(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1〜
図5を参照して第1実施形態の建設機械の吸気構造1について説明する。
【0011】
吸気構造1は、ショベルなどの建設機械に設けられる。
図1に示すように、吸気構造1は、エンジンルーム10と、吸気開口17と、エンジンルーム10内の機器類(21〜30)と、を備える。
【0012】
エンジンルーム10は、エンジン23(下記)などが収容される空間であり、建設機械の上部旋回体の後部に配置される。エンジンルーム10は、エンジン23(下記)などが収容される主室11と、吸気室13と、を備え、壁部15に囲まれた空間である。吸気室13は、主室11の横に(水平方向に並ぶように)配置され、さらに詳しくは、主室11と水平方向に隣り合うように配置される。壁部15は、エンジンガードおよびカウンタウェイトの一部などにより構成される。壁部15には、吸気室13の上壁部(吸気室13の上面を形成する部分)である吸気室上壁部15aがある。
【0013】
吸気開口17は、吸気構造1における吸気室13側の部分(吸気室13側)に形成される開口(孔)である。吸気開口17は、エンジンルーム10の外部と吸気室13の内部とを連通させる。吸気開口17は、吸気室13を構成する壁部15に形成され、さらに詳しくは、吸気室上壁部15aに形成される。例えば、
図2に示すように、上から見たとき、吸気開口17は、四角形であり、台形である。なお、
図1に示すように、主室11の上壁部には、排気開口19が形成される。
【0014】
機器類(21〜30)には、ファン21と、エンジン23と、ラジエタ25と、フィルタ27(室間開口)と、導風部材29と、ダクト30と、がある。
【0015】
ファン21は、主室11内に配置され、冷却風Cを発生させる。ファン21が冷却風Cを吸い込む方向(ファン21の位置での冷却風Cの流れの方向)を、ファン吸込方向Xとする。ファン吸込方向Xは、水平方向である(略水平方向でもよい)。ファン吸込方向Xにおいて、ファン21の位置での冷却風Cの上流側を上流側X1、ファン21の位置での冷却風Cの下流側を下流側X2とする。
【0016】
エンジン23は、ファン21の駆動源である。エンジン23は、建設機械の駆動源であり、エンジン23に取り付けられた油圧ポンプの駆動源である。エンジン23は、主室11内に配置され、ファン21よりもファン吸込方向Xの下流側X2に配置される。
【0017】
ラジエタ25は、冷却風Cにより流体を冷やすための装置である。ラジエタ25に冷やされる流体は、例えばエンジン23の冷却水であり、例えば油圧アクチュエータ(図示なし)を作動させるための作動油などでもよい。ラジエタ25は、主室11内に配置され、ファン21よりも上流側X1に配置される。ラジエタ25には、ラジエタ25の上部を構成する仕切部25aと、ラジエタ25の下部を構成する仕切部25bと、がある。仕切部25aおよび仕切部25bそれぞれは、主室11と吸気室13とを仕切る。なお、仕切部25aおよび仕切部25bと同様の位置で主室11と吸気室13とを仕切る部材が、ラジエタ25とは別に設けられてもよい。
【0018】
フィルタ27は、冷却風Cから塵埃をこし取る。フィルタ27は、主室11と吸気室13とを連通させる開口であり、主室11と吸気室13との境界を形成する。フィルタ27は、ラジエタ25よりも上流側X1に配置される。主室11と吸気室13とが対向する方向(例えばファン吸込方向X)から見たとき、フィルタ27は吸気室13よりも狭く、さらに詳しくは、同方向から見たときにフィルタ27は吸気室13よりも内側のみに配置される。
【0019】
導風部材29は、ファン21が発生させた冷却風Cがフィルタ27およびラジエタ25を適切に通過するように、冷却風Cを導くための部材である。導風部材29は、フィルタ27の外周部と、ラジエタ25のうち冷却風Cが通過可能な部分の外周部と、ファン21の外周部の近傍と、をつなぐように、ファン吸込方向Xに延びる。導風部材29の一部は、吸気室13内と吸気室13外とを仕切る。
【0020】
ダクト30は、吸気開口17に設けられる、筒状部材である。ダクト30の内周面をダクト内周面31、ダクト30の外周面をダクト外周面33とする。ダクト30の基端の開口、さらに詳しくは、ダクト30の上端の開口をダクト上端開口35とする。ダクト30の先端の開口、さらに詳しくは、ダクト30の下端の開口をダクト下端開口37とする。
【0021】
このダクト30は次のように配置される。ファン21からエンジンルーム10の外部に音が直接放射されることを抑制できるように、ファン21からダクト30に伝わった音がダクト30に当たりやすいように、ダクト30が配置される。具体的には、ダクト30は、吸気開口17から吸気室13内に向かって延びる。ダクト30が延びる方向は、ファン吸込方向X(水平方向)と異なる向きであり、ファン吸込方向Xに直交する(「直交」には、略直交も含まれる)。ダクト30は、吸気開口17から下向きに延び、例えば直線的に下向きに延びる。好ましくは、ダクト30は、エンジンルーム10の外部から、吸気開口17およびダクト30を介して、ファン21を直視できないように配置される(このときフィルタ27およびラジエタ25は無いと仮定する)。
なお、特許文献3(同文献の
図2参照)に記載の技術におけるエアクリーナをファンに置き換えたとする。すると、ダクトが延びる方向とファン吸込方向とが同じ方向(水平方向)なので、ダクトからエンジンルームの外部に騒音が直接放射されやすい。
【0022】
このダクト30は、ダクト外周面33の周囲にダクト周囲空間40が形成されるように配置される。ダクト周囲空間40は、吸気室13の一部であり、空気がある部分であり、固体の物がない部分である。ダクト周囲空間40は、ダクト外周面33に隣接する。
図2に示すように、ダクト周囲空間40は、ダクト外周面33の全周を囲まなくてもよい。ダクト周囲空間40は、少なくとも、ダクト外周面33よりもファン吸込方向Xの上流側X1、および、ダクト外周面33よりもファン吸込方向Xの下流側X2に形成される。さらに、
図2に示すように、ダクト周囲空間40は、ダクト外周面33よりも後側(ファン吸込方向Xに直交する方向かつ水平方向のうち一方側、
図2における下側)に形成される。なお、
図2に示す例では、ダクト周囲空間40は、ダクト30よりも前側には形成されない。
【0023】
このダクト30は、
図1に示すように、ダクト30からフィルタ27に冷却風Cが流れやすいように設けられる。具体的には、ダクト30の先端の開口は、ファン吸込方向Xから見たときに、フィルタ27の外端よりも外側に配置される。さらに具体的には、ダクト下端開口37は、フィルタ27の上端よりも上側に配置される。ダクト下端開口37の少なくとも下流側X2部分(例えば下流側X2端部)は、フィルタ27の上端よりも上側に配置される。好ましくは、ダクト下端開口37の全体は、フィルタ27の上端よりも上側に配置される。ダクト30が延びる方向におけるダクト30の長さL(ダクト上端開口35からダクト下端開口37までの上下方向の距離)は、例えば0.2m〜0.3m以下などである。
【0024】
このダクト30内を冷却風Cが流れやすいように、かつ、ダクト周囲空間40に音を伝えやすいように、ダクト30が設けられる。具体的には、
図2に示すように、ダクト30が延びる方向(上下方向)から見たとき、ダクト30の断面積は、吸気開口17の断面積と等しい。さらに詳しくは、上下方向から見たとき、ダクト内周面31の断面積は、ダクト上端開口35からダクト下端開口37にわたって一定である。上下方向から見たとき、ダクト内周面31の断面形状および位置は、吸気開口17の形状および位置と一致する。
【0025】
(冷却風Cの流れ)
図1に示すように、ファン21が作動(回転)すると、冷却風Cが発生する。この冷却風Cは、エンジンルーム10の外部、吸気開口17、ダクト30、吸気室13、フィルタ27、主室11、の順に流れる。主室11に導入された冷却風Cは、ラジエタ25、ファン21、エンジン23よりも上側の配管、排気開口19、エンジンルーム10の外部、の順に流れる。
【0026】
(音の伝搬および消音)
図3に示すファン21が作動すると、ファン21から音が発生する。この音は、ファン21、ラジエタ25、フィルタ27、吸気室13、の順に伝わる。主室11から吸気室13へ進む経路において、フィルタ27の位置で経路の断面積が急拡大し、この位置で音が回折(分散)する。
【0027】
矢印S1および矢印S2のように、吸気室13に伝わった音の一部は、ダクト30および吸気開口17を通り、エンジンルーム10の外部に放射される。
【0028】
矢印S3のように、フィルタ27、吸気室13、ダクト30の周辺部、の順に進む経路において、ダクト30の入口(ダクト下端開口37)で断面積が急縮小するので、ダクト下端開口37およびその周辺で音が反射する。この反射音と、この反射音とは位相が異なる音と、が干渉して打ち消し合い、消音効果が得られる。
なお、特許文献1(同文献の
図1参照)に記載の技術のように、吸気室から吸気開口に近づくにしたがって徐々に断面積が小さくなるダクト構造では、ダクトの入口で音の反射が生じないので、この反射による消音効果が得られない。
【0029】
矢印S4および矢印S5のように、ダクト周囲空間40に侵入した(伝わった)音は、ダクト周囲空間40を囲む壁で反射する。さらに詳しくは、ダクト30よりも上流側X1および下流側X2それぞれのダクト周囲空間40に侵入した音は、壁部15(特に吸気室上壁部15a)、および仕切部25aなどで反射する。この反射音と、この反射音とは位相が異なる音と、が干渉して打ち消し合い、消音効果が得られる。このように、ダクト周囲空間40により、干渉型の消音装置(具体的にはサイドブランチ)が形成されていると言える。
なお、特許文献2(同文献の
図1参照)に記載の技術では、上記矢印S5に示す反射が生じないので、この反射による消音効果が得られない。
【0030】
矢印S6のように、フィルタ27よりも下側かつ下流側X2の吸気室13内の空間に伝わった音は、この空間を囲む壁で反射し、例えば、壁部15、ラジエタ25の仕切部25b、および導風部材29の下面などで反射する。この反射音と、この反射音とは位相が異なる音と、が干渉して打ち消し合い、消音効果が得られる。このように、フィルタ27よりも下側の吸気室13内の空間により、干渉型の消音装置(サイドブランチ)が形成されていると言える。
【0031】
(騒音低減効果の比較)
図4に、様々な吸気構造について、100Hz〜200Hzにおける騒音の低減効果量を示す。
図4に低減効果量を示した吸気構造には、ダクト30の長さLが、0.1m、0.2m、および0.3mの3種類の吸気構造1と、比較例1と、比較例2と、がある。比較例1は、本実施形態の吸気構造1からダクト30を省略したもの(長さLが0mのもの)である。比較例2は、本実施形態の吸気構造1からダクト30を省略するとともに、長さLが0.2mの従来のサイドブランチを吸気開口17の近傍に配置した吸気構造である。
図4に示すグラフでは、比較例1の低減効果量を基準(0dB)とし、他の吸気構造の低減効果量を相対的に示した。このグラフより、本実施形態の吸気構造1によって、低周波音の低減効果が生じることが確認できる。また、長さL=0.2mの吸気構造1と比較例2とを比較すると、比較例2の単なるサイドブランチではほとんど消音効果が得らない長さ(L=0.2m)であっても、吸気構造1のダクト30では消音効果を発揮できることが分かる。この効果は、フィルタ27およびダクト下端開口37での断面積の急拡大および急縮小による効果と、ダクト周囲空間40に形成されるサイドブランチによる効果と、が重ね合わされることにより得られると考えられる。この効果の詳細は次の通りである。
【0032】
図5に、様々な吸気構造について、0Hz〜500Hzにおける騒音の低減効果量を示す。
図5に低減効果量を示した吸気構造には、ダクト30の長さLが0.1m、0.2m、0.3m、0.4m、および0.5mの5種類の吸気構造1と、上記の比較例1(L=0m)と、がある。ここで、
図1に示す例では、ダクト30の長さLは、ダクト周囲空間40に形成されるサイドブランチの長さでもある。ダクト30の長さLが0mの比較例1は、サイドブランチがないものと言うことができる。そのため、
図5に示す比較例1のグラフは、上記の断面積の急拡大および急縮小のみによる低減効果量を示すと言える。この比較例1に比べ、吸気構造1では、特定の(狭い、ピンポイントの)周波数で低減効果量が大きくなり、さらに、低周波数域(約100Hz〜200Hz)のほぼ全域で低減効果量が増える。
【0033】
(効果1)
図1に示す吸気構造1による効果は次の通りである。吸気構造1は、エンジンルーム10と、フィルタ27(室間開口)と、吸気開口17と、ファン21と、ダクト30と、を備える。エンジンルーム10は、主室11と、主室11の横に配置される吸気室13と、を備える。
[構成1−1]フィルタ27は、主室11と吸気室13とを連通させ、主室11と吸気室13とが対向する方向から見たときに吸気室13よりも狭い。
[構成1−2]吸気開口17は、吸気室13側に形成される。
[構成1−3]ファン21は、吸気開口17、吸気室13、フィルタ27、および主室11の順に流れる冷却風Cを発生させ、主室11内に配置される。
[構成1−4]ダクト30は、吸気開口17から吸気室13内に向かって延びる。
[構成1−5]ダクト30は、ファン吸込方向Xと異なる向きに延びるように形成される。
[構成1−6]ダクト30は、ダクト外周面33の周囲にダクト周囲空間40が形成されるように配置される。
【0034】
吸気構造1は、上記[構成1−1]、[構成1−4]、および[構成1−6]を備える。よって、
図3に示すように、ファン21、フィルタ27、吸気室13、およびダクト30の順に進む音の経路において、フィルタ27で経路の断面積が急拡大し、ダクト下端開口37で経路の断面積が急縮小する。その結果、ダクト下端開口37で音が反射する(矢印S3参照)。また、吸気構造1は、上記[構成1−6]を備える。よって、ダクト周囲空間40に侵入した音が、吸気室13を構成する壁で反射する(矢印S4および矢印S5参照)。これらの反射音(矢印S3、矢印S4、矢印S5参照)と、この反射音とは位相が異なる音と、が干渉して打ち消し合うことで、特に低周波音(約100Hz〜200Hz)での消音効果が得られる。よって、吸気開口17からエンジンルーム10の外部へ放射される騒音を抑制できる。また、ダクト30やダクト周囲空間40を設けることなく単に吸気開口17の近傍にサイドブランチを設けたもの(上記の比較例2)に比べ、コンパクトな構成で、上記の低周波音の消音効果を得ることができる。
また、吸気構造1では、吸気開口17は、吸気室13側(吸気構造1における吸気室13側の部分)に形成され(上記[構成1−2])、ダクト30は、吸気開口17から吸気室13内に向かって延びる(上記[構成1−4])。さらに、ダクト30は、ファン吸込方向Xと異なる向きに延びる(上記[構成1−5])。よって、主室11から吸気室13に伝わる音(200Hzを超える高周波音を含む)がダクト30に当たりやすいので、エンジンルーム10の外部に騒音が直接放射されることを抑制できる。よって、吸気開口17からエンジンルーム10の外部へ放射される騒音を抑制できる。
【0035】
なお、騒音を低減するための技術として、アクティブノイズコントロールがあるが、消音効果が得られる周波数が狭い、従来の建設機械に対して機器を追加することによるコストアップやスペースの圧迫、熱害、耐久性、および耐候性など、課題は多い。一方、吸気構造1では、アクティブノイズコントロールを用いる必要がないので、これらの課題を回避できる。
【0036】
(効果2)
[構成2]ダクト30が延びる向きから見たとき、ダクト30の断面積は、吸気開口17の断面積と等しい。
この[構成2]により、次の効果が得られる。吸気開口17の断面積よりもダクト30の断面積の方が広い場合、ダクト周囲空間40に侵入しようとする音がダクト30で遮られやすくなり、ダクト周囲空間40での反射音(矢印S4および矢印S5参照)が減り、干渉による消音効果が減るおそれがある。
図1に示す吸気開口17の断面積よりもダクト30の断面積の方が狭い場合、ダクト30が冷却風Cの通風抵抗となり、冷却風Cの流量が阻害されるおそれがある。一方、上記[構成2]では、ダクト周囲空間40での反射音による消音効果が確実に得られ、かつ、冷却風Cの流量を確保しやすい。
【0037】
(効果3)
[構成3]ダクト30の先端の開口(ダクト下端開口37)は、ファン吸込方向Xから見たときにフィルタ27(室間開口)の外端よりも外側に配置される。
この[構成3]により、ダクト30からフィルタ27に冷却風Cが流れやすいので、冷却風Cの流量を確保しやすい。
【0038】
(効果9)
[構成9]ダクト30は、ファン吸込方向Xに直交する向きに延びるように形成される。
この[構成9]により、主室11から吸気室13に伝わる音がダクト30に、より当たりやすい。よって、エンジンルーム10の外部に騒音が直接放射されることを、より抑制できる。
【0039】
(第2実施形態)
図6を参照して、第2実施形態の吸気構造201について、第1実施形態の吸気構造1(
図1参照)との相違点を説明する。なお、第2実施形態の吸気構造201のうち、第1実施形態との共通点については、第1実施形態と同一の符号を付し、説明を省略した(共通点の説明を省略する点については他の実施形態の説明も同様)。吸気構造201は、第1実施形態では設けられない多孔部材250を備える。
【0040】
多孔部材250は、多数の孔が形成された部材であり、平面状(板状)である。多孔部材250は、例えば金属製であり、例えばパンチングメタルであり、また例えば金網などである。多孔部材250は、ダクト下端開口37を覆い、ダクト下端開口37の全体を覆う(一部を覆ってもよい)。多孔部材250は、整流効果のある部材である。多孔部材250の孔を空気が通過すると、孔の近傍に細かい空気の渦が生じ、音のエネルギーが消散する(微小な減衰が生じる)。多孔部材250は、所定の周波数で騒音を抑制するように設けられる。さらに詳しくは、ダクト30を設けることによって、ある周波数で騒音が悪化する場合がある。例えば、ダクト30の長さLが0.2mの場合500Hz、長さLが0.4mの場合315Hzで騒音が悪化する場合がある。そこで、ダクト30によって悪化した周波数の騒音が改善されるように、多孔部材250の孔の径(寸法)および開口率が設定される。例えば、孔の直径は約5mm以上、開口率は約30%以上などである。
【0041】
(効果4)
図6に示す第2実施形態の吸気構造201による効果は次の通りである。
[構成4]吸気構造201は、ダクト30の先端の開口(ダクト下端開口37)を覆うとともに多数の孔が形成される多孔部材250を備える。
この[構成4]により、多孔部材250を通過する音のエネルギーが消散される。その結果、吸気開口17からエンジンルーム10の外部に放射される騒音を抑制できる。
【0042】
(第3実施形態)
図7を参照して、第3実施形態の吸気構造301について、第2実施形態の吸気構造201(
図6参照)との相違点を説明する。第2実施形態では多孔部材250(
図6参照)は平面状であったが、第3実施形態の多孔部材350は、ダクト30の先端の開口からダクト30よりも外側に突出し、さらに詳しくは、ダクト下端開口37から下側に突出する。多孔部材350は、ダクト下端開口37から下向きに(ダクト30が延びる向きに)突出し、直線的に突出する。多孔部材350の孔の開口面積(合計)は、ダクト下端開口37の開口面積以上である。
【0043】
(効果5)
図7に示す吸気構造301による効果は次の通りである。
[構成5]多孔部材350は、ダクト30の先端の開口(ダクト下端開口37)から、ダクト30よりも外側に突出する。
この[構成5]の多孔部材350の形状により、多孔部材350の孔の開口面積を大きくしやすい。よって、多孔部材350を通る冷却風Cの通風抵抗を小さくしやすいので、冷却風Cの流量を確保しやすい。
【0044】
(第4実施形態)
図8を参照して、第4実施形態の吸気構造401について、第2実施形態の吸気構造201(
図6参照)との相違点を説明する。吸気構造401は、第2実施形態にはない吸音材460を備える。吸音材460は、高周波音を吸音する部材であり、多孔部材250で発生する風切り音を抑制する。吸音材460は、ダクト内周面31に設置され、さらに詳しくは、ダクト内周面31のファン吸込方向Xの上流側X1部分に固定(貼り付け)される。吸音材460は、例えば多孔質体(ウレタン、グラスウールなど)により構成される。
【0045】
(効果6−1)
図8に示す吸気構造401による効果は次の通りである。
[構成6−1]吸気構造401は、ダクト内周面31に設置される吸音材460を備える。
この[構成6−1]により、吸音材460に当たる音を抑制でき、具体的には例えば、多孔部材250で発生する風切り音などを抑制できる。
【0046】
(第5実施形態)
図9を参照して、第5実施形態の吸気構造501について、第4実施形態の吸気構造401(
図8参照)との相違点を説明する。第4実施形態では吸音材460(
図8参照)はダクト内周面31に設置されたが、第5実施形態では吸音材560は多孔部材350の内周面に設置される。吸音材560は、多孔部材350からフィルタ27に流れる冷却風C(
図1参照)の通風抵抗になりにくいように配置され、具体的には、多孔部材350のファン吸込方向Xの上流側X1部分に固定(貼り付け)される。なお、低周波音は吸音材560を通過するので、吸音材560はダクト周囲空間40への音の侵入を阻害しない(またはほとんど阻害しない)。
【0047】
(効果6−2)
図9に示す吸気構造501による効果は次の通りである。
[構成6−2]吸気構造401は、多孔部材350に設置される吸音材460を備える。
この[構成6−2]により、吸音材460に当たる音を抑制でき、具体的には例えば、多孔部材250で発生する風切り音などを抑制できる。
【0048】
(第6実施形態)
図10を参照して、第6実施形態の吸気構造601について、第5実施形態の吸気構造501(
図9参照)との相違点を説明する。第5実施形態では吸音材560(
図9参照)は多孔部材350の内周面に設置されたが、第6実施形態の吸音材660は、多孔部材350の外周面に設置され、内周面には設置されない。
【0049】
(効果7)
図10に示す吸気構造601による効果は次の通りである。
[構成7]吸音材660は、多孔部材350の外周面に設置され、かつ、多孔部材350のうちファン吸込方向Xの上流側X1の部分に設置される。
この[構成7]では、多孔部材350の内部での冷却風C(
図1参照)の流路、および、多孔部材350からフィルタ27への冷却風Cの流路を、吸音材660が遮ることがない。よって、冷却風Cの流量を確保しやすい。また、多孔部材350よりも上流側X1のスペースがデッドスペースになっている場合は、このデッドスペースに吸音材660が配置されるので、デッドスペースを有効活用できる。
【0050】
(第7実施形態)
図11を参照して、第7実施形態の吸気構造701について、第4実施形態の吸気構造401(
図8参照)との相違点を説明する。第7実施形態の吸気構造701は、第4実施形態の多孔質体により構成された吸音材460(
図8参照)に代えて、吸音材760を備える。
【0051】
吸音材760は、多孔板761と空気層763とで構成される。多孔板761は、金属により構成され、多数の孔が形成された板である。多孔板761は、雨水などによる劣化を抑制できるように構成され、例えば塗装された金属により構成され、また例えばアルミニウムなどにより構成される。多孔板761の孔の径および開口率は、多孔部材250での風切音を抑制できるように設定される。例えば、孔の直径は約3mm以下であり、開口率は約3%以下などである。空気層763は、多孔板761とダクト内周面31との間に形成される、空気の層(固体の物が配置されない空間、隙間)である。
【0052】
(効果8)
図11に示す吸気構造801による効果は次の通りである。
[構成8]吸音材760は、ダクト内周面31に設置される。吸音材760は、金属により構成された多孔板761と、多孔板761とダクト内周面31との間に形成される空気層763と、を備える。
この[構成8]により、吸音材760がウレタンなどの多孔質体により構成される場合に比べ、雨水などによる吸音材760の劣化を抑制できる。
【0053】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形できる。例えば、異なる実施形態の構成要素どうしを組み合わせてもよい。例えば、
図8に示す第4実施形態のようにダクト内周面31に吸音材460が設置される吸気構造401に対し、
図10に示す第6実施形態のように多孔部材350に設置される吸音材660を付加してもよい。
上記実施形態の構成要素の形状を適宜変更してもよい。例えば、
図2に示すように、上から見たとき、吸気開口17およびダクト30は台形であった。しかし、上から見た吸気開口17は、長方形などでもよく、四角形以外の多角形でもよく、曲線を有する形状などでもよい。
上記実施形態の構成要素の数を適宜変更してもよい。例えば、吸気開口17およびダクト30は複数設けられてもよい。
上記実施形態の構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、
図1に示すフィルタ27は設けられなくてもよい。この場合、主室11と吸気室13とを連通する室間開口は、ラジエタ25のうち冷却風Cが通過可能な部分である。
【0054】
上記実施形態では、吸気開口17は、吸気室上壁部15aに形成された。しかし、吸気開口17は、例えば、吸気室13の下面を形成する下壁部、吸気室13の側面(例えば建設機械の右側面、左側面、後面、または前面)を形成する側壁部、または、それらの近傍などに形成されてもよい。
上記実施形態では、ダクト30は、吸気開口17から下向きに延びたが、吸気開口17から斜め下向きに延びてもよい。また、ダクト30は、吸気開口17の位置によっては、吸気開口17から横向き、上向き、または、斜め上向きなどに延びてもよい。
図8に、変形例の吸気構造801を示す。この例では、吸気開口17は、吸気室13の下壁部に形成される。ダクト30が延びる向きは、ファン吸込方向Xに対して斜め方向であり、この例では斜め上向きであり、さらに詳しくは、上側ほど上流側X1に配置されるような向きである。
【0055】
上記実施形態では、
図2に示すように、ダクト周囲空間40は、ダクト外周面33の一部に隣接しなかったが、ダクト外周面33の全周に隣接してもよい。
上記実施形態では、ダクト周囲空間40に形成されるサイドブランチの長さと、ダクト30の長さLとが等しかったが、これらは異なってもよい。
上記実施形態では、ダクト30が延びる方向から見たダクト30の断面積および断面形状は、
図1に示すダクト上端開口35からダクト下端開口37にわたって一定だったが、これらは一定でなくてもよい。
図7に示す多孔部材350は、ダクト下端開口37からダクト30が延びる向き(下向き)に突出したが、さらに、ダクト30が延びる向きに直交する方向(ファン吸込方向Xなど)に突出してもよい。