(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6530992
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】表層取水循環装置
(51)【国際特許分類】
C02F 7/00 20060101AFI20190531BHJP
E02B 1/00 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
C02F7/00
E02B1/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-143861(P2015-143861)
(22)【出願日】2015年7月21日
(65)【公開番号】特開2017-23924(P2017-23924A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】591073337
【氏名又は名称】株式会社丸島アクアシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】矢延 孝也
(72)【発明者】
【氏名】山岸 真孝
(72)【発明者】
【氏名】藤村 公人
(72)【発明者】
【氏名】木下 裕史
(72)【発明者】
【氏名】細木 佑索
【審査官】
松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−224360(JP,A)
【文献】
実開平06−057500(JP,U)
【文献】
特開2005−193197(JP,A)
【文献】
特開2007−196108(JP,A)
【文献】
特開2005−334835(JP,A)
【文献】
特開平01−130796(JP,A)
【文献】
実開昭63−136795(JP,U)
【文献】
実開昭57−161498(JP,U)
【文献】
実開昭57−181400(JP,U)
【文献】
特開2001−269692(JP,A)
【文献】
特開平07−016592(JP,A)
【文献】
米国特許第04780217(US,A)
【文献】
米国特許第05755976(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/14− 3/26
C02F 7/00
B01F 9/00− 13/10
E02B 1/00− 3/02
E02B 3/16− 3/28
C02F 1/00
A01K 61/00− 61/65
A01K 61/80− 63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水池の表層水を取り込みながら深層に送り込む表層取水循環装置であって、
水底に係留される装置本体と、この装置本体にエアを供給するエア供給装置と、前記装置本体の下端部が水底近傍の所定位置に配置されるように当該装置本体を係留する係留手段と、を含み、
前記装置本体は、上向きに開口する取水口と、この取水口に繋がり貯水池の水中を上下方向に延びる第1流路と、この第1流路の下端部の位置で当該第1流路に繋がり、当該下端部と前記取水口との間の所定位置まで第1流路に沿って上向きに延びる第2流路と、この第2流路の上端部の位置でエア溜め室を介して当該第2流路に繋がり、当該上端部の位置から第2流路に沿って下向きに延びる第3流路と、この第3流路の下端部に繋がる排水口と、を備え、
前記エア供給装置は、前記第2流路にエアを供給することにより、当該第2流路に上昇流を形成し、
前記装置本体は、内側から順に配置された第1筒部、第2筒部および第3筒部を有し、前記第1筒部の上端部が前記取水口とされ、当該第1筒部の内側が前記第1流路とされ、第1筒部と第2筒部との間が前記第2流路とされ、第2筒部と第3筒部との間が第3流路とされた三重管構造を有し、
前記係留手段により装置本体が係留された状態で、前記第1筒部の上端部が、水面下であってかつ当該水面近傍の所定位置に配置されるように、前記第1筒部の上下方向長さが設定されるとともに、前記第3筒部の上端部が、少なくとも貯水池の水温躍層よりも深層に位置するように、前記第2、第3筒部の上下方向長さが設定されている、ことを特徴とする表層取水循環装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表層取水循環装置において、
第1筒部は、定形性を有する下側の筒部本体と、この筒部本体に繋がる伸縮自在な上側の伸縮部とを含み、
前記装置本体は、前記伸縮部の上端部に連結されたフロートをさらに含む、ことを特徴とする表層取水循環装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の表層取水循環装置において、
前記取水口は、下方から上方に向かって拡がる漏斗状であることを特徴とする表層取水循環装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の表層取水循環装置において、
前記排水口は、前記装置本体の下端部又はその近傍位置の周囲に設けられている、ことを特徴とする表層取水循環装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯水池などにおける深層の嫌気化(貧酸素状態化)および表層における微細藻類の発生、繁殖を抑制する表層取水循環装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表層取水循環装置の一つとして、特許文献1に開示されるようなアオコ除去装置が公知である。この装置は、内筒、中筒及び外筒から構成され、フロートによって鉛直姿勢で貯水池に浮かぶ三管体と、この三管体の中筒にその下端部からエアを送り込むエア供給手段とを備えており、前記エアの供給に伴い、三管体の周囲の水(表層水)を外筒の上端からその内側に吸い込みながら、内筒の下端から流出させるように構成されている。つまり、中筒と内筒との間の空間へのエアの供給により当該中筒内に上昇流が形成され、この上昇流の形成によって外筒内の水が中筒の下端から当該中筒に引き込まれる一方、中筒内を上昇して押し上げられた水が中筒上端から内筒に流入することにより、内筒の内側に下降流が形成される。このように、中筒へのエアレーションによって外筒の上端から内筒の下端に向う水の流れを形成することで、アオコの原因となる微細藻類を含む表層水を三管体の周囲から取り込みながら光の届きにくい深層に送り込み、アオコの発生を抑制する仕組みである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−224360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の表層取水循環装置は、比較的占有スペースの大きい三管体を水面に浮かべる必要があるため、貯水池の池面利用や景観を損なうおそれがある。また、風や波の影響を受け易く、流木などの移動の障害物にもなり易いため、維持管理に手間がかかる。さらに、水面変動に対してしては、作業者が貯水池に潜って内筒の下端部を伸縮させて排水水位の調整を行う必要があるため、この点でも維持管理性が悪いものとなっている。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、貯水池の池面利用や景観を損ない難く、しかも、維持管理性の良い表層取水循環装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、貯水池の表層水を取り込みながら深層に送り込む表層取水循環装置であって、水底に係留される装置本体と、この装置本体にエアを供給するエア供給装置と、
前記装置本体の下端部が水底近傍の所定位置に配置されるように当該装置本体を係留する係留手段と、を含み、前記装置本体は、上向きに開口する取水口と、この取水口に繋がり貯水池の水中を上下方向に延びる第1流路と、この第1流路の下端部の位置で当該第1流路に繋がり、当該下端部と前記取水口との間の所定位置まで第1流路に沿って上向きに延びる第2流路と、この第2流路の上端部の位置でエア溜め室を介して当該第2流路に繋がり、当該上端部の位置から第2流路に沿って下向きに延びる第3流路と、この第3流路の下端部に繋がる排水口と、を備え、前記エア供給装置は、前記第2流路にエアを供給することにより、当該第2流路に上昇流を形成
し、
前記装置本体は、内側から順に配置された第1筒部、第2筒部および第3筒部を有し、前記第1筒部の上端部が前記取水口とされ、当該第1筒部の内側が前記第1流路とされ、第1筒部と第2筒部との間が前記第2流路とされ、第2筒部と第3筒部との間が第3流路とされた三重管構造を有し、前記係留手段により装置本体が係留された状態で、前記第1筒部の上端部が、水面下であってかつ当該水面近傍の所定位置に配置されるように、前記第1筒部の上下方向長さが設定されるとともに、前記第3筒部の上端部が、少なくとも貯水池の水温躍層よりも深層に位置するように、前記第2、第3筒部の上下方向長さが設定されているものである。
【0007】
この表層取水循環装置によれば、第2流路へのエアの供給(エアレーション)によって当該第2流路に上昇流が形成されと、順次第1、第2、第3流路に沿って移動する水流が形成され、これにより貯水池の表層水が取水口から取り込まれながら排水口から深層に排水されることとなる。そのため、貯水池の表層と深層との間で効果的に水を循環させて、深層の嫌気化(貧酸素状態化)やアオコの発生を抑制することができる。しかも、この表層取水循環装置によれば、装置本体を水底に係留して使用するので、水面に現れるものが殆どない。そのため、貯水池の池面利用や景観を著しく損なうことがない。また、風や波の影響を受け易く、流木などの移動の障害にもなり難いので、装置本体が流されたり、装置本体の周囲に流木が留まるといったことも抑制される。従って、貯水池の池面利用や景観を損ない難く、維持管理性も向上することとなる。
【0009】
また、装置本体が第1〜第3筒部からなる三重管構造を有するもので、構造的なバランスが良いことに加え、水の流れのバランスも良くなるので、装置本体を水中に直立姿勢で安定的に係留することが可能となる。
また、装置本体が水面に露出することがないため、貯水池の池面利用や景観を著しく損なうことが軽減される。しかも、装置本体のうち、特にボリュームのある部分が水温躍層よりも深い深層に位置するので、装置本体が、風や波の影響を受けることが殆どない。そのため、装置本体をより安定的に貯水池に係留することが可能となる。
【0010】
この場合、第1筒部は、定形性を有した下側の筒部本体と、この筒部本体に繋がる伸縮自在な上側の伸縮部とを含み、前記装置本体は、前記伸縮部の上端部に連結されたフロートをさらに含むものであるのが好適である。
【0011】
この構成によれば、取水口を水面の変動に追従させることができる。そのため、水面の変動に応じて取水口の位置を調整する必要がなく、これにより維持管理性が向上する。
【0012】
また、上記の表層取水循環装置において、前記取水口は、下方から上方に向かって拡がる漏斗状であるのが好適である。
【0013】
この構成によれば、貯水池の表層水を効率良く取水口から取り込みながら深層に送り込むことが可能となる。
【0014】
また、上記の表層取水循環装置において、前記排水口は、前記装置本体の下端部又はその近傍位置の周囲に設けられているのが好適である。
【0015】
この構成によれば、深層の嫌気化(貧酸素状態化)を効果的に抑制することが可能となる。また、アオコの原因となる微細藻類を含む表層水をより光の届きにくい深層に送り込むことで、アオコの発生を効果的に抑制することが可能御となる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、貯水池の池面利用や景観を損ない難く、しかも、維持管理性の良い表層取水循環装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明にかかる表層取水循環装置の断面図である。
【
図2】水位が下がったときの表層取水循環装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の一形態について詳述する。
【0023】
図1は、本発明にかかる表層取水循環装置を示しており、より詳しくは、ダム湖(貯水池の一つ)に設置された状態の表層取水循環装置を断面図で示している。
【0024】
同図に示すように、表層取水循環装置1は、湖面(水面)下に設置される水没式装置であり、湖底(水底)に係留される装置本体2と、エアレーション装置4(本発明のエア供給装置に相当する)とを備える。
【0025】
装置本体2は、概略的には全体が円柱状を有しており、その下端部に連結されたチェーン7により、湖底に設置されたシンカー6に係留されている。詳しくは、装置本体2に備えられた後記フロート28、32の浮力により、上記チェーン7の連結長さだけ引っ張り上げられることで、水中に起立姿勢、つまり垂直に自立した状態で係留されている。なお、当実施形態では、シンカー6及びチェーン7が本発明の係留手段に相当する。
【0026】
装置本体2は、上下方向に延びる第1円筒部10と、その外側(径方向外側)に配置されて上下方向に延びる第2円筒部12と、さらに第2円筒部12の外側に配置されて上下方向に延びる第3円筒部14とを備えた三重管構造を有している。装置本体2の隣接する筒部同士は、図外のスペーサを介して互いに固定されており、これにより、隣接する筒部の間が一定間隔に保たれている。
【0027】
第1円筒部10は、定型性を有する下側の筒部本体10aと、この筒部本体10aに繋がる上側の伸縮部10bとから構成されており、伸縮部10bは、例えば蛇腹状に形成されることが伸縮自在に構造されている。伸縮部10bの上端部は、当該表層取水循環装置1の取水口11であり、下方から上方に向かって拡がる漏斗状に形成されている。伸縮部10bは、水の浮力に抗して自重で収縮可能に構成されており、その上端部(取水口11)には、ロープ16を介してフロート18が連結されている。これにより、水位の変動に追従して、所定の水深位置に取水口11が配置されるようになっている。
【0028】
第2円筒部12は、第1円筒部10のうち、筒部本体10aに対応する位置に設けられている。第2円筒部12の下端部は、第1円筒部10の下端部よりも下方に位置しており、底蓋20によって塞がれている。一方、第3円筒部14の上端部は、第2円筒部12の上端部よりも上方に位置しており、上蓋22によって塞がれている。なお、第2円筒部12の上端部と上蓋22とは比較的大きく離れており、これにより、第2円筒部12の上方にエア溜め室15が形成されている。
【0029】
このような構成により、装置本体2には、取水口11に繋がり、当該装置本体2の中心位置で上下方向に延びる第1流路Ipと、この第1流路Ipの下端部の位置で当該第1流路Ipに繋がり、当該下端部と取水口11との間の所定位置まで第1流路Ipに沿って上向きに延びる第2流路Mpと、この第2流路Mpの上端部の位置でエア溜め室15を介して当該第2流路Mpに繋がり、当該上端部の位置から第2流路Mpに沿って下向きに延びる第3流路Opとが形成されている。
【0030】
第3円筒部14の下端部は、第1円筒部10の下端部とほぼ同じ位置に設けられている。第3円筒部14の下端部の周囲には、円環状の鍔部材24が接合されており、これにより、装置本体2の下端部の周囲に、当該鍔部材24と前記底蓋20とにより形成される全方位型の排水口25、すなわち、水平かつ放射状に排水可能な排水口25が設けられている。なお、排水口25の位置は、装置本体2の下端部の近傍位置であれば、それより上方位置であってもよい。
【0031】
装置本体2のうち、第3円筒部14の上端部分であってその外周面には、複数段の大型のフロート28が固定されている。また、第1円筒部10のうち、伸縮部10bを除く第3円筒部14の上端よりも上方の領域であって、かつその周囲の複数の位置には、当該第1円筒部10に沿ってロープ30が張設されており、これらロープ30に沿って小型のフロート32(フロート28よりも小さいフロート)が所定間隔で固定されている。
【0032】
装置本体2の具体的な寸法は、設置される水深により異なるが、当例では、
図1に示すように装置本体2が係留された状態において、第1円筒部10(装置本体2)の下端部が湖底に近接し、かつ第1円筒部10の上端部、つまり取水口11が、上述の通り、湖面近傍の所定の水深位置(例えば水深50cm程度の位置)に配置され得るように第1円筒部10の上下方向長さが設定されている。そして、第2円筒部12および第3円筒部14が、ダム湖の水温躍層よりも深層に位置するように、当該円筒部12、14の上下方向長さが設定されている。
【0033】
エアレーション装置4は、装置本体2の内部にエアを供給するものである。このエアレーション装置4は、概略的には、前記底蓋20に固定されたノズル34と、ダム湖の湖岸に設置された図外のコンプレッサと、開閉バルブ等を介して当該コンプレッサと前記ノズル34とを繋ぐ給気ホース36とを含み、第2円筒部12の下端部からその内側、すなわち、第2流路Mpにエアaを供給するものである。
【0034】
なお、装置本体2は、前記エア溜め室15に溜まる余剰エアを排出するためのエア抜き装置5を備えている。
【0035】
エア抜き装置5は、エア溜め室15の天井を形成する前記上蓋22に固定された自動排気バルブ40と、この自動排気バルブ40に連結された排気ホース42と、排気ホース42の排気口を保持するフロート44とを備えている。自動排気バルブ40は、エア溜め室15に溜まったエアの圧力が一定値以上になると開弁して、排気ホース42を介して余剰エアを排気するものであり、これにより、溜め室15内が予め定められた所定の圧力値に保たれるようになっている。
【0036】
上記の表層取水循環装置1は、
図1に示したように、ダム湖の湖底に係留された状態で使用される。そして、上記ホース36及びノズル34を通じて装置本体2にエアaが供給されることにより、詳しくは、第1円筒部10と第2円筒部12との間の第2流路Mpにエアaが供給されることにより作動する。すなわち、第2流路Mpにエアaが供給されると、当該エアaの上昇に伴い第2流路Mp内に上昇流が形成され、この上昇流の形成によって第1流路IPの水が第1円筒部10の下端部から第2流路Mpに引き込まれる。また、第2流路Mpを上昇して押し上げられた水が、第2円筒部12の上端部からエア溜め室15を介して外側の第3流路Opに流入し、これにより第3流路Opに下降流が形成される。この際、エア抜き装置5によってエア溜め室15内の圧力が一定の圧力値に保たれることにより、下降流の形成が安定的に行われる。
【0037】
このように、第2流路Mpへのエアレーションによって、第1流路IPの上端部から第2流路Mpを通じて第3流路Opの下端部に向う水の流れが形成されることで、アオコの原因となる微細藻類を含む、ダム湖の表層水が取水口11から取り込まれながら、排水口25から、光の届きにくい深層に排水される。その結果、ダム湖におけるアオコの発生が効果的に抑制されることとなる。また、酸素を比較的多く含んだ表層水が深層に案内されながら、さらにその過程で、エアレーションにより多くのエアaが当該表層水に溶け込むことで、ダム湖の深層に効果的に酸素が供給されることとなる。そして、このようなサイクルが繰り返されることで、ダム湖の表層と深層との間で効果的に水の循環が行われ、深層の嫌気化(貧酸素状態化)やアオコの発生が長期的に抑制されることとなる。
【0038】
以上のような表層取水循環装置1によれば、ダム湖の深層の嫌気化やアオコの発生を抑制できることに加え次のような利点がある。すなわち、この表層取水循環装置1は、装置本体2を湖底に係留して使用する水没式の装置であり、フロート18、44を除けば、湖面に現れるものが無い。そのため、ダム湖の湖面利用や景観を著しく損なうことがないという利点がある。また、風や波の影響を受け易く、流木などの移動の障害にもなり難いので、装置本体2が流されたり、装置本体2の周囲に流木が留まるといったことが抑制される。特に、装置本体2は、三重管の部分、すなわち第3円筒部14に対応する比較的占有スペースが大きい部分がダム湖の水温躍層よりも深層に位置するように構成されているので、風や波の影響を受けることが殆どない。そのため、三管体(三重管構造の部分)が湖面に浮いている従来の表層取水循環装置(特許文献1)に比べると、係留状態の維持管理に要する手間を軽減することができる。
【0039】
また、装置本体2は、湖底に係留されるものであるため湖面の水位変動によって排水口25の位置を変える必要が無い。また、取水口11については、上記の通り、湖面の水位変動に追従するように構成されている。従って、湖面の水位変動に応じて取水口11や排水口25の位置を調整する必要がなく、この点でも維持管理性が良いという利点がある。
【0040】
また、装置本体2は、その取水口11が上向きに広がる漏斗状であるため、第1円筒部10(伸縮部10b)を細径化しながら、ダム湖の表層水を効率良く取り込むことができるという利点もある。
【0041】
なお、以上説明した表層取水循環装置1は、本発明にかかる表層取水循環装置の好ましい実施の形態であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0042】
例えば、上記実施形態では、装置本体2は、第円筒部10、第2円筒部12および第3円筒部14からなる三重管構造であるが、必ずしも三重管構造である必要はなく、要は、上向きに開口する取水口と、この取水口に繋がり貯水池の水中を上下方向に延びる第1流路と、この第1流路の下端部の位置で当該第1流路に繋がり、当該下端部と前記取水口との間の所定位置まで第1流路に沿って上向きに延びる第2流路と、この第2流路の上端部の位置でエア溜め室を介して当該第2流路に繋がり、当該上端部の位置から第2流路に沿って下向きに延びる第3流路と、この第3流路の下端部に繋がる排水口とを備えていればよい。これにより、上述した作用効果を享受することが可能となる。
【0043】
また、上記実施形態では、装置本体2が3つの円筒部10、12、14によって構成されているが、勿論、多角筒部によって構成されていてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、第1円筒部10は、筒部本体10aと伸縮部10bとを備えた構成であるが、伸縮部10bを省略した構造を採用してもよい。
【0045】
なお、上記実施形態では、表層取水循環装置1をダム湖に設置した場合について説明したが、当該表層取水循環装置1は、ダム湖以外の貯水池にも勿論、設置可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 表層取水循環装置
2 装置本体
4 エアレーション装置(エア供給装置)
10 第1円筒部(第1筒部)
10a 筒部本体
10b 伸縮部
11 取水口
12 第2円筒部(第2筒部)
14 第3円筒部(第3筒部)
25 排水口
Ip 第1流路
Mp 第2流路
Op 第3流路