特許第6530818号(P6530818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6530818アドレスデータを含むデータパケットを利用するプリントヘッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6530818
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】アドレスデータを含むデータパケットを利用するプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20190531BHJP
【FI】
   B41J2/14 611
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-541990(P2017-541990)
(86)(22)【出願日】2015年2月13日
(65)【公表番号】特表2018-505077(P2018-505077A)
(43)【公表日】2018年2月22日
(86)【国際出願番号】US2015015916
(87)【国際公開番号】WO2016130157
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2017年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】バッカー,クリス
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,エリック,ティー
(72)【発明者】
【氏名】ゴーザイル,アダム,エル
【審査官】 松下 公一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−159802(JP,A)
【文献】 特開2007−185949(JP,A)
【文献】 特開2003−144662(JP,A)
【文献】 特表2013−544678(JP,A)
【文献】 特開2004−122757(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0186265(US,A1)
【文献】 特開2003−072074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − B41J 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリントヘッドであって、
一組のアドレスを送るためのアドレス線と、
一組のデータ線と、
複数の基本要素と、
バッファと、
アドレス論理回路
を備え、
前記基本要素の各々は、前記アドレス線に結合された複数の制御可能な起動装置を備え、
前記起動装置の各々は、前記一組のアドレスのうちの少なくとも1つのアドレスに対応し、
前記アドレスの各々は複数の基本機能の各々に対応し、
前記複数の基本要素の各々は、前記一組のデータ線のうちの1つのデータ線に対応し、異なる基本要素は異なるデータ線に対応し、それぞれの基本要素の起動装置の各々は、前記一組のアドレスのうちの1つのアドレスに対応し、かつ複数の基本機能の各々に対応し、該起動装置の各々に対応するアドレスは互いに異なり、
前記バッファは一連のデータパケットを受け取り、該データパケットの各々は、前記一組のアドレスのうちの1つのアドレスを表すアドレスビットと一組のデータビットとを含み、
前記バッファは、前記データパケットの前記アドレスビットを前記アドレス論理回路に送り、及び、前記データパケットの前記データビットを対応するデータ線上に送り出し、
前記アドレス論理回路は、前記バッファから受け取った前記データパケットの各々について、前記アドレスビットによって表されているアドレスを前記アドレス線上に符号化することができ、前記符号化されたアドレスに対応する少なくとも1つの前記起動装置は、前記アドレス線上の前記符号化されたアドレスに基づいて、アドレスに対応する前記基本機能を作動させることができることからなる、プリントヘッド。
【請求項2】
交互にサイズが異なる液滴発生器を備え、第1のアドレスの第1の液滴発生器は、第2のアドレスの第2の液滴発生器よりも大きな液滴を生成することができる、請求項1のプリントヘッド。
【請求項3】
記基本要素の各々について、前記起動装置の各々は、前記一組のデータ線のうちの同じデータ線に結合され、前記一組のデータビットは一組の印刷データビットであり、該印刷データビットの各々は前記データ線の各々に対応し、前記データパケットの各々について、前記バッファは、前記印刷データビットの各々を前記対応するデータ線に送り出す、請求項1または2のプリントヘッド。
【請求項4】
噴射パルスを送るための噴射パルス線をさらに備え、
前記基本要素の各々が、前記アドレス線上の前記符号化されたアドレスを受け取るために該アドレス線に接続された複数のアドレスデコーダを備え、該複数のアドレスデコーダの各々は、前記起動装置の各々に対応し、該それぞれのアドレスデコーダは、該アドレスデコーダに接続された前記アドレス線上の符号化されたアドレスが該アドレスデコーダのアドレスに一致するときには出力をアクティブにし、前記起動装置は、対応する前記アドレスデコーダの出力がアクティブで、かつ該起動装置に結合された前記データ線上の前記印刷データビットがアクティブで、かつ前記噴射パルス線上の前記噴射パルスがアクティブであるときに、前記アドレスに対応する前記基本機能を作動させる、請求項のプリントヘッド。
【請求項5】
前記起動装置はスイッチを含む、請求項1〜4のいずれかのプリントヘッド。
【請求項6】
前記複数の基本機能のうちの1つの基本機能は、液滴発生器からインク滴を噴射することを含む、請求項1〜5のいずれかのプリントヘッド。
【請求項7】
前記複数の基本機能のうちの1つの基本機能は、再循環ポンプによってインクスロットからのインクを再循環させることを含む、請求項1または2のプリントヘッド。
【請求項8】
複数の基本グループをさらに備え、該基本グループの各々は複数の基本要素を含み、該基本グループの各々は、対応するデータ線及び対応するアドレス論理回路を有し、さらに、対応する一連のデータパケットを受け取ることからなる、請求項1〜7のいずれかのプリントヘッド。
【請求項9】
前記一組のアドレスのいくつかのアドレスは、該一組のアドレスの他のアドレスよりも多くのデータパケットのアドレスビットによって表される、請求項1のプリントヘッド。
【請求項10】
印刷システムであって、
一連のデータパケットを提供するコントローラと、
プリントヘッド
を備え、
前記データパケットの各々は、一組のアドレスのうちの1つのアドレスを表すアドレスビットと一組の印刷データビットとを含み、該一組のアドレスの各アドレスは、複数の基本機能のうちの1つに対応し、
前記プリントヘッドは、アドレス線、一組のデータ線、複数の基本要素、バッファ、及びアドレス論理回路を備え、
前記基本要素の各々は複数の制御可能なスイッチを備え、かつ前記一組のデータ線のうちの1つのデータ線に対応し、それぞれの基本要素のスイッチの各々は、前記一組のアドレスのうちの1つのアドレスに対応し、かつ前記複数の基本機能の各々に対応し、該スイッチの各々に対応するアドレスは互いに異なり、1つの基本要素について、前記スイッチの各々は、前記一組のデータ線のうちの同じデータ線結合され、前記一組のデータ線のうちのデータ線は基本要素毎に異なり、
前記バッファは、前記一連のデータパケットを受け取り、前記一組の印刷データビットの各々のビットは、前記一組のデータ線のうちのそれぞれ異なるデータ線に対応し、
前記アドレス論理回路は、前記バッファから前記アドレスビットを受け取り、前記データパケットの各々について、前記アドレス論理回路は、前記アドレスビットによって表されているアドレスを前記アドレス線上に符号化し、前記バッファは、前記印刷データビットの各々を前記対応するデータ線に送り出すことからなる、印刷システム。
【請求項11】
前記プリントヘッドは噴射パルスを送るための噴射パルス線をさらに備え、
前記基本要素の各々が、前記アドレス線上の前記符号化されたアドレスを受け取るために該アドレス線に接続された複数のアドレスデコーダを備え、該複数のアドレスデコーダの各々は、前記スイッチの各々に対応し、該それぞれのアドレスデコーダは、該アドレスデコーダに接続された前記アドレス線上の符号化されたアドレスが該アドレスデコーダのアドレスに一致するときには出力をアクティブにし、前記スイッチは、対応する前記アドレスデコーダの出力がアクティブで、かつ該スイッチに結合された前記データ線上の前記印刷データビットがアクティブで、かつ前記噴射パルス線上の前記噴射パルスがアクティブであるときに、前記アドレスに対応する前記基本機能を作動させる、請求項10の印刷システム。
【請求項12】
前記コントローラは、前記一組のアドレスのうちのいくつかのアドレスが、該一組のアドレスのうちの他のアドレスよりも多くのデータパケットのアドレスビットによって表されるように、前記一連のデータパケットを提供する、請求項10の印刷システム。
【請求項13】
前記コントローラは、前記データパケットのアドレスビットによって表されるアドレスの順番が可変であるように、前記一連のデータパケットを提供する、請求項10または11の印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
インクジェットプリンターは、一般に、基本要素(基本要素は「プリミティブ」ともいう)にグループ化される複数のノズルを有するプリントヘッドを使用し、この場合、それぞれの基本要素は、一般に、たとえば8個や12個のノズルなどの同じ数のノズルを有している。1つのグループの基本要素の各々は別個のデータ線に結合されるが、1つのグループの全ての基本要素は同じアドレス線に結合され、基本要素内のそれぞれのノズルは対応するアドレスによって制御される。ある所与の時間には1つのノズルだけがそれぞれの基本要素内で動作するように、プリントヘッドは、各ノズルのアドレスを連続的に繰り返し指定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】(補充可能性あり)
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】1例にしたがう、組み込まれたアドレスデータを含む印刷データパケットを利用する流体噴射装置を備えるインクジェット印刷システムを示すブロック図である。
図2】1例にしたがう、組み込まれたアドレスデータを含む印刷データパケットを利用する流体噴射装置を備える例示的なインクジェットカートリッジの透視図(ないし斜視図)である。
図3】1例にしたがう、液滴発生器を概略的に示す略図である。
図4】1例にしたがう、基本要素を構成するスイッチ及び抵抗器を有するプリントヘッドを概略的に示すブロック図である。
図5】プリントヘッドの基本要素駆動及び制御論理回路の一部分の1例を概略的に示すブロック図である。
図6】プリントヘッド用の印刷データパケットの1例を概略的に示すブロック図である。
図7】1例にしたがう、組み込まれたアドレスデータを含む印刷データパケットを利用するプリントヘッドの基本要素駆動及び制御論理回路の一部分の1例を概略的に示すブロック図である。
図8】1例にしたがう、アドレスデータを含む印刷データパケットの1例を概略的に示すブロック図である。
図9】プリントヘッド用の印刷データパケットの印刷データストリームを概略的に示す略図である。
図10】1例にしたがう、アドレスデータを含む印刷データパケットを使用する印刷データストリームを概略的に示す略図である。
図11】1例にしたがう、基本要素駆動及び論理回路の一部分を示すブロック図である。
図12】1例にしたがう、プリントヘッドを概略的に示すブロック図である。
図13】1例にしたがう、プリントヘッドを動作させる方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0004】
以下の詳細な説明では、本開示の一部を構成する添付の図面を参照するが、それらの図面には、本開示を実施できる特定の例が例示されている。その他の例を使用できること、及び、本開示の範囲から逸脱することなく構造的もしくは論理的な変更を行うことができることが理解されるべきである。したがって、以下の詳細な説明は限定の意味に解釈されるべきではなく、本開示の範囲は特許請求の範囲によって画定されるものである。別段の意味であることが明示されていない限り、本明細書及び/又は図面に記載されている種々の例の特徴を、その一部か全部かを問わず、互いに組み合わせることができることが理解されるべきである。
【0005】
図1は、本開示にしたがう、印刷データパケットを使用する、流体滴噴射プリントヘッド102などの流体噴射装置を備えるインクジェット印刷システム100を概略的に示すブロック図であり、該印刷データパケットは、プリントヘッド102内のそれぞれ異なる基本機能(たとえば液滴発生器(ノズル)の作動や再循環ポンプの起動)に対応するアドレスデータを含む。本開示にしたがって、印刷データパケットにアドレスデータを含めることによって、異なる基本機能に対して異なるデューティサイクルが可能になり(たとえば、液滴発生器を再循環ポンプよりも高い周波数で動作させることができ)、液滴発生器を動作させる順番を変更することができ、及び、データレート効率を改善することが可能になる。
【0006】
インクジェット印刷システム100は、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102、インク貯蔵リザーバ107を備えるインク供給アセンブリ104、搭載アセンブリ106、媒体搬送アセンブリ108、電子コントローラ110、及び、インクジェット印刷システム100の種々の電気的構成要素に電力を供給する少なくとも1つの電源112を備えている。
【0007】
インクジェットプリントヘッドアセンブリ102は、印刷媒体118に印刷するために、複数のオリフィスすなわちノズル116を通じて、印刷媒体118に向けてインク滴を噴射する少なくとも1つの流体噴射アセンブリ114を備えている。1例によれば、流体噴射アセンブリ114は、流体滴噴射プリントヘッド114として実施される。プリントヘッド114はノズル116を備え、それらのノズルは、典型的には、1以上の列すなわちアレイをなすように配置され、ノズルのグループは基本要素を形成するように編成され(すなわち構成ないし配置され)、基本要素は基本要素のグループ(以下、「基本要素のグループ」を「基本要素グループ」という)をなすように配置される。インクジェットプリントヘッドアセンブリ102と印刷媒体118が相対移動する際に、ノズル116から適切な順番でインク滴を噴射することにより、文字、記号、又は他の図形もしくは画像が印刷媒体118上に印刷される。
【0008】
本明細書では、サーマルインクジェット(TIJ)プリントヘッド114を有するドロップオンデマンドサーマルインクジェット印刷システムとして開示されているインクジェット印刷システム100に関して主に説明されているが、本開示にしたがう印刷データパケット中へのアドレスデータの挿入または組み込み(埋め込み)を、たとえばワイドアレイのTIJプリントヘッド114や圧電型プリントヘッドなどの他のプリントヘッドタイプでも同様に実施することができる。さらに、本開示にしたがう印刷データパケット内へのアドレスデータの組み込みは、インクジェット印刷装置には限定されず、たとえば2次元(2D)及び3次元(3D)プリントヘッドを含む任意のデジタル供給装置に適用することができる。
【0009】
1実施例では、図2に示されているように、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102と、インク貯蔵リザーバ107を備えるインク供給アセンブリ104は、一体化されたインクジェットプリントヘッドカートリッジ103などの交換式のデバイス(機器)内に共に収容されている。図2は、本開示の1例にしたがう、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102とインクリザーバ107を有するインク供給アセンブリ104とを備えるインクジェットプリントヘッドカートリッジ103を示す透視図(ないし斜視図)であり、プリントヘッドアセンブリ102はさらに、ノズル116を有し、かつ、アドレスデータを含む印刷データパケットを使用する1以上のプリントヘッド114を備えている。1例では、インクリザーバ(インク容器)107は、一色のインクを格納(貯蔵)し、他の例では、インクリザーバ107は、それぞれが互いに異なる色のインクを格納(貯蔵)する複数のリザーバ(容器)を有することができる。1以上のプリントヘッド114に加えて、インクジェットカートリッジ103は、たとえば、ノズル116を通じてインク滴を噴射することを含む種々の機能を制御するために、インクジェット印刷システム100の電子コントローラ110とその他の電気的構成要素との間で電気信号をやり取りするための電気接点105を備えている。
【0010】
図1を参照すると、動作時には、インクは、一般に、リザーバ107からインクジェットプリントヘッドアセンブリ102へと流れ、この場合、インク供給アセンブリ104とインクジェットプリントヘッドアセンブリ102は、一方向インク配送システムまたは循環式インク配送システムを形成する。一方向インク配送システムでは、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102に供給される全てのインクは、印刷中に消費される。一方、循環式インク配送システムでは、プリントヘッドアセンブリ102に供給されるインクの一部だけが、印刷中に消費され、印刷中に消費されなかったインクは、インク供給アセンブリ104へ戻される。リザーバ107を、取り外すことができ、及び/又は交換することができ、及び/又は、該リザーバに補充することができる。
【0011】
1例では、インク供給アセンブリ104は、インクを、インク調節アセンブリ111を通じて、正圧下で、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102へと、供給管などのインターフェース接続を介して供給する。インク供給アセンブリは、たとえば、リザーバ、ポンプ、及び圧力調整器を備えている。インク調節アセンブリにおける調節には、たとえば、フィルタリング、予熱、圧力サージ吸収、及びガス抜きを含めることができる。インクは、負圧下で、プリントヘッドアセンブリ102からインク供給アセンブリ104へと引き込まれる。プリントヘッドアセンブリ102の入口と出口間の圧力差は、ノズル116に適切な背圧を確立するように選択され、一般に、H2Oの−1と−10の間の負圧である。
【0012】
インクジェットプリントヘッドアセンブリ102と印刷媒体118との間の領域における、ノズル116の近くに印刷ゾーン122が画定されるように、搭載アセンブリ106は、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102を媒体搬送アセンブリ108に対して位置決めし、媒体搬送アセンブリ108は、印刷媒体118をインクジェットプリントヘッドアセンブリ102に対して位置決めする。1例では、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102は走査型プリントヘッドアセンブリである。かかる例によれば、搭載アセンブリ106は、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102を媒体搬送アセンブリ108に対して移動させて、印刷媒体118を横断するようにプリントヘッド114を走査させるためのキャリッジを備える。他の例では、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102は非走査型プリントヘッドアセンブリである。かかる例によれば、搭載アセンブリ106は、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102を媒体搬送アセンブリ108に対して所定の位置に固定し、媒体搬送アセンブリ108が、印刷媒体118をインクジェットプリントヘッドアセンブリ102に対して位置決めする。
【0013】
電子コントローラ110は、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102、搭載アセンブリ106、及び媒体搬送アセンブリ108と通信し、及びこれらを制御するためのプロセッサ(CPU)138、メモリ(記憶装置)140、ファームウェア、ソフトウェア、及びその他の電子回路を含む。メモリ140は、インクジェット印刷システム100用のコンピューター/プロセッサが実行可能な符号化された命令、データ構造、プログラムモジュール、及びその他のデータを格納するコンピューター/プロセッサ可読媒体を含む、揮発性(たとえばRAM)の記憶要素及び不揮発性(たとえば、ROM、ハードディスク、フロッピーディスク、CD−ROMなど)の記憶要素を含むことができる。
【0014】
電子コントローラ110は、コンピューターなどのホストシステムからデータ124を受信し、及びデータ124をメモリに一時的に格納する。データ124は、典型的には、電子、赤外線、光、またはその他による情報伝送経路を介してインクジェット印刷システム100に送られる。データ124は、たとえば、印刷すべき文書及び/又はファイルを表す。したがって、データ124は、インクジェット印刷システム100用の印刷ジョブを形成し、及び、1以上の印刷ジョブコマンド及び/またはコマンドパラメータを含む。
【0015】
1実施例では、電子コントローラ110は、プリントヘッド114のノズル116からインク滴を噴射させるために、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102を制御する。電子コントローラ110は、データ124からの印刷ジョブコマンド及び/又はコマンドパラメータに基づいて、ノズル116から噴射される噴射インク滴のパターンであって、文字、記号、及び/または他の図形ないし画像を印刷媒体118上に形成するパターンを画定する。より詳細に後述するように、本開示の1例では、電子コントローラ110は、印刷データパケットの形態のデータをプリントヘッドアセンブリ102に供給し、これによって、ノズル114は、印刷媒体118上に所望の図形又は画像を形成するために該画定されたインク滴のパターンを噴射する。本開示にしたがう1例では、印刷データパケットはアドレスデータ及び印刷データを含み、該アドレスデータは基本機能(たとえば、液滴発生要素による滴噴射や再循環ポンプの作動)を表し、該印刷データは対応する基本機能用のデータである。1例では、それらのデータパケットを、電子コントローラ110によって、ホスト装置(たとえばコンピューター上の印刷ドライバ)からデータ124として受け取ることができる。
【0016】
図3は、例示的な液滴発生器150を示すプリントヘッド114の一部の略図である。液滴発生器150は、液滴発生器150に液体インクを供給するインク供給スロット160が形成されているプリントヘッドアセンブリ114の基板152上に形成される。液滴発生器150はさらに、基板152上に配置された薄膜構造154及びオリフィス層156を備える。薄膜構造154には、インク供給チャンネル158及び気化室159が形成されており、インク供給チャンネル158は、インク供給スロット160及び気化室159と連絡している。ノズル16は、オリフィス層154を通って気化室159まで延びている。ヒーターすなわち噴射抵抗器162は、気化室159の下に配置されて、リード線164によって制御回路に電気的に結合される。該制御回路は、画定された滴パターンにしたがってインク滴を生成して印刷媒体118上に画像を形成するために、噴射抵抗器162への電流の供給を制御する(図1参照)。
【0017】
印刷中、インクは、インク供給チャンネル158を通ってインク供給スロット160から気化室159へと流れる。ノズル16は、噴射抵抗器162にエネルギーを加えた(たとえば噴射抵抗器162に通電した)ときに、インク滴がノズル16から印刷媒体118などの印刷媒体へと噴射されるように、噴射抵抗器162に動作可能に関連付けられる。
【0018】
図4は、1例にしたがう典型的な液滴噴射プリントヘッド114であって、本開示にしたがって、アドレスデータを含むデータパケットと共に使用されるように構成されることができる液滴噴射プリントヘッド114を概略的に示すブロック図である。プリントヘッド114は、複数の液滴発生器150を備えており、それぞれの液滴発生器は、インクスロット160の両側に列をなして配置されたノズル16及び噴射抵抗器162を備えている(図3参照)。スイッチ170(たとえば電界効果トランジスタ(FET))などの起動装置(または起動素子ないし起動デバイス)は、液滴発生器150の各々に対応する。1例では、スイッチ170及びそれらのスイッチの各々に対応する液滴発生器150は、基本要素(プリミティブ)180をなすように編成(すなわち配置ないし構成)され、基本要素の各々は、複数のスイッチ170及び対応する液滴発生器150を含んでいる。図4の例では、スイッチ170及び対応する液滴発生器150は、「M」個の基本要素180を構成し、偶数番目の基本要素P(2)〜P(M)はインクスロット160の左側に配置され、奇数番目の基本要素P(1)〜P(M−1)はインクスロット160の右側に配置されている。図4の例では、それぞれの基本要素180はN個のスイッチ170及び対応する液滴発生器150を備えており、ここで、Nは整数値(たとえばN=8)である。基本要素の各々が同じN個のスイッチ170及び液滴発生器150を有しているものとして図示されているが、スイッチ170及び液滴発生器150の数を基本要素毎に変えることができることに留意されたい。
【0019】
それぞれの基本要素180において、各スイッチ170、したがってまたそれらの各々に対応する液滴発生器150は、アドレス(A1)〜(AN)として示されている一組のN個のアドレスのうちの異なるそれぞれのアドレス182に対応し、これによって、後述するように、各スイッチ170及び対応する液滴発生器150を、基本要素180内で個別に制御することが可能である。同じ組のN個のアドレス(A1)〜(AN)182は、それぞれの基本要素180のために使用される。
【0020】
1例では、基本要素180はさらに、基本要素グループ184に編成される。図示のように、基本要素180は、基本要素グループPG(L)と基本要素グループPG(R)の2つの基本要素グループを形成し、基本要素グループPG(L)と基本要素グループPG(R)がそれぞれM/2個の基本要素180を有するように、基本要素グループPG(L)はインクスロット160の左側に基本要素180を有し、基本要素グループPG(R)はインクスロット160の右側に基本要素180を有している。
【0021】
図4に示されている例では、各スイッチ170は、印刷媒体にインク滴を噴射するという基本機能を実行するように構成された液滴発生器150に対応する。しかしながら、スイッチ170及びこれに対応するアドレス182を、他の基本機能に対応付けることもできる。たとえば、1例によれば、1以上のスイッチ170を、液滴発生器150に対応付ける代わりに、インクスロット160からのインクを再循環させるという基本機能を実行する再循環ポンプに対応付けることができる。1例では、たとえば、基本要素P(2)のアドレス(A1)に対応するスイッチ170を、液滴発生器150の代わりに、プリントヘッド114に配置される液滴発生器に対応付けることができる。
【0022】
図5は、1例にしたがう、プリントヘッド114用の基本要素駆動及び論理回路190の一部を概略的に示している。印刷データパケットは、経路192上においてデータバッファ194によって受け取られ、噴射パルスは経路196上で受け取られ、基本要素の電力(基本要素電力)は経路197上で受け取られ、基本要素のグランド(基本要素グランド。グランド=接地)はグランド(接地)線198上で受け取られる。アドレス発生器200は、アドレス(A1)〜(AN)を順次にないし連続的に生成してアドレス線202上に送り出す(すなわち出力する)。アドレス線202は、対応するアドレスデコーダ204及びAND(アンド)ゲート206を介して各基本要素180内の各スイッチ170に結合(接続)されている。データバッファ194は、対応する印刷データを、データ線208を介して基本要素180に供給し、この場合、1つデータ線が、基本要素180の各々に対応し、かつ対応するANDゲート206に結合されている(たとえば、データ線D(2)は基本要素P(2)に対応し、データ線D(M)は基本要素P(M)に対応する)。
【0023】
基本要素駆動及び論理回路190は、データ線D(2)〜D(M)上の印刷データを、アドレス線202上のアドレスデータ及び経路196上の噴射パルスと組み合わせて、基本要素電力線197からの電流を各基本要素180の噴射抵抗器162−1〜162−Nへと順次切り換える。データ線208上の印刷データは、印刷される文字、記号、及び/又はその他の図形もしくは画像を表す。
【0024】
アドレス発生器200は、N個のアドレス値A1〜ANを生成し、これらのアドレス値は、各基本要素180内の噴射抵抗器162にエネルギーを加える(たとえば噴射抵抗器162に通電する)順番を制御する。アドレス発生器200は、N個の全ての噴射抵抗器162を噴射させることはできるが、所与の時刻には、各基本要素180内の1つの噴射抵抗器162だけにエネルギーを加えることができるように、N個の全てのアドレス値を繰り返し生成して一定の順番で送り出す。たとえばプリントヘッド114に分散的に熱を加えるためには、これらのN個のアドレス値を生成する該一定の順番を、A1からANへと順に進む順番以外の順番とすることができるが、該一定の順番は、どのような順番であれ、連続するそれぞれのサイクルについて同じである。1例では、N=8の場合には、該一定の順番を、アドレスA1、A5、A3、A7、A2、A6、A4、A8の順番とすることができる。各基本要素180に対してデータ線208(D(2)〜D(M))上に供給される印刷データは、該印刷データが、対応する液滴発生器150に供給されるように、アドレス発生器200がアドレス値A1〜ANを繰り返し送り出す該一定の順番に同期化される。
【0025】
図5の例では、アドレス発生器200によってアドレス線202に供給されるアドレスは符号化されたアドレスである。アドレス線202上の符号化されたアドレスは、各基本要素180のN個のアドレスデコーダ204に供給され、この場合、アドレス線202上のアドレスが所与のアドレスデコーダ204のアドレスに対応(ないし一致)する場合には、該アドレスデコーダ204は、対応するANDゲート206にアクティブな出力を供給する。たとえば、アドレス発生器によってアドレス線202上に出力された符号化されたアドレスが、アドレスA2を表している場合には、各基本要素180のアドレスデコーダ204−2は、対応するANDゲート206−2にアクティブな出力を供給することになる。
【0026】
各基本要素180のANDゲート206−1〜206−Nは、対応するアドレスデコーダ204−1〜204−Nから出力を受け取り、及び、該各基本要素180に対応するデータ線208からデータビットを受け取る。各基本要素180のANDゲート206−1〜206−Nはまた、噴射パルス経路196から噴射パルスを受け取る。各基本要素180のANDゲート206−1〜206−Nの出力は、対応するスイッチ170−1〜170−N(たとえばFET170)の制御ゲートにそれぞれ結合される。したがって、それぞれのANDゲート206について、印刷データが対応するデータ線208上に存在し、線(ライン)196上の噴射パルスがアクティブであり、かつ、アドレス線202上のアドレスが対応するアドレスデコーダ204のアドレスに一致する場合には、ANDゲート206は、その出力をアクティブにして、対応するスイッチ170を閉じ、これによって、対応する抵抗器162にエネルギーが加えられ(すなわち通電され)、ノズルチャンバ159内のインクが気化して、関連付けられたノズル16(図3参照)からインク滴が噴射される。
【0027】
図6は、図5に示されているプリントヘッド114用の基本要素駆動及び論理回路190と共に使用される例示的な印刷データパケット210を概略的に示す略図である。データパケット210は、ヘッダー部212、フッター部214、及び印刷データ部216を含んでいる。ヘッダー部212は、クロック(MCLK)の立ち上がりエッジでデータバッファ194に読み込まれるスタート(開始)ビットや同期ビットなどのビットを含んでおり、フッター214は、クロックMCLKの立ち下がりエッジでデータバッファ194に読み込まれるストップビットなどのビットを含んでいる。
【0028】
印刷データ部216は、基本要素P(1)〜P(M)用のデータビットを含んでおり、右側の基本要素グループPG(R)の基本要素P(1)〜P(M−1)用のデータビットは、クロックMCLKの立ち上がりエッジでデータバッファ194に読み込まれ、左側の基本要素グループの基本要素P(2)〜P(M)用のデータビットは、クロックMCLKの立ち下がりエッジでデータバッファ194に読み込まれる。図5は、図4の左側の基本要素グループPG(L)に対応する基本要素駆動及び論理回路190の一部だけを示しているが、同様の駆動及び論理回路が、データバッファ194を介して印刷データを受け取る右側の基本要素グループPG(R)に対しても使用されることに留意されたい。(左側と右側の両方の基本要素グループPG(L)及びPG(R)に対する)図5の基本要素駆動及び論理回路190のアドレス発生器200は、N個のアドレスA1〜ANを繰り返し生成して一定の順番で送り出すので、データパケット210の印刷データ部216のデータビットは、アドレス発生器200によってアドレス線202上に生成される符号化されたアドレスに対応(ないし一致)する順番で、データバッファ194によって受け取られてデータ線218(D(2)〜D(M))に送り出されるように、適切な順番でなければならない。データパケット210がアドレス線202上の符号化されたアドレスに同期していない場合には、データは、間違った液滴噴射装置150に供給され、その結果生成される液滴パターンは、所望の印刷画像を生成しないことになる。
【0029】
図7図8は、本開示の例にしたがう、印刷データパケット310を使用するための例示的な基本要素駆動及び論理回路290と、組み込まれたアドレスデータを印刷データと共に含む例示的な印刷データパケット310をそれぞれ示している。図5及び図6に記載されている特徴と類似の特徴を示すために、図7及び図8では、図5及び図6と同じラベルが使用されていることに留意されたい。
【0030】
図8を参照すると、印刷データパケット310は、ヘッダー部212、フッター部214、及び印刷データ部216に加えて、プリントヘッド114内の基本機能(たとえば液滴噴射要素150)のアドレスを表すアドレスビットを含むアドレスデータ部320をさらに含んでいる(印刷データ部216内の印刷データビットはプリントヘッド114に送られる)。図8に示されている例では、図7の基本要素駆動及び論理回路290のN個のアドレスA1〜ANを表すために4つのアドレスビットが使用される。4つのアドレスビットでは、Nは16という最大値を有することができる。図7の例示的な基本要素駆動及び論理回路290では、N=8(これは、基本要素180の各々が8つの異なるアドレスを有することを意味する)の場合には、印刷データパケット310のアドレスデータ部320用には、3つのアドレスビットだけが必要である。
【0031】
図示されているように、右側の基本要素グループPG(R)に対応するアドレスビットPGR_ADD[0]〜PGR_ADD[3]は、クロックMCLKの立ち上がりエッジでデータバッファ294(図7)に読み込まれ、アドレスビットPGL_ADD[0]〜PGL_ADD[3]は、クロックMCLKの立ち下がりエッジでバッファ294に読み込まれる。同様に、右側の基本要素グループPG(R)のアドレスビットPGR_ADD[0]〜PGR_ADD[3]に関連付けられた印刷データビットP(1)〜P(M−1)は、クロックMCLKの立ち上がりエッジでデータバッファ294に読み込まれ、左側の基本要素グループPG(L)のアドレスビットPGL_ADD[0]〜PGL_ADD[3]に関連付けられた印刷データビットP(2)〜P(M)は、クロックMCLKの立ち下がりエッジでデータバッファ294に読み込まれる。
【0032】
図7を参照すると、図5の基本要素駆動及び論理回路190とは対照的に、本開示の1例にしたがう基本要素駆動及び論理回路290では、バッファ294は、経路192上において印刷データパケット310を受け取り、この場合、印刷データパケット310は、印刷データ部216に加えて、プリントヘッド114内の基本機能(たとえば液滴噴射要素150)のアドレスを表すアドレスビットを含むアドレスデータ部320さらに含んでいる(印刷データ部216内のデータビットはプリントヘッド114に送られる)。バッファ294は、印刷データパケット310のアドレスビットを組み込みアドレス論理回路300に送り、及び、印刷データパケット310の印刷データ部216からのデータビットを対応するデータ線D(2)〜D(M)に送り出す。ここでも、図7は、図4の左側の基本要素グループPG(L)に対応する基本要素駆動及び論理回路290の一部を示していることに留意されたい。
【0033】
バッファ294から受け取った印刷データパケット310のアドレスデータ部320からのアドレスビットに基づいて、組み込みアドレス論理回路300は、アドレス線202上に対応するアドレスを符号化する(すなわち、該対応するアドレスを符号化してアドレス線202に出力する)。N個の全てのアドレスの符号化されたアドレスを生成して一定の順番でかつある繰返し周期でアドレス線202上に送り出す、図5の基本要素駆動及び論理回路190によって使用されるアドレス発生器200とは対極的に、組み込みアドレス論理回路300は、アドレスが印刷データパケット310を介して受け取られた順番で、符号化されたアドレスをアドレス線202上に送り出す。このため、それらの符号化されたアドレスが、組み込みアドレス論理回路300によってアドレス線202上に送り出される順番は、固定されておらず(一定ではなく)、異なるアドレス、したがってまたそれらのアドレスに対応する基本機能が、互いに異なるデューティサイクルを有することができるように変わりうる。
【0034】
さらに、本開示にしたがって、印刷データパケット310のアドレスデータ部320にアドレスビットを組み込む(埋め込む)ことによって、符号化されたアドレスをアドレス線202上に送り出す順番を変える(すなわち、該アドレスを循環させる順番が一定ではない)ことができるだけでなく、あるアドレスに対応する印刷データがない場合には、該アドレスを「スキップする」(すなわち、アドレス線202上に符号化しない)ことができる。このような場合には、印刷データパケット320は、プリントヘッド114の該アドレスに単に供給されないことになる。
【0035】
たとえば、図4を参照して、基本要素の各々が8個の液滴発生器(すなわちN=8)を有し、基本要素180の各々について、アドレスA(2)、A(4)、A(6)、及びA(8)に対応する液滴発生器150が、アドレスA(1)、A(3)、A(5)、及びA(7)に対応する液滴発生器よりも大きなインク滴を噴射するように、プリントヘッド114の液滴発生器150のサイズが交互に異なっている(たとえば、液滴発生器150のサイズは1つ置きに同じであるが、隣り合う液滴発生器150のサイズは異なる)状況を考える。さらに、大きなインク滴を噴射する、アドレスA(2)、A(4)、A(6)、及びA(8)に対応する液滴発生器150だけが、所与の印刷モードにおいてインク滴を噴射することが要求される印刷モードを考える。かかる状況は、図9及び図10によって示されている。
【0036】
図9は、図5の基本要素駆動及び制御論理回路190及び図6の印刷データパケット210を使用するときの上記の状況における印刷データストリーム350を概略的に示す略図である。アドレス発生器200は、N個の全てのアドレス(この状況ではN=8)の符号化されたアドレスを生成して一定の順番でアドレス線202上に送り出すように配線接続されているため、この例示的な状況の印刷モードにしたがって「小さな」液滴発生器(小さな液滴を発生する液滴発生器)が噴射をしない場合でも、データパケット210を、「小さな」液滴発生器150に対応するアドレスA1、A3、A5、及びA7に対して供給し、及び、「大きな」液滴発生器(大きな液滴を発生する液滴発生器)に対応するアドレスA2、A4、A6、及びA8に対するデータパケットと共に基本要素駆動及び制御論理回路190に循環的に供給しなければならない。
【0037】
この状況は図9に示されており、ここで、基本要素アドレスA2、A4、A6、及びA8に関連付けられた「大きな」液滴発生器150だけが噴射している液滴発生器であっても、印刷データストリーム350は、アドレスA1〜A8の各々に対応するデータパケット210を含んでいる。データストリーム350のデータパケット210が基本要素の全てのアドレス(今の例ではアドレスA1〜A8)を一回りするのに必要な時間は、352で示されている噴射期間と呼ばれる。アドレス発生器200は、N個の全てのアドレス(今の例ではN=8)の符号化されたアドレスを生成して、それらを、アドレス線202上に一定の順番でかつある繰返し周期で(すなわち周期的に繰り返して)送り出すので、噴射期間352の継続時間の長さは、基本要素駆動及び制御論理回路190並びに印刷データパケット210を使用するプリントヘッド114に対しては一定である。
【0038】
これとは対照的に、図10は、該例示的な状況における印刷データストリーム450を示しており、この場合、印刷データストリームは、所与の印刷モードにしたがって噴射させられる大きな体積の液滴発生器(大きな体積の液滴を発生する液滴発生器)150に対応するアドレスA2、A4、A6、及びA8に対するデータパケット310だけを含んでいる。この結果、本開示にしたがって、印刷データパケット310中の組み込まれたアドレスデータを利用する基本要素駆動及び制御論理回路290並びに印刷データパケット310を使用するプリントヘッド114の場合は、噴射期間452の継続時間ははるかに短い。このより短い持続時間のおかげで、種々の印刷モードにおける印刷システム100の印刷速度が速くなる。
【0039】
本開示にしたがう、アドレス指定を行って(すなわちアドレスを生成して)選択されたアドレスに印刷データを割り当てる、基本要素駆動及び制御論理回路290並びに印刷データパケット310を使用するプリントヘッド114の能力は、異なる基本機能を異なるデューティサイクルで動作させることを可能にする。たとえば、図4を参照すると、プリントヘッド114のそれぞれの基本要素180のそれぞれのアドレスA1が液滴発生器の代わりに再循環ポンプとして構成されている場合には、そのような再循環ポンプを、液滴発生器150よりもはるかに低いデューティサイクル(周波数)で作動させることができる。たとえば、アドレスA1の再循環ポンプだけを1つの噴射期間452おきにアドレス指定し、アドレスA2〜A7に関連付けられた液滴発生器150を全ての噴射期間452中にアドレス指定することができるが、これは、再循環ポンプは50%のデューティサイクルを有し、液滴発生器150は100%のデューティサイクルを有することを意味する。このようにして、任意の数の異なる基本機能に対して異なるデューティサイクルを与えることができる。
【0040】
基本要素駆動及び制御論理回路190のアドレス発生器200によって行われるように所定のアドレスを所定の順番でハードコーディングする代わりに、印刷データパケット310のアドレスデータ部320にアドレスビットを組み込む(埋め込む)ことは、印刷データストリームに加えられる選択的な基本機能(たとえば、インク噴射イベントの噴射順序や再循環イベントの選択的なアドレス指定能力)を提供する。印刷データパケット310のアドレスデータ部320にアドレスビットを組み込むことによって、基本機能を複数のアドレスでアドレス指定することも可能になり、この場合、該基本機能は、複数のアドレスの各々に対して異なるやり方で応答する。
【0041】
図11は、1例にしたがう、複数のアドレスに対応する基本機能500を含むようにするために図7に示されている基本要素駆動及び論理回路290から(部分的に)変更された基本要素駆動及び論理回路290の一部を示すブロック図である。図示の例では、一対のアドレスデコーダ204−2A、204−2B、及び一対のANDゲート206−2A、206−2Bが、基本機能500に対応する。アドレスデコーダ204−2Aは、アドレスA2−AとアドレスA2−Bの両方をデコード(復号)するように構成されており、アドレスデコーダ204−2Bは、アドレスA2−Bだけをデコードするように構成されている。
【0042】
動作時に、アドレスA2−Aがアドレス線202上に存在する場合には、アドレスデコーダ204−2AがANDゲート206−2Aにアクティブな信号を供給する。データがデータ線D(2)上に存在し、かつ噴射パルスが線(ライン)196上に存在する場合には、ANDゲート206−2Aが基本機能500にアクティブな信号を供給し、これによって、基本機能500は第1の応答を行う。アドレスA2−Bがアドレス線202上に存在する場合には、アドレスデコーダ204−2AがANDゲート206−2Aにアクティブな信号を供給し、かつアドレスデコーダ204−2BがANDゲート206−2Bにアクティブな信号を供給する。データがデータ線D(2)上に存在し、かつ噴射パルスが線(ライン)196上に存在する場合には、ANDゲート206−2AとANDゲート206−2Bの両方が基本機能500にアクティブな信号を供給し、これによって、基本機能500は第2の応答を行う。このため、基本機能500を、それぞれの対応するアドレスに別様に応答するように構成することができる。
【0043】
図12は、本開示の1例にしたがうプリントヘッド114を概略的に示すブロック図である。プリントヘッド114は、バッファ456、アドレス論理回路458、及び、制御可能なスイッチ460として示されている複数の制御可能なスイッチを備えており、それらの制御可能なスイッチ460の各々は基本機能462に対応する(結合している)。制御可能なスイッチ460は、複数の基本要素470をなすように配置ないし構成されており、基本要素470の各々は同じ組のアドレスを有し、該アドレスの各々は複数の基本機能462のうちの各1つに対応し、基本要素の制御可能なスイッチの各々は該組のアドレスのうちの少なくとも1つのアドレスに対応する。同じデータ線472が、各基本要素470の制御可能なスイッチ460の各々に結合されている。
【0044】
バッファ456は、一連のデータパケット480を受け取り、この場合、各データパケット482は、一組のアドレスのうちの1つのアドレスを表すアドレスビット484を含んでいる。アドレス論理回路458は、バッファ456からそれぞれのデータパケット482のアドレスビット484を受け取り、それぞれのデータパケット482について、アドレスビット484によって表されるアドレスをアドレス線472上に符号化する(すなわち該アドレスを符号化してアドレス線472に出力する)。この場合、アドレス線472上に符号化されたアドレスに対応する少なくとも1つの制御可能なスイッチ460は、対応する基本機能462(たとえば、液滴発生器からのインク滴の噴射)を作動させる。
【0045】
図13は、図7及び図12のプリントヘッド114などのプリントヘッドを動作させる方法500を概略的に示すフローチャートである。502において、方法500は、プリントヘッドの複数の制御可能なスイッチを複数の基本要素をなすように編成(すなわち構成ないし配置)することを含み、この場合、基本要素の各々は同じ組のアドレスを有し、該アドレスの各々は複数の基本機能のうちの1つに対応し、基本要素の制御可能なスイッチの各々は、該組のアドレスのうちの少なくとも1つのアドレスに対応する。504において、プリントヘッドの同じアドレス線が、各基本要素の制御可能なスイッチの各々に結合される。
【0046】
該方法は、506において、一連のデータパケットを受け取ることを含み、この場合、各データパケットは、該組のアドレスのうちの1つのアドレスを表すアドレスビットを含んでいる。該方法は、508において、各データパケットについて、それらのアドレスビットによって表されているアドレスをアドレス線上に符号化することを含む。
【0047】
特定の例を図示し及び本明細書で説明したが、本開示の範囲から逸脱することなく、図示し及び説明した特定の例を、種々の代替実施例及び/又は同等の実施例で置き換えることができる。本願は、本明細書及び/又は図面で説明した特定の例に対する任意の改変や変更をカバーすることを意図している。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びそれの等価物によってのみ限定されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13