特許第6531210号(P6531210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6531210
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】人工股関節手術器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/74 20060101AFI20190531BHJP
   A61B 17/88 20060101ALI20190531BHJP
   A61F 2/36 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
   A61B17/74
   A61B17/88
   A61F2/36
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-190758(P2018-190758)
(22)【出願日】2018年10月9日
【審査請求日】2018年10月24日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年8月20日日本大学病院において実施された性能評価試験、平成30年9月6日春日部市立医療センターにおいて実施された性能評価試験
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518356969
【氏名又は名称】鈴木 貴士
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴士
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0262912(US,A1)
【文献】 米国特許第08221432(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/74
A61B 17/88
A61F 2/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の大腿骨に設置されるステムトライアルに対して着脱可能な人工股関節手術器具であって、
前記人工股関節手術器具に対して着脱可能なヘッドトライアルと接する先端部と、
前記ステムトライアルと接する底部と、
前記先端部又は前記底部と一体となり、術者の操作に応じて移動することによって、前記人工股関節手術器具の長さを可変とし、第1の側面に歯型があり、第2の側面に複数の溝がある可動部と、
前記歯型とかみ合う歯車と、
前記複数の溝の何れかに係合し、進行方向の逆方向に前記可動部が移動することを抑制する爪部と、
を含み、
前記歯車は、前記歯車を回転させる回転操作を受け付ける受付部を含み、
前記可動部は、前記術者の前記回転操作によって回転する前記歯車から力を受けて移動し、
前記複数の溝の各々は、前記進行方向側の傾斜が前記逆方向側の傾斜よりも急であり、かつ、前記進行方向側の傾斜が90°よりも小さい、
ことを特徴とする人工股関節手術器具。
【請求項2】
前記受付部は、
前記人工股関節手術器具の正面側に配置され、当該正面側からの前記回転操作を受け付ける第1受付部と、
前記人工股関節手術器具の背面側に配置され、当該背面側からの前記回転操作を受け付ける第2受付部と、
含み、
前記可動部は、前記第1受付部又は前記第2受付部により受け付けられた前記回転操作に応じて移動する、
ことを特徴とする請求項に記載の人工股関節手術器具。
【請求項3】
前記人工股関節手術器具は、前記歯車を格納する筐体部を更に含み、
前記筐体部のうち、前記歯車が格納された格納部分は、凸状に形成されており、
前記筐体部の前記格納部分の角は、丸みを帯びている、
ことを特徴とする請求項又はの何れかに記載の人工股関節手術器具。
【請求項4】
患者の大腿骨に設置されるステムトライアルに対して着脱可能な人工股関節手術器具であって、
前記人工股関節手術器具に対して着脱可能なヘッドトライアルと接する先端部と、
前記ステムトライアルと接する底部と、
前記先端部又は前記底部と一体となり、術者の操作に応じて移動することによって、前記人工股関節手術器具の長さを可変とし、正面に目印がある可動部と、
前記可動部を格納する筐体部と、
含み、
前記筐体部は、前記目印の位置によって前記人工股関節手術器具の現在の長さを案内するための穴が正面にあけられている、
ことを特徴とする人工股関節手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工股関節置換術や人工骨頭置換術において用いられる人工股関節手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工股関節置換術や人工骨頭置換術において用いられる手術支援器具が知られている。人工股関節置換術は、主に変形性股関節症等の病気に対して行われ、変形した股関節を人工物に換えることで股関節を再建する手術である。人工骨頭置換術は、主に股関節の骨折(大腿骨頚部骨折)に対して行われ、金属で骨を固定するのではなく、骨折した股関節を人工物に換える手術である。
【0003】
特許文献1には、患者の大腿骨の近位部に、ステムの形状を模したステムトライアル(ステムブローチ)と、ステムトライアルに対して着脱可能なネックトライアルと、ネックトライアルに対して着脱可能なヘッドトライアルと、を有する人工股関節置換術用の手術支援器具が記載されている。特許文献1の技術では、例えば、人工股関節置換術において、患者の大腿骨の近位部(骨盤側の部分)にある骨頭が切除された後に、ステムトライアルを利用して大腿骨内部の骨組織を削ることでステムを挿入するための孔が形成される。その後、ステムトライアルを入れたままの状態で、ステムトライアルの近位部にネックトライアルが固定され、ネックトライアルの先端にヘッドトライアルがはめ込まれる。術者は、この状態で、患者の脚がどのように動くか等を確認し、患者に装着するステムの形状やヘッドの形状等を決定する。その後、これらのトライアルが患者の体内から取り出されて、ステム等が患者に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−094331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような手術では、股関節の緊張を適切にする必要がある。股関節の緊張は、主に、骨盤臼蓋のインプラントであるカップの設置位置、大腿骨のインプラントであるステムの設置位置、及び、カップとステムの間にあるネックの長さによって決まる。手術では、まず、カップとステムの設置が行われるため、ネックの選択によって術後の成績が左右する。この点、種々の長さのネックが存在するため、術者は、最適なネックを選ぶために、何度もネックトライアルを付け替えなければならず手間がかかっていた。
【0006】
本発明の目的は、人工股関節置換術や人工骨頭置換術において適切なネックを選択する際の手間を軽減することが可能な人工股関節手術器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る人工股関節手術器具は、患者の大腿骨に設置されるステムトライアルに対して着脱可能な人工股関節手術器具であって、前記人工股関節手術器具に対して着脱可能なヘッドトライアルと接する先端部と、前記ステムトライアルと接する底部と、前記先端部又は前記底部と一体となり、術者の操作に応じて移動することによって、前記人工股関節手術器具の長さを可変とする可動部と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様では、前記可動部は、側面に歯型があり、前記人工股関節手術器具は、前記歯型とかみ合う歯車を更に含み、前記歯車は、前記歯車を回転させる回転操作を受け付ける受付部を含み、前記可動部は、前記術者の前記回転操作によって回転する前記歯車から力を受けて移動する、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記受付部は、前記人工股関節手術器具の正面側に配置され、当該正面側からの前記回転操作を受け付ける第1受付部と、前記人工股関節手術器具の背面側に配置され、当該背面側からの前記回転操作を受け付ける第2受付部と、を含み、前記可動部は、前記第1受付部又は前記第2受付部により受け付けられた前記回転操作に応じて移動する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記人工股関節手術器具は、前記歯車を格納する筐体部を更に含み、前記筐体部のうち、前記歯車が格納された格納部分は、凸状に形成されており、前記筐体部の前記格納部分の角は、丸みを帯びている、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記可動部は、第1の側面に前記歯型があり、第2の側面に複数の溝があり、前記人工股関節手術器具は、前記複数の溝の何れかに係合し、進行方向の逆方向に前記可動部が移動することを抑制する爪部を更に含み、前記複数の溝の各々は、前記進行方向側の傾斜が前記逆方向側の傾斜よりも急であり、かつ、前記進行方向側の傾斜が90°よりも小さい、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記可動部は、正面に目印があり、前記人工股関節手術器具は、前記可動部を格納する筐体部を更に含み、前記筐体部は、前記目印の位置によって前記人工股関節手術器具の現在の長さを案内するための穴が正面にあけられている、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る手術支援器具の一例を示す図である。
図2】ネックトライアルの詳細を示す図である。
図3】可動部の断面図である。
図4】ネックトライアルの側面図である。
図5】歯車が回転してネックトライアルの長さが変わる様子を示す図である。
図6】ネックトライアルが伸びる様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態の例について図面に基づき詳細に説明する。図1は、実施形態に係る手術支援器具の一例を示す図である。手術支援器具1は、人工股関節置換術及び人工骨頭置換術を支援する器具であり、例えば、ステムトライアル2、ネックトライアル3、ヘッドトライアル4、及びドライバー5を含む。
【0015】
ステムトライアル2は、人工股関節のステムに相当する部材であり、大腿骨の内部にステムを設置する孔部を形成するために用いられる。ステムトライアル2は、ステムと略同様の外部形状を有しており、例えば、ステンレス等の金属製である。図1では省略しているが、ステムトライアル2は、外部に多数の刃部を有しており、術者は、ステムトライアル2を患者の大腿骨の近位部内に挿入し、当該刃部を利用して大腿骨内の骨組織を削ることによって、孔部を形成する。ステムトライアル2の近位部2aには、ネックトライアル3を挿入可能な孔部が設けられている。
【0016】
ネックトライアル3は、本発明に係る人工股関節手術器具の一例であり、トライアルネック又はカルカートライアル(カルカーは大腿骨の頚部下方のことである)などと呼ばれることもある。ネックトライアル3は、人工股関節のネックに相当する部材である。本実施形態では、患者の体内に試験的に設置されるステムトライアル2とネックトライアル3は、互いに別々の部材であるものとするが、最終的に患者の体内に埋め込まれる人工股関節は、ステムとネックが一体化されていてもよいし、トライアルと同様にステムとネックが別々であってもよい。
【0017】
ネックトライアル3は、患者の大腿骨に設置されるステムトライアル2に対して着脱可能であり、ステムトライアル2の近位部2aから伸びる首部となる。ネックトライアル3は、任意の材料で作成されてよく、例えば、ステンレス等の金属製、カーボン製、又は樹脂製であってよい。なお、本実施形態では、ネックトライアル3がオスでありステムトライアル2がメスである場合を説明するが、オス/メスの関係は逆であってもよい。ただし、本実施形態のようなオス/メスの関係にした方が、ネックトライアル3の内部に、ネックトライアル3の長さを変えるための構造を格納するスペースを確保しやすい。
【0018】
ヘッドトライアル4は、人工股関節のヘッド(骨頭ボール)に相当する部材である。ヘッドトライアル4は、ネックトライアル3に対して着脱可能であり、患者の骨盤に設置されたカップ内で摺動可能である。ヘッドトライアル4は、球状の部材の一部を切除した形状を有しており、後述するネックトライアル3の先端部を挿入するための孔部が形成されている。ヘッドトライアル4の孔部の直径は、ネックトライアル3の先端部の直径と略同じとなっており、例えば、孔部には、滑り止め用のゴムリングが配置される。ヘッドトライアル4は、任意の材料で作成されてよく、例えば、ステンレス等の金属製、カーボン製、又は樹脂製であってよい。
【0019】
ドライバー5は、ネックトライアル3の後述する受付部321に挿入され、ネックトライアル3の長さを変えるために用いられる。ネックトライアル3の長さとは、ネックトライアル3の長手方向の長さであり、ネックトライアル3の上面と底面との間の距離(上面から底面までの距離)である。ドライバー5の先端部5aの形状は、任意の形状であってよく、本実施形態では四角形とするが、例えば、三角形、五角形、又は六角形等の他の多角形であってもよいし、十字のような他の形状であってもよい。
【0020】
図2は、ネックトライアル3の詳細を示す図である。図2(a)は、ネックトライアル3の斜視図であり、図2(b)は、ネックトライアル3の分解図である。図2(a)及び図2(b)に示すように、ネックトライアル3は、複数の部材から構成され、例えば、先端部300、可動部310、歯車320、筐体部330、爪部340、押さえ部350、及び止め部360,370を含む。
【0021】
先端部300は、ネックトライアル3に対して着脱可能なヘッドトライアル4と接する部材である。先端部300は、ヘッドトライアル4を受けるための受け部として設けられる。先端部300は、筐体部330の底部がステムトライアル2の孔部に挿入されている場合に、当該孔部から突出する部分となる。先端部300の形状は、ヘッドトライアル4内部に設けられた孔部と略同じであり、先端部300がヘッドトライアル4の孔部に挿入されることによって、ヘッドトライアル4がネックトライアル3に装着される。
【0022】
本実施形態では、先端部300は、中空の円筒状となっており、上面に近づくにつれて先細りの形状になっている。なお、先端部300は、ヘッドトライアル4の孔部に挿入可能な形状であればよく、任意の形状を適用可能である。先端部300は、ヘッドトライアル4の孔部の形状に合っていればよく、例えば、円柱状、楕円柱状、又は角柱状であってもよい。
【0023】
可動部310は、先端部300と一体となり、術者の操作に応じて移動することによって、ネックトライアル3の長さを可変とする部材である。本実施形態では、先端部300が可動部310にはめ込まれており、互いに密着している場合を説明するが、先端部300と可動部310とは、別々の部材でなく、部材として一体化されていてもよい。可動部310は、ネックトライアル3の首部に相当し、ネックトライアル3の長手方向に移動可能である。
【0024】
図3は、可動部310の断面図であり、図3(a)は、可動部310のA−A線断面図である。図3(a)に示すように、可動部310の断面は蒲鉾型となっており、単なる円柱型等と比べて高い強度を確保している。別の言い方をすれば、可動部310の断面は、長方形が2つの半円で挟まれるような形状となっており、長方形の長手方向の辺が半円の直径よりも長いことによって強度が強くなっている。なお、可動部310は、任意の形状であってよく、例えば、角柱、円柱、又は楕円柱であってもよい。
【0025】
図3(b)は、可動部310のB−B線断面図である。なお、図3(b)では、先端部300の断面も示している。図3(b)に示すように、可動部310は、先端部300の内部に挿入されており、先端部300と一体となっている。可動部310は、側面に歯型311が設けられている。歯型311は、可動部310の長手方向側の面に設けられており、例えば、ネックトライアル3の正面から見て右の側面に設けられている。歯型311は、歯すじが直線であり、複数の歯が直線上に並べられている。歯型311は、歯車320とかみ合う直線歯型である。
【0026】
可動部310は、歯型311を有することで、直線運動をする棒状歯車となる。別の言い方をすれば、可動部310は、いわゆるラックアンドピニオンにおけるラックである。ラックは、円筒歯車のピッチ円筒半径を無限大にした直線上の歯車である。歯型311は、歯車320とかみ合う形状であればよく、任意の形状の歯すじを適用可能である。本実施形態では、歯車320が平歯車(歯すじが軸に平行な直線の歯車)であり、歯型311が同様の形状を有しているものとするが、歯車320がヘリカルラック(平歯車の歯を軸線に対して斜めに切ってらせん状とした歯車)であれば、歯型311も同様に斜め形状としてもよい。
【0027】
本実施形態では、可動部310は、第1の側面に歯型311が設けられており、第2の側面に複数の溝312が設けられている。本実施形態では、第1の側面及び第2の側面は、互いに反対側の面である。図2及び図3(b)の例であれば、第1の側面は、正面から見て右側の面であり、第2の側面は、正面から見て左側の面である。なお、第2の側面は、第1の側面の反対側でなくてもよく、第2の側面は、第1の側面の横の面であってもよい。また、本実施形態では、歯型311の間隔(ピッチ幅)と溝312の間隔とが異なる場合を説明するが、これらは同じであってもよい。
【0028】
図3(c)は、溝312の拡大図である。図3(c)に示すように、複数の溝312の各々は、V字型となっており、所定の傾斜を有している。本実施形態では、溝312は、進行方向側の傾斜312aが逆方向側の傾斜312bよりも急であり、かつ、進行方向側の傾斜312aが90°よりも小さくなっている。
【0029】
進行方向とは、可動部310が移動する方向であり、本実施形態では、可動部310の底面から上面に向けた方向である。別の言い方をすれば、進行方向は、ネックトライアル3が伸びる方向である。逆方向は、進行方向との交差角が180°となる方向であり、本実施形態では、可動部310の上面から底面に向けた方向である。別の言い方をすれば、逆方向は、ネックトライアル3が縮む方向である。
【0030】
本実施形態では、可動部310は、正面から見て上方向に移動するので、溝312の2つの傾斜のうち、上側の傾斜312aが下側の傾斜312bよりも急であり、かつ、上側の傾斜312aが90°よりも小さくなっている。傾斜312aが緩すぎると、爪部340が溝312に触れていても、可動部310の逆方向への移動を抑制できなくなるので、ある程度の角度を有しているものとする。例えば、傾斜312aの角度は、70°以上90°未満である。一方、傾斜312bが急すぎると、可動部310が進行方向に移動しなくなるので、可動部310の移動を抑制しない程度の角度とする。例えば、傾斜312aの角度は、10°以上45°未満である。
【0031】
なお、溝312は、爪部340の先端とかみ合うことによって可動部310の逆方向への移動を抑制可能な形状であればよく、溝312の形状は、上記の例に限られない。溝312は、他の形状であってもよく、進行方向側の傾斜312aは、90°以上であってもよいし、溝312は、V字型ではなく、U字型等の他の形状であってもよい。
【0032】
図2に戻り、可動部310は、表面に目印313,314が設けられている。本実施形態では、目印313,314の各々は、可動部310の正面に設けられた溝である。目印313,314は、後述する第1筐体部331の穴から見えるようになっており、目印313,314の位置によって、ネックトライアル3の現在の長さが案内される。同様の目印は、可動部310の背面にも設けられており、後述する第2筐体部332の穴から見えるようになっているものとする。なお、目印313,314は、ネックトライアル3の現在の長さを案内可能な目印であればよく、溝以外にも、可動部310にプリントされたマーカであってもよいし、可動部310に付着されたシール等であってもよい。
【0033】
歯車320は、歯型311とかみ合う歯車である。本実施形態では、可動部310を直線運動させるためにラックアンドピニオンが使用されるので、歯車320は、ピニオン(円筒歯車)である。歯車320は、歯型311とかみ合う形状であればよく、任意の形状の歯すじを適用可能である。図2に示すように、本実施形態では、歯型311が平歯車のため、歯車320も平歯車とするが、歯型311がヘリカルラックであれば、歯車320は、歯すじが斜めに設けられたヘリカルピニオンとなる。
【0034】
なお、歯型311及び歯車320のピッチ幅(歯から次の歯までの距離)は、任意の長さであってよく、例えば、患者の体内に実際に埋め込むネックの長さに応じたピッチであってよい。例えば、互いに長さの異なる複数のネックが用意されており、各ネックの長さの違いをX(Xは任意の正数)ミリメートルとすると、歯型311及び歯車320の各々のピッチは、XミリメートルをY(Yは自然数)で割った値にしてもよい。このようなピッチとすることで、実際に埋め込むネックの長さに応じて可動部310を移動させることができる。また、溝312の間隔も任意であってよいが、XミリメートルをZ(Zは自然数であり、Yと同じであってもよいし異なってもよい)で割った値にすると、歯車320の回転に合うように、爪部340を溝312に係合させることができる。
【0035】
例えば、歯車320は、回転操作を受け付ける受付部321を含む。受付部321は、歯車320の回転軸に設けられる。回転操作は、歯車320を回転させる操作であり、本実施形態では、ドライバー5の先端部5aを受付部321の穴に挿入した状態で所定方向に回転させる操作である。術者は、ドライバー5の先端部5aをネックトライアル3の受付部321に挿入して回転させることで、歯車320を回転させて、ネックトライアル3の長さを変化させる。術者は、ネックトライアル3をステムトライアル2に装着させた状態で回転操作をしてもよいし、ネックトライアル3をステムトライアル2に装着させる前に回転操作をしてネックトライアル3の全長を予め変化させてもよい。
【0036】
なお、回転操作は、任意の操作を適用可能であり、ドライバー5を使った操作に限られない。例えば、歯車320の回転軸につまみを設けておき、術者が当該つまみを回すことが回転操作に相当してもよい。この場合、当該つまみが受付部321に相当する。
【0037】
本実施形態では、受付部321は、ネックトライアル3の正面側に配置され、当該正面側からの回転操作を受け付ける第1受付部322と、ネックトライアル3の背面側に配置され、当該背面側からの回転操作を受け付ける第2受付部323と、含む。なお、受付部321は、第1受付部322又は第2受付部323の何れかのみを有していなくてもよく、片側からの回転操作だけを受け付けてもよい。
【0038】
第1受付部322は、ドライバー5の先端部5aと同様の形状を有する穴があけられており、ドライバー5の先端部5aを挿入可能となっている。本実施形態では、ドライバー5の先端部5aは四角形をしているので、第1受付部322の穴も四角形となっているが、ドライバー5の先端部5aが他の形状であれば、第1受付部322の穴も当該他の形状となる。第1受付部322は、歯車320と一体化されており、歯車320の回転軸としての役割を果たす。
【0039】
なお、図2の例では、第1受付部322が中空の円筒形状であり、その内部に四角形の穴があけられている場合を説明するが、第1受付部322は、任意の形状であってよく、例えば、中空の角柱又は楕円筒であってもよい。第2受付部323は、第1受付部322と同様の構造及び役割を有するので、説明を省略する。第1受付部322と第2受付部323は、歯車320の本体部分を挟むようにして配置される。
【0040】
筐体部330は、可動部310及び歯車320等を格納する部材である。筐体部330は、ステムトライアル2に挿入可能な形状を有しており、ネックトライアル3の各部材を格納できる程度の大きさを有していればよく、筐体部330の形状は、本実施形態の例に限られない。
【0041】
図2に示すように、本実施形態では、筐体部330は、正面側に配置される第1筐体部331と、背面側に配置される第2筐体部332と、を含む。可動部310及び歯車320等の各部材は、第1筐体部331と第2筐体部332によって挟まれるようにして、筐体部330の中に格納される。
【0042】
第1筐体部331は、ネックトライアル3の正面側の筐体である。図2に示すように、第1筐体部331のうち、歯車320が格納された格納部分331aは、凸状に形成されている。凸状とは、周囲よりも出っ張っていることであり、格納部分331aは、第1筐体部331の他の部分(例えば、可動部310や爪部340の格納部分)よりも出っ張っている。格納部分331aは、歯車320を格納できる程度の大きさを有していればよく、格納部分331aの高さ(凸具合)は歯車320の回転軸方向の長さに応じて設計され、格納部分331aの幅は歯車320の直径に応じて設計されるようにすればよい。
【0043】
図4は、ネックトライアル3の側面図である。図4の側面図は、図2(a)のIの符号で示した矢印からネックトライアル3を見た様子を示している。図4に示すように、本実施形態では、第1筐体部331の格納部分331aの角は、丸みを帯びており、手術中にガーゼ等が引っかかりにくくなっている。即ち、格納部分331aが出っ張っている部分の面の端部(格納部分331aの上面の周囲)は、角ばっているのではなく、湾曲していて丸みを帯びている。格納部分331aの角は、90°でなければよく、湾曲具合は任意であってよい。
【0044】
また、格納部分331aは、歯車320の第1受付部322を差し込むための穴があけられている。この穴は、第1受付部322の直径に合わせて設けられており、格納部分331aに第1受付部322が差し込まれて固定される。同様の穴は、第2筐体部332の格納部分332aにも設けられており、第2受付部323が差し込まれるようになっている。ネックトライアル3が組み立てられたときに、歯車320の第1受付部322及び第2受付部322は、格納部分331a,332aによって支えられ、術者がドライバー5を挿入して回転操作をした場合に歯車320が回転する。
【0045】
図2(b)に戻り、第1筐体部331は、ステムトライアル2と接する底部331bを含む。底部331bは、ステムトライアル2の近位部2aに設けられた孔部に挿入可能な形状を有する。第1筐体部331の底部331bの表面には、穴が設けられており、第2筐体部332の底部332bに設けられた突起部が挿入され、第1筐体部331と第2筐体部332を互いに密着させるようになっている。
【0046】
本実施形態では、第1筐体部331は、目印313,314の位置によってネックトライアル3の現在の長さを案内するための穴331cが正面にあけられている。例えば、穴331cは、可動部310の移動方向に長くなっており、ネックトライアル3を組み立てたときに、可動部310の目印313,312が見えるような位置にあけられている。
【0047】
本実施形態では、ネックトライアル3は4段階で長さが変化する。図2(b)に示すように、各段階を示す「A」〜「D」の文字が穴331c付近に示されている。これらの文字は、第1筐体部331の表面に彫り込まれていてもよいし、表面に印刷されていてもよい。
【0048】
例えば、「A」は、1段階目の長さを示し、ネックトライアル3が最も短いことを示す。「A」は、ネックトライアル3が1段階目の長さのとき(爪部340が最も上の溝312に嵌っているとき)の目印313の位置に設けられる。
【0049】
また例えば、「B」は、2段階目の長さを示し、ネックトライアル3が2番目に短い状態(3番目に長い状態)を示す。「B」は、「A」と「C」の中点に配置され、ネックトライアル3が2段階目の長さのとき(爪部340が上から2番目の溝312に嵌っているとき)の目印313の位置に設けられる。
【0050】
また例えば、「C」は、3段階目の長さを示し、ネックトライアル3が3番目に短い状態(2番目に長い状態)を示す。「C」は、ネックトライアル3が3段階目の長さのとき(爪部340が下から2番目の溝312に嵌っているとき)の目印313の位置に設けられる。なお、「A」〜「C」の文字の間隔は、溝312の間隔と同じとなっている。
【0051】
また例えば、「D」は、4段階目の長さを示し、ネックトライアル3が最も長い状態を示す。本実施形態では、ネックトライアル3が最も長い状態になると、目印313が第1筐体部331の外側にはみ出てしまうので、下側にある目印314によって長さを案内するようにしている。このため、「D」は、1段階目の「A」よりも下に示されており、ネックトライアル3が4段階目の長さのとき(爪部340が最も下の溝312に嵌っているとき)の目印314の位置に設けられる。図2(a)は、ネックトライアル3が4段階目の長さのときを示しており、図2(a)に示すように、目印314は、「D」の位置となっている。
【0052】
なお、目印314は、ネックトライアル3が最も長い状態になるまでは、第1筐体部331に隠れており、穴331cからは見えない。ネックトライアル3が最も長い状態になると、図2(a)に示すように、目印314は、穴331cから出現して「D」の文字が示す位置に移動する。この場合、目印313は、筐体部330の外にはみ出る。
【0053】
第2筐体部332は、第1筐体部331と略同様の構造を有するが、先述したように、底部332bが穴ではなく突起部を有する点で第1筐体部331と異なる。第2筐体部332の他の構造については、第1筐体部331と同様である。
【0054】
爪部340は、複数の溝312の何れかに係合し、進行方向の逆方向に可動部310が移動することを抑制する部材である。爪部340は、溝312とかみ合うような形状であればよく、本実施形態では、溝312がV字型をしているので、爪部340の先端も同様にV字型をしている。
【0055】
図2(b)に示すように、爪部340は、正面側に配置された凸部341と、背面側に配置された凸部342と、を有する。凸部341は、第1筐体部331の穴331dに挿入され、凸部342は、第2筐体部332の穴332dに挿入される。このため、ネックトライアル3を組み立てると、図2(a)に示すように、爪部340は、第1筐体部331と第2筐体部332に挟まれて固定される。
【0056】
例えば、爪部340は、溝312との係合状態を解除するためのつまみ343を含む。図2に示すように、凸部341,342と、穴331d,332dと、は互いに円形をしているため、ネックトライアル3を組み立てた後に、術者がつまみ343を押し下げると、爪部340は、凸部341,342の中心線を回転軸として回転する。これにより、爪部340の先端が溝312から離れる向きに移動して、爪部340と溝312の係合状態が解除される。係合状態が解除されると、可動部310を進行方向の反対方向に移動させることができるようになる。
【0057】
押さえ部350は、術者が爪部340のつまみ343を押し下げた後に手を離した場合等に、反発力によって爪部340を元の姿勢に戻すための部材である。押さえ部350は、爪部340よりも可動部310側に配置され、術者が爪部340のつまみ343を押し下げると、回転する爪部340によって可動部310側への圧力を受ける。その後、術者が爪部340のつまみ343から指を離すと、押さえ部350が元に戻ろうとする反発力が働き、爪部340は、逆向きに回転して元の姿勢に戻る。
【0058】
止め部360,370は、第1筐体部331と第2筐体部332を繋ぎ合わせるための部材である。止め部360,370の形状は、第1筐体部331と第2筐体部332のくぼみに嵌るような形状となっている。
【0059】
図5は、歯車320が回転してネックトライアル3の長さが変わる様子を示す図である。なお、図5では、説明の簡略化のために、先端部300、可動部310、歯車320、爪部340、及び押さえ部350のみを示している。図5に示すように、爪部340が溝312に嵌った状態で歯車320が回転すると、歯車320は、可動部310の歯型311とかみ合っているので、可動部310は、歯車320と接触している部分から、歯車320が回転したことによる外力を受けて、進行方向に移動する。
【0060】
可動部310が進行方向に移動すると、爪部340は、溝312の下側の傾斜312bを上り、その後、溝312から外れた状態となる。爪部340が溝312から外れると、可動部310の側面に触れた状態となる。その後、歯車320が回転を続け、爪部340が次の溝312まで移動すると、爪部340は、当該溝312の上側の傾斜312aを滑り落ちて当該溝312に嵌る。爪部340が溝に312に嵌ることで振動が生じ、術者は、爪部340が溝312に嵌ったことを、音や手の感覚から感じ取ることができる。
【0061】
図6は、ネックトライアル3が伸びる様子を示す図である。なお、図6では、特に参照する必要のない符号については省略している。本実施形態では、ネックトライアル3は4段階の長さで可変となっているので、図6(a)−図6(d)では、ネックトライアル3が1段階目から4段階目まで伸びる様子を示している。先述したように、可動部310は、術者の回転操作によって回転する歯車320から力を受けて移動するので、例えば、術者がドライバー5の先端部5aを第1受付部322に挿入した状態で所定方向に回転させると、第1受付部322と一体となっている歯車320が当該所定方向に回転する。
【0062】
例えば、術者が、ドライバー5を第1受付部322に挿入し、正面から見て右回り(時計回り)に回転させると、歯車が右回りに回転し、可動部310は、上側に押し出される向きの力を受ける。これにより、可動部310は、進行方向である上方向に歯のピッチ幅だけ移動する。なお、術者が、ドライバー5を第1受付部322に挿入し、正面から見て左回り(反時計回り)に回転させた場合には、爪部340が溝312にかみ合っている場合には、可動部310が下側に移動しないように抑止される。
【0063】
ただし、第2受付部323は、背面側に設けられるため、可動部310を移動させるためのドライバー5の回転方向が第1受付部322とは異なる。例えば、術者が、ドライバー5を第2受付部323に挿入し、背面から見て左回り(時計回り)に回転させると、歯車が左回りに回転し、可動部310は、上側に押し出される向きの力を受ける。これにより、可動部310は、進行方向である上方向に歯のピッチ幅だけ移動する。術者がドライバー5を逆方向に回転させた場合には、可動部310が下側に移動しないように抑止される点については、第1受付部322と同様である。
【0064】
なお、術者は、第1受付部322と第2受付部323の何れを利用してもよい。例えば、患者の左足股関節を手術する場合にネックトライアル3の正面が術者の方を向くのであれば、術者は第1受付部322にドライバー5を挿入して可動部310を移動させる。また例えば、患者の右足股関節を手術する場合にネックトライアル3の背面が術者の方を向くのであれば、術者は第2受付部323にドライバー5を挿入して可動部310を移動させる。可動部310は、第1受付部322又は第2受付部323により受け付けられた回転操作に応じて移動すればよい。
【0065】
上記説明したネックトライアル3は、ステムトライアル2に装着したままであっても、術者が可動部310を移動させて長さを変えることができるので、適切なネックを選ぶために異なる長さのネックトライアルを何度も付け替えるといった手間をなくし、人工股関節置換術や人工骨頭置換術において適切なネックを選択する際の手間を軽減することができる。このため、術者が患者に適したネックを選びやすくなる。また、手術時間の短縮を図ることもでき、術者及び患者の負担を軽減することができる。
【0066】
また、可動部310の側面に歯型311があり、当該歯型311とかみ合う歯車320を回転させることによって可動部310が移動するので、術者は簡易な操作によってネックトライアル3の長さを変えることができる。このため、ネックを選択する際の手間を効果的に軽減することができる。また、本実施形態のように、ネックトライアル3の正面側又は背面側に受付部321を設けた場合、患者の大腿骨内に設置したステムトライアル2にネックトライアル3を装着すると、受付部321が術者の方を向くため、ドライバー5を利用した回転操作をしやすくなる。
【0067】
また、ネックトライアル3は、第1受付部322と第2受付部323を有し、正面側と背面側の両方から回転操作を受け付けることができる。このため、例えば、股関節の左側を手術する場合は正面側の第1受付部322を使用し、股関節の右側を手術する場合は背面側の第2受付部323を使用するといったことができ、股関節の何れの側を手術するときであっても、1台のネックトライアル3で対応することができる。このため、右側用のネックトライアルと左側用のネックトライアルを準備するといった手間を省くことができる。
【0068】
また、歯車320が格納される筐体部330の格納部分331aは、凸状に形成されておりドライバー5を差し込みやすいので、回転操作をしやすくなる。また、格納部分331aの角を丸めることによって、手術中に使用するガーゼ等が引っかかりにくくなる。
【0069】
また、爪部340とかみ合う溝312の進行方向側の傾斜312aを逆方向側の傾斜312bよりも急にすることで、より確実に爪部340を係合させることができる。また、溝312の進行方向側の傾斜312aが90°の場合には、爪部340が溝312に嵌ったときの音や手ごたえを感じにくいことがあるが、この傾斜を90°よりも小さくすることで、爪部340の先端が傾斜312aの表面を滑り落ながら溝312に嵌るので、爪部340が溝312に嵌ったときの音や手ごたえが感じやすくなる。また、傾斜312aを90°よりも小さくすることで、爪部340のつまみ343を押し下げたときに爪部340の先端が溝312から外れやすくなり、ネックトライアル3を縮める操作をしやすくなる。
【0070】
また、筐体部330の穴331cから可動部310の目印313,314が見えるようにすることで、ネックトライアル3の現在の長さを確認しやすくなる。また、穴331cや目印313,314を正面側に設けることで、患者の大腿骨内に設置したステムトライアル2にネックトライアル3を装着すると、目印313,314が術者の方を向くので、ネックトライアル3の現在の長さを確認しやすくなる。
【0071】
なお、本発明は、以上に説明した実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更可能である。
【0072】
例えば、実施形態では、可動部310の目印313,314と、筐体部330の「A」〜「D」の文字及び穴331c,332cと、によってネックトライアル3の現在の長さが案内される場合を説明したが、他の方法を利用してネックトライアル3の現在の長さが案内されてもよい。例えば、第1受付部322に目印を記すとともに、格納部分331aの周囲に「A」〜「D」の文字を記しておき、歯車320の現在の回転位置を利用して、ネックトライアル3の現在の長さが案内されるようにしてもよい。この場合、ネックトライアル3が1段階目の長さのときの第1受付部322の目印が向く位置に、「A」の文字が記されているものとする。他の文字についても同様に、ネックトライアル3が2段階目〜4段階目の各々の長さのときの第1受付部322の目印が向く位置に、「B」〜「D」の文字が記されているものとする。第1受付部322の目印は、歯車320の現在の回転位置に応じた方向を向くので、術者は、当該目印が指し示す方向にある文字によって、ネックトライアル3の現在の長さを把握することができる。背面側についても同様に、第2受付部323に目印を記すとともに、格納部分332aの周囲に「A」〜「D」の文字を記しておき、歯車320の現在の回転位置を利用して、ネックトライアル3の現在の長さが案内されるようにしてもよい。他にも例えば、ドライバー5に同様の目印を記しておき、ドライバー5をどれだけ回したかを案内することによって、ネックトライアル3の現在の長さが案内されるようにしてもよい。
【0073】
また例えば、実施形態では、可動部310の進行方向を上方向としたが、可動部310の進行方向は下方向であってもよい。この場合、ネックトライアル3は、最長の状態から徐々に短くなる。進行方向を実施形態とは逆にする場合、可動部310を移動させるための回転操作の方向(歯車320の回転方向)も逆方向となる。また、溝312の形状も上下逆となり、下側の傾斜が急になり上側の傾斜が緩やかになる。
【0074】
また例えば、実施形態では、先端部300と可動部310が一体となっている場合を説明したが、可動部310は、底部331bと一体となり、術者の操作に応じて移動することによって、ネックトライアル3の長さを可変としてもよい。この場合、可動部310は、回転する歯車320により、ステムトライアル2側に伸びるようになる。なお、可動部310と底部331bを一体化する場合、筐体部330の本体とは別の部材であるものとする。
【0075】
また例えば、可動部310を移動させる方法は、歯車320を利用した方法に限られない。例えば、筐体部330にネジ穴が設けられており、可動部310がネジであってもよく、この場合には、ネジである可動部310を回転させることで、ネックトライアル3の長さを可変としてもよい。他にも例えば、バネやスライドレール等を利用して可動部310を移動させてもよい。
【0076】
また例えば、実施形態では、可動部310の進行方向が正面から見て垂直方向であり、可動部310が真っ直ぐ伸びる場合を説明したが、直線状のネック以外にも、途中で一定角度だけ曲がるネックも存在する。このようなネックに対応するために、先端部300を水平方向(図2の正面から見て左右方向又は手前方向)に移動可能としてもよい。例えば、先端部300を水平方向にスライド可能な機構(例えば、スライドレール)を取り付けておき、先端部300を水平方向にスライドさせることで、曲がりのあるネックに対応してもよい。他にも例えば、実施形態で説明したように、先端部300と可動部310を一体化する場合に、可動部310を途中で曲げることが可能な機構(例えば、歯車と歯止めからなるラチェット)を設けておき、可動部310を途中で曲げることで、曲がりのあるネックに対応してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 手術支援器具、2 ステムトライアル、2a 近位部、3 ネックトライアル、4 ヘッドトライアル、5 ドライバー、5a 先端部、300 先端部、310 可動部、311 歯型、312 溝、312a,312b 傾斜、313,314 目印、320 歯車、321 受付部、322 第1受付部、323 第2受付部、330 筐体部、331 第1筐体部、331a 格納部分、331b 底部、331c 穴、331d 穴、332 第2筐体部、332a 格納部分、332b 底部、332c 穴、332d 穴、340 爪部、341,342 凸部、343 つまみ、350 押さえ部、360,370 止め部。
【要約】
【課題】人工股関節置換術や人工骨頭置換術において適切なネックを選択する際の手間を軽減する。
【解決手段】人工股関節手術器具(3)は、患者の大腿骨に設置されるステムトライアル(2)に対して着脱可能であり、人工股関節手術器具(3)に対して着脱可能なヘッドトライアル(4)と接する先端部(300)と、ステムトライアル(2)と接する底部(331b,332b)と、先端部(300)又は底部(331b,332b)と一体となり、術者の操作に応じて移動することによって、人工股関節手術器具(3)の長さを可変とする可動部(310)と、を含む。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6