特許第6531233号(P6531233)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6531233
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】気道確保用具
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/04 20060101AFI20190531BHJP
【FI】
   A61M16/04 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-27236(P2019-27236)
(22)【出願日】2019年2月19日
【審査請求日】2019年2月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】318005405
【氏名又は名称】原 暢利
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 暢利
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−073678(JP,A)
【文献】 特開2000−152995(JP,A)
【文献】 米国特許第5370656(US,A)
【文献】 米国特許第5105807(US,A)
【文献】 米国特許第4736741(US,A)
【文献】 米国特許第5692506(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0282086(US,A1)
【文献】 米国特許第5492538(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0163527(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/04
A61M 25/10
A61M 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム体により形成され、内部空間に流体を注入することにより筒状体をなす呼気流通体と、
前記呼気流通体に取り付けられ、前記呼気流通体の前記内部空間への前記流体の注入は許容し、前記内部空間からの前記流体の流出を規制する逆止弁が設けられた流体注入用チューブと、
使用者の鼻腔に挿通され、第1端部には前記使用者の前記鼻腔の開口端部に係止可能な係止部が取り付けられ、第2端部には前記呼気流通体を着脱可能に連結する連結体が取り付けられた保持紐と、
前記呼気流通体を前記使用者の舌根部と喉頭蓋との間の位置で保持させるように前記保持紐の前記使用者の前記鼻腔の開口端部からの長さが調整可能な長さ調整部と、
を具備することを特徴とする気道確保用具。
【請求項2】
前記逆止弁は前記流体注入用チューブの先端部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の気道確保用具。
【請求項3】
前記長さ調整部は、前記使用者の前記鼻腔の開口端部よりも外側位置に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の気道確保用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気道確保用具に関し、より詳細には、睡眠時無呼吸症候群等の患者が用いて好適な気道確保用具に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時無呼吸症候群等の患者が就寝する際には、CPAPと称される圧縮空気を強制的に使用者の気道に送り込むための装置を装着することがある。このCPAPは、睡眠時無呼吸症候群等の患者(以下、使用者という)の口や鼻を覆うマスクを装着しなければならず不快である。また、CPAPを作動させるための電源を手配しなければならず、取り扱いや携行が煩雑であるといった課題を有している。
【0003】
近年においては、CPAPに代替する睡眠時無呼吸症候群の治療手段として特許文献1(特許第4680059号公報)に開示されているような器具の構成が提案されている。特許文献1に開示されている器具によれば、使用者は就寝時にマスクの装着が不要になると共に、睡眠時における気道を確保するための装置の電源手配が不要になる。このため、睡眠時無呼吸症候群の治療手段の取り扱いや携行が煩雑であるといった従来技術の課題の解決が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4680059号公報(請求項1、図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている器具は、外科的手術により予め使用者の咽頭領域に配置しなければならない。このため、この器具を実際に使用するにあたっては使用者に対する金銭的および身体的負担が大きいといった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明は、就寝時におけるマスクの装着や、装置を作動させるための電源確保の必要がないことに加え、外科的手術をすることなく、睡眠時無呼吸症候群の患者が必要時に容易に装着および取り外しすることが可能な気道確保用具の提供を目的としている。
【0007】
すなわち本発明は、フィルム体により形成され、内部空間に流体を注入することにより筒状体をなす呼気流通体と、前記呼気流通体に取り付けられ、前記呼気流通体の前記内部空間への前記流体の注入は許容し、前記内部空間からの前記流体の流出を規制する逆止弁が設けられた流体注入用チューブと、使用者の鼻腔に挿通され、第1端部には前記使用者の前記鼻腔の開口端部に係止可能な係止部が取り付けられ、第2端部には前記呼気流通体を着脱可能に連結する連結体が取り付けられた保持紐と、前記呼気流通体を前記使用者の舌根部と喉頭蓋との間の位置で保持させるように前記保持紐の前記使用者の前記鼻腔の開口端部からの長さが調整可能な長さ調整部と、を具備することを特徴とする気道確保用具である。
【0008】
これにより、使用者である睡眠時無呼吸症候群の患者は就寝時におけるマスクの装着が不要になると共に、装置を作動させるための電源確保が不要になる。また、予め使用者が外科的手術をすることなく、必要時において使用者により容易に装着および取り外しすることが可能な気道確保用具を提供することができる。
【0009】
また、前記逆止弁は前記流体注入用チューブの先端部に設けられていることが好ましい。
【0010】
これにより、呼気流通体を膨張させるための流体を使用者自らが容易に供給することができる。
【0011】
また、前記長さ調整部は、前記使用者の前記鼻腔の開口端部よりも外側位置に設けられていることが好ましい。
【0012】
これにより、使用者が自ら長さ調整部の操作をすることができるため、呼気流通体の保持位置を適宜調整することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明における気道確保用具の構成によれば、使用者は就寝時にマスクの装着が不要になり使用者の睡眠を良好なものにすることができる。また、本発明における気道確保用具は使用時における電源の確保が不要になる。さらに使用者は、予め外科的手術をする必要がなく、必要時において使用者によって容易に装着および取り外しすることが可能である。さらにまた、携行性に優れ、使用者の金銭的及び身体的負担を大幅に軽減させることができる。これらにより使用者は、自宅はもちろんのこと旅行先であっても安眠することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態における気道確保用具の斜視図である。
図2】呼気流通体に流体を注入して膨張させて筒状体にした状態を示す説明図である。
図3】本実施形態における気道確保用具の使用時状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態における気道確保用具100について説明する。図1に示すように気道確保用具100は、フィルム体11で形成された呼気流通体10と、呼気流通体10の内部空間に空気を注入する流体注入用チューブ20と、使用者の鼻腔BKに挿通させて呼気流通体10を保持する保持紐30と、保持紐30の長さ調整部40を具備している。
【0016】
呼気流通体10には連結紐12と流体注入用チューブ20がそれぞれ取り付けられている。流体としての空気が注入される前の呼気流通体10はシート状をなし、内部空間に空気が注入されると図2に示すような筒状体に膨張することができる形状に形成されている。
【0017】
本実施形態における連結紐12は炭素繊維製であり、連結紐12の直径は1mm程度であることが好ましいがこの形態に限定されるものではない。連結紐12の先端部には連結体としての環体14が取り付けられている。
【0018】
また、流体注入用チューブ20の先端部にはマウスピース21が取り付けられている。マウスピース21には、呼気流通体10の内部空間への流体の注入は許容し、内部空間からの流体の流出を規制する逆止弁22が内蔵されている。このように本実施形態における呼気流通体10は、使用者が自らの息を内部空間に吹き込むことにより膨張させるものである。そこで、呼気流通体10内部空間への過度な流体の注入による破裂を防止するため、流体注入用チューブ20の内径寸法は2mm程度にしておくことが好ましいが、この内径寸法に限定されるものではない。
【0019】
また、使用者の咽喉部分における所定の位置に保持された呼気流通体10を取り外す際に、予め呼気流通体10を萎ませておくことができるように、流体注入用チューブ20は、少なくとも使用者の口からアクセスした手によってマウスピース21の操作が可能な長さを有している。
【0020】
また、保持紐30は、使用者の鼻腔BKに挿通させて呼気流通体10を保持するためのものであり、呼気流通体10に取り付けられた連結紐12と同様にして形成することができる。保持紐30の第1端部(体外側端部)には鼻腔BKの開口端部に係止可能な係止部32が取り付けられている。このような係止部32としては、図1および図3に示すように鼻尖と鼻翼の間の部分を挟持することにより鼻腔BKの開口端部に係止させることが可能なゴム製のC字体を好適に用いることができる。また、保持紐30の第2端部(体内側端部)には呼気流通体10に取り付けられた環体14に着脱可能に連結する連結体としてのカラビナ34が取り付けられている。
【0021】
長さ調整部40は、使用者の鼻腔BKの開口端部からの保持紐30の長さを調整可能にするためのものである。このような長さ調整部40としては、コードロック、紐止め、スプリングコードストッパー等と称される公知の構成を採用することができる。加えて図1および図3に示すように、係止部32に長さ調整部40を直接取り付けた(一体化した)形態を採用することにより、鼻腔BKの開口端部よりも外側位置に長さ調整部40が設けられた状態にすることができる。これにより長さ調整部40の操作が容易になる点で好都合である。
【0022】
次に本実施形態における気道確保用具100の使用方法について説明する。最初に使用者は、長さ調整部40を操作して体内側において十分な長さを確保した保持紐30を自らの鼻腔BKに送り込み、口蓋垂の裏から口腔内領域KKに第2端部を露出させる。次に使用者は、係止部32で鼻尖と鼻翼の間の部分を挟持させ、気道確保用具100を固定する。次に使用者は、口から図示しない鉤や自らの指を入れて口腔内領域KKの保持紐30を口の外まで取り出す。次に使用者は、呼気流通体10を連結紐12の先端に取り付けた環体14と保持紐30のカラビナ34とを連結させる。
【0023】
次に使用者は、流体注入用チューブ20のマウスピース21から自らの呼気を注入して呼気流通体10を筒状体に膨張させる。次に使用者は、長さ調整部40を操作し、保持紐30の長さを適宜長さになるよう調整する。この適宜長さとは、使用者の鼻腔BKの開口端部から呼気流通体10の中心部分までの長さが舌根部ZKと喉頭蓋TGの間の位置になる長さである。この長さについては、予め医師等により測定されていればよく、保持紐30の所定位置に目印(図示せず)をつけておけばよい。そして、長さ調整部40から体外側にはみ出した保持紐30については、係止部32により鼻尖と鼻翼の間の部分に挟持させておくか、係止部32を取り付けた側と反対側の鼻腔BKに丸めて入れておくこともできる。
【0024】
次に使用者は、呼気流通体10を飲み込むようにすれば、筒状体となった呼気流通体10を舌根部ZKと喉頭蓋TGとの間の位置に位置決めして保持させることができる。このとき、使用者は、流体注入用チューブ20のマウスピース21を咥えておけば流体注入用チューブ20を口腔内領域KKに残すことができると共に、呼気流通体10の意図しない飲み込みを防止することができる。そして使用者は、呼気流通体10を所定の位置にセットした後、流体注入用チューブ20を歯茎と頬の間等の隙間部分や舌下部分に配置しておけばよい。このようにして筒状体をなす呼気流通体10を使用者の舌根部ZKと喉頭蓋TGとの間の位置にセットすることができる。
【0025】
以上のようにして本実施形態における気道確保用具100を装着することにより、使用者が就寝した際において使用者の舌が気道を塞ぐような舌の落ち込みを防止すると共に、使用者の口と気道との間には常に呼気流通路16が形成された状態にすることができる。これにより使用者の睡眠時無呼吸症候群の症状が軽減され、使用者の健康状態を良好にすることができると共に、周りの人の睡眠の邪魔になることがない点で好都合である。
【0026】
また、使用者は必要に応じて、自らの舌根部ZKと喉頭蓋TGとの間の位置から呼気流通体10を取り出すことができる。このとき使用者は、最初に流体注入用チューブ20を口から取出してマウスピース21の逆止弁22を操作して呼気流通体10から空気を抜く。次に使用者は、長さ調整部40を操作して保持紐30の長さを延ばし、流体注入用チューブ20または連結紐12を手繰れば、萎びた状態の呼気流通体10を口の外に引き出しすることができる。呼気流通体10は連結紐12の環体14が保持紐30のカラビナ34と着脱可能に連結されているので、定期的または破損時に使用者自らが新しい呼気流通体10に交換することができる。
【0027】
このように本実施形態における気道確保用具100は、使用にあたり電源の確保が不要であり、外科的手術をすることなく、必要時に使用者が簡単に自らの舌根部ZKと喉頭蓋TGとの間の位置への配置および取り出しをすることができ、使い勝手が良好である。また、気道確保用具100の構成がシンプルかつコンパクトであるため、安価で携行性に優れる点においても良好である。また、就寝時にマスクを装着する必要もなく安眠が可能である。
【0028】
以上に本実施形態における気道確保用具100について説明したが、本発明における気道確保用具100は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、保持紐30の第2端部(体内側端部)には呼気流通体10に取り付けられた環体14に着脱可能に連結する連結体としてカラビナ34を取り付けした形態について説明しているが、連結体はカラビナ34に限定されるものではなく、呼気流通体10に着脱可能に連結することができる連結体であれば他の構成を採用することもできる。
【0029】
また、以上に説明した本実施形態の構成に対し、明細書中に記載されている変形例や、他の公知の構成を適宜組み合わせた形態を採用することもできる。
【符号の説明】
【0030】
10 呼気流通体,11 フィルム体,12 連結紐,14 環体(連結体),
16 呼気流通路,
20 流体注入用チューブ,21 マウスピース,22 逆止弁,
30 保持紐,32 係止部,34 カナビラ(連結体),
40 長さ調整部,
100 気道確保用具,
BK 鼻腔,KK 口腔内領域,TG 喉頭蓋,ZK 舌根部
【要約】
【課題】就寝時にマスクの装着や電源確保の心配がなく、外科的手術をすることなく使用者によって容易に装着することを可能にした気道確保用具を提供すること。
【解決手段】フィルム体11で形成され、内部空間に流体を注入して筒状体をなす呼気流通体10と、呼気流通体10に取り付けられ、呼気流通体10の内部空間への流体の注入は許容し、内部空間からの流体の流出を規制する逆止弁22が設けられた流体注入用チューブ20と、鼻腔BKに挿通され、第1端部には鼻腔BKの開口端部に係止可能な係止部32が取り付けられ、第2端部には呼気流通体10を着脱可能に連結するカナビラ34が取り付けられた保持紐30と、呼気流通体10を舌根部ZKと喉頭蓋TGとの間の位置で保持させるように保持紐30の鼻腔BKの開口端部からの長さが調整可能な長さ調整部40を具備する気道確保用具100である。
【選択図】図3
図1
図2
図3