鮮やかさ(vividness)に等価置換し、ひいては、明度(lightness)、彩度(chroma)又は飽和度(saturation)は、鮮やかさ(vividness)であると思う研究があるが、実際はそうではない。
【0036】
飽和度(saturation)は、実際には、物理学から借りた概念であり、物理学では、溶液における溶質の濃度(concentration)が最大になる場合に、溶液が飽和に達し、単位溶液における溶質の最大濃度(concentration)は当該溶質の当該溶液における飽和度(saturation)と称すが、実質的には、濃度(concentration)の概念(濃度(concentration)の閾値、又は濃度(concentration)と等価である)である。しかし、飽和度(saturation)は色彩学における意味がすっと複雑で確実ではないので、実際には、HV/C表色系に固有の標準的な色の概念ではなく、飽和度(saturation)で色の特徴を示すのは、一般的には、理解又は実際の応用を便利にするために、アナロジーの方法で、色の彩度(chroma)、色光の純度(purity)又は顔料の濃度(concentration)又は純度に変えて表現し、例えば、ディスプレイ業では、スペクトラルカラーの純度を当該主波長の色光純度の飽和点としているので、この場合に、飽和度(saturation)は、色光の純度に相当できる。また、例えば、美術業又は印刷業では、顔料の調合を便利にするために、飽和度(saturation)によって、調合される顔料におけるある純色の顔料の濃度(concentration)又は純度を表し、調合される顔料には、黒色、灰色及び白色の顔料以外に当該純色の顔料のみが含まれている場合に、いわゆる飽和度(saturation)は、彩度(chroma)に相当できる。同時に多種の純色の顔料が含まれ、又は当該カラー原料が不純な場合に、いわゆる飽和度(saturation)は常識的な意味での濃度(concentration)又は純度(purity)であり、彩度(chroma)とは全くに違う概念である。実際の応用において、特別に断りがない場合に、飽和度(saturation)は通常に色における色彩の飽和度(saturation)を指し、飽和に達した色は通常最も鮮やかな色であるので、色が飽和であるほど、鮮やかになり、飽和度(saturation)は鮮やかさ(vividness)であるという慣性の錯覚を生じやすく、ひいては、飽和度(saturation)は間違いなく彩度(chroma)であり、飽和度(saturation)の本質は濃度(concentration)の概念であるので、彩度(chroma)は色の「濃度」(concentration or strength of the color)であるという間違った推論を引き起こす。実際には、飽和度(saturation)は特定の場合に彩度(chroma)と等価である類比的な概念に過ぎず、色の鮮やかさ(vividness)を直接に反映できない。
【0037】
色の三要素の点から言えば、鮮やかさ(vividness)は、実際には色相(hue)、明度(lightness)、彩度(chroma)のいずれとも関係がある。即ち、色相(hue)が異なる最大彩度(chroma)の色の鮮やかさ(vividness)はそれぞれ異なり、色相(hue)が同一である色も、彩度(chroma)が大きいほど鮮やかになるわけではない。鮮やかさ(vividness)は彩度(chroma)に依存するだけでなく、明度(lightness)にも関係するからである。分かりやすく言えば、つまり、色相(hue)、彩度(chroma)が同じ色であっても、黒又は白に偏ることにより、異なる鮮やかさ(vividness)を表すことがあり、絶対に彩度(chroma)又はいわゆる飽和度(saturation)を鮮やかさ(vividness)と同一視し、又はそれにより色の鮮やかさ(vividness)を直線的に計測することができない。
【0038】
明度(lightness)は、なおさら鮮やかさ(vividness)と混同することができない。いずれの色も白色に近いほど明度(lightness)が大きくなり、真っ白は、明度(lightness)が最も大きいが、最も鮮やかな色ではないことが明らかである。実際には、明度(lightness)と鮮やかさ(vividness)との間は直接又は必然的な関係がなく、よって、明度(lightness)と彩度(chroma)と色相(hue)との組合せである色の三要素によって、色の鮮やかさ(vividness)、及びその変化の規律、つまり明度(lightness)が大きくなるほど色が明るくなり、明るくなりすぎると、白みを帯び、明度(lightness)が小さくなるほど色が暗くなり、暗くなりすぎると、黒みを帯び、色が白みを帯びても、黒みを帯びても、鮮やかさ(vividness)が下がることを明らかに特定、反映することが難く、また、白に偏る色が必ず黒に偏る色より鮮やかである、又は黒に偏る色が必ず白に偏る色より鮮やかであるわけではない。換言すれば、色相(hue)、彩度(chroma)が同一である色の明度(lightness)の線形変化は、鮮やかさ(vividness)の相応する線形変化を起こすことがない。実際には、彩度(chroma)又は鮮やかさ(vividness)は、明度(lightness)が適切である場合にのみ、最大値に達する可能性があり、しかし、色相(hue)が異なる最大彩度(chroma)の色の明度(lightness)(即ち、いわゆる適切な明度(lightness))もそれぞれ異なり、明度(lightness)が大きくなる場合当該色相(hue)の最大の彩度(chroma)に達することもあるし、明度(lightness)が小さくなる場合当該色相(hue)の最大の彩度(chroma)に達することもあるので、確かなロジック関係で推論することが全くできない(その鑑別、比較は、場合によるものであり、可操作性がない)。このような不確定な関係により、明度(lightness)は、実際には、客観的な鮮やかさ(vividness)に関する鑑別意義がない。また、色相(hue)が異なり、明度(lightness)が異なる色の彩度(chroma)の範囲、及び彩度(chroma)が異なる色の明度(lightness)の範囲が異なるので、一般人にとって、色の三要素で色石の色の鮮やかさ(vividness)を検出、表現することも理解、把握し難い。
【0039】
色石の色の鮮やかさ(vividness)の変化規律を客観的に反映するために、本発明で提供する色石の色品質の検出方法は、純心理学的研究方法によって、色石の色を、総量が一定な、視覚的に異なる色成分からなる全体として、黒の視覚成分(灰色は希釈された黒色が呈する色であるので、単独の視覚成分と見なせず、黒の視覚成分に分類する)とすべてのカラー視覚成分とを含む有色成分で「溶質」を模擬し、白の視覚成分で「溶媒」を模擬し、すべての色成分で「溶液」を模擬することで、有色成分の色における含有率、即ち、宝石の色の心理学的感覚上の色濃度(color-strength)を算出し、更に、カラー視覚成分と有色成分との比である相対彩度(relative chromaticity)を算出し、総量が一定な有色成分におけるカラー視覚成分と黒の視覚成分がトレードオフの関係にあることにより、色石の色の品質を検出、表現し、色濃度(color-strength)と、相対彩度(relative chromaticity)と、色調(hue-purity)との三つの品質指標で宝石の色の同類の色における相対的鮮やかの度合いを特定する。換言すると、鮮やかさ(vividness)は、実は、絶対的な意味ではなく、相対的な意味の概念であり、相対彩度(relative chromaticity)は、同類の色調(hue-purity)且つ同等の色濃度(color-strength)の同類の色の間で比較してはじめて意味がある。
【0040】
同類の色調(hue-purity)且つ同等の色濃度(color-strength)の色にとって、相対彩度(relative chromaticity)が大きいほど、有色成分におけるカラー視覚成分の割合が多くなり、黒の視覚成分の割合が少なくなり、色も自然に鮮やかになる。例えば、異なる「ピジョンブラッド」のルビーの間にも、僅かな品質差があり、つまり、相対彩度(relative chromaticity)が小さい「ピジョンブラッド」は、色が比較的に深く、より暗く見えるために、鮮やかさ(vividness)、品質が比較的に低い。例えば翡翠の紫色と緑色、黄寄りの緑と青寄りの緑などの色調(hue-purity)が異なる色、及び、例えば翡翠のアップルグリーンとピーマングリーン、墨緑などの色調(hue-purity)が同類であるが色濃度(color-strength)が異なる色にとっては、色調(hue-purity)又は色濃度(color-strength)が明らかに異なるので、美感が異なり、また、市場の多元化により、色に対する美意識及び価値基準も異なり、そのため、相対彩度(relative chromaticity)で色の鮮やかさ(vividness)を比較することは、実質的な意味があまりなく、色調(hue-purity)、色濃度(color-strength)、相対彩度(relative chromaticity)で既に量的に定義された色の名称だけで色の品質を直観的に表現、区別することができる。
【0041】
以上の対比分析から分かるように、本発明における色調(hue-purity)、色濃度(color-strength)、相対彩度(relative chromaticity)は、色の三要素よりも、全体性と論理性を重んじているが、HV/C表色系における色の三要素は互いに独立し、それぞれ独立の方法により計測し、また、相互間に明確な論理関係がなく、比較的に言えば、三つの単独の特徴量であり、そのため、色調(hue-purity)、色濃度(color-strength)、相対彩度(relative chromaticity)の算出に向いていない。したがって、本発明は、同様に純心理学的方法に基づいて色を研究し、色の論理的関係がより強い自然表色系(NCS)を採用し、色調(hue-purity)、色濃度(color-strength)、相対彩度(relative chromaticity)の算出に必要な色パラメータ(色相(hue)、彩度(chromaticness)、及び黒度(blackness))を測量する。
【0042】
自然表色系(NCS)は、Ewald Heringの反対色説(opponent color theory)に基づいて発展したものであり、人の生理的視覚に基づいて、色の相似関係により色を表現するカラーオーダシステムであり、この純感性的な視覚的相似関係で色を表現する方法は、色の三要素で色を表現する物理性寄りのHV/C表色系(心理物理学的方法)に対して、純心理学的方法と称され、色の表現に用いる色相(hue)、彩度(chromaticness)、黒度(blackness)、及び白度(whiteness)は、HV/C表色系における色の三要素(心理物理量)と区別するように、純心理量と称される。反対色説(opponent color theory)により、人間の視覚システムは、反対する黒と白の2つの無彩色と、反対する赤と緑、反対する黄と青の4つの心理学的原色と計6つの互いに似ていない固有の基本色覚からなり、いずれの色も視覚上で黒、白の2つの無彩色及び多くて2つの互いに反対しない心理学的原色に相似することが可能である。例えば、NCS色彩番号であるS sscc-AffBは、色と6つの視覚基準色の相似関係、即ち色の視覚成分により色を系統的に表すものであり、黒度(blackness)ssで色と真っ黒の相似度、即ち、色知覚における黒の視覚成分の含有率を表し、白度(whiteness)(100-ss-cc)で色と真っ白の相似度、即ち、色知覚における白の視覚成分の含有率を表し、彩度(chromaticness)ccで色と色相(hue)が同じ純色の相似度、即ち色知覚におけるカラー視覚成分の含有率を表し、カラー視覚成分の構成比率AffBで色の色相(hue)を表し、即ち、100-ff、ffで色相(hue)と心理学的原色A、Bの相似度又は色知覚における心理学的原色A、Bのカラー視覚成分における含有率を表す。
【0043】
NCSは、色を、視覚上で黒の視覚成分、白の視覚成分、カラー視覚成分からなり、色成分の総量が一定で、数学公式によって論理的に導出できる定量に定量化したので、本発明における色調(hue-purity)、色濃度(color-strength)、相対彩度(relative chromaticity)の指標の計算に非常に好適である。つまり、NCSにより色石の色の黒度(blackness)、彩度(chromaticness)、及び色相(hue)を測定した後に、人の視覚システムに固有の4つの心理学的原色である赤、緑、黄、青を基準として、色相(hue)における副次心理学的原色の割合を主心理学的原色の偏色の程度とするだけで、宝石の色の色調(hue-purity)を求めることができる。黒度(blackness)、彩度(chromaticness)を加算するだけで宝石の色濃度(color-strength)を算出することができる。相対彩度(relative chromaticity)は、彩度(chromaticness)を色濃度(color-strength)で除するだけで求めることができる。4つの心理学的原色を基準として宝石の色の色調(hue-purity)を表現する以外に、色石の色の色相(hue)に含まれる2つの反対しない心理学的原色の間の遷移中間色を基準として宝石の色の色調(hue-purity)を計算し、表現してもよく、例えば、黄色と赤色の遷移中間色であるオレンジ色(視覚的には、黄色、赤色の2つの心理学的原色から混合してなることができる)の色調(hue-purity)は、y%黄寄りの橙、y%赤寄りの橙と表現することができ、赤色と青色の遷移中間色である紫色(視覚的には、赤色、青色の2つの心理学的原色から混合してなることができる)の色調(hue-purity)は、y%青寄りの紫、y%赤寄りの紫と表現することができる。遷移中間色を基準として色調(hue-purity)を計算する場合に、遷移中間色の色の傾向は主心理学的原色であり、偏色の程度y%は、色相(hue)における2つの心理学的原色の占める百分率の差値の半分を取り、例えば、色石のサンプルの色には赤と黄があると測定した場合に、赤を主心理学的原色と仮定し、黄を副次心理学的原色と仮定すると、色調(hue-purity)=x%黄寄りの赤とすることができ、そのうち、x%は色相(hue)における黄色の百分率である。また、色調(hue-purity)=y%赤色寄りのオレンジ色とすることもでき、そのうち、y%は赤色の割合と黄色の割合の差値の半分である。色石のサンプルの色には、緑色と青色、又は、黄色と緑色があると測定した場合に、色調(hue-purity)=x%副次心理原色寄りの主心理学的原色の式で表現することが好ましい。
【0044】
自然表色系(NCS)以外に、オストワルド表色系(Ostwald Color System)により色石の色の黒度(blackness)、彩度(chromaticness)を測定してもよい。この系統においても、色は視覚的に白色、黒色、純色から混合してなった定量として見なされ、即ち、白色量+黒色量+純色量=100(%)であり、前記黒色量、純色量は、それぞれ本発明における黒度(blackness)、彩度(chromaticness)に相当し、色相(hue)は、依然として自然表色系(NCS)により測定される。
【0045】
注意すべきなのは、本発明で提供する色石の色品質の検出方法は、色石の色を純粋な心理学的感覚と見なし、純心理学的方法により研究を行うものであるので、この方法における関連する色石の色の色成分、パラメータ及び色濃度(color-strength)の概念は、すべて色の心理学的属性及び視覚的特徴であり、色石の色の物質成分(物理化学成分)、分光成分、及び比色学のパラメータと関係がない。例えば、赤、白色の調和顔料に緑色の顔料が均一に混入されると、赤色、緑色の顔料の物理濃度(concentration)はいずれも低下するが、新たに調和された顔料の心理感覚上の色濃度(strength)はいずれも増加する。赤色、緑色の顔料の混合により、元の有色成分(即ち、赤色)に変化が生じ、例えば、新たな黒色の成分(この黒色の成分は、物質成分の意味での黒色の顔料ではなく、色覚上の色成分である)が発生するからである。
【0046】
本発明において、検出結論の客観公正性を確保するために、本発明で提供する色石の色品質の検出方法は、D50、D55又はD65の標準光源の片側拡散照明環境とすることが好ましい。即ち、照明光源の色温度は4500K〜5500K(D50)、5000K〜6000K(D55)又は6000K〜7000K(D65)であり、演色評価数は90以上であり、拡散光の形で片側から入射し、観察面で形成される照度は1500lx〜2500lxであり、被測定サンプルの置く背景は不透明で、指向性反射のない白い板であり、検出環境の周囲の色は指向性反射のない中性色(例えば、白色)であり、且つ、他の光線又は色に干渉されないことが好ましい。
【0047】
以下に、具体的な実施例により、本発明を更に解釈する。
【0048】
実施例1:翡翠は、色が豊かである宝石と玉石であり、翡翠の色の品質を検出するために、本発明で提供する方法で翡翠の色標準ライブラリを作成する。
【0049】
1)代表的な色の翡翠のサンプルをトレーニングセットとして複数収集する。
【0050】
本実施例では、200個の翡翠のサンプルを収集し、色は緑色、白色、黄色、赤色、紫色を含み、そのうち、緑色は、市場で陽緑、翠緑、ピーマングリーン、アップルグリーン、ほうれん草緑、墨緑などと名付けられる普通の特定の色のものを含み、紫はピンク紫、赤紫、青紫、鮮紫、茄子紫などと名付けられる普通の特定の色のものを含む。
【0051】
2)D50の標準光源の照明環境下で、NCS測色計によりトレーニングセットのサンプルの色の黒度、彩度、及び色相を測定する。各サンプルの色の測定結果を表1に示す(データが膨大であるので、表1では、幾つかの典型的な色の測量結果のみを挙げる)。
【表1】
【0052】
3)黒度、彩度、及び色相により、サンプルの色の色調、色濃度、相対彩度の指標を計算する。色調=x%副次心理学的原色寄りの主心理学的原色であり、色濃度=黒度+彩度であり、相対彩度=彩度/色濃度であり、計算の結果を表2に示す(データが膨大であるので、表2では、表1における色品質の指標の計算結果のみを挙げる)。
【表2】
【0053】
表2では、遷移中間色を基準として黄色のサンプル2、赤色のサンプル1、紫色のサンプル1、紫色のサンプル2、紫色のサンプル3の色調を計算、表現してもよい。計算方法は、色調(hue-purity)=y%主心理学的原色寄りの遷移中間色であり、ただし、y%は色相における主心理学的原色、副次心理学的原色の占める百分率の差値の半分である。黄色のサンプル1、赤色のサンプル1、紫色のサンプル1、紫色のサンプル2、紫色のサンプル3の色調は、順に44%黄寄りの橙、23%赤寄りの橙、9%赤寄りの紫、12%青寄りの紫、20%赤寄りの紫と表現することができる。
【0054】
4)トレーニングセットのすべての色の指標パラメータを分析、統計、校正した後に、定量化した色調、色濃度、相対彩度の指標パラメータにより、サンプルに代表される特定の色を鑑別、分類、量的定義し、各色の定義を表3に示す(データが膨大であるので、表3では、一部の色の定義のみを挙げる)。
【表3】
【0055】
表3では、色調、色濃度、相対彩度により、市場でよく見られる翡翠の色に対して、精確な量的定義を行った。「比較的に濃い」というレベルは、表2における常識経験における「中等の色濃度」に相当する。定義されていない他の色に対して、測定された色調により直接に色相で分類、命名でき、例えば、色調が15%青寄りの緑色は、「青トーン付の緑色」と命名できる。そのうち、紫色は翡翠の典型的な色の一つであるので、青色成分と赤色成分が含まれる色は、「紫色」、「赤トーン付のパープル」、「青トーン付の紫色」と命名してもよい。色濃度が15%以下である(真っ白に近い)場合に、すべての色は白色と命名できる。
【0056】
実施例2:未知の翡翠の色の品質を検出する。
【0057】
ステップ1:NCS測色計により被検出の翡翠のサンプルの色の黒度、彩度、及び色相を測定する。測定の結果を表4に示す。
【表4】
【0058】
ステップ2:サンプルの色の色調、色濃度、相対彩度の指標を算出し、サンプルの色の品質を検出し、実施例1の表3における色の定義に応じて、鑑別、分類、命名する。検出の結論を表5に示す。
【表5】
【0059】
実施例3:本発明で提供する色石の色品質の検出方法で疑似「ピジョンブラッド」色のルビーの色の品質を検出する。
【0060】
「ピジョンブラッド」は、ルビーの中で最も高品質の、もっとも価値の高い色である。色が一分違っても、価値が十倍も違うという諺があるので、本発明で提供する色石の色品質の検出方法により「ピジョンブラッド」を鑑定、鑑別することは、重要な意味がある。
【0061】
まず、市場で公認される複数の「ピジョンブラッド」色のルビーをトレーニングセットとして収集し、NCS測色計によりサンプルの黒度、彩度、及び色相を測定し、「ピジョンブラッド」の色調、色濃度、相対彩度の指標を算出し、系統的に分析、統計、校正を行った後に得られた「ピジョンブラッド」色の量的定義は、表6に示すとおりである。
【表6】
【0062】
疑似「ピジョンブラッド」の品質を検出する。NCS測色計により測定された色パラメータに基づいて、疑似「ピジョンブラッド」の品質指標を算出し、表6と対照して得られた検出の結論は、表7に示すとおりである。
【表7】
【0063】
表7における指標パラメータを表6と対照し、以下の検出結論を出すことができる。6つのルビーのうち、サンプル2、3、4は外観上で「ピジョンブラッド」と非常に似ているが、サンプル2、4は、色調の純粋さが劣り、サンプル3は色濃度が足りないので、いずれも「ピジョンブラッド」と鑑定することができない。サンプル1、5、6のみの色が本当に「ピジョンブラッド」のレベルに達している。サンプル1、5、6の三つの「ピジョンブラッド」の色品質は、高い順にサンプル6(相対彩度94.7%)、サンプル1(相対彩度93.5%)、サンプル5(相対彩度87.9%)である。
【0064】
以上の内容は、具体的な好ましい実施形態により本発明をさらに詳しく説明したものであり、本発明の具体的な実施はこれらの発明に限定されると認めてはならない。本発明の属する技術の分野の業者にとって、本発明の趣旨を逸脱しない前提に、幾つかの同等の置換又は顕著な変形を施すこともでき、また、性能又は用途が同じであるので、いずれも本発明の保護範囲に属するものと見なすべきである。