(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔フィルム状封止材〕
実施形態に係るフィルム状封止材は、一層から成ってもよいし、複数層から成ってもよい。フィルム状封止材が一層から成る場合、フィルム状封止材は、水蒸気バリア性樹脂層のみから成る。一方、フィルム状封止材が複数層から成る場合、フィルム状封止材は、水蒸気バリア性樹脂層および一以上のその他の層から成る。
【0025】
複数層から成るフィルム状封止材において、その他の層が一つ存在する場合、水蒸気バリア性樹脂層と一つのその他の層とが直接積層される。一方、その他の層が複数存在する場合、水蒸気バリア性樹脂層および複数のその他の層は種々の順番で積層されてよく、例えば、水蒸気バリア性樹脂層が複数のその他の層の間に積層されてもよい。その他の層の例としては、接着性樹脂層が好ましく挙げられる。
【0026】
実施形態に係るフィルム状封止材の両面は、被着体に対して接着性を示す。フィルム状封止材が一層から成る場合、すなわち水蒸気バリア性樹脂層のみから成る場合、水蒸気バリア性樹脂層が接着性を有する。一方、フィルム状封止材が複数層から成る場合、フィルム状封止材の最も外側に位置する層が接着性を有する。例えば、フィルム状封止材の一方の面に水蒸気バリア性樹脂層が存在し、他方の面に接着性樹脂層が存在する場合、水蒸気バリア性樹脂層と接着性樹脂層とが接着性を有する。また、フィルム状封止材の両方の面に、2つの接着性樹脂層がそれぞれ存在する場合、2つの接着性樹脂層が接着性を有する。
【0027】
実施形態に係るフィルム状封止材の両面には、接着性を有する面を保護する等の目的で、剥離シートが積層されていてもよい。この剥離シートは、フィルム状封止材を使用する際に、適宜剥離される。
【0028】
なお、本明細書における「最も外側に位置する層」とは、フィルム状封止材が封止に供されたときに最も外側に位置する層をいう。したがって、「最も外側に位置する層」に剥離シートは含まれない。
【0029】
図1および2に、フィルム状封止材の具体的な例を示す。
【0030】
図1は、第1の実施形態に係るフィルム状封止材1Aの概略断面図である。
図1に示されるように、第1の実施形態に係るフィルム状封止材1Aは、水蒸気バリア性樹脂層12を備える。
【0031】
図2は、第2の実施形態に係るフィルム状封止材1Bの概略断面図である。
図2に示されるように、第2の実施形態に係るフィルム状封止材1Bは、第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bと、第1の接着性樹脂層11Aと第2の接着性樹脂層11Bとの間に位置する水蒸気バリア性樹脂層12とを備える。
【0032】
(1)水蒸気バリア性樹脂層12
水蒸気バリア性樹脂層12は吸湿剤を含有する。さらに、水蒸気バリア性樹脂層12から吸湿剤を除いた材料(以下「主材M」という)は、高い水蒸気バリア性を有する。具体的には、主材Mの水蒸気透過率は、50μmの厚さにて測定した場合に10g/(m
2・day)以下である。高い水蒸気バリア性を示す主材Mが水分の透過を防ぐことに加えて、水分が水蒸気バリア性樹脂層12に浸入したとしても、吸湿剤がこの水分を取り込む。結果として、水蒸気バリア性樹脂層12は、より一層高い水蒸気バリア性を有することとなり、このような水蒸気バリア性樹脂層12を有するフィルム状封止材1A,1Bの水蒸気バリア性も非常に優れたものとなる。なお、水蒸気バリア性樹脂層12は、単層であってもよく、複数層であってもよい。
【0033】
(1.1)水蒸気バリア性樹脂層12を構成する樹脂
水蒸気バリア性樹脂層12を構成する樹脂は、水蒸気透過率の低い樹脂であることが好ましい。水蒸気バリア性樹脂層12を構成する樹脂の例は、ゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂およびエポキシ系樹脂である。これらの樹脂は1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
上記樹脂を含む主材Mの水蒸気透過率は、50μmの厚さの主材Mから成る層にて測定した場合に、10g/(m
2・day)以下であり、8g/(m
2・day)以下であることが好ましく、特に6g/(m
2・day)以下であることが好ましい。なお、本明細書において、水蒸気透過率とは、ある厚さを有する測定対象について、その1m
2の領域を1日の間に透過する水の質量(g/(m
2・day))として定義される。このときの厚さは、例えば50μmとされる。10g/(m
2・day)以下という低い水蒸気透過率を有することで、フィルム状封止材1A,1Bは非常に高い水蒸気バリア性を達成することができる。なお、水蒸気バリア性樹脂層12が、吸湿剤以外にシクロオレフィン系樹脂のみを含む場合には、シクロオレフィン系樹脂の好ましい水蒸気透過率は、上記の水蒸気透過率の通りとなる。
【0035】
なお、主材Mの水蒸気透過率は、例えば、吸湿剤を使用せずに層を製造し、その水蒸気透過率を測定することで得ることができる。
【0036】
なお、水蒸気バリア性樹脂層12は、接着性を有するものであってもよい。すなわち、水蒸気バリア性樹脂層12が接着性を有するように、水蒸気バリア性樹脂層12を構成する樹脂を選択してもよい。特に、第1の実施形態に係るフィルム状封止材1Aのように接着性樹脂層を含まない場合、または、1つの接着性樹脂層を含む場合、水蒸気バリア性樹脂層12は、接着性を有することが好ましい。接着性を有する水蒸気バリア性樹脂層12は、後述するガスバリアフィルムや電子素子に対して良好に接着することができる。
【0037】
ゴム系樹脂は、高い水蒸気バリア性と高い接着性とを同時に達成できる点で好ましい。ゴム系樹脂としては、例えば、天然ゴム、天然ゴムに(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレンおよび(メタ)アクリロニトリルから選ばれる1種又は2種以上の単量体をグラフト重合させた変性天然ゴム、ポリイソブチレン系樹脂、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエンの共重合体(ニトリルゴム)、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体、ウレタンゴム、スチレン−1,3−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体等が挙げられる。これらのゴム系化合物は1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ゴム系樹脂としては、ポリイソブチレン系樹脂を含むものが好ましい。
【0038】
ポリイソブチレン系樹脂は、モノマー成分としてイソブチレンを含む重合体(共重合体の概念を含む)をいい、モノマー成分がイソブチレンのみからなる単独重合体であってもよいし、モノマー成分としてイソブチレンと他のモノマーを重合して得られる共重合体であってもよい。ポリイソブチレン系樹脂は、一部を臭素化又は塩素化したハロゲン化ポリイソブチレン系樹脂であってもよく、一部を水酸基、カルボキシル基等の官能基で置換したものであってもよい。
【0039】
上記他のモノマーとしては、例えば、イソプレン、n−ブテン、ブタジエン、イソプレン、スチレン等が挙げられる。他のモノマーは単独で又は2種以上を併用して用いてもよい。なお、ポリイソブチレン系樹脂が共重合体である場合は、原料モノマー中、イソブチレンは主成分として最大量のモノマーである。
【0040】
上記の中でも、ポリイソブチレン系樹脂は、水蒸気バリア性に優れるという点から、モノマー成分がイソブチレンのみからなる単独重合体またはモノマー成分としてイソブチレンとイソプレンとを重合して得られるイソブチレン−イソプレン共重合体であることが好ましい。
【0041】
水蒸気バリア性樹脂層12に用いるゴム系樹脂の数平均分子量は、通常10万〜500万、好ましくは10万〜300万、より好ましくは10万〜100万である。
【0042】
ポリエステル系樹脂とは、多価カルボン酸とポリオールとの重縮合により得られる重合体、又はこれを変性したものである。多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸等が挙げられる。ポリオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族アルコール、およびポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオールが挙げられる。これらのポリエステル系樹脂は1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
ポリオレフィン樹脂とは、重合体を構成するモノマー成分として1種または2種以上のオレフィンのみを含む重合体(共重合体の概念を含む)をいう。すなわち、ここでいうポリオレフィン樹脂は、1種のオレフィンの単独重合体、または2種以上のオレフィンの共重合体である。オレフィンとしては、炭素数2〜8のα−オレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、1−ヘキセン、スチレン等が挙げられ、中でもエチレンおよびプロピレンが好ましい。
【0044】
上記ポリオレフィン樹脂としては、具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE,密度:910kg/m
3以上、915kg/m
3未満)、低密度ポリエチレン(LDPE,密度:910kg/m
3以上、915kg/m
3未満)、中密度ポリエチレン(MDPE,密度:915kg/m
3以上、942kg/m
3未満)、高密度ポリエチレン(HDPE,密度:942kg/m
3以上)等のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン−プロピレン共重合体などが挙げられる。これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。上記の中でも、低密度ポリエチレンが好ましく、特に直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0045】
シクロオレフィン系樹脂とは、重合体を構成するモノマー成分としてシクロオレフィンを含む重合体(共重合体の概念を含む)を主成分とする樹脂をいい、モノマー成分としてシクロオレフィンのみを含む重合体であってもよいし、モノマー成分としてシクロオレフィンおよび他のモノマーを含む重合体(共重合体)であってもよい。上記他のモノマーとしては、本実施形態に係るフィルム状封止材1A,1Bの目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレンなど炭素数2以上のαオレフィン、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0046】
上記の中でも、シクロオレフィン系樹脂は、後述する接着性樹脂層11A,11Bとの密着性に優れ、フィルム状封止材1Bの層間剥離を防止できるという点から、モノマー成分としてシクロオレフィンとエチレンとを含む共重合体であることが好ましい。
【0047】
シクロオレフィン系樹脂は、ガラス転移温度が20〜150℃であるものが好ましく、特に25〜130℃であるものが好ましく、さらには30〜110℃であるものが好ましい。シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度が20℃以上であると、当該シクロオレフィン系樹脂中におけるモノマー成分としてのシクロオレフィンの含有量が多くなり、水蒸気バリア性を発現し易くなる。また、シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度が150℃以下であると、水蒸気バリア性樹脂層12が電子素子等の封止対象物の段差等に良好に追従し、封止対象物を確実に封止することができる。
【0048】
シクロオレフィン系樹脂は、親水性基を有さないことが好ましい。親水性基を有すると、水蒸気バリア性が低下するおそれがある。親水性基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルホン酸基、メルカプト基等が挙げられる。一方、シクロオレフィン系樹脂は、疎水性基を有していてもよい。疎水性基であれば、水蒸気バリア性が低下するおそれはない。疎水性基としては、例えば、アルキル基、アリール基等が挙げられる。
【0049】
好ましいシクロオレフィン系樹脂としては、下記構造式(a)
【化1】
(式(a)中、mおよびnは1以上の整数である。R
1およびR
2は水素原子またはアルキル基を示し、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。R
1およびR
2は、それらが結合して環を形成していてもよい。)
で示されるシクロオレフィン重合体(モノマー成分としてシクロオレフィンとエチレンとを含む共重合体;COC)、下記構造式(b)
【化2】
(式(b)中、mおよびnは1以上の整数である。R
1およびR
2は水素原子またはアルキル基を示し、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。R
1およびR
2は、それらが結合して環を形成していてもよい。)
で示されるシクロオレフィン重合体(モノマー成分としてシクロオレフィンとエチレンとを含む共重合体;COC)、下記構造式(c)
【化3】
(式(c)中、nは1以上の整数であり、R
1およびR
2は水素原子またはアルキル基を示し、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。R
1およびR
2は、それらが結合して環を形成していてもよい。)
で示されるシクロオレフィン重合体(モノマー成分としてシクロオレフィンのみを含む重合体;COP)、および下記構造式(d)
【化4】
(式(d)中、mおよびnは1以上の整数であり、R
1およびR
2は水素原子またはアルキル基を示し、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。R
1およびR
2は、それらが結合して環を形成していてもよい。)
で示されるシクロオレフィン重合体(モノマー成分としてシクロオレフィンのみを含む重合体;COP)が挙げられる。これらのシクロオレフィン重合体は、水蒸気バリア性に非常に優れ、入手も容易である。これらのシクロオレフィン重合体は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
シクロオレフィン重合体は、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、ZEONEX(登録商標)(日本ゼオン社製,ノルボルネン系モノマーの開環メタセシス重合体水素化ポリマー)、TOPAS(登録商標)(ポリプラスチックス社製,ノルボルネンとエチレンとのコポリマー)、ZEONOR(登録商標)(日本ゼオン社製,ジシクロペンタジエンとテトラシクロペンタドデセンとの開環重合に基づくコポリマー)、アペル(登録商標)(三井化学社製,エチレンとテトラシクロドデセンとのコポリマー)、アートン(登録商標)(JSR社製,ジシクロペンタジエンおよびメタクリル酸エステルを原料とする極性基を含む環状オレフィン樹脂)などが挙げられる。
【0051】
エポキシ系樹脂としては、例えば、1官能性エポキシ化合物、2官能性エポキシ化合物、3官能以上の多官能性エポキシ化合物、エポキシ基を有するポリマーまたはオリゴマー、およびエポキシ基を有するビニルモノマーと他のビニルモノマーなどとの共重合体ポリマーまたはオリゴマーが挙げられる。これらのエポキシ系樹脂は1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
水蒸気バリア性樹脂層12は、上記樹脂以外に、他の樹脂成分を含有してもよい。他の樹脂成分としては、例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂、スチレン系樹脂、シラン系樹脂などが挙げられる。
【0053】
(1.2)吸湿剤
水蒸気バリア性樹脂層12は、吸湿剤を含有する。吸湿剤は、一般的に、化学系吸湿剤および物理系吸湿剤の2つに大別される。
【0054】
化学系吸湿剤は、水分子を化学反応の反応物として利用することで、周囲の水分を取り込む吸湿剤である。本実施形態に係るフィルム状封止材1A,1Bでは、あらゆる化学系吸湿剤を使用することができるが、金属酸化物、水分子と反応して水和物を生成する化合物、またはメタロキサン結合を含む化合物を使用することが好ましい。これらの化学系吸湿剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
化学系吸湿剤として使用できる金属酸化物の例は、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウムおよび酸化ストロンチウムである。これらの金属酸化物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。この中で、酸化カルシウムは、水分子との間で以下の式(1)の反応を行う。この反応の結果、水分子は、反応生成物である水酸化カルシウム中の水酸基に変換される。酸化カルシウム以外の金属酸化物も、式(1)と同様の反応を行う。
【化5】
【0056】
化学系吸湿剤として使用できる、水分子と反応して水和物を生成する化合物の例は、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム・アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムおよび硫酸銅である。これらの化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。この中で、硫酸マグネシウムは、水分子との間で以下の式(2)の反応を行う。この反応の結果、水分子は、水和物中の水和水に変換される。硫酸マグネシウム以外の化合物も、式(2)と同様の反応を行う。
【化6】
【0057】
メタロキサン結合を含む化合物とは、メタロキサン結合、すなわち金属元素と酸素との結合を含む化合物である。そのような化合物の例は、一般式M(OR)
n(Mは金属元素、Rは少なくとも水素および炭素を含む化合物、nは金属元素の酸化数を表す)で表される化合物、および式[M(OR)
n’−O]
m(Mは金属元素、Rは水素および炭素を含む化合物、n’は1以上の整数であって金属元素の酸化数から2を引いた値、mは1以上の整数を表す)で表される構造を有する化合物である。なお、Rの化合物は、酸素をさらに含んでよい。また、Rの例は、アルキル基およびアシル基である。また、メタロキサン結合を含む化合物は、一般にメタロキサン化合物またはポリメタロキサン化合物と称される化合物を含む。なお、本明細書において、メタロキサン化合物およびポリメタロキサン化合物の両方を意味する表現として、(ポリ)メタロキサン化合物という語句を使用する場合がある。メタロキサン結合を含む化合物のより具体的な例は、金属アルコキシド、金属アシレートおよび金属キレートである。メタロキサン結合を含む化合物の水と反応する部位は、主にM−O−RまたはM−O−Mである。これらの化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
金属アルコキシド(別名:金属アルコレート)は、M−O−Rの部位において水と反応する化合物の例である。金属アルコキシドの例は、一般式M(OR)
nにおいてRがアルキル基である化合物、または式[M(O−R)
n’−O]
mにおいてRがアルキル基である構造を有する化合物である。金属アルコキシドのより具体的な例は、オルトチタン酸テトラメチル(別名:テトラメトキシチタン(IV)、チタン(IV)テトラメトキシド)、アルミニウムエトキシドおよびアルミニウムオキサイドイソプロポキサイドトリマーである。これらの金属アルコキシドは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
上記アルミニウムエトキシドは、水分子との間で以下の式(3)の反応を行う。この反応において、水分子は、アルミニウムエトキシドの加水分解に利用され、その結果、水酸化アルミニウムおよびエタノールが生成される。アルミニウムエトキシド以外の化合物も、式(3)と同様の反応を行う。
【化7】
【0060】
金属アシレートは、M−O−RまたはM−O−Mの部位において水と反応する化合物の例である。金属アシレートの中でM−O−Rの部位において水と反応する化合物の例は、一般式M(OR)
nにおいてRがアシル基である化合物である。金属アシレートの中でM−O−Mの部位において水と反応する化合物の例は、式[M(O−R)
n’−O]
mにおいてRがアシル基である構造を有する化合物である。金属アシレートの具体例は、環状アルミニウムオキサイドオクチレートおよび環状アルミニウムオキサイドステアレートである。これらの金属アシレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。環状アルミニウムオキサイドオクチレートは、水分子との間で以下の式(4)の反応を行い、生成物は1種類のみである。環状アルミニウムオキサイドオクチレート以外の化合物も、式(4)と同様の反応を行う。
【化8】
【0061】
物理系吸湿剤は、化学反応によらずに周囲の水分を取り込む吸湿剤であり、例えば、吸湿剤の表面に周囲の水分子を吸着させる。本実施形態に係るフィルム状封止材1A,1Bでは、あらゆる物理系吸湿剤を使用することができ、例えば、ゼオライト、活性アルミナ、シリカゲルおよび粘土化合物を使用することができる。ゼオライトとしては、モレキュラーシーブを使用することができる。これらの吸湿剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
吸湿剤は、電子素子に対して与える影響が少ないか、影響が無い物が好ましい。特に化学系吸湿剤を使用する場合には、電子素子を腐食させる物質が、吸湿の反応によって生じない吸湿剤を使用することが好ましい。また、吸湿の反応や温度変化によってもガスが発生せず、電子デバイスの膨張を生じさせない吸湿剤を使用することが好ましい。さらに、水蒸気バリア性樹脂層12の製造の際に、水蒸気バリア性樹脂層12を構成する樹脂と良好に混和し、加熱といった処理を施しても変性しない吸湿剤を使用することが好ましい。
【0063】
これらの観点を考慮すると、上述したメタロキサン結合を含む化合物、金属酸化物および水分子と反応して水和物を生成する化合物を使用することが好ましく、メタロキサン結合を含む化合物としては、特にM−O−Mの部位において水と反応する化合物を使用することが好ましい。これらの吸湿剤は、吸湿の反応が生じた場合に、比較的安定した生成物が生じ、これが気化してガスを発生させる傾向が少なく、材料となる樹脂と良好に混和し、水蒸気バリア性樹脂層12の製造過程において変性しにくい。結果として、非常に優れた水蒸気バリア性を示すフィルム状封止材1A,1Bを得ることができる。
【0064】
水蒸気バリア性樹脂層12中の吸湿剤の含有量は、1〜35質量%であることが好ましく、特に3〜30質量%であることが好ましく、さらには5〜25質量%であることが好ましい。1質量%以上であることにより、水蒸気バリア性樹脂層12を透過する水分が十分に吸湿され、フィルム状封止材1A,1Bの水蒸気バリア性はさらに向上する。また、35質量%以下であることにより、水蒸気バリア性樹脂層12を製造する際に、良好に成膜することが可能となる。
【0065】
吸湿剤の形状は、特に限定されないが、例えば液体、粉末または粒状であってよい。粉末または粒状である場合、吸湿剤の平均粒径は特に限定されないが、例えば0.1〜20μmであることが好ましく、特に0.1〜10μmであることが好ましく、さらには0.1〜5μmであることが好ましい。ここで、本明細書における「平均粒径」は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定して得られる値であるものとする。
【0066】
吸湿剤の最大吸湿量は、50μmの厚さを有する水蒸気バリア性樹脂層12が吸湿する水の量で表した場合に、1.0g/m
2以上であることが好ましく、特に1.5g/m
2以上であることが好ましく、さらには2.0g/m
2以上であることが好ましい。最大吸湿量が1.0g/m
2以上である吸湿剤を使用することで、水蒸気バリア性樹脂層12を透過する水分を十分に吸湿することが可能となり、より高い水蒸気バリア性を有するフィルム状封止材1A,1Bを得ることができる。
【0067】
(1.3)その他の成分
水蒸気バリア性樹脂層12は、上記樹脂および吸湿剤以外に、所望により、粘着付与剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、帯電防止剤、顔料、難燃剤、可塑剤、滑剤、ブロッキング防止剤、フィラー、分散剤、架橋剤(硬化剤;エポキシ系樹脂等の硬化性樹脂を使用する場合)、シランカップリング剤等の各種添加剤等を含有してもよい。特に、水蒸気バリア性樹脂層12がゴム系樹脂を含む場合、粘着付与剤を含むことが好ましい。粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、ポリテルペン系樹脂等の天然樹脂、C5系、C9系、ジシクロペンタジエン系等の石油樹脂、クマロンインデン樹脂、キシレン樹脂等の合成樹脂などが挙げられる。
【0068】
(1.4)水蒸気バリア性樹脂層12の物性等
水蒸気バリア性樹脂層12の厚さは、5〜300μmであることが好ましく、特に10〜200μmであることが好ましく、さらには15〜100μmであることが好ましい。水蒸気バリア性樹脂層12の厚さを5μm以上とすることで、十分な水蒸気バリア性を得ることができる。一方、水蒸気バリア性樹脂層12の厚さを300μm以下とすることで、フィルム状封止材1A,1Bの厚さを薄く維持することができる。
【0069】
また、水蒸気バリア性樹脂層12の厚さの割合は、フィルム状封止材1A,1Bの厚さの50〜100%であることが好ましく、特に55〜100%であることが好ましく、さらには60〜100%であることが好ましい。ここで、水蒸気バリア性樹脂層12の厚さの割合が100%であるとは、フィルム状封止材1A,1Bが水蒸気バリア性樹脂層12のみから成ることを意味する。なお、フィルム状封止材1A,1Bの厚さについては後述する。水蒸気バリア性樹脂層12の厚さの割合が50%以上であることで、フィルム状封止材1A,1Bは十分な量の吸湿剤を含有することができ、より高い水蒸気バリア性を達成することができる。
【0070】
(2)接着性樹脂層
第1の接着性樹脂層11Aおよび第2の接着性樹脂層11Bは、被着体に対して接着性を示す層であり、本実施形態では、水蒸気バリア性樹脂層12の片面または両面に任意に設けることができる。水蒸気バリア性樹脂層12の被着体に対する接着性が低い場合、第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bの片方または両方を設けることにより、被着体に対する接着性がより優れたフィルム状封止材1Bを実現することができる。第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bは、それぞれ単層であってもよく、複数層であってもよい。
【0071】
第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bの水蒸気透過率は、50μmの厚さにて測定した場合に30g/(m
2・day)以下であることが好ましく、特に25g/(m
2・day)以下であることが好ましく、さらには20g/(m
2・day)以下であることが好ましい。接着性樹脂層11A,11Bの水蒸気透過率が30g/(m
2・day)以下であることで、接着性樹脂層を設ける場合に、水分が接着性樹脂層を移動して電子素子に到達することを防ぐことができ、より高い水蒸気バリア性を有するフィルム状封止材1Bを得ることができる。
【0072】
第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bを構成する樹脂としては、被着体に対して接着性を示すものであれば特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂などが挙げられ、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、エネルギー線硬化型樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂と硬化性樹脂とは混合して使用することもできる。
【0073】
熱可塑性樹脂は、熱接着性を有するものであってもよいし、感圧接着性を有するものであってもよい。第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bが熱可塑性樹脂を含むことにより、フィルム状封止材1Bを被着体に強固に接着させることができるとともに、第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bと水蒸気バリア性樹脂層12との密着性も向上する。
【0074】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ゴム系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂、スチレン系樹脂、シラン系樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、変性したものであってもよく、例えば酸変性ポリオレフィン系樹脂およびシラン変性ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。これらの中でもゴム系樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂またはシラン変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂がゴム系樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂またはシラン変性ポリオレフィン系樹脂であることで、第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bは、特にガラス板やガスバリアフィルム等の被着体に対して、より高い接着力を示す。また、第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bと、水蒸気バリア性樹脂層12との密着性にも優れる。なお、上記熱可塑性樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0075】
ゴム系樹脂としては、例えば、天然ゴム、天然ゴムに(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレンおよび(メタ)アクリロニトリルから選ばれる1種又は2種以上の単量体をグラフト重合させた変性天然ゴム、ポリイソブチレン系樹脂、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエンの共重合体(ニトリルゴム)、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体、ウレタンゴム、スチレン−1,3−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体等が挙げられる。これらのゴム系化合物は1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ゴム系樹脂としては、ポリイソブチレン系樹脂を含むものが好ましい。
【0076】
ポリイソブチレン系樹脂は、モノマー成分としてイソブチレンを含む重合体(共重合体の概念を含む)をいい、モノマー成分がイソブチレンのみからなる単独重合体であってもよいし、モノマー成分としてイソブチレンと他のモノマーを重合して得られる共重合体であってもよい。ポリイソブチレン系樹脂は、一部を臭素化又は塩素化したハロゲン化ポリイソブチレン系樹脂であってもよく、一部を水酸基、カルボキシル基等の官能基で置換したものであってもよい。
【0077】
上記他のモノマーとしては、例えば、イソプレン、n−ブテン、ブタジエン、イソプレン、スチレン等が挙げられる。他のモノマーは単独で又は2種以上を併用して用いてもよい。なお、ポリイソブチレン系樹脂が共重合体である場合は、原料モノマー中、イソブチレンは主成分として最大量のモノマーである。
【0078】
上記の中でも、ポリイソブチレン系樹脂は、水蒸気バリア性に優れるという点から、モノマー成分がイソブチレンのみからなる単独重合体、モノマー成分としてイソブチレンとイソプレンとを重合して得られるイソブチレン−イソプレン共重合体であることが好ましい。
【0079】
接着性樹脂層に用いるゴム系樹脂の数平均分子量は、通常10万〜500万、好ましくは10万〜300万、より好ましくは10万〜100万である。
【0080】
ゴム系樹脂は、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、ExxonButyl(日本ブチル社製)、Vistanex(Exxon Chemical Co.製)、Hycar(登録商標)(Goodrich社製)、Oppanol(登録商標)(BASF社製)、エポール(登録商標)(出光興産社製)等が挙げられる。
【0081】
ポリオレフィン系樹脂(変性していないポリオレフィン系樹脂)とは、重合体を構成するモノマー成分としてオレフィンを含む重合体(共重合体の概念を含む)をいい、モノマー成分がオレフィンのみからなる重合体であってもよいし、モノマー成分としてオレフィンおよび他のモノマーを含む重合体(共重合体)であってもよい。
【0082】
上記オレフィンとしては、炭素数2〜8のα−オレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、1−ヘキセン、スチレン等が挙げられる。中でもエチレンおよびプロピレンが好ましく、特にエチレンが好ましい。上記他のモノマーとしては、本実施形態に係るフィルム状封止材1Bの目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0083】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、具体的には、超低密度ポリエチレン(VLDPE,密度:880kg/m
3以上、910kg/m
3未満)、低密度ポリエチレン(LDPE,密度:910kg/m
3以上、915kg/m
3未満)、中密度ポリエチレン(MDPE,密度:915kg/m
3以上、942kg/m
3未満)、高密度ポリエチレン(HDPE,密度:942kg/m
3以上)、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、オレフィン系エラストマー(TPO)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。上記の中でも、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体またはオレフィン系エラストマー(TPO)が好ましく、特に超低密度ポリエチレンが好ましい。
【0084】
酸変性ポリオレフィン系樹脂とは、酸でグラフト変性したポリオレフィン系樹脂を意味し、例えば、ポリオレフィン系樹脂に不飽和カルボン酸を反応させ、カルボキシル基を導入(グラフト変性)したものが挙げられる。なお、本明細書において、不飽和カルボン酸とは、カルボン酸無水物の概念を含み、カルボキシル基とは、無水カルボキシル基の概念を含むものである。
【0085】
上記ポリオレフィン系樹脂に反応させる不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、テトラヒドロフタル酸、アコニット酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物等が挙げられる。これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。上記の中でも、特に接着力に優れる無水マレイン酸が好ましい。
【0086】
上記酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましく、特に無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂が好ましい。
【0087】
ポリオレフィン系樹脂に反応させる不飽和カルボン酸の量としては、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、特に0.2〜3質量部であることが好ましく、さらには0.2〜1.0質量部であることが好ましい。反応させる不飽和カルボン酸の量が上記の範囲にあることで、得られる酸変性ポリオレフィン系樹脂は、接着力に優れる。
【0088】
酸変性ポリオレフィン系樹脂は、ビカット軟化点が90℃以下であることが好ましく、特に30〜70℃であることが好ましく、さらには30〜60℃であることが好ましい。ビカット軟化点が上記範囲であると、室温においては接着性が発現しないため、フィルム状封止材1Bの取扱性に優れ、また、比較的短時間での熱圧着で接着が可能となるため、有機EL素子を有する表示装置用モジュールや、電子ペーパー、有機薄膜太陽電池等の電子デバイスを効率よく製造することが出来る。なお、ビカット軟化点は、ASTM D1525に基づいて測定した値とする。
【0089】
酸変性ポリオレフィン系樹脂は、190℃、荷重20.2Nにおけるメルトフローレート(MFR)が、0.5〜30g/10分であることが好ましく、特に1〜15g/10分であることが好ましく、さらには2〜10g/10分であることが好ましい。第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bを押出成形により形成する場合、MFRが0.5g/10分未満であると、押出成形が困難となるおそれがあり、MFRが30g/10分を超えると、押出成形により製膜した際に、厚み精度が低下するおそれがある。なお、本明細書におけるMFRは、ASTMD1238に基づいて測定した値とする。
【0090】
酸変性ポリオレフィン系樹脂は、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、アドマー(登録商標)(三井化学社製)、BondyRam(Polyram社製)、orevac(登録商標)(ARKEMA社製)、モディック(登録商標)(三菱化学社製)等が挙げられる。
【0091】
シラン変性ポリオレフィン系樹脂とは、ポリオレフィン系樹脂に不飽和シラン化合物を反応させることにより、ポリオレフィン系樹脂をグラフト変性したものである。シラン変性ポリオレフィン系樹脂は、特に被着体がガラス板の場合に強固に接着することができる。
【0092】
シラン変性ポリオレフィン系樹脂のポリオレフィン系樹脂としては、前述の酸変性ポリオレフィン系樹脂で例示したポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0093】
シラン変性ポリオレフィン系樹脂は、シラン変性ポリエチレン樹脂およびシラン変性エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく、特に、シラン変性低密度ポリエチレン、シラン変性超低密度ポリエチレン、シラン変性直鎖状低密度ポリエチレン等のシラン変性ポリエチレン樹脂が好ましい。
【0094】
上記ポリオレフィン系樹脂に反応させる不飽和シラン化合物としては、ビニルシラン化合物が好ましく、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペンチロキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリベンジルオキシシラン、ビニルトリメチレンジオキシシラン、ビニルトリエチレンジオキシシラン、ビニルプロピオニルオキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリカルボキシシラン等が挙げられる。これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0095】
ポリオレフィン系樹脂に反応させる不飽和シラン化合物の量としては、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、特に0.3〜7質量部であることが好ましく、さらには0.5〜5質量部であることが好ましい。反応させる不飽和シラン化合物の量が上記の範囲にあることで、得られるシラン変性ポリオレフィン系樹脂は、接着力に優れる。
【0096】
シラン変性ポリオレフィン系樹脂は、190℃、荷重20.2Nにおけるメルトフローレート(MFR)が、0.5〜30g/10分であることが好ましく、特に0.5〜15g/10分であることが好ましく、さらには0.5〜10g/10分であることが好ましい。第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bを押出成形により形成する場合、MFRが0.5g/10分未満であると、押出成形が困難となるおそれがあり、MFRが30g/10分を超えると、押出成形により製膜した際に、厚み精度が低下するおそれがある。
【0097】
シラン変性ポリオレフィン系樹脂は、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、リンクロン(登録商標)(三菱化学社製)等が挙げられ、中でも、低密度ポリエチレン系のリンクロン、直鎖状低密度ポリエチレン系のリンクロン、超低密度ポリエチレン系のリンクロン、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体系のリンクロンを好ましく使用することができる。
【0098】
また、上記熱可塑性樹脂は、金属カチオンにより分子間を結合させたアイオノマーであってもよい。アイオノマーとしては、例えば、オレフィン系アイオノマー、ウレタン系アイオノマー、スチレン系アイオノマー、フッ素系アイオノマー等が挙げられる。これらの中でも、シクロオレフィン系樹脂を含有する水蒸気バリア性樹脂層12との密着性に優れるという点で、オレフィン系アイオノマーを用いることが好ましい。オレフィン系アイオノマーとしては、例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−フマル酸共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体、エチレン−マレイン酸モノメチル共重合体、エチレン−マレイン酸モノエチル共重合体等のオレフィン系樹脂の分子間を金属イオンで結合したものが挙げられる。金属イオンの金属としては、例えば、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属、亜鉛、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属のような多価金属などが挙げられる。アイオノマーは、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0099】
熱可塑性樹脂を使用する場合、第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bは、熱可塑性樹脂を60〜100質量%含有することが好ましく、特に70〜100質量%含有することが好ましく、さらには80〜100質量%含有することが好ましい。
【0100】
また、熱可塑性樹脂は、後述する硬化性樹脂とブレンドしてもよい。熱可塑性樹脂と硬化性樹脂とのブレンド質量比は、99:1〜1:99であることが好ましく、10:90〜90:10であることがより好ましく、20:80〜80:20であることが特に好ましく、さらには30:70〜70:30であることが好ましい。
【0101】
硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂およびウレタン系樹脂を使用することができる。これらの硬化性樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0102】
エポキシ系樹脂としては、例えば、1官能性エポキシ化合物、2官能性エポキシ化合物、3官能以上の多官能性エポキシ化合物、エポキシ基を有するポリマーまたはオリゴマー、およびエポキシ基を有するビニルモノマーと、他のビニルモノマーなどとの共重合体ポリマーまたはオリゴマーを使用することができる。これらのエポキシ系樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0103】
硬化性樹脂を使用する場合、第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bは、硬化性樹脂を60〜100質量%含有することが好ましく、特に70〜100質量%含有することが好ましく、さらには80〜100質量%含有することが好ましい。
【0104】
第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bは、上記樹脂以外に、所望により、例えば粘着付与剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、帯電防止剤、顔料、難燃剤、可塑剤、滑剤、ブロッキング防止剤、分散剤、フィラー、架橋剤(硬化剤;エポキシ系樹脂等の硬化性樹脂を使用する場合)、シランカップリング剤、吸湿剤等の各種添加剤等を含有してもよい。特に、第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bがゴム系樹脂を含む場合、粘着付与剤を含むことが好ましい。粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、ポリテルペン系樹脂等の天然樹脂、C5系、C9系、ジシクロペンタジエン系等の石油樹脂、クマロンインデン樹脂、キシレン樹脂等の合成樹脂などが挙げられる。
【0105】
第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bの厚さ(1層)は、それぞれ1〜100μmであることが好ましく、特に3〜80μmであることが好ましく、さらには5〜50μmであることが好ましい。第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bの厚さが1μm以上であることで、十分な接着性が得られる。一方、第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bの厚さが100μm以下であることで、フィルム状封止材1Bの厚さを薄く維持することができる。
【0106】
なお、第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bの材料、厚さ等は、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0107】
(3)フィルム状封止材1A,1Bの物性等
フィルム状封止材1A,1Bの厚さは、7〜500μmであることが好ましく、特に15〜400μmであることが好ましく、さらには20〜200μmであることが好ましい。フィルム状封止材1A,1Bの厚さが7μm以上であることで、十分な水蒸気バリア性と接着性を得ることができる。一方、フィルム状封止材1A,1Bの厚さが500μm以下であることで、フィルム状封止材1A,1Bの厚さを薄く維持することができ、例えば電子デバイスに使用したときでも、電子デバイスの厚さが厚くなり過ぎることを回避できる。
【0108】
フィルム状封止材1A,1Bの水蒸気透過率は、50μmの厚さのフィルム状封止材1A,1Bにて測定した場合に、20g/(m
2・day)以下であることが好ましく、特に15g/(m
2・day)以下であることが好ましく、さらには10g/(m
2・day)以下であることが好ましい。フィルム状封止材1A,1Bの水蒸気透過率が20g/(m
2・day)以下であると、外部からの水蒸気が、当該フィルム状封止材1A,1Bで効果的にブロックされて、封止対象物に到達することが防止・抑制され、封止対象物が水分の悪影響を受け難くなる。本実施形態に係るフィルム状封止材1A,1Bでは、水蒸気バリア性樹脂層が高い水蒸気バリア性を有する主材Mを含み、さらに水蒸気バリア性樹脂層が吸湿剤を含有することにより、上記のような水蒸気透過率を達成することができる。
【0109】
フィルム状封止材1A,1Bは、フィルム状封止材1A,1Bの最外層のいずれか一方の面を無アルカリガラスに120℃で貼り合わせた際の接着力が、3N/25mm以上であることが好ましく、特に5N/25mm以上であることが好ましい。接着力が3N/25mm以上であることで、封止対象物を確実に封止し、ガラス板やガスバリアフィルム等の被着体との間で、浮きや剥がれ等が発生することを防止することができる。なお、接着力の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0110】
(4)フィルム状封止材1A,1Bの製造方法
水蒸気バリア性樹脂層12(水蒸気バリア性樹脂フィルム)を形成する方法としては、特に限定されず、水蒸気バリア性樹脂層12を構成する樹脂と吸湿剤との混合物を、溶融押出法、カレンダー法、乾式法、溶液法などによりフィルム化する方法が例示される。溶液法の場合には、水蒸気バリア性樹脂層12を構成する樹脂および吸湿剤を有機溶剤に溶解した溶液を、公知の塗布方法により塗布し、得られた塗膜を適宜乾燥することで水蒸気バリア性樹脂層12形成すればよい。
【0111】
第1および第2の接着性樹脂層11A,11B(第1の接着性樹脂フィルム,第2の接着性樹脂フィルム)を形成する方法としては、特に限定されず、溶融押出法、カレンダー法、乾式法、溶液法などが例示される。溶液法の場合には、上述した樹脂を有機溶剤に溶解した溶液を、公知の塗布方法により塗布し、得られた塗膜を適宜乾燥することで各層を形成すればよい。
【0112】
第2の実施形態に係る、第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bを有するフィルム状封止材1Bは、常法によって製造することができる。例えば、第1の接着性樹脂層11Aと、水蒸気バリア性樹脂層12と、第2の接着性樹脂層11Bとを、その順で積層されるように共押出成形する方法、第1の接着性樹脂層11Aとしての単層のフィルム(第1の接着性樹脂フィルム)および第2の接着性樹脂層11Bとしての単層のフィルム(第2の接着性樹脂フィルム)をそれぞれ用意し、第1の接着性樹脂フィルムに水蒸気バリア性樹脂層12を形成した後、当該水蒸気バリア性樹脂層12に第2の接着性樹脂フィルムを積層する方法、水蒸気バリア性樹脂層12としての単層のフィルム(水蒸気バリア性樹脂フィルム)を用意し、その水蒸気バリア性樹脂フィルムの両面に、第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bを形成する方法、第1の接着性樹脂フィルムと、水蒸気バリア性樹脂フィルムと、第2の接着性樹脂フィルムとを用意し、それら3枚の樹脂フィルムをその順で重ねて積層する方法などの方法によって、フィルム状封止材1Bを製造することができる。また、剥離シート上に、第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bを形成し、第1および第2の接着性樹脂層11A,11B付きの剥離シートをそれぞれ用意し、あらかじめ用意した水蒸気バリア性樹脂フィルムの両面に、第1および第2の接着性樹脂層11A,11B付きの剥離シートを積層する方法によって、フィルム状封止材1Bを製造することもできる。なお、第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bのどちらか一方のみを有するフィルム状封止材1Bについても、上記の方法に倣って製造することができる。
【0113】
第1および第2の接着性樹脂層11A,11B(第1の接着性樹脂フィルム、第2の接着性樹脂フィルム)と水蒸気バリア性樹脂層12(水蒸気バリア性樹脂フィルム)とを積層する際には、加熱しながら積層してもよい。加熱温度は、第1および第2の接着性樹脂層11A,11B(第1の接着性樹脂フィルム,第2の接着性樹脂フィルム)が軟化する温度以上であることが好ましい。
【0114】
(5)フィルム状封止材1A,1Bの用途
本実施形態に係るフィルム状封止材1A,1Bは、水蒸気バリア性に非常に優れるため、種々のものの封止に使用することができ、特に電子デバイスにおける電子素子の封止に好適に使用することができる。具体的には、液晶素子、発光ダイオード(LED素子)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子等を有する表示装置用モジュール、電子ペーパー、太陽電池モジュールなどが挙げられる。中でも、有機EL素子を有する表示装置用モジュール(有機ELモジュール)や電子ペーパーにおいては、高い水蒸気バリア性が求められているため、本実施形態に係るフィルム状封止材1A,1Bを好適に使用することができる。
【0115】
〔封止シート〕
図3は、第2の実施形態に係るフィルム状封止材1Bを備えた、本実施形態に係る封止シート2の概略断面図である。この封止シート2は、フィルム状封止材1Bの他に、フィルム状封止材1Bの片面に積層されたガスバリアフィルム21を備える。なお、本実施形態に係る封止シート2は、
図3に示されるものに限らず、第2の実施形態に係るフィルム状封止材1Bの代わりに、第1の実施形態に係るフィルム状封止材1Aを備えたものであってよい。すなわち、
図3の封止シート2から、第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bが除去されたものであってよい。さらに、本実施形態に係る封止シートは、
図3の封止シート2から、第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bのいずれか一方が除去されたものであってよい。
【0116】
ガスバリアフィルム21は、水蒸気、酸素等のガスを透過させ難い特性を有するフィルムである。封止シート2の適用対象に応じて、ガスバリアフィルム21は透明である必要がある。ガスバリアフィルム21としては、基材フィルムとガスバリア層との積層体が好ましい。このようなガスバリアフィルム21としては、例えば、基材フィルムの片面または両面に、直接またはその他の層を介してガスバリア層を形成したもの、基材フィルムの中間にガスバリア層を設けたものなどを使用することができる。
【0117】
基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ABS樹脂、アイオノマー樹脂などの樹脂からなるフィルム、またはそれらの積層フィルム等が挙げられる。それらの中でも、強度の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレートなどからなるフィルムが好ましい。基材フィルムは、延伸フィルムであってもよいし、無延伸フィルムであってもよい。また、基材フィルムは、紫外線吸収剤等の各種添加剤を含んだものであってもよい。
【0118】
基材フィルムの厚さは、1〜500μmであることが好ましく、特に5〜300μmであることが好ましく、さらには10〜100μmであることが好ましい。
【0119】
ガスバリア層は、基材フィルムにガスバリア性を付与することを目的として積層される。ガスバリア層の材料としては、ガスバリアフィルム21のガスバリア性を所望のレベルにすることができるものであれば、特に限定されることはない。ガスバリア層の材料としては、例えば、ポリシラザン化合物、ポリカルボシラン化合物、ポリシラン化合物、ポリオルガノシロキサン化合物、テトラオルガノシラン化合物等のケイ素化合物、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等の無機酸化物、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物、酸化窒化ケイ素等の無機酸化窒化物等、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、スズ等の金属などが挙げられる。これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0120】
ガスバリア層の厚さは、1nm〜10μmであることが好ましく、10〜1000nmであることがより好ましく、20〜500nmであることが特に好ましく、50〜200nmであることがさらに好ましい。
【0121】
ガスバリア層は、単層であってもよく、複数層であってもよいが、より高いガスバリア性が得られるという観点から、ガスバリア層は複数層であることが好ましい。
【0122】
ガスバリア層を形成する方法は、使用する材料に応じて適宜選択すればよい。例えば、上記ガスバリア層の材料を、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、プラズマCVD法等により基材フィルム上に形成する方法、あるいは上記ガスバリア層の材料を有機溶剤に溶解した溶液を、基材フィルムに塗布し、得られた塗膜に対してプラズマイオン注入する方法などが挙げられる。プラズマイオン注入にて注入されるイオンとしては、例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガス、フルオロカーボン、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、塩素、フッ素、硫黄等のイオン;金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、クロム、チタン、モリブデン、ニオブ、タンタル、タングステン、アルミニウム等の金属のイオンなどが挙げられる。
【0123】
ガスバリアフィルム21の水蒸気透過率は、40℃、90%RHにおいて、0.5g/(m
2・day)以下であることが好ましく、特に0.1g/(m
2・day)以下であることが好ましく、さらには0.05g/(m
2・day)以下であることが好ましい。
【0124】
封止シート2を製造するには、フィルム状封止材1A,1Bとガスバリアフィルム21とを重ね合わせて積層すればよい。本実施形態に係るフィルム状封止材1A,1Bでは、水蒸気バリア性樹脂層12自身が接着性を有するか、または、フィルム状封止材1Bが接着性樹脂層11A,11Bを有するため、ガスバリアフィルム21と強固に接着する。したがって、封止シート2を用いて電子デバイス等の封止をした場合に、ガスバリアフィルム21とフィルム状封止材1A,1Bとの間に水蒸気が浸入することを効果的に防止することができる。なお、ガスバリアフィルム21がその片面にガスバリア層を有する場合、ガスバリア層がフィルム状封止材1A,1B側となるように、ガスバリアフィルム21とフィルム状封止材1A,1Bとを積層することが好ましい。
【0125】
フィルム状封止材1A,1Bとガスバリアフィルム21とを積層する際には、加熱しながら積層してもよい。加熱温度は、フィルム状封止材1A,1Bの接着性樹脂層11が軟化する温度以上であることが好ましい。
【0126】
本実施形態に係る封止シート2は、前述したフィルム状封止材1A,1Bの用途と同様の用途に用いることができ、特に、高い水蒸気バリア性が求められる有機EL素子等を有する表示装置用モジュール、電子ペーパー、太陽電池モジュールなどの電子デバイスにおける電子素子の封止に好適に使用することができる。封止シート2を用いて封止を行う場合、ガスバリアフィルム21が積層された側とは反対側の面(
図3中では第2の接着性樹脂層11B)を被着体に貼り合わせることで、封止することができる。
【0127】
〔電子デバイス〕
本発明の一実施形態に係る電子デバイスは、上述した実施形態に係るフィルム状封止材1A,1Bによって封止されている。本実施形態に係る電子デバイス3Aは、具体的には、
図4に示すように、基板31と、基板31上に形成された電子素子32と、電子素子32を封止するフィルム状封止材1Bと、フィルム状封止材1Bの電子素子32とは反対側に積層された封止部材33とを備える。封止部材33としては、特に制限はなく、例えばガラス板等が挙げられる。
【0128】
また、本発明の他の実施形態に係る電子デバイスは、上述した実施形態に係る封止シート2によって封止されている。本実施形態に係る電子デバイス3Bは、具体的には、
図5に示すように、基板31と、基板31上に形成された電子素子32と、電子素子32を封止する封止シート2とを備える。なお、封止シート2は、フィルム状封止材1Bと、このフィルム状封止材1Bの片面に積層されたガスバリアフィルム21との積層体である。
【0129】
なお、本実施形態に係る電子デバイスは、
図4および5に示されるものに限らず、第2の実施形態に係るフィルム状封止材1Bの代わりに、第1の実施形態に係るフィルム状封止材1Aを備えたものであってよい。すなわち、
図4または5の電子デバイス3A,3Bから、第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bが除去されたものであってよい。さらに、本実施形態に係る電子デバイスは、
図4または5の電子デバイス3A,3Bから、第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bのいずれか一方が除去されたものであってよい。
【0130】
これらの電子デバイス3A,3Bは、例えば、電子素子32として液晶素子、LED素子、有機EL素子等を有する表示装置用モジュール、電子素子32として電気泳動型素子、電子粉粒体型素子、コレステリック液晶素子等を有する電子ペーパー、電子素子32として太陽電池セルを有する太陽電池モジュールなどであるが、これらに限定されるものではない。また、電子デバイス3A,3Bは、トップエミッション型の電子デバイスであってもよいし、ボトムエミッション型の電子デバイスであってもよい。例えば、電子デバイス3A,3Bがボトムエミッション型のデバイスである場合には、基板31は、透明基板であることが好ましい。また、電子デバイス3A,3Bがトップエミッション型の電子デバイスである場合には、封止部材33およびガスバリアフィルム21は、透明であることが好ましい。
【0131】
基板31としては、電子デバイス3A,3Bの種類に応じて適宜選択されるが、例えば、ガラス板や基材フィルムが好ましく挙げられる。ガラス板の材料としては、例えば、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、石英等からなる無機ガラス、ハイブリッドガラス等が挙げられる。基材フィルムとしては、例えば、ガスバリアフィルム21で例示したものが挙げられる。
【0132】
基板31の厚さは、電子デバイス3A,3Bの種類に応じて適宜設定される。
【0133】
電子デバイス3Aを製造する方法は特に限定されない。例えば、まず常法によって基板31上に電子素子32を形成する。その後、当該電子素子32を覆うようにして、フィルム状封止材1A,1Bを載置し、さらにフィルム状封止材1A,1Bの上にガラス板等の封止部材33を載置し、それらを貼り合わせ、電子素子32を封止することで電子デバイス3Aを製造することができる。なお、あらかじめ、フィルム状封止材1A,1Bと封止部材33とを貼り合わせた積層体を得て、この積層体を電子素子32と貼り合わせて電子デバイス3Aを製造してもよい。
【0134】
一方、電子デバイス3Bを製造する方法についても特に限定されない。例えば、基板31上に形成された電子素子32を覆うようにして、フィルム状封止材1A,1Bが電子素子32側となるように封止シート2を載置し、それらを貼り合わせ、電子素子32を封止することで電子デバイス3Bを製造することができる。
【0135】
封止は、常圧で行ってもよいし、減圧雰囲気で行ってもよく、またはこれらを組み合わせて行ってもよい。また、フィルム状封止材1A,1Bと電子素子32とを貼り合わせる際には、加熱してもよい。加熱することにより、フィルム状封止材1A,1Bと電子素子32、基板31、および封止部材33またはガスバリアフィルム21とが強固に接着する。
【0136】
貼り合わせる時の加熱温度は、通常、第1および第2の接着性樹脂層11A,11Bおよび水蒸気バリア性樹脂層12が軟化する温度以上であることが好ましい。
【0137】
本実施形態に係る電子デバイス3A,3Bにおいては、電子素子32が、本実施形態に係るフィルム状封止材1A,1Bで覆われているため、外部からの水蒸気が、フィルム状封止材1A,1Bの水蒸気バリア性樹脂層12によってブロックされて、電子素子32に到達することが防止・抑制されるため、電子素子32が水分の悪影響を受け難いものとなっている。また、フィルム状封止材1A,1Bは、水蒸気バリア性樹脂層12が接着性を有するか、または第1および第2の接着性樹脂層11A,11Aを備えているため、フィルム状封止材1A,1Bと基板31、フィルム状封止材1A,1Bと電子素子32、フィルム状封止材1A,1Bと封止部材33、フィルム状封止材1A,1Bとガスバリアフィルム21とは強固に接着し、それらの間で浮きや剥がれ等が発生したり、それらの間に水蒸気が浸入したりすることが防止・抑制されている。
【0138】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0139】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0140】
〔実施例1〕
<フィルム状封止材の作製>
表1に示す接着性樹脂層および水蒸気バリア性樹脂層を構成する材料を、押出機(東洋精機製作所社製)によって共押出成形し、厚さ7.5μmの第1の接着性樹脂層と、厚さ35μmの水蒸気バリア性樹脂層と、厚さ7.5μmの第2の接着性樹脂層とをその順で積層してなるフィルム状封止材を製造した。
【0141】
<封止シートの作製>
得られたフィルム状封止材と、アルミニウム箔を有するガスバリアフィルム(厚み7μmのアルミニウム箔の片面に、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートシートをウレタン系接着剤層で接着した積層フィルム,アジヤアルミ社製)のアルミニウム箔面とを、120℃で加熱しながら貼り合わせて、封止シートを得た。
【0142】
<ボトムエミッション型の電子デバイスの製造>
下記の方法により、ガラス基板上に陽極、発光層および陰極をこの順で積層し、電子素子(有機EL素子)を形成した。
【0143】
まず、ガラス基板の表面に酸化インジウムスズ(ITO)膜(厚さ:150nm、シート抵抗:30Ω/□)をスパッタリング法により形成し、次いで、溶媒洗浄およびUV/オゾン処理を行うことで陽極を作製した。
【0144】
得られた陽極(ITO膜)上に、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジデン)(Luminescence Technology社製)を60nm、トリス(8−ヒドロキシ−キノリネート)アルミニウム(Luminescence Technology社製)を40nm、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(Luminescence Technology社製)を10nm、(8−ヒドロキシ−キノリノレート)リチウム(Luminescence Technology社製)を10nm、0.1〜0.2nm/sの速度で順次蒸着させ、発光層を形成した。
【0145】
得られた発光層上に、アルミニウム(Al)(高純度化学研究所社製)を0.1nm/sの速度で100nm蒸着させて陰極を形成し、有機EL素子を得た。なお、蒸着時の真空度は、全て1×10
−4Pa以下であった。
【0146】
次いで、上記封止シートを、窒素雰囲気下で、ホットプレートを用いて120℃で30分間加熱して、封止シート中に含まれる水分を除去した後、そのまま放置して室温まで冷却した。そして、ガラス基板上に形成された有機EL素子を覆うように、フィルム状封止材が有機EL素子側になるように封止シートを載置し、封止シートの端部から有機EL素子までの距離が5mmとなるように調整した。それらを100℃で加熱しながら貼り合わせて、有機EL素子を封止し、ボトムエミッション型の電子デバイスを得た。
【0147】
〔実施例2および3〕
接着性樹脂層および水蒸気バリア性樹脂層を構成する材料を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にしてフィルム状封止材を製造した。このフィルム状封止材を使用して、実施例1と同様にして封止シートを作製し、ボトムエミッション型の電子デバイスを得た。
【0148】
〔実施例4〕
表1に示す接着性樹脂層を構成する材料を含む塗液を剥離シート上に塗布し、100℃で2分間乾燥させ、その上に剥離シートを貼り合わせて、厚さ7.5μmの接着性樹脂層を形成し、両面に剥離シートが積層された接着性樹脂層を2枚作製した。
【0149】
一方、表1に示す水蒸気バリア性樹脂層を構成する樹脂および吸湿剤を混和したものを押出機(東洋精機製作所社製)によって押出成形し、厚さ35μmの水蒸気バリア性樹脂フィルムを得た。
【0150】
次いで、得られた水蒸気バリア性樹脂フィルムの両面の各々に、上記接着性樹脂層を120℃で加熱しながら貼り合わせた。この時、接着性樹脂層に積層された一方の剥離シートを剥離し、露出した接着性樹脂層の面と水蒸気バリア性樹脂層の面とを貼り合せた。次いで、他方の剥離シートを剥離し、フィルム状封止材を製造した。このフィルム状封止材を使用して、実施例1と同様にして封止シートを作製し、ボトムエミッション型の電子デバイスを得た。
【0151】
〔実施例5および6〕
表1に示す水蒸気バリア性樹脂層を構成する材料を含む塗液を剥離シート上に塗布し、100℃で2分間乾燥させ、その上に剥離シートを貼り合わせて、厚さ25μmの水蒸気バリア性樹脂層を得て、これをフィルム状封止材とした。このフィルム状封止材を使用して、実施例1と同様にして封止シートを作製し、ボトムエミッション型の電子デバイスを得た。
【0152】
〔比較例1、2および4〕
接着性樹脂層および水蒸気バリア性樹脂層を構成する材料を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にしてフィルム状封止材を製造した。このフィルム状封止材を使用して、実施例1と同様にして封止シートを作製し、ボトムエミッション型の電子デバイスを得た。
【0153】
〔比較例3〕
接着性樹脂層および水蒸気バリア性樹脂層を構成する材料を表1に示すように変更する以外、実施例4と同様にしてフィルム状封止材を製造した。このフィルム状封止材を使用して、実施例1と同様にして封止シートを作製し、ボトムエミッション型の電子デバイスを得た。
【0154】
〔比較例5〕
接着性樹脂層および水蒸気バリア性樹脂層を構成する材料および厚さを表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にしてフィルム状封止材を製造した。このフィルム状封止材を使用して、実施例1と同様にして封止シートを作製し、ボトムエミッション型の電子デバイスを得た。
【0155】
なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[接着性樹脂層]
・Admer SF731:無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学社製,商品名「Admer SF731」,ビカット軟化点43℃)
・Exxon Butyl 365:イソブチレン系樹脂(エクソンモービル社製,商品名「Exxon Butyl 365」)
・粘着付与剤:脂肪族系石油樹脂(日本ゼオン社製,商品名「クイントンA-100」)
・ポリエスターSNT:エステル系樹脂(日本合成化学社製,商品名「ポリエスターSNT」)
・スミカセンL705:低密度ポリエチレン(住友化学社製,商品名「スミカセンL705」,軟化点86℃)
[水蒸気バリア性樹脂層]
・TOPAS9506F−04:上記構造式(a)で示されるシクロオレフィン重合体(ポリプラスチックス社製,商品名「TOPAS9506F−04」,ガラス転移温度65℃)
・スミカセンL705:低密度ポリエチレン(住友化学社製,商品名「スミカセンL705」,軟化点86℃)
・Exxon Butyl 365:イソブチレン系樹脂(エクソンモービル社製,商品名「Exxon Butyl 365」)
・粘着付与剤:脂肪族系石油樹脂(日本ゼオン社製,商品名「クイントンA-100」)
・Admer SF731:無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学社製,商品名「Admer SF731」,ビカット軟化点43℃)
・酸化カルシウム:酸化カルシウム(近江化学工業社製,商品名「CML#35」,平均粒径15μm)
・硫酸マグネシウム:無水硫酸マグネシウム(富田製薬社製,商品名「無水硫酸マグネシウム」,平均粒径10μm)
・環状アルミニウムオリゴマー:金属アシレート化合物(川研ファインケミカル社製,商品名「アルゴマー800AF」)
・アルミノキサン:以下の構造式(e)で示されるポリメタロキサン化合物(式中、Lは、有機配位子としての3−オキソブタン酸エチルを表し、nは1以上の整数を表す)(アート科学社製,商品名「ポリアルミノキサン50%トルエン溶液」)
【化9】
【0156】
〔試験例1〕(主材Mの水蒸気透過率の測定)
実施例または比較例で得られたフィルム状封止材について、主材Mの水蒸気透過率を測定した。具体的には、表1に示す水蒸気バリア性樹脂層から吸湿剤を除いた材料のみで樹脂フィルムを作製し、LYSSY社製の透過率測定機「L80−5000」を用い、40℃、90%RHの条件で、この樹脂フィルムの水蒸気透過率を測定した。測定結果から、以下の計算式を用いて、樹脂フィルムの厚さが50μmである場合の水蒸気透過率を算出した。結果を表1に示す。
水蒸気透過率(50μm換算)=水蒸気透過率(実測値)×(実測膜厚/50)
【0157】
〔試験例2〕(接着性樹脂層の水蒸気透過率の測定)
実施例1〜4または比較例1〜5で得られたフィルム状封止材について、接着性樹脂層の水蒸気透過率を測定した。具体的には、上記の両面に剥離シートが積層された接着性樹脂層から一方の剥離シートを剥離したものについて、LYSSY社製の透過率測定機「L80−5000」を用い、40℃、90%RHの条件で、接着性樹脂層の水蒸気透過率を測定した。測定結果から、以下の計算式を用いて、測定試料の厚さが50μmである場合の水蒸気透過率を算出した。結果を表1に示す。
水蒸気透過率(50μm換算)=水蒸気透過率(実測値)×(実測膜厚/50)
【0158】
〔試験例3〕(最大吸湿量の測定)
実施例または比較例で得られたフィルム状封止材の最大吸湿量を測定した。具体的には、70mm×70mmに裁断したフィルム状封止材を70mm×70mmのガラスに120℃で熱ラミネートし、測定用サンプルを得た。サンプル作製後、1時間以内に質量(ガラスおよびフィルム状封止材の合計質量)を測定した。測定後、60℃、90%RH環境下に静置し、質量変化がなくなるまで水分を吸湿させ、再び質量を測定し、吸湿後の質量の値から吸湿前の質量の値を差し引くことで水蒸気吸湿量を求めた。測定結果から、以下の計算式を用いて、50μmの厚さを有する水蒸気バリア性樹脂層における最大吸湿量(g/m
2)を算出した。結果を表1に示す。
最大吸湿量(50μm換算)={水蒸気吸湿量(実測値)/(0.07×0.07)}×(50/水蒸気バリア性樹脂層の厚み)
【0159】
〔試験例4〕(接着力の測定)
実施例または比較例で得られた封止シートについて、一方の剥離シートを剥離して、露出した第1の接着性樹脂層の表面を裏打ち基材としてのポリエチレンテレフタレートシートに貼り合わせ、25mm×300mmの大きさに裁断した。次に、他方の剥離シートを剥離し、露出した第2の接着性樹脂層の表面を被着体としてのガラス板(ソーダライムガラス,日本板硝子社製)と重ね合わせ、120℃で加熱しながら貼り合わせて、試験片を得た。
【0160】
得られた試験片を、貼り合わせ後、23℃、50%RHの環境下で24時間放置した後、同環境下で、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で剥離試験を行い、接着力(N/25mm)を測定した。結果を表1に示す。なお、表1中、接着力が1N/25mm以下の場合は、「<1」と表記した。
【0161】
〔試験例5〕(電子デバイスの評価)
実施例または比較例で得られたボトムエミッション型の電子デバイスを、60℃、90%RHの環境下で500時間放置した後、有機EL素子を起動させ、非発光箇所の面積を測定し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
A:非発光箇所の面積が初期の発光面積の10%未満
B:非発光箇所の面積が初期の発光面積の10以上
【0162】
【表1】
【0163】
表1から分かるように、実施例で得られたフィルム状封止材は、水蒸気バリア性および接着性に優れていた。また、実施例で得られた電子デバイスでは、端部から水分が浸入することも殆どなかった。さらに、実施例で得られたフィルム状封止材によって封止された有機EL素子は、耐久性に優れ、非発光箇所がほとんど見られず、電子デバイスの性能が良好であった。
【0164】
一方、比較例1のフィルム状封止材は、接着力が非常に小さく、電子素子を封止することができなかった。それゆえ、電子デバイス評価を行うことができなかった。比較例2〜5のフィルム状封止材は、電子素子を封止することはできたものの、電子デバイス評価の点で劣った。また、比較例2のフィルム状封止材では、主材Mの水蒸気透過率が高かった。比較例3のフィルム状封止材では、接着性樹脂層の水蒸気透過率が非常に高かった。比較例4のフィルム状封止材では、吸湿剤を含まないため水分の吸湿を行うことができなかった。比較例5のフィルム状封止材では、水蒸気バリア性樹脂層の厚みが薄かったため、吸湿能力が不十分であった。