(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工程(a)で用意する前記第2筒状体は、前記第1筒状体よりも外径が小さい円筒状の本体部と、該本体部と同軸に形成され前記第2端面を有するフランジ部と、を備えている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶接体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、2つの筒状体を同軸となるように抵抗溶接して溶接体を製造する場合に、2つの筒状体の接合部分で溶けた金属の一部が径方向外側にはみ出すことで、筒状体の外周面よりも外側にはみ出し部が形成される場合があった。溶接体にはみ出し部が形成されると、例えば溶接体を他の部材の内部に挿入できなくなるなどの問題が生じる場合がある。そのため、溶接体の製造時にはみ出し部の有無の確認作業やはみ出し部の除去作業などを要する場合があった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、2つの筒状体を同軸となるように溶接した溶接体を製造する際に、径方向外側へのはみ出し部の形成を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の溶接体の製造方法は、
金属製の第1筒状体及び第2筒状体を同軸となるように溶接した溶接体の製造方法であって、
(a)前記第1筒状体及び前記第2筒状体を用意する工程と、
(b)前記第1筒状体の軸方向の端面である第1端面と前記第2筒状体の軸方向の端面である第2端面とを対向させて、該第1筒状体と該第2筒状体とが接触し且つ同軸になるように位置決めする工程と、
(c)前記第1筒状体と前記第2筒状体とを互いに接近する方向に加圧した状態で該第1筒状体と該第2筒状体との接触部分に通電することで、前記第1端面と前記第2端面とを抵抗溶接して前記溶接体とする工程と、
を含み、
前記工程(a)で用意する前記第1筒状体及び前記第2筒状体は、前記第1端面と前記第2端面との少なくとも一方の端面が中心軸に近づくほど該端面とは反対側の端部に向かうように傾斜した傾斜面となっており、該傾斜面は前記工程(b)で位置決めした状態における前記第1端面と前記第2端面とが中心軸に近づくほど互いに離間し且つ該第1端面と該第2端面との角度θcが5°〜15°となるように傾斜している、
ものである。
【0008】
この溶接体の製造方法では、第1筒状体の第1端面と第2筒状体の第2端面との少なくとも一方の端面が、中心軸に近づくほど端面とは反対側の端部に向かうように傾斜した傾斜面となっている。そして、この傾斜面が存在することで、工程(b)で位置決めした状態における第1端面と第2端面とは、中心軸に近づくほど互いに離間し且つ第1端面と第2端面との角度θcが5°〜15°となっている。これにより、工程(c)で抵抗溶接を行う際の接合部分において、溶けた金属が第1,第2筒状体の径方向外側よりも中心軸側に向かいやすくなる。そのため、径方向外側へのはみ出し部の形成を抑制できる。なお、角度θcが5°以上であれば、径方向外側へのはみ出し部の形成を抑制する効果がより確実に得られる。また、角度θcが15°以下であれば、溶接体における第1筒状体と第2筒状体との接合強度が十分なものとなる。
【0009】
本発明の溶接体の製造方法において、前記角度θcが5°〜10°であってもよい。角度θcが10°以下であれば、溶接体における第1筒状体と第2筒状体との接合強度がより高くなる。
【0010】
本発明の溶接体の製造方法において、前記工程(a)で用意する前記第1筒状体及び前記第2筒状体は、前記第1端面と前記第2端面との一方が前記傾斜面であり、他方が軸方向に垂直な面であってもよい。こうすれば、第1端面と第2端面との両方を傾斜面とする場合と比べて、片方の筒状体を比較的単純な形状としつつ径方向外側へのはみ出し部の形成を抑制できる。
【0011】
本発明の溶接体の製造方法において、前記工程(a)で用意する前記第2筒状体は、前記第1筒状体よりも外径が小さい円筒状の本体部と、該本体部と同軸に形成され前記第2端面を有するフランジ部と、を備えていてもよい。こうすれば、第2筒状体の本体部の外径が第1筒状体の外径より小さい場合でも、第2筒状体がフランジ部を備えることで第1端面と第2端面との接合面積を確保しやすい。
【0012】
この場合において、前記工程(a)で用意する前記第2筒状体は、前記本体部から前記フランジ部への内周面の立ち上がり部が曲面になっていてもよい。こうすれば、工程(c)で抵抗溶接を行う際の接合部分において、溶けた金属が第2筒状体の本体部の内周面よりも径方向内側にはみ出しにくくなる。そのため、径方向内側へのはみ出し部の形成を抑制できる。
【0013】
本発明の溶接体の製造方法において、前記工程(a)で用意する前記第1筒状体及び前記第2筒状体は、前記第1端面と前記第2端面との一方にプロジェクションが形成されており、前記工程(b)では、前記プロジェクションを介して前記第1筒状体と前記第2筒状体とが接触するように前記位置決めを行ってもよい。こうすれば、通電による電流をプロジェクション(突起部)部分に集中させることができ、より確実に第1,第2筒状体を接合することができる。
【0014】
本発明のガスセンサの製造方法は、
外筒と、該外筒の内部に配置された前記溶接体と、該溶接体の内部に配置されたセンサ素子と、を備えたガスセンサの製造方法であって、
(1)請求項1〜6のいずれか1項に記載の溶接体の製造方法により前記溶接体を製造する溶接体製造工程と、
(2)前記溶接体の内部に前記センサ素子を挿入して固定する素子固定工程と、
(3)前記外筒の内部に前記溶接体のうち少なくとも前記第1筒状体と前記第2筒状体との接合部分を挿入し、該外筒の内周面と該溶接体の外周面とが接触した状態で両者を互いに固定する外筒固定工程と、
を含むものである。
【0015】
このガスセンサの製造方法では、上述した本発明の溶接体の製造方法により溶接体を製造するため、上述した製造方法と同様の効果、例えば径方向外側へのはみ出し部の形成を抑制できる効果が得られる。また、工程(3)において外筒の内部に溶接体のうち少なくとも第1筒状体と第2筒状体との溶接部を挿入し、外筒の内周面と溶接体の外周面とが接触した状態で両者を互いに固定する。そのため、溶接体の外周面よりも外側にはみ出し部が形成された場合には、はみ出し部を除去してから工程(3)を行う必要がある。したがって、径方向外側へのはみ出し部の形成を抑制する意義が高い。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、ガスセンサ10の縦断面図である。ガスセンサ10は、センサ素子20と、センサ素子20の一端側(
図1の下端側)を保護する保護カバー30と、センサ素子20と導通するコネクタ50を含むセンサ組立体40とを備えている。このガスセンサ10は、図示するように例えば車両の排ガス管などの配管90に取り付けられて、被測定ガスとしての排気ガスに含まれるNOxやO
2等の特定ガスの濃度を測定するために用いられる。本実施形態では、ガスセンサ10は特定ガス濃度としてNOx濃度を測定するものとした。
【0018】
保護カバー30は、センサ素子20の一端を覆う有底筒状の内側保護カバー31と、この内側保護カバー31を覆う有底筒状の外側保護カバー32とを備えている。内側保護カバー31及び外側保護カバー32には、被測定ガスを保護カバー30内に流通させるための複数の孔が形成されている。センサ素子20の一端は、内側保護カバー31で囲まれた空間内に配置されている。
【0019】
センサ組立体40は、センサ素子20を封入固定する素子封止体41と、素子封止体41に取り付けられたナット48,外筒49と、センサ素子20と電気的に接続されたコネクタ50と、を備えている。また、センサ組立体40は、コネクタ50に接続された複数のリード線55と、外筒49の上端に配設されたゴム栓57と、を備えている。
【0020】
素子封止体41は、円筒状の主体金具60と内筒70とを同軸に溶接した溶接体44と、溶接体44の内側の貫通孔内に封入されたサポーター45a〜45c,圧粉体46a,46b,メタルリング47と、を備えている。センサ素子20は素子封止体41の中心軸上に位置しており、素子封止体41を前後方向に貫通している。
【0021】
主体金具60は、円筒状の本体部61と、本体部61よりも内径の小さい円筒状の肉厚部62と、肉厚部62の外周面に形成された段差部63と、を有する金属製の部材である。主体金具60は本体部61の上端で内筒70の下端と溶接されている。肉厚部62は、サポーター45aが
図1の下側に飛び出さないようにこれを押さえている。
【0022】
内筒70は、主体金具60よりも厚さの薄い金属製の部材であり、円筒状の本体部71と、主体金具60と溶接される側の端部(
図1の下端)に形成されたフランジ部72と、フランジ部72とは反対側の端部(
図1の上端)に形成され先端に向かうほど内径が大きくなる拡径部73と、を有している。また、本体部71には、圧粉体46bを内筒70の中心軸方向に押圧するための縮径部74aと、メタルリング47を介してサポーター45a〜45c,圧粉体46a,46bを
図1の下方向に押圧するための縮径部74bとが形成されている。
【0023】
サポーター45a〜45cは、例えばアルミナ、ステアタイト、ジルコニア、スピネル などのセラミックスからなる部材である。圧粉体46a,46bは、例えばタルクやアルミナ粉末、ボロンナイトライドなどのセラミックス粉末を成型したものである。縮径部74a,74bからの押圧力により、圧粉体46a,46bが溶接体44とセンサ素子20との間で圧縮されることで、圧粉体46a,46bが溶接体44内の貫通孔を封止すると共にセンサ素子20を固定している。
【0024】
ナット48は、主体金具60と同軸に固定されており、外周面に雄ネジ部が形成されている。ナット48の雄ネジ部は、配管90に溶接され内周面に雌ネジ部が設けられた固定用部材91内に挿入されている。これにより、ガスセンサ10のうちセンサ素子20の下端や保護カバー30の部分が配管90内に突出した状態で、ガスセンサ10が配管90に固定されている。
【0025】
外筒49は、溶接体44,センサ素子20,コネクタ50の周囲を覆っており、コネクタ50に接続された複数のリード線55が
図1の上端から外部に引き出されている。外筒49の内部には、溶接体44のうち内筒70全てと、内筒70と主体金具60との接合部分と、主体金具60の本体部61の一部とが挿入されている。また、外筒49の内周面と本体部61の外周面とは溶接されて互いに固定されている。外筒49の上端付近には、縮径状に加締められた加締め部49a,49bが形成されている。この加締め部49a,49bにより、ゴム栓57は、外筒49と共に縮径状に加締められ、外筒49内に固定されている。
【0026】
コネクタ50は、センサ素子20の他端(
図1の上端)の表面(
図1の左右面)に形成された図示しない電極に接触してこれらと電気的に導通している。リード線55は、コネクタ50を介してセンサ素子20の各電極と導通している。リード線55は、ゴム栓57を貫通して外部に引き出されている。ゴム栓57は、外筒49の上端の開口を塞ぐように配設され、外筒49とリード線55との隙間を封止している。
【0027】
続いて、ガスセンサー10の製造方法について説明する。まず、主体金具60及び内筒70を同軸となるように溶接して溶接体44を製造する溶接体製造工程を行う。この溶接体製造工程では、まず、工程(a)として、主体金具60及び内筒70を用意する。主体金具60及び内筒70は、予め製造されたものを用意してもよいし、例えば鋳造や鍛造により製造することで用意してもよい。
【0028】
図2は、工程(a)で用意する主体金具60及び内筒70の縦断面図である。なお、
図2は、
図1とは上下を逆にした状態で図示している。主体金具60は、上述した本体部61,肉厚部62,段差部63を備えている。また、本体部61の
図2における下端には、主体金具60の軸方向(
図2の上下方向)の端面であり内筒70と溶接される第1端面65が形成されている。第1端面65は、主体金具60の中心軸に垂直な面である。第1端面65には、
図2の下方向に突出したプロジェクション(突起部)66が形成されている。プロジェクション66は、
図2の断面において三角形状をしており、主体金具60の中心軸に沿って見たときにリング状となる形状に形成されている。プロジェクション66の先端(
図2の下端)の直径r1は、本体部61の外径D1より小さく,本体部61の内径d1より大きい。第1端面65からのプロジェクション66の突出高さh1は、特に限定するものではないが、例えば0.1mm〜1.0mmである。また、第1端面65は、
図2に示すように内周縁及び外周縁が面取り(ここではC面取り)されている。
【0029】
内筒70は、上述した本体部71,フランジ部72,拡径部73や、本体部71からフランジ部72への内周面の立ち上がり部である立ち上がり部76を備えている。なお、この時点では本体部71には縮径部74a,74b(
図1参照)は形成されていない。また、フランジ部72の
図2における上端には、内筒70の軸方向(
図2の上下方向)の端面であり主体金具60と溶接される第2端面75が形成されている。この第2端面75は、内筒70の中心軸に近づくほど第2端面75とは反対側の端部(
図2の下部)に向かうように傾斜した傾斜面となっている。第2端面75は、
図2の拡大図に示すように、内筒70の中心軸に垂直な方向(
図2の左右方向)との角度θ2aが5〜15°となるように傾斜して形成されている。角度θ2aは5°〜10°であることが好ましい。なお、中心軸を挟んで対向する第2端面75同士の角度を角度θ2bとすると、角度θ2b=180°−角度θ2a×2となる。すなわち、角度θ2aが5°〜15°の場合、角度θ2bは170°〜150°となる。角度θ2aが5°〜10°の場合は、角度θ2bは170°〜160°となる。立ち上がり部76は、曲面となっている。特に限定するものではないが、立ち上がり部76の曲率半径Rは、例えば0.8mm〜1.2mmである。本体部71の内径d2は、本体部61の内径d1と略同じになっている。また、フランジ部72の第2端面75の外径D2(=フランジ部72のうち
図2の上端の外径)は、本体部61の外径D1と略同じ又はわずかに小さくなっている。
【0030】
次に、工程(b)として、主体金具60の第1端面65と内筒70の第2端面75とを対向させて、主体金具60と内筒70とが接触し且つ同軸になるように位置決めする。
図3は、工程(b)の様子を模式的に示す縦断面図である。
図3(a)は、主体金具60と内筒70との位置決め及び抵抗溶接に用いる抵抗溶接治具80の縦断面図である。
図3(b)は、抵抗溶接治具80により主体金具60及び内筒70の位置決めを行う様子を示す縦断面図である。また、
図4は、工程(b)及び後述する工程(c)の様子を模式的に示す縦断面図である。
図4(a)は、主体金具60及び内筒70の位置決めを行った状態を示す縦断面図である。
図4(b)は、工程(c)で主体金具60と内筒70との溶接を行った状態を示す縦断面図である。
【0031】
まず、抵抗溶接治具80について説明する。
図3(a)に示すように、抵抗溶接治具80は、第1電極81と、第2電極83と、ガイドピン88と、を備えている。なお、このような抵抗溶接治具は、上述した特許文献1に記載されている。
【0032】
第1電極81は、抵抗溶接時に主体金具60を位置決めすると共に第2電極83との間で電圧が印加されるものであり、主体金具60を挿入して位置決めするための凹部82を有している。第1電極81は、中心軸を第2電極83及びガイドピン88と一致させた状態で使用される。
【0033】
第2電極83は、抵抗溶接時に内筒70を位置決めすると共に第1電極81との間で電圧が印加されるものであり、導電体84,85と、複数の固定ピン86とを備えている。導電体84,85は、円筒状の部材である。導電体84,85は、外径が同じであり、複数の固定ピン86によって両者の外周円の中心軸が同軸になるように重ねて固定されている。これにより、導電体84の貫通孔と導電体85の有底の孔とが連通してガイドピン挿入孔87が形成されている。導電体84,85の中心軸と、ガイドピン挿入孔87の中心軸は全て同軸に位置している。
【0034】
ガイドピン88は、例えば窒化珪素(Si
3N
4),ジルコニア(ZrO
2),アルミナ(Al
2O
3)からなるセラミックス製の部材であり、主体金具60と内筒70との同軸状態を保つための円柱状の部材である。このガイドピン88は、
図3(a)に示すように、ガイドピン挿入孔87内に挿入され、ガイドピン挿入孔87と中心軸が一致するように位置決めされた状態で抵抗溶接に用いられる。この位置決めされた状態では、ガイドピン88と導電体84との間に、内筒70の拡径部73及び本体部71を挿入可能な隙間が形成される。
【0035】
工程(b)では、まず、この抵抗溶接治具80を用意する(
図3(a))。次に、
図3(b)に示すように、第2端面75を上側にした内筒70と、第1端面65を下側にした主体金具60と、第1電極81とを、この順でガイドピン88に向けて下降させていく。これにより、
図4(a)に示すように、内筒70の拡径部73及び本体部71がガイドピン挿入孔87内に挿入され、ガイドピン88が内筒70を貫通して、内筒70が位置決めされる。また、フランジ部72の下面(第2端面75とは反対側の面)と導電体84の上面とが接触する。主体金具60は、ガイドピン88が挿入されることで、内筒70と同軸となるように位置決めされる。また、第1電極81の凹部82に主体金具60の肉厚部62側の端部が挿入されて、第1電極81と主体金具60とが位置決めされる。
【0036】
このように主体金具60と内筒70とが位置決めされた状態では、
図4(a)の拡大図に示すように、主体金具60のプロジェクション66と内筒70の第2端面75とが接触し、それ以外の部分では主体金具60と内筒70とは接触しない状態になる。また、第2端面75は角度θ2aだけ傾斜しているため、第1端面65と第2端面75とが中心軸に近づくほど互いに離間した状態になる。また、第1端面65は主体金具60の中心軸に垂直な面であるため、第1端面65と第2端面75との角度θcは、角度θ2aと同じ値(5〜15°)となる。なお、プロジェクション66の直径r1,突出高さh1は、主体金具60のプロジェクション66と内筒70の第2端面75とが接触し、それ以外の部分では主体金具60と内筒70とが接触しないように、適宜定めることができる。また、例えば外径D2>直径r1>内径d2としてもよいし、(外径D2−0.5mm)≧直径r1≧(内径d2+0.5mm)としてもよい。
【0037】
続いて、工程(c)として、主体金具60と内筒70とを互いに接近する方向に加圧した状態で主体金具60と内筒70との接触部分に通電することで、第1端面65と第2端面75とを抵抗溶接して溶接体44とする。具体的には、第1電極81と第2電極83とを互いに接近する方向に押圧しつつ(このときの圧力を鍛圧とも表記する)、第1電極81と第2電極83との間に電圧を印加する。これにより、プロジェクション66やその周辺が溶融して、
図4(b)の拡大図に示す溶接部67となり、主体金具60と内筒70とが溶接されて溶接体44となる。特に限定するものではないが、溶接時の条件は、例えば、印加する電圧を330V〜450V,電流を25kA〜35kA,鍛圧を0.2MPa〜0.35MPa,通電時間を3msec〜10msecとしてもよい。また、印加する電圧を395V〜415V,電流を30.9kA〜33.7kA,鍛圧を0.23MPa〜0.25MPa,通電時間を5.89msec〜9.22msecとしてもよい。
【0038】
以上のように工程(a)〜(c)を行って溶接体44を製造すると、次に、溶接体44の内部にセンサ素子20を挿入して固定する素子固定工程を行う。
図5は、素子固定工程の様子を模式的に示す縦断面図である。素子固定工程では、まず、
図5(a)に示す溶接体44の内部に、センサー素子20を貫通させたメタルリング47,サポーター45a〜45c,圧粉体46a,46bを
図5(b)に示す順序で拡管部73側から挿入する。次に、メタルリング47と主体金具60とを互いに近づける方向に押圧して圧粉体46a,46bを圧縮し、これにより主体金具60内及び内筒70内を封止する。そして、その状態で内筒70のうちメタルリング47よりも拡管部73側を加締めて縮径部74bを形成する(
図5(c))。これにより、メタルリング47と主体金具60の肉厚部62との間の押圧力が保たれる。続いて、内筒70の本体部71のうち圧粉体46bの側面に位置する部分を加締めて縮径部74aを形成する(
図5(d))。これにより、溶接体44内の封止やセンサー素子20の固定を確実にする。以上により、
図1に示した素子封止体41が製造され、素子封止体41の溶接体44内でセンサ素子20が固定された状態になる。なお、素子封止体41とセンサー素子20とからなる部材を一次組立品141と称する。
【0039】
素子固定工程を行って一次組立品141を製造すると、主体金具60の段差部63に内側保護カバー31及び外側保護カバー32を溶接固定して保護カバー30を形成し、ナット48内に一次組立品141を挿入して主体金具60にナット48を取り付ける。そして、リード線55と、これに接続されたコネクター50とを用意して、コネクター50をセンサー素子20の他端側(
図1の上端側)に接続する。
【0040】
その後、外筒49の内部に溶接体44のうち少なくとも主体金具60と内筒70との接合部分を挿入し、外筒49の内周面と溶接体44の外周面とが接触した状態で両者を互いに固定する外筒固定工程を行う。具体的には、
図6に示すように、リード線55,コネクタ50,溶接体44が挿入されるように外筒49を
図6の上側から被せていき、外筒49の下端をナット48の上部に当接させる。これにより、
図1に示したように溶接体44のうち内筒70全体と、主体金具60と内筒70との接合部分と、内筒70の本体部71の一部とが外筒49に挿入される。そして、外筒49の内周面と主体金具60の本体部61の外周面とが接触した状態で両者を溶接して、溶接体44と外筒49とを互いに固定する。続いて、複数の貫通孔が形成されたゴム栓57を用意し、ゴム線57の貫通孔内にリード線55を通して外筒49内にゴム栓57を挿入する。そして、外筒49を加締め加工により縮径して加締め部49a,49bを形成し、ゴム栓57と外筒49とを固定する。これにより、
図1のガスセンサー10を得る。なお、外筒固定工程や加締め加工の後に保護カバー30の取り付けを行ってもよい。
【0041】
ここで、主体金具60と内筒70とを抵抗溶接する際に、第1端面65を傾斜面とし、
図4(a)に示したように角度θc(=角度θ2a)を5°〜15°とする理由について説明する。主体金具60と内筒70とを位置決めした状態で第1端面65と第2端面75とが中心軸に近づくほど互いに離間していると、第1端面65と第2端面75との間には、中心軸側に近づくほどより広い空間が存在することになる。そのため、抵抗溶接を行う際の接合部分(第1端面65,第2端面75の部分)において、溶けた金属は中心軸側に向かいやすくなり、径方向外側には向かいにくくなる。これにより、
図4(b)に示す溶接後の溶接部67は、主体金具60や内筒70の外周面から外側にははみ出しにくい。一方、例えば
図7(a)に示すように第1端面265及び第2端面275が共に中心軸に垂直であり角度θc=0°となるような場合、溶けた金属が
図4の場合と比べて径方向外側に向かいやすく、
図7(b)に示すように溶接部267に径方向外側へのはみ出し部268が生じやすい。このように、本実施形態では、第1端面65と第2端面75とが中心軸に近づくほど互いに離間するように位置決めすることで、溶接体44の径方向外側へのはみ出し部の形成を抑制するのである。なお、このとき、角度θcを5°以上としているため、径方向外側へのはみ出し部の形成を抑制する効果がより確実に得られる。また、角度θcを15°以下としているため、溶接体44における主体金具60と内筒70との接合強度が十分なものとなる。なお、溶接後すなわち溶接体44においては、角度θcは必ずしも5°〜15°の範囲内にある必要はない。
【0042】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の主体金具60が本発明の第1筒状体に相当し、内筒70が第2筒状体に相当し、第1端面65が第1端面に相当し、第2端面75が第2端面及び傾斜面に相当する。
【0043】
以上説明した本実施形態の溶接体44の製造方法によれば、工程(b)で位置決めした状態における第1端面65と第2端面75とが、中心軸に近づくほど互いに離間し且つ角度θcが5°〜15°となっていることで、溶接体44の径方向外側へのはみ出し部の形成を抑制できる。また、角度θcを10°以下とすることで、溶接体44における主体金具60と内筒70との接合強度がより高くなる。
【0044】
また、工程(a)で用意する主体金具60及び内筒70は、第2端面75が傾斜面であり、第1端面65が軸方向に垂直な面である。そのため、第1端面65と第2端面75との両方を傾斜面とする場合と比べて、片方の筒状体(ここでは主体金具60)を比較的単純な形状としつつ径方向外側へのはみ出し部の形成を抑制できる。
【0045】
さらに、工程(a)で用意する内筒70は、主体金具60よりも外径が小さい円筒状の本体部71と、本体部71と同軸に形成され第2端面75を有するフランジ部72と、を備えている。そのため、本体部71の外径が主体金具60の外径D1より小さい場合でも、内筒70がフランジ部72を備えることで第1端面65と第2端面75との接合面積を確保しやすい。
【0046】
そして、工程(a)で用意する内筒70は、本体部71からフランジ部72への内周面の立ち上がり部76が曲面になっている。これにより、工程(c)で抵抗溶接を行う際の接合部分において、溶けた金属が内筒70の本体部71の内周面よりも径方向内側にはみ出しにくくなる。そのため、径方向内側へのはみ出し部の形成を抑制できる。この理由は、以下のように考えられる。すなわち、立ち上がり部76が曲面である場合、立ち上がり部76が例えば断面視で第2端面75と本体部71の内周面との折れ線状であるような場合と比較して、立ち上がり部76と第1端面65との間の空間が比較的大きくなる。これにより、溶けた金属がより多くこの空間内に存在することができ、径方向内側にはみ出しにくくなっていると考えられる。
【0047】
そしてまた、工程(a)で用意する主体金具60及び内筒70は、第1端面65にプロジェクション66が形成されている。そして、工程(b)では、プロジェクション66を介して主体金具60と内筒70とが接触するように位置決めを行っている。これにより、通電による電流をプロジェクション66部分に集中させることができ、より確実に主体金具60と内筒70とを接合することができる。
【0048】
また、以上説明した本実施形態のガスセンサ10の製造方法では、外筒固定工程において外筒49の内部に溶接体44のうち少なくとも主体金具60と内筒70との溶接部を挿入し、外筒49の内周面と溶接体44(主体金具60)の外周面とが接触した状態で両者を互いに固定している。そのため、溶接体44の外周面よりも外側にはみ出し部が形成されると、外筒49への溶接体44の挿入ができない場合がある。この場合、はみ出し部を除去してから外筒固定工程を行う必要がある。したがって、溶接体44の製造時に径方向外側へのはみ出し部の形成を抑制する意義が高い。
【0049】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しうることは言うまでもない。
【0050】
例えば、上述した実施形態では、第2端面75が傾斜面であり、第1端面65が軸方向に垂直な面としたが、これに限られない。工程(b)で位置決めした状態における第1端面65と第2端面75とが中心軸に近づくほど互いに離間し且つ角度θcが5°〜15°となるように、第1端面65と第2端面75との少なくとも一方が傾斜面となっていればよい。例えば、第1端面65と第2端面75との両方が傾斜面になっていてもよい。
図8は、この場合の変形例の第1端面65及び第2端面75の拡大断面図である。
図8では、第2端面75が上述した実施形態と同様に傾斜している。また、第1端面65が主体金具60の中心軸に近づくほど第1端面65とは反対側の端部(肉厚部62の方向)に向かうように傾斜した傾斜面となっている。この第1端面65と主体金具60の中心軸に垂直な方向(
図8の左右方向)との角度を角度θ1aとする。この場合も、第1端面65と第2端面75とが中心軸に近づくほど互いに離間した状態になる。また、第1端面65と第2端面75との角度θcは、角度θ1aと角度θ2aとの和になる。そのため、角度θ1a及び角度θ2aの値が、角度θc(=角度θ1a+角度θ2a)が5°〜15°となるように角な値であれば、上述した実施形態と同様に溶接体44の径方向外側へのはみ出し部の形成を抑制する効果が得られる。なお、角度θcが5°〜15°であればよいため、例えば角度θ2aが0°(第2端面75が軸方向に垂直な面)であってもよい。この場合、角度θ1aが5°〜15°であればよい。
【0051】
上述した実施形態では、第1端面65にはプロジェクション66が形成されているものとしたが、これに限られない。例えば、第1端面65ではなく第2端面75にプロジェクションが形成されていてもよい。
図9は、プロジェクション77を有する変形例の内筒70の縦断面図である。
図9に示すように第2端面75に形成されたプロジェクション77の直径を直径r2,第2端面75(の最上端)からの高さを突出高さh2とすると、直径r2及び突出高さh2は、上述した工程(b)においてプロジェクション77と主体金具60の第1端面65とが接触し、それ以外の部分では主体金具60と内筒70とが接触しないように、適宜定めればよい。また、例えば(第1端面65の外径)>直径r2>(第1端面65の内径)としてもよいし、(第1端面65の外径−0.5mm)≧直径r1≧(第1端面65の内径+0.5mm)としてもよい。なお、第1端面65の外周縁に面取りがない場合、第1端面65の外径=外径D1となる。同様に、第1端面65の内周縁に面取りがない場合、第1端面65の内径=内径d1となる。
【0052】
また、上述した実施形態ではプロジェクション66を介して主体金具60と内筒70とを接触させて抵抗溶接を行う、いわゆるプロジェクション溶接により溶接体44を製造するものとしたが、これに限らず抵抗溶接で溶接体44を製造すればよい。例えば、第1端面65と第2端面75とのいずれにもプロジェクションが形成されていなくてもよい。この場合、例えば主体金具60がフランジ部を有するものとし、主体金具60のフランジ部と内筒70のフランジ部72とを対向させてスポット溶接により溶接体44を製造してもよい。
【0053】
上述した実施形態では、第1筒状体及び第2筒状体として主体金具60及び内筒70を例示したが、第1筒状体及び第2筒状体の形状はこれに限られない。例えば、内筒70がフランジ部72を備えなくてもよい。内筒70の立ち上がり部76が曲面でなくてもよい。内筒70の外径と主体金具60の外径D1とが同じであってもよい。主体金具60の内径d1と内筒70の内径d2とが異なっていてもよい。第1端面65の内周縁及び外周縁の少なくとも一方に面取りがなくてもよい。また、第1筒状体及び第2筒状体とを溶接した接合体は、ガスセンサ10に用いるものに限られない。
【0054】
上述した実施形態では、角度θ2b=180°−角度θ2a×2となるものとしたが、これに限られない。例えば、中心軸を挟んで対向する第2端面75同士が非対称であってもよい。このような場合でも、位置決め時に対向する第1端面65と第2端面75との角度θcが5°〜15°の範囲内にあればよい。
【実施例】
【0055】
以下には、溶接体44を具体的に作製した例を実施例として説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
[実施例1]
図2に示した形状の主体金具60及び内筒70を用意し、上述した製造方法により溶接体44を作製して、実施例1とした。なお、主体金具60及び内筒70の材質はSUS430とした。主体金具60の本体部61の外径D1は14.5mm,内径d1は9mm,プロジェクション66の先端(
図2の下端)の直径r1は12.5mm,プロジェクション66の突出高さh1は0.5mmとした。内筒70の第2端面75の外径D2は14mm、本体部71の内径d2は9mm、立ち上がり部76の曲率半径Rは1mm、角度θ2a(=角度θc)は5°,角度θ2bは170°とした。また本体部71,フランジ部72,立ち上がり部76の厚みは0.5mmとした。溶接時の条件は、印加電圧を330V,電流を30kA,鍛圧を0.27MPa,通電時間を7.8secとした。
【0057】
[実施例2〜5]
角度θ2a(=角度θc)及び角度θ2bを種々変更した点以外は実施例1と同様にして溶接体44を作製し、実施例2〜5とした。具体的には、実施例2は、角度θ2a(=角度θc)を7.5°,角度θ2bを165°,外径D2を14.0mmとした。実施例3は、角度θ2a(=角度θc)を10°,角度θ2bを160°,外径D2を14.03mmとした。実施例4は、角度θ2a(=角度θc)を12.5°,角度θ2bを155°,外径D2を14.06mmとした。実施例5は、角度θ2a(=角度θc)を15°,角度θ2bを150°,外径D2を14.09mmとした。
【0058】
[比較例1]
図7に示したように、角度θ2a(=角度θc)を0°,角度θ2bを180°,外径D2を14.0mmとした点以外は実施例1と同様にして溶接体44を作製し、比較例1とした。
【0059】
[評価試験1]
実施例1〜5,比較例1の溶接体44をそれぞれ300個作製し、径方向外側のはみ出し状態及び内側のはみ出し状態の良否判定を行った。具体的には、溶接体44に直径8.9mmのピンゲージを通し、通った場合に径方向内側のはみ出し状態は良好(はみ出し部が存在しない又は存在しても問題ない程度)と判定した。同様に、溶接体44に直径14.70mmのリングゲージを通し、通った場合に径方向外側のはみ出し状態は良好(はみ出し部が存在しない又は存在しても問題ない程度)と判定した。実施例1〜5の溶接体44は、いずれも300個全てにおいて径方向外側,内側のはみ出し状態は良好であった。一方、比較例1の溶接体44は、300個のうち10個について径方向外側のはみ出し状態が不良であり、径方向内側のはみ出し状態は300個全てにおいて良好であった。以上のことから、角度θcを5°〜15°とすることで、径方向外側のはみ出し部の形成を抑制できることが確認できた。
【0060】
図10〜
図12は、実施例1,2及び比較例1の溶接体44の接合部分の拡大断面写真である。
図12に示すように、比較例1では
図7と同様に溶接部267の一部が径方向外側へのはみ出し部268となっていた。一方、
図10,11に示すように、実施例1,2の溶接体44では、接合部67には径方向外側へのはみ出し部は形成されていなかった。なお、実施例1及び比較例1は、第2端面75の外径D2の値が同じ(14.0mm)である。しかし、
図10,
図12からわかるように、比較例1ではフランジ部72の径方向外側端部(
図12の左端部)が実施例1よりも外側(
図12の左側)に飛び出していた。これは、溶接時の鍛圧でフランジ部72が径方向外側に伸びたためと考えられる。すなわち、実施例1では角度θcが5°であり第2端面75が傾斜しているため、フランジ部72は溶接時の鍛圧で径方向外側よりも径方向内側に伸びやすいと考えられる。これに対し、比較例1では、角度θcが0°であり第2端面75が傾斜していないため、フランジ部72は溶接時の鍛圧で径方向外側と径方向内側とに同程度に伸びやすいと考えられる。この違いにより、比較例1ではフランジ部72の径方向外側端部が実施例1よりも外側に飛び出しているものと考えられる。
【0061】
[評価試験2]
実施例1〜5の溶接体44について、主体金具60と内筒70との接合強度を調べた(引き剥がし試験)。その結果、実施例1〜3の溶接体44は、実施例4,5の溶接体44と比べて接合強度が高かった。以上のことから、角度θcを10°以下とすることで、主体金具60と内筒70との接合強度がより高くなることが確認できた。