特許第6530939号(P6530939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6530939
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】エンジン用軸受メタル
(51)【国際特許分類】
   F16C 9/02 20060101AFI20190531BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20190531BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20190531BHJP
   F01M 1/06 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
   F16C9/02
   F16C17/02 Z
   F16C17/04 Z
   F01M1/06 K
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-60516(P2015-60516)
(22)【出願日】2015年3月24日
(65)【公開番号】特開2016-180447(P2016-180447A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】小山 秀行
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 学
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 貴人
(72)【発明者】
【氏名】田中 良憲
(72)【発明者】
【氏名】尾曽 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】長井 健太郎
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−147456(JP,A)
【文献】 特開2014−234739(JP,A)
【文献】 特開2005−256965(JP,A)
【文献】 特開2005−249024(JP,A)
【文献】 特開2014−214731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 3/00− 9/06
F16C 17/00− 17/26
F16C 33/28
F01M 1/00− 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体との摺動面に樹脂皮膜を有するエンジン用軸受メタルであって、
前記摺動面にスポット状に複数の樹脂皮膜が配置され、前記樹脂皮膜どうしの間に隣合う前記樹脂皮膜と前記摺動面とで形成される凹部により網目状溝が形成され、前記網目状溝は、前記摺動面の摺動方向に伸びる縦溝部分を備えているエンジン用軸受メタル。
【請求項2】
前記摺動面の摺動方向に交差する方向に複数の樹脂皮膜が所定間隔を置いて配置された樹脂皮膜列を備え、前記樹脂皮膜列が前記摺動面の摺動方向に複数列配置され、前記樹脂皮膜列の隣合う樹脂皮膜どうしの間に形成される溝部分の前記摺動方向の両端開口部が、前記摺動方向で隣合う隣の樹脂皮膜列の樹脂皮膜に向けられている請求項1に記載のエンジン用軸受メタル。
【請求項3】
前記摺動面の摺動方向に交差する方向に複数の樹脂皮膜が所定間隔を置いて配置された樹脂皮膜列を備え、前記樹脂皮膜列が前記摺動方向に複数列配置され、
複数列の前記樹脂皮膜列の樹脂皮膜が前記摺動方向に揃えて配置されることにより、前記網目状溝が、前記摺動方向に沿って一連に伸びる縦溝部分と、前記交差する方向に沿って一連に伸びる横溝部分とで構成され、
前記縦溝部分と前記横溝部分との交差箇所に前記網目状溝の他の箇所よりも広幅のオイル溜め溝部分が形成されている請求項1に記載のエンジン用軸受メタル。
【請求項4】
前記樹脂皮膜内に補助オイル溜め溝が凹設されている請求項1〜3の何れか一項に記載のエンジン用軸受メタル。
【請求項5】
回転体との摺動面に樹脂皮膜と凹部とを有するエンジン用軸受メタルであって、
前記摺動面の摺動方向に伸びる縦縞の樹脂皮膜が配置され、隣合う前記樹脂皮膜どうしの間に前記樹脂皮膜どうしと前記摺動面とで形成される凹部で前記摺動方向に伸びる縦縞の縦縞溝が形成され、前記縦縞溝の前記摺動方向の両端部が前記摺動方向の両端縁部寄りの樹脂皮膜で閉じられているエンジン用軸受メタル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャーナルメタル、クランクピンメタル、サイドメタル、バランサメタルなどの軸受メタルに係り、詳しくは、回転体との摺動面に樹脂皮膜を有するエンジン用軸受メタルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用ディーゼルエンジン用軸受メタルとして、摺動部の表面に樹脂皮膜を備えたものがある。この種の軸受メタルによれば、樹脂皮膜で摺動部のクリアランスが最適化され、油圧を確保しつつ摺動摩擦が低減されるという利点が得られる。このような先行技術としては、特許文献1において開示されるものが知られている。
【0003】
しかしながら、摺動部の皮膜が全面一様のためか、油膜が保持され難く、摺動摩擦の低減機能が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−234739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、図9に示されるように、一連の樹脂皮膜102にスポット状に複数の凹部103を配置して油溜まりとして機能させ、油膜の保持を図ることが試された。しかしながら、凹部103が樹脂皮膜102に囲まれているので、凹部103へのエンジンオイルの供給が困難であり、凹部103に十分な量のエンジンオイルが保持されず、エンジンオイルによる摺動面101の摩擦低減機能が不十分であった。
【0006】
そこで、鋭意研究の結果、図1図3に示されるように、摺動面13にスポット状に複数の樹脂皮膜14を配置し、樹脂皮膜14,14どうしの間に形成される凹部15で網目状溝16を形成すれば網目状溝16、即ち、凹部15へのエンジンオイルの供給が改善され、凹部15に十分な量のエンジンオイルが保持される、エンジンオイルによる摺動面13の摩擦低減機能が高まることが知見されるに至った。
【0007】
また、鋭意研究の結果、図5に示されるように、摺動面13に摺動方向sに伸びる縦縞の樹脂皮膜14を配置し、隣合う樹脂皮膜14,14どうしの間に形成される凹部15で摺動方向sに伸びる縦縞の縦縞溝19を形成する手段もある。即ち、縦縞溝19の摺動方向両端部19a,19bを摺動面13の摺動方向両端縁部13a,13b寄りの樹脂皮膜14で閉じると、縦縞溝19、即ち、凹部15へのエンジンオイルの供給が改善され、凹部15に十分な量のエンジンオイルが保持され、エンジンオイルによる摺動面13の摩擦低減機能が高まることが知見されるに至った。
【0008】
上記実状に鑑みることにより、本発明の目的は、凹部へのエンジンオイルの供給を改善することができるエンジン用軸受メタルを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、回転体rとの摺動面13に樹脂皮膜14を有するエンジン用軸受メタルにおいて、
前記摺動面13にスポット状に複数の樹脂皮膜14が配置され、前記樹脂皮膜14どうしの間に隣合う前記樹脂皮膜14と前記摺動面13とで形成される凹部15により網目状溝16が形成され、前記網目状溝16は、前記摺動面13の摺動方向sに伸びる縦溝部分を備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のエンジン用軸受メタルにおいて、
前記摺動面13の摺動方向sに交差する方向kに複数の樹脂皮膜14が所定間隔を置いて配置された樹脂皮膜列17を備え、前記樹脂皮膜列17が前記摺動面13の摺動方向sに複数列配置され、前記樹脂皮膜列17の隣合う樹脂皮膜14,14どうしの間に形成される溝部分18の前記摺動方向sの両端開口部18a,18bが、前記摺動方向sで隣合う樹脂皮膜列17の樹脂皮膜14に向けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載のエンジン用軸受メタルにおいて、
前記摺動面13の摺動方向sに交差する方向kに複数の樹脂皮膜14が所定間隔を置いて配置された樹脂皮膜列17を備え、前記樹脂皮膜列17が前記摺動方向sに複数列配置され、
複数列の前記樹脂皮膜列17の樹脂皮膜14が前記摺動方向sに揃えて配置されることにより、前記網目状溝16が、前記摺動方向sに沿って一連に伸びる縦溝部分30と、前記交差する方向に沿って一連に伸びる横溝部分31とで構成され、
前記縦溝部分30と前記横溝部分31との交差箇所に前記網目状溝16の他の箇所よりも広幅のオイル溜め溝部分32が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載のエンジン用軸受メタルにおいて、
前記樹脂皮膜14内に補助オイル溜め溝33が凹設されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、回転体rとの摺動面13に樹脂皮膜14と凹部15とを有するエンジン用軸受メタルにおいて、
前記摺動面13の摺動方向sに伸びる縦縞の樹脂皮膜14が配置され、隣合う前記樹脂皮膜14,14どうしの間に前記樹脂皮膜14,14どうしと前記摺動面13とで形成される凹部15で前記摺動方向sに伸びる縦縞の縦縞溝19が形成され、前記縦縞溝19の前記摺動方向sの両端部19a,19bが前記摺動方向sの両端縁部13a,13b寄りの樹脂皮膜14で閉じられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、凹部へのエンジンオイルの供給が改善される効果を奏する。
図1図4に示されるように、軸受メタル4の摺動面13にスポット状に複数の樹脂皮膜14が配置され、樹脂皮膜14,14どうしの間に形成される凹部15で網目状溝16が形成されているので、回転体rの回転時に網目状溝16の摺動方向sの両端開口部16a,16bから網目状溝16内、すなわち凹部15内にエンジンオイルが供給され、凹部15へのエンジンオイルの供給が改善される。
従って、凹部15に十分な量のエンジンオイルが保持され、エンジンオイルによる軸受メタル4の摺動面13の摩擦低減機能が高まる。
【0015】
請求項1の発明によれば、摺動面13の広域に亘って、エンジンオイルの保持領域を形成することができる、という効果を奏する。
図1図2に示されるように、軸受メタル4の摺動面13にスポット状に複数の樹脂皮膜14が配置され、樹脂皮膜14,14どうしの間に形成される凹部15で網目状溝16が形成されているので、摺動面13の広域に亘って、エンジンオイルの保持領域を形成することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、請求項1に係る発明の効果に加え、網目状溝のエンジンオイル保持機能を高めることができる、という効果を奏する。
図2に示されるように、同じ樹脂皮膜列17の隣合う樹脂皮膜14,14どうしの間に形成される溝部分18の摺動方向sの両端開口部18a,18bが、摺動方向sで隣合う隣の樹脂皮膜列17の樹脂皮膜14に向けられているので、回転体rの回転によって溝部分18の両端開口部18a,18bから流出するエンジンオイルが隣の樹脂皮膜列17の樹脂皮膜14に衝突し、溝部分18からのエンジンオイルの流出が抑制され、網目状溝16のエンジンオイル保持機能を高めることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、請求項1に係る発明の効果に加え、網目状溝のエンジンオイル保持機能を高めることができる、という効果を奏する。
図4に示されるように、縦溝部分30と横溝部分31との交差箇所に網目状溝16の他の箇所よりも広幅のオイル溜め溝部分32が形成されているので、オイル溜め溝部分32に多くのエンジンオイルが保持され、網目状溝16のエンジンオイル保持機能を高めることができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、請求項1〜3の何れかに係る発明の効果に加え、軸受メタルの摺動面でのエンジンオイル保持機能を高めることきができる、という効果を奏する。
図4に示されるように、樹脂皮膜14内に補助オイル溜め溝33が凹設されているので、補助オイル溜め溝33にもエンジンオイルが溜まり、摺動面13でのエンジンオイル保持機能を高めることができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、次の効果を奏する。
図5に示されるように、縦縞溝19の摺動方向sの両端部19a,19bが軸受メタル4の摺動方向sの両端縁部13a,13b寄りの樹脂皮膜14で閉じられているので、回転体rの回転時に縦縞溝19の摺動方向sの両端縁部13a,13bの樹脂皮膜14を乗り越えるだけで、縦縞溝19内、すなわち凹部15内にエンジンオイルが供給され、凹部15へのエンジンオイルの供給が改善される。このため、凹部15に十分な量のエンジンオイルが保持され、エンジンオイルによる摺動面13の摩擦低減機能が高まる。
【0020】
請求項5の発明によれば、軸受メタルの摺動面の広域に亘って、エンジンオイルの保持領域を形成することができる。
図5に示されるように、縦縞溝19の摺動方向sの両端部19a,19bが軸受メタル4の摺動方向sの両端縁部13a,13b寄りの樹脂皮膜14で閉じられているので、摺動面13の広域に亘って、エンジンオイルの保持領域を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ラジアルメタルの摺動面構造を示す斜視図(実施形態1)
図2】ラジアルメタルの樹脂皮膜を示す平面図及びその要部拡大図
図3】スラストメタルの摺動面構造を示す斜視図
図4】実施形態2による樹脂皮膜及び網目状溝を示す拡大図
図5】実施形態3による樹脂皮膜及び網目状溝を示す拡大図
図6】エンジンのベアリングケースとその周辺部分を示す縦断面図
図7】エンジンのベアリングケースの取付状態を説明する分解斜視図
図8】エンジンの縦断側面図
図9】従来技術による軸受メタルの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明によるエンジン用軸受メタルの実施の形態を、農用トラクタなどに搭載されるディーゼルエンジンに適用された場合について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
エンジンについて簡単に説明する。図8に示されるように、シリンダブロック20の上部にシリンダヘッド21が組み付けられ、シリンダヘッド21の上部にヘッドカバー22が組み付けられている。シリンダブロック20の下部にはオイルパン23が組み付けられている。シリンダブロック20の前部にはギヤケース24が組み付けられている。シリンダブロック20の下部にはクランク軸1が収容されている。
【0024】
クランク軸1の中間ジャーナル部25に中間のベアリングケース26が組み付けられ、端部ジャーナル部2に端部のベアリングケース3が組み付けられた状態で、後側のシリンダブロック端壁5の端部軸受孔6から、クランク軸1をシリンダブロック20内に挿入し、中間の軸受孔27にベアリングケース26を内嵌させ、端部軸受孔6に端部のベアリングケース3を内嵌させるトンネル型軸受構造が採用されている。クランク軸1の後端にはフライホイル29が取り付けられている。
【0025】
端部の軸受構造について簡単に説明する。図6に示されるように、クランク軸1の端部ジャーナル部2に、ベアリング(軸受メタル)4を支持させたベアリングケース3が外嵌され、ベアリングケース3にベアリング4が取付けられる。ベアリングケース3をシリンダブロック端壁5の端部軸受孔6に内嵌し、ベアリングケース3を、外側からケースガスケット7を介してベアリングケースカバー8で覆い、ベアリングケースカバー8はシリンダブロック端壁5にカバー取付ボルト9で取付けられている。
【0026】
ベアリングケースカバー8のクランク軸貫通孔8aにクランク軸1を貫通させ、クランク軸貫通孔8aにオイルシール8bを内嵌し、このオイルシール8bをクランク軸1の周面に圧接させている。ベアリング4は、ラジアルメタル4aとスラストメタル4bとで構成されている。ベアリングケース3は、上下2分割構造で、端部ジャーナル部2に上下から組み付けられる。ベアリングケースカバー8(図7参照)とシリンダブロック端壁5との間には、ケースカバーガスケット28が挟み付けられていてもよい。
【0027】
図7に示されるように、ベアリングケースカバー8に周方向に所定間隔を保持して複数のボルト貫通孔10が設けられている。図6に示すように、ベアリングケース3の外周縁部に周方向に所定間隔を保持してねじ孔11が設けられている。図6に示されるように、ベアリングケースカバー8の外側からベアリングケースカバー8のボルト貫通孔10とケースガスケット7のボルト貫通孔34にケース取付ボルト12を貫通させ、ケース取付ボルト12をベアリングケース3のねじ孔11にねじ嵌合させる。従って、ベアリングケース3がシリンダブロック端壁5に固定されるとともに、ベアリングケースカバー8とベアリングケース3との間にケースガスケット7が挟み付けられている。ケースガスケット7は銅の薄板である。
【0028】
〔実施形態1〕
次に、エンジン用軸受メタルについて説明する。
図1図2に示されるように、クランク軸1(回転体rの一例)の端部ジャーナル部2との摺動面(内周面)13に樹脂皮膜14を有するラジアルメタル4a(「エンジン用軸受メタル4」の一例)において、摺動面13にスポット状に複数の樹脂皮膜14が配置され、隣合う樹脂皮膜14,14どうしの間に形成される凹部15で網目状溝16が形成されている。
【0029】
図1図2に示されるように、樹脂皮膜14と凹部15とは、ラジアルメタル4aの内周面、即ち摺動面13に一様に形成されている。樹脂皮膜14には、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂が用いられている。樹脂皮膜14には、遷移金属酸化物、グラファイト等の無機固体潤滑剤が含まれている。
樹脂皮膜14は、例えば正六角形に形成され、従って網目状溝16は六角網目状に形成されている。網目状溝16は、隣合う樹脂皮膜14,14どうしの間に形成されており、網目状溝16の内底面は、樹脂皮膜14で覆われていないラジアルメタル4aの金属表面で形成されている。
【0030】
図2に示されるように、摺動面13の周方向、即ち摺動方向sに直交する方向(交差する方向の一例)kに複数の樹脂皮膜14が所定間隔を置いて配置された樹脂皮膜列17を備え、この樹脂皮膜列17が摺動方向sに複数列配置されている。
樹脂皮膜列17における互いに隣合う樹脂皮膜14,14どうしの間に形成される溝部分18の摺動方向sの両端開口部18a,18bが、摺動方向sで隣合う隣の樹脂皮膜列17の樹脂皮膜14に向けられている。
【0031】
〔実施形態2〕
図4に示されるように、ラジアルメタル4aにおける摺動面13の摺動方向sに直交する方向(交差する方向の一例)kに複数の樹脂皮膜14が所定間隔を置いて配置された樹脂皮膜列17を備え、この樹脂皮膜列17が摺動方向sに複数列配置されている。
複数列の樹脂皮膜列17,17の樹脂皮膜14,14が摺動方向sに揃えて配置されることにより、網目状溝16が、摺動方向sに沿って一連に伸びる縦溝部分30と、直交する方向kに沿って一連に伸びる横溝部分31とで構成されている。
【0032】
縦溝部分30と横溝部分31との交差箇所に網目状溝16の他の箇所よりも広幅のオイル溜め溝部分32が形成されている。
オイル溜め溝部分32は、所定の樹脂皮膜列17の樹脂皮膜14の下部が先窄まり形状とされ、かつ、この樹脂皮膜列17と摺動方向sの一方向で隣合う樹脂皮膜列17の樹脂皮膜14の他方向側端部が先窄まり形状とされることにより、略四角状の凹所として形成されている。
【0033】
この実施形態2においては、樹脂皮膜14内に補助オイル溜め溝33が凹設されている。「2」や「5」形状に凹入形成されている補助オイル溜め溝33は、スポット状に配置された各樹脂皮膜14のエリア内に形成され、内底面は、樹脂皮膜14で覆われていないラジアルメタル4aの金属表面で形成されている。他の構成は、実施形態1と同じであり、図4中においては、実施形態1と同一の要素には、図1図2と同一の符号を付しておく。
【0034】
〔実施形態3〕
図3に示されるように、クランク軸1の端部ジャーナル部2との摺動面(側面)13に樹脂皮膜14を有するスラストメタル4b(「エンジン用軸受メタル4」の一例)において、摺動面13にスポット状に複数の樹脂皮膜14が配置され、隣合う樹脂皮膜14,14どうしの間に形成される凹部15で網目状溝16が形成されている。
【0035】
このスラストメタル4bにおいては、摺動方向sに直交する方向であるクランク軸1の回転軸心Pに関する径方向(交差する方向の一例)kに複数又は単数の樹脂皮膜14が所定間隔を置いて配置された樹脂皮膜列17を備え、この樹脂皮膜列17が摺動方向sに複数列で放射状に配置されている。
樹脂皮膜列17における互いに隣合う樹脂皮膜14,14どうしの間に形成される溝部分18の摺動方向sの両端開口部18a,18aが、摺動方向sで隣合う隣の樹脂皮膜列17の樹脂皮膜14に向けられている。
【0036】
〔実施形態4〕
図5に示されるように、ラジアルメタル4aの摺動面13に樹脂皮膜14と凹部15とを備えたエンジン用軸受メタル4でも良い。摺動面13に摺動方向sに伸びる縦縞の樹脂皮膜14が配置され、隣合う樹脂皮膜14,14の間に形成される凹部15で摺動方向sに伸びる縦縞の縦縞溝19が形成され、縦縞溝19の摺動方向sの両端部19a,19bが摺動面13の摺動方向sの両端縁部13a,13b寄りの樹脂皮膜14で閉じられている。なお、図5にて他方の端部19bは見えないため、その符号19bは、一方の端部19aの傍に括弧書きにて付しておく。
【0037】
樹脂皮膜14は、方形枠内を複数の縦桟で区画した形状で、縦縞溝19は、樹脂皮膜14の縦桟の間に形成され、内底面は、樹脂皮膜14で覆われていないラジアルメタル4aの金属表面で形成されている。
他の構成は、実施形態1と同じであり、図5中、実施形態1と同一の要素には、図1図2と同一の符号を付しておく。
【符号の説明】
【0038】
13 摺動面
13a,13b 端縁部
14 樹脂皮膜
15 凹部
16 網目状溝
17 樹脂皮膜列
18 溝部分
18a,18b 開口部
19 縦縞溝
19a,19b 端部
30 縦溝部分
31 横溝部分
32 オイル溜め溝部分
33 補助オイル溜め溝
k 摺動方向に交差する方向
r 回転体
s 摺動方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9