特許第6530872号(P6530872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6530872建物の排水管洗浄システムおよび排水管洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6530872
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】建物の排水管洗浄システムおよび排水管洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/308 20060101AFI20190531BHJP
【FI】
   E03C1/308
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-2282(P2019-2282)
(22)【出願日】2019年1月10日
【審査請求日】2019年1月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507308887
【氏名又は名称】株式会社イースト
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【弁理士】
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】植田 文夫
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−249918(JP,A)
【文献】 特開2011−042984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12− 1/33
B08B 5/00−13/00
F16L 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の住戸からなる居住階を多層階に渡って有する建物の排水管洗浄システムであって、
洗浄液供給用の固定配管が、居住階を構成している多層階に渡って上下方向に延ばして配設され、
前記固定配管の下端部に、高圧の洗浄液を供給するためのポンプが接続されるポンプ接続部が構成され、
前記固定配管には、居住階を構成している各階毎に、建物の共用スペースからアクセスできる位置において、住戸内に引き込まれる引込用ホースが接続されるホース接続部が構成され、
前記各ホース接続部にはそれぞれ、開閉弁が設けられ、
前記固定配管が、各階の共用廊下からアクセス可能なパイプスペースを通って上下方向に延びており、
前記ホース接続部が、前記固定配管が配設されている前記パイプスペース内に位置され、
前記固定配管が配設される前記パイプスペースが、各住戸の玄関の側方に位置されたパイプスペースとされている、
ことを特徴とする建物の排水管洗浄システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記ポンプ接続部の設定位置が、建物の低所のうち、該ポンプ接続部に接続される前記ポンプを搭載した車両が進入可能な位置またはその近傍とされている、ことを特徴とする建物の排水管洗浄システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記ポンプ接続部の設定位置が、建物の外部のうち地面に近い低所でかつ建物の外壁付近とされている、ことを特徴とする建物の排水管洗浄システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記固定配管の本数が1本のみとされている、ことを特徴とする建物の排水管洗浄システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記固定配管の設定位置が、平面視において、各階における複数の住戸の玄関に対して共用廊下沿いの距離がもっとも短くなる位置またはその付近とされている、
ことを特徴とする建物の排水管洗浄システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記固定配管の本数が、2以上の複数とされ、
複数本の前記固定配管が、平面視において、共用廊下沿いに前記複数の住戸の玄関を結ぶ経路をほぼ等間隔で分断する位置またはその付近に位置するように分散配置されている、
ことを特徴とする建物の排水管洗浄システム。
【請求項7】
複数の住戸からなる居住階を多層階に渡って有する建物に、下端部がポンプ接続部とされた洗浄液供給用の固定配管が居住階を構成する多層階に渡って上下方向に延びるように設置されていると共に、該固定配管のうち居住階となる各階毎に開閉弁によって開閉されるホース接続部が構成されてなる建物の排水管洗浄方法であって、
前記ポンプ接続部に、車両に搭載された洗浄液供給用のポンプを接続する第1ステップと、
洗浄対象となるある1つの階において、前記ホース接続部に対して、手元側開閉弁を有する引込用ホースの基端部を接続する第2ステップと、
前記第1ステップおよび前記第2ステップの後に、前記ホース接続部の開閉弁を開弁する共に前記ポンプを運転して、該ポンプから高圧の洗浄液を前記固定配管および前記ホース接続部を介して前記引込用ホースに供給する第3ステップと、
前記第3ステップの後に、前記引込用ホースの先端部を1つの住戸内における排水管に差し込んだ状態で前記手元側開閉弁を開くことにより、該引込用ホースから高圧の洗浄液を該排水管内に噴射して該排水管内を洗浄する第4ステップと、
前記第4ステップでの洗浄を行うべき住戸を変更して、前記ある1つの階における各住戸内の排水管を順次洗浄する第5ステップと、
前記第5ステップの後に、前記ある1つの階におけるホース接続部の開閉弁を閉弁させる第6ステップと、
を有しており、
排水管の洗浄が、下層階から上層階へと順次行うようにされ、
最上階の居住階の排水管洗浄の終了後に、前記ポンプを前記ポンプ接続部から接続解除し、かつ前記引込用ホースが最上階にある前記ホース接続部から接続解除された状態でもって、該最上階の前記ホース接続部の開閉弁を開弁させることにより、前記固定配管中の残留洗浄液を該ポンプ接続部から排出させるステップをさらに有している、
ことを特徴とする建物の排水管洗浄方法。
【請求項8】
請求項7において、
洗浄対象となる階を変更する毎に前記第2ステップから前記第6ステップの処理を行って、居住階を構成する多層階の各住戸における排水管の洗浄を行う第7ステップと、をさらに有している、ことを特徴とする建物の排水管洗浄方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8において、
2以上の居住階について前記第2ステップから前記第6ステップまでの処理を同時並行的に行う、ことを特徴とする建物の排水管洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の排水管洗浄システムおよび排水管洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
居住階を多層階に渡って有するマンション等の集合住宅にあっては、各住戸における洗面所、台所、風呂場、洗濯機受け等の水場からの排水は、横排水管から縦排水管を介して、外部へ排出される。特許文献1には、建物の横排水管を、上下位置が調節可能な高圧洗浄水噴射ノズルから噴射される洗浄水でもって洗浄することが開示されている。
【0003】
住戸内にある水場における排水口に連なる排水管の詰まりを防止あるいは解消するために、定期的にその洗浄が行われる。洗浄に際しては、高圧の洗浄液を供給するためのポンプを搭載した車両を建物近くに位置させて、このポンプに接続された引込用ホースを、各住戸の玄関からその内部へと引き込んで行われる。住戸内に引き込まれた引込用ホースの先端部は、洗面所等の水場の排水口に所定深さに挿入された状態とされて、引込用ホースに装備された手元側開閉弁を操作して、ポンプからの高圧の洗浄液を適宜排水管内に噴射することにより行われる。なお、このような洗浄作業は、通常は、低い階から開始されて、順次上の階へと行われることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5374633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近では、建物が高くされて、居住階が、例えば10階以上、中には30階以上とされることもある。この場合、引込用ホースは、地上付近の高さから最上階にある居住階まで延ばす必要がある。このことは、使用する引込用ホースを極めて長いものが必要になる。
【0006】
これに加えて、長くされた引込用ホースの取り扱うことから、作業性が悪くまた労力的に大きな負担となっていた。すなわち、引込用ホースは、例えば、地上付近から非常階段を通って、各階の非常口から共用廊下へと取り回した後、住戸の玄関へと引き込まれることから、洗浄作業を行う階を変更する度に、長い引込用ホースの配設状態を階をまたいで大きく変更する必要があって、作業性や労力の面で問題となる。特に、引込用ホースが極めて長くなると、途中で引込用ホースを継ぎ足すことも行われているが、この場合、継ぎ足しの作業に多くの労力がさかれることにもなる。
【0007】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その第1の目的は、引込用ホースを短くすることができ、しかもの作業性向上と労力軽減をも行えるようにした建物の排水管洗浄システムを提供することにある。本発明の第2の目的は、この建物の排水管洗浄システムを使用した排水管の洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記第1の目的を達成するため、本発明による洗浄システムにあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
複数の住戸からなる居住階を多層階に渡って有する建物の排水管洗浄システムであって、
洗浄液供給用の固定配管が、居住階を構成している多層階に渡って上下方向に延ばして配設され、
前記固定配管の下端部に、高圧の洗浄液を供給するためのポンプが接続されるポンプ接続部が構成され、
前記固定配管には、居住階を構成している各階毎に、建物の共用スペースからアクセスできる位置において、住戸内に引き込まれる引込用ホースが接続されるホース接続部が構成され、
前記各ホース接続部にはそれぞれ、開閉弁が設けられ、
前記固定配管が、各階の共用廊下からアクセス可能なパイプスペースを通って上下方向に延びており、
前記ホース接続部が、前記固定配管が配設されている前記パイプスペース内に位置され、
前記固定配管が配設される前記パイプスペースが、各住戸の玄関の側方に位置されたパイプスペースとされている、
ようにしてある。
【0009】
上記解決手法によれば、洗浄対象となる住戸が存在する階に設置されているホース接続部に対して引込用ホースを接続した状態で、高圧の洗浄液を固定配管内の下端部にあるポンプ接続部から供給することにより、高圧の洗浄液が、固定配管からホース接続部を介して引込用ホースへと供給される。したがって、ホース接続部から延びる引込用ホースは、1階あたりに設置されている複数の住戸内に引き込むことができる程度の十分に短いものとすることができる。
【0010】
また、引込用ホースを短い単位でもって取り扱うことができるので、作業性向上や労力低減となり、特に洗浄対象となる階を変更するに際しての引込用ホースの取り扱いの容易化という点で好ましいものとなる。さらに、ホース接続部は、共用スペースからアクセスできる位置に設置されているので、このホース接続部に対する引込用ホースの接続や接続解除を、作業員の安全性を確保しつつ容易に行うことができる。さらに又、ホース接続部は開閉弁によって開閉されるので、洗浄に必要な時期においてのみホース接続部を開いた状態とすることができる。以上に加えて、各階の共用廊下からアクセス可能なパイプスペースを有効に利用して、固定配管およびホース接続部を配設することができる。また、従来一般的に設置されている各住戸の玄関の側方に位置されたパイプスペースを、固定配管およびホース接続部の配設スペースとして有効に利用することができる。
【0011】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、請求項2〜請求項6に記載のとおりである。すなわち、
前記ポンプ接続部の設定位置が、建物の低所のうち、該ポンプ接続部に接続される前記ポンプを搭載した車両が進入可能な位置またはその近傍とされている、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、ポンプを搭載した車両をポンプ接続部の近くに位置させた状態で、ポンプをポンプ接続部に接続することができ、高圧の洗浄液を固定配管へ容易に供給できるようにする等の上で好ましいものとなる。
【0012】
前記ポンプ接続部の設定位置が、建物の外部のうち地面に近い低所でかつ建物の外壁付近とされている、ようにしてある(請求項3対応)。この場合、請求項2に対応した効果をより十分に発揮させる上で好ましいものとなる。また、ポンプ接続部を建物の外部に設置することにより、ポンプ接続部付近から洗浄液が不用意に建物内を流れてしまう事態を防止する上でも好ましいものとなる。
【0013】
【0014】
前記固定配管の本数が1本のみとされている、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、固定配管を必要最小限の数とすることができる。
【0015】
前記固定配管の設定位置が、平面視において、各階における複数の住戸の玄関に対して共用廊下沿いの距離がもっとも短くなる位置またはその付近とされている、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、引込用ホースの長さをより十分に短くする上で好ましいものとなる。
【0016】
前記固定配管の本数が、2以上の複数とされ、
複数本の前記固定配管が、平面視において、共用廊下沿いに前記複数の住戸の玄関を結ぶ経路をほぼ等間隔で分断する位置またはその付近に位置するように分散配置されている、
ようにしてある(請求項6対応)。この場合、1つの階に設置されている住戸数が多い場合に対応しつつ、引込用ホースの長さを十分に短くする上で好ましいものとなる。
【0017】
前記第2の目的を達成するため、本発明における洗浄方法にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項7に記載のように、
複数の住戸からなる居住階を多層階に渡って有する建物に、下端部がポンプ接続部とされた洗浄液供給用の固定配管が居住階を構成する多層階に渡って上下方向に延びるように設置されていると共に、該固定配管のうち居住階となる各階毎に開閉弁によって開閉されるホース接続部が構成されてなる建物の排水管洗浄方法であって、
前記ポンプ接続部に、車両に搭載された洗浄液供給用のポンプを接続する第1ステップと、
洗浄対象となるある1つの階において、前記ホース接続部に対して、手元側開閉弁を有する引込用ホースの基端部を接続する第2ステップと、
前記第1ステップおよび前記第2ステップの後に、前記ホース接続部の開閉弁を開弁する共に前記ポンプを運転して、該ポンプから高圧の洗浄液を前記固定配管および前記ホース接続部を介して前記引込用ホースに供給する第3ステップと、
前記第3ステップの後に、前記引込用ホースの先端部を1つの住戸内における排水管に差し込んだ状態で前記手元側開閉弁を開くことにより、該引込用ホースから高圧の洗浄液を該排水管内に噴射して該排水管内を洗浄する第4ステップと、
前記第4ステップでの洗浄を行うべき住戸を変更して、前記ある1つの階における各住戸内の排水管を順次洗浄する第5ステップと、
前記第5ステップの後に、前記ある1つの階におけるホース接続部の開閉弁を閉弁させる第6ステップと、
を有しており、
排水管の洗浄が、下層階から上層階へと順次行うようにされ、
最上階の居住階の排水管洗浄の終了後に、前記ポンプを前記ポンプ接続部から接続解除し、かつ前記引込用ホースが最上階にある前記ホース接続部から接続解除された状態でもって、該最上階の前記ホース接続部の開閉弁を開弁させることにより、前記固定配管中の残留洗浄液を該ポンプ接続部から排出させるステップをさらに有している、
ようにしてある。上記解決手法によれば、本発明による洗浄システムを用いた洗浄方法が提供され、特に洗浄作業が終了した後に、固定配管内に洗浄液が残留してしまう事態を防止できる。
【0018】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、請求項8以下に記載のとおりである。すなわち、
洗浄対象となる階を変更する毎に前記第2ステップから前記第6ステップの処理を行って、居住階を構成する多層階の各住戸における排水管の洗浄を行う第7ステップと、をさらに有している、ようにしてある(請求項8対応)。この場合、多層階に渡って、排水管の洗浄を行うことができる。
【0019】
【0020】
2以上の居住階について前記第2ステップから前記第6ステップまでの処理を同時並行的に行う、ようにしてある(請求項9対応)。この場合、排水管の洗浄作業を複数の階に渡って同時並行的に行って、限られた時間帯の中でより多くの排水管の洗浄を行う上で好ましいものとなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、引込用ホースを短くすることができ、しかもの作業性向上と労力軽減をも行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態を簡略的に示す全体系統図。
図2】複数の住戸に対するホース接続部の位置設定例を示す簡略平面図。
図3】ポンプ接続部の一例を示す図。
図4】ホース接続部が位置されるパイプスペース付近の一例を示す図。
図5】パイプスペース内でのホース接続部の設定例を示す図。
図6】ホース接続部と引込用ホースとの接続部の詳細例を示す図。
図7】本発明の第2の実施形態を示すもので、複数の住戸に対するホース接続部の位置設定例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1において、建物Tは、高層マンションとされている。建物Tは、低層階(下層階)となる1階部分が符号1Fで示される。1階部分1Fは、エントランスホールが設定されると共に、その脇に管理人室が設定されている。2階およびそれよりも高層階(上層階)部分が符号2F〜NFで示される(建物TはN階建て)。この2階からN階までの各階が、それぞれ居住階とされている。
【0024】
建物Tには、上下方向に延びるパイプスペースPSが形成されている。このパイプスペースPSには、後述するように、水道管、ガス管、電力線が上下方向に延ばして配設されている。このパイプスペースPSは、1階からN階(最上階)に渡って延びており、上記水道管、ガス管、電力線も1階からN階(最上階)に渡って延びている。なお、各住戸Jには、パイプスペースPS内で分岐された水道管、ガス管、電力線が引き込まれる。
【0025】
図1では、建物Tにおける各住戸Jが横方向に延びるように形成されている。図1中右方側に、住戸J用のベランダ1が設定され、左方側に共用廊下2が設定されている。なお、図1中、1a、2aは、それぞれ、転落防止用のフェンスである。各階は、図1中紙面直角方向に複数の住戸を有するものとなっており、各階における複数の住戸Jの配設状況が、例えば図2に示される。図2では、住戸Jが、J1〜J6の6世帯分を有するものとされている。図2中、3は玄関のドア、4は玄関脇に設定されて、共用廊下2からアクセス可能なパイプスペースPSである。また、図2中、EVはエレベータである。
【0026】
上記パイプスペースPS内には、固定配管10が上下方向に延ばして配設されている。固定配管10は、高圧の洗浄液を供給するためのもので、耐圧性の高い配管によって構成されている。この固定配管10も、1階からN階(最上階)に渡って延びている。固定配管10は、建物Tについて1本のみ設けられていて、図2に示すように、複数の住戸J1〜J6のうち特定の1つの住戸(実施形態では住戸J3)のパイプスペースPSを貫通するように設けられている。すなわち、各階において、住戸J3の上方または下方に位置する住戸のパイプスペースPS内にのみ固定配管10が位置するものとなっている。
【0027】
固定配管10の下端部は、ポンプ接続部11とされている。このポンプ接続部11は、建物Tの低所(実施形態では地上S付近の高さ位置)に設定されて、建物Tの外部でその外壁付近に設置された開閉式のボックス12内に位置されている。このポンプ接続部11には、図3に示すように、手動操作される開閉弁13が設けられている。なお、固定配管10の上端部は閉じられている。
【0028】
ポンプ接続部11つまりボックス12に対しては、車両Vが接近可能とされている。図1では、車両Vが、ポンプ接続部11の近くで、建物Tの敷地(地面)Sに駐車している状態が示される。車両Vは、洗浄液供給用となるポンプPWと洗浄液を貯溜するタンクPAとを搭載している。ポンプPWは、ポンプ接続部11に接続されるものである。実施形態では、洗浄液として水(水道水)を用いるようになっており、例えば建物T側からタンクPAに供給された水が、ポンプPWによって高圧洗浄水とされて、固定配管10に供給される。
【0029】
固定配管10には、各階において、ホース接続部14が設けられている。このホース接続部14には後述する開閉弁が設けられている。ホース接続部14は、実施形態では、共用廊下2に面した位置からアクセス可能な位置に設定されている。なお、ホース接続部14については、後に詳述する。実施形態では、ホース接続部14は、各階について1カ所のみ設けられている。
【0030】
ホース接続部14には、図1図2中破線で示す耐圧ホースからなる引込用ホース20の基端部が接続される。ホース接続部13に接続された引込用ホース20は、その先端部側が、住戸Jの玄関を通して、住戸J内に引き込まれて、住戸J内の水場に連なる排水管の洗浄が行われる。引込用ホース20は、その先端から数m手前位置に、手動操作される手元側開閉弁21が設けられている。引込用ホース20は、手元側開閉弁21よりも先端側部分が、洗面所等の排水口を通してこれに連なる排水管内に挿入されるもので、排水管の屈曲部位や湾曲部位を容易に通過できるように十分な屈撓性を有している。
【0031】
次に、図4図6を参照しつつ、ホース接続部14に関連した部位について説明する。まず、図4において、玄関のドア3の脇には、エアコンの室外機4が配設される配設スペース5が設けられ、この配設スペース5を挟んでドア3とは反対側に、パイプスペースPSが位置されている。図4中、6は、パイプスペースPSを開閉する扉である。
【0032】
図5には、パイプスペースPSの扉6が開かれて、パイプスペースPS内の状態が示される。図5中、7は水道管、8はガス管であり、この他図示を略す電力線が配設されている。
【0033】
パイプスペースPS内に配設された固定配管10のうち、ホース接続部14に相当する部位が、開閉式のボックス15内に位置されている(ホース接続部14がボックス15内に収納されている)。ホース接続部14を開閉する開閉弁16も、ボックス15内に収納されている。
【0034】
ホース接続部14に対する引込用ホース20の接続は、実施形態では強固な結合となるようにねじ式としてあるが、ワンタッチ式等適宜の形式の接続態様を選択することができる。また、開閉弁16は、実施形態ではレバー式としてある。開閉弁16は、図6に示す状態では閉弁状態とされていて、図6の状態から操作レバー16aを例えば図6中時計方向に略90度回転させることにより、開弁状態とされる。
【0035】
ここで、図2を参照しつつ、平面視において、ホース接続部14(つまり固定配管10)の好ましい位置設定について説明する。まず、ホース接続部14は、共用廊下2に沿った長さにおいて、各住戸J1〜J6の玄関(のドア3)に対してもっとも短い距離となる位置あるいはその付近の位置が選択される。図2では、住戸J1〜J6が横方向に直列に位置することから、この横方向略中央に位置する住戸J3(のパイプスペースPS)が、ホース接続部14の設定位置として選択されている。また、ホース接続部14を、住戸J4(のパイプスペースPS)として位置設定しても、必要な引込用ホース14の長さは同じである。
【0036】
なお、図2において、ホース接続部14からもっとも遠い距離にある住戸(の玄関ドア3)は、住戸J6である。図2において、ホース接続部14の位置を、もっとも端に位置する住戸J1やJ6(のパイプスペースPS)として選択した場合は、引込用ホース14の必要長さは、ホース接続部14を住戸J3やJ4(のパイプスペースPS)に位置設定した場合よりも長くする必要がある。
【0037】
次に、排水管を高圧洗浄する作業の点について説明する。なお、洗浄は、例えば居住階のうちもっとも低層階から最上階へと順次行うようになっており、以下の説明では、2階の住戸に着目して説明する。
【0038】
まず、次のようにして、洗浄の準備が行われる。
(1)車両Vを、ポンプ接続部11付近に停車させて、搭載しているポンプPWをポンプ接続部11に接続すると共に、タンクPAに洗浄液としての洗浄水を貯溜しておく。
(2)洗浄対象となる2階に引込用ホース14を搬送して、この引込用ホース14の基端部を2階のホース接続部14に対して接続しておく。
(3)引込用ホース14の手元側開閉弁21を閉弁した状態で、ポンプ接続部11用の開閉弁13を開弁させ、2階にあるホース接続部14用の開閉弁16のみを開弁状態としておく(他の階におけるホース接続部14用の開閉弁は全て閉弁状態)。
(4)上記(1)〜(3)の準備が終了次第、ポンプPWを運転して、固定配管10内に高圧の洗浄水を供給する。高圧の洗浄水は、2階にあるホース接続部14を介して、これに接続された引込用ホース20に到達されるが、手元側開閉弁21が閉弁されているために、引込用ホース20から洗浄水が噴射されることはない。
(5)引込用ホース20を、2階にある住戸J1〜J6のうち、任意の1つの住戸の玄関を通してその室内に引き込んで、その先端部位を、例えば洗面所の排水口を通してこれに連なる排水管内に挿入する。この挿入途中や、引き抜き途中で、適宜手元側開閉弁21を開弁させて、引込用ホース20の先端部から高圧の洗浄水を噴射させる。これにより、排水管内が洗浄される。同様にして、風呂場、流し台、洗濯機受け等の水場に連なる排水管を洗浄して、1つの住戸における排水管洗浄が終了される。このような手元側開閉弁21を適宜開弁させつつ行う洗浄作業そのものは、従来と同様にして行うことができる。
(6)上記(5)の洗浄作業を、2階にある別の住戸についても行う(通常は、端にある住戸から隣りの住戸へと順次洗浄作業が行われる)。
(7)2階にある全ての住戸についての洗浄が終了すると、次に3階の住戸に対する洗浄を行うための準備が行われる。この場合、事前に、引込用ホース20が排水管に挿入されている状態で、ホース接続部14用の開閉弁16を閉じる一方、手元側開閉弁21を開弁させて、引込用ホース20内の高圧の洗浄水を排水管内に排出しておく。この後、引込用ホース20のホース接続部14に対する接続を解除する。この後、引込用ホース20を、3階(の共用廊下2)へ移送して、3階にあるホース接続部14に対して接続すると共に、その開閉弁16を開弁させる。
(8)上記(7)の準備が完了すると、前記(5)で説明したのと同様の洗浄作業が、3階の住戸について順次行われる。このように、階を変更しつつ洗浄作業を行って、最上階にある住戸についての洗浄が終了すると、全ての洗浄作業の終了となる。
(9)洗浄作業が終了した際には、後処理として、次のことが行われる。まず、ポンプPWの運転が停止される。また、引込用ホース20が、最上階にあるホース接続部14から接続解除されて、回収される。さらに、ポンプ接続部11用の開閉弁13および最上階にあるホース接続部14用の開閉弁16をそれぞれ開弁状態として、固定配管10内の残留洗浄水を、ポンプ接続部11から排出させる。
【0039】
ここで、引込用ホース20は、ホース接続部14から、その階にある住戸J内に引き込まれる長さを有すればよく、短いものですむものである。すなわち、従来であれば、引込用ホース20の全長は、非常階段に連なる非常口からその階にある住戸J内に引き込まれる長さをL1とし、1階から最上階までの高さをL2とすると、少なくともL1+L2の長さだけ必要となる。これに対して、本発明では、実質的に、長さL2は不要となる(長さL2分を固定配管10で代替)。しかも、ホース接続部14の位置を、共用廊下2に沿った長さにおいて、その階における住戸(J1〜J6)の玄関(のドア3)に対してもっとも短くてすむ位置あるいはその付近に設定することにより、必要な引込用ホース20の長さを、より短くすることができる(上記長さL1に相当する長さの短縮化)。
【0040】
従来では、建物Tの階数が多い(例えば20階以上)場合に、上記長さL2が相当に長くなることから、例えば10m単位でもって引込用ホースを継ぎ足しつつ、所望長さを確保することも行われている。しかしながら、引込用ホースの継ぎ足しには、1カ所の接続解除作業を行った後に、新たに2カ所の接続作業を行う必要があり、極めて作業性が悪く、また多大な労力を要することになっていたが、本発明では、このような引込用ホースの継ぎ足しという作業は不要になる。
【0041】
引込用ホース20は短くてすむ(重量も軽くなる)ことから、階を跨いで引込用ホース14を移動させるのに、引込用ホース20を丸めた状態で1人の作業員が担いで移送したり、小型の搬送台車に搭載して移送することができ、しかもエレベータを使用して移動することも可能である。このことから、洗浄すべき階の変更に伴う引込用ホース20の移動についても作業性に優れたものとなる。
【0042】
図7は、本発明の第2の実施形態を示すものであり、前記実施形態と同一構成要素には同一符号を付してその重複した説明は省略する。本実施形態における建物T2(T対応)においては、おいて、住戸の数および配置が異なっている。すなわち、平面視となる図7において、中央に方形の吹き抜け部8が形成されて、住戸が、この吹き抜け部8の3辺に沿うように配置されている。住戸は、J11〜JJ25の合計15戸有している。
【0043】
共用廊下2が、吹き抜け部8を取り巻くように形成されている。また、固定配管10が1本のみとされている。各階におけるホース接続部14が、共用廊下2に沿って一端側の住戸J11と、多端側の住戸J25との中間位置あるいはその付近の住戸J18(のパイプスペース)に位置するように、固定配管10の位置が選択されている。このホース接続部14から住戸J11側に向けての経路が符号α1で示される。また、ホース接続部14から住戸J25側に向けての経路が符号α2で示される。
【0044】
ホース接続部14に接続された引込用ホース20は、住戸J11〜J18については経路α1に沿うように配設されて、各住戸J11〜J18の洗浄を行うことができる。また、住戸J19〜J25については、引込用ホース20を経路α2に沿って配設して、各住戸J19〜J25の洗浄を行うことができる。
【0045】
図7中、☆印で示す2カ所の離れた位置に固定配管10を設けて、ホース接続部14を1階あたり2箇所に分散配置することもできる。この場合、引込用ホース20の長さを短くできるように、経路αとα2とを結ぶ経路を、略等間隔で分断する位置に☆印(つまり固定配管10)を配設するのが好ましいものである。
【0046】
1階あたりの住戸数は、一般的には10戸前後以下であることが多いので、固定配管10は1本のみ設ければ十分である。ただし、1階あたりの住戸数が20前後を超えるような場合は、固定配管を2本以上設けるのが好ましい。固定配管10は、建物Tの建築時に、水道管やガス管等と共にパイプスペースPS内に設置することができる。既存の建物Tに対して、固定配管10を後付けすることもできる(建物Tの改修)。
【0047】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。
(1)洗浄液としては、水のみを用いる以外に、水に洗剤あるいはオゾンを溶かしたもの等、洗浄液として従来から使用されている適宜のものを使用することができる。
(2)複数の階について、同時並行的に洗浄作業を行うことができる。すなわち、例えば2階のホース接続部14に引込用ホース20を接続し、3階のホース接続部14にも引込用ホース20を接続して、この2階と3階とで同時並行的に洗浄作業を行うことができる。
(3)1本の固定配管10に対して、同じ階について複数のホース接続部14を形成することもできる。例えば、ホース接続部14として、2又あるいは3又のように複数に分岐された接続部を有する構造として、同時に2本以上の引込用ホース20を用いて、同じ階で洗浄作業を同時並行的に行うことができる。
(4)固定配管10の配設位置としては、パイプスペースPSに限らず、適宜の位置を選択することができる。例えば、通常使用される階段に沿って配設したり(特に建物Tがエレベータを有しない低層階の場合)、あるいは非常階段に沿って配設することができる。固定配管10を階段(非常階段を含む)に沿って配設する場合は、外観上の見栄え等の観点から、階段の側壁上端付近や天井に沿って配設することができる。この場合、各階において設置されるホース接続部14のみ、例えば1m以下の低い位置に設定することができる(固定配管10が、ホース接続部14の位置で一旦低い位置へ向けて迂回される)。
(5)建物Tの構造上の観点等から、固定配管10とホース接続部14との位置関係をかなり離れた位置に設定することもできる(ホース接続部14が固定配管10から長く延びることになる)。例えば、固定配管10を建物Tの外部に配設する一方、ホース接続部14を共用スペースから容易にアクセスできるように建物Tの内部(例えば共用廊下に沿う位置)に位置させることもできる。
(6)ポンプ接続部11は、建物Tの低所であれば、建物T内に設置することもできる。ポンプ接続部11用の開閉弁13を有しないものであってもよい。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、高層マンション等において排水管を洗浄するのに好適である。
【符号の説明】
【0049】
T:建物
S:敷地
V:車両
PW:ポンプ(洗浄液圧送用)
PA:タンク(洗浄液貯溜用)
J:住戸(図1
J1〜J6:住戸(図2
J11〜J25:住戸(図7
PS:パイプスペース
1F〜NF:階
3:ドア(玄関用)
6:扉(パイプスペース用)
10:固定配管
11:ポンプ接続部
12:ボックス(ポンプ接続部用)
13:開閉弁(ポンプ接続部用)
14:ホース接続部
15:ボックス(ホース接続部用)
16:開閉弁(ホース接続部用)
20:引込用ホース
21:手元側開閉弁
【要約】
【課題】住戸内に引き込まれて使用される引込用ホースを短くすることができ、しかも洗浄の作業性向上と労力軽減をも行えるようにする。
【解決手段】上下方向に建物Tを貫くパイプスペースPS内に、固定配管10が配設される。固定配管10の下端部はポンプ接続部11とされて、洗浄液を圧送するポンプPWが接続される。固定配管10には、各階において、ホース接続部14が形成されている。洗浄対象となる階にあるホース接続部14に引込用ホース20を接続して、この引込用ホース20から噴射される洗浄液によって、住戸(例えば図2のJ1〜J6)内の排水管が洗浄される。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7