特許第6530880号(P6530880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6530880
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】配設体固定具
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/30 20060101AFI20190531BHJP
   F16L 3/12 20060101ALI20190531BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
   H02G3/30
   F16L3/12 B
   E04B1/76 500Z
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-246032(P2015-246032)
(22)【出願日】2015年12月17日
(65)【公開番号】特開2017-112757(P2017-112757A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121429
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100122127
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 大刀夫
(72)【発明者】
【氏名】池場 賢次
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−236710(JP,A)
【文献】 特開2001−336234(JP,A)
【文献】 特開2008−116023(JP,A)
【文献】 特開2004−201395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/30
E04B 1/76
F16L 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎壁にクッション性を有する吸音・断熱材が貼り付けられた壁面に配設体を固定するための配設体固定具であって、
前記吸音・断熱材の厚さと略同一の高さを有し、前記吸音・断熱材に形成された挿通穴に挿通される固定具本体を備え、
該固定具本体は、前記吸音・断熱材の挿通穴に挿通された状態で前記基礎壁側に配置されて該基礎壁に固定される固定部と、前記吸音・断熱材の表面側に配置され、前記配設体を固定するための取付孔が形成されたフランジ部とを備え
前記フランジ部は、前記固定部と対向する位置に、前記固定部を前記基礎壁に取着するための取着具が挿通される取着具挿通開口が設けられていることを特徴とする配設体固定具。
【請求項2】
前記フランジ部は、前記配設体を支持する支持部を有することを特徴とする請求項1に記載の配設体固定具。
【請求項3】
基礎壁にクッション性を有する吸音・断熱材が貼り付けられた壁面に配設体を固定するための配設体固定具であって、
前記吸音・断熱材の厚さと略同一の高さを有し、前記吸音・断熱材に形成された挿通穴に挿通される固定具本体を備え、
該固定具本体は、前記吸音・断熱材の挿通穴に挿通された状態で前記基礎壁側に配置されて該基礎壁に固定される固定部と、前記吸音・断熱材の表面側に配置され、前記配設体を固定するための取付孔が形成されたフランジ部とを備え、
前記フランジ部は、一部が前記固定具本体の外方に突出して形成されているとともに、前記配設体を支持する支持部を有し、
前記支持部は、前記固定具本体の内方に形成されていることを特徴とする配設体固定具。
【請求項4】
基礎壁にクッション性を有する吸音・断熱材が貼り付けられた壁面に配設体を固定するための配設体固定具であって、
前記吸音・断熱材の厚さと略同一の高さを有し、前記吸音・断熱材に形成された挿通穴に挿通される固定具本体を備え、
該固定具本体は、前記吸音・断熱材の挿通穴に挿通された状態で前記基礎壁側に配置されて該基礎壁に固定される固定部と、前記吸音・断熱材の表面側に配置され、前記配設体を固定するための取付孔が形成されたフランジ部とを備え、
前記フランジ部は、前記配設体を支持する支持部を有し、
前記固定具本体は、一枚の金属板を折曲加工して、前記基礎壁側に配置される前記固定部と、前記固定部の両端から直角に折り曲げられて形成され、前記吸音・断熱材の厚さと略同一の高さを有する一対の立設片と、該各立設片における前記固定部と反対側の端部で直角に折り曲げられた一対の前記フランジ部とに形成されて成り、
前記立設片と前記フランジ部との折曲部は、前記フランジ部の中間部に形成され、前記フランジ部における前記折曲部より外側部分に前記取付孔が形成されているとともに内側部分に前記支持部が形成されていることを特徴とする配設体固定具。
【請求項5】
前記固定具本体は、一枚の金属板を折曲加工して、前記基礎壁側に配置される前記固定部と、前記固定部の両端から直角に折り曲げられて形成され、前記吸音・断熱材の厚さと略同一の高さを有する一対の立設片と、該各立設片における前記固定部と反対側の端部で直角に折り曲げられた一対の前記フランジ部とに形成されて成り、
前記立設片と前記フランジ部との折曲部は、前記フランジ部の中間部に形成され、前記フランジ部における前記折曲部より外側部分に前記取付孔が形成されているとともに内側部分に前記支持部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の配設体固定具。
【請求項6】
前記フランジ部は、前記支持部を含めて一つの平面に形成されて成ることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の配設体固定具。
【請求項7】
前記配設体は、配線・配管材であり、前記フランジ部の支持部に支持された状態で、前記取付孔を介して取り付けられるサドルによって固定されるよう形成されたことを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれかに記載の配設体固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎壁にクッション性を有する吸音・断熱材が貼り付けられた壁面に、配線・配管材等の配設体を固定するために用いられる配設体固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅や工場、体育館等の壁面、天井面、床面などには、保温、断熱、防火などのため、グラスウール等で形成された断熱材が貼り付けられている。また、ポンプなどの機械室、音楽ホール、スタジオ等の壁面、天井面、床面などには、吸音、防音のため同様の素材からなる吸音材が貼り付けられている。これらの断熱材、吸音材が貼り付けられた壁面等に沿って配線・配管材等の配設体を付設するときは、所定間隔毎に胴縁、ダクター、レースウェイ等の固定具を使用して取り付けている。ここで、固定具を断熱材、吸音材の表面に取り付けるときに、断熱材、吸音材はクッション性、弾力性を有するので、そのままでは、ネジやビス、ボルト、ボードアンカー等の取着具を締め付けたとき、固定具は断熱材、吸音材に押付けられて沈み込んでしまう。
【0003】
そこで、断熱材等の厚さと略同一長さを有する長ナットやスリーブを断熱材等の中に埋め込み、この長ナットやスリーブでダクター、レースウェイ等の固定具を支持させて断熱材等が沈み込まないようにしている。また、特許文献1に記載の固定具である支持金具は、V形の切欠き部が形成され、断熱材の厚さと同一の脚長を有し、断熱材側に突出する脚板部を備えていて、この脚板部の先端のエッジを断熱材に刺突し、脚板部のエッジを基礎壁に当接させた状態で、ボルト、ナットを使用して壁面に固定させるようになっており、これにより、保持板部が断熱材に食い込むのを阻止している。
【0004】
一例として、図4に、断熱材中に長ナットが介在し、ボルト及びナットで壁面に固定されて配線・配管材を支持する固定具を示す。図4において、固定具51は、断面略コ字状のダクター52とダクトクリップ53とで構成され、この固定具51を使用して配線・配管材31を壁面21に沿って布設するには、最初に、基礎壁22にボルト54を埋め込み、基礎壁22にグラスウール等からなる一定厚さの断熱材25を貼り付けた後、断熱材25の厚さと同一長さの長ナット55を断熱材25に埋め込む。次いで、ダクター52を断熱材25の上面及び長ナット55の上端部に載置する。そして、ダクター52の底面部の固定孔に挿通されたボルト54にナット56を締め付けてダクター52を壁面21に固定する。続いて、ダクター52の開口部両側の係止フランジ52aにダクトクリップ53の係止片53aを係止させてダクトクリップ53をダクター52に取り付け、一対のダクトクリップ53,53の上端部にビス57を取着して配線・配管材31を挟持、固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−214243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の固定具51においては、ボルト54に締め付けられるナット56は、基礎壁22から断熱材25の厚さ分だけ上方に離間したダクター52の底面部に位置する。このため、ナット56は基礎壁22から離間した相当高い位置にあるから、ボルト54は、図4の矢印で示すように、基礎壁22への螺着箇所を支点として左右水平方向にぶれたり傾いたりし易く、ナット56も左右水平方向に振れ易い状態にある。つまり、ボルト54は不安定な状態で締め付けられ、固定具51は不安定な状態で壁面21に固定される。ここで、図4に示す固定具51において、ナット56と基礎壁22との間には、断熱材25及び長ナット55が介在する。しかし、断熱材25はクッション性を有するので、ボルト54やナット56の左右水平方向の傾きや振れ等を阻止することにはならず、また、長ナット55は、ダクター52を下方から支持して固定具51が下方に沈み込むのを阻止するものではあっても、同様に、ボルト54やナット56の左右水平方向の傾きや振れ等を阻止するものではない。
【0007】
なお、壁面21への配線・配管材31の固定は、前記特許文献1に記載の支持金具を使用して行なうこともできる他、最初に、基礎壁22に断熱材25を貼り付け、長ナット55やスリーブを断熱材25に埋め込んだ後、ダクター52を断熱材25の上面及び長ナット55やスリーブの上端部に載置し、その後に、固定用のボルトを上方からダクター52の底面部の固定孔に挿通し、ドライバを使用して基礎壁22に螺着して行なうこともできる。しかし、これらのいずれの場合も、前述のものと同様に、固定用のボルトは基礎壁22から相当離間した高い位置で締め付けられるから、ボルトは不安定な状態で締め付けられ、固定具51は不安定な状態で壁面21に固定される。
【0008】
そこで、本発明は、吸音・断熱材が貼り付けられた壁面に配設体を固定するものであって、安定した状態で前記壁面に固定できる配設体固定具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の配設体固定具は、基礎壁にクッション性を有する吸音・断熱材が貼り付けられた壁面に配設体を固定するためのものであって、前記吸音・断熱材の厚さと略同一の高さを有し、前記吸音・断熱材に形成された挿通穴に挿通される固定具本体を備え、該固定具本体は、前記吸音・断熱材の挿通穴に挿通された状態で前記基礎壁側に配置されて該基礎壁に固定される固定部と、前記吸音材の表面側に配置され前記配設体を固定するための固定孔が形成されたフランジ部とを備え、前記フランジ部は、前記固定部と対向する位置に、前記固定部を前記基礎壁に取着するための取着具が挿通される取着具挿通開口が設けられている。
【0010】
請求項2の配設体固定具は、前記フランジ部が、前記配設体を支持する支持部を有している。
請求項6の配設体固定具は、前記フランジ部が、前記支持部を含めて一つの平面に形成されてなる。
請求項3、5の配設体固定具は、前記フランジ部の一部が前記固定具本体の外方に突出して形成され、前記支持部は、前記固定具本体の内方に形成されている。
【0011】
請求項4、5の配設体固定具は、前記固定具本体が、一枚の金属板を折曲加工して、前記基礎壁側に配置される前記固定部と、前記固定部の両端から直角に折り曲げられて形成され、前記吸音・断熱材の厚さと略同一の高さを有する一対の立設片と、該各立設片における前記固定部と反対側の端部で直角に折り曲げられた一対の前記フランジ部とが形成されてなる。そして、前記立設片と前記フランジ部との折曲部は、前記フランジ部の中間部に形成され、前記フランジ部における前記折曲部より外側部分に前記取付孔が形成されているとともに内側部分に前記支持部が形成されている。
請求項7の配設体固定具は、前記配設体が、配線・配管材であり、前記フランジ部の支持部に支持された状態で、前記取付孔を介して取り付けられるサドルによって固定されるよう形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、固定具本体が、吸音・断熱材の挿通穴に挿通された状態で基礎壁側に配置された固定部にネジやボードアンカー等の取着具が取り付けられて、基礎壁に固定される。すなわち、取着具は基礎壁に近接した位置で取着されるので、取着具が基礎壁への螺着部を支点としてぶれたり傾斜したりすることがなく、取着具を安定して取着でき、配設体固定具を基礎壁に安定した状態で固定することができる。また、取着具は、固定部本体の固定部において基礎壁に近接する位置で取着できるとともに通常の短かめのものを使用できるので、基礎壁に取着し易い。
【0013】
特に、フランジ部が、支持部を含めて一つの平面に形成されてなる発明は、配設体固定具の見栄えが良く、室内外観を損なわない。また、配線・配管材を支持部上に安定して取り付けることができる。加えて、フランジ部の裏面全体を吸音・断熱材の表面に均等に当接させることができ、吸音・断熱材の表面がフランジ部により部分的に押されて一部が凹み変形するのを防止することができる。
特に、前記フランジ部の一部が前記固定具本体の外方に突出して形成され、前記支持部は、前記固定具本体の内方に形成されている発明は、例えば、フランジ部の外方に突出する部分を使用してサドルを取り付け、配線・配管材をフランジ部の中央部分で固定させることができる。
【0014】
特に、固定具本体が、一枚の金属板を折曲加工して形成されている発明は、固定具本体は、全体としての強度、剛性が大きく、また、安価にかつ簡単に製造することができる。
特に、配線・配管材が、フランジ部の支持部に支持された状態で、前記取付孔を介して取り付けられるサドルによって固定されるよう形成されている発明は、壁面への配線・配管材の固定に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の配設体固定具を示す斜視図である。
図2図1の固定具を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
図3図1の固定具を使用して、壁面に配線・配管材を固定する手順を示す説明図である。
図4】従来の配設体固定具を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の配設体固定具を図に基づいて説明する。
図1及び図2において、配設体固定具1は、基礎壁22にクッション性、弾力性を有する吸音・断熱材が貼り付けられた壁面21に配設体を固定するために使用されるものであり、固定具本体11を備えている。本実施形態では、壁面21に固定される配設体として、壁面21に沿って布設される配線・配管材を例示する。また、吸音・断熱材として、ポンプなどの機械室、音楽ホール、スタジオ等の壁面、天井面、床面などにおける基礎壁に貼り付けられるグラスウール等からなる吸音材を例示する。
【0017】
前記固定具本体11は、基礎壁22側に配置されて基礎壁22に固定される固定部12と、固定部12の両端から図2(b)の上方に向けて直角に折り曲げられて垂直上方に立設する一対の立設片13,13と、各立設片13における固定部12と反対側の端部すなわち図2(b)の上端部で水平方向に直角に折り曲げられた一対のフランジ部14,14とが形成されて成る。立設片13とフランジ部14との間の折曲部15は、フランジ部14の中間部に形成されている。更に、固定具本体11は、吸音材23に形成された後述の挿通穴24に挿通される大きさに形成されている。
【0018】
固定部12は、図1及び図2において固定具本体11の底面部に形成され、矩形平板状に形成されている。固定部12の中央には、ビス、ネジ、ボードアンカーなどの取着具の軸部が挿通される固定孔12aが形成されている。固定部12は、固定具本体11が吸音材23の挿通穴24に挿通された状態で基礎壁22の表面側に配置されるようになっている。
【0019】
立設片13は、矩形平板状に形成され、吸音材23の厚さtと略同一の高さhを有する。一対の立設片13,13は、間隔をあけて対向し、配設体固定具1が壁面21に固定されるときには、吸音材23の挿通穴24内にしっくり嵌め込まれる大きさに形成されているとともに、一対の立設片13,13の間に形成される空間は、ボードアンカー等の取着具及びそれを取り付けるためのドライバ等の工具が挿通可能な大きさに形成されている。
【0020】
フランジ部14は、一部が、立設片13とフランジ部14との折曲部15を境として固定具本体11の外方に水平方向に突出して形成され、折曲部15より外側部分には配線・配管材31を固定するために用いられるサドル44が取り付けられる複数の取付孔14aが形成されている。取付孔14aが複数形成されているのは、各種サイズの異なる配線・配管材31を取り付けられるようにするためである。折曲部15を境とする取付孔14aと反対側の内側部分すなわち固定具本体11の内方には配線・配管材31が載置され、これを下方から支持する支持部16が形成されている。フランジ部14は平面板状に形成され、支持部16を含めて全体が一つの平面に形成されている。但し、フランジ部14の中央部分には、ボードアンカー等の取着具及びドライバ等の工具を挿入して締め付け作業を行なうための取着具挿通開口14bが形成されている。
【0021】
これら固定部12、立設片13及びフランジ部14からなる固定具本体11は、一枚の鋼板等からなる金属板を打ち抜いてプレスによる折曲加工により一体に形成されている。折曲加工された後は、一対のフランジ部14,14の相対向する端部14c,14c同士は極く近接しまたは接触している。
【0022】
基礎壁22に貼り付けられる吸音材23は、無機素材を綿状に繊維化したグラスウール、ロックウールなどからなり、一定厚さの板状に形成されている。吸音材23の厚さtは各種サイズがあり、本実施形態では50mmのサイズのものが使用されている。それに対応して、配設体固定具1の立設片13の高さhも50mmに設定されている。
【0023】
次に、上記のように構成された本実施形態の配設体固定具1を使用して、吸音材23が貼り付けられた壁面21に配設体としての配線・配管材31を固定する手順を図3に基づいて説明する。なお、ここでは、壁面21を構成する基礎壁22は石膏ボードが使用されており、これに取り付けられる取着具としてボードアンカーが使用される場合を説明する。
【0024】
最初に、図3(a)に示すように、基礎壁22に貼り付けられている吸音材23に、ホルソーを使用して周縁を切断し、内部の吸音材23の素材を取り除くことによって、挿通穴24を形成する。挿通穴24はこの内部に配設体固定具1の固定部12及び立設片13を挿通できる大きさに形成する。次に、図3(b)に示すように、この挿通穴24内に固定具本体11を挿通して取り付ける。なお、吸音材23の挿通穴24はホルソーを使用して切断し、内部の素材を取り除きながら形成するので、挿通穴24内の基礎壁22に近い底部に、完全に取り切れない吸音材23の綿状繊維が僅かに残存することもあるが、そのときは、挿通穴24内の綿状繊維を押し潰しながら固定具本体11の固定部12及び立設片13を挿入する。挿通穴24に固定具本体11を挿通すると、固定具本体11はフランジ部14の裏面が吸音材23の表面に丁度接触する状態となる。なお、挿通穴24はホルソー以外の工具を使用して形成してもよい。
【0025】
そこで、次に、ボードアンカー41を使用して固定具本体11を基礎壁22に固定する。それには、まず、フランジ部14の中央部に設けられた取着具挿通開口14bからボードアンカー41を挿入し、先端部を固定部12の固定孔12aに挿入した後、ドライバ等の工具61を使用して、図3(c)に示すように、基礎壁22にねじ込む。次いで、図3(d)に示すように、ボードアンカー41の上端からその内部に取付ネジ42を挿入する。そして、図3(e)に示すように、ドライバ等の工具61で取付ネジ42をボードアンカー41の内部に押し込みながら締め付ければ、ボードアンカー41は取付ネジ42の軸部が先端割れのアーム43を側方に開脚状態に押し拡げながら内部に螺着される。これにより、石膏ボードからなる基礎壁22にボードアンカー41を取着し、固定具本体11の固定部12を基礎壁22に固定させることができる。
【0026】
以上により、ボードアンカー41を使用して固定具本体11を基礎壁22に固定したら、図3(f)に示すように、フランジ部14の支持部16上に配線・配管材31を載置し、フランジ部14の取付孔14aを使用してサドル44を取り付けて配線・配管材31を挟持しフランジ部14に固定する。サドル44は、下部両側の取付座44aに設けた挿通孔44bにボルト45を挿通し、ナット46を締め付けることにより、フランジ部14に取り付けることができる。サドル44が取り付けられた後は、配線・配管材31は、フランジ部14の中央部分に載置、固定され、これにより、配設体固定具1を使用して吸音材23が貼り付けられた壁面21に配線・配管材31を固定する作業が完了する。
【0027】
なお、この種の吸音室、防音室の基礎壁22は吸音、防音のため、石膏ボードなどが使用されるが、基礎壁22が石膏ボードでなく、木製板材等で形成されている場合は、ボードアンカー41でなく、通常のタッピングネジ、木ネジ等の取着具により固定具本体11を基礎壁22に固定することができる。また、比較的大きい配設体固定具1を基礎壁22に固定する場合などでは、六角タッピングネジなどを使用して固定することもでき、その場合、工具として六角ボルトナットドライバ等を用いることができる。
【0028】
次に、本実施形態の配設体固定具1の作用を説明する。
配設体固定具1の固定具本体11は、吸音材23に形成された挿通穴24に挿通された状態で基礎壁22側に配置された固定部12において基礎壁22に固定される。つまり、固定具本体11は、ボードアンカー41が基礎壁22に近接した位置において基礎壁22に螺着され取り付けられることにより、該基礎壁22に固定される。
【0029】
この点について、従来の配設体固定具においては、ネジ、ボードアンカー等の取着具は、軸部が固定対象である基礎壁22から上方に大きく突出し、断熱材の厚さ分の長いスパンで基礎壁22から上方に相当離間した位置において締め付けられるので、基礎壁22への螺着部を支点として左右水平方向に振れ易く、配設体固定具は、不安定な状態で固定される。しかし、本発明の配設体固定具1においては、ボードアンカー41は、取付ネジ42の頭部が基礎壁22と当接する固定部12の上面に位置し、軸部が基礎壁22から上方に突出しない状態で基礎壁22に取着される。このため、固定具本体11は基礎壁22に安定した状態で固定される。
【0030】
また、従来の配設体固定具においては、ボードアンカー等の取着具を使用して固定するときに、軸部は相当長いものを使用し、基礎壁22から相当離間した位置で締め付けるので、取着具による締め付けにおいて、作業し難かった。これに対し、本発明の配設体固定具1では、ボードアンカー41は、通常の比較的短かいものを使用できるし、基礎壁22と当接する固定部12の位置で取り付けることができるので、作業し易い。
【0031】
更に、本実施形態のフランジ部14は、支持部16を含めて一枚の平面板状に形成されているので、見栄えが良く、室内外観を損なわない。また、配線・配管材31を支持部16上に載置して安定して取り付けることができる。加えて、フランジ部14の裏面は、全体的に吸音材23の表面に均等に当接する。このため、フランジ部14の一部が突出していたりすると吸音材23の表面が部分的に押されて凹み変形するが、本実施形態のフランジ部14は、そのような不具合を生じない。
【0032】
更に、固定具本体11は、一枚の金属板を折曲加工して形成されているので、全体として強度、剛性が大きく、また、安価にかつ簡単に製造することができる。
【0033】
ところで、上記実施形態の固定具本体11は、立設片13が相対向して左右に一対設けられているが、いずれか一方のみに形成されたものとしてもよい。また、逆に、立設片13は、前後左右の四方に立設し、四角筒状に形成されたものとしてもよい。この場合は、周囲全体が立設片13によって覆われるので、ボードアンカー41の取付ネジ42を締め付ける際に、吸音材23のウールがアーム43や取付ネジ42の軸部に絡まるのを防止できる。固定具本体11は、また、円筒状などの筒状に形成してもよい。
【0034】
更に、上記実施形態のフランジ部14は、平面板状に形成され、支持部16を含めて全体が一つの平面に形成されているが、この形状に限られるものではない。
そして、フランジ部14におけるサドル44を取り付けるための取付孔14aは、固定具本体11の外方すなわち折曲部15より外側に設けられているが、固定具本体11の内方すなわち折曲部15より内側に設けてもよい。
また、配線・配管材31を載置し支持する支持部16は、固定具本体11の内方すなわち折曲部15より内側に設けられているが、固定具本体11の外方すなわち折曲部15より外側に設けてもよい。
更に、フランジ部14の取付孔14a及び支持部16は、共に固定具本体11の内方または外方に設けてもよい。
加えて、支持部16は、フランジ部14に形成されているが、これに限られるものではなく、フランジ部14とは別個に形成してもよい。
【0035】
更には、上記実施形態の固定具本体11は、プレスによる折曲加工により一体に形成されているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、2部材以上を接合、組み合わせて形成してもよい。
また、固定具本体11は、一枚の鋼板等からなる金属板で形成しているが、これに限定されず、合成樹脂材等で形成してもよい。
加えて、フランジ部14は、中央において端部14c同士が当接または僅かな隙間で近接した状態で対向しているが、端部14c同士を溶接或いは接着で接合してもよく、この場合は、固定部12本体の強度、剛性が更に増す。
【0036】
なお、上記実施形態では、支持部16は配線・配管材31を支持するものを例示しているが、支持部16は、他の例えば、配線ボックス等を支持することもできる。
【0037】
加えて、上記実施形態では、基礎壁22に貼り付けられるものとして、吸音材23を例示しているが、住宅や工場、体育館等の壁面、天井面、床面等で断熱、防火、保温、保冷などのために使用される断熱材、保温材など、無機素材を綿状に繊維化したグラスウール、ロックウールなどからなり、クッション性、弾力性を有するものを挙げることができる。また、本発明は、吸音材、断熱材として、クッション性、弾力性を有する樹脂発泡体等で形成されたものにも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 配設体固定具 22 基礎壁
11 固定具本体 23 吸音材
12 固定部 24 挿通穴
12a 固定孔 31 配線・配管材
13 立設片 41 ボードアンカー
14 フランジ部 42 取付ネジ
14a 取付孔 44 サドル
15 折曲部 h 立設片の高さ
16 支持部 t 吸音材の厚さ
21 壁面
図1
図2
図3
図4