特許第6530871号(P6530871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6530871
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】端面入射型受光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0232 20140101AFI20190610BHJP
【FI】
   H01L31/02 D
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-558256(P2018-558256)
(86)(22)【出願日】2017年7月25日
(86)【国際出願番号】JP2017026791
【審査請求日】2018年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000161862
【氏名又は名称】株式会社京都セミコンダクター
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】西村 諭一
(72)【発明者】
【氏名】大村 悦司
【審査官】 山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−316506(JP,A)
【文献】 特開2003−243674(JP,A)
【文献】 特表2006−511933(JP,A)
【文献】 米国特許第5600741(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/0392、31/08−31/119
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面入射型受光素子において、
半導体基板の第1の面の近傍に形成された受光部と、前記第1の面に対向する前記半導体基板の第2の面に前記第2の面と直交する方向から視た平面視で円形に形成された部分球面状凹面反射部と、前記第1の面と前記第2の面の間に形成された平面反射部とを備え、
前記平面反射部は、前記第1の面及び前記第2の面に垂直な前記半導体基板の端面に垂直に入射した入射光を前記部分球面状凹面反射部に向けて反射し、
前記部分球面状凹面反射部は、前記平面反射部で反射した入射光を前記受光部に集光するように反射することを特徴とする端面入射型受光素子。
【請求項2】
前記平面反射部は、前記第2の面に鋭角に連なることを特徴とする請求項1に記載の端面入射型受光素子。
【請求項3】
前記平面反射部は、前記第1の面に鈍角に連なることを特徴とする請求項1に記載の端面入射型受光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光素子内部に入射光の光路を屈曲させる反射機構を有する端面入射型の受光素子に関し、特に25GHz以上の高速動作が可能な端面入射型受光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高速大容量の通信網の発展に伴い、光幹線系等で利用される光通信用の発光素子や受光素子に求められる応答速度が25GHzを超えるようになってきている。そのため、受光素子においては、受光部の光吸収領域を形成するPN接合の接合容量を減らすことにより高速動作を可能とするために、光吸収領域の面積を小さくしている。例えば25GHzの応答速度を得るためには、光吸収領域を20μm×20μm程度にする必要がある。
【0003】
このような受光素子は、大きく分けて平面入射型と端面入射型の2種類に分類される。平面入射型の受光素子は、半導体基板主面に形成された光吸収領域に対してその半導体基板主面に略垂直に光を入射するものであり、現在主流の受光素子である。一方、端面入射型の受光素子は、例えば特許文献1のように、半導体基板主面に形成された光吸収領域に対して半導体基板主面に平行方向に光を半導体基板端面から入射するものである。
【0004】
光通信用の受光素子を搭載した受信モジュールは、光ファイバの出力端を受信モジュール内に固定し、この出力端から出射される光信号を受光素子に入射し、この入射光により光吸収領域で生成された電子正孔対を電流として取り出して電気信号を出力する。受信モジュール内の光ファイバの固定等における制約により、受光素子は受信モジュールの実装基板に対して半導体基板主面が垂直になるように配設される場合が多い。それ故、平面入射型の受光素子は取り付け用のサブキャリアが必要になるが、端面入射型の受光素子ではサブキャリアが不要であるため、組み立て容易性や製造コスト低減の観点から近年注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−87760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、端面入射型の受光素子は、半導体基板主面の受光部に対して平行に光が入射する。受光部の光吸収領域の深さはその半導体基板主面と平行な方向の光吸収領域のサイズと比べて小さいため、端面入射型受光素子は平面入射型受光素子と比べて入射光の受光面積が小さい。特許文献1の端面入射型受光素子は、小さい受光面積を補うため、光吸収領域の端面で入射光を反射することにより光吸収領域を通る光路を長くして受光量を確保するように構成されている。しかし、上述のように高速動作を可能とするために光吸収領域の面積を小さくすると、光吸収領域を通る光路が短くなって受光量が減るので、十分な電流を取り出すことができなくなる。そのため、受光部の光吸収領域の面積の縮小により高速化することが困難である。
【0007】
一方、図12に示すように、半導体基板51の端面52に入射した入射光を、光吸収領域を備えた受光部53にその深さ方向に入射させるように反射する反射面54を備えた端面入射型受光素子50が知られている。反射面54は半導体基板51とその外側の物質により定まる臨界角より大きい入射角で入射光が入射するように構成され、入射光は反射面54において受光部53に向かって全反射する。受光部53は100μm×100μm程度の受光面積を有し十分な受光量を確保することができるように構成されている。
【0008】
ここで、光ファイバの出力端から出射する光は、12°程度の頂角を有する円錐状に広がり、半導体基板51の端面52に入射すると屈折の法則に従ってその角度が小さくなるが、半導体基板51内においても円錐状に広がる。この円錐底面に相当する照射範囲は半導体基板51内を進行する程広がるため、受光部53を小さく形成すると受光面積が縮小して十分な受光量を得ることが困難になる。それ故、受光部53を小さくすることによる端面入射型受光素子50の高速化を図ることができない。また、受光部53を小さく形成すると、受信モジュールの組み立てばらつき等により光ファイバの出力端の固定位置にずれが生じた場合に、入射光の入射位置がずれるので受光量が一層低下する虞がある。
【0009】
本発明の目的は、高速動作可能な端面入射型受光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明の端面入射型受光素子は、半導体基板の第1の面の近傍に形成された受光部と、前記第1の面に対向する前記半導体基板の第2の面に前記第2の面と直交する方向から視た平面視で円形に形成された部分球面状凹面反射部と、前記第1の面と前記第2の面の間に形成された平面反射部とを備え、前記平面反射部は、前記第1の面及び前記第2の面に垂直な前記半導体基板の端面に垂直に入射した入射光を前記部分球面状凹面反射部に向けて反射し、前記部分球面状凹面反射部は、前記平面反射部で反射した入射光を前記受光部に集光するように反射することを特徴としている。
【0011】
上記構成により、平面反射部は、半導体基板の端面に垂直に入射した入射光を第2の面の部分球面状凹面反射部に向けて反射し、部分球面状凹面反射部は、第1の面近傍の受光部に集光するように反射するので、受光量を確保しながら受光部を小さくすることができ、受光部の縮小により端面入射型受光素子の高速化が可能である。また、部分球面状凹面反射部は受光部に集光するので、入射光の入射位置のずれによる受光量の低下を抑えることができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記平面反射部は、前記第2の面に鋭角に連なることを特徴としている。
【0013】
上記構成により、平面反射部は、半導体基板の端面に入射した入射光を半導体基板の第2の面の凹面反射部に向けて反射することができる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記平面反射部は、前記第1の面に鈍角に連なることを特徴としている。
【0015】
上記構成により、平面反射部は、半導体基板の端面に入射した入射光を半導体基板の第2の面の凹面反射部に向けて反射することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の端面入射型受光素子によれば、光吸収領域を小さくして高速動作が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例1に係る端面入射型受光素子の平面図である。
図2図1のII−II線断面図である。
図3図2において入射光の光路を示す図である。
図4】半導体基板に拡散層を形成する工程を示す断面図である。
図5図4の半導体基板に受光部を形成する工程を示す断面図である。
図6図5の半導体基板に円形溝を形成する工程を示す断面図である。
図7図6の半導体基板に凸状部を形成する工程を示す断面図である。
図8図7の半導体基板に溝部のエッチングマスクを形成する工程を示す断面図である。
図9図8の半導体基板に溝部を形成する工程を示す断面図である。
図10図3において入射光の入射位置に応じた受光部の受光量を示す図である。
図11】本発明の実施例2に係る端面入射型受光素子の断面図である。
図12】従来の端面入射型受光素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
最初に、端面入射型受光素子の全体構成について説明する。
図1図3に示すように、端面入射型受光素子1は、半導体基板10の(100)面を上面11(第1の面)として、上面11近傍にi−InGaAs層12からなる光吸収領域を備えた受光部2を有し、この半導体基板10の上面11に基板電極14(n電極)と、受光部2のp型拡散領域19の上面に受光部電極15(p電極)を備えている。半導体基板10は半絶縁性のInP基板であるが、端面入射型受光素子1の用途等に応じてSi基板等、適宜基板材料を選択可能である。InP基板は、波長が1μmより長い赤外光に対して透明であり、InP基板に入射した1μmより長波長の赤外光はInP基板内を進行する。
【0020】
上面11に対向する半導体基板10の下面21(第2の面)に開口された溝部22は、この下面21に夫々鋭角に連なる第1傾斜面22a及び第2傾斜面22bと半導体基板10の上面11及び下面21に略平行な頂面22cにより断面がダブテール形状に形成されている。ここでは、溝部22の受光部2に近い傾斜面を第1傾斜面22aとしている。第1傾斜面22a及び第2傾斜面22bは半導体基板10の{111}面であり、半導体基板10の(100)面と{111}面は54.7°程度の角度で交差する。
【0021】
半導体基板10の下面21には、さらに第1傾斜面22aの近傍に下方に向かって部分球面状に膨出状に形成された凸状部23を備えている。
【0022】
溝部22に対して凸状部23側の半導体基板10の上面11と下面21に略垂直な端面31は、溝部22が延びる方向に略平行に形成され、この端面31に光ファイバから出射される光が入射する。端面31は、入射光の端面31における散乱を防ぐため平坦に形成されている。また、この端面31は、入射光の反射を抑えるための反射防止膜を備えていてもよい。
【0023】
第1傾斜面22aと凸状部23は、入射光を反射するための誘電体膜24(例えばシリコン窒化膜、シリコン酸化膜等)及び金属膜25(例えば銀膜、金膜等)を備えて平面反射部3と部分球面状凹面反射部4を構成している。ここで、例えば波長が1.3μmの入射光に対してInP基板及びシリコン窒化膜の屈折率は夫々3.2及び2.0程度であり、スネルの法則により臨界角は37.3°程度になる。尚、前記部分球面状凹面反射部4は、下面21と直交する方向から視た平面視で円形に形成されている。
【0024】
図3に示すように端面31に入射し、上面11及び下面21に平行に進行する入射光の光軸は、平面反射部3に臨界角に近い入射角θ=35.3°程度で入射し、入射光の大部分が凹面反射部4に向かって反射する。屈折率が小さい誘電体膜24を選択することにより、又は金属膜25及び誘電体膜24を備えていない第1傾斜面22aを平面反射部3とすることにより、臨界角を小さくして入射光が平面反射部3で全反射するように構成することも可能である。
【0025】
凸状部23の外径や曲率半径は、端面入射型受光素子1のサイズ等により受光部2に集光可能な値に適宜設定される。受光部2と半導体基板10の下面21の距離を150μm、端面31と第1傾斜面22aの下端の距離L1を180μm、端面31と凸状部23の中心の距離L2を125μm、端面31と受光部2の中心の距離wを70μmとし、半導体基板10の下面21からの距離hが50μm、端面31からの距離dが50μmの位置から入射光が出射される場合には、凸状部23の外径を80μm、曲率半径を320μmに設定することにより、1辺が20μmの平面視矩形状又は外径20μmの平面視円形の受光部2に入射光を導くことができる。
【0026】
図2に示すように、半導体基板10の上面11には第1n−InP層16が一様に形成され、その上に平面反射部3及び凹面反射部4が反射した入射光を受光する受光部2を備えている。受光部2は、第1n−InP層16側から順に第2n−InP層17、i−InGaAs層12(光吸収領域)、第3n−InP層18を有し、第3n−InP層18内にp型拡散領域19を有して、pinフォトダイオードを形成している。半導体基板10の上面11側の基板電極14及び受光部電極15以外の部分は水分等から端面入射型受光素子1を保護するための保護膜(例えばシリコン窒化膜等の誘電体膜)により覆われていてもよい。
【0027】
次に、端面入射型受光素子1の製作方法について説明する。
図4に示すように、(100)面を主面(上面11)とする清浄な半導体基板10(半絶縁性InP基板)上に、順に第1n−InP層16、第2n−InP層17、i−InGaAs層12、第3n−InP層18を気相成長法等により成膜する。そして、図示を省略するが、第3n−InP層18の所定の領域が露出するように開口したマスク層(例えばシリコン窒化膜)を形成し、選択拡散法により例えば亜鉛を拡散させたp型拡散領域19を形成する。第1n−InP層16、第2n−InP層17、i−InGaAs層12、第3n−InP層18の厚さは夫々5μm、2μm、1μm、2μm程度であり、p型拡散領域19の幅は20μm程度である。
【0028】
次に、図5に示すように、p型拡散領域19を含む所定の部分を残して第1n−InP層16が露出するように、選択エッチング法により第3n−InP層18、i−InGaAs層12、第2n−InP層17を除去して受光部2を形成する。このとき第1n−InP層16も上面側がエッチングされて薄くなる。そして、図示を省略するが、保護膜(例えばシリコン窒化膜等の誘電体膜)を成膜し、この保護膜を選択エッチング法により部分的に開口する。さらに金属膜を真空蒸着法により成膜し、選択エッチング法により基板電極14及び受光部電極15以外の領域の金属膜を除去する。受光部電極15を形成した後で受光部2を形成し、その後基板電極14を形成してもよい。
【0029】
電極となる金属膜は、p型拡散領域19及び第1n−InP層16との密着層としてクロム膜やニッケル膜等を有する積層構造の金属膜であり、実装基板の端子にワイヤボンディング等により接続可能である。また、図示を省略するが、以降の工程で受光部2等が形成された半導体基板10の上面11側を保護するために、フォトレジスト膜等を厚く堆積しておく。
【0030】
次に、図6に示すように、受光部2等が形成された半導体基板10の上面11に対向する下面21に、選択エッチング法により外径80μm程度、深さ5μm程度の平面視略円形の円形溝21aを形成する。例えばエッチングマスクとして半導体基板10の下面21に成膜したシリコン窒化膜21bに半導体基板10の下面21が露出する平面視円形状の開口部21cを形成し、異方性が小さい又は等方性の公知のエッチング液により半導体基板10の下面21をエッチングする。こうして半導体基板10の下面21に円形溝21aを形成する。このとき、後の工程で形成する溝部22が延びる[110]方向を考慮して円形溝21aを形成する位置が設定される。
【0031】
次に、エッチングマスクを除去し、異方性が小さい又は等方性の公知のエッチング液により半導体基板10の下面21をエッチングする。円形溝21aの開口部近傍は、円形溝21a内及び半導体基板10の下面21側の2方向からエッチングが進行するため1方向からエッチングが進行する半導体基板10の下面21の平坦な領域と比べてエッチング速度が速い。そのため、円形溝21aの内側領域には、図7に示すように膨出状の曲面を有する凸状部23が形成される。円形溝21aの外側も円形溝21aの開口部近傍ではエッチング速度が速いので、円形溝21aから平坦な領域に滑らかに連なるように曲面が形成される。
【0032】
次に、半導体基板10の下面21に開口する溝部22を形成するためのエッチングマスクを形成する。図8に示すように、例えば半導体基板10の下面21に成膜したシリコン窒化膜21dに、半導体基板10の下面21が露出するように幅20μm程度、溝部22が延びる方向の長さが200μm程度の開口部21eを形成する。
【0033】
次に、図9に示すように、結晶面方位に依存する異方性を有する公知のエッチング液(例えば{111}面のエッチング速度が遅いブロムメタノール液)により、溝部22を所定の深さ(例えば80μmの深さ)エッチングした後、エッチングマスクのシリコン窒化膜21dを除去する。こうして第1傾斜面22aと第2傾斜面22bと頂面22cを有するダブテール形状の溝部22が形成される。第1傾斜面22a、第2傾斜面22bは{111}面であり、夫々溝部22の頂面22c及び半導体基板10の下面21に54.7°程度の角度で交差する。
【0034】
次に、第1傾斜面22a及び凸状部23が入射光を反射するための誘電体膜24(例えばシリコン窒化膜)及び金属膜25(例えば銀膜、金膜等)を順に気相成長法及び真空蒸着法等により夫々例えば0.2μm、1μm程度の厚さに成膜して、凸状部23に凹面反射部4を形成し、第1傾斜面22aに平面反射部3を形成する。凸状部23及び第1傾斜面22a以外の領域の金属膜25は除去してもよい。
【0035】
次に、半導体基板10の上面11側を保護するフォトレジスト膜を除去し、受光部2と凹面反射部4と平面反射部3が形成された半導体基板10を所定の形状にダイシングして、図1図2に示す端面入射型受光素子1を得る。光が入射する端面31は、入射光の散乱を防ぐための平坦化処理と、入射光の反射を防ぐための反射防止膜を成膜してもよい。
【0036】
実施例1に係る本発明の端面入射型受光素子1の作用、効果について説明する。
図3において入射光の入射位置を高さ方向及び水平方向(奥行き方向)にずらした場合に、入射光の受光部2への到達率(受光部到達率)をシミュレーションした結果を図10に示す。受光部2は、平面視にて1辺が20μmの矩形又は外径20μmの円形に従来より小さい面積に形成されているが、入射位置を受光部2の中心に入射する位置から高さ方向又は水平方向に±20μmずらした場合でも90%以上の高い受光部到達率が得られる。従って、受光部2が小さくても、凹面反射部4により集光して確実に入射光を受光部2に導くことができるので、受光部2の縮小により端面入射型受光素子1を高速化でき、この端面入射型受光素子1を搭載した受信モジュールに光ファイバの出力端を固定する際の位置合わせが容易になる。
【実施例2】
【0037】
実施例1の端面入射型受光素子1を部分的に変更した実施例2の端面入射型受光素子1Aについて説明する。実施例1と共通する部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0038】
図11に示すように、端面入射型受光素子1Aは、半導体基板10の(100)面を上面11(第1の面)として、この上面11の近傍に受光部2を有し、この半導体基板10の上面11の基板電極14(n電極)と受光部2の受光部電極15(p電極)を備えている。この上面11には、上面11に夫々125.3°程度の鈍角に連なる第3傾斜面42a及び第4傾斜面42bで形成されるV形状のV形溝部42を備えている。第3傾斜面42a、第4傾斜面42bは{111}面であり、第3傾斜面42aと第4傾斜面42bがなすV形溝部42の頂角は70.6°程度である。第3傾斜面42aは、入射光を反射するための誘電体膜44(例えばシリコン窒化膜、シリコン酸化膜等)及び金属膜45(例えば銀膜、金膜等)を有して平面反射部3を構成している。尚、誘電体膜44及び金属膜45を備えていない第3傾斜面42aを平面反射部3とすることも可能である。
【0039】
また、半導体基板10の下面21には、平面視にてV形溝部42と受光部2の間に下方に膨出状に形成された凸状部23が形成されている。この凸状部23は誘電体膜24と金属膜25を有し、上面に向かって凹面状に形成された部分球面状凹面反射部4を構成している。
【0040】
V形溝部42に対して受光部2側の半導体基板10の上面11と下面21に略垂直な端面31は、V形溝部42が延びる方向に略平行に形成された入射光の入射面である。
【0041】
V形溝部42は、実施例1の溝部22と同様の方法で半導体基板10の上面11に結晶面方位に依存した異方性を有する公知のエッチング液によりエッチングして形成される。但し、V形溝部42が延びる方向が実施例1の溝部22が延びる方向に直交することを考慮して受光部2と部分球面状凹面反射部4を配設する。こうして形成された端面入射型受光素子1Aは、実施例1の端面入射型受光素子1と同様に入射光を受光部2に集光して導入することができ、同等の効果を有する。
【符号の説明】
【0042】
1,1A 端面入射型受光素子
2 受光部
3 平面反射部
4 部分球面状凹面反射部
10 半導体基板
11 上面(第1の面)
21 下面(第2の面)
22 溝部
22a 第1傾斜面
23 凸状部
31 端面
42 V形溝部
42a 第3傾斜面
【要約】
【課題】高速動作可能な端面入射型受光素子を提供すること。
【解決手段】端面入射型受光素子において、半導体基板の第1の面の近傍に形成された受光部と、前記第1の面に対向する前記半導体基板の第2の面に形成された凹面反射部と、前記第1の面と前記第2の面の間に形成された平面反射部とを備え、前記平面反射部は、前記第1の面及び前記第2の面に垂直な前記半導体基板の端面に入射した入射光を前記凹面反射部に向けて反射し、前記凹面反射部は、前記平面反射部で反射した入射光を前記受光部に集光するように反射する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12