特許第6530858号(P6530858)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6530858弁体を有する管継手部材およびそれに用いられるコイルバネ
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  • 特許6530858-弁体を有する管継手部材およびそれに用いられるコイルバネ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6530858
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】弁体を有する管継手部材およびそれに用いられるコイルバネ
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/367 20060101AFI20190531BHJP
【FI】
   F16L37/367
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-510663(P2018-510663)
(86)(22)【出願日】2017年4月6日
(86)【国際出願番号】JP2017014386
(87)【国際公開番号】WO2017175832
(87)【国際公開日】20171012
【審査請求日】2018年4月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-77030(P2016-77030)
(32)【優先日】2016年4月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】井本 裕樹
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4912375(JP,B2)
【文献】 特開平9−203472(JP,A)
【文献】 特開昭63−88395(JP,A)
【文献】 実開昭49−100222(JP,U)
【文献】 国際公開第2005/089482(WO,A2)
【文献】 英国特許出願公開第2224334(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/367
F16K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路、及び該流体通路の内周面に形成された円環状のバネ嵌合溝を有する筒状の継手本体と、
該流体通路内に配置され、該流体通路を閉止する閉止位置と該流体通路を開放する開放位置との間で該流体通路の長手軸線の方向に変位可能とされた弁体と、
線材を螺旋状に巻いて形成され、該継手本体と該弁体との間に配置されて該弁体を該閉止位置に向かって付勢するコイルバネと、を備える管継手部材であって、
該コイルバネが、
該流体通路の内径よりも大きな外径を有し、該バネ嵌合溝に嵌合して固定される嵌合部と、
該嵌合部に連接し、該バネ嵌合溝に嵌合された状態の該嵌合部の内径よりも大きい外径を有する係止部と、
該弁体を支持する弁支持部と、
該係止部と該弁支持部との間に延在し、該弁体が該閉止位置と該開放位置との間で変位したときに該長手軸線の方向で伸縮する伸縮部と、
を有する、管継手部材。
【請求項2】
該係止部が、該嵌合部に該長手軸線の方向で隣接している、請求項1に記載の管継手部材。
【請求項3】
該係止部が、該線材を該長手軸線の方向で互いに隣接するように複数回巻いて形成されている、請求項1又は2に記載の管継手部材。
【請求項4】
該係止部の外周面が該流体通路の内周面に接触しており、
該伸縮部の外径が該係止部の外径よりも小さくされ、該伸縮部と該流体通路の内周面との間に隙間が形成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の管継手部材。
【請求項5】
該伸縮部の該外径が該係止部の内径よりも大きくされた、請求項4に記載の管継手部材。
【請求項6】
該バネ嵌合溝の深さが、該コイルバネを構成する該線材の直径よりも小さい、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の管継手部材。
【請求項7】
該弁体が、該コイルバネの側に突出した円柱状のバネ支持部を有し、
該コイルバネの該弁支持部が、該線材を該バネ支持部の外周面に沿って該長手軸線の方向で隣接して複数回巻かれて形成されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の管継手部材。
【請求項8】
該伸縮部が該長手軸線に沿って略同一の直径を有するようにされ、該弁支持部が該伸縮部よりも小径とされ、該コイルバネが該弁支持部と該伸縮部とを繋ぐ連結部を有しており、
該連結部が、該長手軸線の方向から見て、該弁支持部から径方向外側に延びて該伸縮部の一部と重なるように湾曲して延在する第1部分と、該第1部分から該弁支持部の一部と重なるように延在する第2部分と、該第2部分から該伸縮部の別の一部と重なるように湾曲して延在する第3部分と、を有し、
該コイルバネが該長手軸線の方向で圧縮されたときに、該連結部の該1部分と該第3部分とが該伸縮部に当接し、該第2部分が該弁支持部に当接して、該弁支持部が該連結部を介して該伸縮部に支持されるようにされた、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の管継手部材。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の管継手部材と、該管継手部材と取り外し可能に連結される対応管継手部材と、を備える管継手であって、
該管継手部材と該対応管継手部材とが連結されたときに、該管継手部材の該弁体が該対応管継手部材によって押されて該閉止位置から該開放位置に変位するようにされた、管継手。
【請求項10】
流体通路内に設定され、該流体通路内に該流体通路の長手軸線の方向で変位可能に設定されている弁体を該流体通路が開放される開放位置から該流体通路が閉止される閉止位置に向かって付勢するためのコイルバネであって、
流体通路の内周面よりも大きな外径を有し、該内周面に形成されている円周状のバネ嵌合溝に嵌合して該流体通路に固定される嵌合部と、
該嵌合部に連接し、該バネ嵌合溝に嵌合された状態の該嵌合部の内径よりも大きい外径を有する係止部と、
弁体を支持する弁支持部と、
該係止部と該弁支持部との間に延在し、該係止部の内径よりも大きい外径を有していて、該弁体が該閉止位置と該開放位置との間で変位したときに該長手軸線の方向で伸縮する伸縮部と、
を有する、コイルバネ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体を有する管継手部材、およびそれに用いられるコイルバネに関する。
【背景技術】
【0002】
流体通路を有する筒状の継手本体と、流体通路内に配置されて該流体通路を開閉する弁体と、流体通路を閉止する閉止位置に向かって弁体を付勢するコイルバネとからなる、弁機構を有する管継手部材が知られている。このような弁機構を有する管継手部材においては、通常、コイルバネを継手本体内に取り付けるために、例えば特許文献1にある管継手のように継手本体を2つの部材に分割するか、又は例えば特許文献2の図1乃至図9に示される管継手のようにコイルバネの一端を支持するための部材を継手本体に取り付けるようにしており、構造が複雑になっている。
【0003】
このような問題を解決するものとして、例えば特許文献2の図16及び図17には、継手本体の内周面に円環状の溝を設け、コイルバネに他の部分よりも拡径した部分を設けて、コイルバネの拡径部分を継手本体の円環状の溝に嵌合することによりコイルバネを継手本体に取り付けるようにしたものがある。この場合、コイルバネの拡径部分は径方向内側に力を加えることで縮径させることができるため、流体通路における該拡径部分よりも径が小さい部分を通して流体通路内に挿入することができる。したがって、上述のように継手本体を分割したり、コイルバネを支持するための別の部材を継手本体に取り付けたりする必要がなくなって、構造を単純にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4798510号公報
【特許文献2】特許第4912375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような拡径部分を有するコイルバネは、流体通路内を流体が高速に流れたときに弁体が流体によっておされて該コイルバネに過大な力が作用した場合に、コイルバネの一部が拡径部分の内側を通過するように大きく変位して、その部分において塑性変形を起こしてしまう虞がある。また、そのように大きな変形が生じた場合には、拡径部分が該変形した部分によって内側に引っ張られて、溝から外れてしまう虞もある。
【0006】
そこで本発明は、拡径した嵌合部を流体通路のバネ嵌合溝に係止することによりコイルバネを取り付けるようにした管継手部材において、弁体に大きな力が作用してもコイルバネが塑性変形を起こしたり、継手本体から外れてしまったりすることがないようにされた管継手部材、該管継手部材とそれに対応する管継手部材からなる管継手、及びそれらに用いられるコイルバネを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、
流体通路、及び該流体通路の内周面に形成された円環状のバネ嵌合溝を有する筒状の継手本体と、
該流体通路内に配置され、該流体通路を閉止する閉止位置と該流体通路を開放する開放位置との間で該流体通路の長手軸線の方向に変位可能とされた弁体と、
線材を螺旋状に巻いて形成され、該継手本体と該弁体との間に配置されて該弁体を該閉止位置に向かって付勢するコイルバネと、を備える管継手部材であって、
該コイルバネが、
該流体通路の内径よりも大きな外径を有し、該バネ嵌合溝に嵌合して固定される嵌合部と、
該嵌合部に連接し、該バネ嵌合溝に嵌合された状態の該嵌合部の内径よりも大きい外径を有する係止部と、
該弁体を支持する弁支持部と、
該係止部と該弁支持部との間に延在し、該弁体が該閉止位置と該開放位置との間で変位したときに該長手軸線の方向で伸縮する伸縮部と、
を有する、管継手部材を提供する。
【0008】
当該管継手部材においては、嵌合部を継手本体のバネ嵌合溝に嵌合させることによりコイルバネを継手本体に固定するようになっているため、継手本体の構造を単純なものとすることができるとともに、コイルバネの継手本体への取り付けも容易に行うことができる。また、このように容易に取り付けられる構成としながらも、コイルバネが、バネ嵌合溝に嵌合された状態の嵌合部の内径よりも大きい外径を有する係止部を有しているため、弁体が流体から大きな力を受けて該コイルバネが大きく圧縮されたときに係止部が嵌合部に係止されて支持されるようになり、嵌合部に連接する係止部が嵌合部を通過して大きく変形することが防止される。さらに、嵌合部が係止部によって押えられるため、嵌合部に径方向内側への力は作用せず、したがって嵌合部が縮径してバネ嵌合溝から外れることも防止される。
【0009】
好ましくは、該係止部が、該嵌合部に該長手軸線の方向で隣接しているようにすることができる。
【0010】
さらに好ましくは、該係止部が、該線材を該長手軸線の方向で互いに隣接するように複数回巻いて形成されているようにすることができる。
【0011】
係止部をこのような構成とすることにより、係止部の剛性が高まり、嵌合部との係止状態をより安定させることが可能となる。
【0012】
好ましくは、
該係止部の外周面が該流体通路の内周面に接触しており、
該伸縮部の外径が該係止部の外径よりも小さくされ、該伸縮部と該流体通路の内周面との間に隙間が形成されているようにすることができる。
【0013】
係止部の外周面が流体通路の内周面に接触していることにより、継手本体に対するコイルバネの姿勢を安定させることが可能となる。一方で伸縮部は流体通路の内周面と接触しないようになっているため、伸縮部の伸縮が妨げられず、弁体を付勢する力を安定した状態に維持することが可能となる。
【0014】
好ましくは、該伸縮部の該外径が該係止部の内径よりも大きいようにすることができる。
【0015】
このような構成により、長手軸線の方向で見て、伸縮部は係止部と重なりを有することになり、コイルバネが大きく圧縮された場合であっても伸縮部が係止部により支持されて、係止部を通過して大きく変形することが防止される。
【0016】
好ましくは、該バネ嵌合溝の深さが、該コイルバネを構成する該線材の直径よりも小さいようにすることができる。
【0017】
通常、コイルバネは圧縮されると拡径しようとするが、バネ嵌合溝の深さをコイルバネを構成する線材の直径よりも小さくすることにより、コイルバネの嵌合部が拡径しても嵌合部の少なくとも一部が流体通路の内周面から内側に常に突出している状態を維持することができる。これにより、嵌合部が半径方向外側に変位することによって係止部との長手軸線の方向での係合が解除されてしまうことを防止することが可能となる。
【0018】
好ましくは、
該弁体が、該コイルバネの側に突出した円柱状のバネ支持部を有し、
該コイルバネの該弁支持部が、該線材を該バネ支持部の外周面に沿って該長手軸線の方向で隣接して複数回巻かれて形成されているようにすることができる。
【0019】
このような構成により、弁体を安定した状態で保持することができ、弁体のがたつきを低減することが可能となる。
【0020】
好ましくは、
該伸縮部が該長手軸線に沿って略同一の直径を有するようにされ、該弁支持部が該伸縮部よりも小径とされ、該コイルバネが該弁支持部と該伸縮部とを繋ぐ連結部を有しており、
該連結部が、該長手軸線の方向から見て、該弁支持部から径方向外側に延びて該伸縮部の一部と重なるように湾曲して延在する第1部分と、該第1部分から該弁支持部の一部と重なるように延在する第2部分と、該第2部分から該伸縮部の別の一部と重なるように湾曲して延在する第3部分と、を有し、
該コイルバネが該長手軸線の方向で圧縮されたときに、該連結部の該1部分と該第3部分とが該伸縮部に当接し、該第2部分が該弁支持部に当接して、該弁支持部が該連結部を介して該伸縮部に支持されるようにすることができる。
【0021】
伸縮部は圧縮されることにより線材間の隙間が小さくなるためそこを通る流体に対する抵抗が大きくなるが、直径の異なる伸縮部と弁支持部との間に上述のような連結部を設けることにより、流体はコイルバネの圧縮状態に関係なくこの連結部を通って流れることができる。これにより、コイルバネの圧縮に伴う流体抵抗の増加を抑制することが可能となる。また、コイルバネが圧縮されたときに、弁支持部と伸縮部とが連結部によって支持されるため、弁支持部が伸縮部の内側にまで大きく変位することが防止される。
【0022】
また本発明は、
上述の管継手部材と、該管継手部材と取り外し可能に連結される対応管継手部材と、を備える管継手であって、
該管継手部材と該対応管継手部材とが連結されたときに、該管継手部材の該弁体が該対応管継手部材によって押されて該閉止位置から該開放位置に変位するようにされた、管継手を提供する。
【0023】
さらに本発明は、
流体通路内に設定され、該流体通路内に該流体通路の長手軸線の方向で変位可能に設定されている弁体を該流体通路が開放される開放位置から該流体通路が閉止される閉止位置に向かって付勢するためのコイルバネであって、
流体通路の内周面よりも大きな外径を有し、該内周面に形成されている円周状のバネ嵌合溝に嵌合して該流体通路に固定される嵌合部と、
該嵌合部に連接し、該バネ嵌合溝に嵌合された状態の該嵌合部の内径よりも大きい外径を有する係止部と、
弁体を支持する弁支持部と、
該係止部と該弁支持部との間に延在し、該係止部の内径よりも大きい外径を有していて、該弁体が該閉止位置と該開放位置との間で変位したときに該長手軸線の方向で伸縮する伸縮部と、
を有する、コイルバネを提供する。
【0024】
以下、本発明に係る管継手部材、管継手、及びコイルバネの実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る雄型管継手部材の側面断面図である。
図2図1の雄型管継手部材に連結される雌型管継手部材の側面断面図である。
図3図1の雄型管継手部材と図2の雌型管継手部材とが連結された状態を示す側面断面図である。
図4A図1の雄型管継手部材に用いられるコイルバネの側面図である。
図4B図4Aのコイルバネの前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態に係る雄型管継手部材(管継手部材)10は、図1に示すように、流体通路12を有する円筒状の継手本体14と、流体通路12内に配置された弁体16と、流体通路12内において継手本体14と弁体16との間に配置されたコイルバネ18とを備える。弁体16は、シールリング20が継手本体14の弁座部22に密封係合して流体通路12を閉止する閉止位置(図1)と、閉止位置から流体通路12の長手軸線Lの方向で後退して(図で見て右方に変位して)流体通路12を開放する開放位置(図3)との間で変位可能とされている。コイルバネ18はこの弁体16を閉止位置に向かって付勢している。
【0027】
雄型管継手部材10に取り外し可能に連結される対応した雌型管継手部材(対応管継手部材)30は、図2に示すように、流体通路32を有する円筒状の継手本体34と、流体通路32の内周面32a上を摺動するスライド弁体36と、スライド弁体36のシールリング40を流体通路32の中央に配置された弁座部42に密封係合させるように該スライド弁体36を付勢するコイルバネ38とを有する。また、継手本体34には雄型管継手部材10を連結状態に保持するための施錠子44が保持されている。
【0028】
雄型管継手部材10を雌型管継手部材30に挿入すると、図3に示すように、雌型管継手部材30のスライド弁体36が雄型管継手部材10の継手本体14によって図で見て左方に押されて雌側の流体通路32が開放されるとともに、雄型管継手部材10の弁体16が雌型管継手部材30の弁座部42によって図で見て右方に押されて雄側の流体通路12も開放される。このとき雌型管継手部材30の施錠子44は、雄型管継手部材10の施錠子係合溝24に係合した状態でスリーブ46により径方向外側から支持された状態となり、雄型管継手部材10は雌型管継手部材30に対して取り外しができないように保持される。雄型管継手部材10と雌型管継手部材30とからなる管継手1は、このようにして連結されて、互いの流体通路12、32が連通した状態となる。
【0029】
雄型管継手部材10のコイルバネ18は、図4Aに示すように、断面円形の細長い線材を螺旋状に巻いて形成されている。当該コイルバネ18は、線材をおよそ1回巻いて形成されている嵌合部18aと、嵌合部18aに連接して嵌合部18aよりもやや小さい直径で長手方向に隣接するようにおよそ2回巻いて形成された係止部18bと、係止部18bに連接して長手軸線Lの方向で間隔をあけておよそ6回巻いて形成された伸縮部18cと、伸縮部18cよりも小径とされ長手軸線Lの方向で隣接しておよそ3回巻かれた弁支持部18dと、を有する。また、伸縮部18cと弁支持部18dとの間には、図4Bに示すように、それらを繋ぐ連結部18eが形成されている。この連結部18eは、図4Bの方向から見て(すなわち長手軸線Lの方向から見て)、弁支持部18dから径方向外側に左方に延びて伸縮部18cの一部を重なるように湾曲して延在する第1部分18e−1と、第1部分18e−1から右方に直線状に延びて途中で弁支持部18dの一部と重なるように延在する第2部分18e−2と、第2部分18e−2から伸縮部18cの一部と重なるように湾曲して延在し伸縮部18cへと繋がる第3部分18e−3とからなる。コイルバネ18が圧縮されると、連結部18eの第1部分18e−1と第3部分18e−3とが伸縮部18cと係合し、第2部分18e−2が弁支持部18dと係合する。これにより、弁支持部18dは連結部18eを介して伸縮部18cに支持されることになり、弁支持部18dが連結部18c内にまで変位することが防止される。
【0030】
雄型管継手部材10の継手本体14は、図1に示すように、その流体通路12の内周面12aに円環状のバネ嵌合溝26を有する。コイルバネ18は、その嵌合部18aをバネ嵌合溝26に嵌合することにより継手本体14に対して固定される。なお、この嵌合部18aは径方向内側に力を加えることにより縮径させることができるため、コイルバネ18を取り付ける際には嵌合部18aを縮径させた状態で流体通路12内に挿入するようにする。コイルバネ18を流体通路12内に挿入していって嵌合部18aがバネ嵌合溝26に至ると、嵌合部18aはその弾性力により拡径した状態に戻ってバネ嵌合溝26に嵌合される。したがって、このようなコイルバネ18を使用する場合には、継手本体14を分割したり、コイルバネ18を保持するための別の部材を取り付けたりする必要はない。
【0031】
バネ嵌合溝26の深さは、コイルバネ18を構成する線材の直径よりも小さくなっており、嵌合部18aはバネ嵌合溝26に嵌合されたときにその一部が流体通路12の内周面12aから内側に常に突出した状態となるようになっている。また、係止部18bは、流体通路12の内周面12aに接触している。嵌合部18aと係止部18bとがこのような構成となっていることにより、コイルバネ18が継手本体14に取り付けられた状態においては、係止部18bの外径は嵌合部18aの内径よりも大きくなる。また、係止部18bが流体通路12の内周面12aに接触していることにより、継手本体14に対するコイルバネ18の姿勢が安定する。伸縮部18cは、長手軸線Lに沿って同一の直径を有するように形成されており、その外径は係止部18bの外径よりも小さくされ、伸縮部18cと流体通路12の内周面12aとの間に隙間が形成されるようになっている。また、伸縮部18cは、その外径が係止部18bの内径よりも大きくなっており、長手軸線Lの方向で見て係止部18bと重なりを有するようになっている。
【0032】
弁体16は、長手軸線Lの方向でコイルバネ18の側に突出した円柱状のバネ支持部16aを有する。コイルバネ18の弁支持部18dは、このバネ支持部16aの外周面16bに沿うように螺旋状に巻かれて形成されており、弁体16は、コイルバネ18の弁支持部18dにバネ支持部16aが挿入された状態でコイルバネ18に保持される。弁体16は、このようにして保持されることにより、コイルバネ18に対してがたつきが少なく、姿勢が安定するようになる。
【0033】
雄型管継手部材10が雌型管継手部材30に連結されて図3の状態となると、コイルバネ18は長手軸線Lの方向で圧縮される。このときに圧縮されるのは主として伸縮部18cだけであるが、伸縮部18cは流体通路12の内周面12aに接触しないようになっているため、コイルバネ18が圧縮される際に流体通路12との間の摩擦が伸縮の妨げとなることは基本的にはない。
【0034】
上述のように、コイルバネ18が継手本体14に取り付けられた状態においては、係止部18bの外径は嵌合部18aの内径よりも大きくなる。そのため、図で見て右方への力を伸縮部18cから受ける係止部18bは嵌合部18aと係合して該嵌合部18aにより支持されるようになり、嵌合部18aを通過して変位することが防止される。同様に、伸縮部18cの外径は係止部18bの内径よりも大きくされているため、伸縮部18cは係止部18bによって支持されて係止部18bを通過して変位することが防止される。さらには、弁支持部18dは連結部18eを介して伸縮部18cに支持されるため、伸縮部18cを通過して変位することが防止される。すなわち、当該コイルバネ18は、大きく圧縮されたときに、嵌合部18a、係止部18b、伸縮部18c、連結部18e、弁支持部18dの各間において長手軸線Lの方向で互いに係合して支持し合うような構成となっているため、伸縮部18cが完全に圧縮されるとそれ以上は変形しなくなってその形態が維持される。したがって、当該コイルバネ18は、例えば流体通路12内に流体が高速で流されて弁体16が雌型管継手部材30の弁座部42から離れてさらに右方に変位し伸縮部18cが完全に圧縮されることによりコイルバネ18に大きな圧縮力がかかった場合であっても、各部が長手軸線Lの方向で支持し合うため塑性変形を起こすほど大きく変形することがない。また、嵌合部18aは、その内側部分において係止部18bから押圧されるため、係止部18bからは径方向外側に向かう力を受けることとなる。これにより、コイルバネ18の圧縮にともなって嵌合部18aが縮径してバネ嵌合溝26から外れることが防止される。
【0035】
本発明に係る雄型管継手部材10においては、このようなコイルバネ18を用いることにより、継手本体14の構造を極めて単純なものとし、また継手本体14に対するコイルバネ18の取り付けも容易に行うことが可能となる。また、コイルバネ18は大きな圧縮力を受けた場合であっても過大に変形することがないように構成されているため、塑性変形が起きにくい。さらには、嵌合部18aが係止部18bによって内側から押えられるため、嵌合部18aに対して径方向内側への力は作用せず、したがって嵌合部18aが縮径してバネ嵌合溝26から外れることも防止される。
【0036】
なお、上記実施形態においては、図4A及び図4Bに示すコイルバネ18を雄型管継手部材において用いるようにしているが、雌型管継手部材に使用することもできる。
【符号の説明】
【0037】
管継手1;雄型管継手部材10;流体通路12;内周面12a;継手本体14;弁体16;バネ支持部16a;外周面16b;コイルバネ18;嵌合部18a;係止部18b;伸縮部18c;弁支持部18d;連結部18e;第1部分18e−1;第2部分18e−2;第3部分18e−3;シールリング20;弁座部22;施錠子係合溝24;バネ嵌合溝26;雌型管継手部材30;流体通路32;内周面32a;継手本体34;スライド弁体36;コイルバネ38;シールリング40;弁座部42;施錠子44;スリーブ46;
長手軸線L;
図1
図2
図3
図4A
図4B