【実施例】
【0063】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
なお、
図1−4において、製パン配合における各原料の数値は、小麦粉100重量部に対する値として示される。
【0065】
(実施例1)
直捏法によって山型食パンを製造するために、以下の製パン実験を行った。
【0066】
図1に記載の製パン配合にて、各原料を配合した。より具体的には、製パン実施例1−3及び比較例1−2について、各々のミキサーボールにおいて、小麦粉(市販外麦強力粉)、砂糖(製パン実施例3以外)、食塩、ショートニング、イースト、L−アスコルビン酸及び水を、各々
図1に記載の分量にて配合した。製パン実施例1ではさらに糖化生地1(後述)を配合し、製パン実施例2ではさらに糖化生地2(後述)を配合し、製パン実施例3ではさらに糖化生地3(後述)を配合した。
【0067】
砂糖の配合量について、比較例1では一般的な配合量であり、製パン実施例1−2及び比較例2では一般的な配合量よりも少量であり、製パン実施例3では砂糖不使用である。
【0068】
製パン実施例1−3に用いた糖化生地1−3について説明する。なお、以下の通り調製した糖化生地については、85℃で10分間加熱することで酵素を失活させた後、冷水にて急速冷却し、5℃で48時間保存後に製パンに使用した。
【0069】
糖化生地1の調製方法を説明する。小麦粉100重量部、水400重量部、α−アミラーゼ1重量部(商品名:ビオザイムA(天野エンザイム社製)、酵素活性:小麦粉当たり400000mU/g)を攪拌機を用いて均一に混合し、プラスチック製の容器に入れて加温し、70℃±1℃とした。この状態で水分蒸発が起こらないように容器を十分密閉し、40分間保持して糖化生地1を調製した。調製後の糖化生地1の糖化度は688であった。
【0070】
糖化生地2の調製方法を説明する。小麦粉100重量部及び水400重量部をプラスチック製の容器に入れ、加温して70℃±1℃とし、この状態で水分蒸発が起こらないように容器を十分密閉し20分間保持した。その後、水100重量部、α−アミラーゼ0.5重量部(商品名:ビオザイムA(天野エンザイム社製)、酵素活性:小麦粉当たり200000mU/g)、グルコアミラーゼ0.01重量部(商品名:スミチーム(新日本化学工業社製)、酵素活性:小麦粉当たり200mU/g)を攪拌機を用いて均一に混合し、再度密閉後65℃で20分間保持して糖化生地2を調製した。調製後の糖化生地2の糖化度は382であった。
【0071】
糖化生地3の調製方法を説明する。小麦粉100重量部、水300重量部、α−アミラーゼ0.75重量部(商品名:ビオザイムA(天野エンザイム社製)、酵素活性:小麦粉当たり300000mU/g)、グルコアミラーゼ0.5重量部(商品名:スミチーム(新日本化学工業社製)、酵素活性:小麦粉当たり10000mU/g)を攪拌機を用いて均一に混合し、プラスチック製の容器に入れ水分蒸発が起こらないように容器を十分密閉し、高圧処理装置(MFP−7000、三菱重工社製)を用いて600Mpa、60℃、10分間保持して糖化生地3を調製した。調製後の糖化生地3の糖化度は585であった。
【0072】
製パン実施例1−3各々のミキサーボールに糖化生地を含む各原料を入れて、小型ピンミキサーを用いて捏上温度27℃にて、高速で最適時間ミキシング(ミキシング時のピンミキサーの電力量の変化を指標に電力量ピークを少し過ぎるまで高速でミキシング)を行い、最終生地を得た。また、比較例1−2についても同様にミキシングを行い、ミキシング生地を得た。
【0073】
前述の製パン実施例1−3の最終生地及び比較例1−2のミキシング生地について、以下の条件で発酵、焼成して、製パン実施例1−3及び比較例1−2の山型食パンを得た。
フロアタイム:30℃、60分間
分割、丸め:生地量100gずつ手分割し、手丸目を行った。
ベンチタイム:30℃、15分間
成形:モルダーにて成形し、パン型に入れた。
最終発酵:38℃、湿度85%、60分間
焼成:180℃、25分間
【0074】
図1に、“製パン結果”として、製パン時生地状態、パンの外観、内相、食感、風味(甘みを含む)及び比容積を示す。なお、製パン時生地状態、外観、内相及び食感、風味の評価基準は、◎:非常に良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る、である。「製パン時生地状態」とは、最終発酵を行う前の生地状態をいい、適度な弾力性があってべとつかない状態である場合に“◎”と評価され、生地がだれておりべとつく状態である場合に“×”と評価される。「(パンの)外観」とは、パンの形状、焼き色の度合い及び焼き色の均一性で評価され、パンが大きく膨らんでおり良好な形状で、均一かつ良好な焼き色がついた状態である場合に“◎”と評価される。「(パンの)内相」とは、パンの内部の白い部分(クラム)の状態を評価するものであり、クラムが白くかつ均一な細かい気泡からなり、気泡以外のパンの壁の部分(内相のマク)の厚さが薄い状態である場合に“◎”と評価される。評価方法については、6人のパネラーによって、製パン時生地状態、焼成1日後の外観、内相、食感・風味の評価を行った。また、焼成1時間後に菜種置換法によって比容積測定評価を行った。
【0075】
また、
図1に、保存後のパンの“老化の評価”として、パンをポリエチレン袋に入れて、20℃で保存した後、クラム部分の硬さ(1日後、2日後)を評価した結果を示す。パンの硬さの評価方法について、より具体的には、山型食パンを2cmにスライスし、中央部の合計3枚のパン片のクラムの中央を3cm×3cmにカットし、そのカットクラムを半分の厚さまで1mm/sのスピードで圧縮した時の最大応力を測定し、その平均値をパンの硬さの値とした。なお、パンの硬さの値が低いほど、パンが柔らかいことを表す。
【0076】
図1の“製パン結果”より、製パン実施例1−3の生地の製パン性は従来法の比較例1とほぼ同等であり、製パン実施例1−2と同量の砂糖を使用した比較例2と比べて良好な結果を示した。高圧処理による短時間の糖化処理を行った糖化生地を用いた製パン実施例3の糖化度は製パン実施例1とほぼ同等であり、砂糖を全く使用していないにも関わらず、製パン性に大きな影響もない上に、甘みを含む風味については従来法の比較例1を上回っていた。また、製パン実施例1−3では、食感及び風味の評価が非常に高く、保存後の老化の評価においても、比較例に比べて明らかに保存中の老化が遅く、柔らかさが維持され、比較例以上の結果が示された。
【0077】
以上の結果から、本実施例の糖化生地を用いた製パン法により、添加する砂糖の量を2分の1以下に減らしても従来法以上の品質のパンが製造できることが明らかになった。また、本実施例のパンは、保存中の老化が非常に遅いのが特徴であり、焼成後のソフトな食感が長い時間維持されることが判った。
【0078】
(実施例2)
中種法によって山型食パンを製造するために、以下の製パン実験を行った。
【0079】
図2に記載の製パン配合にて、中種の各原料を配合した。より具体的には、ミキサーボールに、小麦粉(市販外麦強力粉)、イースト、L−アスコルビン酸及び水を入れ、小型ピンミキサーを用いて捏上温度24℃にて低速で2分間ミキシングを行い、30℃、4時間発酵を行うことで、製パン実施例4−5及び比較例3−4の中種生地を得た。
【0080】
前述の中種生地に、
図2の本捏の各原料を配合し、本捏ミキシングを行った。より具体的には、製パン実施例4−5及び比較例3−4の中種生地の全量、及び
図2の本捏の各原料(小麦粉、砂糖(製パン実施例5を除く)、食塩、ショートニング及び水)をミキサーボールに入れた。製パン実施例4ではさらに糖化生地4(後述)を配合し、製パン実施例5ではさらに糖化生地5(後述)を配合した。
【0081】
砂糖の配合量について、比較例3では一般的な配合量であり、製パン実施例4及び比較例4では一般的な配合量よりも少量であり、製パン実施例5では砂糖不使用である。
【0082】
製パン実施例4−5に用いた糖化生地4−5について説明する。なお、以下の通り調製した糖化生地については、85℃で10分間加熱することで酵素を失活させた後、冷水にて常温まで冷却した後、製パンに使用した。
【0083】
糖化生地4の調製方法を説明する。小麦粉100重量部、米粉300重量部、水1000重量部、α−アミラーゼ1重量部(商品名:スミチームAS(新日本化学工業社製)、酵素活性:小麦粉当たり140000mU/g)、β−アミラーゼ1重量部(商品名:β−アミラーゼL/R(ナガセケムテックス社製)、酵素活性:小麦粉当たり150000mU/g)を攪拌機を用いて均一に混合し、プラスチック製の容器に入れて加温し、68℃±1℃とした。この状態で水分蒸発が起こらないように容器を十分密閉し、60分間保持して糖化生地4を調製した。調製後の糖化生地4の糖化度は187であった。
【0084】
糖化生地5の調製方法を説明する。小麦粉100重量部、もち米粉600重量部、水1500重量部、α―アミラーゼ0.5重量部(商品名:ビオザイムA(天野エンザイム社製)、酵素活性:小麦粉当たり200000mU/g)、β−アミラーゼ1重量部(商品名:β−アミラーゼL/R(ナガセケムテックス社製)、酵素活性:小麦粉当たり150000mU/g)、グルコアミラーゼ0.5重量部(商品名:スミチーム(新日本化学工業社製)、酵素活性:小麦粉当たり10000mU/g)、プルラナーゼ1重量部(商品名:プルラナーゼ「アマノ」3(天野エンザイム社製)、酵素活性:小麦粉当たり30000mU/g)を攪拌機を用いて均一に混合し、プラスチック製の容器に入れて加温し、68℃±1℃とした。この状態で水分蒸発が起こらないように容器を十分密閉し、60分間保持して糖化生地5を調製した。調製後の糖化生地5の糖化度は470であった。
【0085】
製パン実施例4−5各々のミキサーボールに糖化生地を含む各原料を入れて、前述同様の小型ピンミキサーを用いて捏上温度27℃にて、高速で最適時間ミキシング(ミキシング時のピンミキサーの電力量の変化を指標に電力量ピークを少し過ぎるまで高速でミキシング)を行い、最終生地を得た。また、比較例3−4についても同様にミキシングを行い、ミキシング生地を得た。
【0086】
前述の製パン実施例4−5の最終生地及び比較例3−4のミキシング生地について、以下の条件で発酵、焼成して、製パン実施例4−5及び比較例3−4の山型食パンを得た。
フロアタイム:30℃、15分間
分割、丸め:生地量100gずつ手分割し、手丸目を行った。
ベンチタイム:30℃、15分間
成形:モルダーにて成形し、パン型に入れた。
最終発酵:38℃、湿度85%、50分間発酵
焼成:180℃、25分間
【0087】
製パン評価は、実施例1と同様に行った。
図2の結果から、中種法で製造された製パン実施例4−5における製パン性は、比較例4に比べ良好であり、比較例3の従来法の通常の中種法の生地と同等の製パン性を示した。また、生地の分割、成形時の状態、パンの外観、内相、食感及び甘みを含む風味の評価は高く、大きな比容積を示し、従来法の比較例3とほぼ同等の結果を示した。また、保存後の老化の評価においては、比較例3−4に比べ製パン実施例4−5のパンは老化が非常に遅く、比較例3の通常の中種法のパン以上であった。試験例5については砂糖を全く使用していないにも関わらず、製パン性に大きな影響もないうえに、甘みを含む風味については従来法の比較例4を上回っていた。総合的に製パン実施例5の生地、パンは非常に好ましく、従来法の中種法のパンと製パン性は同等の特性を示し、焼成1日後のパンのソフトさ、パンの老化については、それ以上であった。
【0088】
以上の結果から、本実施例の製パン法は、工場での多量生産適性の高い中種法においても十分効果を発揮し、工場でのパンの多量生産に適用できることが明らかになった。これにより、本実施例の製パン法の製パン業界への貢献は、多大であると考えられる。
【0089】
(実施例3)
ノータイム法によってバターロールを製造するために、以下の製パン実験を行った。
【0090】
図3に記載の製パン配合にて、各原料を配合した。より具体的には、製パン実施例6−7及び比較例5−6について、各々のミキサーボールにおいて、小麦粉(市販外麦強力粉)、砂糖、食塩、バター、イースト、全卵、脱脂粉乳、L−アスコルビン酸及び水を、各々
図3に記載の分量にて配合した。製パン実施例6ではさらに糖化生地6(後述)を配合し、製パン実施例7ではさらに糖化生地7(後述)を配合した。
【0091】
砂糖の配合量について、比較例5では一般的な配合量であり、製パン実施例6−7及び比較例6では一般的な配合量よりも少量である。
【0092】
製パン実施例6−7に用いた糖化生地6−7について説明する。なお、以下の通り調製した糖化生地については、85℃で10分間加熱することで酵素を失活させた後、冷水にて常温まで冷却後に製パンに使用した。
【0093】
糖化生地6の調製方法を説明する。小麦粉100重量部、水200重量部、モルトパウダー1.5重量部(α−アミラーゼ剤として市販のモルトパウダーを使用、酵素活性:小麦粉当たり4950mU/g)、プルラナーゼ2重量部(商品名:プルラナーゼ「アマノ」3(天野エンザイム社製)、酵素活性:小麦粉当たり60000mU/g)を攪拌機を用いて均一に混合し、プラスチック製の容器に入れ、水分蒸発が起こらないように容器を十分密閉し、高圧処理装置(まるごとエキス(500mLタイプ)、東洋高圧社製)を用いて100Mpa、65℃、30分間保持して、糖化生地6を調製した。調製後の糖化生地6の糖化度は1383であった。
【0094】
糖化生地7の調製方法を説明する。小麦粉100重量部、もち米粉10重量部、水300重量部、α−アミラーゼ0.005重量部(商品名:スミチームAS(新日本化学工業社製)、酵素活性:小麦粉当たり700mU/g)、β−アミラーゼ0.01重量部(商品名:β−アミラーゼL/R(ナガセケムテックス社製)、酵素活性:小麦粉当たり1500mU/g)、プルラナーゼ2重量部(商品名:プルラナーゼ「アマノ」3(天野エンザイム社製)、酵素活性:小麦粉当たり60000mU/g)を攪拌機を用いて均一に混合し、プラスチック製の容器に入れ水分蒸発が起こらないように容器を十分密閉し、高圧処理装置(まるごとエキス(500mLタイプ)、東洋高圧社製)を用いて50Mpa、70℃、60分間保持して、糖化生地7を調製した。調製後の糖化生地7の糖化度は201であった。
【0095】
製パン実施例6−7各々のミキサーボールに糖化生地を含む各原料を入れて、小型ピンミキサーを用いて捏上温度28℃にて、高速で最適時間ミキシング(ミキシング時のピンミキサーの電力量の変化を指標に電力量ピークを少し過ぎるまで高速でミキシング)を行い、最終生地を得た。また、比較例5−6についても同様にミキシングを行い、ミキシング生地を得た。
【0096】
前述の製パン実施例6−7の最終生地及び比較例5−6のミキシング生地について、以下の条件で発酵、焼成して、製パン実施例6−7及び比較例5−6のバターロールを得た。
フロアタイム:30℃、15分間
分割、丸め:生地量40gずつ手分割し、手丸目を行った。
ベンチタイム:30℃、15分間
成形:バターロール形状に手成形した。
最終発酵:38℃、湿度85%、60分間
焼成:210℃、8分間
【0097】
製パン評価は、8人のパネラーによって、実施例1と同様に、製パン時の生地状態、保存一日後の外観、内相、食感及び甘みを含む風味の評価と見た目のパンのボリュームにより行った。また、保存後のパンの老化の評価として、ポリエチレン袋中で20℃で2日間保存したパンについて硬さの評価を行った。硬さの評価は直径5mmの円形プランジャーを1mm/sのスピードで3つのバターロールの上部の山の部分に突き刺した時の最大応力によって行った。全てのデータは平均の結果で示した。
【0098】
図3の結果から、本実施例のバターロールのようなリッチな配合のパンにおいても、製パン実施例6−7の生地の製パン性は、比較例に比べ非常に良好な結果を示し、生地の分割、成形時の状態、食感及び風味の評価は非常に高く、従来法の比較例5以上の結果を示した。また、保存2日後のパンの硬さの評価においても、比較例のパンに比べ本発明のパンは明らかに柔らかく、従来法の比較例5のパンと比べても明らかにソフトであった。特に製パン実施例6については非常に柔らかく、甘みを含む風味に優れ比較例に対して明らかに良好な結果が得られた。
【0099】
以上の結果から、本実施例の糖化生地を用いた製パン法により、バターロールのようなリッチな配合のパンにおいても、従来法によるパンと同等かそれ以上の品質のパンが製造できることが明らかになった。また、本実施例のパンは、保存中の老化が非常に遅く、焼成後のソフトな食感が長時間維持されることが判った。
【0100】
(実施例4)
直捏法湯種製パン法によって国産小麦粉を用いて山型食パンを製造するために、以下の製パン実験を行った。
【0101】
図4に記載の製パン配合にて、各原料を配合した。より具体的には、砂糖(比較例7のみ)、食塩、ショートニング、イースト、L−アスコルビン酸及び水に加えて、製パン実施例8では国産小麦粉ブレンド粉1(後述)、糖化生地8(後述)及び湯種生地1(後述)を配合し、製パン実施例9では国産小麦粉ブレンド粉2(後述)、糖化生地9(後述)及び湯種生地2(後述)を配合し、比較例7及び比較例8では小麦粉(市販外麦強力粉)及び湯種生地3(後述)を配合した。
【0102】
砂糖の配合について、比較例7では一般的な配合量であり、製パン実施例8−9及び比較例8では砂糖不使用である。
【0103】
製パン実施例8−9に用いた糖化生地8−9について説明する。なお、以下の通り調製した糖化生地については、85℃で10分間加熱することで酵素を失活させた後、冷蔵庫で一晩保存後、製パンに使用した。
【0104】
糖化生地8の調製方法を説明する。きたほなみ粉100重量部、水300重量部、α−アミラーゼ0.5重量部(商品名:ビオザイムA(天野エンザイム社製)、酵素活性:小麦粉当たり200000mU/g)、グルコアミラーゼ2重量部(商品名:スミチーム(新日本化学工業社製)、酵素活性:小麦粉当たり40000mU/g)を攪拌機を用いて均一に混合し、プラスチック製の容器に入れ、加温して70℃±1℃とした。この状態で水分蒸発が起こらないように容器を十分密閉し、40分間保持することで糖化生地8を調製した。調製後の糖化生地8の糖化度は954であった。
【0105】
糖化生地9の調製方法を説明する。キタノカオリ粉100重量部、水400重量部をプラスチック製の容器に入れ、加温して75℃±1℃とした。この状態で水分蒸発が起こらないように容器を十分密閉し、20分間保持した。その後、常温まで冷却した後、水50重量部、α−アミラーゼ0.25重量部(商品名:ビオザイムA(天野エンザイム社製)、酵素活性:小麦粉当たり100000mU/g)、グルコアミラーゼ1重量部(商品名:スミチーム(新日本化学工業社製)、酵素活性:小麦粉当たり20000mU/g)、プルラナーゼ0.01重量部(商品名:プルラナーゼ「アマノ」3(天野エンザイム社製)、酵素活性:小麦粉当たり300mU/g)を加え攪拌機を用いて均一に混合し、再度密閉後、高圧処理装置(実施例3と同様)にて10Mpa、60℃、10分間保持して糖化生地9を調製した。調製後の糖化生地9の糖化度は1030であった。
【0106】
湯種生地1−3について説明する。なお、以下の通り調製した湯種生地については、低温保存(冷蔵庫で一晩保存)後、製パンに使用した。
【0107】
湯種生地1の調製方法を説明する。加熱可能な容器に攪拌機を入れ、ゆめちから粉ときたほなみ粉のブレンド粉(7:3)100重量部を入れ、次に、温水300重量部を添加し、攪拌機を用いて均一に混合しながら昇温し、80℃±1℃とした。この状態で水分蒸発が起こらないように容器を十分密閉し、15分間保持して湯種生地1を調製した。
【0108】
湯種生地2の調製方法を説明する。ゆめちから粉とキタノカオリ粉のブレンド粉(7:3)を用いた以外は湯種生地1と同条件で調製した。
【0109】
湯種生地3の調製方法を説明する。市販強力粉100重量部をミキサーボールに入れ、98℃の熱水100重量部をミキサーで混捏しながら徐々に添加し、3分間混捏して調製した。
【0110】
製パン実施例8−9各々のミキサーボールに糖化生地を含む各原料を入れて、小型ピンミキサーを用いて捏上温度27℃にて、高速で最適時間ミキシング(ミキシング時のピンミキサーの電力量の変化を指標に電力量ピークを少し過ぎるまで高速でミキシング)を行い、最終生地を得た。また、比較例7−8についても同様にミキシングを行い、ミキシング生地を得た。
【0111】
前述の製パン実施例8−9の最終生地及び比較例7−8のミキシング生地について、以下の条件で発酵、焼成して、製パン実施例8−9及び比較例7−8の山型食パンを得た。
フロアタイム:30℃、45分間
分割、丸め:生地量100gずつ手分割し、手丸目を行った。
ベンチタイム:30℃、20分間
成形:モルダーにて成形し、パン型に入れた。
最終発酵:38℃、湿度85%、60分間
焼成:180℃、25分間
【0112】
製パン評価は、実施例1と同様に行った。
図4の結果から、糖化生地を使用した湯種製パン法で製造された製パン実施例8−9(特に、製パン実施例9)の製パン性は、比較例の生地に比べ非常に良好であり、比較例8の通常の湯種製パン法の生地に比べても明らかに良好な結果を示した。また、生地の分割、成形時の状態、パンの外観、食感及び甘みを含む風味の評価は非常に高く、明らかに大きな比容積を示し、比較例8以上の結果を示した。また、保存後の老化の評価においても、比較例に比べ本実施例のパンは明らかに柔らかく、比較例8の通常の湯種製パン法のパンと比べても明らかに良好な結果であった。特に、総合的に製パン実施例9のパンは、比較例8の従来法の湯種製パン法のパンより明らかに良好な特性を示した。また、製パン実施例8−9では砂糖不使用にもかかわらず、砂糖を使用した比較例7よりも、甘みを含む風味が優れていた。
【0113】
以上の結果から、本実施例の糖化生地を用いた湯種製パン法に、やや低アミロースの澱粉を含有する国産小麦粉を用いることで、湯種製パン法のパンより飛躍的良好な品質のパンが製造できることが明らかになった。また、本発明のパンは、生地の糖化処理、多量の水を用いた湯種生地の添加、やや低アミロースの澱粉を含有する国産小麦粉の使用の相乗効果により、比較例に比べて明らかに生地の製パン性、パンの品質の向上が見られるだけでなく、得られたパンが非常にソフトで、保存経時のパンの老化が遅くなることが明らかになり、焼成後のソフトなパンの食感が非常に長い時間維持されることが判った。現在、日本国内ではパン適性の高い優れたパン用小麦品種が続々と育成され、それらの普及も着実に進んでおり、国内のパン用小麦の生産量も近年急激に増加している。これらの育成品種のほとんどが、Wx−B1タンパク質を欠失しているアミロース含量がやや低い澱粉を含有する小麦品種である。本実施例の結果は、これらの品種の小麦粉を用いて本実施例の技術で湯種パンを製造した場合、これらの品種の良い特性が引き出され、従来の湯種法によるパンより遙かに優れたパンが製造できることを示しており、今後増産される国内のパン用小麦の需要拡大に、本実施例の技術が多大な貢献をすることが期待できる。