(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
患者に穿刺可能な穿刺針又は患者の血管内に挿通可能なカテーテルから成るアクセス手段、及び該アクセス手段を介して患者の血液を流通又は薬剤等の液体を患者に注入し得る流通路を有した治療装置と、
患者の生体情報を測定し得る生体情報測定手段と、
を具備した医療用装置において、
前記生体情報測定手段は、前記アクセス手段と一体化された固定部に形成されるとともに、前記固定部に患者側配線が延設され、前記流通路に装置側配線が延設されて、前記固定部と流通路が接続した状態で前記患者側配線及び装置側配線が電気的に接続される構成とされ、当該生体情報測定手段で得られた測定値に基づいて、前記アクセス手段の患者からの離脱と、前記アクセス手段からの前記流通路の離脱との両方を検知可能とされたことを特徴とする医療用装置。
前記生体情報測定手段は、前記固定部に一つ以上形成され、その一つ以上の生体情報測定手段で得られたそれぞれの測定値に基づいて、前記アクセス手段の患者からの離脱を検知可能とされたことを特徴とする請求項1記載の医療用装置。
前記生体情報測定手段が形成される固定部は、側方に突出形成されて前記アクセス手段を患者に固定するための固定翼部から成ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の医療用装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術においては、心電図等の生体情報を測定するためのセンサと、漏血を検知するためのセンサとが必要とされ、測定及び検知する対象毎に複数のセンサが必要とされることから、コストが嵩んでしまうとともに、それら複数の電極やセンサを治療前に取り付ける必要があり、治療前の作業性が悪化してしまうという問題があった。また、治療時、漏血を検知するためには、穿刺針から漏れた血液が漏血センサに触れる必要があるが、必ずしも漏血センサのある場所に漏れるとは限らず、漏血を常時正確に検知するのが困難となっている。なお、上記問題は、血液浄化治療に限らず、例えば患者の血管内にカテーテルを挿通して薬剤等を患者の体内に投与する輸液治療等においても同様(但し、この場合は輸液が漏れることとなる)に生ずる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、生体情報の測定及びアクセス手段の患者からの離脱の検知を生体情報測定手段にて正確に行わせることができるとともに、治療前及び治療時(血液浄化治療においては返血も含む)の作業性を向上させることができる医療用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、患者に穿刺可能な穿刺針又は患者の血管内に挿通可能なカテーテルから成るアクセス手段、及び該アクセス手段を介して患者の血液を流通又は薬剤等の液体を患者に注入し得る流通路を有した治療装置と、患者の生体情報を測定し得る生体情報測定手段とを具備した医療用装置において、前記生体情報測定手段は、前記アクセス手段と一体化された固定部に形成されるとともに、
前記固定部に患者側配線が延設され、前記流通路に装置側配線が延設されて、前記固定部と流通路が接続した状態で前記患者側配線及び装置側配線が電気的に接続される構成とされ、当該生体情報測定手段で得られた測定値に基づいて、前記アクセス手段の患者からの離脱
と、前記アクセス手段からの前記流通路の離脱との両方を検知可能とされたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の医療用装置において、前記生体情報測定手段は、前記固定部に一つ以上形成され、その一つ以上の生体情報測定手段で得られたそれぞれの測定値に基づいて、前記アクセス手段の患者からの離脱を検知可能とされたことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の医療用装置において、前記生体情報測定手段が形成される固定部は、側方に突出形成されて前記アクセス手段を患者に固定するための固定翼部から成ることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の医療用装置において、前記生体情報測定手段は、患者の皮膚に密着して取り付けられ、その患者の心電図を測定し得ることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の医療用装置において、前記
生体情報測定手段からの測定信号に基づいて心電図を得る心電図取得手段を具備するとともに、当該心電図取得手段により得られる心電図情報に基づいて、前記アクセス手段の患者からの離脱を検知可能とされたことを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項5記載の医療用装置において、前記心電図取得手段により取得された心電図に異常が認められた場合、所定の報知を行うことを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項1〜6の何れか1つに記載の医療用装置において、前記アクセス手段の患者からの離脱又は前記アクセス手段からの前記流通路の離脱を検知したことを条件として所定の報知を行う報知手段を具備したことを特徴とする。
請求項8記載の発明は、請求項1〜7の何れか1つに記載の医療用装置において、前記アクセス手段の患者からの離脱の過程にある状態、又は完全に患者から離脱した状態を検知可能とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、生体情報測定手段は、アクセス手段と一体化された固定部に形成されるとともに、当該生体情報測定手段で得られた測定値に基づいて、アクセス手段の患者からの離脱を検知可能とされたので、生体情報の測定及びアクセス手段の患者からの離脱の検知を生体情報測定手段にて正確に行わせることができるとともに、治療前及び治療時(血液浄化治療においては返血も含む)の作業性を向上させることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、生体情報測定手段は、固定部に一つ以上形成され、その一つ以上の生体情報測定手段で得られたそれぞれの測定値に基づいて、アクセス手段の患者からの離脱を検知可能とされたので、アクセス手段の患者からの離脱の過程にある状態或いは完全に離脱した状態など、アクセス手段の状態をより詳細に検知させることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、生体情報測定手段が形成される固定部は、側方に突出形成されてアクセス手段を患者に固定するための固定翼部から成るので、生態情報測定手段をより強固且つ確実に固定部に形成させることができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、生体情報測定手段は、患者の皮膚に密着して取り付けられ、その患者の心電図を測定し得るので、生体情報としての患者の心電図をより精度よく測定しつつアクセス手段の患者からの離脱をより確実に検知することができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、
生体情報測定手段からの測定信号に基づいて心電図を得る心電図取得手段を具備するとともに、当該心電図取得手段により得られる心電図情報に基づいて、アクセス手段の患者からの離脱を検知可能とされたので、心電図取得手段で得られた心電図情報によってアクセス手段の患者からの離脱を容易且つ精度よく検知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る医療用装置は、
図1に示すように、血液浄化装置1と、心電図用測定手段2、3(生体情報測定手段)と、配線(患者側配線4a及び装置側配線4b)と、心電図取得手段12と、挟持手段13と、外部情報処理装置14とを有し、血液浄化装置1と外部情報処理装置14、及び外部情報処理装置14と心電図取得手段12とをそれぞれ電気的に接続して信号を送受信可能とされたものである。なお、血液浄化装置1は、血液回路(6a、6b)、ダイアライザ7、アクセス手段としての穿刺針(動脈側穿刺針a、静脈側穿刺針b)、及び挟持手段13等を有して構成されている。また、血液浄化装置1及び外部情報処理装置14は、本発明の「治療装置」を構成している。
【0020】
本実施形態に係る血液浄化装置1は、患者の血液を体外循環させつつ血液透析処理及び除水を行うための血液透析装置から成り、
図1、2に示すように、患者の血液を体外循環させるための血液回路(6a、6b)と、該血液回路(6a、6b)に接続されて血液透析処理を行うための血液浄化器としてのダイアライザ7と、ダイアライザ7に接続されて透析液を供給する透析液導入ラインL1と、ダイアライザ7に接続されて排液を排出する透析液排出ラインL2とを有して構成されている。
【0021】
血液回路は、本発明に係る「流通路」を構成するもので、血液等の液体を流通させ得る可撓性チューブから成り、動脈側血液回路6a及び静脈側血液回路6bを有して構成されている。動脈側血液回路6aには、その先端に動脈側穿刺針a(
図1、3参照)が接続可能とされているとともに、途中にしごき型の血液ポンプ8及び除泡用のエアトラップチャンバ9aが配設される。一方、静脈側血液回路6bには、その先端に静脈側穿刺針b(
図1、3参照)が接続されているとともに、途中に除泡用のエアトラップチャンバ9bが接続されている。
【0022】
本実施形態に係る動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bは、本発明の「アクセス手段」(患者に穿刺可能な穿刺針)を構成しており、
図3〜5に示すように、硬質樹脂等から成る固定部Mに取り付けられたカニューレ(血管内留置)から成る。この固定部Mは、アクセス手段としての静脈側穿刺針b(動脈側穿刺針aも同様)と一体化されたもので、接手f、鉗子用可撓性チューブg及び接手cが連結して構成されている。また、固定部Mにおける接手fには、側方に突出形成されて静脈側穿刺針b(又は動脈側穿刺針a)を患者に固定するための固定翼部Rが一体的に形成されている。
【0023】
一方、動脈側血液回路6aの先端及び静脈側血液回路6bの先端部には、
図6〜8に示すように、それぞれ硬質樹脂等から成る接手dとロックリングLとを有したルアーコネクタ、及びロックリングLを抜け止めしつつ回転自在に支持する支持部jが形成されており、
図9〜11に示すように、接手dに穿刺針側の接手cを嵌合させた状態で、ロックリングLにて接手cに形成された凸部h(
図3参照)をネジ止めすることにより嵌合状態をロック可能とされている。なお、鉗子用可撓性チューブgを鉗子にて挟持することにより、動脈側穿刺針a又は静脈側穿刺針bと動脈側血液回路6a又は静脈側血液回路6bとの間の流路を遮断し得るようになっている。
【0024】
そして、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを患者に穿刺した状態で、血液ポンプ8を駆動させると、動脈側穿刺針aから採取された患者の血液は、動脈側血液回路6aを通ってダイアライザ7に至り、該ダイアライザ7によって血液浄化が施された後、エアトラップチャンバ9bで除泡がなされつつ静脈側血液回路6bを通り、静脈側穿刺針bを介して患者の体内に戻る。これにより、患者の血液を血液回路(6a、6b)にて体外循環させつつダイアライザ7にて浄化することができる。
【0025】
ダイアライザ7は、その筐体部に、血液導入ポート7a、血液導出ポート7b、透析液導入ポート7c及び透析液導出ポート7dが形成されており、このうち血液導入ポート7aには動脈側血液回路6aの基端が、血液導出ポート7bには静脈側血液回路6bの基端がそれぞれ接続されている。また、透析液導入ポート7c及び透析液導出ポート7dは、血液浄化装置1から延設された透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2とそれぞれ接続されている。
【0026】
ダイアライザ7の筐体部内には、複数の中空糸が収容されており、該中空糸内部が血液の流路とされるとともに、中空糸外周面と筐体部の内周面との間が透析液の流路とされている。中空糸には、その外周面と内周面とを貫通した微少な孔(ポア)が多数形成されて中空糸膜を形成しており、該膜を介して血液中の不純物等が透析液内に透過し得るよう構成されている。
【0027】
血液浄化装置1は、
図1に示すように、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2に跨って形成された複式ポンプ10と、透析液排出ラインL2において複式ポンプ10を迂回するバイパスラインに接続された除水ポンプ11とを有して構成されている。そして、透析液導入ラインL1の一端がダイアライザ7(透析液導入ポート7c)に接続されるとともに、他端が所定濃度の透析液を調製する透析液供給装置(不図示)に接続されている。また、透析液排出ラインL2の一端は、ダイアライザ7(透析液導出ポート7d)に接続されるとともに、他端が排液手段(不図示)と接続されており、透析液供給装置から供給された透析液が透析液導入ラインL1を通ってダイアライザ7に至った後、透析液排出ラインL2を通って排液手段に送られるようになっている。
【0028】
除水ポンプ11は、ダイアライザ7中を流れる患者の血液から水分を除去するためのものである。すなわち、除水ポンプ11を駆動させると、透析液導入ラインL1から導入される透析液量よりも透析液排出ラインL2から排出される液体の容量が多くなり、その多い容量分だけ血液中から水分が除去されるのである。なお、複式ポンプ10及び除水ポンプ11以外の手段(例えば所謂バランシングチャンバ等を利用するもの)にて患者の血液から水分を除去するようにしてもよい。
【0029】
本実施形態に係る血液浄化装置1は、入力手段20と、制御手段21と、表示手段22と、報知手段24とを具備しており、例えば表示手段22により、血液浄化治療に関わる情報をリアルタイムに表示させ得るようになっている。この表示手段22は、
図2に示すように、例えばタッチパネル式の液晶画面に種々情報を表示し得るもので、制御手段21にて表示内容が制御されるよう構成されている。なお、制御手段21は、表示手段22の表示内容の制御の他、血液ポンプ8等のアクチュエータと電気的に接続され、それらアクチュエータを制御し得るようになっている。
【0030】
入力手段20は、制御手段21と接続されるとともに、外部情報処理装置14における出力手段17と電気的に接続されており、当該出力手段17から出力された情報(データ)を入力可能とされている。しかして、入力手段20で入力された情報は、制御手段21に送信され、表示手段22にてグラフや数値等として表示可能とされている。また、本実施形態においては、ブラウザ23によって外部情報処理装置14の表示内容を表示手段22にて閲覧し得るよう構成されている。なお、入力手段20と外部情報処理装置14の出力手段17とは、配線にて接続されるものの他、無線等で接続されていてもよい。
【0031】
報知手段24は、制御手段21と電気的に接続されたもので、血液浄化治療の過程において患者や装置に異常を検知すると、所定の報知(例えば、音声や効果音の出力、警告灯の点灯又は点滅等)を行って周囲の医療従事者に当該異常を把握させるためのものである。さらに、本実施形態に係る報知手段24は、心電図取得手段12により取得された心電図に異常が認められた場合、及びアクセス手段(動脈側穿刺針a又は静脈側穿刺針b)の患者からの離脱が検知された場合、所定の報知を行い得るようになっている。
【0032】
心電図用測定手段2、3は、患者の皮膚に密着して取り付けられ、その患者の心電図(生体情報)を測定し得る生体情報測定手段を構成するもので、心臓を挟んだ位置にそれぞれ密着して取り付けられる一対の電極で構成されるとともに、心電図取得手段12に電気的に接続されている。かかる心電図取得手段12は、心電図用測定手段2、3からの測定信号に基づいて、例えば
図18に示すような心電図(同図においては正常な心電図を示している)をリアルタイムに得るよう構成されている。なお、心電図の波形は、通常、
図21に示すような形状とされており、測定された波形の高さ(P波、R波、T波及びU波高さ)を求めるにあたって基準となる基線βが定められるとともに、正常な心電図においては、
図18に示すように、当該基線βが一定で安定している。
【0033】
ここで、本実施形態の医療用装置に係る心電図用測定手段2(生体情報測定手段)は、
図3〜5に示すように、アクセス手段(本実施形態においては、静脈側穿刺針b)と一体化された固定部M(本実施形態においては、固定部Mを構成する接手fと一体形成された固定翼部R)に一つ以上(本実施形態においては、2つ)形成されており、それぞれの心電図用測定手段2から配線(患者側配線4a及び装置側配線4b)が延設されている。なお、本実施形態に係る心電図用測定手段2は、接手fと一体形成された固定翼部Rに形成されているが、穿刺針と一体化された固定部Mであれば、他の部位(例えば、接手fにおける他の部位、鉗子用可撓性チューブg又は接手c等)に形成するようにしてもよい。
【0034】
患者側配線4aは、
図4に示すように、一方の端部4aaが心電図用測定手段2に接続されるとともに、他方の端部4abが接手cの基端に位置する導線から成り、心電図用測定手段2で得られた測定値(電圧)を信号(電気信号)として装置側配線4bに伝達し得るものである。また、装置側配線4bは、
図7に示すように、一方の端部4baが静脈側血液回路6bの先端部に形成された支持部jに位置するとともに、他の端部4bbが被挟持部5に位置する導線から成り、患者側配線4aと電気的に接続されるととにより、当該患者側配線4aにて伝達された信号(電気信号)を心電図取得手段12及び外部情報処理装置14を介して血液浄化装置1に送信可能とされたものである。
【0035】
すなわち、接手dに穿刺針側の接手cを嵌合しつつロックして静脈側穿刺針b側と静脈側血液回路6bの先端部とを接続すると、
図10に示すように、患者側配線4aの他方の端部4abと装置側配線4bの一方の端部4baとが接触して電気的に接続されるので、これら配線(患者側配線4a及び装置側配線4b)を介して心電図用測定手段2の検知信号(電気信号)を血液浄化装置1側に送信することができるのである。
【0036】
また、装置側配線4bは、
図12に示すように、静脈側血液回路6b(流通路)の先端部における内部に形成されており、本実施形態においては、静脈側血液回路6bの流路を構成する肉厚部内に一体的に形成されている。これにより、静脈側血液回路6b内における血液等の液体の流通が妨げられることなく装置側配線4bによる検知信号(電気信号)の送信を良好に行わせることができる。なお、本実施形態に係る患者側配線4aは、装置側配線4bと同様、鉗子用可撓性チューブg(流通路)の内部(流路を構成する肉厚部内等)に形成されている。
【0037】
さらに、本実施形態に係る血液浄化装置1は、
図1、13、14に示すように、流通路(本実施形態においては、静脈側血液回路6bの先端部)を挟持し得る挟持手段13を具備するとともに、当該挟持手段13が流通路(静脈側血液回路6bの先端部)を挟持した状態で配線(装置側配線4b)の先端4bbと接続されて心電図用測定手段2(生体情報測定手段)の検知信号を血液浄化装置1に送信可能とされている。
【0038】
より具体的には、静脈側血液回路6bの先端部には、
図6〜8及び
図9〜11に示すように、被挟持部5が形成されており、かかる被挟持部5には、側方へ突出した一対の突出部5aが形成されているとともに、当該突出部5aに装置側配線4bの基端4bbが形成されている。しかるに、挟持手段13は、血液浄化装置1に固定されるとともに、静脈側血液回路6bの先端部に形成された被挟持部5を挟持し得るよう構成されており、
図13、14に示すように、静脈側血液回路6bの先端部の外周面に倣った弧状の溝部13aと、突出部5aを嵌合し得る嵌合部13bとを有している。
【0039】
そして、
図15〜17に示すように、溝部13aに沿って静脈側血液回路6bを取り付けつつ嵌合部13bに突出部5aを嵌合させることにより、挟持手段13によって静脈側血液回路6bを挟持させると、装置側配線4bの他方の端部4bbと挟持手段13に形成された導体13cとが導通し、心電図用測定手段2で得られた測定値(電圧)を信号(電気信号)として心電図取得手段12及び外部情報処理装置14を介して血液浄化装置1に送信することができるのである。
【0040】
一方、心電図取得手段12は、外部情報処理装置14の入力手段15に電気的に接続されており、心電図用測定手段2、3によってリアルタイムに得られた患者の心電図を当該入力手段15にて入力可能とされている。かかる外部情報処理装置14は、心電図取得手段12で取得された心電図をリアルタイムに入力して監視し得るもので、
図1に示すように、入力手段15の他、判定手段16と、出力手段17と、保存手段18と、表示手段19とを有して構成されている。
【0041】
判定手段16は、入力手段15と電気的に接続され、当該入力手段16でリアルタイムに入力された心電図が所定条件を満たすか否かを判定し得るもので、本実施形態においては、リアルタイムに入力された心電図が異常(例えば、心電図の波形に基づく不整脈等)であるか否かを判定し得るよう構成されている。さらに、本実施形態に係る判定手段16は、リアルタイムに入力された心電図に基づいて静脈側穿刺針bの患者からの離脱を検知し得るようになっている。
【0042】
すなわち、静脈側穿刺針bが患者から離脱すると、測定されるインピーダンスが変化するので、
図19のαで示すように、リアルタイムに入力された心電図の基線に急峻な変動が生じてしまう。かかる急峻な基線の変動を検知することにより、静脈側穿刺針bの患者から離脱(抜針)したと判定することができるのである。なお、患者の発汗によって基線が変動する場合、
図20に示すように、基線が緩やかに揺れることから、かかる基線の緩やかな変化を検知した場合、静脈側穿刺針bの患者からの離脱ではなく、発汗によるものであると判定される。
【0043】
さらに、静脈側穿刺針b及び固定部Mが静脈側血液回路6bの先端部から離脱すると、患者側配線4aと装置側配線4bとが電気的に離断(患者側配線4aの他方の端部4abと装置側配線4bの一方の端部4baとが物理的に離間)することとなる。したがって、静脈側穿刺針bの穿刺状態が維持されつつ静脈側血液回路6bの先端部が離脱すると、心電図取得手段12によって心電図が得られなくなるので、判定手段16によって静脈側穿刺針bの静脈側血液回路6bの先端部からの離脱を検知することができる。すなわち、心電図用測定手段3又は心電図取得手段12による信号の送信の有無に基づいてアクセス手段(静脈側穿刺針b)の流通路(静脈側血液回路6bの先端部)からの離脱を検知することができるのである。
【0044】
このようにして、心電図用測定手段2、3(生体情報測定手段)で得られた測定値、或いは心電図取得手段12で取得された心電図情報に基づいて、アクセス手段(静脈側穿刺針b)の患者からの離脱を検知可能とされているとともに、穿刺針側の患者側配線4a及び治療装置側の装置側配線4bとが電気的に接続して構成されることにより、アクセス手段(静脈側穿刺針b)の流通路(静脈側血液回路6bの先端部)からの離脱も検知することができるよう構成されているのである。
【0045】
出力手段17は、判定手段16と電気的に接続され、当該判定手段16により所定条件を満たすと判定(本実施形態においては、リアルタイムに入力された心電図が異常、又は静脈側穿刺針bが患者から離脱したと判定)された場合、その判定結果を血液浄化装置1に出力し得るものである。保存手段18は、入力手段15と電気的に接続され、当該入力手段15でリアルタイムに入力された心電図や他の情報等(例えば、血液浄化治療開始時からの波形データや数値、異常発生の記録、過去の治療データ等)を記憶して保存可能なもので、外部情報処理装置14に搭載されたメモリや可搬式の記録媒体等にて構成されている。
【0046】
表示手段19は、入力手段15及び保存手段18と電気的に接続され、当該入力手段15でリアルタイムに入力された心電図、又は保存手段18にて保存された種々情報を表示可能なものであり、例えば液晶画面等から構成されている。また、本実施形態に係る血液浄化装置1は、既述のように、表示手段19による表示内容を要求(例えば要求信号を送信)するとともに、当該要求に応じて当該表示内容を表示手段22に表示させ得るブラウザ23を具備している。
【0047】
本実施形態に係る血液浄化装置1の入力手段20は、外部情報処理装置14の出力手段17と接続されており、心電図取得手段12により出力手段17を介して得られる心電図情報に基づいて、静脈側穿刺針b(アクセス手段)の患者からの離脱を検知可能とされているとともに、静脈側穿刺針b(アクセス手段)の静脈側血液回路6bの先端部からの離脱を検知可能とされている。また、このように静脈側穿刺針b(アクセス手段)の患者又は静脈側血液回路6bの先端からの離脱を検知したことを条件として、報知手段24による所定の報知が行われるようになっている。
【0048】
本実施形態によれば、心電図用測定手段2(生体情報測定手段)は、静脈側穿刺針b(アクセス手段)と一体化された固定部Mに形成されるとともに、当該心電図用測定手段2で得られた測定値に基づいて、静脈側穿刺針bの患者からの離脱を検知可能とされたので、心電図情報(生体情報)の測定及び静脈側穿刺針bの患者からの離脱の検知を心電図用測定手段2にて正確に行わせることができるとともに、治療前及び治療時(本実施形態の如く血液浄化治療においては返血も含む)の作業性を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る心電図用測定手段2は、固定部Mに一つ以上形成され、その一つ以上の心電図測定手段2で得られたそれぞれの測定値に基づいて、静脈側穿刺針bの患者からの離脱を検知可能とされたので、静脈側穿刺針bの患者からの離脱の過程にある状態或いは完全に離脱した状態など、静脈側穿刺針bの状態をより詳細に検知させることができる。なお、単独の心電図用測定手段2を固定部Mに形成するようにしてもよい。
【0050】
さらに、心電図用測定手段2(生体情報測定手段)が形成される固定部Mは、側方に突出形成されて静脈側穿刺針bを患者に固定するための固定翼部Rから成るので、心電図用測定手段2(生態情報測定手段)をより強固且つ確実に固定部Mに形成させることができる。またさらに、本実施形態において、生体情報測定手段は、患者の皮膚に密着して取り付けられ、その患者の心電図を測定し得るので、生体情報としての患者の心電図をより精度よく測定しつつ静脈側穿刺針bの患者からの離脱をより確実に検知することができる。
【0051】
また、心電図用測定手段2、3からの測定信号に基づいて心電図を得る心電図取得手段12を具備するとともに、当該心電図取得手段12により得られる心電図情報に基づいて、静脈側穿刺針bの患者からの離脱を検知可能とされたので、心電図取得手段12で得られた心電図情報によって静脈側穿刺針bの患者からの離脱を容易且つ精度よく検知することができる。
【0052】
加えて、本実施形態によれば、生体情報測定手段としての心電図用測定手段3は、静脈側穿刺針b(アクセス手段)と一体化された固定部Mに形成されるとともに、当該固定部Mから静脈側血液回路6bの先端部(流通路)に配線が延設され、静脈側穿刺針bと静脈側血液回路6bの先端部とが接続された状態で心電図用測定手段3の信号が治療装置(血液浄化装置1及び外部情報処理装置14)に送信可能とされ、且つ、信号の送信の有無に基づいて静脈側穿刺針bの先端部(流通路)からの離脱を検知可能とされたので、心電図用測定手段3からの信号に応じて静脈側穿刺針bの患者からの離脱の検知及び静脈側穿刺針bの静脈側穿刺針bの先端部からの離脱の検知を正確に行わせることができるとともに、治療前及び治療時(本実施形態の如く血液浄化治療においては返血も含む)の作業性を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態に係る配線(患者側配線4a及び装置側配線4b)は、静脈側血液回路6b及び鉗子用可撓性チューブg(流通路)の内部に形成されたので、作業者等が誤って配線と干渉して信号の送信を妨げてしまうのを防止することができ、より精度よく静脈側穿刺針bの静脈側血液回路6bの先端部からの離脱の検知を行わせることができる。さらに、本実施形態に係る治療装置は、静脈側血液回路6b(流通路)を挟持し得る挟持手段13を具備するとともに、当該挟持手段13が静脈側血液回路6bの先端部を挟持した状態で配線(装置側配線4b)の先端部(他方の端部4bb)と接続されて心電図用測定手段2の信号を治療装置に送信可能とされたので、静脈側血液回路6bを挟持手段13に挟持させることによって信号の送信を良好且つ確実に行わせることができる。
【0054】
またさらに、患者の生体情報を測定し得る生体情報測定手段から成るので、生体情報の測定に加え、静脈側穿刺針bの患者及び静脈側血液回路6bの先端部からの離脱の検知を生体情報測定手段による信号によって正確に行わせることができる。また、生体情報測定手段は、患者の皮膚に密着して取り付けられ、その患者の心電図を測定し得るので、生体情報としての患者の心電図をより精度よく測定しつつ静脈側穿刺針bの患者及び静脈側血液回路6bの先端部からの離脱をより確実に検知することができる。
【0055】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば適用される治療装置は、血液浄化装置1の他、患者の血管内に挿通可能なカテーテルから成るアクセス手段を有した輸液装置としてもよい。この場合、流通路は、アクセス手段に接続されて当該アクセス手段を介して薬剤等の液体を患者に注入し得るものとされる。また、生体情報測定手段は、本実施形態の如く電極を用いた心電図用測定手段に限定されず、例えば熱電対や赤外線等を用いた温度センサ、光等を用いた脈波センサ、超音波や光等を用いた血流センサとしてもよい。なお、
図22〜24に示すように、患者側配線4aの一方の端部4aaが固定翼部Rに沿って形成されたものとしてもよく、この場合、当該一方の端部4aaに他の部材や作業者の指等が干渉してしまうのを防止できる。
【0056】
さらに、本実施形態に係る心電図用測定手段2(生体情報測定手段)は、静脈側穿刺針bの固定部Mに取り付けられているが、動脈側穿刺針aの固定部に取り付けられるものとしてもよく、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bの両方の固定部にそれぞれ取り付けられるものとしてもよい。またさらに、本実施形態においては、生体情報測定手段(心電図用測定手段2)からの信号に応じて静脈側穿刺針b(アクセス手段)の患者からの離脱の検知及び静脈側穿刺針bの静脈側血液回路6bの先端部からの離脱の検知の両方を可能としているが、静脈側穿刺針b(アクセス手段)の患者からの離脱の検知のみ可能とするものであってもよい。なお、外部情報処理装置14の機能を血液浄化装置1に持たせてもよく、外部情報処理装置14で発生した異常信号を、中央監視装置を経由して、最終的に血液浄化装置1に入力するようにしてもよい。