(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、顔面の比較的狭い領域に光を照射しているため、顔面の表面での反射光もほぼ同一の方向となる。従って、第1偏光フィルタの偏光方向と第2偏光フィルタの偏光方向を上述した関係に設定することにより、表面反射光のほぼ全てを除去することができる。しかしながら、この方法で顔面の全体に含まれる色素成分の量や分布を測定する場合は、顔面における光の照射領域を順に移動させながら、その反射光を測定する必要があり、時間がかかる。
【0006】
そこでこのような場合、顔面全体もしくは顔面の複数箇所に光を照射し、そのときに発生する反射光をまとめて測定することが考えられるが、顔面のように平面ではない表面を有する物体に光を照射すると、光の入射角度が様々となるため、表面反射光も様々な方向に進行することになる。また、表面反射の方向が異なると、その振動方向も異なる。従って、この方法では、人の顔と受光手段の間に1個の第2偏光フィルタを配置しただけでは、表面反射光を十分に取り除くことができないという問題があった。
なお、ここでは表面反射光を除去する場合について説明したが、表面反射光を取り出す場合も同様である。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、平面ではない表面を有する対象物の広い範囲に光を照射した場合に生じる反射光を検出する際に表面反射光成分をまとめて取り出したり、まとめて取り除くことができる反射光検出装置及び反射光検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る反射光検出装置は、
a) 全体として平面ではない表面を有する対象物の第1領域に、第1方向から所定の偏光方向の第1測定光を入射させる第1照明装置と、
b) 前記第1測定光が前記第1領域において表面反射された光である第1表面反射光の少なくとも一部が入射する位置に配置された偏光光学系と、
c) 前記対象物の表面の前記第1領域とは異なる領域である第2領域に、第2方向から、前記第1測定光と偏光方向が同じである第2測定光を入射させる第2照明装置と、
d) 前記第2測定光が前記第2領域において表面反射された光である第2表面反射光の少なくとも一部が前記偏光光学系に入射するように、前記第2測定光の光軸の方向を調整する調整手段と、
e) 前記偏光光学系を通過した光を検出する検出器と
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するために成された本発明に係る反射光検出方法は、
a) 全体として平面ではない表面を有する対象物の第1領域に、第1方向から所定の偏光方向の第1測定光を入射させ、
b) 前記第1測定光が前記第1領域において表面反射された光である第1表面反射光の少なくとも一部が入射する位置に偏光光学系を配置し、
c) 前記対象物の表面の前記第1領域とは異なる領域である第2領域に、第2方向から、前記第1測定光と偏光方向が同じである第2測定光を入射させ、
d) 前記第2測定光が前記第2領域において表面反射された光である第2表面反射光の少なくとも一部が前記偏光光学系に入射するように、前記第2測定光の光軸の方向
を調整し、
e) 前記偏光光学系を通過した光を検出する
ことを特徴とする。
【0010】
第1領域及び第2領域は、必ずしも平面である必要はないが、できるだけ凹凸が少ない平坦な面であることが好ましく、一様に連続した面であればなお良い。「一様に連続した面」とは、例えば流線型の車体の側面のように、第1領域内及び第2領域内の各部における接線の傾きが該領域内の全体で大きく変化しないような滑らかな曲面をいう。また、例えば多面体状の対象物の場合は、辺部や頂部が含まれないように第1領域及び第2領域を設定すると良い。
【0011】
また、偏光光学系とは、偏光板や偏光フィルタ等、所定の偏光方向の光のみを通過させる光学部材を含む光学系をいう。
【0012】
対象物に光が入射すると、その光の一部は対象物の表面で反射され、残りは試料の内部に進入して拡散反射される。このとき、対象物に入射する光が所定の偏光方向の光であるとき、対象物の表面における反射では、その偏光状態が維持され、内部反射光では偏光状態が崩れて非偏光となる。上記照明システム及び照明方法においては、対象物の表面の第1領域に入射した第1測定光の表面反射光(第1表面反射光)の少なくとも一部、及び第2領域に入射した第2測定光の表面反射光(第2表面反射光)の少なくとも一部は、いずれも共通の偏光光学系に入射する。また、第1領域に入射した第1測定光が対象物の内部に進入し、内部反射された光(以下、「第1内部反射光」という)、及び第2領域に入射した第2測定光が対象物の内部に進入し、内部反射された光(以下、「第2内部反射光」という)は様々な方向に放射されるため、これらの一部も第1及び第2表面反射光と同様に偏光光学系に入射する。このとき、第1測定光と第2測定光の偏光方向が同じであるため、第1表面反射光と第2表面反射光の偏光方向も同じになる。従って、偏光光学系が、第1表面反射光及び第2表面反射光の偏光方向と同じ偏光軸の光学部材、あるいは、第1表面反射光及び第2表面反射光の偏光方向と直交する偏光軸の光学部材、さらにはその中間の偏光軸の光学部材を含むように構成することにより、該偏光光学系を通過して検出器に向かう第1及び第2表面反射光、並びに第1及び第2内部反射光の量を一括して調整することができる。
【0013】
なお、偏光光学系は、偏光フィルタの他、第1表面反射光又は第2表面反射光の多くが前記光学部材に向かうように第1表面反射光又は第2表面反射光の進行方向を変更するための1枚ないし複数枚の反射ミラー、第1表面反射光又は第2表面反射光を偏光フィルタ付近に集光させるためのコリメータレンズ等を含むように構成しても良い。
【0014】
上記反射光検出装置及び反射光検出方法においては、前記第1照明装置及び前記第2照明装置を、前記対象物に対してそれぞれ相対的に移動可能に構成することができる。このような構成により、対象物の表面の適宜の箇所に第1測定光及び第2測定光を入射させることができる。
【0015】
さらに、本発明においては、
好ましくは前記検出器が、
前記偏光光学系を通過した光を集光する集光光学系と、
前記集光光学系によって集光された光を平行光に変換する平行光学系と、
前記平行光を第1分割光と第2分割光に分割し、該第1分割光と該第2分割光の間に連続的に変化する光路長差を付与する光路長差付与手段と、
連続的に変化する光路長差が付与された前記第1分割光及び前記第2分割光を結像面上に集光させて干渉光を形成する結像光学系と、
前記結像面上に配置された複数の画素を有する、前記干渉光の強度を検出する干渉光検出部と、
前記干渉光検出部で検出された前記干渉光の光強度に基づき、前記被測定物に含まれる成分のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部と
を備える。
【0016】
上記構成においては、偏光光学系を通過した光は集光光学系に集光された後、平行光学系によって平行光束とされる。そして、光路長差付与手段によって第1分割光と第2分割光に分割された後、結像光学系によって結像面上に集光士、干渉光を形成する。このとき、光路長差付与手段によって第1分割光と第2分割光の間に連続的に変化する光路長差が付与されるため、この光路長差の変化に応じて結像面上に形成される干渉光の強度が変化する。従って、干渉光の強度を検出することにより、光路長差と干渉光の強度の関係、つまりインターフェログラムが求められるため、このインターフェログラムをフーリエ変換することにより前記偏光光学系を通過した光のスペクトル(分光特性)を取得することができる。従って、偏光光学系として、第1及び第2表面反射光と偏光軸が同じ偏光板を採用することにより、対象物の表面の分光特性を取得することができ、第1及び第2表面反射光の偏光軸と直交する偏光軸の偏光板を採用することにより、対象物の内部成分の分光特性を取得することができる。
【0017】
また、第1照明装置は、ブリュースター角で前記第1領域に第1測定光を入射させることが好ましい。ここで、第1領域が曲面であるときは該第1領域内のいずれかにおいて第1測定光がブリュースター角で入射していれば良い。
【0018】
表面反射では、入射面(対象物表面の法線と入射光を含む面)に対して垂直な方向に振動する直線偏光成分(S偏光成分)と入射面に対して平行な方向に振動する直線偏光成分(P偏光成分)が、それぞれ異なる反射率で反射されることが知られている。具体的には、P偏光成分の反射率はS偏光成分の反射率よりも小さく、特にP偏光成分は反射率がゼロになる入射角が存在し、このときの入射角はブリュースター角と呼ばれている。従って、上記構成においては、第1測定光がブリュースター角で第1領域に入射するため、入射面との関係でP偏光となる成分が第1表面反射光に含まれなくなり、偏光光学系に向かう第1表面反射光の量を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、全体として平面ではない表面を有する対象物の複数の領域に対して複数の方向から測定光を入射させることにより生じる表面反射光の振動方向(偏光状態)を揃えて1個の偏光光学系を通過させるため、該偏光光学系を通過する光の多くを表面反射光にしたり、内部反射光にしたりすることができる。このため、対象物の表面による反射光(表面反射光及び内部反射光)を一括して検出器で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る反射光検出装置の概略的な全体構成を示すブロック図。
【
図3】対象物と照明装置及び分光測定装置の位置関係を示す図。
【
図4】第1照明装置の偏光板の傾きを変化させた例(a)、第1及び第2照明装置の偏光板の傾きを変化させた例(b)を示す図。
【
図5A】第1偏光板と受光側偏光板の偏光方向がオープンニコルにある状態を示す図。
【
図5B】第1偏光板と受光側偏光板の偏光方向がクロスニコルにある状態を示す図。
【
図5C】第1偏光板をX軸周りに回転させたときの偏光板と受光側偏光板の偏光方向の関係を説明するための図。
【
図5D】第1偏光板をX軸周りに回転させたときの光源、対象物、カメラの位置関係、及び偏光板と受光側偏光板の偏光方向の関係を説明するための図。
【
図5E】第1偏光板をZ軸周りに回転させたときの光源、対象物、カメラの位置関係、及び第1偏光板と受光側偏光板の偏光方向の関係を説明するための図。
【
図5F】受光側偏光板をZ軸周りに回転させたときの光源、対象物、カメラの位置関係、及び第1偏光板と受光側偏光板の偏光方向の関係を説明するための図。
【
図6】赤色塗料で塗装した金属板に2個の白色LEDから光を照射したときの分光特性を測定する実験系の概略図。
【
図7】2個の白色LEDから光を照射したときの金属板の可視画像(a)、CCD画像(b)。
【
図8】第1偏光板と受光側偏光板の偏光方向がクロスニコルの関係にあるときの反射光の分光特性。
【
図9】第1偏光板と受光側偏光板の偏光方向が15°ずれているときの反射光の分光特性。
【
図10】赤色塗料で塗装したミニチュアカーに2個の白色LEDから光を照射したときの分光特性。
【
図11】第1偏光板と受光側偏光板の偏光方向がクロスニコルの関係にあるときのCCD画像(a)、オープンニコルの関係にあるときのCCD画像(b)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る反射光検出装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
[反射光検出装置の構成]
図1は本実施形態に係る反射光検出装置のブロック図である。また、
図2は該反射光検出装置における分光測定装置の概略的な全体構成図である。反射光検出装置は、照明システム100と分光測定装置200とこれらの動作を制御する制御装置300から構成されている。
【0022】
[照明システムの構成]
照明システム100は、1個の第1照明装置11と1ないし複数個の第2照明装置12と受光側偏光板13を備えている。受光側偏光板13は本発明の偏光光学系に相当する。詳しくは後述するように、受光側偏光板13は、第1及び第2照明装置11,12から対象物Sに入射した光の反射光(表面反射光、内部反射光)の少なくとも一部が入射する位置に配置されている。受光側偏光板13の後段に分光測定装置200が配置されている。
【0023】
第1照明装置11及び第2照明装置12の位置や第2照明装置12の数は、対象物Sの大きさや形状に応じて適宜設定される。例えば対象物が人の顔の場合は、第1照明装置11及び第2照明装置12並びに受光側偏光板13はいずれも対象物の前方に配置される。また、第2照明装置12は複数設けても良いが、1個でも十分である。一方、対象物が自動車の車体のような横長の立体形状の物体の場合は、第1照明装置11は対象物の上方に配置され、受光側偏光板13は対象物の前方又は後方に配置される。受光側偏光板13を対象物の前方に配置する場合は、対象物の後方から光を照射してもその表面反射光を受光側偏光板13に入射させることは難しいため、第2照明装置12は対象物の左右の側方又は上下にそれぞれ1ないし複数個配置される。
【0024】
第1照明装置11は、第1光源111と、該光源111と対象物の間に配置され、前記第1光源111から出射した光が入射する第1偏光板112と、第1光源111から出射される光の光軸を調整する第1光軸調整機構113と、第1偏光板112の偏光方向を調整する第1偏光調整機構114を備えている。この場合、第1光源111から出射され、第1偏光板112を透過した光が第1測定光となる。同様に、第2照明装置12は、第2光源121と、該第2光源121から出射した光が入射する第2偏光板122と、第2光源121から出射する光の光軸を調整する第2光軸調整機構123と、第2偏光板122の偏光方向を調整する第2偏光調整機構124を備えている。そして、第2光源121から出射され、第2偏光板122を透過した光が第2測定光となる。
【0025】
第1光源111及び第2光源121には例えば発光ダイオード(LED)が用いられる。第1光源111及び第2光源121が出射する波長範囲は対象物の種類によって設定する。例えば、対象物が人の顔面の場合は、皮膚の透過性に優れた赤色の波長範囲を含むLEDが第1光源111及び第2光源121として用いられる。
【0026】
第1光源111及び第2光源121は、例えばピボット駆動可能な保持部に保持されており、該保持部のピボット角を変更することにより出射光の光軸、すなわち、第1及び第2測定光の光軸の方向を変更することができる。ピボット角の変更は手動で行っても良く、自動で行うようにしても良い。自動で行う場合の構成として、例えば次のような構成が考えられる。
受光側偏光板13の近傍に光センサを配置し、該光センサの検出結果に基づき、受光側偏光板13に入射する第1及び第2測定光の強度が最大となるように保持部のピボット角を調整するとともに保持部と対象物Sと受光側偏光板13の配置を調整する調整機構を設ける。また、第1光源111及び第2光源121の設置位置からの光が対象物Sに対してブリュースター角で入射したときの第1及び第2測定光の強度が最も大きくなるように、あるいは強度が最も小さくなるように、さらには、強度が所定の設定値となるように、保持部のピボット角を調整するとともに保持部と対象物Sと受光機(後述する分光測定装置200のCCDカメラ204)の配置を調整すると良い。第1光源111及び第2光源121からの光が対象物Sに対してブリュースター角で入射する箇所は、第1光源111及び第2光源121と対象物Sの位置が決まればある程度特定することができる。
手動で光軸を変更する構成においては、第1光源111の保持部及び第2光源121の保持部がそれぞれ第1光軸調整機構113及び第2光軸調整機構123となる。また、自動で光軸を変更する構成では、光センサ、第1光源111の保持部、及び駆動機構が第1光軸調整機構113となり、光センサ、第2光源121、及び駆動機構が第2光軸調整機構123となる。
【0027】
[分光測定装置の構成]
図2に示すように、分光測定装置200は、第1測定光及び第2測定光の対象物による反射光(表面反射光及び内部反射光)であって受光側偏光板13を透過した光を集光し、平行光束にする光学系201、位相シフタ202、結像レンズ203、該結像レンズ203の結像面上に位置する受光面を有するCCDカメラ204、CCDカメラ204の検出信号の処理や位相シフタ202の駆動を制御する制御部205を備えている。光学系201は、集光レンズ2011とコリメータレンズ2012から構成されており、これらレンズはそれぞれ本発明の集光光学系及び平行光学系として機能する。位相シフタ202は、固定ミラー部210及び可動ミラー部211並びに可動ミラー部211を矢印方向に移動させる駆動機構212を備えている。
【0028】
CCDカメラ204は2次元配置された複数の受光素
子を備えている。制御部205は、CCDカメラ204(受光素
子)の検出信号からインターフェログラムを求め、このインターフェログラムを数学的にフーリエ変換することにより前記受光側偏光板13を透過した光の波長毎の相対強度である分光特性(スペクトル)を求める処理部206、駆動機構212の動作状態から、位相シフタ202を構成する固定ミラー部210及び可動ミラー部211の位置関係を判別する判別部207、処理部206の処理結果や判別部207の判別結果等をディスプレイ、プリンタ等の出力装置に出力する出力部208を備える。
【0029】
[反射光検出装置の動作]
次に、反射光検出装置の動作について
図3及び
図4を参照して説明する。ここでは、説明を簡単にするため、対象物Sは、上面及び左右側面がいずれもほぼ平坦な面からなる、先細状の左右対称な立体形状であることとし、長方形の板状の台400の上に載置された対象物Sを取り囲むように1個の第1照明装置11と2個の照明装置12が配置されていることとする(
図3参照)。また、以下の説明では、台400の上面が水平面上にあることとし、台400の上面の四つの辺のうち対向する二辺に平行な軸をX軸、残りの対向する二辺に平行な軸をY軸、X軸及びY軸と直交する軸(鉛直軸)をZ軸とする。さらに、
図3(a)における紙面左側を前、右側を後ろとする。
【0030】
第1照明装置11は対象物Sの上方に、第2照明装置12は対象物Sの左右の側方にそれぞれ配置されている。第1照明装置11の第1偏光板112はXY平面と平行に配置され、第1光源111は第1偏光板112よりも上方に配置されている。また、2個の第2照明装置の一方の偏光板122はXZ平面と平行になるように台400の左辺の上に立設され、他方の偏光板122はXZ平面と平行になるように台400の右辺の上に立設されている。また、第2光源121は、いずれも左右の第2偏光板122よりも外方に配置されている。そしてまた、対象物Sの前方には受光側偏光板13及び分光測定装置200が配置されている。
【0031】
なお、対象物Sの後方には遮光板401が配置されている。これにより、対象物Sは、台400、第1偏光板112、第2偏光板122及び遮光板401によって構成される前方が開口する矩形箱状の空間に位置することとなり、対象物Sに入射した第1測定光及び第2測定光の反射光は該空間の開口を通してのみ受光側偏光板13に向かう。
【0032】
上記構成において、まず、第1偏光板112の偏光方向(偏光軸)がX軸方向となるように、第2偏光板122の偏光方向がZ軸方向となるように設定する。また、受光側偏光板13として偏光方向がY軸方向となる偏光板を採用する。これにより、第1偏光板112と第2偏光板122、第1偏光板112と受光側偏光板13、第2偏光板122と受光側偏光板13が、いずれも偏光方向が直交する位置関係(クロスニコル)となる。
【0033】
次に、第1光源111から出射される光の光軸の向き、及び第2光源
121から出射される光の光軸の向きを光軸調整機構113、123によって調整し、第1測定光及び第2測定光の両方が受光側偏光板13に入射するように設定する。ここでは、第1光源111から出射される光の光軸はXZ平面と平行な向きに設定し、第2光源121から出射される光の光軸はXY平面と平行な向きに設定する。
【0034】
続いて、第1光源111から光を出射させると、そのうちXZ平面と平行な方向に振動する成分が第1偏光板112を透過し、第1測定光として対象物Sの上面の所定の領域(第1領域)に入射した後、該第1領域で反射されて受光側偏光板13に向かう。このとき、第1測定光の入射面(第1測定光の光軸と第1領域における法線を含む面)とXZ平面は平行となるため第1測定光はP偏光となり、第1測定光の表面反射光(第1表面反射光)もP偏光となる。
【0035】
一方、第2光源121から光を出射させると、そのうちYZ平面と平行な方向に振動する成分が第2偏光板122を透過し、第2測定光として対象物Sの左側面及び右側面の所定の領域(第2領域)に入射した後、該第2領域で反射されて受光側偏光板13に向かう。このとき、第2測定光の入射面(第2測定光の光軸と第2領域における法線を含む面)とYZ平面は直交するため、入射面との関係では第2測定光はS偏光となるが、第2領域で表面反射されて受光側偏光板13に向かうときの振動方向は第1表面反射光と同じになる。従って、第1表面反射光及び第2表面反射光はいずれも受光側偏光板13を通過する際に減衰され、第1測定光による内部反射光及び第2測定光による内部反射光のみが分光測定装置200に入射する。
【0036】
なお、
図3に示す例では、第1偏光板112、第2偏光板122、及び受光側偏光板13を互いに直交するように配置したが、
図4(a)、(b)に示すように、直交していなくても良い。また、第1及び第2偏光板112、122の偏光方向が変わらなければ、適宜傾けてもよい。例えば
図4(a)は、
図3に示す状態から第1偏光板112をY軸周りに回転させた例、
図4(b)は
図3に示す状態から第1偏光板112及び左側の第2偏光板122をそれぞれX軸周りに回転させ、右側の第2偏光板122をZ軸周りに回転させた例を示す。つまり、第1偏光板112は、X軸周り、Y軸周りに回転しても偏光方向は変化せず、第2偏光板122はX軸周り、Z軸周りに回転しても偏光方向は変化しない。つまり、これらの方向には自由に回転させることができる。一方、第1偏光板112をZ軸周りに回転させると、また、第2偏光板122をY軸周りに回転させると、偏光方向が変化するため、これらの方向の回転自由度はない。
【0037】
以上の反射光検出装置の動作について、
図5A〜
図5Fを使って更に詳しく説明する。
図5A〜
図5Fは、第1偏光板と受光側偏光板の偏光方向の関係を示す図で、図中、矢印が各偏光板の偏光方向(偏光軸の方向)を示す。
図5A及び
図5Bは、互いに平行に配置された第1偏光板と受光側偏光板がオープンニコル(偏光方向が平行な位置関係)、クロスニコル(偏光方向が直交する位置関係)にある状態を示している。一方、
図5Cは、
図5Bに示す状態から第1偏光板をX軸周りに回転させた状態を示す。この状態で、
図5Dに示すように第1偏光板の上方の光源から対象物に向けて光を出射し、受光側偏光板(Z軸方向)に表面反射させる場合は、第1偏光板の傾きに関係なく、第1偏光板の偏光方向と受光側偏光板の偏光方向の関係は変化しない。また、
図5Eは、
図5Bに示す状態から第1偏光板を
X軸周りに回転させ、さらにZ軸周りに回転させた状態を示す。この状態で、第1偏光板の上方の光源から対象物に向けて光を出射し、受光側偏光板(Z軸方向)に表面反射させる場合も、第1偏光板の傾きに関係なく、第1偏光板の偏光方向と受光側偏光板の偏光方向の関係は変化しない。これは、第1偏光板と受光側偏光板がオープンニコル、クロスニコルのいずれの関係であっても同じである。
【0038】
これに対して、
図5Fは、
図5Bに示す状態から第1偏光板を
X軸周りに回転させ、
受光側偏光板をZ軸周りに回転させた状態を示す。この状態で、第1偏光板の上方の光源から対象物に向けて光を出射し、受光側偏光板(Z軸方向)に表面反射させる場合は、第1偏光板の偏光方向と受光側偏光板の偏光方向の関係が崩れてしまう。これは、受光側偏光板をY軸周りに回転させた場合も同様である。また、第1偏光板と光学素子がオープンニコル、クロスニコルのいずれの関係であっても同じである。
ただし、図5Bに示す状態から第1偏光板をX軸周りに回転させた状態から、さらに、第1偏光板をY軸周りに回転、もしくは受光側偏光板をZ軸周りに回転
(図5Fの状態)させることにより、第1偏光板を透過した光が受光側偏光板を透過する量を調整することができる(
図5F参照)。
【0039】
[測定結果1]
次に、具体的な分光特性の測定結果を示す。
ここでは、表面に赤色の塗料が塗装された断面L字状の金属板(対象物S)の異なる2面(A面及びB面)に対して2個の白色LED(第1光源111及び第2光源
121、いずれも波長帯域は400〜800nm)から光を照射したときに該金属板で生じる反射光の分光特性を測定した。
図6に2個の白色LEDと第1及び第2偏光板112及び122、金属板、受光側偏光板13の配置を示す。また、
図6には示していないが、受光側偏光板13を通過した光が入射する位置に上述の分光測定装置200が配置されている。
【0040】
図6に示すように、2個の白色LEDの出射光は、それぞれ金属板の直交する2つの面(A面、B面)に照射される。各白色LEDと金属板との間には偏光板(第1偏光板112、第2偏光板122)が配置されており、上側の白色LED(第1光源111)の出射光は偏光軸が矢印D1で示す方向の偏光となって金属板のA面に入射し、下側の白色LED(第2光源
121)の出射光は偏光軸が矢印D2で示す方向の偏光となって金属板のB面に入射する。また、受光側偏光板13は、2個の白色LEDの出射光の金属板における表面反射光の少なくとも一部が入射する位置に配置されている。
【0041】
受光側偏光板13の偏光軸の方向が
図6において矢印D3で示す方向であるとき、すなわち、受光側偏光板13と白色LED側の偏光板112、122の偏光軸がオープンニコルの関係にあるとき、金属板の可視画像、及び金属板の分光測定装置200のCCDカメラ204による検出画像(「CCD画像」という)は
図7(a)及び(b)に示すようになる。これらの図から、A面及びB面ともに同じように白色LEDの出射光が照射されていることが分かる。
【0042】
また、受光側偏光板13と第1及び第2偏光板112、122がクロスニコルの関係にあるときの分光測定装置200の測定結果(スペクトル)を
図8に示す。
図8には、白色LED(第1光源111及び第2光源
121)の出射光がそのまま受光側偏光板13に入射した光(白色LED)、白色LED(第1光源111)の出射光が第1偏光板112を通過し、A面で反射された後、受光側偏光板13に入射した光、白色LED(第2光源
121)の出射光が第2偏光板122を通過し、B面で反射された後、受光側偏光板13に入射した光のスペクトルをそれぞれ示している。
【0043】
図8に示すように、白色LEDの出射光のスペクトルは、波長450nm付近と波長550nm付近にそれぞれピークが存在する。これに対して、A面からの光のスペクトル、及びB面からの光のスペクトルには、白色LEDの出射光スペクトルのピーク成分が存在しない。これは、A面、B面における表面反射光の偏光方向と受光側偏光板13の偏光軸とが直交するため、各面における表面反射光は受光側偏光板13を通過せず、非偏光である内部反射光の一部のみが受光側偏光板13を通過するからである。従って、A面及びB面からの光のスペクトルはそれぞれ各面における内部反射光のスペクトルを表す。A面及びB面からの各光のスペクトルに見られるピーク波長(
580nm〜650nm)はA面及びB面の塗料の色(赤色)の波長に対応する。このことから、本実施形態に係る反射光検出装置において、受光側偏光板13と第1及び第2偏光板112、122をクロスニコルの関係にすることにより、A面及びB面の塗料成分の分光特性を得られることが分かる。
【0044】
図9は、受光側偏光板13の偏光軸の方向が
図6において矢印D4で示す方向であるとき、すなわち、受光側偏光板13の偏光軸の方向と第1及び第2偏光板112、122の偏光軸の方向が15°ずれているときの分光測定装置200の測定結果(スペクトル)を示す。
図8と同様、
図9には、白色LEDの出射光がそのまま受光側偏光板13に入射した光(白色LED)、A面で反射された後、受光側偏光板13に入射した光、B面で反射された後、受光側偏光板13に入射した光のスペクトルがそれぞれ示されている。
【0045】
図8と異なり、
図9に示すA面からの光のスペクトル、及びB面からの光のスペクトルには、白色LEDの出射光スペクトルの2つのピークに近いピーク成分が存在する。これは、A面、B面における表面反射光の偏光方向と受光側偏光板13の偏光軸が直交する状態から15°ずれた状態にあり、各面における表面反射光の一部も、非偏光の内部反射光の一部とともに受光側偏光板13を通過するためである。従って、A面及びB面からの光のスペクトルはそれぞれ各面における表面反射光と内部反射光を含む光のスペクトルを表す。
【0046】
受光側偏光板13と第1及び第2偏光板112、122がオープンニコルの関係にあるときも、A面及びB面からの表面反射光と内部反射光の両方が受光側偏光板13を通過するが、この場合は表面反射光の光量の方が内部反射光の光量よりも圧倒的に多く、
表面反射光の強度に内部反射光の強度が埋もれてしまうため、内部反射光の分光特性を求めることが難しい。これに対して、受光側偏光板13と第1及び第2偏光板112、122の偏光軸の角度を適宜、調整することにより、A面及びB面の表面反射光と内部反射光の両方の分光特性を同時に求めることができる。
【0047】
なお、
図9において、A面からの光のスペクトルのピーク強度がB面からの光のスペクトルのピーク強度よりも大きい理由は、A面からの表面反射光の方がB面からの表面反射光よりも、受光側偏光板13を通過する光量が多いためである。
【0048】
以上より、第1及び第2偏光板112、122の偏光軸と受光側偏光板13の偏光軸の関係を調整することにより、分光測定装置200に入射する表面反射光と内部反射光の光量を調整できることが分かる。
【0049】
[測定結果2]
次に、金属板に代えて、表面に赤色の塗料が塗装されたミニチュアカーの車体に2個の白色LEDからの光を照射したときの反射光の分光特性を求めた。使用した装置の構成は測定結果1と同じである。その結果を
図10に示す。
図10は、受光側偏光板13と第1及び第2偏光板112、122がクロスニコルの関係、オープンニコルの関係にあるときの分光特性、及び光源の分光特性を示す。また、
図11(a)、(b)はクロスニコル及びオープンニコルのときのCCD画像を示す。
【0050】
これら
図10及び
図11からも、本実施形態に係る反射光検出装置では、受光側偏光板13と第1及び第2偏光板112、122がクロスニコルの関係にあるときは内部反射光の分光特性を、オープンニコルの関係にあるときは表面反射光の分光特性を検出できることが分かる。