特許第6531006号(P6531006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6531006
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】消火栓装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/20 20060101AFI20190531BHJP
【FI】
   A62C35/20
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-154168(P2015-154168)
(22)【出願日】2015年8月4日
(65)【公開番号】特開2017-29518(P2017-29518A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】米山 顕司
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−051964(JP,U)
【文献】 特開2016−214559(JP,A)
【文献】 特開2014−217646(JP,A)
【文献】 特開2011−147704(JP,A)
【文献】 特開2003−190315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 35/20
A62C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内巻きされたホースを収納するホース収納部及び該ホース収納部に収納されたホースを引き出すための中央開口部を備えた箱状の本体と、該本体の前面に設けられると共に前記中央開口部の前方に開口部を有する前面パネルと、該前面パネルの開口部に設けられて下辺を回動軸として閉鎖状態から略180°開くことができる前傾式の消火栓扉と、該消火栓扉の背面側に設けられて消火ノズルを着脱可能に固定するノズル固定部を備えた消火栓装置であって、トンネル内の監査路上で車道寄りに設置されるものにおいて、
前記本体における背面側に設けられて、少なくとも前記消火栓扉の背面側に固定された前記消火ノズルが取り出せる大きさの背面側開口部と、該背面側開口部を開閉可能に覆う背面扉とを設けたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】
前記ホースに消火水を供給する消火水供給管路に設けられた消火栓弁と、前記消火栓弁を開閉操作する消火栓弁操作部とを備え、前記消火栓弁操作部は前記背面扉を開放することで、背面側からも操作可能であることを特徴とする請求項1に記載の消火栓装置。
【請求項3】
前記本体における背面側に設けられて、少なくとも消火器が取り出せる大きさの背面消火器扉を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の消火栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル等に設置される前傾式扉を備えた消火栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル内に消火栓装置を設置する場合、例えば特許文献1の図3に示されているように、監査路上の壁に箱抜き加工を行い、前記壁に埋め込むように設置されるのが一般的である。
また、特許文献1の消火栓装置においては、前面パネルに前方に向かって略180°回動して開放する消火栓扉を設け、この消火栓扉の背面側に消火用ノズルを着脱可能に固定している。
消火作業の際には、消火栓扉を開放して、消火用ノズルを取り外し、ホースを引き出して消火活動をする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−217646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
竣工当時には消火栓装置の設置対象外であったトンネルに、後から消火栓装置を設置する場合があり、この場合には消火栓装置を壁に埋め込むことができず、監査路上の車道寄りの位置に消火栓を設置する場合がある。
【0005】
監査路上の車道寄りに消火栓装置を設置する場合、消火栓装置の前面が車道に面することになり、消火栓装置のすぐ前で事故等による火災が発生した場合や、消火栓装置のすぐ前に停車車両があった場合には、消火栓扉を開放することができず、火災に最も近い消火栓装置を操作できないという事態が生じ得る。
監査路上の車道寄りに消火栓装置を設置する場合、消火栓装置の背面側の監査路を人が通行できるので、上記のような事態を回避するには、消火栓装置の背面側から消火ノズルを取り出したいという要請がある。
しかしながら、このような要請に応える消火栓装置は、発明者が知る限り存在しておらず、かかる消火栓装置の開発が望まれていた。
【0006】
本発明はかかる課題を解決するものであり、消火栓装置の前面側に加えて背面側からでも消火ノズルを取り出すことができ、監査路上の車道寄りに設置された場合においても、迅速な消火活動が可能な消火栓装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る消火栓装置は、内巻きされたホースを収納するホース収納部及び該ホース収納部に収納されたホースを引き出すための中央開口部を備えた箱状の本体と、該本体の前面に設けられると共に前記中央開口部の前方に開口部を有する前面パネルと、該前面パネルの開口部に開閉可能に設けられた消火栓扉と、該消火栓扉の背面側又は前記本体内に設けられて消火ノズルを着脱可能に固定するノズル固定部を備えた消火栓装置において、
前記本体における背面側に設けられて、少なくとも前記消火栓扉の背面側又は前記本体内に固定された前記消火ノズルが取り出せる大きさの背面側開口部と、該背面側開口部を開閉可能に覆う背面扉とを設けたことを特徴とするものである。
【0008】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記ホースに消火水を供給する消火水供給管路に設けられた消火栓弁と、前記消火栓弁を開閉操作する消火栓弁操作部とを備え、前記消火栓弁操作部は前記背面扉を開放することで、背面側からも操作可能であることを特徴とするものである。
【0009】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記本体における背面側に設けられて、少なくとも前記消火器が取り出せる大きさの背面消火器扉を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、消火栓装置の前面側に設けた消火栓扉に加えて背面側に消火ノズルを取り出すことができる背面側開口部と、該背面側開口部を開閉可能に覆うように設けられた背面扉を設けたことにより、消火栓装置を監査路の車道寄りの位置に設置した場合において、消火栓装置の前面で火災が発生する等して消火栓装置の前面側から消火栓扉を開けることができない状況でも、背面扉を開放して消火ノズルを取り出して消火活動ができる。そのため、火災現場に最も近い位置にある消火栓装置を迅速に活用することができ、火災の拡大を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態に係る消火栓装置の正面図である。
図2図1に示した消火栓装置の前傾式扉を開けた状態を示す図である。
図3図1に示した消火栓装置の平面図である。
図4図1に示した消火栓装置の背面図である。
図5図1に示した消火栓装置の背面扉を開けた状態を示す図である。
図6図1に示した消火栓装置の設置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施の形態に係る消火栓装置1は、図1図5に示すように、箱状の本体3と、本体3の前面に設けられた開口部5aを有する前面パネル5と、前面パネル5の開口部5aに開閉可能に設けられた消火栓扉に相当する前傾式扉7と、本体3における背面側に設けられた背面側開口部9と、背面側開口部9を開閉可能に覆う背面扉11と、本体3における背面側に設けられて消火器10(図3参照)を背面側から取り出し可能にする背面消火器扉12を備えている。なお、ここで消火栓装置1は、図6における車道33側を前面、トンネル35の壁面側を背面としている。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0013】
<本体>
本体3は、図1図3に示すように、矩形の箱状からなる筺体を有し、筺体内には内巻きに巻き回されたホース13を収納するホース収納部15及びホース収納部15に収納されたホース13を引き出すための中央開口部17が設けられている。また、筐体内には、ホース収納部15の右側に、消火栓弁や自動調圧弁を有する配管系統19が設けられている。配管系統19は、先端側がホース13の基端側と接続されるとともに、基端側が図示しない給水源に接続されている。
【0014】
《ホース収納部》
ホース収納部15は、本体3の内壁上面から内壁下面に至る2本の棒状体21と、棒状体21から本体3の内壁背面に至る略L字状に屈曲した2枚の帯板23とを備えて構成されている。
そして、2本の棒状体21の間に中央開口部17が形成され、ここからホース13が引き出される。
【0015】
また、図1図3に示すように、本体3の図中左側には、消火器10を収納するための消火器収納部16が設けられている。
【0016】
<前面パネル>
前面パネル5は、本体3の前面に設けられ、中央開口部17の前方に位置する部位が開口しており、この開口部5aを開閉可能に前傾式扉7が取り付けられ、また前面パネル5の左側には消火器扉8が開閉可能に設けられている。
【0017】
<前傾式扉>
前傾式扉7は板状の金属板から構成された横長の矩形状をしており、上述のように前面パネル5の開口部5aを開閉可能に取り付けられている。
前傾式扉7は、下辺両端に回動軸(蝶番30)が設けられ、開口部5aを閉鎖状態から、図2に示すように、略180°開くことができる。
前傾式扉7の背面側には、消火ノズル25を着脱可能に固定するノズル固定部27及び、ホース13に消火水を供給する消火水供給管路に設けられた消火栓弁(図示なし)を開閉操作する操作レバー29(消火栓弁操作部)が設けられている。
なお、前傾式扉7におけるノズル固定部27に対応する箇所は透明なアクリル板が設置されており、前傾式扉7の背面側に着脱可能に固定されている消火ノズル25が見える。
【0018】
《ノズル固定部》
ノズル固定部27は、ホース13の収納時において、ホース13の先端に設けられた消火ノズル25を固定するものであり、例えば、ノズルキャッチャーと言われるC型の係止片27aによって構成されている。そして、図2に示すように、消火ノズル25を、その軸芯方向が前傾式扉7の幅方向と略平行となるように固定している。
【0019】
<背面側開口部>
背面側開口部9は、本体3における背面側に設けられて、少なくとも前傾式扉7に固定された消火ノズル25が背面側から取り出せる大きさに設定されている(図4図5参照)。また、本実施の形態では、前面側開口部と同じ大きさに設定されており、背面側から操作者が手を本体3内に挿入して操作レバー29を操作できるようにしている。もっとも、後述するように、操作レバー29の操作を遠隔操作できるようにして、例えば消火ノズル25に設けた操作ボタンで操作できるようにすれば、背面側開口部9は消火ノズル25が取り出せる大きさであればよい。
【0020】
<背面扉>
背面扉11は、背面側開口部9を覆うものであり、矩形状の下辺側に回転軸(蝶番31)によって本体3に開閉可能に取り付けられている。
【0021】
<背面消火器扉>
背面消火器扉12は、本体3における背面側に設けられて消火器10を背面側から取り出し可能にするための扉である。この背面消火器扉12は、開扉することで消火器10が取り出せる大きさの開口が設けられるようにすればよく、必ずしも前面側の消火器扉8と同じ大きさである必要はない。
【0022】
以上のように構成された本実施の形態の消火栓装置1は、竣工後にトンネル35内に設置される場合、図6に示すように、監査路37の車道33寄りの位置に設置される。なお、図6において、給水配管等は監査路37内または、監査路37上から消火栓装置1に配管されるが、これについては図示を省略している。
【0023】
図6に示すように設置された消火栓装置1の近傍の車道33側で火災が発生した場合、消火栓装置1に正面において作業が可能な状態の場合には、操作者は、車道33側から前傾式扉7を前面側(車道33側)に倒して開扉し、前傾式扉7が図2の略180°回転した状態にする。
【0024】
そして、操作者は、操作レバー29を操作して消火栓弁を開放することでホース13に消火水を供給するとともに、消火ノズル25をノズル固定部27から外して、ホース13を火災のある方向に引き出して消火活動を行う。
【0025】
また、消火栓装置1の真正面で火災が発生した場合、操作者は、消火栓装置1の前面側に行くことができないので、監査路37上から消火栓装置1の背面側に行き、背面扉11を開扉する。このとき、図5に示すように、消火ノズル25は背面側開口の内側に確認することができる。操作者は、背面側から本体3内に手を入れて、操作レバー29を操作して消火栓弁を開放することでホース13に消火水を供給するとともに、消火ノズル25をノズル固定部27から外して、ホース13を火災のある方向に引き出して消火活動を行う。
また、消火器10が必要な場合には、消火栓装置1の背面側から背面消火器扉12を開放して消火器10を取り出して消火活動をすることもできる。
【0026】
以上のように、本実施の形態の消火栓装置1によれば、消火栓装置1を監査路37の車道33寄りの位置に設置した場合において、消火栓装置1の正面で火災が発生等して消火栓装置1の正面側から前傾式扉7を開けることができない状況でも、背面扉11を開放して消火ノズル25を取り出し、あるいは背面消火器扉12を開放して消火器10を取り出して消火活動ができる。そのため、火災現場に最も近い位置にある消火栓装置1を迅速に活用することができ、火災の拡大を防止できる。
【0027】
なお、上記の説明では、背面扉11を開けて本体3内に操作者が手を入れて操作レバー29を操作する例を示したが、例えば消火ノズル25に操作ボタンを消火栓弁操作部として取り付け、消火栓弁を電動弁とし、無線により電動弁を遠隔操作で開閉できるようにしておけば、消火ノズル25を取り出すだけでよく、より迅速な消火活動ができる。
【0028】
また、上記の説明では、前面側の消火栓扉として前傾式扉7、背面側の扉として下辺側の蝶番31を回転軸として開閉する背面扉11を例に挙げて説明したが、いずれも上下又は左右方向にスライドするスライド扉、上辺側を軸として回動する跳ね上げ式の扉など、その他の開閉方法による扉であってもよい。
【0029】
また、ノズル固定部27(消火ノズル25)と消火栓弁操作部(操作レバー29)とを前傾式扉7の背面側に配置する例を示したが、前傾式扉7などの消火栓扉、及び背面扉11を開けて操作者が消火ノズル25を取り出せ、消火栓弁操作部を操作できればよく、前傾式扉7などの消火栓扉の背面側以外に配置してもよい。
例えば、前面側の開口部5aおよび背面側開口部9から操作可能なように、本体3の内部における背面扉11の前面側に配置してもよいし、ホース収納部15の中央開口部17内に配置してもよい。また、上述したとおり、消火ノズル25に操作ボタンを設け、無線操作にて消火栓弁を開閉できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 消火栓装置
3 本体
5 前面パネル
5a 開口部
7 前傾式扉
8 消火器扉
9 背面側開口部
10 消火器
11 背面扉
12 背面消火器扉
13 ホース
15 ホース収納部
16 消火器収納部
17 中央開口部
19 配管系統
21 棒状体
23 帯板
25 消火ノズル
27 ノズル固定部
27a 係止片
29 操作レバー
30 蝶番
31 蝶番
33 車道
35 トンネル
37 監査路
図1
図2
図3
図4
図5
図6