【文献】
Peptidoglycan-associated lipoprotein precursor,GenBank,2005年 9月13日,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/P07176?report=genpept
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該ワクチンベクターが、1を超えるコピーの該第一のポリヌクレオチド及び/又は1を超えるコピーの該第二のポリヌクレオチド配列を含む、請求項2〜6のいずれか1項に記載のワクチンベクター。
非ヒト対象におけるグラム陰性細菌に対する免疫応答を強化する方法であって、グラム陰性細菌に対する該非ヒト対象の免疫応答の強化に有効な量で、請求項1〜14のいずれか1項に記載のワクチンベクター又は請求項15に記載の医薬組成物を該対象に投与する工程を含む、前記方法。
非ヒト対象におけるグラム陰性細菌による感染に関連する罹病率を低下させる方法であって、ワクチンベクターを投与されていないコントロール対象と比較してグラム陰性細菌による非ヒト対象の後の感染に関連する罹病率を低下させるのに有効な量で、請求項1〜14のいずれか1項に記載のワクチンベクター又は請求項15に記載の医薬組成物を該非ヒト対象に投与する工程を含む、前記方法。
該ワクチンベクターが、経口、粘膜、非経口、皮下、筋肉内、眼内及び卵内から成る群から選択されるルートによって投与される、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。
該グラム陰性細菌が、サルモネラ属の種、エシェリキア属の種、赤痢菌属の種、ビブリオ属の種、エルウイニア属の種、クレブシーラ属の種、シトロバクター属の種、エルジニア属の種、及びプロビデンシア属の種からなる群から選択される、請求項16〜23のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0006】
グラム陰性細菌に対する通常のワクチンは、一般的には管理された数でしばしば注射によりデリバーされる生/弱毒細菌を基にする。グラム陰性細菌は極めて多様であり、細菌の異なる種間及び場合によっては同じ種間の異なる株間における抗原性の多様性は、2つ以上の単一株又は血清型亜型に対するワクチン免疫を困難にしている。組換えワクチンが開発されたが、抗原性の多様性のために、一般的には細菌の単一種又は場合によって単一株に対する免疫応答の強化に限定される。多数の血清型亜型及び実際のところグラム陰性細菌の2つ以上の種に対して防御する能力を有するワクチンが最適であろう。さらにまた、経口投与が可能なワクチンは投与をより安価にしてコンプライアンスをより容易にするであろう。PAL(グラム陰性生物で広範囲に見出されるペプチドグリカン結合リポタンパク質)の高度に保存的な領域を含むワクチンが提供される。
【0007】
組換えDNA技術は、多くの酵母、細菌及びウイルス種の比較的容易な操作を可能にする。いくつかの微生物は軽度に病原性であるか又は非病原性であるが、激しい免疫応答を生じる能力を有する。これらの微生物は、ベクターで組換え発現される抗原に対して免疫応答を誘引するための有力なワクチンベクターとなる。微生物ベクターによるワクチンは天然の感染を模倣して激しくかつ長期持続する粘膜免疫を生じさせることができ、さらに製造及び投与を比較的安価にすることができる。これらのワクチンの多くは経口的に投与することができ、そのことは投与に習熟した者を求める経費及び必要性を軽減させ、投与に対する抵抗を低下させる。さらにまた、そのようなベクターはしばしば2つ以上の抗原を保持することができ、多数の感染性因子に対して防御を提供する潜在能力を有する。
【0008】
ワクチンは、ある抗原性ポリペプチドに対して免疫応答を誘引する能力を有する当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む任意の組成物を含む。ワクチンベクターは抗原及び場合によって他の免疫刺激性ポリペプチドを含むように操作することができる組成物であり、さらに該組成物はまた、アジュバントを含むか又はアジュバントともに投与して、当該寄生虫に対する免疫応答をさらに高め、その後の感染に関連する罹病率及び死亡率に対してより良好な防御を提供できる。腸内病原体に対するワクチン免疫及び免疫応答成立のためのベクター(例えば細菌、ウイルス又は酵母ベクター)の使用が本明細書で開示される。腸内病原体には、大腸菌、サルモネラ属、及び実施例の表1に開示される他の腸内微生物が含まれ得るが、ただしこれらに限定されない。本明細書に記載するワクチンベクターの投与後の免疫応答は完全な防御とは限らないが、腸内病原体によるその後の感染に関連する罹病率又はパーセンテージ死亡率(すなわち死亡の蓋然性)を低下させることができる。
【0009】
ある特徴では、配列番号:1−6、32、36若しくは37の少なくとも1つ、又はこれら配列のいずれか1つの少なくとも6アミノ酸の長さの免疫原性フラグメントをコードする第一のポリヌクレオチド配列を含むワクチンベクターが提供される。該ワクチンベクターはまた、免疫原性ポリペプチドをコードする第二のポリヌクレオチドを含むことができる。適切には、PALポリペプチド又はその免疫原性フラグメント及び免疫刺激性ポリペプチドは該ワクチンベクターの表面で発現される。配列番号:1のポリペプチドの免疫原性フラグメントは、配列番号:2−5若しくは36−40のいずれか1つ又は前記の組合せ、又は少なくとも6アミノ酸の任意の他のフラグメントを含むことができる。例えば、抗原性ポリペプチドは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:32、配列番号:36、配列番号:37、又はこれら配列のいずれかの免疫原性フラグメント若しくは前記の組み合わせを含むか、本質的に前記から成るか、又は前記から成り得る。
【0010】
抗原性ポリペプチドの免疫原性フラグメントは、少なくとも6、8、10、12、14、16、18又は20アミノ酸の長さであり、かつ本明細書に提供する配列番号と少なくとも85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のパーセント同一性を有する配列であり得る。ワクチンは抗原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む任意の組成物を含み、前記抗原性ポリペプチドは、該ワクチンを投与された対象で当該ポリペプチドに対して免疫応答を引き起こす能力を有する。腸内細菌に対するワクチン免疫及び免疫応答成立のためのベクター(例えば細菌ベクター)の使用が本明細書で開示される。前記腸内細菌には、サルモネラ属の種、エシェリキア属の種(Escherichia spp.)、赤痢菌属の種、ビブリオ属の種、エルウイニア属の種、クレブシーラ属の種、シトロバクター属の種、エルジニア属の種、プロビデンシア属の種、又は同様な細菌(例えば表1に列挙されたもの)が含まれ得るが、ただしこれらに限定されない。
【0011】
本明細書で提供する抗原性ポリペプチド及び多数の病原性生物由来の他の抗原をコードするポリヌクレオチドは当該ベクターに挿入し、当該ベクターで発現させることができる。ベクターによるこれらポリヌクレオチドの発現は、対象の免疫に続いて当該抗原性ポリペプチドに対する免疫応答を発生させるであろう。ポリヌクレオチドはベクターの染色体に挿入されるか、又はプラスミド若しくは他の染色体外DNAでコードされ得る。当業者は、ベクター(例えばサルモネラ属又はバシルス属)でポリヌクレオチドの発現を達成するために多数の方法論が存在することを理解しているであろう。ポリヌクレオチドは、当業者に公知の方法によって、作動できるようにプロモーター(例えば構成的プロモーター、誘導性プロモーターなど)に連結することができる。適切には、抗原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、該ポリヌクレオチドが発現されるようにベクター(例えば細菌ベクター)に挿入される。
【0012】
PAL又は他の抗原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、トランスメンブレンタンパク質をコードするポリヌクレオチドにインフレームで挿入できる。抗原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはベクターのポリヌクレオチド配列に挿入して、ベクターの表面で当該抗原性ポリペプチドの発現を可能にすることができる。例えば、抗原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、トランスメンブレンタンパク質の外部ループ領域をコードする領域で該ベクターポリヌクレオチドにインフレームで挿入し、それによってベクターポリヌクレオチド配列をインフレームの状態で存続させることができる。ある実施態様では、抗原性ポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチドは、実施例に記載するように、サルモネラ属のlamB遺伝子のループ9に挿入することができる。また別には、ポリヌクレオチドは、例えばバシルス属のcotB遺伝子のようなポリヌクレオチドに挿入できよう。
【0013】
別の実施態様では、第一のポリヌクレオチドは、細胞壁に付着しているがトランスメンブレンタンパク質ではないタンパク質に又は前記タンパク質の表面露出末端に挿入される。該タンパク質は、タンパク質又は脂質アンカーを介して細胞壁に固着又は付着する分泌タンパク質であり得る。例えば、ポリヌクレオチドは、枯草菌(Bacillus subtilis)のフィブロネクチン結合タンパク質(FbpB)の3’末端に挿入することができる。また別には、抗原性ポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチドは、分泌ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに挿入することができる。
抗原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを非常に多様なベクターポリヌクレオチドに挿入して、ワクチンで処理された対象の免疫細胞に該抗原性ポリペプチドの発現及び提示を提供できることは当業者には理解されよう。抗原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは単一コピーで又は2つ以上のコピーで含まれ得る。マルチコピーを、ワクチンベクターの染色体内又は染色体外のただ1つの場所又は2つ以上の場所に挿入することができる。
【0014】
適切には、第一のポリヌクレオチドは、配列番号:1、配列番号:6、又は少なくとも6アミノ酸以上の前記の免疫原性フラグメント(例えば配列番号:2−5又は36−40)をコードする。ベクターは第一のポリヌクレオチドの2つ以上のコピーを含むか、或いは同じ又は異なる病原体を標的とする多数の抗原性ポリヌクレオチドを含むことができる。実施例では、配列番号:1−6、32、36及び37が免疫原性であることが示された。配列番号:1(EGHADERGTPEYNISLGER)及び8(TVEGHADERGTPEYNISLG)が、実施例ではバシルス又はサルモネラベクターに取り込まれる。ただ1つの病原体若しくは標的から得られる2つ以上のポリペプチドに由来する複数のエピトープの組合せ、又は別個の病原体若しくは標的に由来する複数のエピトープの組み合わせが特に意図される。当該複数のポリヌクレオチドはベクターに別々に挿入されるか、或いは2つ以上の単一エピトープを含有する融合タンパク質として挿入され得る。実施例では、配列番号:1(PAL)及び31(CJ0113)がバシルスベクターに取り込まれた(配列番号:42、44及び46並びに実施例を参照されたい)。適切には、ベクターに挿入された抗原性ポリペプチドの部分が免疫原性である。免疫原性フラグメントは、細胞性若しくは液性免疫応答を誘引する能力を有する、又は標的病原体若しくは関連病原体によるその後の感染に関連する罹病率又は死亡率を低下させる能力を有するペプチド又はポリペプチドである。
【0015】
抗原性ポリペプチドには免疫原性である任意のポリペプチドが含まれる。抗原性ポリペプチドには、病原体関連、アレルゲン関連、腫瘍関連又は疾患関連の抗原が含まれるが、ただしこれらに限定されない。病原体には、ウイルス、寄生虫、カビ及び細菌の病原体が、タンパク質病原体(例えばプリオン)と同様に含まれる。抗原性ポリペプチドは完全長タンパク質でもその部分でもよい。多くのタンパク質の免疫系による認識は、比較的少数のアミノ酸(しばしばエピトープと称される)に基づくことはよく確立されている。エピトープはわずかに4−8アミノ酸であり得る。したがって、本明細書に記載する抗原性ポリペプチドは、完全長配列、4アミノ酸の長さのエピトープ、又はこれら両極端の間の任意の部分であり得る。実際、抗原性ポリペプチドは、ただ1つの病原体又はタンパク質に由来する2つ以上のエピトープを含むことができる。抗原性ポリペプチドは、本明細書で提供する配列番号と少なくとも85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のパーセント同一性を有し得る。適切には、ポリペプチドの抗原性フラグメントは、配列番号:1−6、32、36又は37の4、5、6、7、8、9、10、12、15、17若しくはそれより大きい連続するアミノ酸であり得る。
【0016】
同じエピトープ又は異なるタンパク質の多数のエピトープのマルチコピーがワクチンベクターに含まれ得る。ワクチンベクター中の複数のエピトープは、多数の関連病原体を単一ワクチンベクターの標的とすることを可能にするために、関連性を有しかつ相同性であることができる。同じ又は異なる病原体若しくは疾患に由来するいくつかのエピトープ又は抗原を単一ワクチンベクター中で組み合わせて投与し、多数の抗原に対して免疫応答の強化をもたらすことができる。組換えワクチンベクターは、多数の病原性微生物、ウイルス由来抗原又は腫瘍関連抗原をコードすることができる。多数の抗原を発現する能力を有するワクチンベクターの投与は、同時に2つ以上の疾患に対して免疫を誘発する利点を有し、ただ1つの病原体の多数の株に対してより広い防御又はただ1つの病原体に対してより激しい免疫応答を提供する。実施例では、ワクチンベクターは、配列番号:1のPAL抗原性ポリペプチド及び配列番号:31のカンピロバクター抗原性ポリペプチド(カンピロバクター属に対する免疫応答の強化に有効であることが既に示されている(国際特許公開公報WO2011/156619))を含む。
【0017】
他の病原体由来の抗原性ポリペプチドをワクチンベクターで用い、ただ1つのワクチンによって2つ以上の病原体に対し免疫応答を強化できることは当業者には理解されるであろう。多数の病原体に対抗する単一ワクチンを投与することは有益であろう。インフルエンザ、サルモネラ属、カンピロバクター属又は他の病原体と一緒に、腸内病原体(例えば大腸菌)に対して免疫応答を誘引する能力を有するワクチンが考えられる。
例えば、第二の抗原性ポリペプチドはインフルエンザポリペプチドであり得る。適切には、前記は、インフルエンザH5N1ポリペプチド、又はインフルエンザウイルスの多数の株に関連するポリペプチド、例えばインフルエンザM2タンパク質のポリペプチドである。インフルエンザAウイルスM2タンパク質のエクトドメイン(M2eとして知られている)は、このウイルスの表面から突き出ている。M2タンパク質のM2e部分は約24アミノ酸を含む。M2eポリペプチドはインフルエンザ内である単離株と別の単離株でほとんど変化しない。実際、1918年のインフルエンザ大流行以来、感染者からは天然に生じたいくつかのM2eの変異しか単離されていない。さらにまた、トリ及びブタ宿主から単離されたインフルエンザウイルスは、異なっているがなお保存されたM2e配列を有する。ヒト、トリ及びブタ宿主から単離されたM2eポリペプチド配列についての概論は以下を参照されたい:Liu et al., Microbes and Infection 7:171-177, 2005;及びReid et al., J. Virol. 76:10717-10723, 2002(前記文献の各々は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。適切には、完全なM2eポリペプチドをワクチンベクターに挿入できるが、又は一部分のみを用いてもよい。8アミノ酸ポリペプチド(アミノ酸配列、EVETRIRN(配列番号:9)を有するLM2、又はアミノ酸配列、EVETPTRN(配列番号:10)を有する前記の変種M2eA)がワクチンベクターに取り込まれ、ニワトリへの投与後に抗体応答を生じることが示された(米国特許公開公報2011/0027309を参照されたい(前記文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる))。
【0018】
インフルエンザAに対する免疫応答を強化するためにワクチンベクターに含まれる他の適切なエピトープには、インフルエンザAのヘマグルチニン(HA)又は核タンパク質(NP)のポリペプチドが含まれるが、ただしこれらに限定されない。例えば、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13又は配列番号:14のペプチドをワクチンベクターに含むことができる。これら配列のいずれも他の病原体又は抗原に由来するエピトープを含む任意の他のエピトープと組み合わせて用いることができることは当業者には理解されるであろう。
例えば、本明細書で提供するPAL抗原性ポリペプチドは、グラム陰性細菌の他の抗原性ポリペプチド(例えば米国特許公開公報US2011/0159026又は国際出願公開公報WO2011/156619(前記両文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)で提供されているもの)と組み合わせることができる。多数の抗原性ポリペプチド(その1つは多数のグラム陰性細菌に対して広範囲の免疫を提供し、他方は個々のグラム陰性細菌に対してより特異的である)の組み合わせは、その後の感染に対して優れた防御を提供することができる。
【0019】
ワクチンベクターの部分として含まれる免疫刺激性分子は、長期持続防御のために決定的に重要な免疫系の部分を潜在的に活性化することができよう。免疫刺激性ポリペプチドは、ナイーブ又は適合免疫応答を刺激する能力を有するポリペプチドであり得る。免疫刺激性ポリペプチドは当該ワクチンベクターに本来関連しているものではなく、脊椎動物免疫系(例えば当該ワクチンが投与される対象の免疫系)に本来関連するポリペプチドである。本明細書では2つの免疫刺激性ポリペプチド(すなわちCD154及び高運動性グループボックス1(High Mobility Group Box1(HMGB1))が記載されるが、他の免疫刺激性ポリペプチドを用いるか、また別には本明細書に記載したものと組み合わせて用い得ることは当業者には理解されるであろう。
免疫系の始動に必要とされるポリペプチドをコードするさらに別のポリヌクレオチドもまたワクチンベクターに含むことができる。該ポリヌクレオチドは、それらの刺激性作用について公知である免疫系分子(例えばインターロイキン、腫瘍壊死因子、インターフェロン)、又は免疫調節に必要とされる別のポリヌクレオチドをコードすることができる。ワクチンはまた、免疫応答を刺激することが知られているペプチド(例えば本明細書に記載するCD154又はHMGB1ポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドを含むことができる。
【0020】
HMGB1は、活性化マクロファージ及び損傷細胞によって分泌され、炎症のサイトカイン媒介因子として機能し固有の免疫応答に影響を及ぼす。HMGB1配列の部分が実施例に記載するワクチンベクターに含まれている。HMGB1(高運動性グループボックス1)タンパク質は、最初にDNAの構造及び安定性のために決定的に重要なDNA-結合タンパク質として同定された。前記は、配列特異性なしにDNAと結合する普遍的に発現されるタンパク質である。このタンパク質は、植物から動物まで高度に保存され見出される。ゼブラフィッシュ、ニワトリ及びヒトのHMGB1アミノ酸配列がそれぞれ配列番号:23、配列番号:15及び配列番号:22で提供される。この配列は98%のアミノ酸同一性で哺乳動物を通して高度に保存され、アミノ酸の変化は保存的である。したがって、1つの種に由来するHMGB1タンパク質が別の種のHMGB1タンパク質のために機能的に代用となることは大いにあり得る。完全長HMGB1タンパク質又はその部分を、本明細書に記載するワクチンベクターのHMGB1ポリペプチドとして用いることができる。HMGB1は2つのDNA結合領域を有し、前記は、配列番号:16及び17に示すAボックス並びに配列番号:18及び19に示すBボックスと称される(以下を参照されたい:Andersson and Tracey, Annu. Rev. Immunol. 2011, 29:139-162(前記文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる))。
【0021】
HMGB1は炎症の媒介因子であり、(例えば壊死細胞からの)核損傷のシグナルとして機能する。HMGB1はまた、タンパク質のアセチル化、核を縦断する移動及び分泌を要求するプロセスで、単球/マクロファージ系列の細胞によって活発に分泌され得る。細胞外HMGB1は、後期糖化生成物受容体(RAGE)又はToll様受容体ファミリー(TLR)のメンバー(特にTLR4)を介するシグナリングによって強力な炎症媒介因子として機能する。RAGE結合活性が同定され、前記は配列番号:20のポリペプチドを要求する。TLR4結合は配列番号:15の106位にシステインを要求する(前記はHMGB1のBボックス領域で見出されている)。
HMGB1の炎症性活性は完全長タンパク質を必要とせず、機能的フラグメントが同定された。HMGB1の前炎症作用の媒介にはBボックスで十分であることが示され、したがって本発明の関係では、配列番号:18及び19がHNGB1ポリペプチド又はその機能的フラグメントである。さらにまた、RAGE結合部位及び前炎症性サイトカイン活性はそれぞれ配列番号:20及び21にマッピングされた。したがって本発明の関係では、これらポリペプチドはHMGB1ポリペプチドの機能的フラグメントである。
【0022】
当業者は、例えば国際特許出願公開公報WO02/092004(前記文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)の方法を用いて、前炎症性サイトカイン活性を刺激する能力を有するHMGB1ポリペプチド及びそのフラグメントを同定できる。適切には、HMGB1ポリペプチドは、配列番号:15のアミノ酸150−183にRAGE結合ドメイン(配列番号:20又はそのホモローグ)及び配列番号:15のアミノ酸89−109に前炎症性サイトカイン活性ドメイン(配列番号:21又はそのホモローグ)を含む。特に、HMGB1ポリペプチド及びその機能的フラグメント又はホモローグは、配列番号:15又は16−23のHMGB1ポリペプチドと同一であるか、又は少なくとも99%同一、少なくとも98%同一、少なくとも95%同一、少なくとも90%同一、少なくとも85%同一、若しくは少なくとも80%同一であるポリペプチドを含む。
【0023】
下記でより詳細に記載するように、ワクチンベクターはCD154ポリペプチドを含み、前記CD154ポリペプチドは、対象でCD40と結合し、ベクター及びその関連抗原に応答するように該対象を刺激する能力を有する。樹状突起細胞(DC)はナイーブT細胞を活性化してT細胞の増加及びエフェクター細胞への分化を引き起こすので、樹状突起細胞の関与は強力な免疫応答の開始に必須である。抗原を捕捉し、それらを関連リンパ系組織に輸送し、続いてそれらをナイーブT細胞に提示するのはDCの役割である(DCは身体の実質的に全ての組織で見出される抗原提示細胞(APC)である)。DCによる活性化時に、T細胞は増加し、エフェクター細胞に分化し、二次免疫器官を出て、末梢組織に入る。活性化された細胞傷害性T細胞(CTL)は、ウイルス感染細胞、腫瘍細胞、又は細胞内寄生生物(例えばサルモネラ属)感染APCすら破壊することができ、さらにウイルス感染に対する防御には決定的に重要であることが示された。CD40は、分子のTNF受容体ファミリーのメンバーであり、多様な細胞タイプ(専門的抗原提示細胞(APC)(例えばDC及びB細胞)を含む)で発現される。CD40とそのリガンドとの相互作用は極めて重要であり、液性及び細胞性免疫の両方に対して刺激性である。CD40(DCの表面で発現される)を介するDCの刺激は、抗CD40抗体によって促進され得る。しかしながら身体では、前記は、活性化T細胞の表面で発現されるCD40のための天然のリガンド(すなわちCD154)との相互作用によって生じる。興味深いことに、CD154のC40結合領域が同定された。CD154のCD40結合領域をベクター(例えばサルモネラ又はバシルスベクター)の表面で発現させ、共提示されるペプチド配列に対する免疫応答の強化をもたらすことができる(本明細書で提供する実施例及び米国特許公開公報2011/0027309(前記文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)で示される)。CD154ポリペプチドは、CD154完全長タンパク質の部分でも完全なCD154タンパク質でもよい。適切には、該CD154ポリペプチドはCD40と結合する能力を有する。
【0024】
上記で考察したように、抗原に対する免疫応答を強化する能力があるCD154ポリペプチドをコードするCD154ポリヌクレオチドをワクチンに含むことができる。適切には、CD154ポリペプチドは、長さが50より少数のアミノ酸、より適切には長さが40より少数、30より少数又は20より少数のアミノ酸である。該ポリペプチドは、長さが10から15アミノ酸、10から20アミノ酸又は10から25アミノ酸であり得る。CD154配列及びCD40結合領域は多様な種間で高度には保存されていない。ニワトリ及びヒトのCD154配列が、それぞれ配列番号:24及び25に提供される。
CD154のCD40結合領域は、ヒト、ニワトリ、アヒル、マウス、及びウシを含む多数の種について決定され、それぞれ配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29及び配列番号:30に示されている。CD40結合領域には種間で配列の可変性が存在するが、ヒトCD154ポリペプチドはニワトリで免疫応答を強化することができた。したがって、種特異的CD154ポリペプチド又は異種CD154ポリペプチドを用いて本発明を実施することができる。したがって、配列番号:24−30のCD154ポリペプチドをワクチンベクターに含むか、配列番号:24−30の配列と少なくとも99、98、97、96、95、93、90又は85%同一のポリペプチドをワクチンベクターに含むことができる。
CD154のポリペプチドは、その受容体(CD40)との結合によって少なくとも部分的に免疫応答を刺激する。対象の免疫細胞で発現される、CD154ポリペプチドと相同なポリペプチドは、マクロファージ及び他の抗原提示細胞上のCD40受容体と結合する能力を有する。このリガンド-受容体複合体の結合はマクロファージ(及びマクロファージ系列細胞、例えば樹状突起細胞)を刺激して食作用及び抗原提示を強化し、一方、他の局所免疫細胞(例えばBリンパ球)を活性化することが知られているサイトカインの分泌を高める。したがって、CD154ペプチドと結合した分子は、優先的に免疫応答及び抗体産生増加の標的となる。
【0025】
抗原性ポリペプチド及び免疫刺激性ポリペプチドはワクチンベクターを介してデリバーされる。ワクチンベクターは、細菌、酵母、ウイルス又はリポソーム系ベクターである。可能なワクチンベクターには以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):バシルス属(枯草菌)、サルモネラ属(腸炎菌)、赤痢菌属、エシェリキア属(大腸菌)、エルジニア属、ボルデテーラ属(Bordetella)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、乳酸杆菌属(Lactobacillus)、連鎖球菌属(Streptococcus)、ビブリオ属(コレラ菌(Vibrio cholerae))、リステリア属(Listeria)、酵母(例えばサッカロミセス属(Saccharomyces)又はピキア属(Pichia))、アデノウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、アルファウイルス、及びアデノ随伴ウイルス。生きている細菌、酵母又はウイルスワクチンベクターは、免疫低下個体にはなお危険であり、更なる規制的監視を必要とすることがある。したがって、殺滅(killed)若しくは弱毒化されているか、又は “一般に安全と認められる”(GRAS)生物というアメリカ食品医薬品局(FDA)の安全基準合格証が得られるベクターの使用が所望される。問題はそのようなベクターを用いて激しい免疫応答を発生させることである。細菌、酵母又はウイルスワクチンベクターを不活化又は殺滅する方法は当業者には公知であり、例えばホルマリン不活化、抗生物質による不活化、熱処理及びエタノール処理のような方法が含まれるが、ただしこれらに限定されない。免疫刺激性ポリペプチド(例えばHMGB1(高運動性グループボックス1)ポリペプチド)をワクチンベクターの表面に含むことによって、我々は、バシルス属種ベクターを用いて抗原性ポリペプチドに対して激しい免疫応答を発生させることができる。実際、投与後に複製されないが、なお激しい免疫応答を誘引できるようにそのようなベクターを不活化することができる。ワクチンベクターは、病原性がない野生型細菌、酵母又はウイルスであり得る。また別には、ベクターは、宿主内で限定的複製能力をもつように、又は補充培地がなければ数世代を超えては増殖できないように弱毒化することができる。ベクターを弱毒化する多様な方法及びそのような実施手段が存在することは当業者には理解されるであろう。
【0026】
抗原性ポリペプチドの少なくとも一部分及び免疫刺激性ポリペプチドの少なくとも一部分が、ワクチンベクターの表面に存在するか又は表面で発現される。ワクチンベクターの表面での存在は、トランスメンブレンタンパク質の外部ルート内に含まれるか、トランスメンブレンタンパク質、膜脂質又は膜固着炭水化物若しくはペプチドと相互作用する(例えば共有結合により)か、又は前記と化学的に架橋されるポリペプチドを含む。ポリペプチドは、当該ポリペプチドを含むアミノ酸をN-末端、C-末端又はトランスメンブレンタンパク質内の任意の場所にペプチド結合により連結させることによって(すなわちトランスメンブレンタンパク質の2つのアミノ酸の間に又はトランスメンブレンタンパク質の1つ以上のアミノ酸の代わりに(すなわち欠失-挿入)挿入することによって)、トランスメンブレンタンパク質内に含まれ得る。適切には、ポリペプチドはトランスメンブレンタンパク質の外部ループに挿入できる。適切なトランスメンブレンタンパク質は、srtA、cotB 及びlamBであるが、当業者は多くの適切なトランスメンブレンタンパク質が利用可能であることを理解していよう。ポリペプチドは、抗原性ポリペプチド及び免疫刺激性ポリペプチドがワクチンベクターの表面で発現されるように、膜又は細胞壁固着タンパク質若しくは脂質に連結することができる。
【0027】
上記に記載したように、抗原性又は免疫刺激性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはベクターの染色体に挿入されるか、又は染色体外で(例えばプラスミド、BAC又はYACで)維持され得る。これらのポリヌクレオチドを多様なポリヌクレオチド中にインフレームで挿入し、ベクターの種々の部分で発現させるか又は分泌させることができることは当業者には理解されるであろう。抗原性ポリペプチドに対する免疫応答を強化する能力を有する免疫刺激性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはまた抗原性ポリペプチドをコードすることができる。抗原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを免疫刺激性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに連結し、それによってベクター中で2つのポリペプチドが同じポリペプチドの部分であるように(例えば融合タンパク質のように)することができる。実施例では、抗原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはまた免疫刺激性ポリペプチドをコードする。ある実施態様では、ポリペプチドをコードする2つのポリヌクレオチドは両方とも、腸炎菌のlamB遺伝子のループ9に又は別のワクチンベクターにインフレームで挿入される。他のトランスメンブレンタンパク質をコードする細菌のポリヌクレオチド及びlamB遺伝子の他のループもまた用いることができることは当業者には理解されるであろう。
【0028】
また別には、抗原性ポリペプチド及び/又は免疫刺激性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ワクチンベクターの表面でディスプレーされるか又は提示される分泌ポリペプチドにワクチンベクターの表面のタンパク質、脂質又は炭水化物との結合を介して挿入できる。抗原性ポリペプチド及び/又は免疫刺激性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを極めて多様なワクチンベクターポリヌクレオチドに挿入して、該抗原性ポリペプチド及び/又は免疫刺激性ポリペプチドの発現及び該ワクチンベクター処置対象の免疫細胞への提示を提供できることは当業者には理解されるであろう。PAL抗原性ポリペプチド及び免疫刺激性ポリペプチドのコード領域を、リステリア属のソーターゼのための分類モチーフを含む黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)フィブロネクチン結合タンパク質のC-末端と融合させることができる。これはグラム陽性細菌(例えばバシルス属)の細胞壁への当該分泌タンパク質の固着を可能にする(以下を参照されたい:Nguyen and Schumann, J Biotechnol (2006) 122: 473-482(前記文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる))。他の同様な方法もまた用いることができる。
【0029】
また別には、ポリペプチドは、当業者に利用可能な方法により、膜、細胞壁又はキャプシド(ウイルスベクターが用いられる場合)のタンパク質、脂質又は炭水化物と共有結合的に若しくは化学的に連結させることができる。例えば、ジスルフィド結合又はビオチン-アビジン架橋を用いて、抗原性及び免疫刺激性ポリペプチドをワクチンベクターの表面に提示できよう。適切には、抗原性ポリペプチド及び免疫刺激性ポリペプチドは融合タンパク質の部分である。2つのポリペプチドはペプチド結合により直に連結されてもよく、又はリンカー、スペーサー若しくは第三のタンパク質の断片(その中に2つのポリペプチドが挿入される)によって分離されてもよい。実施例では、アミノ酸スペーサーがポリペプチドの間に用いられた。スペーサーは2から20アミノ酸、適切には3から10アミノ酸、適切には6から8アミノ酸であり得る。適切には、スペーサーのアミノ酸は小さな側鎖を有し、かつ非荷電であり、例えばグリシン、アラニン又はセリンである。スペーサーはアミノ酸残基の組み合わせを有し得る。
【0030】
実施例では、ワクチンベクターは、同じポリヌクレオチド上でかつ互いにインフレームでコードされる、抗原性ポリペプチド(配列番号:1及び配列番号:3(Campy Cj0113))及び免疫刺激性ポリペプチド(HMGB1)を有する(配列番号:42、44及び46を参照されたい)。特に、ポリペプチドフラグメントの各々の間に3アミノ酸のスペーサーを用いる実施例では、HMGB1ポリペプチドがワクチンベクター挿入物のN-末端又はC-末端のどちらかに配置されるワクチンベクターが、その後の感染に対して最高の防御をもたらした。前記最高の性能を示すワクチンベクターはCJ0113、その後にPAL、その後にHMBG1を有していた(N-末端からC-末端に向かって、又は配列番号:42)。したがって、ワクチンベクターの表面における抗原及び免疫刺激性ポリペプチドの順序又はディスプレーは、免疫応答に影響を及ぼすことができる。また別の実施態様では、免疫刺激性ポリペプチド及び抗原性ポリペプチドは、別個のポリヌクレオチドによってコードされ得る。多様な方法を用いて、抗原性ポリペプチド及びHMGB1ポリペプチドのワクチンベクター表面での発現を達成できることは、当業者には理解されるであろう。そのような方法は当業者には公知である。
【0031】
ワクチンベクター及び医薬的に許容できる担体を含む組成物もまた提供される。医薬的に許容できる担体は、in vivo投与に適切な任意の担体である。適切には、医薬的に許容できる担体は、経口、鼻又は粘膜デリバリーのために許容できる。医薬的に許容できる担体には水、緩衝溶液、グルコース溶液又は細菌培養液が含まれ得る。組成物に追加される成分には、適切には、賦形剤(例えば安定化剤、保存料、希釈剤、乳化剤及び滑沢剤)が含まれ得る。医薬的に許容できる担体又は希釈剤の例には、安定化剤、例えば炭水化物(例えばソルビトール、マンニトール、デンプン、シュクロース、グルコース、デキストラン)、タンパク質(例えばアルブミン又はカゼイン)、タンパク質含有剤(例えばウシ血清又は脱脂乳)、及び緩衝剤(例えばリン酸緩衝剤)が含まれる。特にそのような安定化剤が組成物に添加されるとき、組成物は凍結乾燥又は噴霧乾燥に適切である。組成物中のワクチンベクターは複製する能力を持つことができない。適切には、ワクチンベクターは組成物に添加する前に不活化されるか又は殺滅される。
【0032】
ワクチンベクターを投与することによって対象で免疫応答を強化する方法もまた提供される。該ワクチンベクターは、配列番号:1−6、32、36、37の抗原性PALポリペプチド又はその免疫原性フラグメントをコードする第一のポリヌクレオチドを含むことができる。ワクチンベクターはまた免疫刺激性ポリペプチドをコードする第二のポリヌクレオチドを含むことができる。免疫刺激性ポリペプチドは、適切には、脊椎動物の免疫系に本来関連し、免疫応答に必要とされるポリペプチドである。免疫刺激性ポリペプチドは、対象の生来の免疫応答又は適合性免疫応答を刺激することができる。適切には、上記でより完全に記載したHMGB1ポリペプチド又はCD154ポリペプチドを免疫刺激性ポリペプチドとして用いることができる。本明細書で提供する方法では、抗原性PALポリペプチド及び場合によって免疫刺激性ポリペプチドを含むワクチンベクターが、該ワクチンベクターに対して(特に当該抗原性ポリペプチドに対して、さらに適切にはグラム陰性細菌(例えばサルモネラ属及び大腸菌)に対して)、対象の免疫応答を強化するために又は達成するために有効な量で対象に投与される。
【0033】
強化される免疫応答には抗体又はT細胞応答が含まれ得る。適切には、免疫応答は防御性免疫応答である。しかしながら。免疫応答は完全には防御性ではないことがあるが、感染に関連する罹病率又は死亡率を低下させることができる。免疫刺激性ポリペプチドを用いて、抗原性PALポリペプチドに加えて当該ワクチンベクターに存在する任意の外来抗原又は抗原性ポリペプチドに対して対象の免疫応答を強化することができる。免疫刺激性ポリペプチドを用いて、ワクチンベクターに存在する2つ以上の抗原性ポリペプチドに対して免疫応答を強化し得ることは当業者には理解されるであろう。免疫応答の強化には、対象の免疫系によって媒介される治療的又は予防的効果の誘発が含まれるが、ただし前記に限定されない。特に、免疫応答の強化には、抗体産生の強化、抗体重鎖のクラス切り換えの強化、抗原提示細胞の成熟、ヘルパーT細胞の刺激、細胞傷害性T細胞の刺激、又はT及びB細胞メモリーの誘発が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0034】
適切には、ワクチンベクターは、HMGB1ポリペプチド(配列番号:15)のアミノ酸150−183及び89−109を含むポリペプチド又はそのホモローグをコードするポリヌクレオチドを含む。実施例では、HMGB1の190アミノ酸ポリペプチドが用いられた。適切には、該ポリヌクレオチドは、対象と同じ種に由来するHMGB1ポリペプチドをコードする。HMGB1ポリペプチドと対象の異種組合せ(例えばニワトリワクチンで使用されるヒトHMGB1ポリペプチド)は、HMGB1が多数の種で高度に保存されるので本発明の方法で有用であり得る。HMGB1ポリペプチドを用いて、ワクチンベクター内に又はワクチンベクター上に存在する任意の外来抗原、抗原性ポリペプチド又は2つ以上のポリペプチドに対する対象における免疫応答を強化することができる。HMGB1ポリペプチドを用いて、ワクチンベクター内に存在する2つ以上の抗原性ポリペプチドに対する免疫応答を強化できることは当業者には理解できよう。HMGB1由来のポリペプチドは、樹状突起細胞及びマクロファージを活性化し、したがってサイトカイン(例えばIL-1、IL-6、IFN-γ及びTNF-α)の産生を刺激することによって少なくとも部分的に免疫応答を刺激する。実施例では、HMGB1のポリペプチドはワクチンベクターの表面で発現された。
【0035】
適切には、ワクチンベクターは、CD40と結合してCD40を活性化する能力を有するCD154ポリペプチドを含むことができる。CD40と結合する能力を有するCD154ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むワクチンが、該ワクチンに対する対象の免疫応答を強化するために又は免疫応答を達成するために有効な量で対象に投与される。適切には、ワクチンは、ヒトCD154ポリペプチド(配列番号:25)のアミノ酸140−149を含むポリペプチド又はそのホモローグをコードするポリヌクレオチドを含む。上記に特記したように、ある種に由来するアミノ酸140−149のホモローグを用いて、別個の種で免疫応答を刺激することができる。適切には、該ポリヌクレオチドは対象と同じ種に由来するCD154ポリペプチドをコードする。適切には、配列番号:26のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドがヒト対象で用いられ、配列番号:27のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドがニワトリで用いられ、配列番号:28のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドがアヒルで用いられ、配列番号:29のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドがマウスで用いられ、さらに配列番号:30のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが乳牛で用いられる。ヒトCD154ポリペプチド(配列番号:26)をニワトリワクチンで用いて、外来抗原に対する免疫応答を強化することが示された。したがって、CD154ポリペプチド及び対象の他の異種組合せも本発明の方法で有用であり得る。
【0036】
さらにまた、グラム陰性細菌(サルモネラ属の種、エシェリキア属の種、赤痢菌属の種、ビブリオ属の種、エルウイニア属の種、クレブシーラ属の種、シトロバクター属の種、エルジニア属の種、プロビデンシア属の種、及び同様な細菌から選択される)に対する免疫応答を強化する方法、及びグラム陰性細菌によるその後の感染に関連する罹病率を低下させる方法が開示される。略記すれば、前記方法は、抗原性PALポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチド配列及び場合によって免疫刺激性ポリペプチドをコードする第二のポリヌクレオチドを含むワクチンベクターを有効量で対象に投与する工程を含む。抗原性PALポリペプチドは配列番号:1−6を含むことができる。抗原性PALポリペプチドのベクターへの挿入は当業者に公知の多様な方法で達成でき、前記方法には以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):無瘢痕位置指定変異導入系(以下に記載されている:BMC Biotechnol. 2007 Sept, 17: 7(1): 59, Scarless and Site-directed Mutagenesis in Salmonella Enteritidis chromosome(前記文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる))及び本明細書で用いられる方法(以下に記載されている:Nguyen and Schumann J Biotechnol 2006 122: 473-482(前記文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる))。またベクターを操作して、抗原性PALポリペプチドを、他の病原体(ウイルス又は細菌(例えばサルモネラ属、カンピロバクター属又は大腸菌)を含む)に由来する他の抗原性ポリペプチド(例えばインフルエンザM2e)と組み合わせて発現させることができる。特にCD40と結合する能力を有するCD154のポリペプチド又はHMGB1をベクターによって発現させて、抗原性PALポリペプチドに対する対象の免疫応答を強化することができる。
【0037】
抗原性ポリペプチドを含む組成物もまた、グラム陰性細菌によるその後の感染に関連する罹病率を低下させるために用いることができる。該組成物は、当該細菌が疾患を引き起こすのを妨げるか、又は本明細書に記載の組成物又はワクチンベクターが投与された対象で一切の関連する罹病率を限定又は低下させることができる。本明細書に記載の組成物及びワクチンベクターは、病気の期間、体重低下、当該疾患の症状の重篤度を軽減することによって、当該疾患に関連する罹病率若しくは死亡率を低下させることによって、又は当該疾患に罹患する可能性を低下させることによってその後の疾患の重篤度を軽減することができる。該組成物はまた伝播を制限することによって当該病原体の拡散を軽減させることができる。本明細書に記載のワクチンベクターの投与後の当該疾患に関連する罹病率又は死亡率は、当該ワクチンベクターを提供されていない類似の対象と比較して、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%に、又は100%にも低下させることができる。
【0038】
動物又は人間への投与については、該組成物は多様な手段によって投与でき、前記手段には鼻内、粘膜、スプレー、皮内、非経口、皮下、腹腔内、静脈内、頭蓋内、経口、エーロゾル、又は筋肉内投与が含まれるが、ただしこれらに限定されない。点眼投与、胃管栄養、又は飲料水若しくは食物への添加もさらに別に適切である。家禽類のためには、該組成物は卵内に投与できる。
本発明のいくつかの実施態様は、対象で免疫応答を強化する方法を提供する。適切な対象には、脊椎動物、適切には哺乳動物(適切には人間)及び鳥類(適切には家禽、例えばニワトリ又はシチメンチョウ)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。他の動物、例えば乳牛、ネコ、イヌ又はブタもまた用いることができる。適切には、対象は非ヒトであり、農産業動物であり得る。
投与されるべきワクチンの有用な投与量は、対象の齢、体重及び種、投与の態様及びルート、並びに免疫応答が求められる病原体のタイプに応じて変動するであろう。組成物は免疫応答を惹起させるために十分な任意の用量で投与され得る。10
3から10
10のベクターコピー(すなわちコロニー形成ユニット又はプラーク形成ユニット)、10
4から10
9のベクターコピー又は10
5から10
7のベクターコピーの範囲の用量が適切であろうと考えられる。
【0039】
組成物は1回だけ投与してもよく、又は2回以上投与して免疫応答を高めてもよい。例えば、組成物は、1週間、2週間、3週間、1カ月、2カ月、3カ月、6カ月、1年又はそれより長く間をあけて2回以上投与することができる。ワクチンベクターは投与前に生命活性を有する微生物を含むことができるが、いくつかの実施態様では、ベクターは投与前に殺滅することができる。いくつかの実施態様では、ベクターは対象内で複製することができるが、他の実施態様では、ベクターは対象内で複製ことができない(例えば殺滅ワクチンベクター又はリポソーム)。ベクターとして用いられる微生物の不活化方法は当業者には公知である。例えば、細菌ワクチンベクターは、ホルマリン、エタノール、熱曝露、又は抗生物質を用いて不活化できる。当業者は他の方法を同様に用いることができる。
同じ又は異なる病原体に由来するいくつかのエピトープ又は抗原を単一のワクチンで一緒に投与し、多数の抗原に対して強化された免疫応答を発生させることができると考えられる。組換えワクチンは、多数の病原性微生物、ウイルス又は腫瘍関連抗原に由来する複数の抗原をコードすることができる。多数の抗原を発現する能力を有するワクチンの投与は、同時に2つ以上の疾患に対する免疫を誘発する利点を有する。例えば、生きている弱毒細菌は、単一病原体に由来する多数の抗原(例えばサルモネラ属のFliC及びPAL)に対し、又は異なる病原体(例えばインフルエンザ及びサルモネラ)に由来する多数の抗原に対し免疫応答を誘引するために適切なベクターを提供する。
【0040】
ワクチンベクターは抗原をコードする外因性ポリヌクレオチドを用いて構築でき、前記ポリヌクレオチドはワクチンベクターの任意の非必須部位に挿入されるか、また別には、当業者に周知の方法を用いプラスミド又は他の染色体外ベヒクル(例えばBAC又はYAC)上で保持され得る。ポリヌクレオチドの挿入のための1つの適切な部位は、トランスメンブレンタンパク質の外側部分内に存在するか、又は、分泌経路のために外因性ポリヌクレオチドを標的とする配列及び/又は細胞壁への付着を可能にする配列に連結される。ポリヌクレオチドの挿入のための適切なトランスメンブレンタンパク質の一例はlamB遺伝子である。細胞壁付着の1つの適切な方法は実施例で提供される。
外因性ポリヌクレオチドには、病原性微生物又はウイルスから選択される抗原をコードするポリヌクレオチドが含まれ(ただしこれらに限定されない)、さらに有効な免疫応答が生じるような態様で発現されるポリヌクレオチドが含まれる。そのようなポリヌクレオチドは、病原性ウイルス、例えばインフルエンザ(例えばM2e、ヘマグルチニン又はノイラミニダーゼ)、ヘルペスウイルス(例えばヘルペスウイルスの構造タンパク質をコードする遺伝子)、レトロウイルス(例えばgp160エンベロープタンパク質)、アデノウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルスなどから誘導することができる。外因性ポリヌクレオチドはまた、病原性細菌から入手できる。前記は、例えば細菌性タンパク質、例えば毒素、外側膜タンパク質又は高度に保存されたタンパク質をコードする遺伝子である。さらにまた、寄生虫(例えばアピコンプレックス門の寄生虫)に由来する外因性ポリヌクレオチドは、ベクターワクチンで使用される有用な候補ポリヌクレオチドである。
【0041】
本開示は、本明細書に示す構築物、成分の配合、又は方法の工程の個々の詳細に限定されない。本明細書に開示する組成物及び方法は、以下の開示を考慮し当業者に明白な多様な態様で、作製され、実施され、使用され、実行され及び/又は形成され得る。本明細書で用いられる表現及び用語は単に記載を目的とし、特許請求の範囲を限定すると解されるべきではない。多様な構造物又は方法の工程を指すために本明細書及び特許請求の範囲で用いられる通常の指示語、例えば第一の、第二の及び第三のという語は、いずれか特定の構造物若しくは工程、又はそのような構造物若しくは工程に対するいずれかの具体的な順序若しくは構成を示すと解されるべきではない。本明細書に記載する全ての方法は、本明細書で特段に指示されないかぎり、又はそうでなければ明らかに文脈に矛盾を生じないかぎり任意の適切な順序で実施できる。任意の及び全ての例の使用又は本明細書で提供される例示の言葉(例えば“such as(例えば)”)は、単に開示を容易にすることを意図し、特段の請求がないかぎり特許請求の範囲の制限を一切示唆しない。本明細書中のいずれの言葉及び図面中のいずれの構造物も、特許請求されていない任意の成分が本開示の対象の実施のために必須であることを示していると解されるべきではない。“including(含む)”、“comprising(含む)”又は“having(有する)”という用語及び前記用語の変型の本明細書における使用は、前記用語の後に列挙される成分及びその等価物を、さらに追加される成分とともに包含することを意味する。一定の成分を“including(含む)”、“comprising(含む)”又は“having(有する)”と記載された実施態様はまた、それら一定の成分 “consisting essentially of(から本質的に成る)”、及び“consisting of(から成る)”ことが意図される。“a”、“an”及び“the”という用語は、具体的に正確に示されないかぎり1つ又は2つ以上を意味することができる。
【0042】
本明細書における数値範囲の列挙は、本明細書で特段の指示がなければ、当該範囲内にある別々の各数値を個々に言及するための便法として役立てることを単に意図し、各々別々の値は、前記値があたかも個々に本明細書に列挙されるかのように本明細書に取り込まれる。例えば、濃度範囲が1%から50%と記載される場合、例えば2%から40%、10%から30%又は1%から3%などの値を明確に本明細書で列挙することが意図される。これらは具体的に意図されるものの単なる例であり、列挙された最小値と最高値との間及び前記最小値及び最高値を含む数値の全ての可能な組み合わせが、本開示に明確に記載されたと考えられるべきである。個々に列挙される量又は量の範囲を示す“約”という用語の使用は、列挙される量に非常に近い値(例えば製作公差、測定の実施における装置及び人的エラーなどに帰し得る値)が当該量に含まれることを示そうとするものである。量に関する全てのパーセンテージは特段の指示がなければ重量による。
以下の実施例は単に例示を意図し、本発明の範囲又は添付の特許請求の範囲の制限を意図しない。本明細書に引用される全ての参考文献(特許、特許公開公報及び非特許文献を含む)は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。参考文献中の記述と本明細書の記述との間の一切の矛盾は、本明細書に含まれる記述を優先して解決されるべきである。
【実施例】
【0043】
グラム陰性病原性細菌間で高度に保存されかつ免疫原性であるポリペプチドを含み得る高度に保存的なポリペプチドとして、我々は大腸菌のPalポリペプチドを選択した。我々は、Pal(P0A912)のアミノ酸106−124から大腸菌配列を選択することから始めた。選択した配列の抗原性潜在能力は、EMBL及びNCBIデータベース(Combet, C., C. Blanchet, C. Geourjon, and G. Deleage. 2000. NPS@: network protein sequence analysis. Trends Biochem Sci 25:147-50)で見出される公開配列に対してネットワークタンパク質配列解析プログラムを用いて確認した。続いて、EXPASYサーバーでバイオインフォーマティクス・スイスインスティチュート(Swiss Institute of Bioinformatics)のBlast検索エンジンを利用し、前記配列を配列相同性の検索に用いた。Blast検索によって、我々が最初に選択したPal配列(TVEGHADERGTPEYNISLG(配列番号:8))と同一の配列を有する多数のタンパク質(Pal)が発見された。同一配列を有するPalタンパク質リストは、大腸菌の亜種、チフス菌及びパラチフス菌の亜種、赤痢菌属の種、エンテロバクター属の種、シトロバクター属の種、クロノバクター属の種を含む。さらにまた、94%を超える相同性を有するPalタンパク質(1アミノ酸だけの相違であり類似する第二のアミノ酸の置換を伴う場合と伴わない場合がある)は、ビブリオ属の種(Vibrio spp)、ソダリス属の種(Sodalis spp)、エルウイニア属の種、クレブシーラ属の種(Klebsiella spp)、ディッケヤ属の種(Dickeya spp)、セラチア属の種(Serratia spp)、プロテウス属の種(Proteus spp)、ゼノラブダス属の種(Xenorhabdus spp)、ペクトバクテリウム属の種(Pectobacterium spp)及びパントエア属の種(Pantoea spp)で100%のカバー範囲を有する。
【0044】
他の病原体種に対して前記抗原を最適化するために、17番目のアミノ酸をセリンからアラニンに変更した。新しい配列はTVEGHADERGTPEYNIALG(配列番号:32)であろう。この配列は、ビブリオ属の種、ソダリス属の種、エルウイニア属の種、クレブシーラ属の種、ディッケヤ属の種、セラチア属の種、プロテウス属の種、ゼノラブダス属の種及びパントエア属の種に対して最適な免疫刺激を提供すると期待される(前記は100%のカバー範囲及び同一又は類似のアミノ酸配列を有する)。これらの種のタンパク質は、ワクチン免疫後に免疫系によって標的とされ、これらの生物に対して防御を提供すると期待される。
【0045】
Palエピトープ(TVEGHADERGTPEYNISLG(配列番号:8))を枯草菌(BS)ベクターに挿入し発現させた。続いて、サルモネラ属に対するワクチンベクターとしてPalバシルス構築物を、雛に経口胃管栄養法により孵化日に10
8cfu/雛でワクチン接種し、バシルス骨格(BS BB)又は食塩水で同様に処置した雛と比較することによって試験した。孵化11日後に同じ処置を用いてこれらのトリに追加免疫を実施した。特異的な免疫応答のために17日目にサンプルを採取した。当該ワクチンに対する免疫応答は、血清IgG(
図1)及び分泌性回腸IgA(
図2)を測定することによって評価した。バシルス上で発現させたPal選択配列によるワクチン接種の後で、当該Pal配列に対して特異的に顕著な血清性及び分泌性免疫応答がコントロールと比較して存在した(
図1及び2)。
ワクチン接種11日後のネズミチフス菌(ST)チャレンジに対して潜在能力を有するバシルスをベクターとするワクチン候補物の評価は、孵化17日後及び21日後(又はチャレンジ後6及び10日)にワクチン接種ニワトリ盲腸のサルモネラコロニーを数えることによって実施された。盲腸のSTレベルは通常の微生物学的技術を用いて測定された。バシルスベクターで発現されるPal選択配列でワクチン接種されたニワトリは、盲腸のサルモネラレベルを有意に低下させた。
図3に示すように、盲腸のサルモネラレベルは、食塩水又はBS BB)でワクチン接種された雛と比較して、BS-PAL(BSNNP)ワクチン接種雛では4・1/2logを超える減少を示した。これは、食品医薬品局(FDA)によって一般に安全と認められる(GRAS)生物(例えば枯草菌)をベクターとする、サルモネラに対する最初の有効なワクチンである。
【0046】
免疫原配列(上記ではPAL(TVEGHADERGTPEYNISLG(配列番号:8))と称される)の最適化を目的とする研究では、エピトープマッピング実験を考案し、この19-merオリゴペプチドの複数の部分の相対的抗原性を査定した。当該配列を7つのヘキサペプチドに分割した(各ヘキサペプチドは3アミノ酸のオーバーラップを有する)。例えば、TVEGHA(配列番号:39)、GHADER(配列番号:2)及びDERGTP(配列番号:3)は各々、直ぐ左(アミノ末端側)及び直ぐ右(カルボキシ末端側)の配列部分の3アミノ酸を共有する。この目的のために、アミノ酸残基1−3、4−6、7−9などをまたぐ7つのヘキサペプチドを合成し、さらにウシ血清アルブミン(BSA)を結合させた。サルモネラ(及び関連する種)の細胞壁でディスプレーされるPAL 19-merペプチド及び本来のエピトープの両方と強力に反応する2つのモノクローナル抗体(mAb(2B5及び1B2と称される))を選別し、PALの各セグメントに対するそれらの相対的親和性を試験した(
図4)。
【0047】
結果は、試験した7ペプチドのうちPAL1(3残基のプレPAL(“YKV”)及びPALアミノ末端残基(“TVE”);配列番号:38)は、両mABにとって最も抗原性が低いことを示した。これは、スレオニンは非荷電でバリンは脂肪族残基であって両残基は相対的に疎水性であるのでオリジナルの免疫原PALで接近がより容易ではないという観察によって説明できる。接近が容易ではない残基は強力な免疫応答を誘発しにくい。さらにまた、大半の抗体エピトープは本質的に親水性である。対照的に、2つの最反応性mAbは、PAL6(配列番号:4)及びPAL7(配列番号:6)に対してはるかに強い親和性を有していた(PAL1と比較してELISA吸着はPAL6では2倍強く、PAL7では50%を超える強さ)。これらの結果は、PALのC-末端側の半分はより露出され易く、免疫原の接近可能部分及び抗体集団(サルモネラ及び関連する細菌種によってディスプレーされる本来のタンパク質と強力に交差反応する)の生成に関して免疫原のもっとも重要な部分である可能性が高いことを明瞭に示している。興味深いことに、PAL7ヘキサペプチドを作製するために、オリジナルの19-mer PALの部分ではないが本来の細菌タンパク質でPALにフランキングする2つの残基(E(グルタメート)及びR(アルギニン))が添加された。これらは両方とも荷電残基であり、したがって我々の細菌標的種で露出される蓋然性が高い。
【0048】
上記の理論的根拠に基づいて、PALbis(配列番号:1)と称する新規な19-merを作製した。PALbisは以下の点でオリジナルの19-merとは異なる:(1)2つのN-末端アミノ酸(T(スレオニン)及びV(バリン))をもはや含まない;及び(2)2つの追加の残基(すなわちE(グルタメート)及びR(アルギニン))によりC-末端は延長されている。したがって、改善されたアミノ酸配列PALbisは、EGHADERGTPEYNISLGER(配列番号:1)である。PALbisを多数の細菌属について比較し、種反応性が維持されているか否かを確認した(BLASTの結果は表1に示されている)。大腸菌、ネズミチフス菌及びパラチフス菌、赤痢菌属、エンテロバクター属、シトロバクター属及びクロノバクター属間の配列相同性はなお100%相同性であった。ビブリオ属、ソダリス属、エルウイニア属、クレブシーラ属、ディッケヤ属、セラチア属、プロテウス属、ゼノラブダス属、ペクトバクテリウム属及びパントエア属の種間の配列相同性は95%相同性であり、ただ1つのアミノ酸置換S15Aを有する(配列番号:6)。関連するカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)の配列は配列番号:7として示され、配列番号:1の配列と65%同一性を有する。したがって、我々は、単一ワクチンベクターによる株横断免疫応答を得るために、配列番号:1を発現するワクチンベクターを着実に推し進めることにした。
【0049】
表1:細菌間におけるPALbis(配列番号:1)の配列比較
PALbis配列:
EGHADERGTPEYNI
SLGER 大腸菌(配列番号:1)
EGHADERGTPEYNI
ALGER ビブリオ属(配列番号:6)
EG
NCDE
WGT
DEYN
QALG__ カンピロバクター属(配列番号:7)
【0050】
株横断チャレンジ実験でPALbisが機能する能力を試験するために、いくつかのワクチン候補物を作製した。本明細書で用いられるワクチンベクターは、実質的に国際出願公開公報WO2008/036675及び国際出願公開公報WO2011/091255の記載にしたがって作製された。3つの別々の構築物を作製し、2つの別々のワクチンベクター、腸炎菌又はネズミチフス菌に取り入れた。用いた挿入物には以下が含まれていた:CJ0113エピトープをコードするポリヌクレオチド(本明細書では配列番号:31として記載され、最初に国際出願公開公報WO2011/156619に記載された)、配列番号:24のHMGB1をコードするポリヌクレオチド(最初に国際出願公開公報WO2011/091255に記載された)、及び本明細書で同定され記載されている配列番号:1のPALbis配列。前記3つのポリヌクレオチドは、セリンスペーサー(立体的障害問題を回避するために3つのセリン残基が挿入された)によって分離され、多様な順序でサルモネラのトランスメンブレンタンパク質lamBの外部ループ9にインフレームで挿入された。得られた挿入物の核酸及びアミノ酸配列は、配列番号:41−46に示されている。配列番号:41及び42はそれぞれCJ0113-PAL-HMGB1挿入物の核酸及びアミノ酸配列である。配列番号:43及び44はそれぞれCJ0113-HMGB1-PAL挿入物の核酸及びアミノ酸配列である。配列番号:45及び46はそれぞれHMGB1-CJ0113-PAL挿入物の核酸及びアミノ酸配列である。多様な順序で同じ挿入物を有する3つのワクチンベクターを作製した目的は、当該ポリペプチドの何らかの位置的又は立体的障害作用と当該ベクター因子上の未だマッピングされていない表面部分との相互作用を管理することであった(そのような相互作用は、HMGB1結合ドメインの宿主細胞受容体への接近を妨げるか、又は表面提示抗原の宿主細胞への接近を妨げ得る)。
【0051】
腸炎菌をベクターとするワクチンは、チャレンジ後のサルモネラ・ハイデルベルグ回収を低下させた。サルモネラ・ハイデルベルグチャレンジ株と比較したとき異種のサルモネラ血清グループに属する腸炎菌ベクターワクチンで雛をワクチン免疫して、PAL抗原がサルモネラ血清グループ横断免疫応答を発生させるか否かを決定した。生腸炎菌-CJ0113-PAL-HMGB1、生腸炎菌-CJ0113-HMGB1-PAL(前記は、HMGB1に2つの点変異及び配列番号:35のPALエピトープを生じるPALの1つのフレームシフト変異を含むことが後に決定された)、及び生腸炎菌-HMGB1-CJ0113-PAL(のちに決定される1つの点変異をHMGB1に有する)ワクチンを、1日齢雛に4x10
8cfu/雛で経口胃管投与した。7日目に7x10
6cfu/雛のサルモネラ・ハイデルベルグを用い経口胃管栄養法で雛をチャレンジした。21日齢のブロイラー鶏の単離盲腸1グラム当たりのサルモネラ・ハイデルベルグコロニー形成単位を決定した。生腸炎菌-CJ0113-PAL-HMGB1ワクチン接種ニワトリのチャレンジ14日後の盲腸から回収されたサルモネラ・ハイデルベルグのcfu/gは、生腸炎菌-CJ0113-HMGB1-PAL(HMGB1に2つの点変異及びPALに1つのフレームシフト変異を含む)ワクチン接種ニワトリ、生腸炎菌-HMGB1-CJ0113-PAL(HMGB1に1つの点変異を有する)ワクチン接種ニワトリ及び非ワクチン接種コントロールニワトリから得られるものよりも有意に低かった(
図5:P=0.003)。
【0052】
PAL抗原がサルモネラ血清グループ横断免疫応答を発生させるか否かを決定するために、サルモネラ・ハイデルベルグチャレンジと比較したとき異種のサルモネラ血清グループに属する、グルタルアルデヒド不活化腸炎菌ベクターワクチンでもまた雛をワクチン免疫した。グルタルアルデヒドで不活化された腸炎菌-CJ0113-PAL-HMGB1、腸炎菌-CJ0113-mHMGB1-mPAL(HMGB1に点変異及びPALに1つのフレームシフト変異を含む)、腸炎菌-mHMGB1-CJ0113-PAL(HMGB1に1つの点変異を有する)ワクチンをマンノシル化キトサンでアジュバント化した(国際出願PCT/US13/67212に記載された通り)。前記調製ワクチンを1日齢雛に1x10
9cfu/雛で経口胃管投与した。17日目に8.5x10
6cfu/雛のサルモネラ・ハイデルベルグを用い経口胃管栄養法で雛をチャレンジした。ブロイラーにおけるグルタルアルデヒド不活化腸炎菌-CJ0113-PAL-HMGB1ワクチン免疫及び腸炎菌-mHMGB1-CJ0113-PALワクチン免疫は、チャレンジ5日後の盲腸のサルモネラ・ハイデルベルグ回収を有意に低下させ(
図6:P<0.05)、さらに、サルモネラ・ハイデルベルグ回収は、腸炎菌-mHMGB1-CJ0113-PAL及び腸炎菌-CJ0113-PAL-HMGB1ワクチン免疫鶏ではチャレンジ17日後も低いままであった(P=0.033)。ワクチン骨格がサルモネラ血清グループD株に由来しサルモネラ血清グループBのチャレンジを防御したことを考えれば、前記のデータは、これらワクチンのPALエピトープは血清グループ横断サルモネラチャレンジに対して防御を提供したことを示している。
【0053】
特に、挿入物に変異が見出されたので、ワクチンベクター中における3ポリペプチドの相対的な向き又は位置が何らかの影響を及ぼすか否かの決定に、これらの実験は有用ではなかった。当該変異はPALポリペプチドの防御性又は免疫原性部分に関して情報を提供する。1つの一ヌクレオチド欠失が腸炎菌-CJ0113-mHMGB1-mPALワクチンのPALポリヌクレオチドで見出された。野性型PALポリヌクレオチド配列は、5’-GAAGGTCACGCGGACGAACGTGGTACCCCG
GAATACAACATCTCTCTGGGTGAACGT-3’(配列番号:33(変異体配列で欠失するグアニンには下線が施されている))であり、腸炎菌-CJ0113-mHMGB1-mPALで見出される変異体PAL配列は、5’-GAAGGTCACGCGGACGAACGTGGTACCCCGAATACAACATCTCTCTGGGTGAACGT-3’(配列番号:34)である。PALヌクレオチドへのグアニン欠失(野生型配列の下線部)31塩基対の挿入は、PALペプチド配列の最後の8アミノ酸を変化させるフレームシフト変異を引き起こした。配列番号:1の野生型PALは配列番号:35になる(EGHADERGTP
NTTSLWVN(最後の8アミノ酸には下線が付され、配列番号:1で見出されるアミノ酸と異なる))。この変異体PALによる有効な免疫応答の発達の欠如はおそらく最後の9アミノ酸消失のためである(前記アミノ酸は抗体応答の発達のために重要であることが上記
図4で示された)。したがって、最小PALエピトープは配列番号:36(EYNISLGER)又はそのビブリオ対応物(配列番号:37(EYNIALGER))であり得る。
【0054】
上記に特記した変異を修正するためにワクチンを改造した。いったん変異が修正されたら、ブロイラーにおける生腸炎菌-CJ0113-PAL-HMGB1、生腸炎菌-HMGB1-CJ0113-PAL及び生ネズミチフス菌-HMGB1-CJ0113-PALワクチン免疫は、チャレンジ10日後収集ブロイラー盲腸の24時間テトラチオネート濃縮後のサルモネラ・ハイデルベルグ回収を有意に低下させた(
図7:P<0.05)。生腸炎菌-CJ0113-PAL-HMGB1、腸炎菌-CJ0113-HMGB1-PAL、腸炎菌-HMGB1-CJ0113-PAL、ネズミチフス菌-CJ0113-PAL-HMGB1、ネズミチフス菌-CJ0113-HMGB1-PAL又はネズミチフス菌-HMGB1-CJ0113-PALの10
7cfuを用いて、孵化日の雛を経口胃管栄養でワクチン免疫した。さらに別のグループの孵化日雛を10
6cfuの腸炎菌-CJ0113-PAL-HMGB1で経口胃管栄養によってワクチン免疫した。腸炎菌-CJ0113-PAL-HMGB1、腸炎菌-CJ0113-HMGB1-PAL、腸炎菌-HMGB1-CJ0113-PAL、ネズミチフス菌-CJ0113-PAL-HMGB1、ネズミチフス菌-CJ0113-HMGB1-PAL又はネズミチフス菌-HMGB1-CJ0113-PALワクチン接種ニワトリを、対応するワクチンの10
7cfuで追加免疫した。孵化日に10
6cfuを投与した腸炎菌-CJ0113-PAL-HMGB1ワクチン免疫ニワトリには10
8cfuの腸炎菌-CJ0113-PAL-HMGB1を追加免疫した。17日齢で経口胃管栄養によって6x10
6cfu/雛でニワトリをチャレンジした。結果は、
図7にパーセントチャレンジ細菌回収として示されている。結果は、ワクチンベクター中の挿入物の各々の位置は当該ワクチンによって提供される防御レベルに影響を及ぼし得ることを暗示している。
【0055】
腸炎菌細胞表面でのPAL発現はBリンパ球と直接相互作用して抗体産生を刺激する。腸炎菌細胞表面でのHMGB1発現はネズミマクロファージのパーセンテージ食作用取り込みに影響を与える(
図8)。Raw264細胞株由来ネズミマクロファージを、生腸炎菌ワクチンベクター、腸炎菌-CJ0113-PAL-HMGB1、腸炎菌-CJ0113-HMGB1-PAL又は腸炎菌-HMGB1-CJ0113-PALと1時間共培養した。大腸菌pHrodo赤色バイオ粒子を各培養に添加し、2時間インキュベートした。バイオ粒子及び細菌がマクロファージに飲み込まれた後、ファゴソームが生成される。ファゴソームはリソソームと融合し、ファゴリソソームの内部を酸性化する。バイオ粒子の蛍光強度はpHがより酸性になるにつれ増加する。したがってファゴリソソーム内のバイオ粒子はより強い蛍光強度を有するであろう。腸炎菌-CJ0113-PAL-HMGB1のパーセンテージ食作用取り込みは、腸炎菌-HMGB1-CJ0113-PALよりも高く(腸炎菌-HMGB1-CJ0113-PAは腸炎菌-CJ0113-HMGB1-PALよりも高かった)、このことは、挿入物の末端のHMGB1は細胞表面と優先的に相互作用し、食作用取り込みを強化することを暗示している。
これらのデータによれば、キメラDNAの直線的ディスプレーは、荷電アミノ酸の位置に依存するタンパク質の折り畳みを変化させる。抗原及び免疫刺激性分子の種々の直線的組合せは、細菌細胞表面の各抗原及び免疫刺激性分子の空間的配置に影響を与えるであろう。これら直線的組合せ物のタンパク質発現は、細菌表面のチャネルタンパク質が周囲のチャネルタンパク質とともに立体的障害を生じるので各細菌種について異なり得る。ワクチン有効性の低下は、立体的障害による望ましくないPAL又はHMGB1タンパク質発現の結果であり得る。
本発明の好ましい態様は、下記の通りである。
〔1〕配列番号:1のPALポリペプチド、配列番号:1と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列、又は少なくとも6アミノ酸の長さのその免疫原性フラグメントをコードする第一のポリヌクレオチド配列を含むワクチンベクターであって、該PALポリペプチドが該ワクチンベクターの表面で発現される、前記ワクチンベクター。
〔2〕免疫刺激性ポリペプチドをコードする第二のポリヌクレオチド配列を更に含み、該免疫刺激性ポリペプチドが該ワクチンベクターの表面で発現される、前記〔1〕に記載のワクチンベクター。
〔3〕該免疫刺激性ポリペプチドが、HMGB1ポリペプチド又はCD40と結合する能力を有するCD154ポリペプチドである、前記〔2〕に記載のワクチンベクター。
〔4〕該HMGB1ポリペプチドが、配列番号:15〜23の少なくとも1つ又は配列番号:15〜23の少なくとも1つのフラグメントから選択されるポリペプチドを含む、前記〔3〕に記載のワクチンベクター。
〔5〕該CD154ポリペプチドが50未満のアミノ酸を有し、かつ配列番号:24、配列番号:25又はそのホモローグのアミノ酸140〜149を含む、前記〔3〕に記載のワクチンベクター。
〔6〕該CD154ポリペプチドが、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29又は配列番号:30を含む、前記〔5〕に記載のワクチンベクター。
〔7〕該PALポリペプチドが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:32、配列番号:36、配列番号:37又はそれらの組合せである、前記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載のワクチンベクター。
〔8〕該ベクターが、2コピー以上の該第一のポリヌクレオチド及び/又は2コピー以上の該第二のポリヌクレオチド配列を含む、前記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載のワクチンベクター。
〔9〕該第一のポリヌクレオチド配列が該第二のポリヌクレオチド配列とインフレームで連結されている、前記〔2〕〜〔8〕のいずれか1項に記載のワクチンベクター。
〔10〕該第一のポリヌクレオチド及び該第二のポリヌクレオチドがスペーサーヌクレオチドを介して連結されている、前記〔9〕に記載のワクチンベクター。
〔11〕該ベクターがウイルス、細菌、酵母、及びリポソームから成る群から選択される、前記〔1〕〜〔10〕のいずれか1項に記載のワクチンベクター。
〔12〕該ワクチンベクターが、バシルス属の種、サルモネラ属の種、乳酸杆菌属の種、又はエシェリキア属の種である、前記〔11〕に記載のワクチンベクター。
〔13〕第二の抗原性ポリペプチドをコードする第三のポリヌクレオチドを更に含む、前記〔1〕〜〔12〕のいずれか1項に記載のワクチンベクター。
〔14〕該第二の抗原性ポリペプチドが配列番号:7又は配列番号:31から選択されるポリペプチドである、前記〔1〕〜〔13〕のいずれか1項に記載のワクチンベクター。
〔15〕配列番号:42、44若しくは46の少なくとも1つのポリペプチド、又は配列番号:42、44若しくは46と90%同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、ワクチンベクター。
〔16〕前記〔1〕〜〔15〕のいずれか1項に記載のワクチンベクター及び医薬的に許容できる担体を含む医薬組成物。
〔17〕対象におけるグラム陰性細菌に対する免疫応答を強化する方法であって、グラム陰性細菌に対する該対象の免疫応答の強化に有効な量で、前記〔1〕〜〔15〕のいずれか1項に記載のワクチンベクター又は前記〔16〕に記載の医薬組成物を該対象に投与する工程を含む、前記方法。
〔18〕該強化された免疫応答が、強化された抗体応答、強化されたT細胞応答又は両方を含む、前記〔17〕に記載の方法。
〔19〕対象におけるグラム陰性細菌による感染に関連する罹病率を低下させる方法であって、該ワクチンベクターを投与されていないコントロール対象と比較してグラム陰性細菌による対象の後の感染に関連する罹病率を低下させるのに有効な量で、前記〔1〕〜〔15〕のいずれか1項に記載のワクチンベクター又は前記〔16〕に記載の医薬組成物を該対象に投与する工程を含む、前記方法。
〔20〕該ワクチンベクターが、経口、粘膜、非経口、皮下、筋肉内、眼内及び卵内から成る群から選択されるルートによって投与される、前記〔17〕〜〔19〕のいずれか1項に記載の方法。
〔21〕該対象が家禽種のメンバーである、前記〔17〕〜〔20〕のいずれか1項に記載の方法。
〔22〕該家禽種がニワトリ又はシチメンチョウである、前記〔21〕に記載の方法。
〔23〕該対象が哺乳動物である、前記〔17〕〜〔22〕のいずれか1項に記載の方法。
〔24〕該対象がヒトである、前記〔23〕に記載の方法。
〔25〕該ワクチンの約104〜約109ベクターコピーが該対象に投与される、前記〔17〕〜〔24〕のいずれか1項に記載の方法。
〔26〕該ワクチンの約105〜約107ベクターコピーが該対象に投与される、前記〔17〕〜〔24〕のいずれか1項に記載の方法。
〔27〕該ワクチンベクターが、該対象への投与前に殺滅されるか、又は該対象において複製する能力がない、前記〔17〕〜〔26〕のいずれか1項に記載の方法。
〔28〕該グラム陰性細菌が、サルモネラ属の種、エシェリキア属の種、赤痢菌属の種、ビブリオ属の種、エルウイニア属の種、クレブシーラ属の種、シトロバクター属の種、エルジニア属の種、及びプロビデンシア属の種から選択される、前記〔17〕〜〔27〕のいずれか1項に記載の方法。