(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6531285
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】直管型LED照明具
(51)【国際特許分類】
F21K 9/27 20160101AFI20190610BHJP
F21S 8/04 20060101ALI20190610BHJP
F21V 33/00 20060101ALI20190610BHJP
F21V 3/02 20060101ALI20190610BHJP
F21V 7/24 20180101ALI20190610BHJP
F21V 19/00 20060101ALI20190610BHJP
F21V 29/503 20150101ALI20190610BHJP
F21V 29/70 20150101ALI20190610BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20190610BHJP
F21V 7/05 20060101ALI20190610BHJP
【FI】
F21K9/27
F21S8/04 130
F21V33/00 400
F21V3/02 400
F21V7/24
F21V19/00 150
F21V19/00 170
F21V29/503 100
F21V29/70
F21V7/00 320
F21V7/05
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-545772(P2017-545772)
(86)(22)【出願日】2017年2月9日
(86)【国際出願番号】JP2017004802
(87)【国際公開番号】WO2018146781
(87)【国際公開日】20180816
【審査請求日】2017年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】506160215
【氏名又は名称】マイクロコーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】内藤 壮介
【審査官】
野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−099674(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0051039(US,A1)
【文献】
特開2015−195087(JP,A)
【文献】
特開2013−211233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/27
F21V 7/00
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管型蛍光灯のソケットに取り付け可能な両端の口金部と、前記口金部の間にわたされた直管部材と、前記直管部材に取り付けられた電子基板と、前記電子基板に沿って多数のLEDチップのライン状に並べて取り付けたLEDライン光源と、前記LEDライン光源への電力供給を制御する電子制御回路とを備えた直管型LED照明具において、
前記直管部材のうち前記LEDライン光源の照射光を照射させる面に透光性部材で形成された透光カバーと、
前記直管型LED照明具の長軸方向に配設された2枚の反射板であって、前記直管型LED照明具の長軸に対する垂直断面において、前記透光カバーの一部から前記電子基板の前記LEDライン光源近傍に向けて延設され、前記電子基板の前記LEDライン光源近傍から両側にVの字に開いた構造に形成されている反射板を備え、
前記反射板が、前記透光カバーの素材とは異なる素材でかつ前記透光カバーの素材よりも反射率の高い素材を用いて、二色成型により前記透光カバーに対して一体に形成されたものであることを特徴とする直管型LED照明具。
【請求項2】
前記反射板の前記電子基板への延設において、その先端が前記LEDライン光源近傍の前記電子基板の面上に到達して取り付けられた構造であることを特徴とする請求項1に記載の直管型LED照明具。
【請求項3】
前記反射板の前記電子基板への延設において、その先端が前記LEDライン光源近傍の前記電子基板の面上に押圧接触または非接触であり、直接には取り付けられてはいない構造であることを特徴とする請求項1または2に記載の直管型LED照明具。
【請求項4】
前記反射板の前記電子基板に対する角度が20度から70度の間であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の直管型LED照明具。
【請求項5】
前記直管部材のうち前記LEDチップおよび前記電子基板が取り付けられた側の構造物はヒートシンク機能を備えたものである請求項1から4のいずれかに記載の直管型LED照明具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明用の直管型LED照明具に関する。本発明の直管型LED照明具は、照明として利用できるものであれば、生活照明用、産業照明用を問わず、例えば、植物工場に用いる照明、生物等の人工飼育に用いる照明等、その適用分野は特に限定されない。
【背景技術】
【0002】
高出力のLED(Light Emitting Diode)素子の開発が進み、従来の白色電球による照明や、蛍光灯による照明に代え、いわゆるLED照明具が普及し始めている。特に、白色LED素子は、従来の単色光しか発光しなかった単色LEDとは異なり、多数の波長の光を発光するできるため、生活照明用途、産業照明用途に適したものとなり、LED素子が持つ小型・省電力・長寿命という特性も相まって普及に弾みがついてきた。
直管型LED照明具は、従来の蛍光灯型の照明器具の代替として用いられ、そのまま蛍光灯ソケットに取り付けることができるものも多数に上る。
【0003】
例えば、特開2012−204146号公報には、従来技術におけるライン状にLEDを並べた直管タイプの直管型LED照明具が示されている(特許文献1)。
図9は、特許文献1である特開2012−204146号公報に開示された直管型LED照明具の構成例を簡単に示す図である。この特開2012−204146号公報に開示された直管型LED照明具は、従来の蛍光灯型の照明具の典型的な構成を持っている。本体10には天板15と側板11からなる大きな傘があり、その下方中央にLEDランプ20が設けられている。LEDランプ20の内部には基板23の上にLED素子22が搭載されている。LEDランプ20の背面側(照射面とは反対側)には、背面に散乱された光を照射面側に折り返すための反射板30が内傘のように設けられている。この構造は蛍光灯型照明具では良く見られる構造である。
【0004】
また、例えば、特開2013−012402号公報には、従来技術における二列に並べた直管タイプの直管型LED照明具が示されている(特許文献2)。
図10は、特許文献2である特開2013−012402号公報に開示された直管型LED照明具の構成例を簡単に示す図である。この特開2013−012402号公報に開示された直管型LED照明具も、従来の蛍光灯型の照明具の典型的な構成を持っている。本体の内面には反射板2が内傘のように設けられている。LEDランプ1の内部には基板上にLED素子11が搭載されている。LEDランプ1の背面側(照射面とは反対側)に照射された光も反射板2により照射面側に折り返される。
従来の直管型LED照明具は、従来の蛍光灯照明具の代替であることが念頭にあり、LED素子からの発光をガラスやポリカーボネート樹脂などの直管カバーで受け、その光を散乱させる形で直管カバー全体が発光しているような効果を持たせるものがほとんどである。このような直管カバーにより散乱光として照射した方が周囲を均等に明るく照らすことができ、室内照明具として適すると考えられて来たからである。
【0005】
近年、植物工場の研究、開発が盛んに行われているが、そこでキーデバイスとなるものは照明装置である。この照明装置として寿命も長く、光の波長の制御もしやすいため、LED照明具が注目されている。植物工場では植物が棚などに整然と配列された状態で栽培されるため、特に、直管型LED照明具が適している。
図11は、一般的な植物工場における照明具と植物の構成を簡単に示した図である。一例として特開2011−019476号公報に開示されているものを挙げた。このような植物工場に用いる直管型LED照明具9は、室内全体を均等に照らすという生活照明とは異なり、植物の育成を主目的に使用されるため、直管型LED照明具9から照射された光は、できるだけ光エネルギーとして植物の葉に対して集中させる方が良い。そこで、植物工場で用いるLED照明具9は植物に対向させて比較的近接に配設する工夫を施すことが多い。しかし、あまり近くに配設するわけにも行かず、ある程度の距離を開けてLED照明具9を配設している。
【0006】
【特許文献1】特開2012−204146号公報
【特許文献2】特開2013−012402号公報
【特許文献3】特開2011−019476号公報
【特許文献4】特開2015−022818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、従来の一般的な植物工場において直管型LED照明具が用いられ、植物の葉に対して照射し、光エネルギーを与えている。
しかし、LED素子から照射される光は指向性のビーム光ではなく素子全体が発光する無指向性の拡散光である。照射方向によって照射エネルギーの強弱はあるものの180度にわたる拡散光として発光され、光エネルギーは分散してしまう。そのため、直管型LED照明具9から照射された光の植物の葉に対するエネルギー伝達効率が落ちてしまうという問題があった。
【0008】
特許文献1や特許文献2の直管型LED照明具のように、直管型LED照明具の背面側には内面に反射板を取り付けた傘を設けて前方に照射光を折り返す工夫があるが、これは従来の直管型の蛍光灯で用いられた技術を踏襲したものである。従来の直管型蛍光灯は蛍光面全体が発光して背面にも光が照射されるものであるため照明傘は効果的であるが、直管型LEDとなると、発光するLED素子は電子基板上にマウントされているため、もともと後方には発光できず前方180度にのみ発光するので、背面側の反射板を設けてもあまり役に立っていないのが現状である。
【0009】
そこで、従来技術において、植物工場向けの直管型LED照明具として、少しでも前方に光エネルギーを集める工夫を施したものとして、特開2015−022818号公報に開示された植物工場システムの照明具が知られている。
図12は、特開2015−022818号公報に開示された植物工場の照明具の概念を簡単に示す図である。特開2015−022818号公報に開示された技術は、
図12に示すように、直管型LED照明具と植物との間にコリメートレンズを配するものである。コリメートレンズを配することにより、点光源から拡散光として照射された光をコリメートレンズで屈折させて直進光に変換する。
【0010】
しかし、特開2015−022818号公報に開示された植物工場の照明具にも問題があった。
まず、屈折により集光できる光は、コリメートレンズの面積に過ぎず、LED素子から前方に180度半球上に拡がるように発射された光のうち集光できる光はやはり一部に過ぎない。そのため、光エネルギーの一部しか直進光に変換できなかった。もしもできるだけ多くの光を集光するためにはコリメートレンズの面積を大きくしなければならない。
【0011】
次に、コリメートレンズの配置によりコスト増加を招いてしまうという問題である。コリメートレンズは光学部品であるため精密性を要しコストが高いものである。上記したように、できるだけ多くの光を変換するためにはコリメートレンズの面積を大きくしなければならないため、より一層コリメートレンズのコストが大きくなってしまう。
また、直管型LEDの照射光を集光する用途は、植物工場には限らない。例えば、工場での一般照明でなく、作業員の手元に集中して照らすいわゆる“スポット照明”という用途もある。天井高の工場において作業員の作業姿勢が座り姿勢などある程度固定的な場合、天井高の室内全体にまんべんなく照らすよりも作業員の周辺に集中的に光量を増やした方が電気代の節約に役立つ場合がある。このような場合にスポット照明のような集光型のものは有利である。同様に、工場に限らず、店舗など幅広く適用可能である。
【0012】
上記問題点に鑑み、本発明は、直管型LED照明装置において、コスト増を抑制しつつ、LED素子から前方に180度半球上に拡がるように照射された光をできるかぎり前方に照射されるように光の照射方向を制御できる直管型LED照明具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の直管型LED照明具は、直管型蛍光灯のソケットに取り付け可能な両端の口金部と、前記口金部の間にわたされた直管部材と、前記直管部材に取り付けられた電子基板と、前記電子基板に沿って多数のLEDチップのライン状に並べて取り付けたLEDライン光源と、前記LEDライン光源への電力供給を制御する電子制御回路とを備えた直管型LED照明具において、前記直管型LED照明具の長軸方向に配設された2枚の反射板であって、前記直管型LED照明具の長軸に対する垂直断面において、前記電子基板の前記LEDライン光源近傍から両側にVの字に開いた構造に配設されていることを特徴とする直管型LED照明具である。
上記構成により、LED素子から照射された光は周囲を取り囲む反射板という簡単な構造によって電子基板に沿うような横方向に出射した光を前方に向けて反射させ、照射角度を前方に制限することができ、効率的に光が前方に集光できる。
【0014】
なお、反射板は複雑なものではなく反射機能を果たすものであればシンプルなもので良い。反射板の構造としては複数パターンがあり得る。
例えば、反射板の基端側の構造として、直管部材が透光カバーを備えた構成の場合であれば、直管型LED照明具の長軸に対する垂直断面において、透光カバーの一部から前記電子基板の前記LEDライン光源近傍に向けて延設された構造であることを特徴とするものがある。
【0015】
ここで、反射板が透光カバーと同じ透光性部材で一体に形成されたものであり、その表面に反射係数の高い素材がコーティングまたは貼付されたものとすることができる。
また、反射板が前記透光カバーとは異なる素材であり、透光カバーに取り付けられたものとすることができる。
【0016】
なお、素材としては、透光カバーと同じ透光性部材で一体に形成したものでも良い。例えば、ポリカーボネート素材で直管と一体成型により形成したもので良い。その表面に反射係数の高い素材がコーティングまたは貼付されておれば、反射板として機能できる。
もちろん、反射板が透光カバーとは異なる素材であり透光カバーに取り付けられたものでも良い。
【0017】
ここで、反射板の先端(電子基板と対向する側)と電子基板との関係について述べておく。反射板の基端は直管とつながっているが、反射板の先端側はLEDライン光源近傍付近に向かうが、その先端と電子基板との関係が複数通りあり得る。
一例は、反射板の先端が電子基板の面上に取り付けられた構造とすることができる。取り付け構造は、両者の嵌合、接着、融着など多様な方法がある。
他の例は、反射板の先端がLEDライン光源近傍の電子基板の面上に押圧接触または非接触であり、直接には取り付けられてはいない構造である。反射板はLED素子の周囲を囲んで照射光を反射することであり、かならずしも電子基板自体に取り付けられる必要はない。そのため非接触であっても電子基板に対して適度に接近していれば光を逃すことなく前方に反射させることができれば良い。
【0018】
さらに、反射板の構造として上記とは逆に、電子基板側に基端を持つ構造も可能である。例えば、LEDライン光源に対応する開口を備えて前記電子基板の表面上に取り付ける固定ベース板を備え、反射板が、前記固定ベース板に対して前記Vの字に開く角度で立設され、前記固定ベースを介して前記電子基板の表面から前方に立設された構造である。
直管部材が透光カバーを備えた構成であれば、反射板が、直管型LED照明具の長軸に対する垂直断面において、電子基板の前記LEDライン光源近傍から透光カバーの一部に向けて延設された構造となる。
【0019】
なお、光の出射角度は反射板の電子基板に対する角度により決まるが、例えば、20度から70度の間とする。
なお、本発明の直管型LED照明具は、放熱対策についても工夫が可能である。例えば、直管部材のうちLEDチップおよび電子基板が取り付けられた側の構造物はヒートシンク機能を備えたものとすれば良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明の直管型LED照明具によれば、LED素子から照射された光は周囲を取り囲む反射板という簡単な構造によって電子基板に沿うような横方向に出射した光を前方に向けて反射させ、照射角度を前方に制限することができ、効率的に光が前方に集光できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1に係る本発明の直管型LED照明具100の構成例を示す図である。
【
図2】反射板120の基端側の構造の複数のパターンを簡単に示した図である。
【
図3】反射板120の先端と電子基板130の関係のパターンについて示す図である。
【
図4】長軸に対する断面図において、反射板120と電子基板130との様々な角度のパターンを示したものである。
【
図5】本発明の直管型LED照明具100による光の照射軌跡を簡単に示す図である。
【
図6】実施例2に係る本発明の直管型LED照明具100aの構成例を示す図である。
【
図7】実施例2に係る本発明の直管型LED照明具100aの他の構成例を示す図である。
【
図8】実施例2に係る固定ベース170aと反射板120aを同じステンレス素材で一体に製作したものを取り出した図である。
【
図9】特開2012−204146号公報に開示された直管型LED照明具の構成例を簡単に示す図である。
【
図10】特開2013−012402号公報に開示された直管型LED照明具の構成例を簡単に示す図である。
【
図11】一般的な植物工場における照明具と植物の構成を簡単に示した図である。
【
図12】特開2015−022818号公報に開示された植物工場の照明具の概念を簡単に示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の直管型LED照明具の実施例を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に示した具体的な用途、形状、個数などには限定されないことは言うまでもない。
なお、以下、適用例として植物工場における照明を例とするが、工場でのスポット照明、店舗での装飾照明などその用途は多用であり、植物工場で示した実施例がそのまま適用できることは理解されよう。
【実施例1】
【0023】
実施例1にかかる本発明の直管型LED照明具の例を示す。
図1(a)は直管型LED照明具100の底面図(LED素子が配置された面を下面とする)、
図1(b)は直管型LED照明具100の側断面図を示しており、
図1(b)は
図1(a)のA−A線断面図であり、LED素子が設けられた面が下側を向いている。
本発明の直管型LED照明具100は、天井などに据え付けられている既存の蛍光灯器具のソケット部にそのまま装着して代替使用可能なものである。
本実施例1の構成例では、直管型LED照明具100は、直管部材110、反射板120、電子基板130、LEDライン光源140、電子制御回路150、口金部160を備えた構成となっている。
【0024】
直管部材110は、従来の蛍光照明灯に代替するパイプ状の部材であり、透光カバー111と本体基部112を備えている。両端には口金部160が設けられている。直管部材110の両端に取り付けられた口金部160間の軸方向の長さは、既存の蛍光灯と同じ長さとなっている。
【0025】
直管部材110のうち照明面側に透光カバー111が設けられている。
透光カバー111は透明プラスチックやガラスなどのパイプであり、この例では半円筒形となっている。透光カバー111の部材は、透明または半透明のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂等の透明樹脂素材などにより半円筒パイプ状に形成されたものとする。
【0026】
本体基部112は、直管部材110のうち電子基板130およびLEDライン光源140が取り付けられた側の構造物である。ヒートシンクを兼ねることも可能である。アルミニウムなどの導電性の高い素材で形成されて。また、ヒダ状の小板を多数立設することにより表面積を大きくして熱伝導性を高め、ヒートシンク機能を備えたものとなっている。
【0027】
反射板120は、直管型LED照明具100の長軸に沿って配置された板状体である。この構成例ではLEDライン光源140の両側にそれぞれ設けられている。
図1(b)に示すように、透光カバー111の一部から電子基板130のLEDライン光源140近傍に向けて延設されており、LEDライン光源140を中心として両側にV字に開いた構造に配設されている。
【0028】
反射板120の構造において、基端側(透光カバー111に近い側)と、先端側(電子基板130に近い側)がある。
まず、反射板120の基端側の構造として複数通りあり得る。
図2は、反射板120の基端側の構造の複数のパターンを簡単に示した図である。
【0029】
第1のパターンは、反射板120が透光カバー111と同じ透光性素材(プラスチック樹脂など)で一体に形成されたものであり、その表面に反射係数の高い素材がコーティングまたは貼付されたパターンである。
この一体形成する構成であれば、透光カバー111を製造する際、反射板120も併せて一気に製作することが可能となり、反射板120を後付けで透光カバー111への取り付け作業が不要となる。例えば、
図1(b)に示した断面を持つ透光カバー111と反射板120を押し出し成形や射出成形で一体のものとして製作すれば良い。
なお、反射板120を透光カバー111と同じ透光性素材で製作する場合、そのままでは反射機能を発揮できないので、その表面に反射係数の高い素材、例えば、酸化チタン、アルミニウム、ステンレス素材などをコーティングまたは貼付する。
【0030】
第2のパターンは、透光カバー111と反射板120を二色成型法により別々の素材を使い分けつつ一体成型するパターンである。
二色成型法を用いて2つの異なる素材を同時に流し込んで一体成型する手法がある。例えば、金型のうち、透光性カバー111が形成される部分の金型部分にポリカーボネート樹脂素材を流し込むと同時に、反射板120が形成される部分の金型部分に酸化チタン含有したポリカーボネート樹脂などの反射率の高い素材を流し込み、両者を一体成型することができる。
また、二色成型法を用いて2つの異なる素材を時間差でシリアルに流し込んで一体成型する手法もある。例えば、反射板120が形成される部分の金型部分を封止した状態でポリカーボネート樹脂素材を流し込んで透光性カバー111の部分を先に形成し、その後、反射板120が形成される部分の金型部分の封止を解き、酸化チタン含有したポリカーボネート樹脂などの反射率の高い素材にて反射板120部分を重ねて成形する。
この二色成型法を用いれば、透光カバー111部分は透光性が確保され、反射板120部分は反射機能が確保されたものが一体成型できる。
【0031】
第3のパターンは、反射板120が透光カバー111とは異なる素材で別途製造されたものであり、透光カバー111を成型後、後付けにて反射板120を取り付けるパターンである。
このように、透光カバー111とは別に反射板120を製作する場合、透光カバー111に取り付ける前にその表面の反射係数が高い状態にしておくと有利である。例えば、反射板120を最初から酸化チタン含有ポリカーボネート樹脂などの反射係数の高い素材で製作したり、別途金属やプラスチック樹脂などで反射板120の基板部分を成型した後、その表面に反射係数の高い金属でメッキのコーティングや貼付したりするなどが可能である。そのように製作した反射板120を透光カバー111に対して後付けにて接着や嵌合などの手段で取り付ければ良い。
【0032】
次に、反射板の先端側の構造について述べる。
反射板120の電子基板130に対する先端の構造にも複数パターンあり得る。
第1のパターンは、反射板120の先端は電子基板130のLEDライン光源140近傍に到達し、かつ、電子基板130の面上に取り付けられた構造である。反射板120の基端側は透光カバー111と一体または取り付けられているので、基端も先端も両方とも固定されていることとなる。
【0033】
図3は、反射板120の先端と電子基板130との第1のパターンにおける関係について示す図である。
図3に示すように、反射板120の先端はLEDライン光源140近傍に到達し、電子基板130に対して取り付けられている。なお取り付け方法としてはしっかりと取り付けられれば限定はされない。
図3上図は、反射板120の先端を電子基板130の所定位置の表面に接着剤にて接着した例である。接着のほか、反射板120の先端に嵌合形状が設けられ、電子基板130の所定位置の表面にも嵌合形状が設けられており、両者が嵌合し合っている構造も可能である。
このように、反射板120の先端を電子基板130に取り付けることにより、反射板120の基端側も先端側も両方とも固定されているので、安定した構造となる。
【0034】
第2のパターンは、反射板120の先端は電子基板130のLEDライン光源140近傍に到達しているが、電子基板130の面上には直接には取り付けられていない構造である。反射板120の先端の状態としては、LEDライン光源近傍の電子基板130の面上に接触していても良いし非接触でも良い。反射板120の基端側は透光カバー111と一体または取り付けられているので先端は遊ばせておいても構造的には成立する。さらに、第1のパターンのように反射板120の先端を電子基板130に取り付ける必要がないため、その分、直管型LED照明具100の製作工程が少なくなり、また、反射板120の加工精度が緩やかで済む。
【0035】
図3下図は、反射板120の先端と電子基板130との第2のパターンにおける関係について示す図である。
図3下図の左側は、反射板120の先端は電子基板130のLEDライン光源140近傍に到達して電子基板130に接触しているものの、接着や嵌合などで取り付けられてはいない状態を示している。
図3下図の右側は、反射板120の先端は電子基板130のLEDライン光源140近傍に到達しているが、電子基板130には接触せず、浮いている状態を示している。いずれのパターンであっても、反射板120がLED素子141から照射された光を反射して光エネルギーを前方に集中させるという役割は果たすことができ、かつ、先端を電子基板130に取り付けるよりも製作が容易であることが理解されよう。
【0036】
次に、反射板120の電子基板130に対する角度について述べる。
反射板120の電子基板130に対する角度は、基端側の透光カバー111からの延設角度により決まるが、反射板120の電子基板130に対する角度によって、本発明のLED照明具100の照射光の範囲が決まる。この角度は、人工栽培する植物やスポット照明の対象物との距離や範囲によって決めればよいが、例えば、反射板120の電子基板130に対する角度が20度から70度の間とする。
【0037】
図4は、長軸に対する断面図において、反射板120と電子基板130との様々な角度のパターンを示したものである。
図4(a)は反射板120の電子基板130に対する角度が比較的浅く、照射範囲が広い場合である。
図4(b)は反射板120の電子基板130に対する角度がやや深くなり、照射範囲がやや絞られた場合である。
図4(c)は反射板120の電子基板130に対する角度がかなり深くなり、照射範囲がかなり絞られた場合である。なお、
図4(d)は比較のために、反射板を伴わない従来構成の例における照射範囲を示す図である。反射板がないのでLED素子から点光源として出射した光は180度の拡散光となって拡散してしまう様子が分かる。
このように、本発明の反射板120を伴う構成であれば、
図4(a)から
図4(c)に示すように、比較的浅い角度であれば適度に拡がり、その角度が深くなるほど集光され、照射範囲をコントロールすることができ、光エネルギーを前方に集中させることができる。
【0038】
図1に戻り、各要素の説明を続ける。
電子基板130は、LEDライン光源140および電子制御回路150が実装される基板である。この例では、
図1に示すように、電子基板130は帯状で長尺に形成され、直管部材110の全長にわたって設けられている。また、
図1に示すように、電子基板130は直管部材110の本体基部112の上面の中央あたりに設けられている。例えば合成樹脂製クリップのような部材により、直管部材110の内側に沿って固定される。
【0039】
電子基板130には、本体部分131と延長部分132がある。この本体部分131は直管部材110の内部に配置されており、後述するようにLED素子141が実装されたLEDライン光源140が配置される箇所となっている。一方、延長部分132は後述するように口金120の内部に入り込んだものであり、電子制御回路150の電子回路モジュール151の少なくとも一部が実装される箇所として提供される。この構成については詳しく後述する。
【0040】
LEDライン光源140は、直管部材110内の電子基板130に沿って多数のLEDチップがライン状に並べて実装された多数のLED(白色発光ダイオード)素子である。LED素子141の数については特に制限されないが、この構成例では、LEDライン光源140は直管部材110の正面(表面)側に30個程度のLED10が実装されている。したがって、LEDライン光源140の実装面側が光照射面となる。
【0041】
LED素子141は、表面に白色LED素子の発光面、裏面に電極面が設けられたチップである。近年、LED素子141としては様々なものが開発されており、どのLED素子141を実装するかは直管型LED照明具の使用用途に応じて適宜選択すればよい。
例えば、植物工場での植物に対する光エネルギー供給が目的であれば、LED素子141からの照射光において対象植物の光合成に有効な波長を多く光スペクトルを持つLED素子141を採用することが好ましい。
また、例えば、工場の作業現場であれば、作業員が目視しやすい光である白色または電球色の照射光を発するLED素子141を採用することが好ましい。
また、例えば、店舗などの装飾用の照明であれば、デザイナーが店舗装飾に合った色の光を照射するLED素子141を採用することが好ましい。
【0042】
電子制御回路150は、外部から供給される電圧を受け、LEDライン光源140に必要な電力を供給するように制御する電子回路である。電子制御回路として搭載する電子素子や回路構成は特に限定されないが、例えば、電解コンデンサ、抵抗素子、整流器、サージアブソーバ、パワーサーミスタなど多様な電子素子が搭載される。発光素子としてはLED(白色発光ダイオード)が設けられている。
【0043】
ここで、電子制御回路150を左右2つの電子回路モジュール151L,151Rの2つのモジュールに分割することにより、1つあたりの電子回路モジュールを小さくし、直管内における配置を工夫しやすくするという工夫がある。
この例では、一端の口金部120付近と、他端の口金部120付近の2箇所の実装部分に分散して実装することにより、直管部材110の範囲の電子基板130に占める電子制御回路150の実装面積を低減させるものとなっている。電子回路モジュール151L、151RをLED照射の妨げにならない位置に配置するため、口金部120の内空間を利用するものとなっている。
【0044】
次に、口金部160は、直管部材110の両端部に設けられた部材であり、従来の蛍光照明灯の口金の外形を持つものである。直管部材110のそれぞれの端部に取り付けられている。ここでは、左端に口金部160L、右端に口金部160Rが設けられている。
それぞれの口金部160の外表面にはプラグに相当する2本の端子161が並行に電気的に絶縁された状態で突設されている。これらの端子161は従来の蛍光灯と同じ規格で形成され、既存の蛍光灯器具のソケット部に装着することができるものとなっている。
以上が、各構成要素の説明である。
【0045】
以下、本発明の直管型LED照明具100による光の照射の状態を簡単に説明する。
図5は、本発明の直管型LED照明具100による光の照射軌跡を簡単に示す図である。イメージとして簡略化して描いている。
図5に示すように、本発明の直管型LED照明具100による光の照射軌跡は、180度の拡散光ではなく、反射板120により制限された照射範囲にて光が照射されている。この光の照射範囲に植物の葉や芽などが位置すれば効率的な光合成が期待できる。
なお、植物の葉は光の照射が強い方向に自ら向くという性質があるので、直管型LED照明具の位置や照射角度を変えずに固定しておけば自ずと効率的な光合成が行われる姿勢に整ってゆく。
【0046】
以上、実施例1にかかる直管型LED照明具100によれば、透光カバー111から延設された反射板120という簡単な構造物により、LED素子141から本来は前方に180度半球上に拡がるように照射された光を、限られた照射範囲にて前方に照射されるように光の照射方向を制御できる。
【実施例2】
【0047】
実施例2の直管型LED照明具100aは、実施例2の直管型LED照明具100aは、反射板120aが電子基板130a側に取り付けられている構成例である。
【0048】
図6は、実施例2にかかる直管型LED照明具100aの一構成例を示す図である。
図6(a)は実施例2にかかる直管型LED照明具100aの底面図(LED素子が配置された面を下面とする)、
図6(b)は直管型LED照明具100の側断面図を示しており、
図6(b)は
図6(a)のB−B線断面図であり、LED素子が設けられた面が下側を向いている。
図6に示した実施例2の直管型LED照明具100aは、実施例1と同様に、直管部材110a、反射板120a、電子基板130a、LEDライン光源140a、電子制御回路150a、口金部160aを備えた構成となっている。直管部材110aは、透光カバー111aと本体基部112aを伴っている例となっている。
また、
図7は、実施例2にかかる直管型LED照明具100aの他の構成例を示す図である。
図7に示した構成例では、
図6の構成例に比べて、直管部材110aのうち透光カバー111aが省略された構成例となっている。
以下、実施例1と同様の構成の説明部分は省略し、実施例1とは異なる部分の説明を中心に述べる。
【0049】
実施例2の直管型LED照明具100aは、固定ベース板170aを備えている。
固定ベース板170aは、LEDライン光源140aに対応する開口171aを備えた板状体である。
図6または
図7に示すように、当該開口171aからLEDライン光源140aを露出させた状態で固定ベース板170aを電子基板130aの表面上に取り付ける。
固定ベース板170aを電子基板130aに取り付ける方法としては、接着による貼付、嵌合構造を設けた嵌め込み、ネジ孔を穿設してネジを用いたネジ止めなど、多様な方法が可能である。
【0050】
反射板120aは、
図6(b)や
図7(b)に分かりやすいように、固定ベース板170aからVの字に開く角度で立設されている。つまり、反射板120aは、実施例1とは異なり、固定ベース170aを介して電子基板130aの表面側から前方側に向けて立設された構造となっている。つまり反射板120aは、固定ベース170aを介して電子基板130aのLEDライン光源140a近傍から照射方向に向けてV字状に延設された構造となっている。
【0051】
なお、固定ベース170aと反射板120aを同じ素材、例えば、ステンレス材で一体的に製作しても良い。
図8は、固定ベース170aと反射板120aを同じステンレス素材で一体に製作したものを取り出した図である。
図8(a)は、開口171aを正面に見た固定ベース170aと反射板120の一体製作されたものを見た図である。
図8(b)は、
図8(a)におけるC−C線断面図である。
図8(c)は、固定ベース170aに対して反射板120aがVの字に開いていることが分かりやすいよう、端部を拡大した斜視図である。このような形状であれば、簡単に固定ベース170aと反射板120aを同じステンレス素材で一体に製作し、また、電子基板130aに対して固定ベース170aを貼付し、開口171aからLEDライン光源140aを露出させた状態とすることができる。
【0052】
以下、実施例2にかかる直管型LED照明具100aによる光の照射の状態は、実施例1に示した
図6と同様、180度の拡散光ではなく、反射板120aにより制御された照射範囲にて光が照射される。
【0053】
以上、実施例2にかかる直管型LED照明具100aによれば、反射板120aは、固定ベース171aを介して電子基板130aのLEDライン光源140a近傍から照射方向に向けて延設された構造となっており、反射板120aという簡単な構造物により、LED素子141から本来は前方に180度半球上に拡がるように照射された光を、限られた照射範囲にて前方に照射されるように光の照射方向を制御できる。
本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明は、従来型の蛍光灯に代替する照明装置として広く適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
100 直管型LED照明具
110 直管部材
111 透光カバー
112 本体基部
120 反射板
130 電子基板
140 LEDライン光源
141 LED素子
150 電子制御回路
160 口金部
170 固定ベース