特許第6530768号(P6530768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6530768サイトカイン−キトサンバイオコンジュゲート及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6530768
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】サイトカイン−キトサンバイオコンジュゲート及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/61 20170101AFI20190531BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20190531BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190531BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190531BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20190531BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20190531BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20190531BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
   A61K47/61
   A61K38/20
   A61P35/00
   A61P43/00 111
   A61P37/00
   A61P19/02
   A61K39/00 G
   C07K14/54
【請求項の数】20
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-570287(P2016-570287)
(86)(22)【出願日】2015年6月1日
(65)【公表番号】特表2017-518300(P2017-518300A)
(43)【公表日】2017年7月6日
(86)【国際出願番号】US2015033541
(87)【国際公開番号】WO2015184445
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2017年6月6日
(31)【優先権主張番号】62/006,114
(32)【優先日】2014年5月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500467264
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ アーカンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100183379
【弁理士】
【氏名又は名称】藤代 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】ザハロフ デイヴィッド エイ
(72)【発明者】
【氏名】タラプラナム サレシュ クマル
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤンティ スリニヴァス
(72)【発明者】
【氏名】コポル バーヌ プラサンス
(72)【発明者】
【氏名】スミス ショーン ジー
【審査官】 大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0292387(US,A1)
【文献】 Budiraharjo,R. et al.,Enhancing bioactivity of chitosan film for osteogenesis and wound healing by covalent immobilization of BMP-2 or FGF-2.,J. Biomater. Sci. Polym. Ed.,2012年 8月13日,Vol.24, No.6,p.645-62
【文献】 Yang,L. and Zaharoff,D.A.,Role of chitosan co-formulation in enhancing interleukin-12 delivery and antitumor activity.,Biomaterials,2013年 5月,Vol.34, No.15,p.3828-36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00−47/69
A61K 9/00− 9/72
A61K 38/00−51/12
A61P 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL−12に共有結合されたキトサンを含む組成物であって、
前記共有結合が、前記IL−12からキトサンへのチロシンからアミンへの結合であるか、又は、前記共有結合が、前記キトサン上のアミン基と前記IL−12上のカルボキシル基との間のものであり、
前記IL−12が生物学的に活性である、組成物。
【請求項2】
前記共有結合が、前記IL−12上のカルボキシル基と前記キトサンのアミン基との間のものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記共有結合が、前記キトサン上のアミン基と前記IL−12上のチロシンとの間のものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記キトサンが、前記IL−12におけるアスパラギン酸、グルタミン酸及びチロシンからなる群より選ばれるアミノ酸に結合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記キトサンが、10kDa〜500kDaの分子量を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記IL−12及び前記キトサンが、ペプチドリンカーを介して結合されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記キトサンが、修飾されているか、チオール化されているか、又はメチル化されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物と医薬的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
【請求項9】
被験体において障害を治療するための請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物であって、前記障害を治療するのに有効な量で前記被験体に投与される、組成物。
【請求項10】
前記障害がある領域に限局され、前記組成物が局所的に投与される、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
前記障害が、がん、アレルギー、自己免疫疾患、炎症、関節炎、多発性硬化症及びクローン病からなる群から選択される、請求項10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記障害を治療するための第2の組成物を更に含む、請求項11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
被験体において免疫応答を刺激するための請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物であって、抗原を更に含み、前記抗原に対する免疫応答を刺激するのに有効な量で前記被験体に投与される、組成物。
【請求項14】
前記抗原が、ワクチンの一部である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、腫瘍内投与、膀胱内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、腹腔内投与、非経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、くも膜下腔内投与及び経皮投与からなる群から選択される方法で投与される、請求項14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
請求項11のいずれか一項に記載の組成物及び前記障害を治療するための第2の組成物を含む、キット。
【請求項17】
請求項11のいずれか一項に記載の組成物及び第2の組成物が、任意の順序で又は同時に投与される、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
被験体において免疫応答を刺激するためのキットであって、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物及び抗原を含み、前記組成物及び抗原が、前記抗原に対する免疫応答を刺激するのに有効な量で前記被験体に投与される、キット。
【請求項19】
前記抗原が、ワクチンの一部である、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記組成物が、腫瘍内投与、膀胱内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、腹腔内投与、非経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、くも膜下腔内投与及び経皮投与からなる群から選択される方法で投与される、請求項1619のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、2014年5月31日に出願の米国仮特許出願第62/006114号の優先権の利益を請求するものであり、この文献は参照により全て本願に援用される。
【0002】
(連邦政府の助成による研究に関する陳述)
本発明は、米国国立衛生研究所がP30GM103450及びR01CA172631のもとで拠出した米国政府からの支援でなされた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
サイトカインは、免疫機能における強力なモジュレータである。何十年にもわたり、科学者達は、外来性のサイトカインを投与することで免疫機能不全を克服し、がんを含めた多種多様な疾患を治療できると仮説を立ててきた。しかしながら、数千とはいわずとも数百におよぶ前臨床及び臨床試験にも関わらず、同定されている40強のサイトカインのうち2種しか、限られた数の悪性腫瘍用の単剤免疫療法として認められていない。多面発現性のサイトカインが全身に送達されることで生じる意図せぬシグナル伝達及び用量制限的な副作用が、サイトカインベースの免疫療法の臨床的な可能性の実現を阻んできた。
【発明の概要】
【0004】
サイトカイン又は増殖因子に共有結合されたキトサンを含む組成物及びこれらのバイオコンジュゲートを使用する方法を本発明で提供する。サイトカイン又は増殖因子は、このバイオコンジュゲートにおいて生物学的に活性である。サイトカインには全てのインターロイキンが含まれ、以下に限定するものではないが、IL−2、IL−12、GM−CSF、IL−1、TNF−α、IFN−γ、IFN−α、IL−10、TGF−β、IL−15、IL−23、IL−27、IL−35及びIL−7が更に含まれる。サイトカイン又は増殖因子はキトサンに様々なやり方で結合させ得て、またキトサンへの共有結合を可能にする変異を含み得る。キトサンは10〜500kDa、100〜400kDa又は200〜300kDaの分子量を有し得る。組成物は医薬組成物に処方し得る。医薬組成物は局所投与用に処方し得る。
【0005】
別の態様において、被験体において障害を治療する方法を提供する。組成物を被験体に、その障害を治療するのに有効な量で投与する。組成物は局所的に投与し得る。一態様において、障害はがんであり、組成物は腫瘍内投与される。他の実施形態において、障害は自己免疫疾患、アレルギー又は感染症であり、組成物はこれらの障害を標的とするように処方される。
【0006】
更に別の態様において、本発明で提供するサイトカイン又は増殖因子−キトサンバイオコンジュゲート組成物を抗原と共に被験体に、その抗原を対象とした免疫応答を刺激するのに有効な量で投与することで被験体において免疫応答を刺激する方法も提供する。この抗原はタンパク質、ポリペプチド又はワクチンになり得る。サイトカイン又は増殖因子キトサンバイオコンジュゲートは、抗原に対する免疫応答を更に刺激するためのアジュバントとして作用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】キトサンの化学構造を示す図である。キトサンは、β(1−4)グリコシド結合により連結されたN−アセチルグルコサミン(x)及びグルコサミン(y)単位の非分岐コポリマーであり、y対xの比は1:5より大きい。
図2】キトサンに結合させることで被験体におけるサイトカインの保持が強化されることを示す一連の写真である。7日目の皮下MC32a(結腸腺がん)腫瘍を有するマウスを剃毛し、Alexa Fluor 660(AF660)標識IL−12(5μg)リン酸緩衝食塩水(PBS)又は1.5%(質量/体積)キトサン溶液を1本、腫瘍内注射した。PBSと投与するとIL−12は24〜48時間で検出できなくなった。キトサン溶液と混合すると、IL−12は腫瘍内に少なくとも5〜6日間にわたって留まった。方法は参考文献[6]を改変したものである。
図3】キトサン/IL−12免疫療法が乳腺腫瘍切除後の生存率を改善することを示すグラフである。同所性4T1乳がんを有するマウスに、(■)生理食塩水、(▲)キトサン、(●)IL−12単体(1μg)又は(○)キトサン/IL−12(1μg)混和物で、腫瘍移植から6日目及び12日目に腫瘍内処置を施した。原発腫瘍は15日目に切除した。
図4】遺伝子組み換えヒトIL−12の精製を示す一連の図である。図4Aは、ヒトIL−12のヘパリン結合親和性を示す等温サーモグラム(isothermogram)の一連のグラフである。図4Bは、ヘパリン−セファロース上でのタンパク質精製プロファイルを示すグラフである。図4C及び図4Dは、クーマシーブルー(図4C)で染色し、それぞれIL−12のp70、p40及びp35サブユニットに特異的な抗体で検出した(図4D)500mM NaCl画分のSDS−PAGEゲルの写真である。レーンNR及びRはそれぞれ非還元及び還元条件下でのIL−12の電気泳動プロファイルを表す。小さい付加的なバンドは、IL−12の異なるグリコシル化産物を表す。
図5】IL−12−キトサンバイオコンジュゲートの生物活性を示す一連のグラフである。図5Aは、遺伝子組み換えIL−12、IL−12−キトサンバイオコンジュゲート若しくは未反応で透析済みのIL−12+キトサンで処理した又は何の処理もしていない(無処理)IL−12感受性2D6細胞の増殖を示すグラフである。増殖は、発光ベースの細胞生存能アッセイ(CellTiter−Glo;Promega)により測定した。図5Bは、500000個のMB49膀胱がん細胞を皮下接種したC57BL/6マウス(n=4)における、時間の経過に伴う腫瘍体積の変化を示すグラフである。マウスに、推定で1μgのIL−12を含有するIL−12−キトサンバイオコンジュゲートで7日目、10日目及び14日目に腫瘍内処置を施した。MB49を有するコントロールマウス(n=5)には処置を施さなかった。
図6】IL−12依存性2D6 T細胞増殖アッセイを通じて定量化したIL−12−キトサン非特異的コンジュゲートの生物活性を示すグラフである。様々なバイオコンジュゲーション法に続き、未修飾のIL−12がキトサンに非特異的にコンジュゲートされた。方法には、(1)キトサン上のアミン基がIL−12上のカルボン酸基に共有結合されるカルボジイミド媒介ペプチド結合、(2)IL−12へのチオール化キトサンのアミン/スルフヒドリルクロスリンカー(スルホ−SMCCエステル)媒介コンジュゲーション及び(3)IL−12上のチロシナーゼ修飾o−キノンのキトサン上の求核性アミン基へのチロシナーゼ媒介触媒コンジュゲーションが含まれる。図からわかるように、キトサンへのIL−12の非特異的なコンジュゲーションは様々な度合いで有効であり、アミン/スルフヒドリルクロスリンカー媒介コンジュゲーションにより完全に不活性な産物が得られた。ペプチド結合及びチロシナーゼ触媒法では、ペプチド結合及びチロシナーゼ触媒でIL−12の生物活性の損失がそれぞれ60%及び17%観察されている生物学的に活性なキトサン−IL−12コンジュゲートが得られた。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明者らは、サイトカイン治療薬を投与するためのより安全で効果的なアプローチは局所的で持続的な送達を通したものであるとの仮説を立てた。局所的に送達することでサイトカインがもたらす毒性は低下し、また殆どのサイトカインの好ましいパラクリン作用機序が利用される。
【0009】
発明者らが近年発表したデータは、キトサン溶液と混合したIL−12(キトサン/IL−12)を腫瘍内(i.t.)投与するとIL−12を腫瘍内で局所的に保持し、樹立結腸直腸、膵臓及び膀胱腫瘍の80〜100%を根絶できることを実証している(Zaharoff et al.2009;Zaharoff et al 2010;Yang et al 2013)。原発腫瘍の退縮より重要なのはおそらく腫瘍のないマウスの47〜100%が腫瘍の再誘発を退けたという発見であり、これはキトサン/IL−12免疫療法の後に腫瘍特異的な免疫が生じたことを含意している。表在性膀胱がんの治療に、膀胱内投与するキトサン/IL−12混和物を使用することが検討されている。
【0010】
乳がんに関し、近年の予備データは、キトサン/IL−12混和物が転移を制御し、侵襲性の前臨床モデルにおいて生存率を改善できることを示している。これらの研究においては、4T1腫瘍を有するマウスに、原発腫瘍の切除に先立って3本の腫瘍内注射を打った。腫瘍切除後の生存率についてマウスを追跡調査した。別の研究においては、腫瘍切除から5週間後にマウスを安楽死させ、肺転移について記録した。両方のケースにおいて、腫瘍切除前のキトサン/IL−12での処置は手術の予後を改善した。キトサン/IL−12でのネオアジュバント免疫療法により、67%の永続的な治癒がもたらされた。対照的に、腫瘍を切除しただけのマウスで切除手術から40日を超えて生き残ったものはいなかった。
【0011】
これらの前途有望な結果にも関わらず、IL−12の全身への伝播及びそれに関わる毒性の可能性は依然として深刻な懸念であり、臨床への移行にとっての障害となる可能性がある。IL−12の腫瘍内保持の強化は、粘性が極めて高いキトサン溶液がIL−12の拡散輸送を妨げることに起因する。それでもなお、投与されたIL−12の大部分は体循環に到達しがちである。実際、キトサン/IL−12の注射に続く血清IL−12及びIFN−γレベルの上昇は、IL−12の局所注射部位からの漏出を裏付けている。
【0012】
この限界を克服するために、発明者らは、腫瘍内(i.t.)注射に先立ってIL−12をキトサンに共有結合的にコンジュゲートさせる新規な送達技術を提案する。コンジュゲーションによりIL−12の有効分子量は増大するため、その拡散性は低下する。加えて、ポリカチオン性のキトサンは、負に帯電した細胞外マトリックスタンパク質及び細胞膜と静電的に相互作用すると予測される。したがって、IL−12−キトサンバイオコンジュゲートは局所注射部位に効果的に固定される。同様の方法は他のサイトカイン又は増殖因子でも有用になり得る。サイトカインの全身投与に関わる著しい毒性又は意図せぬ副作用から、サイトカイン免疫療法には限界があった。そのため、投与又は注射地点からのサイトカインの拡散を制限するためにサイトカインをキトサンにコンジュゲートさせることで、サイトカインの投与に関連した副作用又は毒性を制限し得る。
【0013】
実施例において、キトサン上のアミン基とIL−12上のカルボキシル基とのカルボジイミド架橋によりIL−12をキトサンに共有結合した。この非特異的な形態の結合によりIL−12の活性は低下したものの、実質的なIL−12活性は維持された。IL−12のキトサンへのチロシナーゼ触媒チロシン/アミン結合も実施例に示されており、IL−12の活性が維持されたバイオコンジュゲートが得られている。IL−12又は別のサイトカイン又は増殖因子をキトサンに共有結合させる他のより指向性の高い方法も用い得て、コンジュゲートさせたサイトカイン又は増殖因子の生物活性への影響はより限定されたものになり得る。例えば、チオエステル結合、結合ペプチドを介したペプチド結合、サイトカインの生物活性への影響を制限するために位置決めされたサイトカイン上の遺伝子操作されたリジン若しくはシステインを介した結合又はキトサン及びサイトカイン若しくは増殖因子上のアミン間の結合を用いてキトサンをIL−12又は別のサイトカイン又は増殖因子に共有結合させ得る。これらの代替物の幾つかについては実施例で説明する。サイトカイン又は増殖因子上のリジン又はシステインを介した結合は、サイトカイン又は増殖因子においてリジン又はシステインの置換変異を起こすことを伴い得る。適切には、これらの置換変異は、キトサン結合時の立体障害を最小限に抑えるために表面に露出したアミノ酸上にあり、変異は適切にはサイトカイン又は増殖因子の生物学的な活性に最小限にしか影響しない。例えば、IL−12の位置17、18、34、35、43、44又は248の1つにリジンを位置決めするための置換変異が適切となり得る。サイトカイン又は増殖因子をキトサンに結合させるのに用いる化学反応には、以下に限定するものではないが、クリックケミストリ(click chemistry)、過ヨウ素酸化学反応(periodate chemistry)、マレイミドチオエーテル化学反応(maleimide thioether chemistry)又はチオール化学反応(thiol chemistry)が含まれる。Bioconjugate Chem.,2011,22(4),pp551−555を参照のこと。当業者ならば、他の方法を用いても、サイトカイン又は増殖因子の生物学的活性を維持しつつサイトカイン又は増殖因子をキトサンに共有結合させ得ることがわかるであろう。当業者ならば、サイトカイン−キトサンバイオコンジュゲートの生物学的活性がコンジュゲートの意図した用途にとって十分であるかについての判断も可能である。
【0014】
サイトカイン又は増殖因子への結合に先立ってキトサンは修飾もし得る。キトサンをメチル化又はチオール化することで結合化学反応をより単純明快なものにし得る。サイトカイン又は増殖因子及びキトサンは直接又はリンカーを介して結合し得る。リンカーは化学的リンカー又はペプチドリンカーになり得る。キトサンは、サイトカイン又は増殖因子におけるN末端アルファアミノ基、C末端アルファカルボキシル基、アスパラギン酸、グルタミン酸又はシステイン、リジン若しくはチロシン残基にコンジュゲートさせ得る。
【0015】
実施例においてはIL−12をキトサンにコンジュゲートさせたが、多様なサイトカイン又は増殖因子をキトサンにコンジュゲートさせても同様の結果が得られる。例えば、全てのインターロイキンを含めたサイトカイン又は増殖因子を本明細書に記載のバイオコンジュゲートで使用し得る。サイトカイン及び増殖因子は具体的には、以下に限定するものではないが、IL−2、IL−12、GM−CSF、IL−1、TNF−α、IFN−γ、IFN−α、IL−10、TGF−β、IL−15、IL−23、IL−27、IL−35及びIL−7を含み得る。これらのサイトカイン/増殖因子は潜在的な免疫治療薬として提案されてはきたものの、臨床診療への採用は、全身投与に起因する毒性又はこれらの多面発現的エフェクタの他のオフターゲット作用により制限されてきた。これらのサイトカインのそれぞれを上述の方法を用いてキトサンにコンジュゲートさせ、実施例におけるIL−12キトサンと同様の医薬組成物として投与することができる。
【0016】
サイトカイン又は増殖因子の機能に負の影響を及ぼすことなく、各サイトカインを遺伝子操作してペプチドリンカーを付加又はアミノ酸を修飾することで、サイトカイン又は増殖因子の活性を減じる又は完全に変化させるキトサンへの共有結合の形成を回避し得る。例えば、チオエステル化学反応を用いることでキトサンを、サイトカイン上のリジン残基に結合させ得る。IL−12の構造解析は、アミノ酸34若しくは248(R34K又はS248K)でのリジン置換又はこれらの組み合わせが、サイトカインの活性を変化させることのない結合に効果的であろうことを示唆した。システイン置換によるジスルフィド結合を介した結合も考えられ、サイトカイン又は増殖因子のキトサンへの結合に用い得る。
【0017】
キトサンは、10〜500kDa、100〜400kDa又は200〜300kDaの分子量を有し得る。分子量が大きくなると投与後に拡散しにくくなる。加えて、キトサンは修飾できるため、サイトカイン−キトサンバイオコンジュゲートの安定性及び拡散速度に様々に影響する。キトサンの脱アセチル化の度合いも組成物において変更し得る。
【0018】
有効量の本明細書に記載のキトサン−サイトカイン/増殖因子バイオコンジュゲートを投与することにより被験体において障害を治療する方法も提供する。免疫細胞等の細胞も、本発明で提供するサイトカイン/増殖因子−キトサンバイオコンジュゲート組成物と接触させ得る。一実施形態において、免疫細胞のサイトカイン−キトサンバイオコンジュゲート組成物との接触はがん又は腫瘍細胞に対する免疫応答をもたらし、がん又は腫瘍細胞の成長の抑制又は増殖の抑制につながる。適切には、細胞は免疫細胞であるが、腫瘍内の細胞にもなり得る。適切には、組成物を腫瘍又はがん細胞近くの部位に局所的に投与し、組成物の投与は、がん又は腫瘍に対する局所的な免疫応答を引き起こす。がんはいずれのがんにもなり得て、以下に限定するものではないが、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、膵臓がん、前立腺がん、腎臓がん、肺がん、メラノーマ、リンパ腫、脳がん、頭頸部がん又は卵巣がんが含まれる。代替の実施形態において、障害は、本明細書に記載の組成物を投与して限局された領域において免疫応答を誘導又は阻害することで治療可能な障害である。この領域は、感染又は免疫応答、例えばアレルギー又は自己免疫応答の部位になり得る。代替の実施形態においては、サイトカイン/増殖因子−キトサンバイオコンジュゲートを、ワクチン又は他の抗原と共に投与することでアジュバントとして作用させ且つ1種以上の抗原に対する免疫応答を刺激させる。適切には、障害を、本明細書に記載の組成物を投与して免疫応答を誘導又は抑制することで治療できる。障害は更に、炎症、関節炎、多発性硬化症、クローン病他から選択し得る。被験体はヒト又はヒト以外の動物、例えば家畜又は農業用動物になり得る。
【0019】
被験体において免疫応答を刺激する方法も本発明において提供する。この方法は、キトサン−サイトカイン/増殖因子バイオコンジュゲートを含む組成物を被験体に、抗原に対する免疫応答を刺激するのに有効な量で投与することを含む。抗原はタンパク質又はペプチド抗原になり得て、あるいはワクチンの一部になり得る。被験体はヒト又はヒト以外の動物、例えば家畜又は農業用動物になり得て、当業者が利用可能ないずれの手段によっても投与し得る。
【0020】
上昇した免疫応答はB細胞又はT細胞媒介免疫応答の強化を含み得て、また抗体産生の増加、クラススイッチの増加又は感染細胞若しくはがん細胞の細胞媒介性の死滅の増加を含み得る。
【0021】
細胞は、in vivo、in vitro又はex vivoで直接又は間接的に組成物と接触させ得る。接触は、細胞、組織、哺乳動物、患者(患畜)又はヒトへの投与を包含する。更に、細胞の接触は、物質の細胞培養物への添加を含む。他の適切な方法は、組成物を細胞、組織、哺乳動物又は患者(患畜)に後々定義する適切な手順又は投与経路を用いて導入又は投与することを含み得る。組織には、腫瘍又はがん細胞を含む組織が含まれる。被験体はヒト又は動物の被験体になり得て、がん患者を含む。
【0022】
がんの治療には、以下に限定するものではないが、被験体においてがん細胞の数若しくは腫瘍のサイズを低下させる、より侵襲性が高い形態へのがんの進行を遅らせる、より長期間にわたってがん若しくは腫瘍をより侵襲性が低い形態で維持する、がん細胞の増殖を減少させる若しくは腫瘍の成長速度を低下させる、がん細胞を死滅させる、がん細胞の転移を減少させる又は被験体におけるがんの再発可能性を低下させることが含まれる。本明細書における被験体の治療とは、ある疾患を患っている又はその疾患を発症するリスクがある被験体に、被験体の状態における改善(例えば、1つ以上の症状における改善)、疾患の進行の遅れ、症状の発生の遅れ又は症状の進行の鈍化等を含めた利益をもたらす全てのタイプの治療のことである。
【0023】
本発明の化合物を使用して医薬組成物を調製し得る。本明細書に記載の組成物及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。医薬的に許容可能な担体は、in vivo投与に適した任意の担体である。組成物での使用に適した医薬的に許容可能な担体の例には、以下に限定するものではないが、水、緩衝溶液、グルコース溶液、油性又は細菌培養流体が含まれる。組成物の追加成分は適切には、例えば賦形剤、例えば安定剤、保存料、希釈剤、乳化剤及び滑沢剤を含み得る。医薬的に許容可能な担体又は希釈剤の例には安定剤、例えば炭水化物(例えば、ソルビトール、マンニトール、デンプン、スクロース、グルコース、デキストラン)、タンパク質、例えばアルブミン又はカゼイン、タンパク質含有剤、例えばウシ血清又はスキムミルク及び緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液)が含まれる。特に、そのような安定剤を組成物に添加する場合、組成物は凍結乾燥又は噴霧乾燥に適している。組成物は乳化もし得る。
【0024】
本明細書に記載の組成物は別の薬剤、例えば抗がん治療薬と同時投与もし得る。これら2種の組成物は任意の順序で、同時に又は一体型の組成物の一部として投与し得る。これら2種の組成物は、一方の組成物がもう一方の組成物より先に1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、16時間、20時間、1日、2日、4日、7日、2週間、4週間以上の投与時間の差をもって投与されるように投与し得る。
【0025】
本明細書における有効量又は治療有効量とは、ある容態、障害又は状態を治療するために被験体に投与した場合に(上で定義したような)治療がなされるのに十分な組成物量を意味する。治療有効量は、化合物、製剤又は組成物、疾患及びその重症度並びに治療対象である被験体の年齢、体重、健康状態及び応答性に応じて異なる。
【0026】
本明細書に記載の組成物は当業者に公知のいずれの手段によっても投与し得て、以下に限定するものではないが、腫瘍内投与、膀胱内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、腹腔内投与、非経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、くも膜下腔内投与、経皮投与、鼻咽頭内投与又は経粘膜吸収が含まれる。したがって、組成物は、経口摂取可能な、注射可能な、局所的な又は坐薬の製剤として処方し得る。組成物は、リポソーム又は徐放性のビヒクル若しくはベシクル内でも送達し得る。本発明による被験体への組成物の投与には用量依存的な形での有益な効果があると考えられる。したがって、広い限界内で、組成物をより多量に投与すれば、少量を投与する時より高い有益な生物学的効果を達成できると予測される。更に、毒性が見られるレベルより少ない投薬量でも効力が予期される。
【0027】
当然のことながら、当業者には周知のように、所与のケースにおいて投与される具体的な投薬量は、投与する組成物、治療又は阻害対象の疾患、被験体の状態及び組成物の活性又は被験体の応答を変化させ得る他の関連する医学的要素に応じて調節される。例えば、特定の被験体についての具体的な用量は、年齢、体重、全身の健康状態、食事、投与のタイミング及び様式、排出速度、併用する薬物並びに療法を適用する特定の障害の重症度に左右される。所与の患者についての投薬量は、通常の考慮事項を踏まえて、例えば本発明の組成物及びコンジュゲートされていないサイトカイン等の公知の物質の異なる活性の通例の比較、例えば適切な慣用の薬理学的又は予防的プロトコルにより求められる。
【0028】
被験体にとっての最大投薬量は、望ましくない又は耐えられない副作用を引き起こさない最高投薬量である。個体の予防又は治療レジメンに関わる変数の数は多く、用量範囲は相当な広さに及ぶと予測される。投与経路も投薬要件に影響する。組成物の投薬量により状態の症状が、治療前の症状又は治療しないままの症状と比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%減少すると予測される。具体的には、医薬製剤及び組成物が、治癒をもたらすことなく疾患の症状を和らげる又は軽減し得て、幾つかの実施形態においては疾患又は障害の治癒に用い得ることが考えられる。
【0029】
当業者ならば組成物を投与するにあたって適切な有効投薬量を求め得るが、有効投薬量は典型的には1週間に体重1キログラムあたり約1〜約100000マイクログラムであり、ただし典型的には1週間に体重1キログラムあたり約1000マイクログラム以下である。組成物は周囲に拡散せず且つコンジュゲートさせていない等価組成物より標的を絞った効果を有するため、必要とされる用量は少なくなり得る。幾つかの実施形態において、有効投薬量は1週間に体重1キログラムあたり約10〜約10000マイクログラムである。別の実施形態において、有効投薬量は1週間に体重1キログラムあたり約50〜約5000マイクログラムである。別の実施形態において、有効投薬量は1週間に体重1キログラムあたり約75〜約1000マイクログラムである。本明細書における有効投薬量とは投与する総量のことであり、すなわち2種以上の組成物を投与するならば、有効投薬量は投与する総量に対応する。組成物は単回で又は複数回に分けて投与することができる。例えば、組成物を、4時間、6時間、8時間、12時間、1日、2日、3日、4日、1週間、2週間又は3週間以上間隔をあけて2回以上投与し得る。
【0030】
本開示は、本明細書に記載の構成要素の構築、配置又は方法ステップの具体的な詳細に限定されない。本明細書で開示の組成物及び方法は、以下の開示を踏まえると当業者には明白な様々なやり方で調製、実施、使用、実行及び/又は生成可能である。本明細書で用いる言い回し及び用語は説明を目的としたものにすぎず、請求の範囲を限定するとみなすべきではない。明細書本文及び請求項で様々な構造又は方法ステップに言及する際に用いる順序を表す表現、例えば第1、第2及び第3は、特定の構造若しくはステップ又はそのような構造若しくはステップへの特定の順序若しくは相対的配置を示すと解釈されることを意図してはいない。本明細書に記載の全ての方法は、別段の定めがない限り又は文脈からそうではないことが明らかでない限り、いずれの適切な順序でも行うことができる。本明細書で挙げた任意及び全ての例又は例を表す文言(例えば、「例えば(等)」)の使用は開示を円滑に行うためのものにすぎず、別段の定めがない限り、開示の範囲の限定を含意しない。明細書における文言及び図面に示す構造のいずれも、請求していない要素が本開示の主題の実施に必須であることを示すと解釈されるべきではない。本明細書における語「含む(including、comprising)」又は「有する(having)」及びこれらの変化形の使用は、その後に列挙される要素及びそれらの均等物並びに追加要素を包含するものとする。特定の要素を「含む(including、comprising)」又は「有する(having)」と記載される実施形態が、これらの特定の要素「から本質的に成る」及び「から成る」ことも考えられる。
【0031】
本明細書における値の範囲の記載は、別段の定めがない限り、その範囲にはいる個々の値に個別に言及する代わりの省略法にすぎず、個々の値は、本明細書において個別に記載されたかのごとく明細書に組み込まれる。例えば、濃度範囲が1〜50%であると述べる場合、2〜40%、10〜30%又は1〜3%等の値が本明細書において明確に列挙されたものとする。これらは具体的に意図するものの例にすぎず、記載の最小値及び最大値を含めた範囲内の数値の全ての考えられ得る組み合わせが本開示において明確に記載されたと解釈される。特定の量又は量範囲を表す際の「約」という語の使用は、記載の量に極めて近い値、例えば製造公差、計測時の器差及び人的過誤等に帰することができる又は帰するのが当然である値がその量に含まれると示すことを意図している。量に言及する際の百分率は全て、別段の定めがない限り質量基準である。
【0032】
本明細書で引用した全ての非特許文献又は特許文献を含め、参考文献が先行技術を構成するとは自認しない。当然のことながら、特に、別段の定めがない限り、本明細書における文献への言及が、それらの文献が米国又他国において当該分野における一般常識の一部を構成するとの自認であるとなることはない。参考文献について論じる場合、それは筆者の主張を述べているのであって、出願人は本明細書で引用した全ての文献の正確さ及び妥当性に異議を申し立てる権利を留保する。本明細書で引用する全ての参考文献は、別段の明確な定めがない限り、参照により全て援用される。引用の参考文献で定義及び/又は説明に相違がある場合は本開示が優先されるものとする。
【0033】
以下の例は例示を目的としたものにすぎず、本発明及び付随する請求項の範囲を限定しようとするものではない。
【実施例】
【0034】
発明者らは、遺伝子組み換えサイトカイン及び抗原を局所送達するためのキトサンベース溶液の使用の先駆者である[6、38、39、88〜91]。キトサンは、主に甲殻類の外骨格に由来する豊富な天然多糖である[92]。キトサンは、β(1−4)グリコシド結合により連結されたグルコサミン及びN−アセチルグルコサミン単位の非分岐コポリマーである(図1)。キトサン等の水溶性多糖の使用により、サイトカインを変性させる有機溶媒の使用を回避する。In vivoで、キトサンは、排出可能なグルコサミン及びN−アセチルグルコサミンフラグメントへとリゾチーム、グルコサミニダーゼ、リパーゼ及び他の内在性ヒト酵素によって安全に分解される。分解速度は、キトサン濃度、分子量(MW)、注射量及びN−アセチルグルコサミン:グルコサミン比で制御できる。
【0035】
キトサン溶液は送達されたサイトカインの局所保持及び活性を強化する
発明者らが発表した研究は、単純な粘性のキトサン溶液が、一緒に配合したGM−CSF[88]及びIL−12[6]の局所保持を有意に増大可能であることを実証した。特に、IL−12だけを腫瘍内注射してもすぐに散逸してしまい、24〜48時間以内に検出不可能となった(図2)。対照的に、キトサン溶液にIL−12を配合することで、IL−12は最高6日間まで検出可能であった[6]。発明者らは、粘性が高く静電的な相互作用の組み合わせがサイトカインのキトサン溶液からの拡散能を妨げて徐放送達系が形成されると考えている。キトサン/サイトカイン非共有結合的相互作用及びサイトカイン放出メカニズムの性質は、発明者らの研究室で現在行われている研究の主題である。
【0036】
発明者らのデータは、キトサン/サイトカインデポー製剤が、生理食塩水ベースのサイトカイン注射と比較して免疫学的活性も上昇させたことも示した。具体的には、1本のキトサン/GM−CSF注射は、流入領域リンパ節における樹状細胞の数及び機能性の上昇という点で1日4本のGM−CSFだけの注射より性能的に優れていた。ワクチン投与実験において、キトサン/GM−CSFは、抗原特異的CD4+増殖、ペプチド特異的CD8+五量体染色及び細胞障害性T細胞溶解の強化においてキトサン又はGM−CSF単体より優れていた[88]。同様に、キトサン/IL−12製剤はIL−12単体より侵襲性の樹立固形腫瘍(MC38及びPanc02)[6]の80〜100%、また同所性の表在性膀胱腫瘍(MB49)の88〜100%の根絶[38]において性能的に優れていた。興味深いことに、膀胱内キトサン/IL−12免疫療法は、遠位皮下腫瘍再誘発からの完全な保護をもたらす全身的な腫瘍特異的免疫を誘導すると判明している。未発表のより最近のデータは、腫瘍の切除に先立ってキトサン/IL−12を腫瘍内注射すると、侵襲的で転移性が高い乳がんモデルにおいて転移を排除でき、また生存期間を延ばせることを実証している(図3)。
【0037】
キトサン/サイトカイン混合物の限界
単純なキトサン/サイトカイン混合物が局所的なサイトカイン保持及び活性を増大させるのに有効であることの実証には成功したものの、送達されたサイトカインの殆どがキトサンデポー製剤から体循環へと漏出することを発明者らは確認した。実際、IL−12単体又はキトサン/IL−12混合物の腫瘍内注射後の血清IL−12及びIFN−γレベルは同様であった[38]。IL−12がもたらす毒性に対する懸念によりこれらのデータはこの単純な混合物プラットフォームの臨床利用を制限し得るため、発明者らはIL−12の全身への伝播を防止できる新しい送達技術を開発した。
【0038】
新規なIL−12−キトサンバイオコンジュゲート
キトサンのグルコサミン残基のアミン官能基(図1)は、タンパク質を含めた多様な側鎖部分の容易な化学的結合を可能にする。そのため、発明者らは、サイトカインをキトサンに共有結合的にコンジュゲートできるのではないかと仮説をたてた。これまでの単純なキトサン/IL−12混合物と比べ、直接コンジュゲーションには2つの利点がある。第1に、巨大分子の拡散は分子のサイズと反比例するため、IL−12(MW=75kDa)を比較的大きなキトサン分子(MW=100〜500kDa)にコンジュゲートさせることで、サイトカインの有効分子量を6〜7倍まで増大させることができる。その結果、サイトカインの拡散輸送ひいては全身への伝播が、完全に排除とは言えないものの激減すると考えられる。第2に、腫瘍内注射後、ポリカチオン性が高いキトサン分子は負に帯電した細胞外マトリックス及び細胞膜と静電的に相互作用する[93]。その結果、サイトカインは、キトサンのポリカチオン性の電荷により注射部位に効果的に「固定」される。
【0039】
発明者らは、局所投与したキトサンとIL−12との混合物が、膵臓腺がん[6]、結腸腺がん[6]、膀胱がん[38]、転移性乳がん、腎細胞がん、メラノーマ及び前立腺腺がんの完全な退縮を誘導できることを発見した。この単純な混合物プラットフォームは腫瘍微小環境において相当な量のIL−12を保持するのに有効ではあるものの、IL−12の大部分の全身への伝播は防止しない。注射したIL−12の75%もが体循環へと吸収され、その結果として同時に血清IFN−γが急上昇したと推定される[38]。キトサン/IL−12混合物の週単位の投与スケジュールが臨床的な毒性を誘発するとは考えられないものの[97]、IL−12への全身的な曝露を最小限に抑える又は排除する新規な技術は臨床利用に移行させやすい。
【0040】
したがって、提案のプロジェクトでは、IL−12のキトサンへのコンジュゲーションをベースにした新規な送達プラットフォームを開発及び評価する。このストラテジーでは、(1)IL−12の有効サイズを増大させ、(2)IL−12−キトサンバイオコンジュゲートを局所注射部位に生体接着的な相互作用により固定することでIL−12の全身への伝播を妨げる。このアプローチは、腫瘍内投与後に腫瘍におけるIL−12濃度を高く維持し、IL−12の体循環への漏出を最小限に抑える可能性を有する。
【0041】
遺伝子組み換えヒトIL−12の過剰発現及び精製
細菌(大腸菌)及び酵母(ピキア・パストリス(Pichia Pastoris)発現系を用いてIL−12を製造しようとする発明者らの最初の応用計画は不成功であった。IL−12の発現及び生物活性には大掛かりなグリコシル化が必要とされたからである。幸い、共同研究者であるBarbara Felber博士(国立がん研究所ワクチン部門の上級研究員)は、マウスIL−12(mIL−12)及びヒトIL−12(huIL−12)を発現するヒト胎児由来腎臓(HEK293)細胞を開発していた。
【0042】
抗原エピトープが発生する可能性を回避するために、用意した遺伝子組み換えIL−12コンストラクトはどれも精製用の外来性のアフィニティタグを含有していない。IL−12のアミノ酸配列を精査したところ、mIL−12及びhuIL−12の両方のp40サブユニットがグリコサミノグリカン、例えばヘパリンに結合する可能性があるアミノセグメントを有することが明らかとなった。興味深いことに、等温滴定型熱量測定(ITC)のデータは、ヒトIL−12がヘパリンに対して強い結合親和性を有することを示した(Kd約70μM、図4A)。ヘパリンに対するIL−12の高い結合親和性をベースにアフィニティクロマトグラフィ(ヘパリン−セファロースを使用)をベースとした精製プロトコルを設計してヒトIL−12を精製した。IL−12が500mM NaClではっきりとしたピークとして溶出することが観察された(図4B)。SDS−PAGEゲル分析は、IL−12が純粋であることを明らかにした(>95%、図4C、D)。精製したタンパク質の収率は約6.5mg/20mL培養上清である。
【0043】
IL−12発現HEK293クローンを得られたこと、またIL−12上のヘパリン結合モチーフの同定は、哺乳動物の発現系への移行に必要な有用な前進である。加えて、新たに同定されたヘパリン結合モチーフは、アフィニティタグ又は骨の折れる何段階にもわたる手順を必要とすることなく、計画したIL−12変異体だけでなく真性のIL−12も培養上清から簡単に精製することを可能にする。Jayanthi et al.Protein Expr Purif(2014)102:76−84を参照のこと(参照により全て本願に援用される)。
【0044】
IL−12−キトサンバイオコンジュゲートの検証
追加の予備データは、カルボジイミド架橋によるmIL−12のキトサンへの非特異的なコンジュゲーションの成功を実証している。簡単に説明すると、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)を使用してIL−12上のカルボキシル基を活性化し、このカルボキシル基が今度はキトサン上のN−ヒドロキシスクシンアミド(NHS)安定化アミン基と反応してペプチド結合を形成した。コンジュゲーション反応はpH5.0で6時間にわたって行われ、その後、IL−12−キトサンバイオコンジュゲートを透析により単離した。in vitroの生物活性を、IL−12感受性2D6細胞の増殖の定量化により確認した(図5A)。予想通り、非特異的なコンジュゲーションにより、約35%のかなりの量のIL−12生物活性が失われた。考えられる原因には、未反応のIL−12の喪失、架橋剤によるIL−12の直接不活性化又はIL−12のキトサンへのアクセス不可能な向きでのコンジュゲーションによる間接的な不活性化が含まれる。それでもなお、IL−12生物活性の損失は続く免疫療法研究で用いられたIL−12−キトサンの単純な増量で対抗できると考えるのが妥当である。IL−12−キトサンが誘導する増殖がコンジュゲートされていないIL−12に因るものである可能性について照査するためにIL−12とキトサンとの混合物を透析にかけたが、コンジュゲーション反応には供しなかった。コンジュゲートさせていないIL−12及びキトサンは2D6の増殖を誘導せず、これは透析による精製で遊離の未反応のIL−12が成功裡に除去されたことを示している。
【0045】
IL−12−キトサンバイオコンジュゲートのin vivo生物活性を、腫瘍内投与後の腫瘍の退縮を記録することで確認した(図5B)。腫瘍内IL−12−キトサン免疫療法は、4匹の処置済みマウスのうち4匹において、2匹の完全な退縮を含め、腫瘍の退縮をもたらした。これらのデータは、第1世代の非特異的にコンジュゲートさせたIL−12−キトサンコンストラクトが活性であるだけでなく前途有望な抗腫瘍物質であることを実証している。IL−12をキトサンに特異的にコンジュゲートさせる提案の方法は、より制御された部位特異的なコンジュゲーションプロトコルを通じてIL−12−キトサンバイオコンジュゲートの生物活性を改善しようとするものである。
【0046】
多様なやり方でキトサンに結合させてもIL−12は生物活性を維持する
キトサン(脱アセチル化度>90%)をPrimex(シグルフィヨルズル、アイスランド)から購入し、使用前に精製した。塩酸、水酸化ナトリウム、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)及びマッシュルームチロシナーゼはSigma(セントルイス、ミズーリ州)から購入した。スルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC)はLife Technologies(グリーンアイランド、ニューヨーク州)から購入した。
【0047】
カルボジイミド媒介カルボキシル/アミン反応基架橋
キトサン上の1級アミン基をタンパク質上の遊離カルボン酸基とカルボジイミド媒介ペプチド結合により架橋した。簡単に説明すると、1mgのキトサンを0.1M HCLに溶解させ、pHを1M NaOHを使用して5.4〜5.6に調節した。1mgのEDAC及びNHSを250μlのキトサンストック溶液に添加し、混合してから50μlの1mg/ml IL−12溶液を添加した。最適なコンジュゲーション効率のために、混合物を室温で6時間にわたって静置した。6時間後、キトサン−IL−12コンジュゲートを100KD透析膜で透析することで未反応の化学物質を除去し、さらなる使用に先立って凍結乾燥させた。
【0048】
マレイミドチオエーテル媒介アミン/スルフヒドリル架橋
IL−12上の反応性アミン基をチオール化キトサン上のスルフヒドリル基とマレイミドNHSエステル媒介アミン/スルフヒドリル架橋により架橋した。簡単に説明すると、アミン/スルフヒドリルクロスリンカー:スルホ−SMCCを、50μlの脱イオン水中の50μgのIL−12に80倍のモルアクセス(molar access)で添加した。室温での30分間にわたるインキュベーション後、反応混合物を脱塩し、250μgのチオール化キトサンに添加した。30分後、キトサン−IL−12コンジュゲートを100KD透析膜で透析することで未反応の化合物を除去し、さらなる使用に先立って凍結乾燥させた。
【0049】
チロシナーゼ触媒チロシン/アミン架橋
IL−12上のチロシンのチロシナーゼ触媒酸化により作り出された反応性O−キノンを、1級アミン基を介したキトサンへの架橋に使用した。簡単に説明すると、キトサンを20mM HCLに溶解させ、pHを1M NaOHを使用して6.0に調節することで0.1%(質量/体積)キトサン溶液を得た。チロシナーゼをPBs中で希釈することで(pH6.5)、120U/mlの比活性を得た。等体積のチロシナーゼ及びキトサンストック溶液を混合し、室温で静置した。50μgのIL−12を反応混合物に添加し、室温で混合した。8時間のインキュベーション後、キトサン−IL−12コンジュゲートを100KD透析膜で透析することで未反応の化合物を除去し、さらなる使用に先立って凍結乾燥させた。
【0050】
IL−12キトサンコンジュゲートの生物活性
キトサンへのIL−12の非特異的なコンジュゲーションがIL−12の生物活性に及ぼす影響を、IL−12応答性2D6細胞株の増殖を定量化することで確認した。簡単に説明すると、培養した2D6 T細胞を96ウェルプレートに20000細胞/ウェルで播種した。最終濃度が0.2ng/mL、0.04ng/ml及び0.008ng/mlになるまでIL−12を添加した。コンジュゲートさせていないIL−12及び培地のみをコントロールとした。24時間にわたるインキュベーション後、2D6細胞のIL−12依存性の増殖をMTTベースの増殖アッセイにより定量化した。結果は図6に示され、これらの結果は、IL−12をキトサンに結合する様々なやり方で様々な活性レベルが得られることを実証している。IL−12のキトサンへのカルボキシル/アミン及びチロシン/アミン結合によりIL−12活性は向上した。
【0051】
参考文献
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本発明の好ましい態様は、下記の通りである。
〔1〕サイトカイン又は増殖因子に共有結合されたキトサンを含む組成物であって、前記サイトカイン又は増殖因子が生物学的に活性である、組成物。
〔2〕前記サイトカインが、インターロイキンである、前記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕前記サイトカイン又は増殖因子が、Il−2、IL−12、GM−CSF、IL−1、TNF−α、IFN−γ、IFN−α、IL−15、IL−10、TGF−β、IL−23、IL−27、IL−35及びIL−7から成る群から選択される、前記〔1〕に記載の組成物。
〔4〕前記サイトカインが,IL−12である、前記〔2〕に記載の組成物。
〔5〕前記共有結合が、前記サイトカイン又は増殖因子上のカルボキシル基又はアミン基と前記キトサンのアミン基との間のものである、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔6〕前記共有結合が、前記サイトカイン又は増殖因子におけるリジン残基と前記キトサンとの間のものである、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔7〕前記サイトカイン又は増殖因子が、少なくとも1つのリジン置換変異を含む、前記〔6〕に記載の組成物。
〔8〕前記サイトカインが、IL−12であり、前記IL−12が、位置17、18、34、35、43、44又は248から成る群から選択される位置でリジンを含む、前記〔7〕に記載の組成物。
〔9〕前記共有結合が、前記サイトカイン又は増殖因子におけるシステイン残基と前記キトサンとの間のものである、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔10〕前記サイトカイン又は増殖因子が、少なくとも1つのシステイン置換変異を含む、前記〔9〕に記載の方法。
〔11〕クリックケミストリを用いて前記共有結合が形成されている、前記〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔12〕過ヨウ素酸化学反応を用いて前記共有結合が形成されている、前記〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔13〕前記サイトカイン又は増殖因子が、マレイミドチオエーテル化学反応を用いて前記キトサンに共有結合されている、前記〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔14〕前記サイトカイン又は増殖因子が、チオール化学反応を用いて前記キトサンに共有結合されている、前記〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔15〕前記キトサンが,10kDa〜500kDaの分子量を有する、前記〔1〕〜〔14〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔16〕前記キトサンが,100kDa〜400kDaの分子量を有する、前記〔15〕に記載の組成物。
〔17〕前記キトサンが,200kDa〜300kDaの分子量を有する、前記〔15〕に記載の組成物。
〔18〕前記サイトカイン及びキトサンが,ペプチドリンカーを介して結合されている、前記〔1〕〜〔17〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔19〕前記キトサンが、修飾されている、前記〔1〕〜〔18〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔20〕前記キトサンが、チオール化されている、前記〔19〕に記載の組成物。
〔21〕前記キトサンが、メチル化されている、前記〔19〕に記載の組成物。
〔22〕前記〔1〕〜〔21〕のいずれか一項に記載の組成物と医薬的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
〔23〕前記〔1〕〜〔22〕のいずれか一項に記載の組成物を、障害を治療するのに有効な量で被験体に投与することを含む、被験体において障害を治療する方法。
〔24〕前記障害がある領域に限局され、前記組成物が局所的に投与される、前記〔23〕に記載の方法。
〔25〕前記組成物が、腫瘍内投与、膀胱内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、腹腔内投与、非経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、くも膜下腔内投与又は経皮投与から選択される方法で投与される、前記〔23〕又は〔24〕に記載の方法。
〔26〕前記障害が、がんである、前記〔23〕〜〔25〕のいずれか一項に記載の方法。
〔27〕前記組成物が、腫瘍内投与される、前記〔26〕に記載の方法。
〔28〕前記がんが、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、膵臓がん、前立腺がん、腎臓がん、肺がん、メラノーマ、リンパ腫、脳がん、頭頸部がん又は卵巣がんである、前記〔26〕又は〔27〕に記載の方法。
〔29〕前記組成物が、前記障害を治療するための第2の組成物と組み合わせて投与される、前記〔23〕〜〔28〕のいずれか一項に記載の方法。
〔30〕前記2種の組成物が、任意の順序で、同時に又は一体型の組成物の一部として投与される、前記〔29〕に記載の方法。
〔31〕前記障害が、前記組成物の投与による免疫応答の誘導又は抑制によって治療され得る、前記〔23〕〜〔30〕のいずれか一項に記載の方法。
〔32〕前記障害が、アレルギー、自己免疫疾患、炎症、関節炎、多発性硬化症又はクローン病から成る群から選択される、前記〔23〕〜〔31〕のいずれか一項に記載の方法。
〔33〕前記被験体が、ヒトである、前記〔23〕〜〔32〕のいずれか一項に記載の方法。
〔34〕前記〔1〕〜〔22〕のいずれか一項に記載の組成物及び抗原を、前記抗原に対する免疫応答を刺激するのに有効な量で被験体に投与することを含む、被験体において免疫応答を刺激する方法。
〔35〕前記抗原が、ワクチンの一部である、前記〔34〕に記載の方法。
〔36〕前記被験体が、ヒトである、前記〔34〕〜〔35〕のいずれか一項に記載の方法。
〔37〕前記組成物が、腫瘍内投与、膀胱内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、腹腔内投与、非経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、くも膜下腔内投与又は経皮投与から選択される方法で投与される、前記〔34〕〜〔36〕のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6