特許第6530823号(P6530823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6530823カバー取付構造体、及びカバー取付構造体のカバー取付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6530823
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】カバー取付構造体、及びカバー取付構造体のカバー取付方法
(51)【国際特許分類】
   A44B 19/08 20060101AFI20190531BHJP
   A44B 19/12 20060101ALI20190531BHJP
   B62D 1/06 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
   A44B19/08
   A44B19/12
   B62D1/06
【請求項の数】15
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-553563(P2017-553563)
(86)(22)【出願日】2015年12月2日
(86)【国際出願番号】JP2015083940
(87)【国際公開番号】WO2017094155
(87)【国際公開日】20170608
【審査請求日】2018年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 万里
(72)【発明者】
【氏名】福田 夕子
(72)【発明者】
【氏名】奥山 光
【審査官】 五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭52−047424(JP,U)
【文献】 特開平04−215562(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/030442(WO,A1)
【文献】 特開昭55−063605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 19/00
B62D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状のカバー部材(11A,11B)と、該カバー部材(11A,11B)によって表面が覆われる基体(13)と、前記カバー部材(11A,11B)を前記基体(13)に取り付けるファスナー部材(15)と、を備えるカバー取付構造体(100)であって、
前記ファスナー部材(15)は、
前記カバー部材(11A)の一端部に設けられ、前記一端部の端縁に沿って噛合頭部を有する多数のファスナーエレメント(21A)を備える第1エレメント列(19A)と、
前記第1エレメント列(19A)のファスナーエレメント(21A)に噛合可能な噛合頭部(29)を有する多数のファスナーエレメント(21B)を備える第2エレメント列(19B)と、
を具備し、
前記基体(13)は、その表面に沿って延設された凹溝(23)を有し、
前記第1エレメント列(19A)と前記第2エレメント列(19B)のファスナーエレメント(21A,21B)は、前記噛合頭部(29)同士が噛合して前記凹溝(23)に収容された状態で前記凹溝(23)に係止されており、
前記凹溝(23)該凹溝(23)の長手方向に直交する幅方向の最小溝幅、前記凹溝(23)に収容されたいずれか一方の前記ファスナーエレメントにおける前記幅方向の長さの1.6倍以上、1.9倍以下にされて、前記ファスナーエレメント(21A,21B)が、前記凹溝(23)に締まり嵌め状態にされたこと
を特徴とするカバー取付構造体。
【請求項2】
前記凹溝(23)は、前記最小溝幅よりも底面側にある最大溝幅寸法が、前記凹溝(23)に収容されたいずれか一方の前記ファスナーエレメントにおける前記幅方向の長さの1.6倍以上、2.5倍以下であることを特徴とする請求項に記載のカバー取付構造体。
【請求項3】
前記凹溝(23)は、前記ファスナーエレメントの高さの0.5倍以上、1.5倍以下の溝深さを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカバー取付構造体。
【請求項4】
前記第1エレメント列(19A)のファスナーエレメント(21A)は、ファスナーテープ(55A)に設けられ、前記ファスナーテープ(55A)が前記カバー部材(11B)の前記一端部に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載のカバー取付構造体。
【請求項5】
前記第2エレメント列(19B)のファスナーエレメント(21B)は、ファスナーテープ(55B)に設けられ、前記ファスナーテープ(55B)が前記カバー部材(11B)の前記一端部に取り付けられていることを特徴とする請求項に記載のカバー取付構造体。
【請求項6】
前記第1エレメント列(19A)のファスナーエレメント(21A)は、前記カバー部材(11A)の前記一端部に直接取り付けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカバー取付構造体。
【請求項7】
前記第2エレメント列(19B)のファスナーエレメント(21B)は、前記カバー部材(11B)の前記一端部に直接取り付けられていることを特徴とする請求項に記載のカバー取付構造体。
【請求項8】
前記第2エレメント列(19B)は、前記カバー部材(11A)の前記第1エレメント列(19A)が設けられた前記一端部とは異なる位置の前記カバー部材(11A)の端部に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載のカバー取付構造体。
【請求項9】
前記カバー部材(11A,11B)は、前記基体(13)の外周を包囲して配置され、前記一端部に対向する他端部に前記第2エレメント列(19B)が設けられ、前記第1エレメント列(19A)と前記第2エレメント列(19B)のファスナーエレメント(21A,21B)が前記凹溝(23)にそれぞれ係止されていることを特徴とする
請求項に記載のカバー取付構造体。
【請求項10】
複数枚の前記カバー部材(111,117,125)を備え、
前記基体(13)は、前記複数枚のカバー部材(111,117,125)の前記ファスナーエレメントに対応する前記凹溝(115,123)が形成され、
同一位置の前記凹溝(115,123)に、互いに異なるカバー部材の前記ファスナーエレメントがそれぞれ収容されていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載のカバー取付構造体。
【請求項11】
前記凹溝(23A,23B,23C)は、対向配置される溝側面の少なくとも一方に、開口端部から溝底面側に向けて前記幅方向の溝幅が縮小する傾斜面(47,50)を有することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載のカバー取付構造体。
【請求項12】
前記凹溝(23B,23C)は、前記最小溝幅より広幅の溝底面(45)を有することを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載のカバー取付構造体。
【請求項13】
前記基体(13)は、自動車のステアリングホイール(61)であり、
前記カバー部材(11A,11B)は、前記ステアリングホイール(61)の外側を覆うステアリングカバー(73)であることを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載のカバー取付構造体。
【請求項14】
請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載のカバー取付構造体のカバー取付方法であって、
前記凹溝(23)の長手方向の一箇所で、前記第1エレメント列(19A)の一部のファスナーエレメント(21A)と前記第2エレメント列(19B)の一部のファスナーエレメント(21B)とを、前記噛合頭部(29)同士が噛合して前記凹溝(23)に収容された状態にする第1の工程と、
前記凹溝(23)の長手方向の一箇所を起点として、前記カバー部材(11A,11B)を前記凹溝(23)に向けて押圧しながら、未噛合状態の残りのファスナーエレメント(21A,21B)を、前記凹溝(23)の延設方向に向けて前記噛合頭部(29)同士が噛合状態となるように前記凹溝(23)へ収容し、前記第1エレメント列(19A)と前記第2エレメント列(19B)のファスナーエレメント(21B)を前記凹溝(23)に係止させる第2の工程と、
を含むことを特徴とするカバー取付構造体のカバー取付方法。
【請求項15】
前記第2の工程において、回転自在に支持された押圧ローラ(91)を、前記ファスナー部材(15)上で前記凹溝(23)に向けて押圧しながら前記凹溝(23)の延設方向に沿って移動させ、前記ファスナー部材(15)上で前記押圧ローラ(91)を転動させることを特徴とする請求項14に記載のカバー取付構造体のカバー取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー部材を基体の表面に取り付けたカバー取付構造体、及びカバー取付構造体のカバー取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、他部材との接触や擦れによって基体表面に傷や摩耗痕が生じる虞のある部位に、カバー部材を取り付け、表面保護や防汚の機能を持たせたものがある。また、基体表面の美観が求められる部位に、所望のカバー部材を取り付けて装飾することや、基体に取り付けられたカバー部材を新調のため交換することがある。このようなカバー部材の一例として、自動車のステアリングホイールに取り付けられる天然皮革や人工皮革等からなるステアリングカバー(カバー部材)が挙げられる(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2000−53000号公報
【特許文献2】日本国実開昭61−53269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のカバー取付構造においては、基体に予め形成した凹溝にカバー部材の端部が挿入され、凹溝内で端部が接着されている。しかし、この構成ではカバー部材の接着工程が煩雑となり、しかも完全に固着するまでに長い加工時間を要する。また、一旦、基体に取り付けられたカバー部材は、基体から取り外しができないため、カバー部材の清掃や取り替えができない不利がある。
一方、特許文献2の構成においては、カバー部材の端部に設けられたスライダー付きファスナーにより、カバー部材を基体への取り付け取り外しが容易に行える構成になっている。すなわち、カバー部材を、基体に巻き付けてカバー部材の端部同士をスライダー付きファスナーで接合することで、基体に固定している。これにより、基体表面が簡単にカバー部材で覆われる。
ところが、特許文献2の構成のようなファスナーを用いてカバー部材を基体に取り付ける場合、図17(A)に示すように、ファスナーエレメント215が、基体211を覆うカバー部材213上で露出して、突起部217が形成される。また、図17(B)に示すように、上記したカバー部材213を表裏反転させた場合も同様に、ファスナーエレメント215による突起部217が形成されてしまう。この突起部217は、手で触れた際の異物感や、外観不良を生じさせるため、形成させないことが好ましい。そこで、図17(C)に示すように、基体211に予め形成された凹溝219にファスナーエレメント215を収容して、基体外側に突起させないようにすることが考えられる。
しかし、凹溝219に収容されたファスナーエレメント215は、その周囲にスライダーが通過可能な隙間を設けておく必要がある。そのため、凹溝219は、ファスナーエレメント215の周囲にスライダーを通過させるための余分な隙間空間が形成された、幅広且つ深底の溝となる。このような広幅で深底の凹溝219では、カバー部材213のファスナーエレメント215が定位置で係止されにくい。また、凹溝219よりもファスナーエレメント215が比較的小さいために、カバー部材213が横ずれしやすくなる。
【0005】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的は、ファスナー部材の使用による外観不良や異物感を生じさせることなく、カバー部材を基体表面へ簡単に取り付けできるとともに、基体に対して強固に固定可能なカバー部材取付構造体、及びカバー取付構造体のカバー取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記構成からなる。
(1) シート状のカバー部材と、該カバー部材によって表面が覆われる基体と、前記カバー部材を前記基体に取り付けるファスナー部材と、を備えるカバー取付構造体であって、
前記ファスナー部材は、
前記カバー部材の一端部に設けられ、前記一端部の端縁に沿って噛合頭部を有する多数のファスナーエレメントを備える第1エレメント列と、
前記第1エレメント列のファスナーエレメントに噛合可能な噛合頭部を有する多数のファスナーエレメントを備える第2エレメント列と、
を具備し、
前記基体は、その表面に沿って延設された凹溝を有し、
前記第1エレメント列と前記第2エレメント列のファスナーエレメントは、前記噛合頭部同士が噛合して前記凹溝に収容された状態で前記凹溝に係止されており、
前記凹溝該凹溝の長手方向に直交する幅方向の最小溝幅、前記凹溝に収容されたいずれか一方の前記ファスナーエレメントにおける前記幅方向の長さの1.6倍以上、1.9倍以下にされて、前記ファスナーエレメントが、前記凹溝に締まり嵌め状態にされたこと
を特徴とするカバー取付構造体。
) 前記凹溝は、前記最小溝幅よりも底面側にある最大溝幅寸法が、前記凹溝に収容されたいずれか一方の前記ファスナーエレメントにおける前記幅方向の長さの1.6倍以上、2.5倍以下であることを特徴とする()に記載のカバー取付構造体。
) 前記凹溝は、前記ファスナーエレメントの高さの0.5倍以上、1.5倍以下の溝深さを有することを特徴とする(1)又は(2)に記載のカバー取付構造体。
) 前記第1エレメント列のファスナーエレメントは、ファスナーテープに設けられ、前記ファスナーテープが前記カバー部材の前記一端部に取り付けられていることを特徴とする(1)乃至()のいずれか一つに記載のカバー取付構造体。
) 前記第2エレメント列のファスナーエレメントは、ファスナーテープに設けられ、前記ファスナーテープが前記カバー部材の前記一端部に取り付けられていることを特徴とする()に記載のカバー取付構造体。
) 前記第1エレメント列のファスナーエレメントは、前記カバー部材の前記一端部に直接取り付けられていることを特徴とする(1)又は(2)に記載のカバー取付構造体。
) 前記第2エレメント列のファスナーエレメントは、前記カバー部材の前記一端部に直接取り付けられていることを特徴とする()に記載のカバー取付構造体。
) 前記第2エレメント列は、前記カバー部材の前記第1エレメント列が設けられた前記一端部とは異なる位置の前記カバー部材の端部に設けられていることを特徴とする(1)乃至()のいずれか一つに記載のカバー取付構造体。
) 前記カバー部材は、前記基体の外周を包囲して配置され、前記一端部に対向する他端部に前記第2エレメント列が設けられ、前記第1エレメント列と前記第2エレメント列のファスナーエレメントが前記凹溝にそれぞれ係止されていることを特徴とする()に記載のカバー取付構造体。
10) 複数枚の前記カバー部材を備え、
前記基体は、前記複数枚のカバー部材の前記ファスナーエレメントに対応する前記凹溝が形成され、
同一位置の前記凹溝に、互いに異なるカバー部材の前記ファスナーエレメントがそれぞれ収容されていることを特徴とする(1)乃至()のいずれか一つに記載のカバー取付構造体。
11) 前記凹溝は、対向配置される溝側面の少なくとも一方に、開口端部から溝底面側に向けて前記幅方向の溝幅が縮小する傾斜面を有することを特徴とする(1)乃至(10)のいずれか一つに記載のカバー取付構造体。
12) 前記凹溝は、前記最小溝幅より広幅の溝底面を有することを特徴とする(1)乃至(11)のいずれか一つに記載のカバー取付構造体。
13) 前記基体は、自動車のステアリングホイールであり、
前記カバー部材は、前記ステアリングホイールの外側を覆うステアリングカバーであることを特徴とする(1)乃至(12)のいずれか一つに記載のカバー取付構造体。
14) (1)乃至(13)のいずれか一つに記載のカバー取付構造体のカバー取付方法であって、
前記凹溝の長手方向の一箇所で、前記第1エレメント列の一部のファスナーエレメントと前記第2エレメント列の一部のファスナーエレメントとを、前記噛合頭部同士が噛合して前記凹溝に収容された状態にする第1の工程と、
前記凹溝の長手方向の一箇所を起点として、前記カバー部材を前記凹溝に向けて押圧しながら、未噛合状態の残りのファスナーエレメントを、前記凹溝の延設方向に向けて前記噛合頭部同士が噛合状態となるように前記凹溝へ収容し、前記第1エレメント列と前記第2エレメント列のファスナーエレメントを前記凹溝に係止させる第2の工程と、
を含むことを特徴とするカバー取付構造体のカバー取付方法。
15) 前記第2の工程において、回転自在に支持された押圧ローラを、前記ファスナー部材上で前記凹溝に向けて押圧しながら前記凹溝の延設方向に沿って移動させ、前記ファスナー部材上で前記押圧ローラを転動させることを特徴とする(14)に記載のカバー取付構造体のカバー取付方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ファスナー部材の使用による外観不良や異物感を生じさせることなく、基体表面をカバー部材で覆うことができるとともに、カバー部材が基体表面に対してズレることなく強固に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】カバー取付構造体の分解斜視図である。
図2】カバー取付構造体のカバー部材を一部切断して、凹溝にファスナーエレメントが収容された状態を示す一部断面斜視図である。
図3図2のA−A線断面図である。
図4】(A),(B),(C)はカバー部材を基体へ取り付ける手順の一態様を示す工程説明図である。
図5】カバー部材の第1エレメント列と、カバー部材の第2エレメント列の各ファスナーエレメントが、凹溝に挿入される様子を模式的に示す説明図である。
図6図5のB−B線断面矢視図である。
図7】(A),(B),(C)はファスナーエレメントが凹溝に挿入される動作を段階的に示す説明図である。
図8】(A)はカバー部材の一端部に取り付けられたファスナーエレメントの噛合前の状態を示す断面図、(B)は噛合後のファスナーエレメントの状態を示す断面図である。
図9】(A)は断面矩形状の凹溝の断面図、(B)は開口端部から溝底面側に向けて溝幅が縮小する傾斜面が溝側面に形成された凹溝の断面図、(C)は開口端部における最小溝幅より広幅の溝底面を有する凹溝の断面図、(D)は溝側面が開口端部から形成される傾斜面と、溝深さ途中から溝幅が溝底面に向けて広がる傾斜面とを有する凹溝の断面図である。
図10】(A)〜(C)はファスナーエレメントのカバー部材への各取付形態を示す断面図である。
図11】カバー取付構造体の構成を適用したステアリングホイールの模式的な外観斜視図である。
図12図11のE−E線断面を含むリング部の一部分解斜視図である。
図13図11のE−E線断面を含むリング部の他の構成例を示す一部分解斜視図である。
図14】治具を用いて前述のステアリングホイールのリング部にカバー部材を取り付ける様子を示す説明図である。
図15】基体表面にカバー部材を取り付けた取付形態の他の例を示す断面図である。
図16】基体表面にカバー部材を取り付けた取付形態の他の例を示す断面図である。
図17】(A),(B),(C)は従来のファスナーを用いてカバー部材を基体に取り付ける構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<カバー取付構造体の基本構成>
まず、本発明のカバー取付構造体の基本構成を説明する。
図1はカバー取付構造体の分解斜視図、図2はカバー取付構造体のカバー部材を一部切断して、凹溝にファスナーエレメントが収容された状態を示す一部断面斜視図、図3図2のA−A線断面図である。
【0010】
図1に示すように、カバー取付構造体100は、シート状のカバー部材11A,11Bと、カバー部材11A,11Bによって表面が覆われる基体13と、カバー部材11A,11Bを基体に取り付けるファスナー部材15とを備える。本構成においては、ファスナー部材15としてコイル状ファスナーのファスナーエレメントを用いている。
【0011】
基体13は、合成樹脂、金属、木材等からなり、スライドファスナーの噛合わせ作業において支障を来たさない硬さを有していればよい。
【0012】
ファスナー部材15は、カバー部材11Aの一端部17Aに設けられる第1エレメント列19Aと、カバー部材11Bの一端部17Bに設けられる第2エレメント列19Bとを有する。第1エレメント列19Aは、カバー部材11Aの一端部17Aにおける端縁に沿って設けられ、第2エレメント列19Bは、カバー部材11Bの一端部17Bの端縁に沿って設けられる。第1エレメント列19A,第2エレメント列19Bは、それぞれ多数のファスナーエレメント21A,21Bを備える。すなわち、図1に開示された実施例によればファスナーエレメント21A、21Bは、後述するファスナーテープを使用せず、直接カバー部材11A、11Bに固定されている。
【0013】
基体13は、その表面に沿って凹溝23が延設される。図示例の凹溝23は、直線状の溝であって、少なくとも底面と、底面の両端から立ち上がる一対の側面を備える。また、凹溝23は長手方向垂直断面が矩形状に形成される。この凹溝23には、図2に示すように、カバー部材11A,11Bに設けられた第1エレメント列19A,第2エレメント列19Bが挿入される。これにより、ファスナー部材15が凹溝23に係止され、カバー部材11A,11Bが基体13の表面に取り付けられる。
【0014】
本明細書においては、凹溝23の長手方向をX方向、凹溝23の深さ(高さ)方向をZ方向、X方向とZ方向に直交する方向をY方向とする。凹溝23のY方向長さを単に「溝幅」と称する。なお、ファスナー部材15については、ファスナーエレメント21A,21Bが凹溝23に収容されていない場合であっても、凹溝23に収容された状態に準じて、ファスナーエレメント21A,21Bの延設方向をX方向と呼称することがある。
【0015】
第1エレメント列19Aと第2エレメント列19Bは、ポリアミドやポリエステル等の合成樹脂製モノフィラメントを捲きまわすことによってコイル状とし、コイル状に成形すると同時にエレメントの一部をスタンピングにより所定の間隔で押圧することにより、幅広の噛合頭部を形成したコイル状の連続エレメントである。このコイル状の連続エレメントは、カバー部材11A,11Bのエレメント取付部となる一端部17A,17Bにそれぞれ取り付けられることで、第1エレメント列19Aと第2エレメント列19Bとがカバー部材11A,11Bに一体に設けられる。
【0016】
更に具体的には、図3に示すように、第1エレメント列19A、第2エレメント列19Bは、コイル状の連続エレメントの内部に芯紐25A,25Bが挿通され、固定糸27によってカバー部材11A,11Bに縫い付けられる。この縫い付けは、固定糸27による例えば2本針3本糸の二重環縫いによってなされる。
【0017】
コイル状の連続エレメントは、多数の噛合頭部を有して構成されているが、本明細書では、個々の噛合頭部のそれぞれを、1つのファスナーエレメント21A(及び21B)の構成部位として定義する。したがって、コイル状の連続エレメントは、多数のファスナーエレメント21A(及び21B)から構成され、個々のファスナーエレメント21A(及び21B)に、1つの噛合頭部が形成されているものとする。但し、本発明で使用されるエレメントはコイル状連続エレメントに限らず、例えば複数の独立したエレメントがファスナーテープに沿って間欠的に一体射出成形されたような樹脂ファスナーであっても良い。また、複数の独立したエレメントがファスナーテープに沿って間欠的に加締め固定された金属ファスナーであってもよい。
【0018】
ファスナーエレメント21A(及び21B)は、Y方向の一端に噛合頭部29、他端に反転部31が形成され、これら噛合頭部29と反転部31との間を上脚部33と下脚部35で連結することでコイル状に形成される。第1エレメント列19Aのファスナーエレメント21Aと、第2エレメント列19Bのファスナーエレメント21Bとは、同一形状で反転配置されており、互いの噛合頭部29が交互に重なり合った状態に噛合される。
【0019】
<カバー取付構造体のカバー取付方法>
次に、カバー取付構造体100のカバー部材11A,11Bの取り付けの手順について説明する。
図4(A),(B),(C)はカバー部材11A,11Bを基体13へ取り付ける手順の一態様を示す工程説明図である。
本構成のカバー取付構造体100においては、カバー部材11A,11Bがファスナー部材15を介して接続され、接続されたファスナー部材15のファスナーエレメント21が基体13の凹溝23に収容される。これにより、カバー部材11A,11Bが基体13に取り付けられる。
【0020】
ファスナー部材15を凹溝23に挿入する際は、まず、図4(A)に示すように、ファスナー部材15の長手方向の一箇所(図示例では長手方向一端部)において、ファスナーエレメント21A,21Bを凹溝23に挿入する。つまり、第1エレメント列19Aの一部のファスナーエレメント21Aと第2エレメント列19Bの一部のファスナーエレメント21Bとを、噛合頭部同士を噛合させた状態で凹溝23に挿入する。このときのファスナーエレメント21A,21Bの凹溝23への挿入は、押圧部材39をファスナー部材15の上方から凹溝23に向けて押圧することで行ってもよく、手で押圧することで行ってもよい(第1の工程)。
【0021】
そして、ファスナー部材15上(凹溝23と反対側の表面側)に配置された押圧部材39を、凹溝23に向けて押圧しながら、凹溝の延設方向に沿って移動させる。すると、図4(B)に示すように、第1エレメント列19Aと第2エレメント列19Bのファスナーエレメント21A,21Bが、凹溝23に順次に収容される(第2の工程)。
【0022】
押圧部材39は、ファスナーエレメント21A,21Bを凹溝23に挿入した後に退避させることで(図4(C))、基体13にカバー部材11A,11Bが取り付けられたカバー取付構造体100が得られる。
【0023】
次に、図5図7を用いてファスナーエレメント21A,21Bが凹溝23に収容され、カバー部材11A,11Bが凹溝23に係止される様子を更に詳細に説明する。
【0024】
図5は、カバー部材11Aの第1エレメント列19Aと、カバー部材11Bの第2エレメント列19Bの各ファスナーエレメント21A,21Bが、凹溝23に挿入される様子を模式的に示す説明図である。また、図6図5のB−B線断面矢視図である。図5図6に示すP1〜P3は、第1エレメント列19Aと第2エレメント列19Bの噛合状態と凹溝23への挿入状態を段階的に示す領域を示している。P1は非噛合状態で凹溝23への未挿入状態の段階、P2は噛合開始状態で凹溝23への挿入途中の段階、P3は噛合状態で凹溝23への挿入状態の段階をそれぞれ示す。なお、図示例のカバー部材11A,11Bの端部は、一枚のカバー部材の端部同士であってもよく、それぞれ別体のカバー部材の端部であってもよい。
【0025】
図7(A),(B),(C)はファスナーエレメント21A,21Bが凹溝23に挿入される動作を段階的に示す説明図である。
P1の段階では、図7(A)に示すように、カバー部材11A,11Bに取り付けられた第1エレメント列19Aと第2エレメント列19Bの各ファスナーエレメント21A,21Bが凹溝23の上方に配置され、前述の押圧部材39により凹溝23に向けて押圧される。
【0026】
P2の段階では、図7(B)に示すように、押圧部材39による押圧によって、各ファスナーエレメント21A,21Bの一部が凹溝23内に挿入されようとする。このとき、ファスナーエレメント21A,21Bの反転部31が、凹溝23の側面に押し当てられる。すると、ファスナーエレメント21A,21Bの間隔が狭められる方向に寄せられて、噛合頭部29同士が噛合し始める。また、カバー部材11A,11Bもファスナーエレメント21A,21Bと共に互いに引き寄せられ、カバー部材11A,11Bの端縁間の隙間が狭められる。
【0027】
そして、P3の段階では、図7(C)に示すように、ファスナーエレメント21A,21Bが押圧部材39による押圧によって更に凹溝23内に押し込まれ、ファスナーエレメント21A,21Bの噛合頭部29同士が噛合される。また、ファスナーエレメント21A,21Bの厚み全体が凹溝23に収容される。このとき、カバー部材11A,11Bは、端縁同士が近接あるいは当接して、基体13を実質的に隙間なく覆うようになる。
【0028】
上記のカバー取付構造体100によれば、カバー部材11A,11Bの端部に取り付けられたファスナーエレメント21A,21Bを、基体13の凹溝23に挿入するだけで、カバー部材11A,11Bを基体13の表面に簡単に取り付けできる。ファスナーエレメント21A,21Bは、噛合頭部29同士を噛合させた状態で凹溝23に収容されると、凹溝23との摩擦抵抗等によって容易に抜け出ることがない。すなわち、ファスナーエレメント21A,21Bは、好ましくは凹溝23に締まり嵌め状態で装着される。ファスナーエレメント21A,21Bを、このような締まり嵌め状態にするためには、凹溝23の寸法をファスナーエレメント21A,21Bのサイズに応じて設定する必要がある。
【0029】
<凹溝とファスナーエレメントとの寸法関係>
次に、凹溝23とファスナーエレメント21A,21Bとの寸法関係について説明する。
図8(A)はカバー部材11A,11Bの一端部に取り付けられたファスナーエレメント21A,21Bの噛合前の状態を示す断面図、図8(B)は噛合後のファスナーエレメント21A,21Bの状態を示す断面図である。各図に示すように、第1エレメント列19A,第2エレメント列19Bの延設方向(紙面垂直方向であるX方向)に直交する幅方向(Y方向)のファスナーエレメント21A,21Bの最大幅をL、カバー部材11A,11Bのファスナー部材15の取り付け面11aからの最大高さ(Z方向高さ)をLとする。
【0030】
また、図8(B)に示す、ファスナーエレメント21A,21Bの噛合頭部29同士が噛合した状態(且つ、ファスナーエレメント21A、21Bに負荷が加わっていない状態)において、上記幅方向(Y方向)の合計幅をLとする。ファスナーエレメント21A,21Bの合計幅Lは、一方のファスナーエレメント21A(又は21B)の最大幅Lの1.7〜1.9倍である。また、ファスナーエレメント21A,21Bを弾性変形内で幅方向に最大限押し縮めた場合には、合計幅Lは最大幅Lの1.6倍程度となる。
【0031】
凹溝23は、図3に示すように、深さ方向に掘られた形状であり、底面aと、底面23aから立ち上がる一対の側面23bを備える。側面23bの上辺は基体13の上面との境界線となる。また、図示はされていないが、基体13は、その使用形態によって凹溝23の延設方向の両端側に備える前面及び後面を備えていてもよい。前面及び後面は、底面23aから垂直に立ち上がり、且つ一対の側面23bの間に配置されている。凹溝23を、上記ファスナーエレメント21A,21Bの寸法で表すと、凹溝23の幅方向(Y方向)のうち、最も小さい幅を有する側壁間の寸法(最小溝幅L)は、一方のファスナーエレメント21A(又は21B)の最大幅Lの1.6倍以上、2倍未満である。最小溝幅Lが1.6倍未満であると、ファスナーエレメント21A,21Bを凹溝23に挿入する際、塑性変形を伴うことになり、ファスナーエレメント21A,21Bが損傷することになる。一方、最小溝幅Lが2倍以上であると、ファスナーエレメント21A,21Bの噛合頭部29同士の噛合が外れる虞があり、その場合、カバー部材11A,11Bの凹溝23に固定できなくなる。なお、最小溝幅Lの最小値「1.6倍」とは、ファスナーエレメントが噛合した状態においてファスナーエレメント21A,21Bを弾性変形内で幅方向に最大限押し縮めた場合を数値的に表したものである。よって、最小溝幅Lの最小値の定義を換言するとすれば、「ファスナーエレメント21A、21Bを噛合わせた状態で凹溝内に挿入及び収納可能な程度の寸法」となる。
【0032】
一方、最小溝幅Lの最大値「2倍未満」とは、ファスナーエレメントが噛合が解除された状態においてファスナーエレメント21A,21Bが締まり嵌め状態とならない最低値である。よって、最小溝幅Lの最大値の定義を換言するとすれば、「ファスナーエレメント21A,21Bが締まり嵌め状態となりうる最低寸法」となる。
【0033】
また、凹溝23の基体の外表面から底面までの寸法(溝深さL)は、ファスナーエレメント21A,21Bの最大高さLに対して0.5倍以上、1.5倍以下であることが好ましい。凹溝23の溝深さLが0.5倍未満であると、凹溝23にファスナーエレメント21A,21Bを係止できない場合がある。一方、溝深さLが1.5倍を超えると、ファスナーエレメント21A,21Bの沈み代が大きくなり、カバー部材11A,11Bの弛みによる外観不良や、外側から押圧した場合の異物感を生じさせることもある。
【0034】
<凹溝の溝断面形状>
図9(A)〜(D)は凹溝23の種々の溝断面形状を示す断面図である。なお説明の便宜上、共通する部分は同じ記号を用いて説明する。
凹溝23は、上述した図9(A)に示すように一対の側面23bがそれぞれ平坦で、互いに平行に延設された断面矩形状の溝に限らない。開口端部43から底面23a側に向けて溝幅が縮小する傾斜面が側面23bに形成されていてもよい。
【0035】
例えば、図9(B)に示す凹溝23Aのように、底面23aと、底面23aから垂直方向(Z方向)に平行に延設された一対の溝側面41とを有し、開口端部43から底面23a側に向けて溝幅が縮小する第1の傾斜面47が溝側面41に形成されたものが挙げられる。
【0036】
第1の傾斜面47は、対向配置される一対の溝側面41の双方に形成する他に、いずれか一方のみに形成してもよい。この場合、第1の傾斜面47がファスナーエレメント21A,21Bの溝挿入時におけるガイドとなり、ファスナーエレメント21A,21Bを円滑に凹溝23へ導くことができる。
なお、図9(B)に示す構成例の場合、最小溝幅Lは、一対の第1の傾斜面47の下端間の寸法(平行に延びる一対の溝側面41同士の間)となる。
【0037】
また、凹溝は、開口端部43における最小溝幅Lより広幅の溝底面45を有していてもよい。例えば図9(C)に示す凹溝23Bのように、一対の側面を、開口端部43から溝底面45に向けて間隔が徐々に拡がるような第2の傾斜面48とし、溝底面45の溝幅Lが最小溝幅Lより広い断面台形形状の凹溝23Bとすることができる。つまり、最小溝幅Lよりも溝底面側に最大溝幅となる溝底面45を有する。その場合、最小溝幅Lの垂直方向(Z方向)の範囲が狭くなり、ファスナーエレメント21A,21Bの凹溝23への挿入抵抗を軽減できる。
【0038】
なお、図9(C)に示す構成例の第2の傾斜面48は、溝底面45まで連続的に延設させないで、第2の傾斜面48の下端と溝底面45との間に一対の平行に延びる側壁を配置してもよい。
【0039】
更に、凹溝の溝側面が、開口端部43から底面23a(45)に向けて形成される複数の傾斜面を有していてもよい。例えば図9(D)に示すように、開口端部43から形成される第3の傾斜面50と、溝深さ途中から溝幅が溝底面46に向けて広がる第4の傾斜面52とを有するものが挙げられる。この凹溝23Cは、第3の傾斜面50が、開口端部43から第4の傾斜面52の上端の凸部51まで延設され、第4の傾斜面52が、第3の傾斜面50の下端(凸部51)から溝底面46に向けて延設される。
【0040】
また、凹溝23Cは、溝底面46から垂直方向(Z方向)に平行に延設された一対の側壁53を備える。つまり、第4の傾斜面52は、一対の側壁53の上端54と第3の傾斜面50の下端(前記の上端54)との間に形成される。
【0041】
そして、第3の傾斜面50と第4の傾斜面52との接続位置となる凸部51同士の間隔が最小溝幅Lとなる。この凹溝23Cの形状によれば、ファスナーエレメント21A,21Bが第3の傾斜面50に沿って凹溝23C内に導かれ、凸部51を低抵抗で通過する。そして、凸部51を通過したファスナーエレメント21A,21Bは、凹溝23C内の凸部51より溝底面46側に収容される。凸部51は、凹溝23C内での深さ位置を適宜に設計変更が可能であるため、ファスナーエレメント21A,21Bを、上脚部33が溝底面46に当接し、反転部31(図3参照)の下脚部35側の部位が凸部51と当接する位置に固定できる。これにより、ファスナーエレメント21A,21Bを凹溝23C内の定位置に確実に支持させることができ、カバー部材11A,11Bを、より安定して基体12に装着することができる。
【0042】
なお、図9(C)に示す凹溝23Bと、図9(D)に示す凹溝23Cの場合、溝底面45,46の幅寸法(最大溝幅寸法)は、一方のファスナーエレメント21A(又は21B)の最大幅Lの1.6倍以上、2.5以下とする。最大溝幅寸法をこの範囲に設定することにより、ファスナーエレメントが不用意に外れることなく、凹溝23B,23C内に良好に係止できる。
【0043】
<ファスナーエレメントのカバー部材への取り付け形態>
図10(A)〜(C)は、ファスナーエレメント21A,21Bのカバー部材11A,11Bへの各取り付け形態を示す断面図である。
ファスナーエレメント21A,21Bは、図3に示すようにカバー部材11A,11Bの一端部に直接取り付ける他に、図10(A)〜(C)に示す形態でカバー部材11A,11Bに取り付けてもよい。
【0044】
図10(A)は、ファスナーエレメント21A,21Bが帯状のファスナーテープ55A,55Bの裏面に取り付けられた形態を示す。ファスナーエレメント21A,21Bが設けられたファスナーテープ55A,55Bは、その表面とカバー部材11A,11Bの裏面とを重ね合わせた状態で、接着、縫製あるいはその他の固定手段によって取り付けられる。この場合、市販製品のファスナーを使用できるため、加工が簡単となり、個々のファスナーエレメント21A,21Bのカバー部材11A,11B側への接合強度も高められる。
【0045】
図10(B)は、ファスナーエレメント21A,21Bが、U字型に曲げられて折り返されたファスナーテープ55A,55Bに取り付けられ、このファスナーテープ57A,57Bが、カバー部材11A,11Bに取り付けられた形態を示す。このファスナーテープ57A,57Bは、コンシール(登録商標)タイプのファスナーのファスナーテープである。このため、ファスナーテープ57A,57Bのファスナーエレメント21A,21Bの取り付け側とは反対側の外側表面からは、ファスナーエレメント21A,21Bが見えなくなる。
【0046】
図10(C)は、ファスナーエレメント21A,21Bが、カバー部材11A,11Bと同一の材料、又はカバー部材11A,11Bに近い質感、色、模様、等の特性を有する装飾テープ59A,59Bに取り付けられる。装飾テープ59A.59Bは、カバー部材11A,11Bと同じか殆ど同じ厚みを有し、カバー部材11A,11Bの端部に取り付けられる。この構成によれば、ファスナーエレメント21A,21Bが装飾テープ59A,59Bを介してカバー部材11A,11Bに取り付けられる。よって、カバー部材11A,11Bと基体13との間に隙間が生じず、カバー部材11A,11Bの弛みによる外観不良をなくし、外側から押圧した場合の異物感をより小さくできる。
【0047】
<カバー取付構造体のステアリングホイールへの適用例>
次に、上記したカバー取付構造体100の実際の適用例について説明する。まず、カバー取付構造体を自動車等のステアリングホイールに取り付けられるホイールカバーに適用した例を示す。
【0048】
図11は、カバー取付構造体の構成を適用したステアリングホイールの模式的な外観斜視図である。
ステアリングホイール61は、ボス部63と、ボス部63から径方向に延出されるスポーク部65と、スポーク部65の径方向外側に連結されるリング部67とを有する。
【0049】
図12は、図11のE−E線断面を含むリング部の一部分解斜視図である。リング部67は、鋼材からなる芯材69と、芯材69の外側を覆うウレタン等の合成樹脂からなる円環状のホイール本体71と、ホイール本体71の外側を覆うシート状のステアリングカバーであるカバー部材73と、を備える。
【0050】
基体である円環状のホイール本体71の内周部には、円周方向に沿って凹溝75が形成される。カバー部材73の互いに対向する一対の端部79A,79Bには、それぞれファスナーテープ77A,77Bが取り付けられる。ファスナーテープ77Aは、長手方向に沿って多数のファスナーエレメント81が配置された第1エレメント列83Aを有し、ファスナーテープ77Bは、長手方向に沿って多数のファスナーエレメント81が配置された第2エレメント列83Bを有する。ファスナーテープ77A,77Bは、第1エレメント列83Aと第2エレメント列83Bの多数のファスナーエレメント81が、カバー部材73の端部79A,79Bに沿って直線状に配置されるように、カバー部材73の内側面に取り付けられる。
【0051】
そして、カバー部材73は、一端部79Aに設けられた第1エレメント列83Aと、他端部79Bに設けられた第2エレメント列83Bとが、ホイール本体71の凹溝75に沿って配置されるように、ホイール本体71に巻き付けられる。これにより、カバー部材73がホイール本体71の外周を包囲して配置される。
【0052】
上記構成のステアリングホイール61によれば、ホイール本体71にカバー部材73を巻き付け、一対の端部79A,79Bの第1エレメント列83A、第2エレメント列83Bの各ファスナーエレメント81を凹溝75に挿入することで、各ファスナーエレメント81が凹溝75に収容される。凹溝75とファスナーエレメントの形状は、前述した寸法関係にされている。そのため、各ファスナーエレメント81が、図2に示すように凹溝75に挿入されると、噛合頭部29が互いに噛合した状態となる。この噛合状態で、各ファスナーエレメントが凹溝75に係止され、カバー部材73がホイール本体71に固定される。
【0053】
また、ファスナーエレメント81は、通常のスライドファスナーに使用されるようなスライダーを利用する必要がないため、凹溝75を成形する側壁と、凹溝に収納されるファスナーエレメント81の間にスライダー挿通のための隙間を設けていない。そのため、カバー部材73を握り持っても、カバー部材73が凹溝75の位置で内側に窪むことや横ズレを生じることがない。したがって、カバー部材73に皺や弛みが生じることがない。そして、カバー部材73は、カバー本体に張力を持たせながら端部を凹溝75に固定することで、カバー本体をホイール本体71の表面に密着させた状態に張り付けでき、外観不良をなくすことができる。
【0054】
更に、カバー部材73は、一対の端部79A,79Bが互いに付き合わされて、カバー表面が面一となる。これによっても、カバー部材73の継ぎ目を目立たなくすることができ、外観不良がなくなる。また、カバー表面に突起部が生じないため、手で触った際の異物感は殆ない。
【0055】
また、カバー部材73は、ファスナーエレメント81を、噛合頭部同士の噛合を解除して凹溝75から引き出すことにより、ファスナーエレメント81や凹溝75に損傷を与えることなくホイール本体71から取り外しできる。よって、カバー部材73の交換が容易に行える。
【0056】
そして、カバー部材73に設ける第1エレメント列83A、第2エレメント列83Bは、ファスナーの開き止めとなる下止や上止を設けなくても、凹溝75の対面する一対の溝壁面にファスナーエレメント81が挟持されるため、各エレメント列83A,83Bが不用意に開く虞はない。よって、開閉機構の構造を簡単化できる。
【0057】
なお、カバー部材73のスポーク部65との接続部については、上記構成のカバー接続構造体とすることもできるが、固定糸による縫合や接着剤を用いた接着等、従来周知の適宜な接合形態で接合することができる。
【0058】
図13図11のE−E線断面を含むリング部の他の構成例を示す一部分解斜視図である。ここでは、図12と同一の部材や部位に対しては同一の符号を付与することで、その説明を省略又は簡単化する。
【0059】
本構成のリング部67Aは、ホイール本体71の外周を覆うカバー部材73が設けられる。カバー部材73の端部79A,79Bには、図10(C)に示すカバー部材11A,11B及び装飾テープ59A,59Bと同様に、カバー部材73と同じ材質の装飾テープ85A,85Bの一端部85a,85bが端面同士を突き合わせて取り付けられる。
【0060】
この装飾テープ85A,85Bは、図示例においては、カバー部材73の端部79A,79Bとステッチ87をかけて縫い合わせされている。カバー部材73と装飾テープ85A,85Bとの接合は、ステッチ87を設ける以外にも、接着剤による接合や溶着等、他の方式であっても構わない。この構成によれば、ファスナーテープが存在しないため、カバー部材73とホイール本体71との間を、段差なく密着させることができ、突部のない滑らかな表面に仕上げることができる。
【0061】
<治具を用いたカバー取付構造体へのカバー部材の取り付け>
図14は、治具を用いて前述のステアリングホイール61のリング部67にカバー部材73を取り付ける様子を示す説明図である。
治具89は、U字部を有した一対のフレーム93,95を有する。一対のフレーム93,95は、U字部93a,95aの一端側に形成された支軸90で連結され、支軸90を中心とする回転動作によってU字部93a,95aの他端側が開閉される。フレーム93,95は、閉状態において矩形状の環状領域が形成される。この環状領域にリング部67を挟んだ状態で、U字部93a,95aの他端側が図示しないボルト等の締結部材によって閉じられる。
【0062】
環状領域を画成するフレーム93のU字部93aには、リング部67の凹溝75に対面して、リング部67を押圧しながら転動する押圧ローラ91が回転自在に支持される。フレーム95のU字部95aには、リング部67を挟んだ押圧ローラ91と対向する位置にバックローラ99が回転自在に支持される。この治具89は、フレーム93,95は、U字部93a,95aが閉じられた際に、押圧ローラ91とバックローラ99によってリング部67が径方向に押圧されるように構成される。
【0063】
上記構成の治具89を用いて、リング部67にカバー部材73を取り付ける場合、まず、リング部67のホイール本体71に形成した凹溝75の長手方向の一箇所に、図12に示すカバー部材73に設けられた第1エレメント列83Aと第2エレメント列83Bのファスナーエレメント81の一部を挿入して、各ファスナーエレメント81の噛合頭部同士が噛合させる。これにより、噛合頭部同士が噛合された一部のファスナーエレメント81が凹溝75に収容させる。
【0064】
次に、この凹溝75に収容された噛合頭部同士の噛合されたファスナーエレメント81の直上に、押圧ローラ91を配置してフレーム95を閉じる。そして、この噛合されたファスナーエレメント81の直上を起点として、押圧ローラ91を配置し、カバー部材73を凹溝75に向けて押圧する。そして、押圧ローラ91を、この押圧状態を維持しながら、凹溝75の延設方向に向けてリング部67と相対移動させる。これにより、押圧ローラ91は、未噛合状態の残りのファスナーエレメント81を凹溝75に向けて押圧しながら転動し、ファスナーエレメント81の噛合頭部同士を噛合状態にして凹溝75に収容させる。
【0065】
治具89とリング部67との相対移動は、治具89をリング部67に対して移動させてもよく、リング部67を治具89に対して移動させてもよい。また、第1エレメント列83Aの一部のファスナーエレメント81と、第2エレメント列83Bの一部のファスナーエレメント81とを、凹溝75に挿入することで噛合頭部同士を噛合させてもよく、一部のファスナーエレメント81の噛合頭部同士を予め噛合させた後に、凹溝75に挿入してもよい。
【0066】
凹溝75に挿入する動作でファスナーエレメント81の噛合頭部同士を噛合させる場合は、組み付け工程を簡単にでき、噛合頭部同士を噛合させた後で凹溝75に挿入する場合は、噛合させるファスナーエレメント81の位置を正確に定めやすくなる。
【0067】
上記構成の治具89の構成は一例であって、これに限らない。例えば、ローラやへら等を凹溝75上のカバー部材に押し当てて、ファスナーエレメント81を凹溝75に押し込むものであってもよい。
【0068】
<カバー取付構造体の他の適用例>
次に、カバー取付構造体の他の適用例を説明する。
上記したカバー取付構造体は、ステアリングホイールに限らず、基体表面をカバー部材で覆う構造体であれば適用可能である。他の適用例として、例えば、次の応用事例が挙げられる。
【0069】
(1)椅子の座部や背もたれ部に取り付けるシートカバー
椅子の座部や背もたれ部を覆う生地の端部等に、本構成のカバー取付構造体を適用することで、椅子の生地を交換可能な構成にできる。この場合、カバー部材である生地を座部や背もたれ部に巻き付けることもできるが、カバー部材の取り付け部位によっては、複数枚のカバー部材を組み合わせて用いる方がよい場合もある。その場合には、図15に示すように、一枚のカバー部材111に設けた一方のエレメント列113を凹溝115に挿入し、他のカバー部材117のエレメント列119と噛合頭部同士を噛合させる。また、他方のエレメント列121を凹溝123に挿入し、他のカバー部材125のエレメント列127と噛合頭部同士を噛合させる。つまり、一枚のカバー部材111の両端における側縁に沿って、ファスナーエレメントを取り付ける。続いて、異なるカバー部材117の側縁に沿って取り付けられたファスナーエレメントを、先ほどのカバー部材111のファスナーエレメントに対して対向して配置し、特定の凹溝115に収容させる。また、異なるカバー部材125の側縁に沿って取り付けられた別のファスナーエレメントが、カバー部材111の別のファスナーエレメントに対向して配置し、先ほどの凹溝115とは異なる位置に備える別の特定の凹溝123に収容される。これにより、一枚のカバー部材111が異なる位置の凹溝115,123に固定され、各カバー部材111,117,125によって基体128の表面が覆われる。換言すれば、同一位置の凹溝115,123には、互いに異なるカバー部材111,117,125のファスナーエレメントがそれぞれ収容される。
【0070】
(2)自動車のルーフライニング、フロントピラーやセンタピラー等のピラーライニング、ドアやアームレストに設けるライニング
例えば、自動車のルーフライニング(カバー部材)においては、天井面に設けたアシストグリップの周辺のライニングが手との接触により汚れることがある。そこで、ルーフ面のアシストグリップ周辺を取り囲む所定の領域を、本構成のカバー取付構造体として、ライニングを交換可能にする。
【0071】
つまり、図16に模式的に示すように、ライニング129で覆われる基体131の一部に、ライニング交換可能にする領域の外縁に対応させて凹溝133を形成する。この凹溝133に沿ってエレメント列135を設けておく。ライニング129は、凹溝133の外側の領域を覆って設けられ、凹溝の内側の領域は開口となっている。また、ライニング129とは別体に用意され、環状の凹溝133で囲まれる形状を有するライニング片137は、その端部にエレメント列139が設けられる。このライニング片137を、エレメント列139を凹溝133に挿入し、凹溝133側のエレメント列135と噛合頭部同士を噛合させる。これにより、ライニング片137がライニング129の開口に交換自在に取り付けできる。上記同様に、ピラーライニング、ドアやアームレストに設けるライニングについても、容易に交換可能な構成にできる。
【0072】
(3)建築物の壁面や天井面に設ける壁紙、床面に敷設するカーペット
住宅や店舗をはじめ、駅や病院等の公共施設等、建築物の屋内外の壁面、天井面、床面にも本構成のカバー取付構造体を適用できる。例えば、壁面に設ける壁紙を、壁全体、又は部分的に交換することで、特に汚れが目立つ部位を新調することや、壁面を所望の色、模様、材質の異なるもの等に変更することを自由に行える。カバー部材の交換は、前述の図15図16に示すカバー部材のように着脱自在としてもよく、一枚又は複数枚のカバー部材により、基体表面の一部又は全体を覆うようにしてもよい。
【0073】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0074】
上記説明した第1エレメント列、第2エレメント列は、コイル状の連続エレメントであるが、これに限らず、スライダーを用いずに噛合頭部同士が噛合可能なファスナーエレメントであればよい。例えば、合成樹脂を用いた射出成形によって、一対のファスナーテープ又はカバー部材の対向側縁に、射出タイプのファスナーエレメントを取り付けた合成樹脂製のエレメント列であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
11A,11B カバー部材
11a 取り付け面
13 基体
15 ファスナー部材
17A、17B 一端部
19A 第1エレメント列
19B 第2エレメント列
21A、21B ファスナーエレメント
23 凹溝
29 噛合頭部
39 押圧部材
41 溝側面
43 開口端部
45 溝底面
47 第1の傾斜面(傾斜面)
50 第3の傾斜面(傾斜面)
51 凸部
55A,55B,57A,57B ファスナーテープ
59A,59B,85A、85B 装飾テープ
61 ステアリングホイール
71 ホイール本体
73 カバー部材
75 凹溝
77A,77B ファスナーテープ
79A,79B 端部
81 ファスナーエレメント
91 押圧ローラ
100 カバー取付構造体
111,117,125 カバー部材
113,119,121,135,139 エレメント列
115,123,133 凹溝
128,131 基体
137 ライニング片(カバー部材)
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