(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
式(I)の前記混合物は、AとBの両方が−CFXCOOH基(式中、Xは前記のとおりである)であるPFPEカルボン酸の重量よりも、A及びBのうちの一方が−CFXCOOH基(式中、Xは前記のとおりである)であり他方が前記のとおりである直鎖又は分岐のC1〜C4パーフルオロアルキル基であるPFPEカルボン酸の重量の方が多い混合物である、請求項2又は3に記載の方法。
工程d)が、懸濁液(S1)を得るために固相にアルコールとフッ化有機溶媒との混合物を添加することと、混合物(M1)が溶解している液相中に前記固相が分散している懸濁液(S2)を得るために加熱することとにより行われる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【背景技術】
【0003】
カルボキシレート末端基を有する(パー)フルオロポリエーテル(あるいはカルボキシルPFPE又はPFPEカルボキシレートと表現される)、特に一官能性カルボキシルPFPEは、表面処理用の界面活性剤として、あるいは他の末端基を有するPFPEの前駆体として、例えばアミド、エステル、又はアルコールの前駆体として(これらは今度は例えばアクリレート誘導体など別の誘導体に更に変換することができる)、一般的に使用されている。この目的のためには、できる限り純粋なカルボキシルPFPEを出発材料として用いることが望ましい。例えば、アクリレート誘導体の調製においては、非官能性(又は中性)末端基を有するPFPEの存在によって最終生成物の光学特性が損なわれる可能性がある。しかし、PFPEカルボキシレートのある製造方法では、非官能性のPFPEが混ざった一官能性及び/又は二官能性のPFPEカルボキシレートが生成する場合があり、そのため高純度でPFPEカルボキシレートを得るために分離工程(あるいは精製工程又は濃縮工程とも表現される)を行う必要がある。
【0004】
例えば米国特許第5262057号明細書(AUSIMONT S.P.A.)、米国特許第5246588号明細書(AUSIMONT S.P.A.)、米国特許第5910614号明細書(AUSIMONT S.P.A.)、及び米国特許第7288682号明細書(SOLVAY SOLEXIS SPA)には、非官能性PFPEを含有する出発混合物から、ヒドロキシル末端基又はアミノ末端基を有する一官能性又は二官能性の高純度PFPEを得るためのクロマトグラフ技術が開示されている。
【0005】
より詳しくは、米国特許第5246588号明細書には、下記一般式のPFPEの混合物中の非官能性種、一官能性種、及び二官能性種を分離又は濃縮するための方法が開示されている。
Z−O−R
f−Y (I)
(式中、
R
fは直鎖又は分岐のパーフルオロポリオキシアルキレン鎖であり、
互いに同じ又は異なっていてもよいZ及びYは、非官能性基又は−OHを有する官能基であり、特には−CF
2CH
2O(CH
2CH
2O)
sH基及び−CF
2CF
2CH
2O(CH
2CH
2O)
sH基であり、sは0〜2の範囲である)(要約及びカラム1の8〜37行目参照)
【0006】
分離工程は、単独であるいは極性溶媒との混合物の状態で、溶離液として非極性フッ化溶媒を用いたカラムクロマトグラフィーをPFPE混合物に対して行うことからなる。
【0007】
実施例では、精製された混合物は約0.8〜約1.2の官能化度を有しており、R
f鎖は約600〜約750の範囲の数平均分子量(Mn)を有している。
【0008】
米国特許第5262057号明細書には、下記一般式のPFPEの混合物中の非官能性種、一官能性種、及び二官能性種を互いに分離するための方法が開示されている。
X−O−R
f−Y
(式中、
R
fは式(CF
2O)、(CF
2CF
2O)、(CF
2CF
2CF
2O)の単量体単位を含み約500〜約10,000の平均分子量を有するパーフルオロポリオキシアルキレン鎖であり、かつ
互いに同じ又は異なるX及びYは、非官能性末端基、又は、CF
2CH
2O(CH
2CH
2O)
sH、−CF
2CF
2CH
2O(CH
2CH
2O)
sH、及び−CF
2CH
2NH
2から選択される官能性末端基であり、sは0〜2の範囲である)(カラム1の8〜32行目参照)
【0009】
分離工程は、特定の条件で、特には非極性フッ化溶媒及び極性溶媒を用いた流出を含む条件で、カラムクロマトグラフィーをPFPE混合物に対して行うことからなる。
【0010】
米国特許第5910614号明細書には、式(I)のパーフルオロポリエーテルの混合物に含まれている、ヒドロキシル末端を有する二官能性PFPEを、非官能性PFPEとヒドロキシル末端を有する一官能性PFPEとから分離するための方法が開示されている。
X
1−O−R
f−Y (I)
(式中、
R
fは数平均分子量(Mn)が500〜10,000であるパーフルオロポリオキシアルキレン鎖であり、ヒドロキシル末端は−CFX−CH
2OHのタイプであり、X=F又はCF3である)(カラム1の4〜29行目参照)
【0011】
この方法は、
低極性フッ化溶媒と極性溶媒との混合物に固定相が分散している懸濁液に、規定された混合物(I)/固定相の体積/重量比率で混合物(I)を添加することと、
溶媒をさらさらの乾燥粉末が得られるまでエバポレートすることと、
低極性フッ化溶媒を用いた第一の抽出と、
極性水素化溶媒を用いた第二の抽出と、
を含んでいる。(カラム2の32〜52行目参照)
【0012】
この方法は連続的に行うことも不連続に行うことも可能である。(カラム2の23〜24行目参照)
【0013】
米国特許第7288682号明細書は、−CH
2OH一官能性PFPEとの混合物から、−CH
2OH末端を有する二官能性PFPEを分離するための方法に関し、この方法は、下記式
X
1−O−Rf−Y (I)
(式中、
R
fは数平均分子量が500〜10,000であるパーフルオロポリオキシアルキレン鎖であり、ヒドロキシル末端は−CFX−CH
2OHのタイプであり、ここで、X=F又はCF3である)
のパーフルオロポリエーテル混合物を、撹拌装置及び濾過装置を備えた反応器中に入れられた吸着固相へ吸着させる、少なくとも2つの吸着工程を含んでおり、二官能性PFPEが濃縮されている吸着PFPE混合物を含む固相を、二官能性種が低減しているPFPE混合物を含む液体から分離することを伴っている。その後、固相に極性溶媒を添加し、一定時間撹拌し、次いで濾過を行うことによって所望の高い官能化度を有するPFPEを含む液相が分離される。(カラム1の34行目〜カラム4の32行目参照)
【0014】
上記特許のいずれにも、これらの中に開示されている方法がPFPEカルボン酸の混合物を精製するのに適しているということの教示及び示唆がなされていない。
【0015】
高純度のモノカルボン酸PFPEを調製するための方法は、米国特許第8008523号明細書に開示されており、この方法は、下記式
T−O−(R
F)
z−T’
(式中、R
Fは分子量又は数平均分子量が180〜8,000の範囲のPFPE鎖であり、
zは0または1であり、
互いに同じ又は異なるT及びT’は、−CF
2COF、−CF(CF
3)COF、−CF
2CF
2COF、−CF
2CF
2CF
2COF、−CF
2C(O)CF
3、−COFの官能性末端基、及び−CF
3、−CF
2CF
3、−C
3F
7、−C
4F
9の非官能性(中性)末端基から選択され、フッ素原子は特定の量の塩素原子で置換されていてもよい)
のPFPE混合物から出発する。
【0016】
この混合物には、分子量デルタ(すなわち成分の最小分子量と最大分子量の差)が600より小さい留分を得るための第一の蒸留工程、この留分の部分的フッ素化、フッ素化された留分のエステル化及び/又は加水分解、並びに蒸留が行われる。カラム11の21〜25行目では、「・・・600より小さい分子量デルタを有する留分を・・・蒸留によって得ることと、それに続くカルボニル末端基のフッ素化は、高純度の一官能性カルボキシル化合物を得るのに不可欠である。」と記載されている。更に、米国特許第8008523号明細書では、固相担体上でのクロマトグラフィーは、実際には高純度PFPEカルボキシレートを得ることに適していないということが事実上教示されている。この特許の比較例5には、上述した米国特許第5,246,588号明細書、米国特許第5,262,057号明細書、及び米国特許第5,910,614号明細書の手順、並びに米国特許第5,910,614号明細書で示唆されているようなフッ化溶媒(例えばヘキサフルオロキシレン及びパーフルオロへプタン)と極性溶媒(例えばアルコール、アセトン、酢酸エチル)との混合物を用いた、約600未満の分子量のモノカルボキシルPFPEのシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーでは、モノ−及びジ−カルボキシルPFPEがカラムシリカゲルに吸着されたままになるため、モノ−及びジーカルボキシルPFPEを回収又は分離できないことが示されている。
【0017】
しかし、上記方法は複数の工程を必要とするため、困難であり手間がかかる。更に、狭い分子量分布(デルタMW<600)のPFPEのみに適用可能である。このため、非官能性と官能性のPFPEカルボキシレート混合物から、多分散のPFPEカルボキシレートを精製するための簡便な方法を提供することが未だ必要とされている。
【0018】
欧州特許出願公開第2436716A号明細書には、非官能性PFPEと、一官能性PFPEカルボキシレートと、二官能性PFPEカルボキシレートとの混合物を分離するための方法が開示されている。この方法は、フッ化溶媒中に分散された酸吸着剤上に混合物を吸収処理することを含んでいる。その後吸着剤は、吸着剤からモノ−PFPEカルボキシレートを除去するために、フッ化溶媒と強酸との混合物で洗浄される。この方法は、二官能性PFPEカルボキシレートの含量を、一官能性及び二官能性のPFPEカルボキシレートの総モル数基準で0.1〜10%molの範囲まで低減することが可能であるとされている。
【0019】
WOJCIK,L.,et al.「Separation and determination of perfluorinated carboxylic acids using capillary zone electrophoresis with indirect ohotometric detection」Journal of Chromatography. 2006,vol.1128,no.1−2,p.290−297には、キャピラリーゾーン電気泳動によるパーフルオロカルボン酸の分離方法が開示されている。PFPEの分離に関しても、バッチ式クロマトグラフィー法に関しても、開示も示唆もなされていない。
【0020】
VOOGT,P D,et al.「Analytical chemistry of perfuoroalkylated substances」Trends in analytical chemistry.2006,vol.25,no.4,p.326−342は、パーフルオロアルキル化された物質の分析化学に関するものであり、PFPEに関しては特に記載も示唆もなされていない。更に、
図1からは、この中に記載されている唯一の分離技術は液体クロマトグラフィーのようである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
明確化のため、本明細書全体を通じて以下の定義が適用される。
− 「カルボキシルPFPE」、「PFPEカルボキシレート」、及び「カルボン酸末端基を有する(又は含む)官能性PFPE」という表現は、2つの鎖末端を有する、完全にあるいは部分的にフッ素化されたポリアルキレンオキシ鎖を含むフルオロポリマーであって、一方又は両方の鎖末端にカルボン酸末端基を有するフルオロポリマーのことをいう。一官能性カルボキシルPFPEはカルボン酸末端基を1つだけ含み、二官能性カルボキシルPFPEは2つのカルボン酸末端基を各鎖末端に1つずつ含む。
− 「非官能性PFPE」という表現は、2つの鎖末端を有する、完全にあるいは部分的にフッ素化されたポリアルキレンオキシ鎖を含むフルオロポリマーであって、両方の鎖末端に非官能性(あるいは非反応性)末端基を有するフルオロポリマーのことをいう。
− (パー)フルオロポリエーテルにおける「(パー)」という接頭語は、ポリアルキレン鎖が完全に又は部分的にフッ素化されていてもよいことを意味する。
− 「PFPE」という頭字語は、上に定義されたような部分的に又は完全にフッ素化されたフルオロポリエーテルを意味する。
− 「大きい数平均分子量(Mn)」という表現は、PFPEカルボキシレート中の(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖のMnが1,500以上であることを意味する。
− 「非官能性PFPEを含む出発混合物からの一官能性及び/又は二官能性のPFPEカルボキシレートの精製(あるいは「分離」あるいは「濃縮」)とは、出発混合物よりも高い平均官能化度を有する混合物にするための精製工程又は分離工程又は濃縮工程のことを意味する。
− 「平均官能化度」という表現は、PFPE混合物中のポリマ一分子当たりの官能基の平均数のことをいい、平均官能化度は、実験項に開示されているように、例えば
19F−NMRによって決定することができる。
− 「バッチ式クロマトグラフィー」という表現は、クロマトグラフィー方法が、容器中で不連続的に、すなわち、異なる分離工程(各工程は液相からの固相担体の分離を含む)を行うことによって
行われることを意味する。
− 「固相担体」(あるいは「固相」)という表現は、混合物中の精製するべきPFPEの末端基との極性結合/相互作用又は水素結合をすることが可能な部位又は活性基を含む化合物のことをいう。例えば、固相担体はヒドロキシル基を含んでいてもよく、シリカの場合これはシラノール基によって表される。又は、これはアルミナの場合のように、固相表面の外側に向けられた正の静電場を発生することが可能な固体化合物である。
− 「液相」という表現は、各クロマトグラフィー工程で使用される溶媒又は溶媒混合物のことをいう。
− 範囲として表現される値は範囲末端を含む。
【0025】
非官能性及び官能性のPFPEカルボキシレート混合物は、好ましくは次の構造を満たす。
A−O−R
f−B (I)
(式中、
− A及びBは互いに同じ又は異なり、式−CFXCOOHの官能性基(式中、XはF又はCF
3である)であるか、直鎖又は分岐の非官能性C
1〜C
4パーフルオロアルキル基(ここで、1つのフッ素原子は1つの塩素原子又は1つの
水素原子で置換されていてもよい)であり、非官能性基A又はB中に塩素が存在しない場合、これは末端基の総量基準で2%未満のモル量であり、
− R
fは、数平均分子量(Mn)が1,500より大きく、好ましくは2,000より大きく、より好ましくは3,000より大きく、15,000よりも小さい、好ましくは10,000よりも小さい、より好ましくは8,000よりも小さい(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖であり、前記鎖は互いに同じ又は異なっていてもよく、(CFYO)(式中、YはF又はCF
3である);(CF
2CF
2O);(CF
2CF
2CF
2O)、(CF
2CF(CF
3)O)、及び(CF(CF
3)CF
2O)を含む(C
3F
6O);並びに(CF
2CF
2CF
2CF
2O)から選択される繰り返し単位を含み、繰り返し単位が互いに異なる場合、これらは鎖に沿って統計的に分布している)
【0026】
好ましくは、本発明の方法を行うことができるPPFEの混合物は、次の分類から選択されるR
f鎖を含む。
(a)−(CF
2O)
n(CF
2CF
2O)
m(CF
2CF
2CF
2O)
p(CF
2CF
2CF
2CF
2O)
q−
(式中、m、n、p、qは0、又はR
f鎖が上記数平均分子量の要件を満たすように選択される整数であり、mが0以外の場合、m/n比は好ましくは0.1〜20であり、(m+n)が0以外の場合、(p+q)/(m+n)は好ましくは0〜0.2であり、両端を含む);
(b)−(CF
2CF(CF
3)O)
a(CF
2CF
2O)
b(CF
2O)
c(CF(CF
3)O)
d−
(式中、a、b、c、dは0、又はR
f鎖が上記数平均分子量の要件を満たすように選択される整数であり、bが0以外の場合、a/bは好ましくは0.1〜10であり、(a+b)が0以外の場合、(c+d)/(a+b)は好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは0.01〜0.2である);
(c)−(CF
2CF(CF
3)O)
e(CF
2O)
f(CF(CF
3)O)
g−
(式中、e、f、gは0、又はR
f鎖が上記数平均分子量の要件を満たすように選択される整数であり、eが0以外の場合、(f+g)/は好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは0.01〜0.2である)
【0027】
本発明の第一の好ましい実施形態によれば、式(I)の混合物は、一官能性PFPEカルボン酸の量が二官能性PFPEカルボン酸の量よりも多い混合物である。つまり、この実施形態によれば、式(I)の混合物は、AとBの両方が−CFXCOOH基(式中、Xは上で定義した通りである)であるPFPEカルボン酸(二官能性PFPEカルボン酸)の量よりも、A及びBのうちの一方が−CFXCOOH基(式中、Xは上で定義した通りである)であり他方が上で定義したような直鎖又は分岐の非官能性C
1〜C
4パーフルオロアルキル基であるPFPEカルボン酸(一官能性PFPEカルボン酸)の量の方が多い混合物である。この混合物では、R
f鎖は好ましくは上記(a)構造(式中、n、m、p、qはR
fの数平均分子量が1,500より大きくなるように選択される)か、上記(c)構造(式中、e、f、及びgはR
f鎖の数平均分子量が2,000より大きくなるように、更に好ましくは3,500より大きくなるように選択される)を有する鎖である。
【0028】
本発明の第二の好ましい実施形態によれば、式(I)の混合物は二官能性PFPEカルボン酸の量が一官能性PFPEカルボン酸の量よりも多い混合物である。つまり、この実施形態によれば、式(I)の混合物は、A及びBのうちの1つが−CFXCOOH基(式中、Xは上で定義した通りである)であり他方が上で定義したような直鎖又は分岐の非官能性C
1〜C
4パーフルオロアルキル基であるPFPEカルボン酸(一官能性PFPEカルボン酸)の量よりも、AとBの両方が−CFXCOOH基(式中、Xは上で定義した通りである)であるPFPEカルボン酸(二官能性PFPEカルボン酸)の量の方が多い混合物である。この混合物では、R
f鎖は好ましくは上記(a)又は(b)の構造(式中、n、m、p、及びq、又は、a、b、c、及びdは、R
fの数平均分子量が1,500より大きくなるように選択されることが好ましい)を有する鎖である。
【0029】
式(I)の混合物は、例えば英国特許第1104482号明細書(MONTEDISON SPA)、米国特許第3442942明細書(MONTEDISON SPA)、米国特許第5777291明細書(AUSIMONT SPA)、又は米国特許第5258110明細書(AUSIMONT SPA)の教示に従って得られる過酸化PFPEを出発物質として、当該技術分野で公知の複数の方法に従って製造することができる。二官能性PFPEカルボン酸優勢の式(I)の混合物は、例えば、上で引用した文献の記載に従い、UV光又はラジカル開始剤の存在下、C
2F
4及び/又はC
3F
6などのフルオロオレフィンを低温で酸素を用いてオキシ−重合し、その後例えば米国特許第6127498号明細書(AUSIMONT SPA)に記載されているように例えばパラジウムを含有する適切な触媒上で水素を用いて還元することによって、製造することができる。一官能性PFPEカルボン酸優勢の式(I)の混合物は、例えば、上述の米国特許第8008523号明細書に教示されているように、上記過酸化PFPEから、過酸化結合の熱脱離又は光脱離の後、あるいは二官能性PFPEカルボン酸又はフッ化アシルの部分的フッ素化によって、得ることができる。式(I)の混合物は、例えば米国特許第4755330号明細書(AUSIMONT SPA)に教示されているように、非官能性PFPEを出発物質として、AlF
3などのルイス酸触媒を用いた処理によって調製することもできる。
【0030】
本発明の方法が行われる式(I)の混合物の平均官能化度に制限はなく、典型的には、式(I)の混合物は0.3以上の平均官能化度を有する。
【0031】
本発明の方法を行うための固相は、典型的には、シリカゲル、Al及びMgのケイ酸塩、並びに活性アルミナから選択される極性無機固相担体であり、典型的には中性であり、シリカゲルが好ましい。様々な種類のシリカゲルのうちで、70〜230メッシュ、60Åおよび100Åのシリカゲル、ならびに230〜400メッシュ、60Åのシリカゲルを特に挙げることができるが、一方で様々な種類のアルミナのうちで、150メッシュ、58Åのアルミナを特に挙げることができる。例えば酸化マグネシウム及びBaSO
4などの金属酸化物も固定相として挙げることができる。
【0032】
通常、固相担体と混合物(M)は、約0.1〜10の範囲の重量比で、好ましくは約1:1で混合される。
【0033】
フッ化有機溶媒は、トリクロロトリフルオロエタン;Galden(登録商標)HT PFPEなどの、沸点が200℃未満好ましくは150℃未満の完全にあるいは部分的にフッ素化された非官能性のPFPE;例えばパーフルオロヘプタンなどのパーフルオロアルカン;ハイドロフルオロカーボン(HFC);ハイドロフルオロエーテル及びハイドロフルオロポリエーテル(HFE及びHFPE)、並びにパーフルオロベンゼンやトリフルオロトルエンやヘキサフルオロキシレン異性体などの、完全にあるいは部分的にフッ素化された芳香族溶媒、から選択することができる。本発明の好ましい実施形態によれば、溶媒は1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、Novec(登録商標)HFE7200及びNovec(登録商標)HFE7500から選択される。典型的には、工程a)のフッ化溶媒は、混合物(M)の量に対して3:1の重量比で使用される。工程a)は、典型的には15分〜3時間、好ましくは1〜2時間、懸濁液を撹拌することによって行われる。当業者であれば、混合(M)及び固相担体の量に基づいて、並びに液相の試料採取及びその中に溶解している混合物(M2)平均官能化度の測定によって、この工程の継続時間を定めることができるであろう。
【0034】
混合物(M)の平均官能化度が低い場合、非官能性PFPEをできる限り除去するためには、工程a)の継続時間を過度に延ばすよりも、固相から液相を分離し(工程b)、固相を一回以上洗浄する(工程c)ことが好ましい。混合物(M)の平均官能化度が特に低い場合、例えば0.3程度に低い場合、洗浄することが望ましく、混合物(M1)の望ましい官能化度は0.9以上である。通常、洗浄は2回又は3回で十分である。いずれの場合でも、当業者であれば液相の試料採取及びその中に溶解している混合物(M2)平均官能化度の測定によって、十分な洗浄回数を決定できるであろう。
【0035】
固相からの液相の分離は、当該技術分野で公知の方法に従って行うことができる。典型的には、工程b)は、工程a)で使用された固相担体によって選択されるであろう膜で濾過することによって行われる。
【0036】
工程d)では、フッ化有機溶媒は、選択したアルコールと混和するものであれば、工程a)で使用された溶媒と同じであっても異なるものであってもよい。好ましくは、溶媒は工程a)で使用されたものと同じである。
【0037】
アルコールは、典型的には式ROH(式中、Rは、任意選択的にアリールラジカル(好ましくはフェニルラジカル)で置換されていてもよい、1〜10の炭素原子数である、直鎖又は分岐で飽和又は不飽和のアルキルラジカルであるか、Rは、任意選択的に部分的にフッ素化されていてもよく任意選択的に例えば酸素などのヘテロ原子を含んでいてもよいC
5〜C
7の環状ラジカルであるか、Rはアリールラジカル、好ましくはフェニルラジカルである)のアルコールである。好ましくは、Rは1〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル鎖であり、本発明の好ましい実施形態では、アルコールはメタノール又はエタノールである。
【0038】
最も好ましい実施形態によれば、工程a)は1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを用いて行われ、工程d)はメタノール/1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを3:7の相互重量で用いて行われる。
【0039】
工程d)では、アルコールとフッ化溶媒が約1:10〜約4:1、好ましくは2:8〜4:6、より好ましくは3:7の範囲の相互重量で使用される。アルコール/フッ化溶媒の液相と固定相との重量比(固定相の重量は反応容器に最初に添加された重量、すなわち混合物(M)が吸着されていない状態の重量である)は、2:1〜10:1、好ましくは2:1〜4:1の範囲である。
【0040】
工程d)は、室温から200℃の範囲の温度で行われる。好ましくは、工程d)は懸濁液(S1)を加熱することによって行われ、より好ましくは、工程d)は、大気圧下、50〜100℃の範囲の温度で固相担体から混合物(M1)を除去するのに十分な時間、懸濁液(S1)を加熱することによって行われる。当業者であれば、一定間隔で液相の試料採取をし、その中に存在する混合物(M1)の量を決定することによって、工程d)の継続時間を決定できるであろう。
【0041】
工程b)と同様に、工程e)は当該技術分野で公知の方法に従って行うことができ、典型的には工程c)で示したように行なわれる。
【0042】
本発明の方法は、出発混合物(M)の多分散度に制限がないことから、すなわち本方法はPFPE類間の分子量デルタが高い混合物(M)に対してもうまく行うことができることから、工業スケールで行うのに特に便利である。本発明の方法は、非常に低い平均官能化度の混合物(M)に対して行うことができる。例えば、平均官能化度が0.3の一官能性PFPEカルボキシレートの混合物(M)から出発して、平均官能化度が少なくとも0.9である混合物(M1)を得ることが可能である。更に、回収された混合物(M1)は、通常、大量のカルボキシルPFPEを、工程d)で使用したアルコールとのエステルとして含有していることが確認された。典型的には、エステル含量は、混合物(M1)の重量基準で60%以上である。正確には、混合物(M1)は下記式(I
*)
A−O−R
f−B (I
*)
(式中:
− 互いに同じ又は異なるA及びBは、式−CFXCOOR’の置換基(式中、XはF又はCF
3であり、R’はH又は上で定義したようなRである)であるか、直鎖又は分岐の非官能性C
1〜C
4のパーフルオロアルキル基(ここで、1つのフッ素原子は1つの塩素原子又は1つの
水素原子で置換されていてもよい)であり、非官能性基A又はB中に塩素が存在する場合、これは末端基の総量に対して2%未満のモル量であり、
− R
fは上で定義した通りである)
で表すことができる。混合物(M1)はそのまま使用することもできるし、公知の方法に従って更なるPFPE誘導体の前駆体として使用することもできる。あるいは、混合物(M1)を加水分解して目的のカルボキシルPFPEとすることもできる。
【0043】
本発明を、次の実験項で報告されている実施例によって、以下詳細に説明する。
【0044】
参照により本明細書に組み込まれる特許、特許出願、および刊行物のいずれかの開示が、用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先されるものとする。
【実施例】
【0045】
実験項
原材料及び方法
本発明の方法を例示する調製1及び実施例1は、下記式(II)
Z−O−PFPE−Y (II)
(式中、
PFPEはパーフルオロポリオキシアルキレン鎖(CF(CF
3)CF
2O)
e(CF
2O)
f(−CF(CF
3)O)
g(すなわち、上記(c)分類のR
f鎖である)であり、e/(f+g)は12である。Z及びYは互いに同じ又は異なり、CF
3、(CF
3)
2CFCF
2、CF
2COOH、CF(CF
3)COOH、CF
2C(O)CF
3から選択される)(平均分子量5,359g/mol;平均官能化度0.8)
のPFPE混合物から調製したPFPEカルボキシレート混合物(M)に対して行われた。
【0046】
PFPE混合物(II)は、米国特許第3442942号明細書に従って得られたPFPE過酸化物を出発物質として、過酸化物ユニットを脱離させるために最大200℃で熱処理し、フッ化アシル末端基をカルボン酸末端基に変換するための最終的な加水分解を行うことによって調製した。
19F−NMRによって決定した混合物(II)の末端基分布は、下の表1に報告されている。
【0047】
1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン及びメタノールは、それぞれMiteni(登録商標)及びAldrich(登録商標)から入手可能であり、追加的に精製することなしに使用した。
【0048】
シリカゲルグレード9385はMerckから購入した。
【0049】
1H−NMR及び
19F−NMRは、
1Hに関しては499.86MHzで、
19Fに関しては470.30MHzで稼働するAgilent System 500で記録した。
【0050】
平均官能化度の決定
次の式
平均官能化度=2
*E
f/(E
f+E
n)
(式中、E
fは官能性末端基の数であり、E
nは非官能性末端基の数である)
によって定義される平均官能化度(F)は、例えば適切に改良した米国特許第5919614号明細書に開示されている方法などの公知の方法に従って、
1H−NMR及び
19F−NMRによって決定した。
【0051】
調製1−PFPE(II)からの、非官能性、一官能性、及び二官能性のPFPEカルボキシレートの混合物(M)
コンデンサー、添加用漏斗、及びメカニカルスターラーを備えた3Lの容量の三口丸底フラスコに、2kgの1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンと、平均分子量が5,359g/molであり平均官能化度(F)が0.8である1kgのPFPE(II)とを入れた。得られた溶液に、40gのKOH(50%w/wの水溶液)を添加し、温度を65℃まで上げ、反応混合物を4時間撹拌した。
【0052】
温度を室温まで下げ、50gのHCl(25%w/wの水溶液)をゆっくり添加し、温度を65℃まで上げて反応混合物を更に2時間撹拌した。
【0053】
この時間の後、温度を室温まで下げ、反応混合物を分液漏斗に移し、最初は室圧で、その後減圧下で(110℃の温度で9×10
−2mmHgの圧力まで下げて)下層をエバポレートした。
【0054】
分離した残留物(989g)(以降混合物(M)という)は、
1H−NMR及び
19F−NMRによって同定され、平均分子量が5,595g/molであり、官能化度(F)が0.35であり、ケト末端基を含んでいないことが明らかになった。下の表1には、混合物(M)の末端基の分布がまとめられている。
【0055】
【0056】
実施例1(本発明)−混合物(M)の精製
コンデンサー及びメカニカルスターラーを備えた3Lの容量の三口丸底フラスコに、0.5kgのシリカゲル(Merk グレード 9385)、1.6kgの1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、及び0.5kgの
混合物(M)を入れた。得られた懸濁液を室温で撹拌したまま2時間維持し、その後0.2μmのPTFE膜を備えた加圧式フィルターで濾過した。
【0057】
シリカゲルを再度反応器に入れ、1.6kgの1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを添加し、室温で撹拌したまま1.5時間維持し、濾過した。この手順をもう一度繰り返し、その後、シリカゲルを再度反応器に入れ、MeOH/1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの30/70混合物(w/w)1.2kgを添加し、還流状態で7時間撹拌した。
【0058】
その後、懸濁液を室温まで冷却し、濾過し、最初は室圧で、その後減圧下で(110℃の温度、9×10
−2mmHgの圧力まで下げて)有機相をエバポレートした。
【0059】
分離した残留物(0.15kg)は、
1H−NMR及び
19F−NMRによって同定され、混合物(M1)が平均官能化度(F)0.95、Mn=5,805g/molであり、実質的に一官能性PFPE−メチルエステルを含むことが明らかになった。末端基の分布は下の表2にまとめられている。
【0060】
分離したフラクションの収率は出発材料基準で30%(w/w)であり、70%超の官能基回収率に相当する。
【0061】
【0062】
比較例
方法の最後の工程で、MeOH/1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの30/70混合物(w/w)1.2kgの代わりにメタノール1.2kgを使用した点だけ変えて、本発明の実施例をもう一度行った。メタノール懸濁液をエバポレートした後にPFPE生成物は回収されなかった。
【0063】
調製2−非官能性、一官能性、及び二官能性のPFPEカルボキシレートの混合物(M’)の調製
平均分子量が3,660g/molであり、平均官能化度が(F)1.93である、下記式
A−O−R
f−B
(式中、
R
fは、少量の−CF
2CF
2CF
2O−単位及び−CF
2CF
2CF
2CF
2O−単位(すなわち上記(a)分類のR
f鎖)も含む、パーフルオロポリオキシアルキレン鎖(CF
2CF
2O)
m(CF
2O)
n(m/nは1.2)を表し、
A及びBは互いに同じ又は異なり−CF
3、−CF
2H、及び−CF
2COOHから選択される)
のPFPEカルボキシレート混合物(M’)を、米国特許第5777291号明細書に従って得られたPFPE過酸化物を出発物質として、米国特許第6127498号明細書に従う触媒的水素化を行い、エタノールでエステル化し、蒸留により低分子量フラクションを除去し、加水分解することによって調製した。
【0064】
実施例2(本発明)−混合物(M’)の精製
コンデンサー及びメカニカルスターラーを備えた0.5Lの容量の三口丸底フラスコに、0.125kgのシリカゲル(Merkグレード 9385)、0.4kgの1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、及び0.125kgの混合物(M’)を入れた。得られた懸濁液を室温で撹拌したまま2時間維持し、その後0.2μmのPTFE膜を備えた加圧式フィルターで濾過した。
【0065】
シリカゲルを再度反応器に入れ、MeOH/1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの30/70混合物(w/w)0.25kgを添加し、還流状態で撹拌したまま7時間維持した。その後、懸濁液を室温まで冷却して濾過し、有機相を回収した。この手順をもう一度繰り返した。回収した有機相を集め、エバポレートし、最初は室圧で、その後減圧下で(110℃の温度で9×10
−2mmHgの圧力まで下げて)有機相をエバポレートした。
【0066】
分離した残留物(0.112kg)、すなわち混合物(M’−1)は、
1H−NMR及び
19F−NMRによって分析され、平均分子量が3,487g/molであり、平均官能化度(F)が1.96に増加した、上で定義した式(I
*)によって表される混合物(式中、A及びBは互いに同じ又は異なり、独立に−CF
3、−CF
2H及び−CF
2COOCH
3から選択され、R
fは上で定義した通りである)であることが明らかになった。
【0067】
調製3−非官能性、一官能性、及び二官能性のPFPEカルボキシレートの混合物(M’’)の調製
平均分子量が3,660g/molであり、平均官能化度(F)が1.94である、下記式
Z−O−PFPE−Y (II’)
(式中、
PFPEは、少量の−CF
2CF
2CF
2O−及び−CF
2CF
2CF
2CF
2O−単位(すなわち上記(a)分類のR
f鎖)も含む、パーフルオロポリオキシアルキレン鎖(CF
2CF
2O)
m(CF
2O)
n(m/nは1.2である)であり、
Z及びYは独立に、−CF
3、−CF
2H及びCF
2COOHから選択される)
のPFPEカルボキシレート混合物に対して、F=0.30の混合物(M’’)が得られるまで単体フッ素を用いてフッ素化を行った。フッ素化処理時、−CF
2COOH基のフラクションは−CF
3基に変換され、−CF
2H基も−CF
3基に変換された。
【0068】
実施例3(本発明)−混合物(M’’)の精製
コンデンサー及びメカニカルスターラーを備えた1Lの容量の三口丸底フラスコに、0.25kgのシリカゲル(Merk グレード 9385)、0.750kgの1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、及び0.5kgの混合物(M’’)を入れた。得られた懸濁液を室温で撹拌したまま2時間維持し、その後0.2μmのPTFE膜を備えた加圧式フィルターで濾過した。
【0069】
シリカゲルを再度反応器に入れ、0.750kgの1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを添加し、室温で撹拌したまま1.5時間維持し、濾過した。この手順をもう2回繰り返し、その後シリカゲルを再度反応器に入れ、MeOH/1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの30/70混合物(w/w)0.750kgを添加し、還流状態で7時間撹拌した。その後、懸濁液を室温まで冷却して濾過した。この手順をもう2回繰り返した。
【0070】
最後に、全ての得られた有機相を集め、最初は室圧で、その後減圧下で(110℃の温度、9×10
−2mmHgの圧力まで下げて)有機相をエバポレートした。
【0071】
分離した残留物(0.076kg)である混合物(M’’−1)は、
1H−NMR及び
19F−NMRによって分析され、平均分子量Mn=3,470g/molであり、平均官能化度(F)が1.12である、上で定義した式(I
*)によって表される混合物(式中、A及びBは互いに同じ又は異なり、−CF
3及び−CF
2COOCH
3から選択される基である)であることが明らかになった。
【0072】
分離したフラクションの収率は出発材料基準で15%(w/w)であり、55%の官能基回収率に相当する。