(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、添付図面を参照しながら各実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る監視システムのシステム構成図である。
この監視システム1は、工場2に設けられたスチームトラップ3を監視するシステムであり、スチームトラップ3の異常を監視する監視ユニット4を有する。
工場2には複数の配管5が敷設されており、その各々にスチームトラップ3と放出弁16とが設けられる。配管5の機能は特に限定されないが、例えば熱交換器で使用された水蒸気Vが流れる蒸気配管を配管5として使用し得る。また、工場2としては、例えば製紙工場、製鉄工場、及び半導体工場等がある。
【0013】
スチームトラップ3は、配管5を流れる水蒸気Vから液体の水を分離し、その水をドレイン水Wとして排出する。また、放出弁16は、スチームトラップ3に異常が発生して配管5にドレイン水Wが溜まったときに、そのドレイン水Wを配管5の外部に放出する電磁弁である。そして、スチームトラップ3には、当該スチームトラップ3の温度を含む温度情報を監視ユニット4に無線送信する送信ユニット6が設けられる。
【0014】
無線送信の規格は特に限定されない。例えば、ZIGBEE(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、及びiBeacon(登録商標)等の近距離無線通信の規格に従って送信ユニット6が無線送信を行ってもよい。更に、近距離無線通信に代えて無線LAN(Local Area Network)を採用してもよい。
一方、監視ユニット4は、受信部7、判断部8、報知部9、及び弁制御部17を備える。
このうち、受信部7は、送信ユニット6から無線送信された温度情報を受信アンテナで受信し、当該温度情報を判断部8に通知する。
【0015】
判断部8は、スチームトラップ3における異常の有無を温度情報に基づいて判断し、その判断結果を報知部9に通知する。判断部8のハードウェア構成は特に限定されない。例えば、CPU(Central Processor Unit)等のプロセッサとメモリとが協同してプログラムを実行することにより判断部8を実現することができる。
【0016】
報知部9は、異常があるとの判断結果を判断部8から受けた場合に、スチームトラップ3に異常がある旨を画面や音によって報知する。一例として、液晶ディスプレイやスピーカを報知部9として使用し得る。また、報知部9としてスマートフォンやPHS(Personal Handy-Phone System)等の携帯端末を使用してもよい。この場合、判断部8は、異常があるとの判断結果をこれらの携帯端末に無線で送信する。
【0017】
なお、この例のように複数のスチームトラップ3がある場合には、異常があるスチームトラップ3を識別する識別子を判断部8が報知部9に通知し、複数のスチームトラップ3の中で異常があるもののみを報知部9が報知してもよい。そのような識別子としては、例えば、監視システム1の管理者がスチームトラップ3ごとに付与した識別番号がある。
また、弁制御部17は、判断部8によりスチームトラップ3に異常があると判断されたときに、放出弁16を制御することにより、放出弁16を開いて液体の水Wを配管5の外部に放出する。
図2は、スチームトラップ3の上面図である。
【0018】
スチームトラップ3は、腐食に強いステンレス等の金属から形成されたノズル式スチームトラップであり、配管5(
図1参照)に接続されて水蒸気Vが供給される供給部10と、水蒸気Vに含まれる液体の水Wを排出する排出部11とを有する。
そして、供給部10には水蒸気Vが流れる供給流路3aが設けられており、排出部11には水Wが流れる排出流路3bが設けられる。
図3は、
図2のI−I線に沿ったスチームトラップ3の断面図である。
【0019】
図3に示すように、スチームトラップ3の内部には、前述の供給流路3aに繋がる空洞3cが設けられる。空洞3cは、鉛直上方に伸びた円筒状であって、その下端は第1のエンドキャップ13で閉塞される。
一方、空洞3cの上端には、蒸気Vに含まれる錆等の異物を濾過するためのストレーナ12が着脱自在に設けられる。
【0020】
ストレーナ12の形状や材料は特に限定されない。この例では、直径が0.1mm程度の複数の孔が形成された金属メッシュをストレーナ12として採用する。
【0021】
そして、ストレーナ12を透過した液体の水Wは、空洞3cの上端に固定されたノズル14に導かれる。ノズル14は、スチームトラップ3に設けられた貯水部3dと空洞3cとの間に圧力差を生じさせて蒸気Vから液体の水Wを取り出す機能を有し、水Wと一部の蒸気Vが噴出するノズル孔14aを有する。
【0022】
一方、貯水部3dは、ノズル14から出た水Wを一時的に貯水する役割を担っており、実使用下においてはその貯水部3dが空洞3cの上方に位置する姿勢でスチームトラップ3が使用される。
なお、貯水部3dの上端は第2のエンドキャップ15で閉塞されており、これにより貯水部3dから水Wが溢れ出るのが防止される。
図4は、
図2のII−II線に沿ったスチームトラップ3の断面図である。
図4に示すように、貯水部3dには水Wが途中の深さまで溜められる。そして、その水Wの水面Sよりも低い位置には開口3eが設けられる。
【0023】
開口3eは、接続流路3gによって排出流路3bに接続されており、これにより貯水部3dに溜められた水Wが接続流路3gを通って排出部11から排出されることになる。
このようなスチームトラップ3によれば、可動部がないため耐久性に優れており、製鉄工場や製紙工場において長期間にわたって使用することが可能となる。
【0024】
しかも、貯水部3dにおいて水面Sよりも低い位置に開口3eを設けたため、水Wによって開口3eが水封され、開口3eから排出部11に水蒸気Vが逃げるのを防止することができる。
図5は、送信ユニット6の構成図である。
送信ユニット6は、前述のようにスチームトラップ3の温度を含む温度情報を無線送信するユニットであって、温度測定部20と送信部24とを有する。
このうち、温度測定部20は、第1の示温部21、第2の示温部22、及びカメラ23により構成される。
【0025】
第1の示温部21は、スチームトラップ3の供給部10に貼付された示温テープであり、予め供給部10に設定された第1の基準温度T
1を境にして変色する。そして、第2の示温部22は、スチームトラップ3の排出部11に貼付された示温テープであり、予め排出部11に設定された第2の基準温度T
2を境に変色する。
なお、各示温部21、22は示温テープに限定されず、温度に応じて変色する塗料や、当該塗料が塗布された部品を各示温部21、22として使用してもよい。
【0026】
また、カメラ23は、第1の示温部21と第2の示温部22の各々の色を観察し、その色の情報を送信部24に通知する。なお、スチームトラップ3が暗所に設けられている場合には、カメラ23で各示温部21、22の色を観察し易くするために、各示温部21、22を照らす照明を設けてもよい。
更に、この例では一つのカメラ23で各示温部21、22を同時に観察するが、第1の示温部21と第2の示温部22の各々に専用のカメラを設けてもよい。
【0027】
送信部24は、カメラ23から各示温部21、22の色の情報の通知を受けたときに、その色の情報を温度情報として受信部7(
図1参照)に送信アンテナで無線送信する。
第1の示温部21や第2の示温部22の色は、以下のようにスチームトラップ3に異常があるか否かを判断する指標となる。
図6は、異常がない理想的なスチームトラップ3の一部断面側面図である。
以下では、供給部10に圧力が0.7MPaGで温度が170℃の水蒸気Vが供給される場合を想定する。これについては後述の
図7及び
図8でも同様である。
【0028】
異常がない場合には、供給部10は周囲の空気で僅かに冷却されつつ水蒸気Vによって加熱されるため、供給部10の温度は水蒸気Vの温度を僅かに下回る程度となる。
【0029】
一方、排出部11からは液体の水Wのみが排出されるため、排出部11の温度はその水Wの圧力下における水の沸点T
vよりも低くなる。なお、以下における水の沸点T
vは、このように圧力を加味した沸点を指す。
【0030】
そのため、
図6のように供給部10の温度が水蒸気Vの温度(170℃)よりも僅かに低い165℃であり、かつ排出部11の温度が沸点T
vよりも低い95℃の場合には、スチームトラップ3には異常がないということになる。
一方、
図7は、異常が生じているスチームトラップ3の一部断面側面図である。
図7の例では、液体の水Wが供給部10に停留してしまい、供給部10の温度(145℃)が蒸気Vの温度(170℃)を大きく下回ってしまっている。
【0031】
このような異常を検出するには、第1の示温部21が変色する境目である第1の基準温度T
1を、供給部10に供給される蒸気Vの温度(170℃)よりも所定の温度だけ低い155℃程度とすればよい。なお、当該温度は、配管5の材料や、配管5に保温材が巻かれているか否かによって適宜選択し得る。これについては、第1及び第2の基準温度T
1、T
2を含む後述の各温度でも同様である。
【0032】
これにより、供給部10の温度が第1の基準温度T
1よりも低くなったときに第1の示温部21が変色するようになるため、第1の示温部21の色の情報に基づいて供給部10の温度と第1の基準温度T
1との高低を判断部8が判断できる。そして、供給部10の温度が第1の基準温度T
1よりも低い場合には、スチームトラップ3に異常があると判断部8が判断する。その判断結果を受けた報知部9は、異常があることを音や画面で管理者に報知する。
【0033】
そして、報知を受けた管理者は、ノズル孔14a(
図3参照)の直径が現状よりも大きいノズル14に交換することで供給部10における水Wの停留を解消させ、異常を解消させることが可能となる。
なお、この例のように供給部10に水Wが停留している場合には、判断部8による判断結果を受けた弁制御部17が放出弁16を開き、放出弁16から水Wを放出させてもよい。これにより、作業者がノズル14を交換する前に蒸気系から速やかに水Wを排出できるため、水Wによってスチームハンマー現象が発生するのを未然に防止することが可能となる。
【0034】
また、第1の基準温度T
1は、上記のように供給部10に液体の水Wが停留していると判断する目安となる温度であるが、その温度が低すぎると供給部10に水Wが停留しているにも関わらず第1の示温部21が変色しなくなり、異常を見逃す恐れがある。そのため、蒸気Vの温度と第1の基準温度T
1との差を10℃以内に抑えるのが好ましい。
一方、
図8は、
図7とは異なる異常が生じているスチームトラップ3の一部断面側面図である。
【0035】
図8の例では、排出部11に水蒸気Vが漏れ出しており、排出部11の温度が沸点T
vよりも高い110℃となっている。このような異常を検出するには、第2の示温部22が変色する境目である第2の基準温度T
2を沸点T
vよりも高い所定の温度とすればよい。例えば、排出部11が大気に開放されており、排出部11の内部の圧力が大気圧となっている場合には、第2の基準温度T
2を沸点T
v(100℃)より5℃程度高い105℃とするのが好ましい。
【0036】
これにより、排出部11の温度が第2の基準温度T
2を超えたときに第2の示温部22が変色するようになるため、第2の示温部22の色の情報に基づいて排出部11の温度と第2の基準温度T
2との高低を判断部8が判断できる。そして、排出部11の温度が第2の基準温度T
2よりも高い場合には、スチームトラップ3に異常があると判断部8が判断する。その判断結果を受けた報知部9は、異常があることを音や画面で管理者に報知する。
【0037】
また、報知を受けた管理者は、ノズル孔14a(
図3参照)の直径が現状よりも小さいノズル14に交換することで排出部11への蒸気Vの漏れを停止させ、異常を解消させることが可能となる。
【0038】
なお、第2の基準温度T
2は、上記のように排出部11に蒸気Vが漏れ出ていると判断する目安となる温度であるが、その温度が高すぎると排出部11に蒸気Vが漏れ出ているにも関わらず第2の示温部22が変色しなくなり、異常を見逃す恐れがある。そのため、第2の基準温度T
2と水の沸点T
vとの差を10℃以内に抑えるのが好ましい。
図9は、上記した第1の基準温度T
1と第2の基準温度T
2とに基づいて判断部8が異常の有無を判断する判断テーブルを示す図である。
【0039】
以上説明した本実施形態によれば、送信部24が受信部7に温度情報を送信するため、スチームトラップ3が広い工場に点在している場合であっても、その温度情報に基づいてスチームトラップ3に異常があるかどうかを判断部8が判断できる。これにより、作業者が自らスチームトラップ3を現地で点検する必要がなくなり、スチームトラップ3を簡単に点検することが可能となる。
しかも、異常があるか否かの判断基準となる各基準温度T
1、T
2を予め設定してあるため、異常の有無の判断が正確となる。
【0040】
更に、スチームトラップ3の温度情報を温度測定部20が受信部7に無線で送信するため、広い工場内にスチームトラップ3が点在している場合であっても、温度測定部20と受信部7とをケーブルで接続する必要がなく、温度測定部20を敷設するのが容易となる。
以上、本実施形態について詳細に説明したが、本実施形態は上記に限定されない。
【0041】
例えば、上記では温度測定部20が無線送信を行う場合を例示したが、温度測定部20と受信部7とをケーブルで接続する手間が問題にならない場合には、温度測定部20と受信部7とをケーブルで接続してもよい。
(第2実施形態)
【0042】
第1実施形態では、第1の示温部21と第2の示温部22の色を温度情報として利用したが、本実施形態では以下のようにして温度計で測定した温度を温度情報として利用する。
図10は、本実施形態に係る送信ユニット6の構成図である。
なお、
図10において、第1実施形態で説明したのと同じ要素には第1実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0043】
図10に示すように、送信ユニット6は、第1実施形態と同様に温度測定部20と送信部24とを有する。このうち、温度測定部20は、第1の温度計31、第2の温度計32、及び変換部33により構成される。
第1の温度計31と第2の温度計32は、例えば温度に応じた起電力が生じる熱電対であって、それぞれ供給部10と排出部11に固定される。
変換部33は、各温度計31、32に生じた起電力を温度に変換し、それを温度情報として送信部24に通知する。
送信部24は、変換部33から温度情報の通知を受けたときに、その温度情報を受信部7(
図1参照)に無線送信する。
【0044】
このような温度計31、32を用いても、
図9の判断テーブルに従って判断部8が異常の有無を判断することで、異常があった場合に報知部9が報知を行うことが可能となる。
(変形例)
ノズル式のスチームトラップ3においては、供給部10や排出部11の温度の時間変化を監視することなく、上記のようにこれらの温度と各基準温度との高低のみでスチームトラップ3の異常を検出することができる。
このような利点を活かし、以下のように排出部11のみに第2の温度計32を設け、排出部11の温度のみでスチームトラップ3の異常を検出するようにしてもよい。
図11(a)、(b)は、本実施形態の変形例に係るスチームトラップ3の断面図である。
【0045】
図11(a)の例では、
図7と同様に供給部10に水Wが停留しており、前述のように供給部10の温度が蒸気Vの温度よりも低下する。この場合、停留した水Wによって排出部11の温度も低下し、当該温度が水の沸点T
vよりも低くなる。
一方、
図11(b)の例では、
図8と同様に排出部11に蒸気Vが漏れ出ており、これにより排出部11の温度が水の沸点T
vよりも高くなる。
【0046】
よって、本変形例のように排出部11のみに第2の温度計32を設け、排出部11の温度のみを測定するようにしても、
図11(a)、(b)のそれぞれの異常を検出することができる。
【0047】
例えば、
図11(a)のような水Wの停留による異常を検出するためには、排出部11に水の沸点T
vよりも低い第1の排出側基準温度T
e1(例えば70℃〜90℃)を予め設定すればよい。また、
図11(b)のような蒸気Vの漏れによる異常を検出するためには、排出部11に水の沸点T
vよりも高い第2の排出側基準温度T
e2(例えば100℃〜120℃)を予め設定すればよい。
なお、第1及び第2の基準温度T
1、T
2と同様に、第1及び第2の排出側基準温度T
e1、T
e2は、配管5の材料や、配管5に保温材が巻かれているか否かによって適宜選択し得る。
【0048】
そして、判断部8が、排出部11の温度が第1の排出側基準温度T
e1よりも低い場合(
図11(a))、又は当該温度が第2の排出側基準温度T
e2よりも高い場合(
図11(b))に、スチームトラップ3に異常があると判断すればよい。
このように排出部11のみの温度を監視することで、供給部10と排出部11の両方の温度を監視する場合よりも装置構成を簡略化することができる。
(第3実施形態)
本実施形態では、以下のようにして赤外線センサでスチームトラップ3の温度を測定する。
図12は、本実施形態に係る送信ユニット6の構成図である。
【0049】
なお、
図12において、第1実施形態や第2実施形態で説明したのと同じ要素にはこれらの実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0050】
図12に示すように、
送信ユニット6は、第1実施形態や第2実施形態と同様に温度測定部20と送信部24とを有する。このうち、温度測定部20は、第1の赤外線センサ41と第2の赤外線センサ42により構成される。
【0051】
第1の赤外線センサ41は、供給部10から放射された赤外線を受光し、その赤外線に基づいて供給部10の温度を測定する。また、第2の赤外線センサ42は、排出部11から放射された赤外線を受光し、その赤外線に基づいて排出部11の温度を測定する。そして、各赤外線センサ41、42は、各々が測定した温度を温度情報として送信部24に通知する。
なお、各赤外線センサ41、42は、画素を一つだけ備えた赤外線受光素子でもよいし、複数の画素を備えた赤外線イメージセンサでもよい。
送信部24は、各赤外線センサ41、42から温度情報の通知を受けたときに、その温度情報を受信部7(
図1参照)に無線送信する。
【0052】
このように赤外線センサ41、42を用いても、
図9の判断テーブルに従って判断部8が異常の有無を判断することで、異常があった場合に報知部9が報知を行うことが可能となる。
(第4実施形態)
【0053】
第1〜第3実施形態では、スチームトラップ3としてノズル式スチームトラップを使用したが、本実施形態では以下のように機械的な可動部を備えた機械式のスチームトラップを使用する。
図13は、本実施形態に係るスチームトラップ3の断面図である。
このスチームトラップ3は、フロート式のスチームトラップであって、フロート51とそれを収容した本体52とを備える。
【0054】
本体52には、水蒸気Vが供給される供給部10と、水蒸気Vに含まれる液体の水Wを排出する排出部11とが設けられる。本体52の内部において排出部11寄りの部位には、支点55を中心にして回動自在なアーム56が設けられる。
【0055】
前述のフロート51はアーム56の一端に固定されており、これによりフロート51は支点55を中心にして回動自在となる。更に、そのアーム56の途中の部位には弁体57が固定されており、排出部11に設けられた弁座58が弁体57によって閉塞される。
【0056】
このようなスチームトラップ3においては、本体52の内部に溜まった水Wの水位が上昇するとそれに応じてフロート51が上方に変位する。これにより弁座58と弁体57との間に隙間が生じ、水Wがその隙間を通って排出部11から排出される。
【0057】
この状態がしばらく続くと本体52の内部における水位が低下し、弁座58が弁体57によって再び閉塞され、排出部11から蒸気Vが排出されるのが防止される。
このように、本実施形態に係るスチームトラップ3においては、正常時には排出部11から間欠的に水Wが排出されることになる。水Wが放出される周期はスチームトラップ3の仕様にもよるが、例えば5秒〜10分に一回の割合でスチームトラップ3から水Wが放出される。
次に、このスチームトラップ3に生じる異常について説明する。
図14は、異常が生じているスチームトラップ3の断面図である。
【0058】
図14の例では、本体52の内部に溜まった水Wの水位が低いにも関わらず、弁体57や弁座58に付着した錆によってこれらの間に隙間が生じており、その隙間から排出部11に蒸気Vが漏れ出してしまっている。
このような場合には、供給部10と排出部11の各々の温度は時間的に変化せず、供給部10と排出部11のいずれも蒸気Vと同程度の温度となる。
一方、
図15は、
図14とは別の異常が生じているスチームトラップ3の断面図である。
図15の例では、何等かの理由によってフロート51が上下動をしなくなり、常に弁座58が弁体57によって閉塞されてしまっている。
【0059】
このような場合には、本体52の内部における水Wの量が時間と共に増えていくため、その水Wによって供給部10が冷却されてしまい、供給部10の温度が時間と共に低下する。
また、排出部11に蒸気Vが排出されないため、蒸気Vによって排出部11が加熱されなくなり、排出部11の温度も時間と共に低下することになる。
このように、機械式のスチームトラップ3においては、供給部10や排出部11の温度の時間変化を監視することにより異常を検出することができる。
図16は、本実施形態に係る送信ユニット6の構成図である。
【0060】
なお、
図16において第1〜第3実施形態で説明したのと同じ要素にはこれらの実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。これについては後述の
図17でも同様である。
【0061】
図16に示すように、第2実施形態と同様に送信ユニット6には第1の温度計31と第2の温度計32とが設けられる。そして、これらの温度計31、32で計測した温度を含む温度情報が送信部24から無線送信される。
【0062】
なお、このように温度計31、32でスチームトラップ3の温度を測定するのに代えて、第3実施形態で説明した赤外線センサ41、42(
図12参照)でスチームトラップ3の温度を測定してもよい。
図17は、本実施形態に係る監視ユニットの構成図である。
図17に示すように、本実施形態に係る監視ユニット4は、第1実施形態で説明した受信部7、判断部8、報知部9、及び弁制御部17の他に、算出部60を備える。
このうち、受信部7は、送信ユニット6から無線送信された温度情報を受信し、当該温度情報を算出部60に通知する。
【0063】
算出部60は、通知された温度情報に基づいて、所定の時間間隔Δtにおける供給部10の温度の時間変化量ΔT
sと、当該時間間隔Δtにおける排出部11の温度の時間変化量ΔT
eを算出する。なお、時間間隔Δtは特に限定されないが、例えば10秒〜30秒程度の値とする。
【0064】
また、算出部60のハードウェア構成も特に限定されず、判断部8と同様にCPU等のプロセッサとメモリとが協同してプログラムを実行することで算出部60が実現される。
そして、判断部8は、算出部60が算出した温度の時間変化量ΔT
s、ΔT
eに基づいて、スチームトラップ3における異常の有無の判断を行う。
その判断基準は、検出対象の異常に応じて適宜選択される。
【0065】
例えば、
図14のように排出部11から蒸気Vが漏れ続ける異常の場合には、前述のように供給部10と排出部11の温度は蒸気Vの温度と同程度となり、供給部10と排出部11の各々の温度は時間的にほとんど変化しない。そのため、この異常を検出するには、温度変化に対する第1の閾値T
1を予め設定しておき、温度の時間変化量ΔT
s、ΔT
eの各々の絶対値が共に第1の閾値T
1よりも低い状態が所定期間(例えば5分〜10分)にわたって継続しているときに異常があると判断部8が判断する。なお、この所定期間は上記に限定されず、スチームトラップ3を設置する位置や、スチームトラップ3から排出される液体の水Wの量に応じて適宜設定し得る。
【0066】
一方、
図15のようにスチームトラップ3に水Wが溜まる異常の場合には、前述のように供給部10と排出部11の各々の温度が時間と共に低下する。そのため、この異常を検出するには、温度変化が負であると判断するための第2の閾値T
2を予め設定しておき、供給部10と排出部11の各々の温度の時間変化量ΔT
s、ΔT
eがその第2の閾値T
2よりも低い状態が所定期間(例えば5分〜10分)にわたって継続しているときに異常があると判断部8が判断する。この所定期間も上記に限定されず、スチームトラップ3を設置する位置や、スチームトラップ3から排出される液体の水Wの量に応じて適宜設定し得る。
そして、このように異常があると判断されたときに、スチームトラップ3に異常がある旨を報知部9が報知する。なお、第1実施形態と同様に、
図15のようにスチームトラップ3に水Wが溜まる異常の場合には、判断部8による判断結果を受けた弁制御部17が放出弁16(
図1参照)を開き、放出弁16から水Wを放出させてもよい。
【0067】
以上説明した本実施形態によれば、監視対象が機械式のスチームトラップ3であっても、そのスチームトラップ3の供給部10や排出部11の温度変化に基づいて異常の有無を判断できる。
【0068】
なお、機械式のスチームトラップは上記のフロート式のスチームトラップに限定されず、例えばバイメタル式、バケット式、及びディスク式のいずれかのスチームトラップ3を使用してもよい。
(第5実施形態)
【0069】
本実施形態では、第1〜第4実施形態のような監視システムを使用することなしに、作業者が簡単にスチームトラップの異常を発見することが可能な部品について説明する。
図18は、本実施形態に係る部品の断面図である。
なお、
図18において、第1実施形態で説明したのと同じ要素には第1実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
図18に示すように、この部品70は、スチームトラップ3、第1の示温部21、及び第2の示温部22を有する。
このうち、スチームトラップ3は、第1実施形態で説明したノズル式のスチームトラップである。
【0070】
また、第1の示温部21は、スチームトラップ3の供給部10に貼付された示温テープであり、第1実施形態で説明した第1の基準温度T1を境にして変色する。そして、第2の
示温部22は、スチームトラップ3の排出部11に貼付された示温テープであり、第1実施形態で説明した第2の基準温度T2を境に変色する。
【0071】
本実施形態では、第1の示温部21の色を作業者が目視で観察し、その色に基づいて供給部10の温度が第1の基準温度T
1よりも高いか否かを作業者が把握する。同様に、第2の示温部22の色についても作業者が目視で観察し、その色に基づいて排出部11の温度が第2の基準温度T
2よりも高いか否かを作業者が把握する。
そして、このように把握した後、作業者が
図9のテーブルを参照してスチームトラップ3に異常があるかどうかを判断する。
【0072】
以上説明した本実施形態によれば、作業者がスチームトラップ3に温度計を当てなくても、各示温部21、22の色を作業者が観察するだけでスチームトラップ3に異常があるかどうかを簡単に判断でき、作業者の負担軽減を図ることができる。
【解決手段】水蒸気が供給される供給部10と、水蒸気に含まれる液体の水を排出する排出部11とを備えたスチームトラップ3と、供給部10と排出部11の少なくとも一方の温度を測定する温度測定部20と、温度測定部20が測定した温度を含む温度情報を送信する送信部24と、温度情報を受信する受信部7と、温度情報に基づいて、スチームトラップ3における異常の有無を判断する判断部8と、判断部8により異常があると判断されたときに報知を行う報知部9とを有する監視システム1が提供される。